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- 95 - 豊かで住みよい農村の振興 農村地域の現状 農村地域では混住化が進展 東北には約1万8千の農業集落数があり、混住化が5割を超える集落が、都市的地域 では88%、他の地域でも50%前後に達している(表Ⅲ-1、図Ⅲ-1)。 生活環境施設のうち農業集落排水事業の実施数は平成9年度をピークに減少している が、新規地区の累計は20年度には975地区となっている(図Ⅲ-2)。 表Ⅲ-1 農業集落数(平成17年) 資料:農林水産省「農林業センサス」 図Ⅲ-1 混住化率別農業集落数割合(平成17年・東北) 資料:農林水産省「農林業センサス」 区分 青 森 県 岩 手 県 宮 城 県 秋 田 県 山 形 県 福 島 県 平成17年 139,465 17,629 1,759 3,615 2,647 2,745 2,711 4,152 構成率(%) 100.0 10.0 20.5 15.0 15.6 15.4 23.6 20.1 27.2 23.4 19.8 24.7 21.7 26.3 9.9 21.4 19.3 24.9 12.8 20.4 17.5 15.6 17.4 17.3 11.9 9.2 56.5 20.2 0.3 0.6 1.3 1.3 0.9 3.0 23.0 19.0 13.0 0% 20% 40% 60% 80% 100% 山間農業地域 中間農業地域 平地農業地域 都市的地域 混住化なし 1~2割 3~4割 5~6割 7~8割 9割以上 豊かで住みよい農村の振興

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Page 1: Ⅲ 豊かで住みよい農村の振興 - maff.go.jp...-95-Ⅲ 豊かで住みよい農村の振興 1 農村地域の現状 農村地域では混住化が進展 東北には約1万8千の農業集落数があり、混住化が5割を超える集落が、都市的地域

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Ⅲ 豊かで住みよい農村の振興1 農村地域の現状農村地域では混住化が進展

東北には約1万8千の農業集落数があり、混住化が5割を超える集落が、都市的地域

では88%、他の地域でも50%前後に達している(表Ⅲ-1、図Ⅲ-1)。

生活環境施設のうち農業集落排水事業の実施数は平成9年度をピークに減少している

が、新規地区の累計は20年度には975地区となっている(図Ⅲ-2)。

表Ⅲ-1

農業集落数(平成17年)

資料:農林水産省「農林業センサス」

図Ⅲ-1

混住化率別農業集落数割合(平成17年・東北)

資料:農林水産省「農林業センサス」

区分 全 国 東 北 青 森 県 岩 手 県 宮 城 県 秋 田 県 山 形 県 福 島 県

平成17年 139,465 17,629 1,759 3,615 2,647 2,745 2,711 4,152

構成率(%) 100.0 10.0 20.5 15.0 15.6 15.4 23.6

20.1

27.2

23.4

19.8

24.7

21.7

26.3

9.9

21.4

19.3

24.9

12.8

20.4

17.5

15.6

17.4

17.3

11.9

9.2

56.5

20.2

0.3

0.6

1.3

1.3

0.9

3.0

23.0 19.0

13.0

0% 20% 40% 60% 80% 100%

 山間農業地域

 中間農業地域

 平地農業地域

 都市的地域

東    北

混住化なし 1~2割 3~4割 5~6割 7~8割 9割以上

Ⅲ 豊かで住みよい農村の振興

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図Ⅲ-2

農業集落排水事業実施状況(東北)

資料:東北農政局地域整備課調べ。

2 中山間地域等の振興(1)中山間地域の現状

中山間地域は食料の安定供給のほか多面的機能を有する重要な地域

中山間地域は、東北の総面積の約7割、農業産出額の約5割を占めており、地域特性

を活かして多様な農産物を供給するなど、東北の農業・農村のなかで重要な地位を占め

ている(表Ⅲ-2)。また、食料の安定供給のほかにも、農業生産活動による国土の保全、

水源のかん養、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承等、多面的機能の有す

る重要な地域でもある。

表Ⅲ-2

中山間地域の指標(平成17年)

資料: 農林水産省「農林業センサス」、「耕地及び作付面積統計」、「生産農業所得統計」、国土地理院「全国

都道府県市町村別面積調」

注:1) 中山間地域とは、中間農業地域と山間農業地域とを合わせた総称である。

2) 中間農業地域とは、耕地率が20%未満で、都市的地域及び山間農業地域以外の市町村、

または耕地率が20%以上で、都市的地域及び平地農業地域以外の市町村をいう。

3) 山間農業地域とは、林野率が80%以上かつ耕地率10%未満の市町村をいう。

(千ha) (%) (百ha) (%) (千人) (%) (千人) (%) (億円) (%)

6,689 8,840 9,677 1,677 13,824

うち中山間 4,518 67.5% 3,996 45.2% 3,178 32.8% 731 43.6% 6,837 49.5%

37,178 46,920 127,768 8,370 88,067

うち中山間 24,078 64.8% 20,300 43.3% 17,410 13.6 3,297 39.4% 34,202 38.8%

全   国

農家人口 農業産出額

東   北

区分総土地面積 耕地面積 総人口

81

380

462

537

617

693744

789 817853 872 895 917 940 958 975

90 119162

195235

278 292 309 300 286 259229 209

177 166 139 128 113 99116

139182

235303

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

1000

平元 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20

当該年度実施地区 新規地区累計

Ⅲ 豊かで住みよい農村の振興

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豊かで住みよい農村の振興Ⅲ

<コラム>

農業は多面的機能を有する

農業は、食料を供給する役割だけでなく、その生産活動を通じた国土の保全、水源のかん

養、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承等様々な役割を有しており、これらの

役割による効果は、地域住民をはじめ国民全体が享受し得るものである。

農業は、農山漁村地域のなかで林業や水産業と相互に密接なかかわりを有しており、特に、

農林水産業の重要な基盤である農地、森林、海域は、相互に密接にかかわりながら、水や大

気、物質の循環に貢献しつつ、様々な多面的機能を発揮している。

農業、森林、水産業の多面的機能

資料:日本学術会議答申を踏まえ農林水産省で作成

農業の多面的機能の貨幣評価

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Ⅲ 豊かで住みよい農村の振興

中山間地域の耕作放棄地率は青森県や福島県で高い傾向

中山間地域は、食料の安定供給のほか多面的機能を有する重要な地域であるが、過疎

化・高齢化の進行や担い手の減少により耕作放棄地が増加傾向にある。

中山間地域の耕作放棄地率は、平地農業地域の5%に対し14%と高く、県別にみると、

青森県と福島県が17%、18%と高い状況にある(図Ⅲ-3)。

このことから、耕作放棄地の増加等により多面的機能の低下が懸念される中山間地域

において、当該機能の維持・増進を図るため、中山間地域等直接支払交付金等による継

続的な支援を必要としている。

図Ⅲ-3

平地農業地域及び中山間地域の耕作放棄地率

資料:農林水産省「農林業センサス」

(2)中山間地域等直接支払交付金

平成19年度の交付総額は約90億円

中山間地域等直接支払制度は、耕作放棄地の増加等により多面的機能の低下が特に懸

念されている中山間地域等において、農業生産の維持を図りつつ、多面的機能を確保す

るという観点から、12年度に創設された。

特に17年度からは、新たな取組として自律的かつ継続的な農業生産活動等の体制整備

(機械・農作業の共同化、認定農業者の育成、営農組織の育成等)に向けた取組を重点

的に推進している。

19年度においては、当局管内231市町村のうち182市町村(図Ⅲ-4)の4,709集落協定

等に中山間地域等直接支払交付金が交付され、その交付総額は約90億万円、交付対象農

用地面積は約7万haとなっている(表Ⅲ-3)。 また、全交付対象農用地面積の約75%

に当たる約5万haで体制整備に向けた取組を行っている(表Ⅲ-3)。

本制度による集落協定等の取組は、中山間地域等の農業の生産条件が不利な地域にお

ける耕作放棄地の発生防止、多面的機能の発揮等に大きく貢献していることから、今後

も引き続き推進する必要がある。

7%

4% 3%

13% 14% 13% 14%

8%

10%11%

3%4%

5%5%

18%17%

0%

5%

10%

15%

20%

全国 東北 青森 岩手 宮城 秋田 山形 福島

平地農業地域 中山間地域

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Ⅲ 豊かで住みよい農村の振興

図Ⅲ-4

平成19年度中山間地域等直接支払交付金交付対象地域の状況

資料:平成19年度中山間地域等直接支払制度の実施状況(東北農政局調べ)

表Ⅲ-3

平成19年度中山間地域等直接支払交付金の実施状況(集落協定+個別協定)

資料:東北農政局調べ。

注: 体制整備とは、適正な農業生産活動等に加え、機械・農作業の共同化等の体制整備に取り組む

場合をいう。

5560

35

25

3635

40

34

24

16

3432

47

34

22

14

3431

47

34

22

14

3431

0

10

20

30

40

50

60

70

青森県 岩手県 宮城県 秋田県 山形県 福島県

管内市町村数 対象農用地を有する市町村数

基本方針策定市町村数

交付金交付市町村数

(数)

うち体制整備 割合(%) うち体制整備 割合(%) うち体制整備 割合(%)

青森県 624 250 40.1 11,328 7,096 62.6 949,385 642,326 67.7

岩手県 1,232 921 74.8 22,184 19,708 88.8 3,391,203 3,090,422 91.1

宮城県 253 87 34.4 2,185 1,054 48.2 287,967 149,203 51.8

秋田県 605 321 53.1 11,286 8,578 76.0 1,158,942 916,686 79.1

山形県 547 319 58.3 8,334 6,459 77.5 1,216,957 986,710 81.1

福島県 1,448 686 47.4 16,317 10,632 65.2 1,954,364 1,357,517 69.5

東北 4,709 2,584 54.9 71,635 53,526 74.7 8,958,818 7,142,864 79.7

全国 28,708 13,570 47.3 664,540 527,729 79.4 51,698,153 38,404,974 74.3

区分交付面積(ha) 交付金額(千円)協定数

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Ⅲ 豊かで住みよい農村の振興

3 農村の生活環境の整備(1)農道の整備

農道の整備済総延長は平成20年度まで5,570㎞

農道整備事業は、高生産性農業の確立や農産物流通の合理化を図るほか、近年では、

農村社会の活性化・住環境の整備に果たす役割も大きく、広域的、基幹的な農道から末

端農道に至る総合的・体系的な整備を進めている。

本事業は、昭和40年に農林漁業用揮発油税財源身替農道整備事業(農免農道整備事業)

が創設されて以来、東北における農道整備事業及び農免農道整備事業による整備済総延

長は平成20年度までに5,570㎞(19年度までは5,532㎞)に達している(表Ⅲ-4)。

また、20年度の実施地区数はそれぞれ78地区(農道整備事業、農免農道整備事業及び1

7年度から実施されている道整備交付金による実施地区の計)となっている。

表Ⅲ-4

農道整備事業実施済延長

(単位:km)

資料:東北農政局農地整備課調べ。

注:四捨五入の関係で合計値が合わない場合がある。

(2)農業集落排水の整備

農村地域の生活排水処理施設の整備を推進

農業集落排水事業は、農業用用排水の水質保全、農村の生活環境の改善を図るととも

に、公共用水域の水質保全に資するため、農業集落におけるし尿、生活雑排水等の汚水、

汚泥又は雨水を処理する施設を整備している。

農林水産省では、土地改良長期計画(平成15年10月閣議決定)で設定された整備目標

(19年度末の農業集落排水処理人口普及率52%)を基本に農業集落排水事業の推進を図

っている。

東北管内における19年3月末現在の農業集落排水処理人口普及率は58%となっており、

全国の普及率55%を上回るとともに、土地改良長期計画の整備目標を既に上回っている。

しかし、都市部を含めた汚水処理施設全体の人口普及率は全国で82%、 東北管内でも

73%と農業集落排水処理人口普及率を大きく上回っており、都市と農村の汚水処理施設

の普及率の較差は依然解消されていないことから、遅れている農村地域の生活環境の改

善を促進するためにも、農業集落排水事業の一層の推進が求められている。

また、農業集落排水事業の近年の特徴として、老朽化対策や高度処理機能、施設監視

機能の追加などの既存施設の改善や機能強化対策への取組が増加している。

事業名 19年度まで 20年度(地区数) 20年度まで

広域農道 1,424 21 1,440

一般農道 1,480 30 1,496

農免農道 2,628 27 2,634

合 計 5,532 78 5,570

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Ⅲ 豊かで住みよい農村の振興

今後、未整備地域の整備促進を図るとともに、既存施設の改築、更新についても積極

的に推進する必要がある(図Ⅲ-5)。

図Ⅲ-5

農業集落排水施設の整備状況及び汚水処理施設の人口普及状況

注:1) 汚水処理の人口普及率(%)=(汚水処理施設の処理人口/ 総人口)×100

2) 農業集落排水処理人口普及率(%)=(農業集落排水事業による処理人口/農業集落排水事業の整備対象人

口)×100

(3)地域用水機能に配慮した農業用水路の整備

景観・生態系の保全等に配慮した用水路の整備を推進

農業用水は、農業生産以外に、生活用水、防火用水、消流雪用水、水質浄化用水、親

水・景観保全、生態系保全など地域用水機能を有している。

このような地域用水機能は、国民の価値観の変化や農村地域における混住化等の進展

のなかで、地域住民への憩いと安らぎの空間の提供等、その機能の一層の発揮が求めら

れてきている。

このため、地域用水を核とした農業水利の多面的機能を発揮させるための総合支援対

策として地域用水環境整備事業を実施している。

本事業では、農村地域に広範に存在する水路、ダム、ため池等の農業水利施設の保全

管理又は整備と一体的に、地域用水の有する多面的な機能の維持増進に資する魚巣ブロ

ック等の生態系保全施設、親水護岸等の親水施設の整備を行っており、平成19年度は17

地区、20年度は13地区で事業を実施している。

なお、農業水利施設の維持管理は、従来どおり土地改良区・水利組合等が管理し、農

業水利施設と一体的に整備された利用保全施設等については地域住民で組織された維持

管理組合で管理し、市町村が管理費を負担する仕組みが定着しつつある。

農業集落排水施設の整備状況(平成19年3月末時点)

55% 58%

0%

20%

40%

60%

80%

100%

全国 東北

整備率

未整備

整備済

長期計画目標値(52%)

人口(千人) 普及率(%)

【全国】 6,257

3,435 55

【東北】 1,042

609 58うち整備済人口

項目

農業集落排水整備対象人口

うち整備済人口

農業集落排水整備対象人口

汚水処理施設の人口普及状況(平成19年3月末時点)

82% 73%

0%

20%

40%

60%

80%

100%

全国 東北

整備率

未整備

整備済

人口(千人) 普及率(%)

【全国】 127,053

104,680 82

【東北】 9,601

7,039 73

項目

汚水処理整備対象人口

うち整備済人口

汚水処理整備対象人口

うち整備済人口

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Ⅲ 豊かで住みよい農村の振興

事例

岩堂沢ダム建設土発生処理地での生態系保全活動[宮城県・大崎市]

岩堂沢ダムの建設では、堤体基礎掘削工

事や付替林道工事等で発生した建設発生土

をダム下流約2kmにある南原地区の水田約

17haの基盤材として埋戻し、その水田を嵩

上げして、大区画にほ場整備することによ

って建設発生土を処理している。また、ほ

場整備を行うことにより減水深が増加する

ことから増える部分の水源手当として、既

存のため池の拡幅工事を実施している。

この工事を実施するにあたっての問題点として、南原地区のこれら水田やため池に生息して

いるヘイケボタルやゲンジボタルの生息環境が改変され生息数の減少やいなくなってしまう

ことが危惧された。このため、ため池工事では新たに植生場所や水田工事ではホタル水路を

設けるなどして保全対策を実施してきている。この保全対策した施設を基に、これまでの環

境維持のために南原地区の農家の方々等と建設所職員が一体となって協同した保全活動に取

り組んでいる。保全活動にあたっては、南原地区のホタルをはじめとした生物の生息環境を

地元が継続して維持管理していくために、農地・水・環境保全対策事業の導入による活動予

算の確保、農家の方々ばかりでなく地元住民一体となった活動体制の構築、その活動を支え

るための維持管理マニュアルについては建設所が作成し地元に提示している。協同活動では、

地元と年間の維持管理活動計画の立案、活動計画にあるホタル幼虫の放流、ホタル水路の清

掃活動などである。また、この活動を行うなかで、近くにある中山小学校とも連携し学習の

ための場所の提供を行っている。建設所では、平成21年度の事業完了後も地元の地域活動と

して継続できる体制ができるよう今後もサポートしていくことにしている。

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Ⅲ 豊かで住みよい農村の振興

4 農山漁村活性化の取組「農山漁村活性化戦略」に即した取組の普及・円滑な施策の推進

人口の減少、高齢化の進展等により農山漁村の活力が低下していることにかんがみ、

農山漁村における定住等及び農山漁村と都市住民との地域間交流を促進するための措置

として、「農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律」が平成

19年8月1日に施行された。この農山漁村活性化法に基づき、地域の自主性と創意工夫に

より、県又は市町村が作成する活性化計画による取組を総合的かつ機動的に支援するた

め、農山漁村活性化プロジェクト支援交付金が創設された(図Ⅲ-6)。

20年度までに、東北管内112市町村において78の活性化計画が策定され、農山漁村活性

化プロジェクト支援交付金が交付されている(図Ⅲ-7)。

図Ⅲ-6

農山漁村活性化法

(農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律)

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Ⅲ 豊かで住みよい農村の振興

図Ⅲ-7

東北における農山漁村活性化計画の策定状況(平成19~20年度)

○管内市町村数 230

○対象市町村数 112 (17)

市町村単独もしくは県との共同策定 47 (10)

県策定 65 ( 7)

※( )は平成19年度と平成20年度の重複市町村数で内数

参考:活性化計画数は78計画

平成21年3月10日現在

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Ⅲ 豊かで住みよい農村の振興

活力ある農山漁村へ

農山漁村は、農林漁業、伝統文化、生活、自然、景観等で成り立っており、このよう

な有形・無形の資源からなる農山漁村生活空間は、農山漁村の活力の場であるとともに、

広くこれを開放することにより国民全体にやすらぎを与える等の利益を提供するもので

ある。このような農山漁村の持続的な発展の基礎ともいうべき農山漁村生活空間は、現

在急速に活力を失いつつあり、農山漁村の活力を高め、持続的な発展を期すためには、

これを早急に保全し、その活用を通じて経済活動の活性化や都市と農山漁村の交流等の

促進につなげていくことが重要となっている。

20年より創設された農山漁村(ふるさと)地域力発掘支援モデル事業は、地域住民や

都市住民、NPO、企業等の多様な主体を地域づくりの新たな担い手として捉え、これ

らの協働により、この農山漁村地域の持続的な発展の基礎をなす「農山漁村生活空間」

を保全・活用し、持続可能で活力ある農山漁村を実現するモデル的な取組を直接支援す

る事業である(図Ⅲ-8)。

東北では、農山漁村(ふるさと)地域力発掘支援モデル事業のうち、地域活動支援事

業に43地区が採択されている(図Ⅲ-9)。

図Ⅲ-8

農山漁村地域力発掘支援モデル事業

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Ⅲ 豊かで住みよい農村の振興

図Ⅲ-9

農山漁村地域力発掘支援モデル事業活動地域位置図

鰺ヶ沢町一ッ森地区活性会協

議会(鰺ヶ沢町)

平川市尾上地域農家蔵保存

利活用地域協議会(平川市)

       農山漁村地域力発掘支援モデル事業             活動地域位置図

青森県(6地域協議会)

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Ⅲ 豊かで住みよい農村の振興

20年度農林水産大臣賞

ぎばって足沢・70の会[岩手県・二戸市]

地域の女性たちが足沢地区の活性化について検討を重ねるうちに、地域の全住民が集落機

能の低下防止策について考えるようになった。その後、部落会が中心となり地区の魅力を再

発見し、その地域資源を生かした都市住民との体験交流のイベント等を実施するなかで、「経

済性(事業収益)」も重要であるとの結論に達し、地域活性化に向けた活動組織「ぎばって足

沢・70の会」を発足。「ぎばって」は「きばって」の強調語、「70」は発足当時の地区の世帯

数を意味する。農業生産面では、「あわ」「きび」「アマランサス」等の雑穀(特に足沢地区は

市の生産量の約半分を占める有数の産地)の魅力を地区内外へ発信するとともに、会員自ら

が、汎用コンバインの導入及びシルバー人材の活用による栽培面積拡大の取組を行うととも

に、有機質肥料の使用や無農薬栽培による安全・安心な雑穀の生産を進めている。また、主

として家庭用であった地元の伝統的な「赤長カブ漬け」をインターネット販売するほか、地

元産大豆を使用した味噌・凍み豆腐を直売所等で販売するなど、郷土料理の魅力も全国へ発

信している。生活・環境整備面では、「苗植え体験」「足沢の旬を楽しむ会」「足沢小正月を楽

しむ会」等年間を通じたイベントの企画

・実施や、交流施設「サイロン亭(集会

所)」や巨木と森林浴が体験できるトレ

ッキングコースの整備等を自ら行うこと

により、都市農村交流人口も年々増加す

るなど、地域活性化に結びついている。

耕野芦沢集落[宮城県・丸森町]

養蚕業の衰退、農業生産条件不利地、高齢化・過疎化の進行等により、耕作放棄地が増加

したため、危機を打開する手段としての中山間地域等直接支払制度の取組に向けた話し合い

を重ねるなかで、農地の維持管理や保全に向けた気運が高まり、集落一体となって取り組む

協定集落組織「耕野芦沢集落」が結成された。農業生産面では、担い手への農地利用集積が

進み、目標を早期に達成。また、農地の法面崩壊の防止のため、定期点検、農業用施設等の

簡易整備、堆きゅう肥の農地への施用,湿田へのハス植栽等によるビオトープ活動を実施し

ている。また、農産物販売拡大の取組として地元食材を活用したお弁当販売等、直売所が女

性活躍の場となっている。生活・環境整備面では、「がったり村のむらづくり構想」を策定し、

自然と歴史と人が調和した里山づくりを目標として掲げ、昔の農村風景である「がったり」

の復元により活気がみなぎるとともに、「がったり村」を開村し農地や山林等の農作業体験場

の創出により都市住民交流人口が増加し

ている。さらに、訪問者が楽しめるよう

ガイドマップや瓦版による情報発信も行

っており、このような取組や美しい原風

景に憧れて、近年I ターン者が増加して

いる。

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Ⅲ 豊かで住みよい農村の振興

20年度東北農政局長賞

つがる弘前農業協同組合とうもろこし部会[青森県・弘前市]

岩木山麓の通称「嶽地区」では、地域に適合する農作物や家畜の飼育を試みてきたがなかだけ

なか見つからず、経営難で離農する人も少なくなかった。このような状況のなかで、昼と夜

の寒暖差が大きい高原の気候を生かした「とうもろこし」栽培の成功が契機となり、農家が

共同で販路拡大に取り組む「嶽きみ」生産者の協議会が発足。現在は、「つがる弘前農業協同だけ

組合とうもろこし部会」として、組合員の栽培技術及び所得の向上を目的として活動を行っ

ている。生産面では、堆肥を多く施用し、農薬を慣行の3割程度に減らして栽培するなど、

部会員全員がエコファーマーとして取り組んでいる。また、他地域では高齢化等により農業

労働力が減少する中、農業所得の安定確保により農業後継者の就農率が高く、大規模経営の

割合も高くなっている。嶽きみは、高い糖度とジューシーな粒が生でも食べられると消費者だけ

に評判となり、臨時直売所へは県内外から多数のお客様が来訪している。また、平成19年に

は「嶽きみ」が地域団体商標として登録さ

れている。生活・環境整備面では、女性リ

ーダーによる農産物加工への取組や、子ど

も達等の体験学習を受け入れるような体制

づくりの取組等、新たな活動も展開してい

る。

前田集落[福島県・飯舘村]

若者の流出、高齢化による農業就労人口の減少に伴い、集落の就業構造が変化し、農業施

設の維持管理や郷土芸能の伝承等、これまでの集落機能が低下。しかしながら、集落の基幹

産業は農業であることから、地域の将来目標を定め、地域住民が自ら主体となった村づくり

に着手している。農業生産面では、遊休農地化していた共同所有の牧草地の有効活用方策と

して「観光わらび園」を集落全員の協力により開設し、地区内の遊休農地を大幅に減少させ

た。認定農家を中心に集落営農組織を立ち上げ、集落の稲作作業の一元化(1集落1農場)

を目指している。また、減化学肥料栽培にも取り組んでおり、「エコ米」や化学肥料を5割減

らした「特別栽培米」として高付加価値化により収益の増加を目指している。農業用施設等

については、集落全員参加による活動により、施設の課題や問題点に対し集落として対応措

置が講じられるなど予防対策に大きな成果が現れている。生活・環境整備面では、住民手作

りの直売所施設が、多品目の新鮮野菜の

栽培や新規作物の導入へ繋がるとともに、

交流拠点施設として交流人口増加へ寄与

している。また、復活した「木炭き」が、

地元中学校の体験学習に活用されるなど、

新たな展開を見せている。

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Ⅲ 豊かで住みよい農村の振興

町下地区集落営農実践会議[山形県・白鷹町]

町下地区は、町内農業をリードする地区であったが、養蚕業衰退による所得低下や荒廃桑

園地の拡大、将来の担い手不足等の課題を抱えていたことから、集落全戸の意向調査を行い

「町下地区営農ビジョン」を策定し、農業の課題解決に向け地域全体で取り組むこととした。

同会議は、蔬菜園芸生産組合、果樹生産組合、畜産団体等の「農地部会」と、各種交流活動

等の中心となる「交流部会」による組織的な体制により活動している。農業生産面では、担

い手農家による農作業受委託組織「土里夢ファーム」を設立し、園芸部門と競合する水稲育

苗の作業受託・協業作業を実施するなど町のモデル組織となっている。また、果樹や地域特

産の薄皮丸なす等の栽培に取り組んだ結果、農産加工活動へと繋がり農家所得の向上に寄与

している。園芸部門は、生産規模の拡大による産地強化の取組を行っており、特にミニトマ

ト部門では農業後継者が確保されるとともに、生産技術も高く研修生の受入も行っている。

生活・環境整備面では、農業体験活動など

の企画立案・実施を非農家や女性が主に行

い、農家が支援。特に直売所の設置は、地

区からの強い要望により実現されたもので、

出荷者は女性・高齢者だけに留まらず、経

営主である男性にも広がりを見せるなど、

活気を見せている。

5 農地・水・環境保全向上対策の着実な実施管内230市町村の8割にあたる180市町村で取組、共同活動は3,342組織、約29万haで実施

地域共有財産である農地・農業用水等の資源と、そのうえで営まれる先進的な営農活

動と、農地・水・環境の良好な保全と質的向上を図るため、地域ぐるみでの効果の高い

共同活動一体的かつ総合的に支援する「農地・水・環境保全向上対策」が平成19年度よ

り開始された。

平成20年度は、前年度より1村増加し、管内の230市町村の8割(78%)にあたる180

市町村で本対策に取り組まれた(表Ⅲ-5)。

表Ⅲ-5

市町村の取組状況

資料:東北農政局調べ(平成20年11月15日時点)

注:市町村数は、平成20年7月1日時点。

県名 青森県 岩手県 宮城県 秋田県 山形県 福島県

市町村数 40 35 36 25 35 59 230 (100%)

取り組んでいる 26 28 23 25 32 46 180 (78%)

取り組んでいない 14 7 13 - 3 13 50 (22%)

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Ⅲ 豊かで住みよい農村の振興

共同活動は、管内6県で3,342組織が設立され、取組面積では全国(約136万ha)の21

%に当たる約29万haで取り組まれ、19年度より105組織、約7千ha(2.4%)増加し、そ

のうち営農活動は、管内6県で530組織(約2万2千ha)で取り組まれて、19年度より13

9組織、約8千ha(50%)増加している(図Ⅲ-10、図Ⅲ-11)。

地域別に19年度から増加面積を見ると、最も大きいのは、共同活動では、福島県

(3,022ha)、営農活動では山形県(3,186ha)となっている(図Ⅲ-10)。

図Ⅲ-10

取組状況(面積)

資料:東北農政局調べ(平成20年11月15日時点)

注:営農活動の取組面積は、共同活動の内数。

図Ⅲ-11

取組状況(活動組織数)

資料:東北農政局調べ(平成20年11月15日時点)

注:営農活動の取組面積は、共同活動の内数。

1,780452

6,6293,4433,4322,330

5,6564,1244,2114,040697577

39,46636,444

65,42364,10663,41363,359

43,85841,476

33,30933,319

43,885 43,885

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

H19 H20 H19 H20 H19 H20 H19 H20 H19 H20 H19 H20

共同活動

営農活動

ha

青森県 岩手県 宮城県 秋田県 山形県 福島県

0

10

20

30

40

50

H19 H20

万ha

東北計

282,587289,355

14,96622,405

0

50

100

150

H19 H20

万ha

全国計

1,160,430

1,361,642

43,276 65,529

71

17

171

119

3932

12297110108

1716

650

594

641627

709709

517517

445410

380380

0

100

200

300

400

500

600

700

800

H19 H20 H19 H20 H19 H20 H19 H20 H19 H20 H19 H20

共同活動

営農活動

組織

青森県 岩手県 宮城県 秋田県 山形県 福島県

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

H19 H20

組織

東北計

3,237 3,342

391530

0

5,000

10,000

15,000

20,000

H19 H20

組織

全国計

17,122

18,978

2,0292,577

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Ⅲ 豊かで住みよい農村の振興

前年に比べ農振農用地面積に対する共同活動、営農活動の割合は、ともに増加

管内の農振農用地面積に対する共同活動の取組割合は33.3%であり、19年度より0.7ポ

イント増加している(図Ⅲ-12)。同様に営農活動に占める取組面積割合は2.6%であり、

19年度より0.9ポイント増加している(図Ⅲ-13)。

地域別に農振農用地に占める取組面積割合の一番大きい県は山形県(52.1%)であり、

営農活動の取組面積は、19年度より2.6ポイント増加している(図Ⅲ-12、図Ⅲ-13)。

図Ⅲ-12

農振農用地面積に占める取組面積の割合(共同活動)

資料:東北農政局調べ(平成20年11月15日時点)

図Ⅲ-13

農振農用地面積に占める取組面積の割合(営農活動)

資料:東北農政局調べ(平成20年11月15日時点)

21.9% 21.9%25.5% 26.9%

35.9% 35.9%

42.2% 42.2%

51.1% 52.1%

23.5%25.4%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

H19 H20 H19 H20 H19 H20 H19 H20 H19 H20 H19 H20

青森県 岩手県 宮城県 秋田県 山形県 福島県

32.6% 33.3%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

H19 H20

東北計

26.4%

31.0%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

H19 H20

全国計

1,780452

6,6293,4433,4322,330

5,6564,1244,2114,040697577

39,46636,444

65,42364,10663,41363,359

43,85841,476

33,30933,319

43,885 43,885

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

H19 H20 H19 H20 H19 H20 H19 H20 H19 H20 H19 H20

共同活動

営農活動

ha

青森県 岩手県 宮城県 秋田県 山形県 福島県

0

10

20

30

40

50

H19 H20

万ha

東北計

282,587289,355

14,96622,405

0

50

100

150

H19 H20

万ha

全国計

1,160,430

1,361,642

43,276 65,529

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Ⅲ 豊かで住みよい農村の振興

事例

農地・水・環境保全向上対策 ~市街地近郊における遊休農地の活用事例~【共同活動】平下平窪資源環境保全会(福島県いわき市)

「平下平窪資源・環境保全会」が活動する下平窪地区は、福島県の南東部、いわき市の

中心市街地から2kmほど北側にある住宅地を中心とした地域である。

地域の東側には、いわき市を代表するかんがい用水路のひとつである「小川江筋」が流

れており、住宅の周辺に農地が広がっているが、市街地の近郊に位置することから、保全

会は、非農業者の割合が圧倒的に大きい構成となっている。

農地については、ほ場整備は完了しているものの、市街地に近いことからゴミなどの不

法投棄がしばしば見られ、また後継者不足が原因となって遊休化が心配される農地も多く、

地域の課題となっていた。平成19年度から農地・水・環境保全向上対策に取り組む際には、

地域の環境保全という観点から、多くの非農家団体からの参加協力が得られ、現在の構成

になっている。

当保全会では、後継者不足から遊休化しつつある農地の保全を図るため、地域の子供会

や小学校と連携し、サツマイモの植栽等の活動を実施することにより、ゴミの不法投棄の

誘因ともなっている遊休農地の発生防止に積極的に取り組んでいる。

また、遊休農地の草刈りや農地の耕耘にとどまらず、子供たちに農業用施設や農地の大

切さを学んでもらうとともに、景観作物などを植栽することで地域の環境美化に努めてい

る。

このような活動を通じて、地域内でも農業用施設や農地に対する関心が高まり、構成員

の意識の向上が図られている。

〔地区概要〕共同活動 対象面積 26.5ha(水田22.5ha、畑4.0ha)

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Ⅲ 豊かで住みよい農村の振興

6 都市と農村の共生・対流(1)共生・対流の動向

新たなライフスタイルの実現を目指す取組を推進

都市住民のゆとりある生活の実現や、農山漁村地域の活性化等を図るためには、従来

の農村から都市への一方的な人の移動だけではなく、農林漁業体験や田舎暮らし等、都

市と農山漁村が行き交う新たなライフスタイルを広め、都市と農山漁村それぞれに住む

人々がお互いの地域の魅力を分かち合い、「人、もの、情報」の行き来を活発にする取組

が重要である。グリーン・ツーリズムのほか農山漁村における定住・半定住等も含む広

い概念であり、都市と農山漁村を双方向で行き交う新たなライフスタイルの実現を目指

す取組を推進している。

東北管内では、地域資源を活かしつつ都市と農山漁村との交流促進を図るため、 平成

16年10月に設置された「東北地域都市と農山漁村の共生・対流連絡協議会」での関係機

関との連携、農政局メールマガジンやホームページでの情報発信等により、地域推進体

制の整備、魅力ある農村空間の整備等を総合的に支援している。

また、平成20年8月6日(日)~8日(火)までの「仙台七夕まつり」の期間にあわ

せ、仙台市役所前の勾当台公園において、宮城県、水土里ネットみやぎが主催、東北農

政局、NPO美しい田園21東北支部、NPO農村地域

づくり支援隊が協力の農業農村整備イベント「七夕ま

つり”こどもに夢を”」開催し、昨年に引き続きイベン

トコーナーの一角に「東北のグリーン・ツーリズム」

コーナーを設け、来客者に対して管内各県、各市町村

等のグリーン・ツーリズムパンフレットを配布・説明

し「東北地域都市と農山漁村の共生・対流」のPRを

行っている。

第6回 オーライ!ニッポン大賞

「オーライ!ニッポン大賞」は、都市と農山漁村の共生・対流を促進するため、「都市

側から人を送り出す活動」、「都市と農山漁村を結びつける活動」、「農山漁村の魅力を活

かした受け入れ側の活動」等について優れた貢献のあった団体又は個人を表彰するもの

で、第6回目となる平成20年度は、NPO法人 体験村・たのはたネットワーク(岩手

県田野畑村)が審査委員会長賞を受賞した。

七夕まつり"こどもに夢を"の様子

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Ⅲ 豊かで住みよい農村の振興

事例

第6回オーライ!ニッポン大賞 審査委員会長賞(平成20年度)

NPO法人 体験村・たのはたネットワーク[岩手県・田野畑村]

これまでの典型的な通過型観光地から体験型観光へシフト

することで、旅行者の滞在を生み、住民との交流や経済効果

拡大等による地域活性化を図ることができた。官民が連携し

た取組として「番屋エコツーリズム」と称した農山漁村の営

みや生活文化を体験し学び合えるプログラムのコーディネー

トや、ネイチャー&観光情報の提供を提供している。本物の

漁師が操縦する小型漁船で断崖を巡る「サッパ船アドベンチ

ャー」、漁村文化をベテラン漁師が伝える「机浜番屋群漁師ガイド」等、20を超える参加者体

験型プログラムが注目を集めている。登録インストラクター50名、民宿受入農林漁家70軒等

の参加により、平成19年度の体験者数は5,650人と初年度(平成16年度)の434人から13倍以

上伸びている。

(2)グリーン・ツーリズムの推進

28市町村で整備計画を策定し、グリーン・ツーリズムを推進

都市農村交流を担う人材の育成確保、情報発信力の充実強化、農村地域の魅力向上の

ための地域ぐるみの自発的な取組を支援することにより、グリーン・ツーリズムを推進

している。

平成19年度末までに、農山漁村滞在型余暇活動のための基盤整備の促進に関する法律

に基づく、市町村における農村滞在型余暇活動に資するための機能の整備等に関する計

画を管内28市町村が策定し、管内の都市農村交流を目的とする公設宿泊施設における宿

泊者数は754万人(農政局農村振興課調べ:19年度)となっている。今後も、一層都市住

民に対する情報提供を図るとともに、農村側の受入体制整備の推進に努める必要がある。

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Ⅲ 豊かで住みよい農村の振興

図Ⅲ-14

子ども農山漁村交流プロジェクト受入モデル地域(東北)

注:1) 先導型受入モデル地域:既に受入体制にあり、他の地域への指導を行う地域

2) 体制整備型受入モデル地域:今後、受入体制整備を進める地域

先導型受入モデル地域 注:1)

体制整備型受入モデル地域 注:2)

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Ⅲ 豊かで住みよい農村の振興

事例

温泉観光協会が果樹オーナー制度に取り組む[福島県・福島市]

飯坂温泉は、福島市の北部に位置し、鳴子・秋保とともに

奥州3名湯に数えられ、中央に摺上川とその支流赤川が流れ、

両岸に大小さまざまな旅館が軒を並べる大変歴史のある温泉

地となっている。

また、飯坂温泉周辺は、果樹栽培が盛んな地域であり、農

業資源と観光客誘致を結びつけ、地域振興が図られないか検

討されていた。

飯坂温泉観光協会では、平成7年より同地区の果樹農家と

連携し「くだものの木オーナー制度」を運営しており、オーナーには宿泊料金や入浴料割引

等の特典が付くなど、観光と農業を結ぶ取組を行っている。

同オーナー制度は、1年単位で、もも・りんご・ぶどう・日本なしの4種類の果樹のオー

ナーになれる制度で、春のお花見(人工授粉体験)から、秋の収穫作業まで農家を訪れること

により果樹生産のすべてが体験できるとともに、種類ごとに最低収穫量保障が決められてお

り、安全な果物が受け取られる仕組みとなっている。

また、平成13年より飯坂温泉名物料理「いかにんじん・わが家の味自慢」として郷土料理

「いかにんじん」を取り入れた取組を行っており、19年には「同観光協会」、「新ふくしま農

業協同組合」、「旅館」、「料理研究家」及び「ふくしま食のたくみ」(農家に受け継がれてきた

食に関する知恵や技術を保存伝承する女性農業者で福島市が認定している)が連携し、地域の

郷土料理として有名な「いかにんじん」や「凍み大根の煮物」等を食膳に提供する仕組みを

作り、観光客から大変好評を得ている。

果樹情報も含め同観光協会のホームページで案内しているが、参加者の約8割がリピータ

ーであり、毎年クチコミで参加者が広がってきている。

同オーナー制度の利用者に農業体験の場を提供することで、農業に対する理解が高まると

ともに、作業の折に温泉を訪れることで温泉地への集客にもつながっている。

また、地場産農産物を利用し地域との結びつきを持つことで、特色ある食事の提供が可能

となり、訪れた観光客に満足いただいている。

今後、オーナー数の急激な拡大を目指さず、十分な対応ができるように引き受け農家の状

況も踏まえながら徐々に拡大するとともに、「いかにんじん」を含め昔から地域に定着した郷

土料理や地場産農産物を見直し、地域の特色ある料理の提供していきたいと考えている。

また、同オーナー制度で学んだ農業分野との連携ノウハウを元に、「子ども農山漁村交流プ

ロジェクト」の受け入れ態勢を整えるため、20年7月に「ふくしま農業体験交流推進協議会」

を立ち上げ、受入準備を進めるとともに農家民泊の研修会等も計画している。

果樹オーナー大感謝祭の様子

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注:1 法律に基づいた市民農園とは、市民農園整備促進法に基づくもの及び特定農地貸付法に基づくものをいう。

- 119 -

Ⅲ 豊かで住みよい農村の振興

(4)市民農園

市民農園は年々増加傾向

市民農園とは、サラリーマン家庭や都市の住民の方々がレクリェーションとしての自

家用野菜・花の栽培、高齢者の生きがいづくり、生徒・児童の体験学習などの多様な目

的で、小面積の農地を利用して野菜や花を育てるための農園のことである。

都市化とともに年々増大する市民農園に対するニーズに対応して、「特定農地貸付けに

関する農地法等の特例に関する法律」により農地法の権利移動の許可の適用を除外する

措置が講じられ、一般市民に農地の貸付けが可能となった。また、「市民農園整備促進法」

により、地方自治体が休憩施設等の施設の整った良質な市民農園の整備を促進する体制

が整えられている。

近年、都市住民と農村の交流、レクレーション等の余暇活動として行う農作物の栽培、

農作業を通じた教育、障害者・高齢者対策への関心の高まりなどから、全国的に農園利

用希望は増加の傾向にあり、それに応じて市民農園数も年々増加の傾向にある。

東北管内における法律に基づいた市民農園注:1

は、平成20年3月末現在で計112か所が

開設されており、昨年と比べて4か所の増加となっている。県別に青森県(24か所)、宮

城県(23か所)及び山形県(21か所)が多く、開設主体としては農業協同組合よりも地

方公共団体による開設が多くなっている(図Ⅲ-15、表Ⅲ-6、表Ⅲ-7)。

図Ⅲ-15

法律に基づく市民農園の推移(平成20年3月末現在・東北)

資料:東北農政局農村振興課調べ。

1 2 2 3 4 5 6 6 8 9 10 11 10 11 12 13 13717

26 30 34 3545 48 51

59 5665

95 99

858669

0

20

40

60

80

100

120

3.8 5.3 6.3 7.3 8.3 9.3 10.3 11.3 12.3 13.3 14.3 15.3 16.3 17.3 18.3 19.3 20.3

市民農園整備促進法

特定農地貸付法

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Ⅲ 豊かで住みよい農村の振興

図Ⅲ-17

鳥獣種別被害状況

資料:東北農政局農産課調べ。

注:小数点以下を四捨五入しているため、計が一致しない場合がある。

市町村を中心に、地域の関係機関が連携し一体となった被害防止体制の整備推進

全国的に深刻化する被害の状況を受けて、被害対策の抜本強化を図るため「鳥獣によ

る農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律」が19年12月14日に成

立し、地域の被害実態を把握しうる市町村が中心となり、地域の農林水産業団体、猟友

会、地域住民等の関係機関と連携し一体となって総合的かつ効果的な被害防止施策を推

進することとしている。

同法に基づき被害防止計画を作成した市町村においては、地方交付税の拡充、補助事

業による支援などの財政上の支援等が講じられることとしている。

農林水産省においても、特措法の成立に合わせ20年度に鳥獣害防止総合対策事業を新

設し、市町村が作成する被害防止計画(表Ⅲ-8)に基づく取組をソフト面、ハード面

から総合的に支援していくこととしている。

表Ⅲ-8

被害防止計画の作成状況(平成21年3月末現在)

資料:農林水産省調べ。

ムクドリ1.1億円

14%

カモ0.5億円

6%

カラス3.5億円

42%

スズメ2.4億円

30%

ヒヨドリ0.5億円

6% その他0.2億円

2%

被害金額8億1,441万円

100%

ハクビシン0.9億円

9%

カモシカ0.7億円

8%シカ

0.7億円7%

サル2.9億円

32%

イノシシ0.9億円

10%

クマ0.9億円

10%

ネズミ2.0億円

21%

その他0.3億円

3%

被害金額9億2,978万円

100%

【鳥類】 【獣類】

全市町村数被害防止計画作

成  ①21年度中に作成予定 ②

合計①+②

1,777 693 220 913

230 52 36 88

青 森 県 40 10 4 14

岩 手 県 35 6 2 8

宮 城 県 36 7 9 16

秋 田 県 25 4 0 4

山 形 県 35 4 6 10

福 島 県 59 21 15 36

東    北

全  国