ae 法を用いた cfrp 製圧力容器の損傷評価手法 - 株 …...ae...

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107 IHI 技報 Vol.59 No.1 ( 2019 ) 1. 緒    言 炭素繊維強化プラスチック ( Carbon Fiber Reinforced PlasticsCFRP ) は,航空機体や宇宙ロケットの圧力容器 など幅広い分野で使用され,自動車の車体などにも使用さ れている.加えて,水素自動車や水素ステーションの燃料 タンクにも使用されている ( 1 ) CFRP に代表される複合 材料は,繊維を束ねて積層し,樹脂材などで固めて製作さ れるため,強度評価に用いられる引張試験などにおいて, 樹脂割れ,② 層間剥離,③ 繊維破断,④ 破断,の順 に損傷が進行することが知られている. 複合材料が使用される場所や設計強度により,許容され る破壊現象が異なるため,材料強度評価としては各破壊ス テップの現象を捉えることが求められている.しかし,樹 脂割れや層間剥離などの微小破壊を,試験機の荷重や変位, ひずみなどの従来の評価方法で検知することは困難である. 一方,Acoustic Emission ( AE ) 法は,CFRP に代表され る複合材料における健全性評価手法として普及しており, カイザー効果を用いた方法は ASME ( American Society of Mechanical Engineers ) 規格にも制定されている ( 2 )( 3 ) しかし,カイザー効果の成立有無を確認するには負荷・除 荷を繰り返すことが必要となる.さらに,材料強度をカイ ザー効果から判断するには,応力を細かなステップで繰り 返し負荷・除荷する必要があるため,初期破壊荷重の調査 など,材料強度評価試験には本手法は適さない.このた め,カイザー効果成立前後に変化する AE パラメータの 調査が必要である. CFRP の損傷に伴い発生する AE の周波数域について は,さまざまな報告がされている ( 4 )( 5 ) .筆者らは短冊 形の試験片を用いた引張試験において,重心周波数 ( Frequency Center Of GravityF.C.O.G ) が負荷応力に伴 い,連続的に変化することを確認しており,本手法を適用 した解析法を提案している ( 6 ) 本稿では,実際の CFRP 製圧力容器を製作し,耐圧試 験における本手法の適用性を確認したので報告する. 2. F.C.O.G 手法の解説 F.C.O.G とは,AE 信号の周波数解析結果におけるスペ クトルの代表値である.重心とは,加重平均を指してお り,周波数 f i における成分強度 A( f i ) の積和を,成分強 度の総和で割った値となる( ( 1 ) 式). FC OG Af f Af i i i i i . . . ( )* ( ) = .......................... ( 1 ) 短冊型の CFRP 引張試験時の AE 計測結果例における AE 発生数( ヒット数 )と試験荷重の時間履歴を1 に示す.左縦軸および緑線は 1 s ごとに発生した AE 生数( ヒット数 )を,右縦軸および赤線は試験荷重を表 している.本試験は荷重の負荷・除荷を 3 回繰り返すこ とによって,カイザー効果の確認を行った.12 回目の AE 法を用いた CFRP 製圧力容器の損傷評価手法 Evaluation Method of CFRP Pressure Vessel using Acoustic Emission 川 﨑   拓 株式会社 IHI 検査計測 研究開発センター研究開発グループ 大 森 真 実 株式会社 IHI 検査計測 検査事業部技術部 大 森 征 一 株式会社 IHI 検査計測 検査事業部技術部 水素自動車や水素ステーションに設置される燃料タンクは,炭素繊維を用いた複合材容器となっている.筆者ら は,炭素繊維強化プラスチック ( CFRP ) に対して,Acoustic Emission ( AE ) 法を用いた健全性評価手法の研究をして きた.短冊形の試験体では,筆者らが提案する独自の周波数解析において層間剥離直前を検知可能であることが確 認されている.本稿では,CFRP 製圧力容器の水圧試験における AE 法を用いた健全性評価手法を紹介する. The fuel tanks of the hydrogen car and station are made by the pressure vessel using carbon fiber reinforced plastics ( CFRP ). We have studied the evaluation method using acoustic emission. In the tensile test, delamination can be detected using our original method of frequency analysis. In this paper, we introduce the damage evaluation method of the pressure test by CFRP fuel tanks.

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Page 1: AE 法を用いた CFRP 製圧力容器の損傷評価手法 - 株 …...AE センサである.これをシリンダ部3 段,ドーム部各1 段に設置した. 第5 図に破断した際のCFRP

107IHI 技報 Vol.59 No.1 ( 2019 )

1. 緒    言

炭素繊維強化プラスチック ( Carbon Fiber Reinforced

Plastics:CFRP ) は,航空機体や宇宙ロケットの圧力容器など幅広い分野で使用され,自動車の車体などにも使用されている.加えて,水素自動車や水素ステーションの燃料タンクにも使用されている ( 1 ).CFRP に代表される複合材料は,繊維を束ねて積層し,樹脂材などで固めて製作されるため,強度評価に用いられる引張試験などにおいて,① 樹脂割れ,② 層間剥離,③ 繊維破断,④ 破断,の順に損傷が進行することが知られている.複合材料が使用される場所や設計強度により,許容される破壊現象が異なるため,材料強度評価としては各破壊ステップの現象を捉えることが求められている.しかし,樹脂割れや層間剥離などの微小破壊を,試験機の荷重や変位,ひずみなどの従来の評価方法で検知することは困難である.一方,Acoustic Emission ( AE ) 法は,CFRP に代表される複合材料における健全性評価手法として普及しており,カイザー効果を用いた方法は ASME ( American Society of

Mechanical Engineers ) 規格にも制定されている ( 2 ),( 3 ).しかし,カイザー効果の成立有無を確認するには負荷・除荷を繰り返すことが必要となる.さらに,材料強度をカイザー効果から判断するには,応力を細かなステップで繰り返し負荷・除荷する必要があるため,初期破壊荷重の調査など,材料強度評価試験には本手法は適さない.このた

め,カイザー効果成立前後に変化する AE パラメータの調査が必要である.

CFRP の損傷に伴い発生する AE の周波数域については,さまざまな報告がされている ( 4 ),( 5 ).筆者らは短冊形の試験片を用いた引張試験において,重心周波数

( Frequency Center Of Gravity:F.C.O.G ) が負荷応力に伴い,連続的に変化することを確認しており,本手法を適用した解析法を提案している ( 6 ).本稿では,実際の CFRP 製圧力容器を製作し,耐圧試験における本手法の適用性を確認したので報告する.

2. F.C.O.G 手法の解説

F.C.O.G とは,AE 信号の周波数解析結果におけるスペクトルの代表値である.重心とは,加重平均を指しており,周波数 f i における成分強度 A( f i ) の積和を,成分強度の総和で割った値となる( ( 1 ) 式).

F C O G

A f f

A f

i ii

ii

. . .

( ) *

( )=

∑∑

 

.......................... ( 1 )

短冊型の CFRP 引張試験時の AE 計測結果例におけるAE 発生数(ヒット数)と試験荷重の時間履歴を第 1 図

に示す.左縦軸および緑線は 1 s ごとに発生した AE 発生数(ヒット数)を,右縦軸および赤線は試験荷重を表している.本試験は荷重の負荷・除荷を 3 回繰り返すことによって,カイザー効果の確認を行った.1,2 回目の

AE 法を用いた CFRP 製圧力容器の損傷評価手法Evaluation Method of CFRP Pressure Vessel using Acoustic Emission

川 﨑   拓 株式会社 IHI 検査計測 研究開発センター研究開発グループ

大 森 真 実 株式会社 IHI 検査計測 検査事業部技術部

大 森 征 一 株式会社 IHI 検査計測 検査事業部技術部

水素自動車や水素ステーションに設置される燃料タンクは,炭素繊維を用いた複合材容器となっている.筆者らは,炭素繊維強化プラスチック ( CFRP ) に対して,Acoustic Emission ( AE ) 法を用いた健全性評価手法の研究をしてきた.短冊形の試験体では,筆者らが提案する独自の周波数解析において層間剥離直前を検知可能であることが確認されている.本稿では,CFRP 製圧力容器の水圧試験における AE 法を用いた健全性評価手法を紹介する.

The fuel tanks of the hydrogen car and station are made by the pressure vessel using carbon fiber reinforced plastics ( CFRP ). We have studied the evaluation method using acoustic emission. In the tensile test, delamination can be detected using our original method of frequency analysis. In this paper, we introduce the damage evaluation method of the pressure test by CFRP fuel tanks.

Page 2: AE 法を用いた CFRP 製圧力容器の損傷評価手法 - 株 …...AE センサである.これをシリンダ部3 段,ドーム部各1 段に設置した. 第5 図に破断した際のCFRP

108 IHI 技報 Vol.59 No.1 ( 2019 )

載荷に着目すると,カイザー効果が成立しており,1 回目の載荷までは試験片が健全であったことを示している.2,3 回目の載荷では,カイザー効果が成立しなかった.AE

が発生した荷重を先行荷重で除した値をフェリシティ比

(以下,FR)と呼び,ASME では FR が 0.95 以上を合格としている.3 回目の載荷では FR が 0.7 となったため,本試験片が健全性を失ったのは 2 回目の載荷中であることが確認できる.

第 2 図に,CFRP 試験片の引張試験時に取得した AE

信号波形例を示す.周波数解析結果より,150 kHz 近傍を境に低周波数領域と高周波数領域で傾向が異なることが確認できる.高周波数領域では損傷の有無にかかわらず,負荷応力に伴いピーク周波数が高くなっている.一方で,低周波領域では損傷が発生したと考えられる抽出波形Ⅲにおいてピーク周波数が低下している.このことから,150 kHz 以下の周波数帯に着目している.AE 信号源の周波数成分は,損傷の入る速度や超音波伝搬体の成分などの要因でさまざまな周波数が混在するため,F.C.O.G に着目した解析方法を実施している.

第 3 図には F.C.O.G 集中部と荷重の時間履歴を示し,左縦軸と緑丸は F.C.O.G が 1 s ごとに最も集中した周波数を示している.第 1 図より,試験片が健全であると考えられる 1 回目の載荷では,荷重の増加とともにF.C.O.G は高くなっている.一方で,健全性を失ったと考えられる 2 回目の載荷では,試験時間 280 s 近傍において F.C.O.G が急低下していることが確認できる.筆者らは,このようなカイザー効果の成立有無と

F.C.O.G の関係を確認・報告しており,積層方法の異なる

CFRP 試験片でも同様の傾向が確認できている.さらに,断面観察の結果,F.C.O.G が上昇するとマイクロクラックが,F.C.O.G が低下するとマトリクスクラックが発生することを確認しており,F.C.O.G が低下しきると層間剥離が発生する ( 7 ).

AE発生数(

回 )

*1

試験時間 ( s )

1 回目載荷 2 回目載荷 3 回目載荷

( 注 ) FR:フェリシティ比 *1:1 s ごとの発生数

300200100

50

0 700600500400

250

300

150

0

200

100

:AE 発生数:試験荷重:抽出波形Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ

FR = 0.7

FR = 1.0

試験圧力

( M

Pa

)

800

400

600

200

0

第 1 図 AE 発生数および試験荷重の時間履歴Fig. 1 Example results of AE testing by tensile test

振幅値

( m

V )

時 間 ( µs )1000 50 150

振幅値

( m

V )

周波数 ( kHz )3002001000 400

−0.4−50

1000 50 150−50

1000 50 150−50

−0.2

0.4

0.2

0.0

0.00

0.05

0.04

0.03

0.02

0.01

0.00

0.05

0.04

0.03

0.02

0.01

0.00

0.05

0.04

0.03

0.02

0.01

−0.4

−0.2

0.4

0.2

0.0

−0.6−0.4−0.2

0.40.6

0.20.0

150 kHz

( a ) 抽出波形Ⅰ時間波形 周波数解析結果振幅値

( m

V )

時 間 ( µs )

振幅値

( m

V )

周波数 ( kHz )3002001000 400

150 kHz

( b ) 抽出波形Ⅱ時間波形 周波数解析結果

振幅値

( m

V )

時 間 ( µs )

振幅値

( m

V )

周波数 ( kHz )3002001000 400

150 kHz

( c ) 抽出波形Ⅲ時間波形 周波数解析結果

第 2 図 抽出波形Fig. 2 Pick up waveforms

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109IHI 技報 Vol.59 No.1 ( 2019 )

3. CFRP 製圧力容器における水圧試験

F.C.O.G 手法の適用性を確認するため,CFRP 製圧力容器を作製し,水圧試験を実施した.第 1 表に CFRP 製圧

力容器の仕様を示す.シリンダ部およびドーム部でそれぞれ型取りしたポリエチレン樹脂の部品を溶着してタンク型のライナを作製している.これに樹脂を含浸させた炭素繊維を巻き付け,オートクレーブにて熱硬化処理を行い成型した.センサ設置図を第 4 図に示す.CFRP 製圧力容器には,周方向に等間隔 ( 0°,120°,240° ) で 3 個の VS150-RIC

( Vallen Systeme 社:ドイツ)センサを取り付けた.本センサは 150 kHz に共振周波数をもつプリアンプ内蔵型のAE センサである.これをシリンダ部 3 段,ドーム部各 1

段に設置した.第 5 図に破断した際の CFRP 製圧力容器を示す.第 5

図 - ( a ) は CFRP 製圧力容器外観,- ( b ) はエンド側破断面である.ライナ溶着部を確認したところ,断面がきれ

F.C

.O.G集中部

( k

Hz

)*1

試験時間 ( s )

周波数が低下

周波数が上昇

280 s

300200100

70

0 700600500400

120

150

140

130

100

50

110

90

60

80

:F.C.O.G 集中部:荷 重

( 注 ) *1:1 s ごとに集中した周波数

試験圧力

( M

Pa

)

800

400

0

600

200

1 回目載荷 2 回目載荷 3 回目載荷

第 3 図 F.C.O.G 集中部における時間履歴Fig. 3 F.C.O.G vs. time

170

288 312

170200

シリンダ 591

883

154

注水側 エンド側

口金部

138

200

Ch.4Ch.1Ch.10 Ch.13 Ch.21

A-A

Ch.18

Ch.20

Ch.23

Ch.22

Ch.11 Ch.12 Ch.14 Ch.15Ch.2 Ch.3 Ch.5 Ch.6

Ch.7

Ch.8 Ch.9

A

A

Ch.1

Ch.10

Ch.12

180°

240° 120°

270° 90°Ch.19Ch.17

Ch.16

Ch.18

Ch.11Ch.3Ch.2

Y

Y

X

( 注 )   ,  ,   :センサの配置位置 Ch.1~ Ch.23 :センサの配置番号

Ch.16 Ch.19

Ch.17

第 4 図 センサ設置図(単位:mm )Fig. 4 Sample image of CFRP pressure vessel and sensor setting ( unit : mm )

第 1 表 CFRP 製圧力容器仕様Table 1 Pressure vessel specification

項 目 単 位 仕        様

炭素繊維巻き厚 mm 20

寸 法

周 長 mm 938

外 径 mm 298

全 長 mm 1 102

炭 素 繊 維 - T700*1

ライナ樹脂材料 - ポリエチレン

口 金 材 質 - アルミニウム 6061-T6 ( JIS H 0001 )

成 型 方 法 - フィラメントワインディング

(注) *1:東レ株式会社製

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110 IHI 技報 Vol.59 No.1 ( 2019 )

いに破断しており,本供試体はエンド側ドーム部ライナ溶着部から破断したと考えられる.その他の CFRP 部分には目立った損傷は見られなかった.

第 6 図に圧力負荷パターンおよび AE 発生傾向を示す.横軸に試験時間,左縦軸と緑線に 1 s ごとに発生した AE

発生数,右縦軸と赤線に圧力を示す.圧力は 20 MPa ごとに圧力負荷,保持,除荷を繰り返し,試験体が破断するまで実施した場合,破断圧力は 135 MPa であった.FR

と F.C.O.G の変化を比較するため,負荷・除荷を細かいステップで実施した.

第 7 図は FR を確認するため,横軸を試験圧力,縦軸を 0.1 MPa ごとに発生した AE 発生数(ヒット数)に整理したものである.本試験結果では,6 回目載荷まではFR1.0 であったが,7 回目載荷にて 0.7 に低下した.このことから 6 回目載荷の 75 ~ 100 MPa において ASME

規格上許容できなくなる損傷が発生したと予想される.第 8 図に 1 ~ 15Ch. を用いて計算した F.C.O.G 解析結果を示す.横軸に試験圧力,縦軸に F.C.O.G,色合いは2 MPa × 2 kHz 内に標定される AE 発生数を示している.

AE発生数(

回 )

*1

試験圧力

( M

Pa

)

試験時間 ( s )

破 断135 MPa

75 MPa55 MPa 100 MPa

125 MPa

( 注 ) *1:1 s ごとの発生数

2 000

2 000

1 000

0 10 0008 0006 0004 000

6 000

4 000

0

5 000

3 000604020

140

100

0

120

80

:AE 発生数:試験圧力

第 6 図 圧力パターンおよび AE 発生傾向Fig. 6 Tendency of AE hits ( hits and pressure vs. time )

AE発生数(

回 )

*1

試験圧力 ( MPa )

( 注 ) 4~ 5 回目載荷:FR=1.0 5~ 6 回目載荷:FR=1.0 6~ 7 回目載荷:FR=0.7 7~ 8 回目載荷:FR=0.6 *1:0.1 MPa ごとの発生数

604020

2 000

0 14012010080

10 000

12 000

6 000

0

8 000

4 000

:4 回目載荷:5 回目載荷:6 回目載荷:7 回目載荷:8 回目載荷破断圧力 135 MPa

6 回目載荷の75~ 100 MPa で損傷発生

第 7 図 フェリシティ比Fig. 7 Felicity ratio ( hits vs. pressure )

注水側 エンド側

( a ) 外 観 ( b ) エンド側

第 5 図 破断時の CFRP 製圧力容器Fig. 5 Picture of CFRP pressure vessel after broken

F.C

.O.G

( k

Hz

)

試験圧力 ( MPa )

引張試験では確認されなかった周波数集中部

( 注 ) *1:2 MPa × 2 kHz に標定される AE 発生数

604020

60

0 13014015012010080503010 1601109070

120

140

80

40

100

AE発生数 *1

第 8 図 F.C.O.G 解析結果 ( 1~ 15Ch.)Fig. 8 Results of F.C.O.G ( 1-15Ch. )

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111IHI 技報 Vol.59 No.1 ( 2019 )

エンド側 損傷位置

口金部

F.C.O.G ( kHz )

試験圧力

( M

Pa

)

6040

20

60

013

0140

150

120

100

8050

3010

160

110

9070

120

140 80 40100

試験圧力

( M

Pa

)

6040

200

1301

4015

012

010

080

5030

1016

011

090

70

試験圧力

( M

Pa

)

6040

200

1301

4015

012

010

080

5030

1016

011

090

70

F.C.O.G ( kHz )

60120

140 80 40100

試験圧力

( M

Pa

)

6040

200

1301

4015

012

010

080

5030

1016

011

090

70

注水側

中 央

注水側

2

エンド側

エンド側

2

F.C.O.G ( kHz )

60120

140 80 40100

F.C.O.G ( kHz )

60120

140 80 40100

( 注

:センサの配置位置

C

h.1~

Ch.

15 :センサの配置番号

*1

2 M

Pa

× 2

kHzに標定される

AE発生数

試験圧力

( M

Pa

)

6040

200

1301

4015

012

010

080

5030

1016

011

090

70

F.C.O.G ( kHz )

60120

140 80 40100

注水側

Ch.

4C

h.1

Ch.

10C

h.13

Ch.

11C

h.12

Ch.

14C

h.15

Ch.

2C

h.3

Ch.

5C

h.6

Ch.

7

Ch.

8C

h.9

AE

発生数

*1

多 少

AE

発生数

*1

多 少

AE

発生数

*1

多 少

AE

発生数

*1

多 少

AE

発生数

*1

多 少

第9

図 各周における

F.C

.O.G結果

Fig

.9 

Res

ults

of

F.C

.O.G

at e

ach

posi

tion

Page 6: AE 法を用いた CFRP 製圧力容器の損傷評価手法 - 株 …...AE センサである.これをシリンダ部3 段,ドーム部各1 段に設置した. 第5 図に破断した際のCFRP

112 IHI 技報 Vol.59 No.1 ( 2019 )

破断圧力 135 MPa に対して低い圧力 30 MPa で変化した.30 ~ 80 MPa にかけて周波数集中部は 60 kHz まで低下した.FR が低下した 70 ~ 100 MPa 近傍で周波数は60 kHz 近傍に集中した.これは 2 章で述べた引張試験の結果と同じ傾向であった.一方で,破断直前の 100 ~135 MPa において F.C.O.G は 90 kHz 近傍に集中し,短冊形の引張試験時の結果と異なる傾向を示した.

第 9 図に一周ごとに設置したセンサで切り分けたF.C.O.G の結果を示す.損傷位置に最も遠い注水側における F.C.O.G の結果は,圧力 30 MPa から破断に至るまで周波数は約 90 kHz に集中したまま,変化がない.その他の位置では,エンド側に近くなるごとに低周波数成分が増加していることが確認でき,エンド側に設置したセンサでは低い圧力の時から周波数集中部は低いままであったことが判明した.このことから,損傷のない箇所から発生するAE 信号の F.C.O.G は破断に至るまで 90 kHz 近傍に集中することが予想される.したがって,各部位に設置されたセンサで解析することにより,損傷位置を捉えることができた.

4. 結    言

本稿では,CFRP 製圧力容器における健全性評価手法に,従来のカイザー効果とは異なる独自の周波数解析方法を適用した.ASME 規格に制定されている FR と周波数の低下は良い一致を示した.健全性評価手法としては,周波数が 60 kHz まで低下すると ASME 規格に基づく合格ラインを下回ることが確認できた.加えて,F.C.O.G は破断圧力 135 MPa に対して,圧力

30 MPa から変化するため,供試体破断に対して 20%近傍の圧力から破断までの変化を監視することが可能である.一方で,短冊形の引張試験とは異なり,広範囲を監視するため,損傷に起因した AE 信号と,健全部から発生する AE 信号が複合されて検知されることが確認された.今後は実機適用を踏まえ,必要なセンサ数と各センサの監視範囲を明確にすることで十分な適用性がある.

参 考 文 献

( 1 ) 川﨑 拓,滝沢真実,中島富男,中村英之,岡崎順二,中川幸次郎:水圧疲労試験による高圧水素用CFRP 蓄圧器への AE 試験適用性検討,IIC REVIEW,No. 52,2014 年 10 月,pp. 23 - 28

( 2 ) 上野谷敏之,水谷義弘:3. 損傷・破壊モニタリングと評価,材料,Vol. 55,No. 3,2006 年 3 月,pp. 341

- 347

( 3 ) ASME Boiler and Pressure Vessel Code Section V

Article 11:Acoustic Emission Examination of Fiber

Reinforced Plastic Vessels,American Society for

Mechanical Engineers Latest edition

( 4 ) F. Lissek,A. Haeger,V. Knoblauch,S. Hloch,F. Pude and M. Kaufeld:Acoustic emission for

interlaminar toughness testing of CFRP: Evaluation of

the crack growth due to burst analysis,Composites,part B,( 2018. 3 ),pp. 55 - 62

( 5 ) D. Baccar and D. Söffker,Proc.:Identification

and classif ication of failure modes in laminated

composites by using a multivariate statistical analysis

of wavelet coeff icients,Mechanical Systems and

Signal Processing,Vol. 96,( 2017. 11 ),pp. 77 - 87

( 6 ) M. Takizawa, H. Kawasaki, H. Nakamura, H. Sato

and I. Iida:Study of the Damage Evaluation Method

for the CFRP Material Using F.C.O.G part 1,Proc. in

Acoustic Emission XVⅡ,JSNDI International

Acoustic Emission Symposium,( 2014. 11 ),pp. 105

- 110

( 7 ) H. Kawasaki,M. Takizawa,H. Nakamura,H.

Sato and I. Iida:Study of the Damage Evaluation

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