agilent eesof 3d em 磁気共鳴による無線電力伝送 ......empro femによる解析 september...
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EMPro application example
Agilent EEsof
3D EM
Application series
磁気共鳴による無線電力伝送
システムの解析
September 21, 2010
アジレント・テクノロジー第3営業統括部EDAアプリケーション・エンジニアリングアプリケーション・エンジニア
佐々木 広明
Agilent Technologies Japan
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EMPro application example
アプリケーション概要
実情と現状の問題点非接触による電力の供給システムは、以前から研究、実用化されていますが、そのほとんどが電磁誘導の原理を利用したシステムで、伝送効率と伝送距離の両方を満足するためには大きな課題がありました。近年、MITより「磁気共鳴」という方式が提案され、理論に基づいた試作機にて実証したことにより、高出力、高効率、長距離伝送の可能性が開けてきました。その設計には、回路理論、電磁界理論など様々な知識が必要とされています。
主な対象となる方・アプリケーション 無線電力伝送(非接触電力伝送)
家電、自動車、PC、医療機器などの電源を必要とするすべてのシステム
(特に、無線化により安全性、利便性向上できるもの
問題解決のための最適な解析ソリューション• EMProユーザーインターフェイス : 3次元形状入力インターフェイス
• EMPro解析エンジン : 有限要素法(FEM)
• ADS回路シミュレーション
導入のメリット3次元電磁界ツールの導入により、解析する形状、材質の入力のみで、簡単に磁気共鳴電力伝送のモデル化が可能になります。パラメータ・スイープ機能により形状のパラメータ化が可能であり、モデルの最適点を功利的に求めることが可能です。また、モデル周辺の形状も同時に解析することにより、実際の使用環境に近いモデルでの特性の評価が可能になります。
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共鳴型ワイヤレス給電システム
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図1 MIT型の共鳴型ワイヤレス給電システム[1]
A BS D
MIT型の給電システムを図1に示します。Aのループコイルに接続された高周波電力が、送信側コイルSに伝わることで電力を送信します。SとDはお互いに同じ共振周波数をもつヘリカル形状のコイルで、電磁共鳴により電力を送信します。Dに送信された電力は、負荷が取り付けられたループアンテナBにより取り出すことができます。
図2 MITによる検証実験モデル[2]
距離2.1 mで伝送効率が40 %を確認
A, B ループコイル半径 : r = 250 [mm]
導線直径 : a= 3.0 [mm]
S,Dコイルコイル長 : a = 200 [mm]
半径 : r = 300 [mm]
導線直径 : a= 3.0 [mm]
巻き数 : n = 5.25
コイル材質 : 銅
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EMProによる共鳴型電力伝送モデル化
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図3 EMPro GUI
l = 1.5 m
EMPro Parts Libraryによりヘリカル形状の入力も可能
共鳴型電力伝送モデルを電磁界解析するために、EMProでモデル化を行います。図3にモデル図を示します。ループコイルなどのサイズは、図2のMITモデルを参照し、アンテナ間距離 : l =1.5 mで解析を行いました。なお、モデルの単純化のため、コイルは、真円ではなく8角形とし、導線の断面も4角形にてモデル化しています。
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EMPro FEMによる解析
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電力伝送効率 : η 21
η 21 = 100×|S21|2 [%]
EMPro FEMによる解析結果を図4に示します。解析結果はS-パラメータの他、電界、磁界の空間分布も表示することが可能です。
図4 EMPro 解析結果
a) S-parameter解析結果 (S21, S11) b) 電界分布表示 (コイル間断面) c) 磁界分布表示 (コイル間断面)
図4 a) よりアンテナ間伝送効率を求めると約74 %の伝送効率が求められます(図5)。これは、次項図6 のMITの理論値とほぼ一致しました。
図5 伝送効率 (l = 1.5 m)
送信側
受信側
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解析結果の比較
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図6 電力伝送効率と伝送距離との関係[1]
(MITによる理論と実験)図7 EMProによる解析結果
次に、図3の送受信コイル間の距離をパラメータとして、EMProにて電磁界解析を行いました。結果を図7に示します。図6のMITの理論値、実験結果と比較して、よく一致することを確認しました。これにより、EMProでの解析で実測とほぼ同等の解析を行うことが可能なことが確認できました。
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モデル周辺環境の影響 : 金属板の効果
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1.6 m□ の金属板
図8 金属板の影響の解析 (アンテナ間距離 : l = 1 m)
共鳴型電力伝送の場合、電磁誘導型などと比較し周辺環境の影響を受けにくいと言われています。そこで送受信アンテナ間に大きな金属板を挿入した場合の影響をEMProで解析を行いました。アンテナ間距離は、1 m とし、金属板は中央に配置しています。
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l = 1.0 m 金属板無し l = 1.0 m 金属板有り
E-field
H-field
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モデル周辺環境の影響 : 金属板の効果
送信側
受信側
解析モデル 伝送効率 [%]
金属板無し 90.1
金属板有り 56.7
図9 電界磁界分布解析結果
表1 伝送効率
解析結果を表1に示します。金属板がない場合に約90 %の伝送効率が、金属板がある場合、約57 %となりました。効率は大幅に落ちるものの、金属板でアンテナ間を遮蔽した場合でも、50 %以上の伝送効率が得られました。他の方式ではこのような効率を得ることは困難です。電界、磁界分布の結果を図9に示します。金属板がある場合でも、ない場合と比較すると少ないですが、共鳴状態となり電力が送信できていることが確認できます。
金属板
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伝送効率向上の検討
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l = 2.0 m
図10 リピータ・デバイスの解析 (アンテナ間距離 : l = 2 m)
伝送効率の向上として、リピータ・デバイスを挿入する方法が提案されています。そこで、図1のS, Dのヘリカル型コイルと同じコイルをリピータ・デバイスとしてアンテナ間に挿入し、解析を行いました。
a) リピータ・デバイス無し b) リピータ・デバイス有り (中央に配置)
リピータ・デバイス
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Repeater Device 無し Repeater Device 有り
E-field
H-field
電力伝送の効率化の検討 : 伝送距離 2 m
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送信側
受信側
Repeater
解析モデル 伝送効率 [%]
Repeater Device 無し 48.4
Repeater Device 有り 80.1
表2 伝送効率
図11 電界磁界分布解析結果
解析結果を表2に示します。自由空間におけるアンテナ間距離 2 mのとき、伝送効率が48.4 %の結果が、リピータ・デバイスを挿入することにより、約80 %まで伝送効率が向上しました。電界、磁界分布の結果を図11に示します。リピータ・デバイスを挿入した場合、各ヘリカル型アンテナが共鳴状態となり、電力が伝送されている様子が確認できます。
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今後の拡張 : システム全体での伝送効率の検証
September 21, 2010
共振型電力伝送の電磁界モデルを検証後には、コイル以外のシステム全体での検証が必要になると考えます。EMProでは、簡単に弊社回路シミュレータのADSと協調して解析を行うことができます。したがってシステム全体での解析を、EMProとADSで効率よく検証することが可能になります。
EMProの解析結果はADS
DesignKitとしてImport可能
ADS回路シミュレータ上で、信号発生回路、整流回路を含めシステム全体解析が可能
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まとめ
References[1] A. Kurs, A. Karalis, R. Moffatt, J.D. Joannopoulos, P. Fisher, and M. Soljačić : “Wireless Power Transfer
via Strongly Coupled Magnetic Resonances,” Science, 317, pp. 83-86 (2007)
[2] Supporting Online Material for [1]
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・ 共鳴型無線電力伝送システムは、電磁界解析ツールを使って簡単にモデル化および、解析結果の検証を行うことができます。
・ EMPro FEMの解析結果は、理論値とほぼ一致することを確認しました。
・ EMProでは、電力伝送モデルだけではなく、実装環境に近いモデルで検証することが可能なので、使用環境に合わせた最適設計を行うことができます。
・ システム全体のモデルの検証が必要な場合には、ADS回路シミュレータを使用して、効率的にEMProとの協調解析が可能になります。