Ⅰ 食料自給率の向上と食料の安定供給 · 2010【2006改定版】...

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- 59 - 食料自給率の向上と食料の安定食料自給率の向上に向けた管内の取組 (1)食料自給率の向上に向けた農政局の取組 我が国の食料自給率は、食の外部化・多様化に伴い、畜産物や油脂類の消費が増加し、 米の消費が減少するなど食生活が変化するなかで、国内生産は食生活の変化に十分対応が できていなかったことなどから、供給熱量(カロリー)ベースの食料自給率は、昭和40年 度の73%から近年の40%程度まで低下し、主要先進国の中で最低の水準となっている(表 Ⅰ-1-1)。そして、国民1人1日当たりの国産の供給熱量は17 7歳(男性)の基礎代謝量(生きていくために必要な最小のエネルギー代謝量)と同等の 水準にまで落ち込んでいる。 仮に不測の事態が発生して食料輸入が途絶するなどの事態に陥ったときに、肉類や野菜 から、熱量効率の高いいも類等の作物に転換することで、国内生産のみで国民1人1日当 たり2,020の熱量供給が可能であるとの試算結果がある(図Ⅰ-1-1)。しかし、この 熱量で最低限必要な熱量は確保されるとしても、食事の中身は現在とかけ離れたものとな ってしまう。 図Ⅰ-1-1 食料輸入が途絶した場合の食卓の危機 そこで、不測の事態に備え、平素から農地や農業用水を確保しつつ、農業の担い手の育 成・確保、農業技術水準の向上等を図り、食料供給力(自給力)を強化しておく必要があ る。政府は、食料の安定供給確保のため、食料・農業・農村基本法に基づく「食料・農業 ・農村基本計画」(以下「基本計画」という。)において食料自給率目標を設定すること とし、平成17年3月に閣議決定された新たな基本計画では、将来的には供給熱量(カロリ ー)ベースの食料自給率を5割以上とすることを目指しつつも、実現可能性を考慮して、 27年度に供給熱量(カロリー)ベースで45%、生産額ベースで76%とする目標を掲げ、食 料自給率の向上に向けた各種施策を推進しているところである。 新たな基本計画の策定等を受けて、18年4月、関東農政局の下部組織である農政事務所 食料自給率の向上と食料の安定供給 Ⅰ章 第Ⅰ章

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Page 1: Ⅰ 食料自給率の向上と食料の安定供給 · 2010【2006改定版】 資料:関東農政局調べ 表Ⅰ-1-1 管内各都県の食料自給率の現状 (単位:%)

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ⅠⅠ 食料自給率の向上と食料の安定供給1 食料自給率の向上に向けた管内の取組(1)食料自給率の向上に向けた農政局の取組

我が国の食料自給率は、食の外部化・多様化に伴い、畜産物や油脂類の消費が増加し、

米の消費が減少するなど食生活が変化するなかで、国内生産は食生活の変化に十分対応が

できていなかったことなどから、供給熱量(カロリー)ベースの食料自給率は、昭和40年

度の73%から近年の40%程度まで低下し、主要先進国の中で最低の水準となっている(表

〜Ⅰ-1-1)。そして、国民1人1日当たりの国産の供給熱量は17

7歳(男性)の基礎代謝量(生きていくために必要な最小のエネルギー代謝量)と同等の

水準にまで落ち込んでいる。

仮に不測の事態が発生して食料輸入が途絶するなどの事態に陥ったときに、肉類や野菜

から、熱量効率の高いいも類等の作物に転換することで、国内生産のみで国民1人1日当

たり2,020����の熱量供給が可能であるとの試算結果がある(図Ⅰ-1-1)。しかし、この

熱量で最低限必要な熱量は確保されるとしても、食事の中身は現在とかけ離れたものとな

ってしまう。

図Ⅰ-1-1 食料輸入が途絶した場合の食卓の危機

そこで、不測の事態に備え、平素から農地や農業用水を確保しつつ、農業の担い手の育

成・確保、農業技術水準の向上等を図り、食料供給力(自給力)を強化しておく必要があ

る。政府は、食料の安定供給確保のため、食料・農業・農村基本法に基づく「食料・農業

・農村基本計画」(以下「基本計画」という。)において食料自給率目標を設定すること

とし、平成17年3月に閣議決定された新たな基本計画では、将来的には供給熱量(カロリ

ー)ベースの食料自給率を5割以上とすることを目指しつつも、実現可能性を考慮して、

27年度に供給熱量(カロリー)ベースで45%、生産額ベースで76%とする目標を掲げ、食

料自給率の向上に向けた各種施策を推進しているところである。

新たな基本計画の策定等を受けて、18年4月、関東農政局の下部組織である農政事務所

食料自給率の向上と食料の安定供給第Ⅰ章第Ⅰ章

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(埼玉県を除く管内各都県に設置)に、新たに農政推進課が設置され、地域農政の推進体

制の拡充強化が図られたことから、関東農政局では、農政推進課とともに、17年度に引き

続き、意見交換会の開催、広報活動等を通じて、地産地消、食育、学校米飯給食、米粉の

普及、飼料増産・食品残さの飼料化などの食料自給率の向上に向けた取組に対する国民の

理解醸成に取り組んだ。

○○ 食料自給率の向上に向けた主な取組

食料自給率の向上に対する理解醸成……「関東の食と農業・農村を語る車座座談会」、

「市町村長懇談会」等の意見交換会や、「食料自給率向上に資する優良取組事例」

の収集及びその情報発信を通じて、国民の理解醸成に取り組んだ。

地産地消……地域における地産地消の実践的な計画(「地産地消推進計画」)の策定主

体等を会員とする「関東農政局管内の地産地消に関するネットワーク」の立ち上げ、

会報の発行により、地産地消の推進について関係者間での情報共有や連携を図ると

ともに、優良事例(「学校給食における地産地消の取組事例」、「地産地消推進計画

の策定地域の取組事例」等)の収集及び情報発信、表彰を行った。

食育……食事バランスガイドの啓発・普及に向けて、食に関心のある方や食育を実践し

ている方々相互間のネットワークの強化を図るとともに、地域版食事バランスガイ

ドの策定の推進や食育シンポジウムの開催などに取り組んだ。

学校米飯給食……学校米飯給食の実施回数が週3回に達していない市区町村に、農政局

幹部、農政事務所長等が出向き、首長らと実施回数の増加に向けて意見交換を行っ

た。

米粉の普及……関東米粉普及推進協議会の開催、さいたま新都心合同庁舎食堂での米粉

パンの試験販売などを実施し、普及・啓発を図った。

飼料増産・食品残さの飼料化……「関東地域飼料増産及び食品残さ飼料化(エコフィー

ド)合同会議」等を開催し、飼料増産に向けた具体的な取組等について検討した。

(2)最近、農業振興ビジョン等の改訂をした管内都県における

農業振興ビジョン等の実現に向けた取組

管内都県では、17年度に県が自ら定めた農業振興ビジョン等(以下「県ビジョン」と

いう。)がおおむね5年を経過することなどから、県ビジョン等の改訂を行ったところで

ある。

県食料自給率については、その現状を県民に情報発信し、県民と行政との認識の共有

を図ることが重要といった判断等から、新たに県ビジョンのなかに、栃木県では県食料

自給率目標を設定するとともに、茨城県では県食料自給率の見通しを国が示した算出式に

よる試算値として示している。

県食料自給率にかかるビジョンを示している都県は、19年3月末現在、県食料自給率

目標を設定している4都県(群馬県、埼玉県、東京都、神奈川県)と県食料自給率見通し

等を設定している2県(茨城県、栃木県)の6都県となったところである(表Ⅰ-1-1、

第2部 関東食料・農業・農村の動向

第2部

第1部

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第Ⅱ章

第2部

第Ⅲ章

巻末参考

第1部

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Ⅰ-1-2)。

県食料自給率目標等の設定等、県

ビジョンの改訂を最近行った県では、

18年度において、その実現に向けて

推進体制の整備・強化を図るととも

に、様々な取組が積極的に展開され

た(表Ⅰ-1-3)。

表Ⅰ-1-2 管内各都県の農業振興ビジョン等及び食料自給率目標等の設定状況

都県名 策定時期 農業振興ビジョン等名 食料自給率目標等の設定状況

※72%※73%

→H27年度見通し ※75%

注:数値(%)は国が示している試算式による。

%711%67均平

度年5131H開展なた新の業→H22年度目標78% →120%

→H27年度見通し80% →123%

群馬県 H18年3月 群馬県農業振興プラン2010 生産額ベース:H15年度 93%→H22年度目標100%

埼玉県 H16年3月 埼玉県民の健康とくらしを支える食料・ カロリーベース:H14年度12%%51標目度年22H→ンョジビ村山農・業農

)版訂改(らかちの01く拓をばちのすあ月3年81H県葉千

東京都 H18年6月 東京農業振興プランの中間評価と今後の ※品目別食料自給率:

)%4.6(%5.7年61Hてけ→H22年 6.1% (6.4%)

(22万人分)→H27年度16,400t(24万人分)

牛乳:88,551�(224万人分)→92,300�(234万人分)

ンョジビ化性活村農・業農しなまや月3年61H県梨山

イザデのへ業農州信くめらきに紀世12月3年8H県野長

1002ンョジビ紀世新業産水林農県岡静月3年81H県岡静2010【2006改定版】

資料:関東農政局調べ

表Ⅰ-1-1 管内各都県の食料自給率の現状(単位:%)

カロリーベース 生産額ベース

16年度 17年度 16年度(確定値) (概算値) (確定値)

全 国 40 40 69

茨城県 72 71 128

栃木県 81 75 124

群馬県 34 34 93

埼玉県 12 11 23

千葉県 30 29 76

東京都 1 1 5

神奈川県 3 3 13

山梨県 21 20 95

長野県 53 53 127

静岡県 18 18 56

資料:農林水産省「食料需給表」

−〜

〜〜

〜〜

〜 〜

食料自給率の向上と食料の安定供給第Ⅰ章第Ⅰ章

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表Ⅰ-1-3

−−−

最近、県農業振興ビジョンの改訂をした県における平成18年度の県農業振興ビジョンの実現に向けた取組事例

取組事例 県農業振興ビジョン 取組の内容の取組目標・成果

茨城県:「茨城県農業・農村振興計画'06 '10」(H18年3月策定)

「うまいもん 学校給食における地場 ・学校給食関係者に対する産地視察や事例研究セミナーの開催等によ

どころ食彩運 産品率 り地場産品の学校給食への導入促進を図った。

動」 H15 :58%

%地産地消の推 →H17実績:65.6

進、食生活の →H22 :65% ・県内消費者を「いばらき農産物サポーター」 として公募・登録し、

。たっ図を進促解理の物産農県本の城茨、善改

伝統的な食文 県産品販売コーナーを ・地産地消の日「今日の食卓

化の承継など 設置する量販店や県産 茨城産デー」(毎月第3日

を通した、県 品のメニューを提供す 曜日とその前の金曜・土曜)

を設定し広く県民に本県農

産物愛用を促した。

民の食と農に る料理店の指定店舗数

関する理解、 (県内)

「食育」を促 H16 :115店舗

進 →H18実績:189店舗 生産サイドと消費サイドの

→H22 :200店舗 結び付きを一層密なものとし、

相互の信頼関係の構築に向け

消費者のベス 「いばらき農産物ネッ て、

トパートナー トカタログ」への登録 ・生産者の生産履歴記帳の推進

となる茨城農 集団数 ・生産情報を発信する生産ネッ

業の確立 H16 :100集団 トカタログ(����://����. �)

→H18実績:174集団 への登録推進と消費者・実需

→H22 :500集団 者へのPRに取り組んだ。

栃木県:「とちぎ“食と農”躍進プラン〜 〜首都圏農業の新たな展開 」(H18年3月策定)

多様なニーズ 業務・加工需要との契 標高の高い酪農地帯である那須高原では、「新生産流通システムト

に対応できる 約取引を行う産地数 ライアル支援事業」(県単独事業)を活用し、新たなブランド野菜の

強い農業の確 H17 :26産地 産地化に向けた取組を開始した。豊富な有機資源を活用し、新たにヤ

立 →H18実績:34産地 ーコン、アスパラガスなどを生産し、直売所での販売や食品製造企業

→H22 :50産地 との直接取引に取り組んでいる。

農地の有効利 担い手への農地の

用の促進 利用集積率

H16 :33%

→H18実績:36%

→H22 :50%

○秩序ある土 水田整備率

地利用と農業 H16 :69.3%

生産基盤整備 →H18実績:69.5%

の推進 →H22 :71.6%

県では、県の農業振興地域整備基

本方針及び市町村農業振興地域整備

計画に基づき、秩序ある土地利用の

推進に努めた結果、那須烏山市の荒

川南部地区(約85��のほ場整備)では、農地の大区画集団化及び汎用化が進み、担い手農家を中心に大豆の

転作ブロックローテーション体制が確立された。

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畜産経営の体 飼料自給率 県では、「栃木県 ・肉用牛生産近代化計画」で、飼料自給率に

質強化と需要 H16 :24% ついて、現状の24%から平成27年度には35%に向上するという目標を

に応じた畜産 →H18実績:23% 掲げ、その目標達成に向けて、17年に「栃木県飼料自給率向上戦略会

物生産の促進 →H22 :30% 議」を立ち上げ、地域においても農業振興事務所単位に「地域飼料自

細断型ロ 給率向上戦略会議」を設置し、飼料増産の取組を関係機関団体と一体

ールベー となって進めている。

ラでの収 また、各地域では、地域ごとに策定した行動計画に基づいて、稲発

穫・調製 酵粗飼料の増産、経営内放牧の推進及びとうもろこし収穫・調製の省

の様子 力化等の実証展示ほを設置するなどして、飼料自給率向上に向けて、

積極的に取り組んでいる。

群馬県:「群馬県農業振興プラン2010」(H18年3月策定)

「ぐんま型集 認定農業者 品目横断的経営安定対策の対象となる、

落営農」の推 H16 :4,032人 111組織の集落営農と520人の認定農業者の

進 →H18実績:4,632人 経営を強化するため、研究会を設置し県の

→H22 :6,200人 水田農業ビジョンをとりまとめた。

集落営農組織 米麦+野菜等の複合経営による「ぐんま

H16 : 28組織 型集落営農」を推進するため、品目横断的

→H18実績:110組織 経営安定対策等の集合研修会・座談会等を

→H22 :220組織 開催し周知した。

定年帰農者の 農林大学校における定 農業の多様な担い手を確保・育

就農促進 年帰農者課程累計修了 成するため、農林大学校における

者数 ぐんま農業実践学校(就農準備校)

H16 : 0人 定年帰農者課程の定員を拡大募集

→H18実績: 85人 したところ、これを上回る応募が

→H22 :160人 あった。このため、新たに中部・

西部・東部の3県民局管内に地域

校を臨時開設し、研修等を行った。

鳥獣害被害防 鳥獣による農作物被害 深刻化するイノシシ等野

す止防を害被るよに獣鳥生額進推の策対止

H16:

303百万円 るため、県の体制整備(有

クマ、イノシシ、サ 害鳥獣対策主監の設置)を

ルの大量発生、鳥獣害 図るとともに、市町村や関

防止についての住民研 係団体との連携により、迅

修会等に対応できる体 速かつ的確な広域的対策を

制の整備 進めた。

→H22 273百万円

神奈川県:「かながわ農業活性化指 〜 〜針 県民の豊かな生活を支える都市農業をめざして 」(H18年3月策定)

地産地消・ 地産地消による農業の 「あなたと創る「かながわ農の逸品」事業」 県内の特徴ある農産

食育の推進 振興 物を対象に、消費者の意見を取り入れた農産物の情報提供システムを

→H18実績 試作し、イベント等で紹介した。また、地産地消に関心の高い消費者

イベントの開催:5回 と「神奈川の農」をPRする企画を検討し、足柄の米どころで新米を

楽しむ、地域を学ぶイベント等の開催を通じて、県農業を消費者の立

場からサポートする人材の育成に取り組んだ。

地産地消・ 地産地消による農業の 「野菜産地等活性化事業」 農産物を低コスト・安定供給するため、

食育の推進 振興 低コスト耐候性ハウスの整備に助成した。

→H18実績:5棟、

0.88��

食料自給率の向上と食料の安定供給第Ⅰ章第Ⅰ章

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地産地消・ 地産地消による農業の

食育の推進 振興

→H18実績

食材提供回数

:23校各2回

食と農の理解促進

食育授業への参画

:2校各2回

「給食残渣有効活用食育モデル事業」

小学校等から発生する給食残さを

飼料化し、それを養豚に与え、生産

された豚肉を加工して給食に提供す

るという食の循環を確立し、地産地

消の推進を図った。あわせて、この

過程を通じて、資源や命の大切

さを

学んでもらった。

静岡県:「静岡県農林水産業新世紀ビジョン2001 2010【2006改定版】」(H18年3月策定)

Ⅰ豊かな農林 しずおか農水産物 「しずおか農水産物生産情報発信事業」

水産物の安定 認証制度認証件数 農水産物の生産段階における安全性確保及び情報提

供給 H17 : 0件 供のシステムを認証する「しずおか農水産物認証制度」

5)安全安心を →H18実績:8件 を制定し、認証に基づく信頼性の高い情報を消費者や

に提供 →H22 :150件 マーケットに提供し、食の安全に対する不安の軽減、

産県ムテスシるす 農水産物の信頼性の確保を図った。また、県内の

。たっ図を上向のルベレ理管全安の等地産・者産生りくづ

Ⅱ農山漁村地 緑と水の保全推進活 「一社一村しずおか運動推進事業」 農村をフィールドにした環境保全活

域が持つ多面 動地区数 動や社会貢献、食育等の活動に関心のある企業と高齢化、過疎化により農

的機能の発揮 H17 :3件 業生産活動や集落活動が困難となりつつある農村をつなぎ、資源、人材、

6)地域資源を →H18実績:5件 ネットワークを生かした双方にメリットのある協働活動を支援し、住ん

生かした魅力 →H22 :5件 でみたくなる「しずおかの邑(むら)」づくりを推進した。

る農山漁村

地域の創造

Ⅲ環境に配慮

した地域社会

する農林水産 菜の花栽培面積 「バイオマス・イン・しずおか総合推進事業」

業の確立 →H18実績 バイオマス利活用推進のため、「静岡県バイオマス総合利活用マス

(9)持続可能な :74.3�� タープラン」に基づき、県民への普及啓発、情報発信を推進するとと

循環型地域社 →H22:200�� もに、菜の花資源循環システムの確立に向け、地域の休耕田や廃食油

。たし援支を組取たけ向に用活効有の源資用利未のどな献貢のへ会

資料:関東農政局調べ

学校給食残さの有効利用をとおしての食育モデルの構築

棚 田 保 全 活 動 の 一 環 と し て の 草 刈 り ( 左 )社 会 貢 献 活 動 と し て の 「 菜 の 花 の 種 ま き 」( 右 )

食育授業

命の大切さ

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((3)米消費拡大の取組

① 米飯学校給食推進の取組

山梨県、千葉県、東京都で米飯学校給食実施回数が増加

最近の子ども達の食習慣の乱れは、「栄養バランスの偏り」につながり、糖尿病や肥満

等の生活習慣病の低年齢化、集中力の低下やイライラの原因になるなど、心の健康にも悪

影響を及ぼしているといわれている。

ごはん食は、日本型食生活の中心であり、色々なおかずと相性が良く、主食として優れ

ている。子どものころからごはん食に親しむことは、必要な栄養素をしっかり摂取でき、

健康で元気な生活をおくるうえでも大切なことである。

国公私立学校において完全給食(注)を実施している学校のうち、米飯学校給食を実施

している学校数の割合は、17年5月1日現在、管内99.6%(全国99.5%)となっており、

この米飯学校給食の実施校における17年度の実施回数は、全国平均で2.9回となっている。

関東農政局管内の実施状況を前年度と比べると、山梨県は2.8回から3.0回、千葉県は3.1

回から3.2回、東京都は2.5回から2.6回へと実施回数が増加している(いずれも文部科学

省「17年度米飯給食実施状況調査」(表Ⅰ-1-4)。

(注)完全給食とは、給食内容がパンまたは米飯(これらに準ずる小麦粉食品、米加工食品その他

の食品を含む。)、ミルク及びおかずである給食をいう(学校給食法施行規則第1条)。

実施回数が増加した都県では、①農林水産省が推進してきた「日本型食生活」で脂肪摂

取を押さえるメニュー作りができたこと、②米の方がパンよりもおかずを充実させること

ができたこと、③中学校ではご飯の方が腹持ちが良いとして実施要望が多かったこと、が

あげられており、ある都市では、給食が実施されていなかった中学校で弁当給食(業者委

託)を導入し、週5回が米飯給食となるといった例もある。

このようななか、関東農政局及び管内農政事務所では、国が目標としている米飯学校給

1 3 年 度 1 4 年 度 1 5 年 度 1 6 年 度 1 7 年 度茨   城 2. 8 2 . 9 2. 9 2 . 9 2 . 9栃   木 3. 0 3 . 0 3. 0 3 . 0 3 . 0群   馬 2. 6 2 . 7 2. 7 2 . 8 2 . 8埼   玉 2. 6 2 . 6 2. 6 2 . 7 2 . 6千   葉 3. 1 3 . 1 3. 1 3 . 1 3 . 2東   京 2. 4 2 . 4 2. 4 2 . 5 2 . 6神 奈 川 1. 8 2 . 1 2. 1 2 . 1 2 . 1山   梨 2. 8 2 . 8 2. 8 2 . 8 3 . 0長   野 3. 0 3 . 0 3. 0 3 . 0 3 . 0静   岡 2. 8 2 . 8 2. 8 2 . 8 2 . 7全   国 2. 8 2 . 9 2. 9 2 . 9 2 . 9

資 料 : 「 米 飯 給 食 実 施 状 況 調 査 」 文 部 科 学 省

表 Ⅰ - 1 - 4 管 内 都 県 の 米 飯 学 校 給 食 の 推 移

食料自給率の向上と食料の安定供給第Ⅰ章第Ⅰ章

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食の週3回実施を実現するため、実施回数が週3.0回を下回る区市町村の首長等に米飯学

校給食実施回数増加の要請を行っている。これに対し、多くの首長等は回数増加に理解を

示しているものの、炊飯設備の拡充・要員増強のための経費や給食費への負担増の問題か

ら、実施回数の増加へ慎重な姿勢をとるところもある。

管内都県における米飯学校給食の普及・推進の取組としては、埼玉県米消費拡大推進連

絡協議会が「米飯給食実態調査」(18年11月に児童・保護者、市町村学校給食担当部局を

対象に調査)、米飯給食指導者講習会(19年2月)、学校給食モデル献立集の作成(19年

2月)等を実施している。特に米飯給食実態調査では、適切と思う米飯学校給食の回数は

3回以上としている市町村が全体の50%以上を占めているにもかかわらず、現状では、3

回以上実施している市町村は33%であり現状と理想のギャップがあるなど、米飯学校給食

導入に関する実態が明らかにされており、今後、米飯学校給食を増加させたい意向のある

市町村の課題解決等、普及・推進の具体的対策に活用できるものとなっている。

第2部 関東食料・農業・農村の動向

第2部

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第Ⅰ章

第Ⅱ章

第2部

第Ⅲ章

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②② 米粉利用食品の普及・推進の取組

学校給食への米粉パン導入は全国で7,836校

米粉利用食品は、米の粉砕技術の進歩とともに、その用途も拡大されてきている。特に

3年に新潟県食品農業総合研究所食品研究センターが微細粒粉への加工技術を開発してか

らは、米粉パンの普及が進んできている。

これまでも米粉を小麦粉に混ぜ込んだ米粉パンはあったものの、この微細粒粉にグルテ

ンを混ぜ合わせることにより、小麦粉パンと味、食感等において遜色がなくなり、もっち

りとしっとりなめらかな食感に仕上ることができるようになった。

現在では、全国津々浦々で地産地消と絡めた米粉パン作りが普及しており、全国での原

料粉使用量は、17年度約3千トン、18年度約6千トンの使用量になっている(農政事務所

調べ)。また、全国で学校給食に米粉パンを利用している国公私立学校数は、17年度の

6,063校から18年度では7,836校へと増加している(農政事務所調べ)。これらの動きに連

動して、消費者の間でも米粉食品の認知度が高まり、米加工品等市場調査事業におけるア

ンケート調査では、米粉パンの認知度が17年度の19.5%から18年度では44.0%へと高くな

ってきている。

このようななか、関東農政局管内では、各都県で設置された米粉利用食品普及推進連絡

会等が中心となり、米粉料理教室の開催、農業祭り及び産直フェアへの出店など米粉パン

の普及推進が図られている。

また、「関東米粉食品普及推進協議会」(各都県の米粉利用食品普及推進連絡会等の情

報交換組織として15年6月に設立。会員:米麦加工食品製造業者、学校給食関係者、農業

団体及び行政関係者等)では、18年度から毎月2回を目標とした「米粉メールマガジン」

を会員向けに発行している。このメールマガジンは都県の各連絡会等が実施した料理教室

やイベントでの出店情報を掲載し、会員間の情報交換や発信の場としている。

さらに、「米粉パンや米粉そのものがどこで売られてい

るかわからない」、「米の製粉はどこでできるのか」など、

消費者からの問い合わせに対応するため、「米粉食品店舗

ガイド・米粉料理レシピ集」を作成して情報提供に努めて

いる(関東農政局ホームページ:「米粉情報」参照)。

米粉利用食品は、米消費拡大の手段の一つとして登場し

たが、今日ではアレルギー対応食品としても注目されるよ

うにもなってきている。一方、米粉を使うことのメリット

をいかに消費者に情報発信していくかが課題であり、今後

とも関東農政局では同協議会と一体となって、米粉食品の

普及・推進に取り組んでいくこととしている。

食料自給率の向上と食料の安定供給第Ⅰ章第Ⅰ章

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(4)食料自給率向上に資する優良取組事例

関東農政局では、各地域で食料自給率の向上に向け取り組んでいる関係者の参考とする

ため、「食料自給率向上に資する取組事例」を収集し、四半期ごとに取りまとめ、農政局

ホームページに掲載している。

事事例:酪農家が地元農産物にこだわったアイスの製造・販売

「アイス工房カウベル」(道の駅「思 川」内)(栃木県小山市)おもいがわ

1 取組のきっかけ

小山市は、小山ブランドの創生と発信、地産地消

・食育の推進、都市と農村の交流を促進することを

目的に、国道50号線沿いに「道の駅思川」を平成18

年4月にオープンした。同時に、同市下都賀地域の

酪農家の女性5人が中心となって、酪農経営のイメ

ージアップと牛乳に付加価値を付けて消費拡大を図

るため、任意組合の「アイス工房カウベル」(野口

弘子代表)を設立し、同道の駅に出店した。

取組内容

同工房のジェラートは、栃木県酪農協同組合から直送された牛乳を使用して工房内で常

20種類ほど製造している。中でも一押しのジェラートは、同代表の発案で商品化された、

ある。

この商品は、牛乳にハトムギを煎って粉末にして混ぜたも

ので、同市がハトムギの収穫量全国一位(17年52��、154ト

ン)であるところから名付けられた。商品化に当たっては、

「小山はと麦生産組合」の協力で、どんな形や方法でハトム

ギを混ぜたらよいのか、何度も検討会や試食会を開き、試行

錯誤の末に商品化した苦心作である。このほか、古代米を使

った「鏡の里」や、国産大豆を使ったきな粉のジェラート、

地元の新鮮野菜や果物をふんだんに使ったニンジ

ン、じゃがいも、ブロッコリー味のジェラートな

どが店頭に並んでいる。(野菜そのままの名前では

なく、インパクトのある商品名:例えば、にんじ

んでは「キャロットミルク」、モロヘイヤでは「ク

レオパトラ」などにしている。)また、レシピを考

案するに当たっては、健康やアレルギー対策面か

ら素材の品質や、低脂肪・無添加・卵を使用しな

いなどに気を付けながら、季節の物や地域に関係

する農産物を使ったレシピを考案するなど、手持ちのレシピは50種類を超えている。

カウベルの店舗

ハトムギを煎っている様子

ジェラートのメニューと掲示板

(http://www.michinoekiomoigawa.co.jp)

第2部 関東食料・農業・農村の動向

第2部

第1部

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第Ⅱ章

第2部

第Ⅲ章

巻末参考

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33 取組にかかる問題点と解決策

カウベル構成員は、朝の搾乳、夕方の給餌や家事

などの仕事をかかえており、これら酪農家の仕事に

あまり影響がでないように、大学生のアルバイトを

雇って、構成員が働く時間(1日4時間、午前か午

後)を調整している。また、同工房では、より多く

の地元産農産物を使用しようとしたため、農産物の

確保が難しくなったが、野口代表が女性農業士であ

ったことから、農業士同士のつながりで生産者を紹

介してもらったり、知人から取り寄せたりすること

で解決している。

4 取組の効果

製造に使用する牛乳は1日平均

約70リットル前後で、ジェラートは多い日で1,200カッ

このように、牛乳の消費拡大に寄与してい

るほか、道の駅に訪れた消費者等に、同市のハトムギが日本一の生産量であることや地元

産の野菜や果物をPRしている。

5 今後の展開方向

今後はジェラートの販売数が減少する冬期の対策として新商品を開発していきたいと考

えている。また、酪農の状況などをパネルで紹介するなど、単にジェラートを販売するだ

けでなく、地元産農作物や酪農情報の発信基地として、また、生産者と消費者の情報交換

の場としての役割を担っていけるようにしたいと考えている。さらに、酪農の現場を見学

してもらったり、ハトムギ畑等の生産現場を見学してもらうなどのイベントなどにも取り

組みたいと考えている。

できあがったジェラートの取り出し

食料自給率の向上と食料の安定供給第Ⅰ章第Ⅰ章

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2 安全な食料の安定供給と消費者の信頼確保

((1)消費・安全行政の推進

安全な食料の安定供給と関係機関や消費者団体等への適切な情報提供について取組

平成15年5月に制定された「食品安全基本法」に基づき、農林水産省は厚生労働省など

と連携して食品のリスク管理を推進している。関東農政局は、農薬等の生産資材の適正使

用・管理、家畜防疫体制の強化、「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特

別措置法」(牛肉トレーサビリティ法)の適正な運用、食品安全GAP推進体制の整備、食

品表示の監視業務などを実施した。

また、米国・カナダにおける対日輸出認定施設の現地調査等の結果や、19年1月に宮崎

県及び岡山県において発生した、強毒タイプの高病原性鳥インフルエンザの防疫措置の実

施状況、鶏肉・鶏卵の安全性の確保、適切な表示の実施についての取組などを消費者団体

等へ適宜情報提供を行った。

(2)リスク管理、リスクコミュニケーションの推進

① 生産資材の適正な使用・管理の推進

生産資材の適正な使用・管理についての法制度の周知及び使用実態の調査指導を実施

関東農政局では、農産物(1,166件)、飼料(437件)、水産用医薬品及び養殖水産動物

用飼料(113件)について、農家等の使用状況調査を実施し、適正使用を図るよう指導を

行った。

農薬の残留実態調査として米、小麦、大豆、野菜、果樹475件について残留農薬分析を

実施した結果、残留農薬基準を超過したものはなかったが、不適正使用の事例が2件あり、

地方農政事務所が農薬の適正使用の徹底を図るよう、当該生産者に指導した。

② 農作物のリスク管理等を推進するための調査の実施

農作物のリスク管理等を推進するため、カドミウム等の有害物質の調査を実施

ア 有害物調査の実施

関東農政局では、産地段階における農作物のリスク管理等を的確に行うため、有害物質

について調査を行った。国内産米穀のカドミウム調査(244点)においては、食品衛生法

の基準である1.0���以上のカドミウムを含む米穀は検出されなかった。また、食品衛生法

上の問題はないが、消費者の不安に配慮して非食用の処理の対象としている0.4���以上

1.0���未満のカドミウムを含む米穀が3点検出された。この3点は工業用のり等非食用と

して処理しており、食用として流通することはないようにした。

米麦のかび毒実態調査(77件)として、対象作物の収穫期等に合わせて栽培管理の聞き

第2部 関東食料・農業・農村の動向

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取り調査及び試料採取を実施した。

イイ 遺伝子組換え作物の実態の調査の実施

関東農政局では、遺伝子組換え農作物のうち、輸入港周辺等での生育が報告されている

セイヨウナタネについて、輸入や国内における輸送状況を踏まえて、輸入港や周辺幹線道

路等におけるこぼれ落ちによる国内での生育の実態を調査した。セイヨウナタネの輸入港

である4港(鹿島、千葉、横浜、清水)において、セイヨウナタネとその近縁種である在

来ナタネ及びカラシナを対象に、96地点200検体を採取した。検査の結果、セイヨウナタ

ネ15検体から除草剤耐性タンパク質(注)を検出したが、在来ナタネ及びカラシナからは

除草剤耐性タンパク質の検出はなく、種間交雑を示す結果は得られなかった。

(注)除草剤耐性タンパク質とは、遺伝子組換え作物に導入された除草剤耐性遺伝子が作るタンパク質のことである。

③ 農薬の適正使用・管理の推進

農薬等のポジティブリスト制度に対応した農薬の飛散低減対策についての取組

ア ポジティブリスト制度の導入

食品衛生法等の一部を改正する法律(平成15年法律第55号)により、18年5月29日から

農薬、飼料添加物及び動物用医薬品について、食品への個別の残留基準値が設定されてい

ない場合であっても、これらが一定量以上含まれる食品の販売等を原則禁止する制度(い

わゆる「ポジティブリスト制度」)が導入された。この一定量は、「人の健康を損なうお

それのない量として厚生労働大臣が定める量」(17年11月29日厚生労働省告示第497号)と

して、0.01���とされている。

このポジティブリスト制度の施行に伴い、残留農薬基準が設定されている防除対象の農

作物の農薬が飛散(ドリフト)して、当該農薬の残留基準が設定されていない周辺の農作

物に付着するという意図しない汚染を原因として、基準値違反が発生する可能性があり、

農薬の飛散低減対策を講じる必要があることから、制度の普及・啓発を行った。

イ 農薬の飛散低減対策と適正使用の取組

関東農政局では、農薬の飛散低減対策として防除対象の農作物のみならず、周辺農作物

についても、食品衛生法の基準を超えた農薬が残留することがないよう、都県等に対して、

個々の農家に対する制度の周知徹底や、新技術、農薬登録、残留農薬基準等に関する情報

の収集・提供の強化を依頼し、新技術の導入・普及、農薬の選定・適正使用等に向けた取

組を推進した。また、各都県における地域単位での関係機関・団体の連携推進や指導強化

の周知を図った。

18年4月に開催した「関東管内農薬適正使用推進協議会」では、農薬の飛散低減対策を

現場で指導するうえでの散布方法、薬剤選択等の課題等を整理し、その取組を支援した。

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④ GGAPの推進

GAP(適正農業規範)の導入・促進

ア GAPの意義・手法

農林水産省では、「食料・農業・農村基本計画」(平成17年3月閣議決定)に基づき、

食の安全や消費者の食に対する信頼を確保し、環境と調和のとれた農業生産活動を促進す

るため、農場から食卓までの安全対策の徹底のうち、生産段階における取組として、各地

域や作物の特性に応じたGAP(G��� A���������� P�������:適正農業規範)の策定と、

これに基づく農業生産・出荷等、農業者・農業団体や事業者による自主的な取組を促進す

ることとしている。

19年4月の農林水産省の通知(注)では、GAPとは、農業生産において、食品安全、

環境負荷低減、労働安全、品質向上等を目的として、産地や農業者自らが、①農作業の点

検項目を決定し、②点検項目に従い農作業を行い作業内容を記録し、③記録を点検・評価

して改善点を見出し、④次回の作付けに活用するという一連の「農業生産工程の管理手法」

(プロセスチェック手法)として整理されている。

このGAPの意義・手法を農業者等が理解し、各産地や生産団体等で、それぞれの地域

や作物の特性に応じてGAPに取り組む必要がある。

注)「農業生産工程管理手法(GAP手法)の導入及び推進について」(平成19年4月6日付け19生産第11号 消費・安全局長、生産局長、経営局長通知)

イ GAPの取組状況

関東農政局では、関係機関等によるGAP推進の体制整備を進めており、「食の安全・

安心交付金」(生鮮農産物安全性確保対策事業)を利用し、①7県においてGAP推進協議

会の設立、②GAPマニュアル策定のための実証ほの設置等について、茨城県のいばらき

農産物流通研究会においては、水稲ほか18作物、栃木県のJA足利等では、トマトほか3

作物、埼玉県のJAちちぶ等では、ほうれんそうほか3作物で取組がされた。

また、「GAPを通じて農産物の安全管理をどう進めるか」と題して、農政局主催によ

り、生産者、消費者、食品事業者等140名を集めて意見交換会を、18年9月に開催した。

ウ 食品安全GAPに関する意識・意向調査

関東農政局では、今後、地域における食品安全を重視したGAP(以下、「食品安全G

AP」という。)の取組の推進及び啓発活動を効果的に行うための基礎資料を整備するこ

とを目的として、19年1月下旬に、管内の「農林水産情報交流ネットワーク事業」の農

業者モニター(注)642名を対象に「食品安全GAPに関する意識意向調査」を実施し、

540名から回答を得た(回収率84.1%)。

(注)「農林水産情報交流ネットワーク事業」とは、生産者(農業者、林業者、漁業者)、流通加工業者及び消費者の意見・意向等を迅速に把握して農林水産行政に反映させることを目的とする事業である。今回のアンケート調査では、関東農政局管内(1都9県)に配置している

情報交流モニター等のうち、農業者モニターを対象とした。

第2部 関東食料・農業・農村の動向

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1 食品安全GAPの認知度

食品安全GAPの考え方や取組内容について

「知っている」と回答した者は3割、「詳しくは

知らないが、聞いたことがある」と回答した者は

5割となっている(図Ⅰ-2-1)。

2 安全な農産物を生産するための取組内容 3 食品安全GAPの取組内容の充実・

安全な農産物を生産するための食品GAP 新たな取組の必要性

につながる取組内容は、「生産履歴の記帳」が 食品安全GAPの取組内容の充実及び新

8割と最も多い(図Ⅰ-2-2)。 たな取組について、「必要と思う」が8割

となっている(図Ⅰ-2-3)。

図Ⅰ-2-1 食品安全GAPの認知度

図Ⅰ

図Ⅰ

食料自給率の向上と食料の安定供給第Ⅰ章第Ⅰ章

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⑤ リスクココミュニケーション等の推進

リスクコミュニケーション等の推進と消費者関連情報の提供体制を整備

食品安全行政においては、政策の策定過程の公正性と透明性を確保し、国民の意向の反

映を図るため、消費者をはじめとした関係者に対する正確でわかりやすい情報の提供と意

見の交換等を行うリスクコミュニケーションを推進することが重要である。関東農政局で

は、リスクコミュニケーションの一環として、18年9月に東京都中央区で「食中毒に関す

る意見交換会」を、19年2月に山梨県甲府市で「農薬に関する意見交換会」を、食品安全

委員会、厚生労働省(関東信越厚生局)等と共催で開催した。

農薬に関する意見交換会では、生産者より「農薬の散布回数を減らす、防除日誌への記

帳などの努力をしている」、「複合栽培が多いなかで農薬使用に苦慮している」等、消費

者より「農薬に対しては、適正使用ということは理解しているが、安心という点で不安が

ある」、「お互いに情報を共有することが大事」等の意見を端緒に意見交換がなされ、相

互理解をするなかでリスクの減少を図っていくという点でリスクコミュニケーションが進

展した。

また、管内の各地域段階においても、主に消費者を対象に「食の安全・安心」等をテー

マとした意見交換会、農薬や食品表示等の制度に関する意見交換会等を計312回実施した。

さらに、消費者団体等が開催する食の安全・安心に関する講習会等に関して、主催者か

らの依頼に応じ説明者を計690回派遣した。

なお、消費者重視の観点から、関東農政局が実施した食の安全、食育、農業・農村に対

する消費者の理解の醸成を図るための取組・イベント等の内容について、ホームページ

等で提供している。

(3)消費者の信頼の確保

① トレーサビリティ・システムの導入の促進

トレーサビリティ・システムの啓発・普及により、食に対する消費者の信頼の確保に

貢献

ア 牛トレーサビリティ制度の監視・指導

15年6月に「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法」(牛トレ

ーサビリティ法)が施行され、15年12月1日に生産段階、16年12月1日に流通段階が施行

された。

牛トレーサビリティ法は牛海綿状脳症(BSE)のまん延防止措置の的確な実施や牛肉

に対する消費者の信頼確保を目的としており、同法によって、牛を個体識別番号により一

元管理するとともに、生産・流通の各段階で当該個体識別番号を確実に伝達するための制

度が構築されている。

関東農政局では牛トレーサビリティ制度の信頼性の確保のため、生産段階では牛の管理

者に対して、耳標の装着及び牛の出生・異動の届け出状況等について、流通段階では販売

第2部 関東食料・農業・農村の動向

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業者等に対して、個体識別番号の表示・伝達及び帳簿の備え付け状況等について立入検査

を実施した。

この結果、牛に装着されていた耳標を故意に取り外した事案について告発を行ったほか、

個体識別番号の不適切な表示を行った販売業者等に対して、勧告や指導等を行った。

イイ 関東地域食品トレーサビリティ事例報告会の開催農林水産省では、消費者の信頼を確保するための取組として、食品の流通経路情報を活

用して食品を追跡・遡及できるトレーサビリティ・システムの普及・啓発を行っている。

関東農政局では、トレーサビリティ・システムの普及の促進を図るため、18年12月に農

協等の農畜水産業関係団体、食品の製造・流通・販売業者等を対象に、管内の特色ある様

々な取組事例の紹介を内容とする事例報告会を開催した。

② 高病原性鳥インフルエンザ発生時への対応

高病原性鳥インフルエンザ発生時の小売店の巡回調査を実施

19年1月以降に宮崎県及び岡山県で高病原性鳥インフルエンザが発生した際、小売業者

による『発生地域の鶏肉・鶏卵は扱っておりません』等の不適切な表示の有無を調査し、

不適切な表示には自粛・改善要請を行った。

最初の発生以降、管内において延べ約1万店舗を調査し、不適切な表示のあった45店舗

に自粛・改善要請を行い、全店舗で当該表示の自粛・改善が行われた。

さらに、消費者団体等に対して、鶏肉・鶏卵の安全性等に関する情報提供を行った。

(4)食品表示の適正化

生鮮食品等の表示調査等の実施、食品表示110番及び食品表示ウォッチャーの情報を

活用した任意調査等の実施により食品表示の適正化を推進

関東農政局では、管内都県の「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律」

(JAS法)担当部局及び食品衛生担当部局並びに(独)農林水産消費安全技術センター

等の関係機関と連携を図りながら、小売店舗等の生鮮食品等の表示調査を実施し、適正な

表示が行われるよう事業者に対し啓発・指導を行った。

また、生鮮食品等の表示調査のほか、食品表示110番、食品表示ウォッチャーからの情

報を活用して法令違反の疑いのある業者に対し任意調査等を実施し、法令違反のあった業

者については、違反の内容に応じて改善指示・公表、文書指導等を行った。

さらに、食品表示制度の普及・啓発を図るため、群馬県及び静岡県において、食品表

示地域フォーラムを開催した。

食料自給率の向上と食料の安定供給第Ⅰ章第Ⅰ章

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① 生鮮食品等の表示調査の実施

アア 一般調査

一般調査として、年間をとおして生鮮食品の表示実施状況の調査を実施している。

18年度は、小売業者約12,000店舗を対象に米穀を除く農畜水産物について調査を実施し、

「名称」・「原産地」で不適正な表示や表示の欠落のあった店舗に対し改善指導を行った。

さらに、中間流通業者等約1,700業者を対象に調査を実施し、不適正な表示が認められた

業者に対し改善指導を行った。

また、小売業者約8,000店舗及び卸売業者等約100社を対象に米穀について調査を実施し、

不適正表示が認められた店舗に対し改善指導を行った。

なお、一般調査における不適正な表示や表示の欠落のあった店舗の率は17年度に比べて

低下している。

イ 特別調査

特別調査として、年4回、品目を特定して、小売業者を対象に店舗における表示状況調

査を以下のとおり実施した。

①「牛肉及び牛肉加工品」の原産地等の表示及び②北朝鮮からの輸入量が多いアサリ、

まつたけ、ウニなど7品目を対象とした「農水産物」の原産地表示について、それぞれ18

年8月から調査を実施している。③「しいたけ」にかかる表示について18年11月から19年

月末まで、④「平成18年産米穀」にかかる表示について19年1月から2月末まで調査を

実施した。

なお、これらの調査において表示の根拠に疑義が生じたものについては、表示根拠の確

認のため、製造業者や中間流通業者等への遡及調査を実施した。

② 有機農産物、特別栽培農産物、「無農薬」等の表示が付された農産物の表示調査

一般調査の際、有機農産物、特別栽培農産物、「無農薬」等の表示が付された農産物の

調査を実施した。

有機農産物については、年間を通して約2,500店舗に対し調査を実施し、不適正表示の

あった管内業者に対し改善指導を行った。

さらに、特別栽培農産物(注)、「無農薬」表示農産物等については、店舗における表

示根拠の確認を行うとともに、表示根拠に不適正な行為の疑いのあった流通業者及び生産

者約190業者に対する遡及調査を実施し、不適正表示のあった業者に対して改善するよう

啓発を行った。

また、約110件の有機農産物等の買上げを行い、(独)農林水産消費安全技術センターに

残留農薬の分析を依頼した結果、残留農薬が検出されたものについて、担当部局へ回付し

た。

(注)「特別栽培農産物」:地域の慣行レベル(各地域の慣行的に行われている節減対象農薬及び化学肥料の使用状況)に比べて、節減対象農薬の使用回数が5割以下及び化学肥料の窒素成分量が5割以下で栽培された農産物のこと。「節減対象農薬」とは、化学合成農薬のうち、「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に

関する法律」(JAS法)施行令第10条第1号の農林水産大臣が定める化学的に合成された農

第2部 関東食料・農業・農村の動向

第2部

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薬、肥料及び土壌改良資材(平成12年7月14日農林水産省告示第1005号)の一に掲げる農薬を除くものをいう(詳細は、「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」(平成19年3月23日18消安第14413号・総合食料局長、生産局長、消費・安全局長通知)参照)。

③③ 任意調査等

食品表示110番、食品表示ウォッチャー等の情報を活用し、食品表示について法令違反

の疑いのある約490業者に対し任意調査等を行い、法令違反のあった業者に対して指示・

公表するなど、改善指導を行った。

④ 食品表示地域フォーラムの開催

関東農政局では、18年11月群馬県前橋市で、19年1月静岡県静岡市で、それぞれ食品表

示地域フォーラムを開催し、事業者・消費者等への食品表示制度の普及・啓発を行った。

フォーラムでは、有識者による基調講演を行うとともに、パネルディスカッションでは、

消費者の適切な商品選択の手助けとなるわかりやすい表示はどのようなものがよいか等に

ついて、消費者、事業者、行政パネラーがそれぞれの立場から問題提起や意見交換を行い、

参加者の食品表示についての理解を深めた。

食料自給率の向上と食料の安定供給第Ⅰ章第Ⅰ章

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33 日本型食生活の実現と生産から消費に至る多様な取組

(1)食育の推進

「食育推進基本計画」の実現に向けた各種取組を実施

近年、我が国の食を巡る現状は「食」の大切さに対する意識が希薄になり、栄養の偏り

や食生活の乱れによる肥満や生活習慣病が増加する一方、過度の痩 身志向等の問題が指そうしん

摘されるなど危機的ともいえる状況に至っている。このような状況に対処し、健全な食生

活を実践することができる人間を育てる食育を国民運動として推進するため、食育基本法

(17年7月施行)に基づき、17年10月に食育推進会議(会長:内閣総理大臣)が内閣府に

設置され、18年3月31日に同会議で食育推進基本計画が決定された。

食育推進基本計画では、22年度までに、①食育に関心を持っている国民の割合を17年度

の70%から90%以上に増加、②生活習慣の形成途上にある子ども(小学生)で朝食を欠食

する者の割合を12年度の4%から0%にする、③学校給食における地場産物を使用する割

合を16年度の21%から30%以上に増加、④「食事バランスガイド」(17年6月・厚生労働

省、農林水産省決定)等を参考に食生活をおくる国民の割合を60%以上に増加、⑤市町村

等の関係者によって計画が作成され様々な主体による教育ファームの取組がなされている

市町村の割合を60%以上に増加、などの目標が掲げられた。

関東農政局では、この食育推進基本計画の実現に向けた各種取組を実施している。

① 農業体験、調理体験等の取組

関東農政局では、子どもを中心とした消費

者に農業や食への関心をもってもらうため

に、農林水産業、食品製造・加工・流通業や、

伝統・郷土料理をはじめとした地産地消の取

組についての現場見学や体験活動を実施して

いる。18年度は、「親子で小麦の収穫と熊谷

産地粉うどん打ち」(6月17日・埼玉県熊谷

市)、「酪農体験ファーム」(7月7日・埼玉

県伊奈町)、「冬休み親子寺子屋・親子で餅つ

き」(12月26日・茨城県水戸市)など、管内各

都県で農業体験等を延べ36回(参加者1,109人)実施した。

また、管内各都県における農業体験、調理体験等の受入可能団体の掘り起こしを行うと

ともに、そのリスト(管内60団体)をホームページへ掲載した。

鎌による小麦の収穫体験

第2部 関東食料・農業・農村の動向

第2部

第1部

第Ⅰ章

第Ⅱ章

第2部

第Ⅲ章

巻末参考

第1部

第Ⅱ章

第Ⅲ章

第1部

第2部

第Ⅰ章

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②② 「食生活指針」や「食事バランスガイド」の普及・活用の促進の取組

「食生活指針」(12年3月24日、文部省、厚生省、農

林水産省決定)を具体的な行動に結び付け、「食事バラ

ンスガイド」を誰もが親しみ、一人一人が食生活を見

直すきっかけとしてもらうための取組として、食品関

連事業者等を対象とする「関東地域「食事バランスガ

イド」食品事業者等説明会」(19年2月28日・埼玉県さ

いたま市)を開催した。

また、「食事バランスガイド」をより身近に感じても

らうため、茨城県、埼玉県、山梨県、長野県において

地元産食材や料理を使った「地域版食事バランスガイ

ド」を関係機関と連携しながら作成し、消費者等を対象とした各種イベント等において配

布、説明等を実施した。

管内各都県における「食事バランスガイド」の説明会等の開催は337回(参加者19,968

名)、各種イベント等への出展は174回(参加者128,842名)実施した。

③ 関係機関、NPO等との連携したシンポジウム等の開催

関東農政局では、「食を考える国民会議」との共催により、「子どもの食育をどう進め

るか」をテーマとした「食育フォーラム」(18年6月30日・埼玉県さいたま市)の開催を

はじめとして、管内各都県において食育推進のためのシンポジウム等を開催した。「食育

フォーラム」では、子どもの食育の進め方として、永く続けるための方法、伝えたいもの、

学校や教師への要望等についての意見交換がされた。

また、「(社)農山漁村文化協会」との共催により、優れた活動事例を報告する「食育

推進ボランティア活動発表会」(19年1月28日・埼玉県さいたま市)を開催した。

さらに、消費者の部屋等における「

食育月間」

の間、さいたま新都心合同庁舎1号館インフォメ

ーションセンター内において、自治体関係機関等

と連携し、「食事バランスガイド」の普及・活用、

さいたま食育推進ネットワーク参加者の活動等を

紹介したパネル展示やパンフレット配布等を行っ

た。(期間中来訪者約2,700名)

なお、各都県農政事務所の消費者コーナーにお

いて食事バランスガイド等の特別展示、各種イベ

ントを実施した。

④ 食育推進ネットワークの活動を進める取組

関東農政局では、食に関心のある方や食育を実践している方々相互間で取組内容等の情

報交換を行えるようにするため、15年12月に管内各都県ごとに「食育推進ネットワーク」

を立ち上げた。当ネットワークの参加者は、管内1都9県で1,018機関・団体等(19年3

「食育月間」特別展示

食事バランスガイドに関する

展示風景

食料自給率の向上と食料の安定供給第Ⅰ章第Ⅰ章

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月末現在)で(表Ⅰ-3-1)、学校、消費者団体、医療団体、食育ボランティア、NPO、

民間企業等と幅広いものになっている。

また、18年10月19日にさいたま新都心合同庁舎において「さいたま食育推進ネットワー

ク全体会」を開催した。全体会では、親子での農業体験、学校における食育についての取

組事例の発表や活動内容についての意見交換を実施した。この他、関東農政局ホームペー

ジの食育推進ネットワークコーナーやメールマガジン「食育ネット通信」等において、食

育推進ネットワークの活動内容等の紹介を行っている。

表表Ⅰ-3-1 管内各都県における「食育推進ネットワーク」の参加状況

都 県 名 ネットワークの名称 参加者数 参加者数

(発足時) (19年3月末現在)

茨 城 茨城食育推進ネットワーク 40 56

栃 木 食育ネットとちぎ 44 65

群 馬 群馬地域食育推進ネットワーク 35 46

埼 玉 さいたま食育推進ネットワーク 126 186

千 葉 関東地域(ちば)食育推進ネットワーク 29 40

東 京 東京食育推進ネットワーク 51 229

神 奈 川 神奈川食育推進ネットワーク 27 218

山 梨 食育推進ネットワークやまなし 43 47

長 野 食育情報リンクネットながの 26 46

静 岡 関東地域食育推進ネットワーク(静岡) 48 85

計 469 1,018

第2部 関東食料・農業・農村の動向

第2部

第1部

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第Ⅱ章

第2部

第Ⅲ章

巻末参考

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第Ⅱ章

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第2部

第Ⅰ章

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((2)地産地消の推進

① 全国段階の動き

地産地消は、地域の消費者ニーズを的確に捉えて生産を行おうとする取組と、地域で生

産された農産物を地域で消費しようとする取組の両面をもち、地産地消の取組を推進する

ことにより、消費者と生産者との「顔が見え、話ができる」関係の構築、国民全体で生産

と消費のかかわりや伝統的な食文化等の食や農についての認識を深める機会の提供、地域

の農業と関連産業の活性化等の効果が期待される。

地産地消の位置付けについては、①「食料・農業・農村基本計画」(17年3月閣議決定)

において、17年度に既に位置付けられ、18年度から、②食育基本法に基づき策定された「食

育推進基本計画」(18年3月内閣府決定)、③「21世紀新農政2006」(18年4月食料・農業

農村政策推進本部(内閣総理大臣本部長)決定)での位置付けが加わった。

このうち、「食料・農業・農村基本計画」において、地産地消は「地域の消費者ニーズ

に即応した農業生産と、生産された農産物を地域で消費しようとする活動を通じて、農業

者と消費者を結び付ける取組であり、これにより、消費者が、生産者と『顔が見え、話が

できる』関係で地域の農産物・食品を購入する機会を提供するとともに、地域の農業と関

連産業の活性化を図る。」と位置付けるとともに、その全国展開を積極的に推進すること

としている。また、「食育推進基本計画」では、学校給食における地場産物を使用する割

合を22年度までに30%以上とするという目標が掲げられるとともに、食育の促進に当たっ

② 関東農政局の取組

関東農政局では、「関東農政局新基本法農政推進本部」のもとに組織横断的な「地産地

消推進部会」を設け、以下のとおり管内の地産地消の推進に取り組んでいる。

ア 地産地消推進計画の策定促進のための取組

地域における地産地消の取組を運動として面的な取組とするために、地域における地産

地消の実践的な計画(以下「地産地消推進計画」という。)の策定を促進することが求め

られている。

この地産地消推進計画を策定し、地産地消の取組を行う地域を1つでも多く確保するこ

と、計画に基づく交流活動や地場産農産物の普及活動等を促すことが重要であるとの認識

から、関東農政局では、18年6月に地産地消推進計画の策定促進重点県として、埼玉県、

東京都、長野県を指定し意見交換を行うとともに、7月に管内全都県の地産地消の担当と

の意見交換の場を設けて、地産地消の推進状況の把握、地産地消推進計画の策定促進等へ

食料自給率の向上と食料の安定供給第Ⅰ章第Ⅰ章

て取り組むべき施策として地産地消を位置付けがされている。さらに、「21世紀新農政2006」

では、関係府省庁が一体となって、学校給食、観光とも連携し、地産地消を全国展開する

こととと位置付けがされている。このような政策的位置付けを背景として、農林水産省で

は、17年5月に学識経験者等で組織されている「地産地消推進検討会」を設け、毎年度の

「地産地消推進行動計画」の策定等、地産地消の推進方策に関する議論が行われている(地

産地消推進検討会の状況は、〔����://���.��.�. �/���/�������/������������/������/

�������������.����〕を参照)。

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の働き掛けを行った。

この結果、地産地消推進計画の策定は、19年3月末時点で150件(関係市町村数191市町

村)となっており、今後とも同計画の策定数が増えることにより、地産地消の取組が広が

ることが大いに期待される。

事事例:地産地消推進計画策定市町村等における地産地消の取組

直売所での生産者・消費者の交流と地場農産物の利用促進

「中北地域地産地消推進協議会」(山梨県中北地域)

1 山梨県の地産地消の推進体制

山梨県は平成15年8月に、地産地消を広く県民運動として推進するため、「食のやまな

し地産地消推進会議」を設置した。この会議は、行政、消費者、流通関係者、観光関係者、

教育関係者で構成され、①地域ごとに特色ある質の高い安全で安心な農畜産物の供給(地

場農産物の学校給食等への供給拡大や農産物直売所等での販売促進)、②農業への理解を

図るための生産者と消費者との交流、③地産地消への観光客の取り込みと、「やまなし型

地産地消」の推進を図っている。

同会議では、県下の中北、峡東、峡南、富士・東部に、4つの地産地消推進協議会を設

、地域ごとに地産地消を推進している。このうち、「中北地域地産地消推進協議会」は、

域(甲府市、韮崎市、南アルプス市、北杜市、ほ く と し

昭 和 町)を範囲として、地元農産物の販売や学校給食への提な か こ ま ぐ んしょうわちょう

生産者と消費者の交流

甲府市の笛吹川右岸に位置する中道地区でとうもろこしや

の野菜・果実の加工・販売を行っている「中道町農産物

直売組合」(組合員128名)では、直売所「風土記の丘農

産物直売所」を管理・運営し、14年以降、直売の他に年間3

回収穫体験等のイベント(6月「もろこしフェア」、8月「梨

まつり」、12月「収穫感謝祭」)を開催し、生産者と消費者の

交流を図っている。

収穫体験では、地元の生産者が指導を行うことで消

費者との交流が図られ、生産意欲の向上や直売所の販

売額も増加し、イベントによる効果が現れている。

イベント時に行っているアンケートでは、とうもろ

こし・梨以外の収穫体験や他の農作業体験(植え付け

等)の希望が多くあることから、今後は年間を通した

農作業体験イベントを計画し、ボラバイト(ボランテ

ィアとアルバイトを合わせた造語)による労働力の確

保も検討している。梨まつりでの収穫体験

第2部 関東食料・農業・農村の動向

第2部

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第Ⅰ章

第Ⅱ章

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巻末参考

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33 直売所等における地場農産物の利用促進

中央市では、直売所、農産物加工施設を中核施設とし、地場産物を提供するレストラン

等を整備して、地産地消を進めることとしている。

同市の西部に位置する田富地区は、県内でも有数のきゅうり、トマト等の施設栽培が

んに行われている地域である。

同地区の農家では地場産野菜の消費拡大を図ることを目的に、18年5月に中央市農産物

直売所「四季新鮮収穫広場 た・から」

30品目の新鮮な野菜や農家手作りの漬け物等を販売し、常に生産者と連絡を取り、商品の

品切れを防ぐ対策がとられている。また、肥料は市内の畜産農家から家畜排せつ物を回収

し、高品質たい肥製造施設(16年開設)において製造されたものを使った野菜生産を行い、

資源循環に取り組んでいる。

同直売所は開設以来、朝採りの新鮮野菜が消費者

の人気を呼び、来客は毎月1万人を超え、生産者と

消費者の交流拠点となり、地域の農産物についての

理解が深まっている。また、組合員からは「栽培方

法を工夫し、店頭の商品に切れ目が無いようにした

い」、「売れ行きが目に見えるので出荷することに張

り合いがある」など、生産意欲が向上し商品の配置

や展示方法を各自工夫するなど販売でも意欲的にな

り、組合員数も開設当初の100名から18年5月末現

在では150名に増加した。

今後は、組合員全員がエコファーマーの認定をとり、環境に配慮した安全でおいしい農

産物であることをPRして売上げ拡大を図りたいとしている。

学校給食における地産地消の取組

「(有)新しい村」(埼玉県宮代町)

1 取組のきっかけ

宮代町は、埼玉県の東北部に位置し、水稲を中心とし

た農業が行われている。山や海の自然がない同町にとっ

ての自然環境は水田や畑、農業用水路、農家の屋敷林な

ど、人の手によって作り出された「自然」であり、町の

面積の半分を占めている。そして、生態系、景観、災害、

地産地消、教育、福祉など多くのものにつながる「農地」

は、農家だけのものではなく、すべての町民に恩恵をもたらしている。こうした考えをも

とに、同町では、平成9年度に「農のあるまちづくり計画」を策定し、同町の中央に位置

する山崎地区に、10年から「新しい村」という名称の農業公園エリアを整備した。13年

9月に同エリア内に農産物直売所「森の市場 結」と、それを含む地域農業の拠点施設「新ゆい

しい村」(約13��の農業公園)が設立され、第3セクター「(有)新しい村」が管理運営を

行うこととなった。

直売所内の様子

食料自給率の向上と食料の安定供給第Ⅰ章第Ⅰ章

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、 食

の現場で要望のあった町内産野菜を学校給食用に供給

するすることとし、14年4月から宮代町立学校給食セ

ンター(町内すべての小中学校:小学校4校(1,658名)、

中学校3校(846名)へ毎日約2,600食の給食を配送)

に供給を開始した。出荷は「(有)新しい村」契約生産

者組合(組合員80名)で、約30名が学校給食に向けて

出荷をしている(30名は固定した生産者ではなく、季

節、品目によって、出荷が可能な生産者をその都度、

(有)新しい村が決めて供給している)。

22 取組内容

15年から毎年春と秋の2回、(有)

新しい村、宮代町(産業建設課、教

育委員会)、栄養士、全国農協食品

株式会社久喜事業所(給食センター

の運営受託。以下「全農食品(株)」

。)の4者で協議を行い、作

(有)新しい村から毎月供給可能

(株)が発注する。(有)新し

、発注に応じて調整を行い、

場 結」に出荷した野菜を一括して給食センターに納品しゆい

いる。

また(有)新しい村では、敷地内の「ほっつけ田」(水のたまりやすい低い土地で稲作を

行うために、掘りあげた土の上にある水田)を近隣の小学校の稲作体験に利用し、児童

の総合学習に役立てるとともに地域農業のPRにも努めている。

各学校でも、町内産野菜の使用について給食だよりや学校放送で知らせたり、栄養士

による栄養指導の時間等を使って児童、生徒に対する説明を行うなど、町内産の野菜や

地域農業への理解を深める取組を行っている。

3 課題及び解決方法

学校給食は、品目数、一定の数量・規格で安全な農産物を、安定的(場合によっては

急な注文変更あり)になるべく安い価格を求め、これら需要条件に対応できる地場産農

産物の供給体制を構築することが一般的な課題となっている。「(有)新しい村」では、こ

の課題について、次表のとおり対応している。

宮代町(有)新しい村

第2部 関東食料・農業・農村の動向

第2部

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法方決解題課

数量・ 学校給食用の野菜として、多品 年2回、(有)新しい村、宮代町、栄養士、全農食品品目に 目かつ一定の数量が求められる。 (株)の4者が打合せを行い、組合員に必要な品目

付作でルクイサ年半は員合組。るす供提を報情の等ていつ

計画を立て出荷調整を行うことで提供を可能にしている。

給食センターへ納入する数量が 「(有)新しい村」で確保できない分は、全農食品(株)

確保できない場合や、天候不順 が他から仕入れて不足分を調達している(あくまで等により予定していた数量が納 も地場産を優先している)。入できなくなることがある。

食数や品目の変更、追加等の急 「(有)新しい村」が各組合員と調整し、可能な範囲な要請がある。 で対応している。

品質・ 給食センターでの調理は、フー 各組合員に周知して、調理機械の規格に合うものを

規格に ドカッターなど機械化されてい 出荷してもらうようにした。また、どうしても規格ついて るため、野菜の大きさ・長さな が揃わない場合は、その都度話合いで可能な限り規

ど一定の規格が求められる。 格を緩和してもらっている。

納入する食材に安全性等の対応 町、「(有)新しい村」で農薬の使用状況をチェックを求められた。 し、県の認証を受けた特別栽培農産物や農薬を低減

した栽培による

野菜を優先して供給している。

価格に 市場価格等に基づき(有)新しい

ついて 村と全農食品(株)とで調整して、価格を設定しているため、特に課題はない。

4 取組の効果

(有)新しい村を通じた学校給食における町内産農産物

の供給は、15年度が28品目12トン、16年度が29品目13ト

ン、17年度が27品目15トンと、年々増加している。学校

給食で使用される野菜の品目数にして半数以上、重量ベ

ースで25%を超える量が町内産でまかなわれており、毎

日、何らかの形で給食に使用されている。

これまで自家用中心であった野菜生産が(有)新しい村

の設立を契機として、直売用、給食用へと拡大し、それ

が地元で認知、評価されることで生産者の生産意欲も向

上している。

年2回(春・秋)の(有)新しい村、宮代町、栄養士、全農食品(株)の打合せでは、

新しい品目導入の提案等も行われ、18年秋の打合せでは、新規品目として地元の淡水魚

ホンモロコが提案され、11月にから揚げ用として提供された。

学校給食用野菜の集荷場所

食料自給率の向上と食料の安定供給第Ⅰ章第Ⅰ章

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双方の相互理解を深め、学校給

食における地産地消をさらに推

進していくための交流の一環と

して、生産者による給食センタ

ーの見学、試食会が19年1月に実施され、20名(生

産者15名、職員5名)が参加し、「自分たちが作った

ものを、子ども達が食べていると思うとうれしい。や

る気が出た」等の感想が出された。

一方、朝取りの新鮮な旬の野菜を提供し、野菜の持

ち味を活かすよう給食センターでゆで時間の工夫など調理方法の見直し等を行ったとこ

ろ、一般に子供の野菜嫌いが指摘されるなか、子ども達は、好きな給食献立として「野菜

のおひたし」を挙げるようになった。また、給食だよりや学校放送等で町内産農産物の

使用を知らせていることから、子ども達に町内産農産物への理解が図られた。

55 今後の展開方向

学校給食の現場からは、「もっと多くの町内産農産物を使用したい、今後も町内産農産

物の使用を続けていきたい」との要望があるが、供給側である生産者の高齢化や後継者

(有)新しい村では、若い後継者や未参加の生産者

(有)新しい村でも学校給食向け野菜の生産等に取り

イ 地産地消推進計画策定主体の取組強化のためのネットワークの設置

関東農政局では、地産地消の推進について関係者間での情報共有や連携を図るために、

地産地消推進計画の策定主体への後方支援や、管内各地で意見交換や事例発表会を開催し

た。18年10月に立ち上げた「関東農政局管内の地産地消に関するネットワーク」では、地

産地消推進計画の策定主体から会員を募り、①農政局からの情報提供、②事例発表会等の

開催による会員相互間の情報交換を図っている(19年3月末時点の会員数:18団体。入会

申込みは、関東農政局地産地消ホームページ参照)。

会員への情報提供としては、会報を適時、発行して

いる。19年3月までに4回の発行を行い、「地産地消特

別対策」等、予算情報や地産地消推進検討会での検討

状況、各地の地産地消に関する取組事例の紹介など、

充実した内容の会報を出している。

ウ 地産地消の取組のための情報提供

学校給食試食会の様子

第2部 関東食料・農業・農村の動向

第2部

第1部

第Ⅰ章

第Ⅱ章

第2部

第Ⅲ章

巻末参考

第1部

第Ⅱ章

第Ⅲ章

第1部

第2部

第Ⅰ章

 農政局ホームページの「地産地消のページ」では、

統計調査結果や地産地消の取組事例などの情報提供

を行い、地産地消の取組の活性化や面的な取組の広

がりに役立ててもらうようにしている。

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同ページでは、①「学校給食における地産地消の取組事例」、②関東農政局の特定テー

マとして実施した「地産地消推進計画策定地域の取組事例」、③「地産地消に関する意識

・意向調査結果」(19年3月農林水産情報交流ネットワーク事業全国アンケート)等を掲

載している。

また、全国段階で地産地消の推進方策等を議論している地産地消推進検討会や管内各都

県の地産地消関係ホームページへリンクできるようになっている。

エエ 地産地消の推進のための事例発表会の開催

関東農政局では、19年3月7日に、関東地産地消ネットワークの活動の一環として、地

産地消に地域で取り組む市町村・農協等の担当者にご参集いただき、「関東地域地産地消

優良活動表彰及び事例発表会」を開催した。地産地消優良活動表彰状授与式では、4団体

が関東農政局長賞を受賞し、当団体から学校給食や道の駅等の直売活動による地産地消の

取組事例の発表、意見交換を行った。

事例発表

〔1〕「宇都宮市立城山西小学校」(栃木県宇都宮市)

安部裕子 教諭

「宇都宮市立城山西小学校」の学

校給食では、100%地元産の米をはじ

め、地元生産者から購入した農産物

や給食農園で児童や調理員が収穫し

た野菜などを食材に活用している。

また、餃子鍋、鮎ラーメンなどのオ

リジナルメニューも開発している。

さらに、地域農業への理解促進や生産者等との交流を図るため、田植えや稲刈り、さ

つまいも栽培などの農業体験、地元梨園での県立盲学校との交流学習、そば打ち、餅つもち

き、野菜販売等のイベント活動を行っている。

〔2〕「(有)あけとファーマーズマーケット」(埼玉県深谷市)

木村奇弘 代表取締役

深谷市の北東部に位置する明戸地区は、肥沃な沖積土が広

がり、ここで栽培されている深谷ねぎやきゅうりをはじめと

する野菜は味に定評があり、農家の自家消費以外は市場流通

となっていた。そこで、この地元産農産物を市内の消費者を

はじめ多くの方々に提供したいという地区内農業者からの要

望により、農業者出資の「(有)あけとファーマーズマーケッ

ト」で「あけと農産物直売所」を整備した。

当直売所で、地区で生産された安全安心で本物のおいしい農産物を消費者に提供する

ことにより、地産地消による食と農の理解促進が図られている。また、生産者の中から

直売専業農家が5戸誕生するなど地域農業の活性化にも大いに貢献している。

子ども達も春菊つみのお手伝い。その日の給食で「ごまあえ」に・・

食料自給率の向上と食料の安定供給第Ⅰ章第Ⅰ章

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〔33〕「 白州 道の駅利用組合」(山梨県北杜市、白州町)

植松一雄 組合長

「白州道の駅利用組合」は、店頭に地元産農産物を置くことをコンセプトに、一貫し

て地産地消に取り組み、白州地区に適した農産物を栽培出荷してPRしょうと、名水を

生かした「白州米」「椎茸」「ほうれんそう」「セリ」「りんご」「長いも」等を地区の特

産品として、販売を推進している。

組合設立から6年が経過し年々生産量・出品数が伸びるなか、冬場の農産物の供給不

足対策として新たな作物づくり(かき菜)へ試験的に取り組みつつあり、消費者に喜ば

れることが生産者の生産意欲の増進につながる良い相乗効果を上げている。

〔4〕「南アルプス特産品企業組合」(山梨県南アルプス市)

青柳和江 ほたるみ館 理事長

「南アルプス特産品企業組合」では、地元で生産される農産物を有効利用し、「新鮮」

「安心」「品質の良い」農産物や加工品を消費者に「安く」提供し、消費者との「交流」

を図ることを活動理念としている。

同組合が市から管理を受託している市施設の「アヤメの里活性化施設・ほたるみ館」

と「まちの駅くしがた」において、毎月第3土曜日の朝市をサービスデーとし、来場

者に地元野菜を豊富に使った料理レシピを配布するなどして、消費者と交流している。

14年11月には、近隣の小学

校の栄養士から、当組合が直

売する野菜を学校給食に使用

したいとの依頼を受け、学校

給食への供給を始めた。供給

に当たっては、生産者と栄養

士を結ぶ協議会がないため、

同組合事務局が生産者と学校

側との連絡・調整・取りまとめを行い、数量・価格(直売価格に搬入等の手数料とし

て10%を加える)の設定を行っている。また、小学生や学校栄養士などを対象に伝統

食、伝統行事(しめ縄づくり)指導やジャム・味噌の加工品づくりの体験指導を行っ

ている(18年度は7回実施…ほうとう作り1回、しめ縄作り1回、味噌造り5回)。

学校給食への年間供給量(供給回数・品目数)や供

給先の学校数は年々増加し、現在では保育所も含め計

6か所に季節野菜、梅漬け、ジャム、味噌、米、大豆

などの食材を納入している。学校では、子ども達に給

食時や給食便りを通じて、地元で作られている農産物

への理解や食べものの大切さを知ることにより、食べ

残しが減少し、生産者は、地域の子供のために生産す

ることが張り合いとなり、生産意欲の向上につながっ

ている。

地場農産物を使った給食メニュー

小学生のほうとう作り体験 学校給食への食材納入

第2部 関東食料・農業・農村の動向

第2部

第1部

第Ⅰ章

第Ⅱ章

第2部

第Ⅲ章

巻末参考

第1部

第Ⅱ章

第Ⅲ章

第1部

第2部

第Ⅰ章

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学校給食への供給量については、農業従事者の高齢化により、今以上の量的拡大は

見込めないので、今後は品目を絞り、安定供給・品質向上を図っていくこととしてい

る。また、生産者、学校、調理師等関係者が情報交換を行うための協議会の設立を考

えている(学校給食にかかる部分は、「地産地消推進計画策定市町村等における地産地

消の取組事例」の調査内容を追記)。

③ 各都県での地産地消の取組

ア 都県地産地消推進計画について

管内各都県での都県地産地消推進計画の策定状況は、17年度6県(茨城県、栃木県、群

馬県、埼玉県、神奈川県、山梨県)、18年度3都県(千葉県、東京都、静岡県)、19年度

見込み1県(長野県)となっている。

イ 地域での積極的な取組

地産地消の推進については、各都県で取組を開始した年度に多少の差はあるものの、積

極的な取組が行われている。特に首都圏地域での農業振興という1つの柱として位置付け

ているところも多い。

また、

① 県独自での地産地消の優良事例の収集(栃木、群馬、埼玉、山梨、長野)

② 地産地消の印刷物の作成(茨城、埼玉、千葉、神奈川、山梨、長野)

③ 地産地消に関するレシピ集の発行(茨城、埼玉、千葉、神奈川、山梨、長野)

④ 地場産農産物を食す機会を増やすため「地産地消の日」等を設定(茨城、栃木、山梨)

⑤ 地場農産物の活用、または販売する協力店舗等の募集

(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川、静岡)

⑥ 地産地消フォーラム等のイベントを開催

(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川、山梨、長野、静岡)

⑦ 地産地消のアドバイザー等の人材を育成(茨城、山梨)

等の様々な取組が行われている。

食料自給率の向上と食料の安定供給第Ⅰ章第Ⅰ章

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(33)食品産業等をめぐる動向

① 食品産業・卸売市場の動向

ア 食品産業の概況

管内の食品産業の全国シェアは、食品製造業(出荷額)が36.9%、飲食料品卸売業

(販売額)が43.3% 、飲食料品小売業(販売額)が37.9%といずれも高い。

食品製造業・食品流通業・外食産業からなる食品産業は、食料の加工、流通、外食等の

サービスを提供し、食料の安定供給や食生活の多様化・高度化を支えるという点で、農水

産物の加工・流通・消費に至る一連の食品供給の流れ(フードシステム)のなかで、生産

部門である農水産業と並んで重要な役割を担っている。

管内の食品産業は、全国に占める食品製造業の出荷額の割合が36.9%、飲食料品卸売業、

飲食料品小売業の販売額の割合がそれぞれ43.3%、37.9%を占めるなど全国のなかで大き

な地位を占めている。

また、管内の全製造業に占める食品製造業の出荷額の割合は11.7%で約12兆円、同様に

飲食料品卸売業(農畜産物、水産物卸売業を含む)の販売額の割合は17.9%で約37兆円、

30.7%で約16兆円となっている(表Ⅰ-3-2)。

表Ⅰ-3-2 管内の食品産業の概況

(単位:10億円)

全 国 管 内(A) (B) シェア(%)

(B)/(A)食 品 製 造 業 出 荷 額 33,428 ( 11.8) 12,349 ( 11.7) 36.9全 製 造 業 出 荷 額 284,418 (100.0) 105,804 (100.0) 37.2飲食料品卸売業販売額 86,389 ( 21.3) 37,388 ( 17.9) 43.3全 卸 売 業 販 売 額 405,497 (100.0) 208,518 (100.0) 51.4飲食料品小売業販売額 41,334 ( 31.0) 15,669 ( 30.7) 37.9全 小 売 業 販 売 額 133,278 (100.0) 51,098 (100.0) 38.3資料:食品製造業出荷額は経済産業省「工業統計表」(平成16年)。飲食料品卸売業販売額及び

飲食料品小売業販売額は、経済産業省Ā商業統計表ā(平成16年)。

注:1)食品製造業=食料品製造業+飲料・たばこ・飼料製造業

2)製造業は従業者4人以上の事業所

第2部 関東食料・農業・農村の動向

第2部

第1部

第Ⅰ章

第Ⅱ章

第2部

第Ⅲ章

巻末参考

第1部

第Ⅱ章

第Ⅲ章

第1部

第2部

第Ⅰ章

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イイ 業種別動向

(ア)食品製造業

管内の食品製造業は、事業所数が約1万か所、従業者数が約37万人、

出荷額が約12兆円

管内における16年の食品製造業は、事業所数が約1万か所、従業者数が約37万人、出荷

額が約12兆円となっている。また、都県別の出荷額は、静岡県、神奈川県、茨城県の順と

なっている(表Ⅰ-3-3)。

近年、管内の事業所数は減少傾向にあり、11年と比較して16年は約15%減少し、従業者

数でも約3%減少している(表Ⅰ-3-4)。

表Ⅰ-3-3 管内の食品製造業の概況(平成16年)

事業所数 従業者数(人) 製造品出荷額等(10億円)

茨 城 県 1,016 40,797 1,555栃 木 県 581 21,015 1,106群 馬 県 659 24,966 999埼 玉 県 1,100 59,807 1,412千 葉 県 1,234 47,671 1,518東 京 都 1,197 37,163 961神奈川県 944 50,508 1,819山 梨 県 305 9,898 240長 野 県 920 25,573 661静 岡 県 2,174 54,936 2,073管 内 10,130 372,334 12,349全 国 38,600 1,213,043 33,428資料:経済産業省「工業統計表」(平成16年)注:1)食品製造業=食料品製造業+飲料・たばこ・飼料製造業

2)製造業は従業者4人以上の事業所3)ラウンドにより計と内訳が一致しない場合がある。

表Ⅰ-3-4 管内食品製造業の推移(平成11年、16年)

11年 16年 対11年増減(▲)率(%)

事業所数 管 内 11,979 10,130 ▲15.4全 国 44,867 38,600 ▲14.0

従業者数(千人) 管 内 385 372 ▲ 3.4全 国 1,248 1,213 ▲ 2.8

製造品出荷額等 管 内 12,469 12,349 ▲ 1.0(10億円) 全 国 35,060 33,428 ▲ 4.7資料:経済産業省「工業統計表」(平成11年、16年)

注:1)食品製造業=食料品製造業+飲料・たばこ・飼料製造業2)製造業は従業者4人以上の事業所

食料自給率の向上と食料の安定供給第Ⅰ章第Ⅰ章

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(イ)飲食料品卸売業

管内における16年の飲食料品卸売業は、事業所数が約2万8千か所、従業者数は約31万

人、商品販売額は約37兆円となっている。また、都県別の商品販売額は、東京都、神奈川

県、埼玉県の順となっている(表Ⅰ-3-5)。

近年、管内の事業所数は減少傾向にあり、11年と比較して16年は約11%減少し、商品販

売額でも約4%減少している(表Ⅰ-3-6)。

表Ⅰ-3-5 管内の飲食料品卸売業の概況(平成16年)

事業所数 従業者数(人) 商品販売額(10億円)

茨 城 県 1,800 16,233 1,183栃 木 県 1,288 12,206 940群 馬 県 1,181 11,809 1,024埼 玉 県 2,564 27,689 2,143千 葉 県 2,741 28,091 2,067東 京 都 9,987 131,378 23,353神奈川県 3,338 36,043 2,874山 梨 県 646 5,761 373長 野 県 1,374 13,242 1,332静 岡 県 3,032 28,561 2,095管 内 27,951 311,013 37,388全 国 84,539 887,159 86,389資料:経済産業省Ā商業統計表ā(平成16年)

注:ラウンドにより計と内訳が一致しない場合がある。

表Ⅰ-3-6 管内飲食料品卸売業の推移(平成11年、16年)

11年 16年 対11年増減(▲)率(%)

事業所数 管 内 31,252 27,951 ▲10.6全 国 94,376 84,539 ▲10.4

従業者数(千人) 管 内 351 311 ▲11.4全 国 1,020 887 ▲13.0

商品販売額 管 内 38,963 37,388 ▲ 4.0(10億円) 全 国 99,732 86,389 ▲13.4資料:経済産業省Ā商業統計表ā(平成11年、16年)

第2部 関東食料・農業・農村の動向

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管内の飲食料品卸売業は、事業所数が約2万8千か所、従業者数が約31万人、

商品販売額が約37兆円

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((ウ)飲食料品小売業

管内の飲食料品小売業は、事業所数が約14万6千か所、従業者数は約118万人、

商品販売額は約16兆円

管内における16年の飲食料品小売業は、事業所数が約14万6千か所、従業者数は約118

万人、商品販売額は約16兆円となっている。また、都県別の商品販売額は、東京都、神奈

川県、埼玉県の順となっている(表Ⅰ-3-7)。

近年、管内の事業所数は減少傾向にあり、11年と比較して16年は約9%減少し、商品販

売額でも約6%減少している(表Ⅰ-3-8)。

表Ⅰ-3-7 管内の飲食料品小売業の概況(平成16年)

事業所数 従業者数(人) 商品販売額(10億円)

茨 城 県 10,281 73,269 907栃 木 県 7,292 48,201 635群 馬 県 8,345 52,235 636埼 玉 県 17,204 155,971 1,954千 葉 県 15,809 140,829 1,772東 京 都 39,728 331,548 4,576神奈川県 22,281 212,395 2,837山 梨 県 3,644 21,866 295長 野 県 7,509 49,901 730静 岡 県 14,345 98,292 1,322管 内 146,438 1,184,507 15,669全 国 444,596 3,151,037 41,334資料:経済産業省Ā商業統計表ā(平成16年)

注:ラウンドにより計と内訳が一致しない場合がある。

表Ⅰ-3-8 管内飲食料品小売業の推移(平成11年、16年)

11年 16年 対11年増減(▲)率(%)

事業所数 管 内 160,129 146,438 ▲ 8.5全 国 488,304 444,596 ▲ 9.0

従業者数(千人) 管 内 1,179 1,184 0.4全 国 3,114 3,151 1.2

商品販売額 管 内 16,657 15,669 ▲ 5.9(10億円) 全 国 43,687 41,334 ▲ 5.4資料:経済産業省Ā商業統計表ā(平成11年、16年)

食料自給率の向上と食料の安定供給第Ⅰ章第Ⅰ章

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(エ)一一般飲食店

管内の一般飲食店は数は約15万6千店、従業者数は約119万人

管内における16年の一般飲食店数は約15万6千店、従業者数は約119万人となっている。

また、都県別飲食店数は、東京都、神奈川県、埼玉県の順となっている(表Ⅰ-3-9)。

近年、飲食店数は減少傾向にあり、11年と比較して16年は約5%減少する一方、従業者

数は約1%増加となっている(表Ⅰ-3-10)。

表Ⅰ-3-9 管内の一般飲食店の概況(平成16年)

店数 従業者数(人)茨 城 県 8,533 56,010栃 木 県 7,024 41,248群 馬 県 6,627 39,886埼 玉 県 17,045 133,831千 葉 県 15,047 116,715東 京 都 56,443 473,313神奈川県 22,094 196,007山 梨 県 3,593 19,392長 野 県 7,133 38,826静 岡 県 12,152 74,478管 内 155,691 1,189,706全 国 419,663 2,777,305資料:総務省「事業所・企業統計調査」(平成16年)

注:一般飲食店は、食堂・レストラン、そば・うどん店、すし

店、喫茶店、ハンバーガー店等の一般飲食店

表Ⅰ-3-10 管内一般飲食店の推移(平成11年、16年)

11年 16年 対11年増減(▲)率(%)

飲食店数 管 内 163,119 155,691 ▲ 4.6全 国 443,216 419,663 ▲ 5.3

従業者数(千人) 管 内 1,176 1,190 1.2全 国 2,751 2,777 0.9

資料:総務省「事業所・企業統計調査」(平成11年、16年)

注:一般飲食店は、食堂・レストラン、そば・うどん店、すし店、喫茶店、ハンバーガ

ー店等の一般飲食店

第2部 関東食料・農業・農村の動向

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((オ)食品産業の組織化

食品産業は大部分が中小企業で、規模の小ささ、技術力の低さ、信用力の弱さ等により

取引面や資金の調達等において不利な場合が多いことから、相互扶助の精神に基づき、組

織化して共同事業に取り組むことが諸問題の解決策の一つとなっている。

中小企業者の組織化を図る手段として、「中小企業等協同組合法」や「中小企業団体の

組織に関する法律」があり、関東農政局では事業協同組合等の設立認可、運営指導を行っ

ている。

19年3月末現在、関東農政局認可の事業協同組合等の数は、376組合となっている(表

Ⅰ-3-11)。

表Ⅰ-3-11 関東農政局認可事業協同組合等の概況(平成19年3月末現在)

事業協 商 工

− −

協 業 合 計 内 訳

同組合 組 合 組 合

食料・飲料11、飲食店14、

その他23

合 計 369 6 1 376

資料:関東農政局調べ

注:「事業協同組合」とは中小企業の経営の合理化と取引条件の改善等を図るために設立される組合

であり、「商工組合」は業界全体の発展を図ることを目的とするもの、「協業組合」は参加す

る中小企業の事業を統合することを目的として設立される組合である。

ウ 卸売市場の概要

卸売市場数は全国の2割、その取扱高は同4割を占める。

管内は首都圏を中心とする大消費地をかかえ、我が国の総人口の38%が集中しており、

食のマーケットとしてきわめて大きな地位を占めている。このようななかで、生鮮食料品

等の流通拠点を担う卸売市場数は、中央卸売市場24市場(市場数の全国比29% 、平成18年

4月1日現在)、地方卸売市場312市場(同24%、17年4月1日現在)、政令規模未満の卸

売市場84市場(同12%、17年4月1日現在)である(表Ⅰ-3-12)。

16年度における管内卸売市場の全国に占める取扱金額の割合は、中央及び地方卸売市場

とも、4割と価格形成上重要な地位にあり、特に中央卸売市場の食肉及び花きについては、

56%、65%と、ともに過半数を占めている(表Ⅰ-3-13)。

食料自給率の向上と食料の安定供給第Ⅰ章第Ⅰ章

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表Ⅰ-3-12 卸 売 市 場 の 種 類 と 設 置 数

資料:農林水産省「地方卸売市場実態調査」注:1)管内の市場数については、中央卸売市場数は18年4月1日現在、

地方卸売市場数及び政令規模未満の卸売市場数は17年4月1日現在。2)政令規模未満の卸売市場は、卸売市場法施行令第2条各号に掲げる卸売場面積(青果物:330㎡、水産物200㎡、肉類:150㎡、花き:200㎡)未満の市場である。

表Ⅰ-3-13 卸売市場の取扱実績(平成16年度)

(単位:億円、%)

青 果 水産物 食 肉 花 き 合 計管内 8,114 8,463 1,383 1,014 18,974

中 央 全国 21,800 22,735 2,477 1,553 48,565比率 37.2 37.2 55.8 65.2 39.1管内 6,563 2,816 562 853 10,794

地 方 全国 14,775 8,862 1,409 3,027 28,072比率 44.4 31.8 39.9 28.3 38.5管内 46 28 0 43 117

その他 全国 283 127 55 197 663比率 16.2 22.0 0 21.3 17.9管内 14,723 11,307 1,945 1,910 29,885

合 計 全国 36,858 31,724 3,941 4,777 77,300比率 39.9 35.6 49.4 40.0 38.7

資料:農林水産省「卸売市場データ集」及び「地方卸売市場実態調査」

注:1)中央は中央卸売市場、地方は地方卸売市場、その他は政令規模未満の

卸売市場である。

2)水産物については産地市場を除く。

第2部 関東食料・農業・農村の動向

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②② 食品産業・卸売市場流通の課題と行政の取組

ア 食品産業の振興と農業との連携強化

(ア)食品製造業におけるHACCPシステム、ISO9001等の導入

食品衛生法の一部改正(7年)により、食品の製造または加工においてHACCP(注1)

の衛生管理手法を行っていることを承認要件とした「総合衛生管理製造過程承認制度」が

創設され、乳、乳製品、食肉製品、容器包装詰加圧加熱殺菌食品(缶詰・レトルト食品)、

魚肉練り製品及び清涼飲料水が対象品目として同法施行令に定められている。

また、HACCPシステムの導入を推進するため、「食品の製造過程の管理の高度化に関する

臨時措置法」(HACCP手法支援法)を10年に制定(15年に法律を改正して5年間延長)し、

製造施設の整備等に対する金融や税制上の優遇措置が講じられており、HACCP手法支援法

に基づき高度化計画の認定を受けている事業所数(金融・税制上の優遇措置の対象事業所)

は、19年3月末現在、全国で21業種250事業所、うち関東管内では18業種98事業所となっ

ている。

品質の保証・向上や環境への負荷軽減を実践するうえでĂISO9001やISO14001(注2)を

取得する企業が増加しており、全国における19年3月末の取得件数は、ISO9001が1,500件

(前年比105%)、ISO14001が659件(前年比109%)となっている。このうち管内の取得件

数は、それぞれ551件(前年比106%)、276件(前年比108%)となっている(注3)。

(注1)「HACCP」H����� A������� ��� C������� C������ P����の略。食品安全上重要な危害要因(有害な微

生物や化学物質等)を同定し、評価し、制御するシステム。HA(危害分析)とは、食品安全上重要な危害要因・条件についての情報を収集・評価する過程を指し、CCP(重要管理点)とは、危害要因を除去または許容レベルまで低減するのに管理可能かつ不可欠なポイントを指す。HACCPは、最終製品検査を主に頼るよりはむしろ危害要因の混入を防ぐことに重点を置いている。

HACCPは、米国航空宇宙局(NASA)における宇宙食の製造に当たって食品の安全性を高度に保証する衛生管理手法として開発され、食品の安全性を確保する上で最も効果的かつ効率的な手法であるとして高く評価され、欧米諸国においては、早くから食品業界に導入されている。

(注2)「ISO9001」ISO(I������������ O���������� �� S��������������:国際標準化機構)が、企業などの

組織が顧客や社会などが求めている品質を備えた製品やサービスを常に届けるための仕組み、品質マネジメントシステムの要求事項を規定したもの。また、ISO14001とは、企業活動、製品

及びサービスの環境負荷の低減といった環境パフォーマンスの改善を継続的に実施するシステムを構築するために要求される規格。

(注3)ISO9001及びISO14001の取得件数は、(財)日本適合性認定協会調べによる。

(イ)流通・小売業の効率化

産地の大型化、物流・情報技術の急速な進展、小売業態の多様化等のなかで食品流通機

構の一層の合理化・高度化を図る観点から、流通の各段階において、電子取引等の推進、

最適な集出荷・流通システムや、卸売市場を軸とする情報ネットワーク化とそれを活用し

た戦略的物流(ロジスティクス)の構築等の一層の推進が重要な課題となっている。一方、

飲食料品小売業においては、「大規模小売店舗における小売業の事業活動の調整に関する

法律」(大店法)の廃止による規制緩和、経営者の高齢化・後継者不足等により生鮮食品

食料自給率の向上と食料の安定供給第Ⅰ章第Ⅰ章

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等の専門店が減少傾向にあるなかで、専門店の特色を活かした地域商店街の活性化を図る

観点から、食品販売の仕入れシステムの高度化、施設整備による店舗の近代化、業種横断

的な連携の推進、消費者サービスの充実等に積極的に取り組むことが緊急な課題となって

いる。

これら課題の対応策の1つとして、食品販売業者等において、保管・販売施設等の整備

を行うとともに、販売段階で的確・迅速に消費者ニーズを把握して生産段階へ提供し、消

費者ニーズに対応した食品の生産及び販売等を図ることが必要となっている。関東農政局

では、食品にかかる流通機構の合理化と流通機能の高度化を図ることを目的とした「食品

流通構造改善促進法」に基づき、食品販売業者等が策定した保管・販売施設等の整備に関

する食品構造改善計画の認定を行った(18年度9件(計画の変更認定を含む。))。認定さ

れた食品販売業者等は、同計画の認定を要件とする農林漁業金融公庫からの資金の貸付け、

及び(財)食品流通構造改善促進機構を通じたリース方式による機材の導入支援を受けて、

計画施設等の整備をすることとしている。

((ウ)食品産業の活性化

中小企業対策の一環として、所管事業協同組合等の活性化を図るため、2年に設立した

「関東農政局所管事業協同組合等連絡協議会」を中心に情報交換会、講演会、生産地並び

に食品工場等への現地研修会を実施した。

イ 食品産業における環境対策の推進

社会全体の環境問題として、産業公害の大気汚染(自動車等から排出されるNO�(窒素

酸化物)汚染を含む。)、水質汚濁等に加え、近年、二酸化炭素の排出量増加に伴う地球温

暖化問題、発生源が産業のほか都市・生活関係もあり環境等への負荷が大きい廃棄物問題

がある。

このうち、食品産業にかかる環境問題の例としては、食品製造・流通過程で大量に発生

している容器包装廃棄物や食品廃棄物の問題がある。

これら環境問題のうち、廃棄物問題の対応策として、11年9月にダイオキシン対策関係

閣僚会議において、「廃棄物減量化目標」が決定され、さらに、12年6月には、廃棄物リ

サイクルの基本法である循環型社会形成推進基本法が、また、食品廃棄物にかかわる法律

として「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」(食品リサイクル法)が制定さ

れた。

このような背景のもとに、食品産業にかかわる容器包装廃棄物及び食品廃棄物の減量化、

再資源化への取組が喫緊の課題となっている。

(ア)容器包装廃棄物及び食品残さのリサイクル

21世紀に向けた循環型経済社会システムを構築していくため、容器包装及び食品残さ

のリサイクルを推進

容器包装廃棄物の減量化と再資源化を促進するために、平成7年6月に「容器包装に係

る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」(容器包装リサイクル法)が制定され、

第2部 関東食料・農業・農村の動向

第2部

第1部

第Ⅰ章

第Ⅱ章

第2部

第Ⅲ章

巻末参考

第1部

第Ⅱ章

第Ⅲ章

第1部

第2部

第Ⅰ章

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12年4月から完全施行されている。18年6月には同法の一部改正がなされ、事業者に対す

る排出抑制を促進するための措置(一定量以上の容器包装を利用する事業者に対し、取組

状況の報告を義務付ける等)の導入、分別基準適合物の質的向上等を促進するために事業

者が市町村に資金を拠出する仕組みの創設、再商品化義務を履行しない事業者(いわゆる

「ただ乗り事業者」)に対する罰則の強化等が盛り込まれた。

一方、法により事業者が再商品化義務を負うこととされている容器包装廃棄物の管内に

おける再商品化の状況については、ペットボトルとプラスチック製容器包装の再商品化量

の伸びが顕著である。特にプラスチック製容器包装は対象品目となった12年度の20,511ト

ンから17年度には214,286トンと10.4倍に増加している。紙製容器包装は分別収集量及び

再商品化量ともに低調な状況にあり、全国的にも低い数値で推移している(表Ⅰ-3-14)。

このような状況のもと、関東農政局においては、再商品化義務を負う事業者への啓発指

導を行う、「容器包装廃棄物リサイクルシステム点検指導事業」を実施している。さらに、

再商品化義務を履行しない事業者への対策を強化するため、点検指導事業で把握した義務

不履行の事業者に対して、報告徴収等の実施や法的措置への移行を踏まえた文書による履

行要請を行っている。

表Ⅰ-3-14 分別収集及び再商品化の実施状況 (単位:t)

資料:環境省「市町村分別収集状況調査」

このほか、12年6月には食品の製造過程等において大量に発生している食品廃棄物につ

いて、その発生の抑制と減量化を促進するとともに、飼料や肥料等として再生利用するこ

とを目的とした「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」(食品リサイクル法)

が制定された。同法では、食品循環資源の再生利用等の推進に当たって中心的な役割を担

う食品関連事業者が、国が定める再生利用等の具体的な基準にしたがって再生利用等の実

施に取り組むこととされており、18年度までに食品循環資源の再生利用等の実施率を20%

に向上させることを目標としている。

関東農政局においては、同法の適正な運用に資するため、行政機関・食品関連事業者等

を対象とした各都県食品産業協議会主催の環境セミナーに参加し、制度の普及・啓発に努

めるとともに、栃木県宇都宮市、千葉県佐倉市等においてバイオマス利活用整備交付金事

354,174 344,102 51,726 50,280 13,549 7,289 32,036 20,511348,040 340,956 66,557 65,430 16,595 12,379 75,844 66,301338,999 333,670 77,721 76,365 17,026 15,141 102,815 91,691337,785 332,193 85,500 84,248 22,716 20,534 159,247 151,288329,016 323,087 95,943 94,826 15,676 12,472 176,464 170,064325,467 320,225 103,775 103,053 9,450 7,500 222,766 214,286829,476 779,647 124,873 117,877 34,537 26,310 100,810 77,568829,631 791,193 161,651 155,837 49,723 44,675 197,273 180,306816,773 787,984 188,194 183,427 57,977 54,145 282,561 268,640831,845 799,935 211,753 204,993 76,878 69,508 401,697 384,865814,009 783,672 238,469 231,377 69,197 59,668 471,488 455,487809,655 776,529 251,962 244,026 71,012 63,031 558,997 538,123

食料自給率の向上と食料の安定供給第Ⅰ章第Ⅰ章

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業を実施し、食品リサイクル施設の整備を行った。

((イ)関東農林関連企業環境対策協議会

環境行政情報発信基地として活動が盛ん

関東農政局では、昭和48年に管内の農林関連企業を中心とした協議会を設立し、年に数

回、環境保全・廃棄物対策等について、公害防止管理者に対するフォローアップを含め協

議会会員等を対象に現地研修会、セミナー等を開催し、機関誌「協議会だより」を通じて

容器包装リサイクル法、食品リサイクル法や産業廃棄物管理票(マニフェスト)制度等に

ついての普及・啓発を行っている。

ウ 卸売市場流通の課題

(ア)卸売市場の整備

新たな基本方針等に基づき、再編整備を実施

卸売市場法は卸売市場の計画的整備を促進し、生鮮食料品等の取引の適正化とその生産

流通の円滑化を図ることを目的とし、農林水産大臣はおおむね5年ごとに「食料・農業

農村政策審議会」へ諮問の上、「卸売市場整備基本方針」及び「中央卸売市場整備計画」

(以下、「国の基本方針・整備計画」という。)を公表することとされている。また、都

道府県は国の基本方針・整備計画に即し、「都県卸売市場整備計画」を定めることができ

ることとしている。そして、中央卸売市場は、農林水産大臣の認可を受けて一定要件の地

方公共団体等が、地方卸売市場は、都道府県知事の許可を受けて開設申請者が開設するこ

ができることとしている。

卸売市場の配置については、生鮮食料品等の流通の広域化、情報化の進展状況、今後の

都市人口の動向、消費の質的・輸送条件の変化等を踏まえて、卸売市場の再編を進め、卸

売市場がこれまで以上に生産・消費両サイドの期待に応えられる「安心・安全」、「効率

的」な流通システムとして評価されるようになる必要がある。

そこで「食料・農業・農村政策審議会」が答申した「第8次卸売市場整備基本方針」(平

成16年10月公表)及び「第8次中央卸売市場整備計画」(平成17年3月公表)において、

新たに卸売市場の配置目標として「中央卸売市場再編基準」(注)が設けられた。

関東農政局管内では、再編基準の4指標のうち3以上の指標に該当した「藤沢市中央卸

売市場」について、19年4月に地方卸売市場へ転換を図ることとされた。また、18年3月

29日付けで既に3以上の指標に該当していた「川崎市中央卸売市場南部市場」が市で再編

措置について検討した結果、19年4月に地方卸売市場へ転換を図ることとして、国の整備

計画が変更された。

管内都県においても「第8次卸売市場整備基本方針」及び「第8次中央卸売市場整備計

画」に即して、「第8次都県卸売市場整備計画」を策定することとしており、17年度にお

いては、山梨県を除く都県で策定され、集荷力の低下傾向を踏まえ、地方卸売市場のうち

第2部 関東食料・農業・農村の動向

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地域における生鮮食料品流通の核となる地域拠点市場を必要に応じて新たに定めることと

し、47市場が定められた。

(イ)卸売市場流通の課題

生産・消費両サイドの期待にこたえる卸売市場の実現が求められている。

卸売市場は、食品の安定的な供給や価格形成等の機能を有し、鮮度を重視する我が国の

食文化や生活様式に適合した流通システムとして、生鮮食料品等の流通について基幹的な

役割を果たしてきている。

しかしながら、近年において、輸入農産物の増加や、産地と大口需要者との直接取引等

流通経路の多元化等により市場経由率が低下し続けており、卸売業者、仲卸業者の取扱金

額が減少し、業者の経営悪化等の事態が発生している。

また、卸売市場についてはĂ流通の広域化、情報技術の進展の成果を踏まえ、流通の効

率化を図り、消費者の食の安全・安心に対する関心が高まるなかで、コールドチェーン(流

通過程で低温を保つ物流方式)を確立し、品質管理の徹底を推進する必要がある。

さらに、卸売業者、仲卸業者の経営悪化に対応して、16年改正卸売市場法では卸売市場

における買付けの自由化、第三者販売・直荷引きの弾力化、市場外での販売行為の弾力化

等の取引規制の緩和措置が講じられたところであり、こうした措置に合わせ、情報技術を

活用した卸売市場における取引や物流の効率化を推進して行く必要がある。

こうしたことを踏まえĂ

①卸売市場における品質管理の高度化等の機能強化

②既設の中核的な中央卸売市場の再整備

③地方卸売市場における集荷力の強化を図るための市場相互の連携した集荷販売活動の促

④卸売市場の取引における情報技術の活用の促進

を基本として整備及び運営を行うものとしている。

食料自給率の向上と食料の安定供給第Ⅰ章第Ⅰ章

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管内の卸売市場においては、「第8次中央卸売市場整備計画」において、19の中央卸売

市場が、売り場施設、貯蔵・保管施設等の施設の改良、造成または取得を図る必要がある

と認められる市場として定められており、今後、整備が予定されている。また、地方卸売

市場においても「第8次都県卸売市場整備計画」に基づき整備が図られており、18年度に

おいては、国の「強い農業づくり交付金(卸売市場施設整備対策)」を活用し、協同組合

前橋食料品総合卸売市場青果部に低温卸売場を整備し、軟弱野菜等を中心とした生鮮食料

品の劣化防止・鮮度保持による低温保管機能の強化を図った。

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