人工知能のための哲学塾 第四夜「デリダ・差延・感覚」資料...

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人工知能のための哲学塾 #Act_4 デリダ・差延・感覚

三宅 陽一郎 @miyayou

2016.3.7 @小田急サザンタワー

人工知能のための哲学塾 https://www.facebook.com/groups/1056157734399814/ 第零回資料 (2015.5.28) http://www.slideshare.net/youichiromiyake/ss-48781470 第一回資料(2015.9.30) http://www.slideshare.net/youichiromiyake/ss-53507300 第二回資料(2015.12.3) http://www.slideshare.net/youichiromiyake/ss-55700355 第三回資料(2016.2.1) http://www.slideshare.net/youichiromiyake/ss-57713927

https://www.facebook.com/youichiro.miyake http://www.slideshare.net/youichiromiyake y.m.4160@gmail.com

「ゲーム、人工知能、環世界」

• 現代思想 12月号

(青土社)

• 2015年11月28日発売

• 「人工知能特集」

http://www.seidosha.co.jp/index.php?9784791713097

WIRED A.I.

• WIRED A.I.+ Wired City

• 12月1日発売

• 「人工知能+街 特集」

なぜぼくらには人工知能が必要なのか──『WIRED』Vol.20「人工知能+未来都市」 2大特集・特別保存版 刊行に寄せてhttp://wired.jp/2015/12/01/vol20-editors-letter-ai/

「IT、都市、ヘルスケア、あらゆる領域で 人工知能と人間が共創する未来」

• WIRED 「INNOVATION INSIGTS」

http://wired.jp/innovationinsights/post/analytics-cloud/w/cocreation_with_ai

はじめに

• 哲学がどのようにゲームにおける人工知能を作る足場になっているかを解説する。

• これは哲学全体の説明ではなく、ゲームのAIを作る中で必要とされた哲学を、一本の線でつなげて解説しようとする試みである。

• 第4回は、これからのAIを作るためのロードマップを話します。今では未達成、これからの話になることをご了承ください。

はじめに

哲学全体

はじめに ゲームの中、特にキャラクターという知能を作るために必要とする哲学。 それは僕が必要に迫られて実用の方向からつかんできたもの。

はじめに ゲームの中、特にキャラクターという知能を作るために必要とする 哲学を数珠つなぎにして展開して行きます。

今回取り上げる哲学とその周辺

デカルト

フッサール

ハイデガー

メルロ=ポンティ サルトル

ブレンターノ

ドイツ現象学派

フランス現象学派

ユクスキュル

マックス=シェーラー

ピアジェ

サッチマン

ベルクソン

ベルンシュタイン

チョムスキー

デネット

ソシュール

哲学者 言語学者 科学者 人類学者 心理学者

ギブソン

レヴィ・ストロース

ヤコブソン

数学者

ブルバキ デリダ

ライプニッツ

ラッセル

フレーゲ

精神分析家

ラカン

本日のコンテンツ

第零章 前置き(復習)

(1) エージェント・アーキテクチャ

(2) 意識モデル

第一章 構造主義

第二章 構造主義/ポスト構造主義と人工知能

第三章 意識と無意識と人工知能:

「声を発する、声を聴く」

第四章 言語と知能

付録 グループワーク課題集

本日のコンテンツ

第零章 前置き(復習)

(1) エージェント・アーキテクチャ

(2) 意識モデル

第一章 構造主義

第二章 構造主義/ポスト構造主義と人工知能

第三章 意識と無意識と人工知能:

「声を発する、声を聴く」

第四章 言語と知能

付録 グループワーク課題集

前置き(復習)

第零章

(1) エージェント・アーキテクチャ

環境

人工知能とは?

身体

人工知能=人工的な存在(=身体)を環境の中で活動させる

入力(センサー) 行動(アウトプット)

知能

知能の世界

環境世界

認識の 形成

記憶

センサー・身体

記憶体

情報処理過程

情報 統合

知能の世界

環境世界

認識の 形成

記憶

意思の 決定

センサー・身体

意思決定 モジュール

意思決定 モジュール

意思決定 モジュール

記憶体

情報処理過程

情報 統合

知能の世界

環境世界

認識の 形成

記憶

意思の 決定

身体 制御

エフェクター・身体

運動の 構成

センサー・身体

意思決定 モジュール

意思決定 モジュール

意思決定 モジュール

記憶体

情報処理過程 運動創出過程

身体部分

情報 統合

運動 統合

知能の世界

環境世界

認識の 形成

記憶

意思の 決定

身体 制御

エフェクター・身体

運動の 構成

センサー・身体

意思決定 モジュール

意思決定 モジュール

意思決定 モジュール

対象・ 現象

情報の流れ(インフォメーション・フロー)

影響を与える 影響を受ける

デリダ

• 「テクストの外というものは存在しない」

知能の世界

環境世界

認識の 形成

記憶

意思の 決定

身体 制御

エフェクター・身体

運動の 構成

センサー・身体

意思決定 モジュール

意思決定 モジュール

意思決定 モジュール

対象・ 現象

情報の流れ(インフォメーション・フロー)

影響を与える 影響を受ける

知能そのものが、 読み込まれ、書き込まれるテキストと

解釈できないことはない。

知能もまた、エクリチュール(書かれたもの)である。

知能の世界

環境世界

認識の 形成

記憶

意思の 決定

身体 制御

エフェクター・身体

運動の 構成

センサー・身体

意思決定 モジュール

意思決定 モジュール

意思決定 モジュール

対象・ 現象

情報の流れ(インフォメーション・フロー)

影響を与える 影響を受ける

その場合、インフォメーションフローに従って、 さまざまな記憶の「痕跡」が、

知能の上に残されることになります。

知能の運動の痕跡が記憶に残される

時間

本日のコンテンツ

第零章 前置き(復習)

(1) エージェント・アーキテクチャ

(2) 意識モデル

第一章 構造主義

第二章 構造主義/ポスト構造主義と人工知能

第三章 意識と無意識と人工知能:

「声を発する、声を聴く」

第四章 言語と知能

付録 グループワーク課題集

意識モデル

MC = Machine Consiouness

• マシンの持つ意識(MC)についてはゲーム分野ではあまり研究されてこなかった。

• 最近は、MCの研究が盛り上がりつつある。

• ゲーム分野のAIについてもMCを考えたい。

• ここでは、あまり哲学的な議論に立ち入らないために、意識⇒注意 と置き換えて考えます。

2つの意識の種類

P - Consciousness (Phenomenal consciousness) 現象的意識(主観的体験、クオリア)

A - Consciousness ( Access consciousness) 精神活動に対する意識 (Ned Block, 1942)

2つの意識の種類

P - Consciousness (Phenomenal consciousness) 現象的意識(主観的体験、クオリア)

A - Consciousness ( Access consciousness) 精神活動に対する意識 (Ned Block, 1942)

A-Consciousness に関する3つのアイデア

(1)黒板モデル =ブラックボード・アーキテクチャ

(Blackboard Architecture)

(2) GWT = Global Workspace Theory

(Baar, 1988)

(3) MDM = Multiple Draft Model

(Dennett, 1991)

(1) ブラックボード・アーキテクチャ(Blackboard Architecture)

Blackboard

KS

KS

KS

KS

KS

KS

Arbiter

Motivations

Emotions

Attention

Etc.

特徴: - 中央の黒板に情報が蓄積される(されて行く)。 - モジュールはKS(=Knowledge Source)と呼ばれ、特定の専門的な知識や技術に基づいた操作を黒板の情報に対して行う。 - Arbiter(=調停者)がKSをどのように(順序、タイミングなど)動作させるかを行う。

Bruce Blumberg , Damian Isla, "Blackboard Architectures", AI Game Programming Wisdom (Charles River Media) , 2002

(2) Baar’s Global Workspace Theory (GWT)

フォーカス している対象の

情報

Working Space

Processor

GWT (Global Workspace Theory)

フォーカス している対象の

情報

劇場と観衆のモデル。スポットライトがあたっている部分(注意=フォーカスが向いている対象)に観衆(プロセッサー)が注意して処理を行う。

Working Space

Processor

Dennett’s Multiple Draft Model

意識

無意識

協調

http://www.conscious-robots.com/en/conscious-machines/theories-of-consciousness/multiple-draft.html

仮想マシン

新聞社の編集モデル。新聞社にはたくさんの新しい情報が来て、何度も記事が 書きなおされる。最終版だけがリリースされる。編集者=協調するプロセッサー、

新聞=意識の登る情報。

A-Consciousness に関する3つのアイデア

(1)黒板モデル =ブラックボード・アーキテクチャ

(Blackboard Architecture)

(2) GWT = Global Workspace Theory

(Baar, 1988)

(3) MDM = Multiple Draft Model

(Dennett, 1991)

3つのアイデアをかけあわせる

Arrabales, R. Ledezma, A. and Sanchis, A. "Towards the Generation of Visual Qualia in Artificial Cognitive Architectures". (2010) http://www.conscious-robots.com/raul/papers/Arrabales_BICS2010.pdf

意識を生成する仕組み

CERA = レイヤー構造 CRANIUMU = プロセッサー群

Global Workspace Theory (GWT)

注意の焦点 Focus of Attention

(スポットライト)

舞台裏の人々=ディレクター、シーンデザイナー、など。

コンテキストの生成とコントロール(舞台裏)

ワーキングメモリ (Scene,Stage)

専門 プロセッサー (観客)

ブロードキャスト

テンポラリー な連携

Arrabales, R. Ledezma, A. and Sanchis, A. “Towards the Generation of Visual Qualia in Artificial Cognitive Architectures”. (2010) http://www.conscious-robots.com/raul/papers/Arrabales_BICS2010.pdf

Baar’s Global Workspace Theory (GWT)

注意の焦点 Focus of Attention

(スポットライト)

舞台裏の人々=ディレクター、シーンデザイナー、など。

コンテキストの生成とコントロール(舞台裏)

ワーキングメモリ (Scene,Stage)

専門 プロセッサー (観客)

ブロードキャスト

テンポラリー な連携

意識の構造を舞台に見立てています。ステージ(=ワーキングメモリ)上にスポットライト(=注意、アテンション)が注ぐところに、注意の焦点があります。

Arrabales, R. Ledezma, A. and Sanchis, A. “Towards the Generation of Visual Qualia in Artificial Cognitive Architectures”. (2010) http://www.conscious-robots.com/raul/papers/Arrabales_BICS2010.pdf

Arrabales, R. Ledezma, A. and Sanchis, A. “Towards the Generation of Visual Qualia in Artificial Cognitive Architectures”. (2010) http://www.conscious-robots.com/raul/papers/Arrabales_BICS2010.pdf

Baar’s Global Workspace Theory (GWT)

注意の焦点 Focus of Attention

(スポットライト)

舞台裏の人々=ディレクター、シーンデザイナー、など。

コンテキストの生成とコントロール(舞台裏)

ワーキングメモリ (Scene,Stage)

専門 プロセッサー (観客)

ブロードキャスト

ブロードキャスト

テンポラリー な連携

その輝いている領域が、観客(=プロセッサー)と舞台裏のこのお芝居を支えている人々に向けて見られる(=ブロードキャスト)ことになり、観客から拍手なりアドバイスなりが返されることで舞台上の演技が変化して行きます。

いろいろな意見や反響が返されることで 舞台上の演技がまた変化していく。

Arrabales, R. Ledezma, A. and Sanchis, A. “Towards the Generation of Visual Qualia in Artificial Cognitive Architectures”. (2010) http://www.conscious-robots.com/raul/papers/Arrabales_BICS2010.pdf

Baar’s Global Workspace Theory (GWT)

注意の焦点 Focus of Attention

(スポットライト)

舞台裏の人々=ディレクター、シーンデザイナー、など。

コンテキストの生成とコントロール(舞台裏)

ワーキングメモリ (Scene,Stage)

専門 プロセッサー (観客)

ブロードキャスト

ブロードキャスト

テンポラリー な連携

観客(=プロセッサー)は必要の応じて連携したグループ(Interim Coalition)になって、その中で意見を戦わせて調整して発表することもあります。

Global Workspace Theory (GWT)

注意の焦点 Focus of Attention

(スポットライト)

舞台裏の人々=ディレクター、シーンデザイナー、など。

コンテキストの生成とコントロール(舞台裏)

ワーキングメモリ (Scene,Stage)

専門 プロセッサー (観客)

ブロードキャスト

ブロードキャスト

テンポラリー な連携

【まとめ】観客(=プロセッサー)はステージ(=ワーキングメモリ)上にスポットライト(=注意、アテンション)が注がれた役者の演技(=オブジェクトの振る舞い)について考えて(=情報処理、思考)意見を役者に伝えます(=ワーキングメモリに書き込みます)。

Arrabales, R. Ledezma, A. and Sanchis, A. “Towards the Generation of Visual Qualia in Artificial Cognitive Architectures”. (2010) http://www.conscious-robots.com/raul/papers/Arrabales_BICS2010.pdf

いろいろな意見や反響が返されることで 舞台上の演技がまた変化していく。

CERA-CRANIUM認識モデル

Arrabales, R. Ledezma, A. and Sanchis, A. "Towards the Generation of Visual Qualia in Artificial Cognitive Architectures". (2010) http://www.conscious-robots.com/raul/papers/Arrabales_BICS2010.pdf

単純な認識 Single Percept が 得た情報から さらにProcessor が 解釈した情報を、 同じ Workspaceに書き込む

CERA-CRANIUM認識モデル

Arrabales, R. Ledezma, A. and Sanchis, A. "Towards the Generation of Visual Qualia in Artificial Cognitive Architectures". (2010) http://www.conscious-robots.com/raul/papers/Arrabales_BICS2010.pdf

CERA-CRANIUM認識モデル

Arrabales, R. Ledezma, A. and Sanchis, A. "Towards the Generation of Visual Qualia in Artificial Cognitive Architectures". (2010) http://www.conscious-robots.com/raul/papers/Arrabales_BICS2010.pdf

CORE Layer は、Physical Laryer 、Mission Layer のうちで、 どの認識を生成するかを決定するコマンドを投げる。

CERA-CRANIUM認識モデル

Arrabales, R. Ledezma, A. and Sanchis, A. "Towards the Generation of Visual Qualia in Artificial Cognitive Architectures". (2010) http://www.conscious-robots.com/raul/papers/Arrabales_BICS2010.pdf

2つの意識の種類

P - Consciousness (Phenomenal consciousness) 現象的意識(主観的体験、クオリア)

A - Consciousness ( Access consciousness) 精神活動に対する意識 (Ned Block, 1942)

今日はこちらの方を考えてみましょう

問一「人工知能と意識」

• 人工知能にとって意識とは何か?

• 人工知能に意識を宿すことは可能か?

• 意識を持つ人工知能は、

それを持たない人工知能より優秀だろうか?

本日のコンテンツ

第零章 前置き(復習)

(1) エージェント・アーキテクチャ

(2) 意識モデル

第一章 構造主義

第二章 構造主義/ポスト構造主義と人工知能

第三章 意識と無意識と人工知能:

「声を発する、声を聴く」

第四章 言語と知能

付録 グループワーク課題集

構造主義

第一章

構造主義/ポスト構造主義の系譜

フレーゲ (独、1848-1925)

アンドレ・ヴェイユ (仏、1906-1998)

ローマン・ヤコブソン (露(米)、1896-1982)

レヴィ・ストロース (仏(米)、1908-2009)

ジャック・デリダ (仏、1930-2004)

ニコラ・ブルバキ (仏、1935-1998)

アンドレ・ヴェイユ アンリ・カルタン クロード・シュヴァレー ジャン・デュドネ ジャン・デルサルト

ジャック・ラカン (仏、1901-1981)

ソシュール (スイス、1857-1913)

構造主義とは?

一見異なる、対象の中にも、共通する(数学的、記号的)構造がある。

ブルバキ「数学原論」(1935-1998)

• ブルバキはフランスの著名な数学者からなる数学集団(アンドレ・ヴェイユ、アンリ・カルタン、クロード・シュヴァレー、ジャン・デュドネ、ジャン・デルサルト)。

• 集合論の上に、位相構造(連続性)、代数構造(操作性)、順序構造(数について)の構造を入れることで、

• 徹底した抽象化と厳密性の上に、数学を再記述した。

• http://www.bourbaki.ens.fr/

ブルバキ「数学原論」(1935-1998)

http://www.bourbaki.ens.fr

ブルバキ

複数の乱立する数学も、実は見え方が違うだけで、実は同じ数学なんだ。

ブルバキ「数学原論」(1935-1998)

数学 数学 数学 数学

構造

(例)二次元行列代数と 複素数代数は同型

𝐴 𝑐𝑜𝑠𝜃 𝑠𝑖𝑛𝜃𝑠𝑖𝑛𝜃 −𝑐𝑜𝑠𝜃

  ⇔ 𝐴 𝑒𝑖𝜃  

(a,b)

a

b

虚軸

a+bi

a

b

実軸

(例)二次元行列代数と 複素数代数は同型

𝐴 𝑐𝑜𝑠𝜃 𝑠𝑖𝑛𝜃𝑠𝑖𝑛𝜃 −𝑐𝑜𝑠𝜃

  ⇔ 𝐴 𝑒𝑖𝜃  

(a,b)

a

b

虚軸

a+bi

a

b

実軸

θ θ

𝐴 𝑒𝑖𝜃 (a + 𝑏𝑖)  𝐴 𝑐𝑜𝑠𝜃 𝑠𝑖𝑛𝜃𝑠𝑖𝑛𝜃 −𝑐𝑜𝑠𝜃

𝑎𝑏

代数にはいろんな代数があるが、変換すると同じ代数になってしまう=代数的同型 位相にはいろんな位相があるが、変換すると同じ位相になってしまう=位相同型

構造主義とは?

一見異なる、対象の中にも、共通する(数学的、記号的)構造がある。

数学A 数学B 数学C

構造主義

• 物事の中に潜む構造によって、物事を理解する。

• 構造=とても普遍的なもの。とても数学的なもの。記号的なもの。

• 横串のように複数の分野に共通する構造を見出す。

• そこから、むしろ構造を第一として、理論を組み直す。(=構造主義)

構造主義とは?

フェルナンド・ソシュール (1857-1913)

• 10代で言語学で画期的な業績を上げる。

• パリ大学で教えた後、ジュネーブ公共大学へ戻る。

• 1905-1906年に「一般言語学」を講義する。

• この講義内容が20世紀に構造主義の基礎となる。講義ノートが後に収集され出版される。

• 「一般言語学講義」

ソシュール「一般言語学講義」 (原著:1906-1911年, 翻訳:2007年、影浦 峡, 田中 久美子 )

• シニフィアン/シニフィエ

=語と語の意味するもの

=世界の分節化

=世界と知能が記号(シーニュ)でつながる。

20世紀の言語・論理学者・精神分析に

(ヤコブソン、チョムスキー、ラカン、など)

に本質的かつ継続的な影響を与える。

シニフィアン

シニフィエ 語(記号)

通時的、共時的(ソシュール)

• 通時的=時間に沿って、歴史的に。

• 共時的=現在、その時を共有して。

通時的

共時的

ローマン・ヤコブソン(1896-1982)

• ロシアに産まれる。後に亡命してアメリカへ。

• そこでレヴィ・ストロースと親交を持つ。

• ソシュールからの流れを受けて、言語学に通事的な研究(歴史的な言語の変遷)だけでなく、共時的研究(複数の言語に共通する構造を見出す)を始める。

• 膨大な著作

• 代表作「一般言語学」

ローマン・ヤコブソン「一般言語学」 (原著:1963年、翻訳:1973年 田村すゞ子, 長嶋善郎, 中野直子)

• 類型学は言語の音韻構造の根底に、そして明らかにまた形態構造の底に、存在する包含の法則 laws of implication を明るみに出す:Aの存在はBの存在(または不在)を必然的に内包するという法則である。このおようにしいて、人類学者のいう同一性や準同一性を世界の諸言語の中に見出すことができる。

• 世界の諸言語のいっそう正確な、徹底的な記述が行われたあかつきには、それは必ずや一般法則のコードを補充し、修正し、完璧にすることであろう。

(一般言語学、みすず書房、P.49)

構造主義とは?

一見異なる、対象の中にも、共通する(数学的、記号的)構造がある。

音韻構造A 音韻構造B 音韻構造C

レヴィ・ストロース(1908-2009)

• 構造主義を世に広める。

• フランスで哲学教授資格を得て、ブラジルのサンパウロへ社会学の教授として赴任。

• アマゾン河流域の原住民へのフィールドワークを行う。

• その後、ニューヨークの研究所に滞在し、フィールドワークを行いながら、亡命してきた、ヤコブソンから構造学的な言語学を知る。

• ヤコブソンは、ブルバキの構造化された数学の話をストロースに話す。 • フィールドワークの成果を構造を通して理論化、「構造人類学」として結実。 • 異なる神話の中に同じ構造を見出す。(神話素から関係性を構築) • 異なる民族の中に同じ婚姻構造を見出す。(ある視点から見ると同じ) • フランスに帰り、社会人類学の講座をコレージュ・ド・フランスに開く(1959年)。

• サルトル-レヴィ・ストロースの歴史を巡る論争はとても有名。

レヴィ・ストロース「構造人類学」 (原著:1958年、訳:1972年 荒川幾男・生松敬三・川田順造・佐々木明・田島節夫)

• (1) 神話が意味をもつとすれば、その意味は神話の構成に入って来る個々の要素ではなく、それらの意味が結び付けられている仕方にもとづいている。

• (2) 神話は言語の種類に属し、その構成部分をなしている。とはいえ、神話の中で用いられる言語は特殊な諸性格を示す。

• (3) これらの諸性格は、言語表現の通例の水準より上にしかもとめることができない。換言すれば、それらは他の何らかの言語表現の中に見いだされるものよりも複雑な性質のものである。

(構造人類学、みすず書房、P.233)

レヴィ・ストロース「野生の思考」 (原著:1962年、訳:1976年大橋保夫)

• こう考えてくると、当然もう一つの困難な検討をやらなければならなくなる。神話が儀礼に出てくる動物、植物、鉱物、天体、自然現象のそれぞれを正確に同定するだけでは十分ではない-これはとても多様な仕事であって、民族家にその訓練ができていることは少ないが-。その上に、各文化が記号作用体系の中でそれらの要素に如何なる役割を与えているかを知らねばならない。

• (野生の思考、みすず書房、P.64)

構造主義とは?

一見異なる、対象の中にも、共通する(数学的、記号的)構造がある。

神話A 神話B 神話C

ジャック・ラカン(1901-1981)

• フロイトの綿密な読解の上に、ラカン派と呼ばれる精神分析の一派を作り上げる。

• 著作は難解として知られる。 • (数学的、記号的)構造を精神分析に持ち込む。

• パリ・フロイト派を設立。フランスにおける精神分析を広める。

• 鏡像段階などの研究で有名。

• 毎週、セミナーを開き、その記録が「エクリ」として出版される。

ラカン「無意識の形成物」

シニフィアンの連鎖の平面

A M

「私」 「対象」

1

2

3

II

III

I

ラカン「無意識の形成物」 (原著:1957-1958年、 翻訳:2005年、ジャック ラカン (著), ジャック=アラン ミレール

(編集), 佐々木 孝次 (翻訳), 川崎 惣一 (翻訳), 原 和之 (翻訳))

A M

私 対象

• これはいったい何を書き表しているでしょうか。それは欲求の機能です。何かが表現されるわけですが、これは主体から発しています。我々はそれを主体の欲求の線としましょう。この線はここ、Aで終わりますが、このAで我々がディスクールとして取り出したものの曲線とまじわっています。ディスクールは、既存の素材を動員することによって作られています。私がディスクールの線を発明したわけではありません。その線においては、この時点ではまだごくわずかなシニフィアンの蓄えが使われており、主体は、それとのかかわりで何かを分節化するわけです。

• (無意識の形成物(上)、岩波新書、P.129)

本日のコンテンツ

第零章 前置き(復習)

(1) エージェント・アーキテクチャ

(2) 意識モデル

第一章 構造主義

第二章 構造主義/ポスト構造主義と人工知能

第三章 意識と無意識と人工知能:

「声を発する、声を聴く」

第四章 言語と知能

付録 グループワーク課題集

構造主義/ポスト構造主義と人工知能

第二章

知能の世界

環境世界

認識の 形成

記憶

意思の 決定

身体 制御

エフェクター・身体

運動の 構成

センサー・身体

意思決定 モジュール

意思決定 モジュール

意思決定 モジュール

対象・ 現象

情報の流れ(インフォメーション・フロー)

影響を与える 影響を受ける

知能(S)とは?

時間

知能(S)とは?

知能は私自身を知覚している。

時間

知能(S)とは?

知能は私自身を知覚している。 これはいかにして可能か?

時間

今回のテーマ

• 自己(=知能)とは何か? • 自己と自己に対する関係

• 我々は我々自身を知覚している。 • 自分が自分を知覚している。(自覚)

• それはいかにして可能か?

• 自己との接続・自己の回帰(認識)・自己との対決

知能(人間)の特徴

• 知能は構造である。

知能(人間)の特徴

• 知能は構造である。

と同時に、

• 知能は構造から逃れようとする運動でもある。

(自分自身から逸脱しようとする)

• 知能は時間の中で,このような二重性を持つ。

自己(S)同一性

• 「AはAである。」

自己(S)同一性

• 「AはAである。」という時、最初のAと、二つ目のAは違う。

• Aは自分を対象化(異化)することによって、はじめてこの言明は可能である。

A A自身 対象化されたA

自己(S)同一性

• 石は石である。

• エッフェル塔はエッフェル塔である。

• 東は東である。

A A自身 対象化されたA

自己(S)同一性

• 私は私である

• これは何を意味するだろうか?

• 我々が自分を対象化・客体化・異化できるのはなぜだろうか?

A A自身 対象化されたA

過去の自己/現在の自分/未来の自分

St=k-1

自己(Self)

過去の自己/現在の自分/未来の自分

St=k-1

St=k

自己(Self)

過去の自己/現在の自分/未来の自分

St=k-1

St=k

St=k+1

同一のものでありながら、 変化して行く 自己と自己の関係

自己(Self)

過去の自己/現在の自分/未来の自分

St=k-1

St=k

St=k+1

差異を持ちつつ、時間的に遅延して行く。 この現象を差延(differance)という。

※デリダの造語

過去の自己/現在の自分/未来の自分

St=k-1

St=k

St=k+1

自己は差延の作用によって、どんどん 自分自身からさえ脱却して行く。 であるからこそ、対象化される。

自己(S)同一性

• この差延を内包するのが自己である。

• 微分的な意味において。

• 差異化されながら未来へ運ばれる。

(テセウスの船の微分版)

S’ A自身 対象化されたA

差異化 Differentiate

対象化

差延(differance)

違うこと。差異 (difference)

先送りにすること (differ, differant)

差異を作りながら、 先送りになること。 (differance)

※デリダの造語

知能にとって「遅れ異なる」(差延)は本質的なこと

• 知能が一挙に解決しないこと。

• 差異化される、遅れる、ことは、知能の継続性・連続性を保証する。

• 先送りにできることで、処理を未来に託すことができる。

• さまざまな過去の残響が積み重なる。

• 過去からの継続と、未来への委託、が現前に紛れ込む。

• 現前は、過去と未来とのつながりの中にある。

• 差異化されながら、統合(synthesis)への力も働く。

問二「人工知能と自意識」

• 人工知能は自分自身を意識することは可能か?

• 人工知能にとって自意識とは何か?

• 人工知能が自意識を持つことで、それを持たない人工知能と、どのような差が産まれるか?

ジャック・デリダ(1930-2004)

• フッサールの徹底的な読解を行い、修士論文「フッサール哲学における発生の問題」を書き上げる。

• その後、フッサール「幾何学の起源」を翻訳し、長大な序文を付ける(序文の方が長い)。

• テキストの中のロゴスの持つ二項対立を明らかにし、その矛盾を描くことで、形而上学的なテキストをもう一度再考を促す「脱構築」など。

• 「差延」「散種」など新しい概念を提案する。

• ポスト構造主義を代表する哲学者。

ポスト構造主義

• 構造を逸脱して(構造がなくなるわけではない、脱構築)

• 果てしない流動性の中へ

• 「差異」の哲学

• 純粋な構造はあり得ない

A M

私 対象

• 差延の一見したところ異なる二つの価値がフロイトの理論では結びつく。二つの価値とはすなわち一つは識別可能性、区別、隔たり、間隙、つまり間隔化としてのdifferer、そしてもう一つは迂回、遅延、保留、つまり時間かせぎとしてのdiffererのことである。

• 1 痕跡(spur)、開路(Bahnung)、開路の諸力といった概念は『科学的心理学草稿』以来、差異の概念から切り離すことができない。記憶の起源、さらには記憶一般(それが意識的なものであれ無意識的なものであれ)としての心理現象の起源は、もろもろの開路のあいだの差異を考慮に入れないかぎり記述できない。フロイトははっきりそう言っている。差異がなければ開路は存在しないし、痕跡がなければ差異は存在しない。

• (哲学の余白、法政大学出版局、P.60)

デリダ「哲学の余白」 (原著:1972年、翻訳:2007年、高橋 允昭 (翻訳), 藤本 一勇 (翻訳))

デリダ「哲学の余白」 (原著:1972年、翻訳:2007年、高橋 允昭 (翻訳), 藤本 一勇 (翻訳))

A M

私 対象

• 2 無意識的な痕跡の産出およびその書き込み(Niedershift)の過程におけるあらゆる差異は、貯蔵化という意味での差延の契機としても解釈されうる。…す

なわち危険な備給を差延することによって、つまり或る貯蔵=保留(Vorat)を構成することによって自己自身を保護する生命の努力として記述される。….快感原則と現実原則との差異は、迂回…としての差延にほかならない。

• (哲学の余白、法政大学出版局、P.61)

過去の自己/現在の自分/未来の自分

St=k-1

St=k

St=k+1

自己は差延の作用によって、どんどん 自分自身からさえ脱却して行く。 であるからこそ、対象化される。

この作用は何なのか?デリダは「エクリチュール」(書かれた言説)という。

過去の自己/現在の自分/未来の自分

St=k-1

St=k

St=k+1

自己は差延の作用によって、どんどん 自分自身からさえ脱却して行く。 であるからこそ、対象化される。

自己が自己について語ろうとする時に、そこには遅延が生まれる。 自分自身を語る、その語りを聴く自分。両者の間には遅延がある。

過去の自己/現在の自分/未来の自分

St=k-1

St=k

St=k+1

差延は時間の中で自己を対象化し、 自意識を生む。それは自分を見る、 自分を聴くことを可能にする。

自己が自己について語ろうとする時に、そこには遅延が生まれる。 自分自身を語る、その語りを聴く自分と。

A M

私 対象

• …記号は事物のそのものの代わり、すなわち現前する事物の代わりとなる。…記号は現前者を、当の現前者

が不在のところで代理する(再現前させる)。記号は現前者の代わりとなる。われわれが当の事物を、つまり当の現前者、現前的-存在者を取ったり示したりするこ

とができないとき、現前者がみずからを現前させないとき、わらわれは記号作用を行い、記号の迂回を経由する。わらわれは記号を取ったり与えたりする。われわれは記号をなす。したがって記号とは差延された現前性=現在性だということになる。

• (哲学の余白、法政大学出版局、P.44)

デリダ「哲学の余白」 (原著:1972年、翻訳:2007年、高橋 允昭 (翻訳), 藤本 一勇 (翻訳))

過去の自己/現在の自分/未来の自分

St=k-1

St=k

St=k+1

ロゴス(記号)

ロゴス(記号)

ロゴス(記号)

私が語る(ロゴス)、を聴くという状況

過去の自己/現在の自分/未来の自分

St=k-1

St=k

St=k+1

ロゴス(記号)

ロゴス(記号)

ロゴス(記号)

私が語る(ロゴス)、を私が聴くという状況

差延

差延

語る

語る

過去の自己/現在の自分/未来の自分

St=k-1

St=k

St=k+1

ロゴス t=k-2

ロゴス t=k-1

ロゴス t=k

ロゴスは差延する。 記号によって今を乗り越える。

語る

語る

デリダ「声と現象」 (原著:1967年、翻訳:1970年、高橋 允昭訳)

A M

私 対象

• 自然発生的発生によって自己を産出する生ける今が、ひとつの今であるために、もうひとつ別の今のなかに自己を把持したり、経験に頼ることなくひとつの新しい根源的な顕在性-この顕在性において、その生ける今は、過ぎ去った今としての非-今

となるであろう-によって自己自身を触発したり、等々としなければならないという、そういった過程は、まさにひとつの純粋な自己-触発であり、そこにおいては同じものが同じであるのは、

それが他によって自己を触発することによって、つまり、その同じものの他となることによってにほからならない。

(声と現象、理想社、P.158)

デリダ「声と現象」 (原著:1967年、翻訳:1970年、高橋 允昭訳)

A M

私 対象

• まず第一に留意しなければならないのが、根源的補欠性というこの概念は、ただ単に現前の非充満(いいかえてフッサールの用語で言えば、或る直観の非-充実)を含んでいるにとどまらない.この概念は、代理的補欠[suppleance substitutive]というあの機能、すなわち、すべての記号一般に属する<<の代わりに>> (fur etwas) という構造を指している.

• (声と現象、理想社、P.168)

A M

私 対象

• …生ける現在の<自己への現前>を構成するこの純粋な差異は、そこから排除しうると考えられていた一切の不純性を、根源的に再びそこへ導入するのである。行ける現在は、自己との非-同一性と過去把持的痕跡の可能性とから湧出する。生ける現在は、つねにひとつの痕跡である。この痕跡は、自己に内的であるような生をもつといった類の現在の単純性から出発しては、考えられない。生ける現在の自己は、根源的に一つの痕跡である。(声と現象、理想社、P.159)

• …現前を根源的な分裂と遅延に同時に服させることによって、現前に亀裂を生じさせると同時に遅らせもする遅延作業[l’opearation du differer]である。このような差延は、遅延としての differer [延期する]と差異の積極的な働きとしての differer[異なる] とへの分離以前のところで考えられねばならない。(声と現象、理想社、P.167)

デリダ「声と現象」 (原著:1967年、翻訳:1970年、高橋 允昭訳)

デリダ「グラマトロジーについて」(原著:(1967年、翻訳:1984年、足立和浩訳)

• 根源的時間性と他者への関係の運動においては、フッサールがはっきりと記述しているように、非=現前化(non-presentation)あるいは脱=現前化(de-presentation)は、現前化と同じ様に「根源的」である. まさにそれゆえに、痕跡ついての思惟は、超越論的現象学に還元されることもできないし、それと手を切ることもできないのだ。

• だからこの場合問題なのは、構成された差異ではなく、あらゆる内容規定に先立って差異を生む純粋な運動である。(純粋な)痕跡は差延作用である。

• 実際、痕跡は一般意味の絶対的根源である。ということは、また意味一般の絶対的根源は存在しないということである。痕跡と差延作用であって、現れと意味作用とを開始する。

(グラマトロジーについて、現代思潮新社、P.123)

意識を作る=自身を語る

St=k-1

St=k

St=k+1

ロゴス t=k-2

ロゴス t=k-1

ロゴス t=k

意識を作る=自らを「語る、表現する、表明する、表現する」ことが必要である

亀裂

亀裂

亀裂

語る

語る

意識を作る=自身を語る

St=k-1

St=k

St=k+1

ロゴス t=k-2

ロゴス t=k-1

ロゴス t=k

差延によって作り出された差異はもう一度、統合される。 しかし、新しい差延が生まれる

語る

語る

意識を作る=自身を語る

St=k-1

St=k

St=k+1

ロゴス t=k-2

ロゴス t=k-1

ロゴス t=k

知能は差延、差異、統合、反復の システムである。

意識を作る=自身を語る

St=k-1

St=k

St=k+1

ロゴス t=k-2

ロゴス t=k-1

ロゴス t=k

知能は差延、差異、統合、反復の システムである。

逸脱(差異化,差延)

統合(引き戻し)

語る

語る

差延された過去が積み重なる

時間

我々は過去の反響の積み重なりの中で生きている。

t=k-1 t=k t=k+1 t=k+2

知能の二つの力

構造を維持しようとする

=慣性・ホメオタシス

構造から逸脱しようとする

=脱構築・アポトーシス・スキゾフレニー

逸脱し、統合しようとする。その運動が反復する。それが知能。

問三「人工知能と差延」

• 人工知能にとって時間とは何か?

• 時間が知能を違うものにして行く(異化)と同時に、知能を対象化している。

• 自分自身を対象化する機能は、知能にとって何を意味するか?

本日のコンテンツ

第零章 前置き(復習)

(1) エージェント・アーキテクチャ

(2) 意識モデル

第一章 構造主義

第二章 構造主義/ポスト構造主義と人工知能

第三章 意識と無意識と人工知能:

「声を発する、声を聴く」

第四章 言語と知能

付録 グループワーク課題集

意識と無意識と人工知能: 「声を発する、声を聴く」

第二章

デリダ「エクリチュールと差異」 (原著:1967年、 翻訳:2013年、合田 正人:, 谷口 博史)

A M

私 対象

• このように、理性はみずから自己を開示する。理性とは歴史の中で生成するロゴスである、とフッサールは言っている。ロゴスは、自己をめざして、自分自身に対して、言い換えるならロゴスとしてみずから現れるために、みずから自己を語り、自己を聴取するために、存在を貫く。ロゴスは自己-触発としての発話である。すなわち、自己が語るのを聴くことであり。ロゴスは、自己に置いて、自己へのその現前の「生ける現在」のなかで自己を取り戻すために、自己の外へ出る。自己自身の外に出ることで、自己が語るのを聞くことは、エクリチュールの迂回を通って、理性の歴史のなかで自己を構成する。自己が語るのを聞くことはこのように、再び自己と適合するために、自己と差異化する。

• (エクリチュールと差異<新約>、 みすず書房、P.334)

知能の世界

環境世界

認識の 形成

記憶

意思の 決定

身体 制御

エフェクター・身体

運動の 構成

センサー・身体

意思決定 モジュール

意思決定 モジュール

意思決定 モジュール

対象・ 現象

情報の流れ(インフォメーション・フロー)

影響を与える 影響を受ける

知能の世界

環境世界

認識の 形成

記憶

意思の 決定

身体 制御

エフェクター・身体

運動の 構成

センサー・身体

意思決定 モジュール

意思決定 モジュール

意思決定 モジュール

対象・ 現象

情報の流れ(インフォメーション・フロー)

影響を与える 影響を受ける

ロゴス

自らを表明し 自らに 聴かせる

知能の世界

環境世界

認識の 形成

記憶

意思の 決定

身体 制御

エフェクター・身体

運動の 構成

センサー・身体

意思決定 モジュール

意思決定 モジュール

意思決定 モジュール

対象・ 現象

情報の流れ(インフォメーション・フロー)

影響を与える 影響を受ける

ロゴス

自らを記号で表明し

自らに インフォームする

知能の世界

環境世界

認識の 形成

記憶

意思の 決定

身体 制御

エフェクター・身体

運動の 構成

センサー・身体

意思決定 モジュール

意思決定 モジュール

意思決定 モジュール

対象・ 現象

情報の流れ(インフォメーション・フロー)

影響を与える 影響を受ける

ロゴス

記 号 表 明

自らを記号で表明し

自らに インフォームする

意識構造

イ ン フ ォ | ム

知能

身体の反射レベル

脳の原始的な部分の反射レベル

無意識の反射レベル

意志決定

物理 情報

身体 感覚 情報

抽象 知的 情報

情報の抽象度

時間進行(流れ)の方向

知能

身体の反射レベル

脳の原始的な部分の反射レベル

無意識の反射レベル

意志決定

物理 情報

身体 感覚 情報

抽象 知的 情報

情報の抽象度

時間進行(流れ)の方向

論理的思考

知能

身体の反射レベル

脳の原始的な部分の反射レベル

無意識の反射レベル

意志決定

物理 情報

身体 感覚 情報

抽象 知的 情報

情報の抽象度

時間進行(流れ)の方向

論理的思考

生態的反射 (=環世界)

知能

身体の反射レベル

脳の原始的な部分の反射レベル

無意識の反射レベル

意志決定

物理 情報

身体 感覚 情報

抽象 知的 情報

情報の抽象度

時間進行(流れ)の方向

論理的思考

生態的反射 (=環世界)

人間の精神

意識

前意識

無意識

知能

言語による 精神の構造化

外部からの情報

言語化のプロセス シニフィアン/シニフィエ

言語回路 (=解釈)

人間の精神

意識

前意識

無意識

知能

言語による 精神の構造化

外部からの情報

言語化のプロセス シニフィアン/シニフィエ

言語回路 (=解釈)

人間の精神

意識

前意識

無意識

外部からの情報

知能

解釈

顕在化

運動統合

意志

意識の境界面

知覚の境界面

自己表明 自己確認 自己聴講 (自分の声を聴く)

世界

疑い得ない、 論理の明証によって 築かれる世界

デカルト

近代科学、近代合理主義。 近代の出発点を与えた(デカルトの後の人がそう基礎づけた)。

論理的明証性

デカルトからフッサールへ

「デカルトのコギト」 (17世紀)

「フッサールの還元」 (20世紀)

世界

現象学「志向性」

あらゆる体験・経験 超越論的主観性

志向性

現前=現象学において 意識に直接与えられているもの

デリダ「フッサール哲学における発生の問題」 (原著:1990年(1953年)、翻訳:2007年、合田正人、荒金直人)

A M

私 対象

• これは「幾何学の起源」の水準では提起することのできない問いである。この著作は、結局のところ-そしてこのことはフッサールの歴史哲学のすべてについて言えるのだが-、それよりも前になされたはずの構成的分析の手前に留まるのである。ここで問題になっているのは、ある超越論的主体による、ある世界を起点とした幾何学という学問の構成であるが、その超越論的主体の発生はすでに完成したものと仮定されており、その世界の存在論的構造は、ある時はそれに固有の意味作用と共にすでにそこにあり、またある時は、前述定的基体である限りで、理論的規定の諸可能性の無限的地平として構成されたアプリオリと同一視される。

(デリダ、フッサール哲学における発生の問題、P.263、 みすず書房)

知能の世界

環境世界

認識の 形成

記憶

あらゆる

世界に対する作用

身体 制御

エフェクター・身体

作用の 構成

センサー・身体

作用

作用

作用

記憶体

情報処理過程 運動創出過程

身体部分

情報 統合

運動 統合

ロゴス

自らを表明し 自らに 聴かせる

記 号 表 明

イ ン フ ォ ー ム

意識構造

知能の世界

環境世界

認識の 形成

記憶

あらゆる

世界に対する作用

身体 制御

エフェクター・身体

作用の 構成

センサー・身体

作用

作用

作用

記憶体

情報処理過程 運動創出過程

身体部分

情報 統合

運動 統合

ロゴス

自らを表明し 自らに 聴かせる

記 号 表 明

イ ン フ ォ | ム

意識構造

知能は外界と内界を結ぶだけではなく、 あらゆる瞬間に自分自身を構造化し創造する。

知能の世界

環境世界

認識の 形成

記憶

あらゆる

世界に対する作用

身体 制御

エフェクター・身体

作用の 構成

センサー・身体

作用

作用

作用

記憶体

情報処理過程 運動創出過程

身体部分

情報 統合

運動 統合

ロゴス

自らを表明し 自らに 聴かせる

記 号 表 明

イ ン フ ォ | ム

意識構造

知能は外界と内界を結ぶだけではなく、 あらゆる瞬間に自分自身を構造化し創造する。

自分に対する語りであるように構成する

実装アプローチ

通常の知能=動力学の中の知能 内側から発生的に言語的自分を生成する・押し上げる

言語的知能=言語的存在・言語的現実としての知能

文法・語の関係性・文章からなる自分

自然に反映されるように

実装アプローチ

通常の知能=動力学の中の知能

言語的知能=言語的存在・言語的現実としての知能

文法・語の関係性・文章からなる自分

自然に反映されるように

自己言明的な宣言 • 私は勇敢である。 • 私の右足は負傷している • 彼は私の敵である。 • 夜の森は危ない。 • …

内側から発生的に言語的自分を生成する・押し上げる

実装アプローチ

通常の知能=動力学の中の知能

言語的知能=言語的存在・言語的現実としての知能

文法・語の関係性・文章からなる自分

自己言明的な宣言 • 私は勇敢である。 • 私の右足は負傷している • 彼は私の敵である。 • 夜の森は危ない。 • …

内側から発生的に言語的自分を生成する・押し上げる

言語が干渉できるポイントがある。

言語的知能と動力学的知能を分離する

言語的知能

言語の受け口

言語的知能と動力学的知能を分離する

言語的知能

言語の受け口

言語的自己の生成

デリダ「声と現象」 (原著:1967年、翻訳: 1970年、高橋充昭)

A M

私 対象

• すなわち現象学は、私の見るところでは、時間化の運動と相互主観性の構成とについて現象学自身による記述によって、内側から、…悩まされていることは確かでえあるように思われる。

• 記述のこと二つの決定的な契機をともに結びつけるもののもっとも根深いとこで、或る還元できない非-現前に一種の構成的価値が認められるし、それとともに、或る非-性が、すなわち生ける現在の非-現前ないし<自己への非-所属>、根こそぎできない非-原初性がみられるのである。

(声と現象、理想社、P.14)

デリダ「声と現象」 (原著:1967年、翻訳: 1970年、高橋充昭氏)

A M

私 対象

• …意識の要素と言語の要素とは次第に見分けがつけにくくなる。ところで、この二要素が見分けにくいということは、自己への現前の中核に非-現前と差異(間接性、記号、回付(renvoi)、等々)を導入することにならないであろうか。この難問が一つの解答を呼び寄せる。その解答は声とよばれる。

• とすれば、現象学的な声とは、世界の不在において話しつづけ、そして自己へと現前し-みずからを聞き[s’entendre]-つづけるような、そういう精神的生身である、と言えよう。

• (声と現象、理想社、P.31,32)

デリダ「声と現象」 (原著:1967年、翻訳: 1970年、高橋充昭)

自分の内に自分を表現する

自己

自分の内に自分を表現する

自己

言語 表現

表現

自分自身を言語化する

自分の内に自分を表現する

自己

言語 表現

自己言明(声)

表現

言語化される自分

自分の内に自分を表現する

言語表現

言語表現

言語表現

自己の表現のためには言語がなければならない。 言語(エクリチュール)を通して、自己を表現する。

自己

ラカンによるソシュールの解釈

ないまぜの観念からなる不逞の平面 (シニフィエ)

音からなる漠とした平面 (シニフィアン)

ブルース・フィンク 「エクリを読む」 人文書院、P.162

ラカンによるソシュールの解釈

ブルース・フィンク 「エクリを読む」 人文書院、P.163

シニフィエ

シニフィアン 節A 節B 節C

a b c a+b+c = 文の意味

ラカン「無意識の形成物」

シニフィアンの連鎖の平面

△ 前言語的で前主体的な…状態 S / 言語の使用によって分裂した、 明確に人間的な主体

S_2 : 文の終わり S_1 : 文のはじめ

ブルース・フィンク 「エクリを読む」 人文書院、P.166

ラカンの主体

• 大文字のS (シニフィアン上の主体)

• 小文字の s (シニフィエ、言語前の主体)

• S 言語に引き裂かれた主体 /

ラカン「無意識の形成物」

シニフィアンの連鎖の平面 =記号・言語の平面

A M

私 対象

ラカン「無意識の形成物」

シニフィアンの連鎖の平面

A M

私 対象

よくわからないもの、無意識から湧き出るもの

自分の内に自分を表現する

自己の表現のためには言語がなければならない。 言語(エクリチュール)を通して、自己を表現する。

自己 △

S / S / S /

言語的知能と動力学的知能を分離する

言語的知能

言語の受け口

言語的自己の生成

シニフィアンの連鎖の平面

問四「人工知能と無意識」

• 人工知能にとって無意識とは何か?

• 人工知能に無意識を宿すことは可能か?

• 人工知能に無意識は必要か?

• 無意識を持つ人工知能は、無意識を持たない人工知能とどのように違うだろうか?

• 人間と人工知能は無意識で分かり合うことができるだろうか?

本日のコンテンツ

第零章 前置き(復習)

(1) エージェント・アーキテクチャ

(2) 意識モデル

第一章 構造主義

第二章 構造主義/ポスト構造主義と人工知能

第三章 意識と無意識と人工知能:

「声を発する、声を聴く」

第四章 言語と知能

付録 グループワーク課題集

言語と知能 第四章

恣意性

• 言語には恣意性がある。

• ある対象に対して、ある語(発音)を割り振る必然性はない。

• シニフィアンとシニフィエの対応はある程度、歴史的・社会的・時間的なものである。

ソシュール「一般言語学講義」 (原著:1906-1911年, 翻訳:2007年、影浦 峡, 田中 久美子 )

• 通時的な領域では、法則は強制的で動的です。ある事象が消えて別の事象が現れます。法則はその効果を通して姿を現します。法則に力があります。

• 通時的な法則には強制力があり、あらゆる抵抗を屈服させてその法則は発揮されます。

• 共時的な法則は存在する秩序を著してします。

• 共時的な法則はものごとの状態を表しており、秩序を実現します。強制的でも動的でもありません。

(ソシュール、「一般言語学講義」、P.148、東京大学出版会)

時間とは関係ないもの 時間といの関係でいい直したもの

記号の恣意性 したがって自由であること

1. 自由でないこと(不変性) 2. 変化(あるルールによる可変性)

強制的な法則

語の共時的な共存 (述定的な法則)

強制的な法則

ソシュール、「一般言語学講義」、P.148、東京大学出版会)

ソシュール「一般言語学講義」 (原著:1906-1911年, 翻訳:2007年、影浦 峡, 田中 久美子 )

言葉を発する知能に必要なもの

• 言語の恣意性を引き受けること。(シニフィアン)

• 言語とそれが指す内容を自分の内に持つこと。(これが機械にない)

• ラカン的に言えば、シニフィアンの平面を貫くような衝動を持つこと。そこで文ができる。

• 現在の話す人工知能は、言語を発する、のではない。世界を与えられていない人工知能は、記号を発しているだけである。

言葉を発する知能に必要なもの

• 知能にとって言語を発するということは、単に発するということではなく、内的な変化、内的な運動や構造の変化をもたらす。

自分の内に自分を表現する

自己

言語 表現

自己言明(声)

表現(=言語化を促す力)

人間の精神

意識

前意識

無意識

知能

言語による 精神の構造化

外部からの情報

言語化のプロセス シニフィアン/シニフィエ

言語回路 (=解釈)

人間の精神

外部からの 情報

意識

前意識

無意識

言語回路 (=解釈)

言語が精神を支えている。 =無限の情報を、有限の関係性に フォーマットしている。

人間の精神

外部からの 情報

意識

前意識

無意識

言語が精神を支えている。 =無限の情報を、有限の関係性に フォーマットしている。

言語的現実の出現 言語的「我」の出現

人間の精神

外部からの 情報

意識

前意識

無意識

言語が精神を支えている。 =無限の情報を、有限の関係性に フォーマットしている。

言語的現実の出現 言語的「我」の出現 発話することは、言語で 自分を形式化すること、 自分を言語化することでもある。

問五「人工知能と発話」

• 人工知能が自らの言葉を発するために、必要なことは何か?

• 知能の精神と言語はどのような関係にあるか?

• 言葉によって傷つく知能を作ることができるか?

本日のコンテンツ

第零章 前置き(復習)

(1) エージェント・アーキテクチャ

(2) 意識モデル

第一章 構造主義

第二章 構造主義/ポスト構造主義と人工知能

第三章 意識と無意識と人工知能:

「声を発する、声を聴く」

第四章 言語と知能

付録 グループワーク課題集

グループワーク課題集

付録

問一「人工知能と意識」

• 人工知能にとって意識とは何か?

• 人工知能に意識を宿すことは可能か?

• 意識を持つ人工知能は、

それを持たない人工知能より優秀だろうか?

問二「人工知能と自意識」

• 人工知能は自分自身を意識することは可能か?

• 人工知能にとって自意識とは何か?

• 人工知能が自意識を持つことで、それを持たない人工知能と、どのような差が産まれるか?

問三「人工知能と差延」

• 人工知能にとって時間とは何か?

• 時間が知能を違うものにして行く(異化)と同時に、知能を対象化している。

• 自分自身を対象化する機能は、知能にとって何を意味するか?

問四「人工知能と無意識」

• 人工知能にとって無意識とは何か?

• 人工知能に無意識を宿すことは可能か?

• 人工知能に無意識は必要か?

• 無意識を持つ人工知能は、無意識を持たない人工知能とどのように違うだろうか?

• 人間と人工知能は無意識で分かり合うことができるだろうか?

問五「人工知能と発話」

• 人工知能が自らの言葉を発するために、必要なことは何か?

• 知能の精神と言語はどのような関係にあるか?

• 言葉によって傷つく知能を作ることができるか?

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