サラワクの森林と先住民族

サラワク・キャンペーン委員会

トム・エドワードソン

サラワクの森林と先住民族

サラワク・キャンペーン委会

マレーシア・サラワク州の熱帯雨林

世界有数の生物多様性

26の先住民族が暮らしてきた。

しかし商業伐採で原生林は

既に8割が二次林と化した。

日本は世界最大の南洋材輸入国として

サラワクの森林破壊に長年加担した。

1963年にマレーシアに編入1841年ブルック(Brooke)が初代王に就任1946年イギリス植民地に

土地、森林など土地に関連する事項は各州が所有権を有し、州法を制定して管理する(マレーシア憲法74条2項)

州主席大臣は1981年からの長期政権。森林大臣を兼務し伐採権を割当。

サラワク州サラワク州General information on Sarawak

FOE Japan 提供

サラワクの先住民族

焼畑民

ロングハウスに暮らす

イバン人

人口の3割

オラン・ウル〈奥地の人）

カヤン人、クニャー人、クラビット人など

狩猟採集民（60年代以降は定住）

プナン人

それぞれ独自の言語、習慣、儀礼

どの民族にとっても森は生活の宝庫

ロングハウスで大家族のように苦楽を分かち合って暮らす

焼畑の火入れ

棒で土に穴を開けていろんな種を一緒に作付けする

稲も野菜も一緒に育つ 豊かな稔り

森で取れるイノシシ

川の魚は

大切な蛋白源

どんなに小さな獲物も分かち合う

突然の変化 伐採業者がやってきた

ブルドーザーの到来で土地権が抹消されたことを知らされる

2色の川 伐採で濁り 魚は激減する

林道やブルドーザーの跡で森は

虫食い状態に

十分回復する前に再び伐採が入る。

年々、丸太が細くなっている。

既にインドネシア国境近くまで商業伐採が

入り、手付かずの原生林は僅かしかない。

日本での熱帯木材の使途

コンクリート型枠

家具 住宅下地材（床、壁、天井）

23529921282664人口（万人）Population×10,000

3.931.450.270.73一人当たり(ha)Forest per person

924(47%)

436(22%)

590(30%)

1950(100%)

森林面積Forest（×10,000ha）

1244(38%)

740(22%)

1317(40%)

3302(100%)

国土面積Land（×10,000ha）

サラワク州Sarawak

サバ州Sabah

半島部Peninsular

合計Total

マレーシアの森林面積マレーシアの森林面積Forest area in Malaysia

出所：MPIC(2008), MTC(2006)より作成

※その他の例として日本の一人当たりの森林面積は0.19ha／人、インドでは0.06ha／人

FOE Japan 提供

総面積 1,244森林面積 924～85年伐採済み* 282伐採権発行済み（'84）* 580年間択伐面積　70年代* 7年間択伐面積　80年代* 24年間択伐面積　00年～** 14

出典：+MTC、*INSAN 1990、**Wikipedia

サラワク州で伐採された面積は？

単位：1万 ha

日本の南洋材丸太の輸入推移

日本の合板輸入量推移日本の合板輸入量推移19901990--20082008Trend of plywood import in Japan （FOE Japan 提供）

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

合板輸入量（千m3）

Malaysia

Indonesia

China

Total

マレーシアの合板生産量の推移マレーシアの合板生産量の推移Trend of production of plywood 1995-2005 （FOE Japan 提供）

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

1990 1995 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

合板生産量（千

m3）

Peninsular

Sabah

Sarawak

1.52132,998単板積層板／Laminated Veneer Lumber

2.56224,519繊維板／MDF/FibreBoard

3.87339,572単板／Veneer

11.03967,465製材／Sawntimber

18.711,641,371丸太／Logs

58.975,173,410合板／Plywood

%金額 Value(RM)木材製品名 Product

サラワクサラワク木材製品の輸出収入木材製品の輸出収入((0606))Export Earning of Timber products (2006) （FOE Japan 提供）

出所：STIDC(2006)

サラワクサラワク国別輸出収入額国別輸出収入額((‘‘0606))Export Earning of Timber products by countries（FOE Japan提供）

4.62405,270アメリカ合衆国 USA

4.69411,366台湾 Taiwan

5.70500,396中国 China

7.10623,152インド India

45.583,998,513日本 Japan

%金額 Value (RM)国名 Country

出所：STIDC(2006)

サラワク産合板の約60%が日本向け（2,040,000m3）

でも、伐採より恐ろしいものがある アブラヤシ・プランテーション

「緑の砂漠」で無数の村が永遠に消えてしまった

Grand Perfect社の150万haの巨大アブラヤシ農園計画

Grand Perfect社に苗木を毒で枯らされた農家

ビンドゥル地区サタイ川上流で開発が進行中

パーム油の使途•加工食品

•即席ラーメン•揚げ菓子•レトルト食品•チョコなど

•石鹸・洗剤•化粧品など

アブラヤシ農園面積の推移アブラヤシ農園面積の推移Trend of area of Oil palm plantation （FOE Japan 提供）

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

1975 1980 1985 1990 1995 2000 2002 2003 2004 2005 2006 2007

Area（×1.000ha）

PeninsularMalaysia

Sabah

Sarawak

出所：MPIC(2007), IDS

サラワク州のアブラヤシとパルプ用植林の予定地

油椰子(緑）植林(黄）

巨大ダム開発計画 SCORE

• Sarawak Corridor of Renewable Energy• 総水力発電量28,000MW、14のダム開発計画• 州の57％もの地域を対象• 発電設備容量は一人11.9kW（日本は

0.35kW）• 半島部への海底送電ケーブルで売電を計画• アルミ、石油化学、鉄鋼業など産業誘致

先住民族の抵抗

• 政府に陳情・国際社会にアピール• 道路封鎖（80年代半ば～数百人逮捕）• 土地を守る裁判闘争（200件以上）

– 住民参加型地図作り– オーラル・ヒストリー

• 村の境界線に植樹

道路封鎖で伐採に挺身の抵抗（89年）

1993年 スバトゥ川で数千人規模の封鎖

1993年 スバトゥ川封鎖は武装警察が強制解除

道路封鎖は断続的に今日まで続いている （2001年5月）

ロング・ルニィムでの道路封鎖（2003年）

リンバン川上流 移動プナン人による道路封鎖（2003年）

ロング・ブナリ村の道路封鎖は1年以上（06年2月～07年2月）

マレーシア木材認証協議会（MTCC）は、住民に相談もせず、ここを伐採するサムリン社に持続可能な森林経営のお墨付きを与えた。（後に認証が取消された）

MTCC認証林のほとんどは先住慣習地 しかも裁判係争中！！

バラム中流域13村のプナン人が一斉道路封鎖（2008年）

プナン人道路封鎖は今も続いている

• バラム川上流ロング・サバイ、2010年4月

先住民族の慣習的な土地権

• 1958年1月1日以前に慣習利用した土地には先住民族としての慣習的な土権利が認められている（NCR、Native Customary Rights）。

• しかし、大臣が一方的に取り消せる＝＞補償に基準なし

• 共有林での狩猟・採集が「慣習利用」として先住慣習権を成立させるかが争点。

先住慣習権の土地先住慣習権の土地(NCR Land)(NCR Land)Native Customary Rights Land

住居(Long House)

土地全体(Pemukai Menoa)

狩猟, 漁業, 林産物,非木材林産物採集地(Pulau Galau)

耕作地(Temuda) (a)以下の用途のために原

生林を伐採して取得した土地として、

(b)果樹植栽用地(c)居住地や耕作地の開墾(d)墓地や聖堂としての利用

(e)土地区分に従った固有の利用

(f)他の合法的な方法による土地の利用

サラワク土地法では

ルマ・ノル村 vs. BPP•

パルプ用植林で土地

を皆伐されたイバン

人がＢＰＰ社を提訴。

•共有林（狩猟・採集を

行う）に対する先住

慣習権を始めて認定

1998年 バラム川上流のプナン人の4村L. Kerong L. Sait L. Sepigen L. Ajengがサムリン社とサラワク州政府を訴える！！

2001年に一回だけ開廷し、その後、法廷は一度も開かれていない。

バラム川上流 Long Lamai村も2007年7月にMerawa社*を提訴

*サムリン社の子会社

住民参加型地図作り

ウマバワン村では1992年から1万5千本の在来樹種を植えて森林を再生し、

土地に対する慣習権を守ろうとしている