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NEngl JMed2016;375:2457-67

慈恵ICU勉強会2017年3⽉28⽇

慈恵医⼤附属病院研修医 ⾕合智彦

Introduction

はじめに

てんかん重積は神経系緊急疾患で最も⽣命を脅かす疾患の1つ。NEngl JMed1998;338:970-6.

基本的な治療は抗てんかん薬の投与。Neurocrit Care2012;17:3-23.

Glasgowoutcomescale

Crit CareMed2010;38:2295-303.

Crit CareMed2010;38:2295-303.

【⽬的】痙攣性てんかん重積における90⽇後の死亡率・機能予後、予後不良因⼦の同定

【対象】18歳以上のICUに⼊室した痙攣性てんかん重積患者【⽅法】前向き観察研究,フランスのICU18施設【結果】N=248名

死亡率 18.8%(42/224)機能不全残存 38.8%(87/224)Goodrecovery42.4%(95/224)

⾼齢、てんかんの⻑時間の持続、巣症状

予後不良因⼦

予後不良因⼦

治療抵抗性、⽪質傷害

てんかんの持続時間を減らす、または治療抵抗性の発現を抑えるような早期神経保護の戦略が必要。

動物実験レベルではてんかんに対する低体温療法は神経保護に有⽤。

Neurobiol Dis2006;23:689-96.

【⽬的】頭部外傷患者、低体温療法の有⽤性評価【対象】TheEurotherm 3235trialに参加している頭部外傷患者【⽅法】オープンラベル試験,47施設【結果】N=387名

➡頭部外傷において低体温療法は機能予後を改善しない。

NEngl JMed2015;373:2403-12.

てんかん重積に対する低体温療法の有⽤性を⽰すcasereportは散⾒。

Clin Neurol Neurosurg 2014;126:103-9.Neurocrit Care2008;9:189-97.JNeurosurg 1970;33(3):253-9.ArchNeurol 1969;20(4):430-9.Crit CareMed1984;12(4):367-72.Acta Neurol Scand 2008;118:240-4.

・⿇疹後脳炎、⼊院中に強直間代痙攣。・クロナゼパム、ロラゼパム、フォスフェニトインに抵抗性。

・プロポフォールとミダゾラムによる治療にも抵抗性。・第3段階として低体温療法を施⾏。・てんかん波の消失、意識覚醒を認めた。

痙攣性てんかん重積における低体温療法の有⽤性を⽰すような⼤規模RCTが必要。

Method

Design

・多施設オープンラベルRCT

・期間:2011年3⽉〜2015年1⽉

・実施施設:フランスのICU11施設

・対象:ICU⼊室を要した痙攣性てんかん重積患者

Inclusioncriteria

・18歳以上

・ICUの医師によってICU⼊室が適正と判断された痙攣性てんかん重積患者定義:5分以上持続する痙攣、

またはもとの状態に戻らずに2回以上痙攣を反復

・てんかん開始から8時間以内に⼊室

・⼈⼯呼吸器管理

Exclusioncriteria

・てんかんから完全回復

・低体温療法の対象外となる緊急⼿術

・低酸素後のてんかん重積

・死期が近い

・蘇⽣処置不要の同意が得られている患者

・細菌性髄膜炎(2013年1⽉に項⽬追加。中等度低体温療法が細菌性髄膜炎に有害であるかもしれないと報告されたため。)

JAMA2013;310:2174-83.

Primaryendpoint

・発症90⽇後のGlasgowoutcomescale5割り付けを知らない神経内科医によって評価電話でインタビュー

ランダム化・1:1・層別化:年齢 (≦65or>65歳)、痙攣持続時間 (≦60or>60分)

・コンピュータで割り付け

Secondaryendpoint

カルテ、および割り付けを知らない神経内科医が電話でインタビュー

・ICU,⼊院中,90⽇後の死亡率

・ICU在室期間

・⼊院期間

・脳波上確認可能なてんかん重積の進⾏(ランダム化から6〜12時間に痙攣性⾮痙攣性に関わらず脳波上てんかん発作を伴う昏睡)

Secondaryendpoint

・1〜3⽇後での難治性てんかん重積または超難治性てんかん重積難治性てんかん重積:てんかん開始から24時間以内に2種類の

抗てんかん薬を⽤いたにも関わらず、持続的または間⽋的に臨床的発作または脳波上てんかん発作を認めるもの

超難治性てんかん重積:⿇酔薬による治療開始後24〜48時間に進⾏もしくは再発するてんかん重積

・発作持続時間

・90⽇後までの機能障害 (抗てんかん薬の服薬状況、てんかんの再発、MMSEscore)

Trialprotocol

AnnIntensiveCare2016;6:54

Trialprotocol

AnnIntensiveCare2016;6:54

Anticonvulsanttreatments

Firstline:clonazepamordiazepamSecondline:fosphenytoin,phenytoin,phenobarbital,

sodiumvalproate

Secondlineでもコントロールできないものを治療抵抗性とする。

経静脈的にpropofolを2mg/kg投与 (痙攣が⽌まるまで5分毎に1mg/kg追加投与)。同時に持続投与も開始。

Propofol 5mg/kg/hでもコントロールつかなければ、midazolamやthiopentalも加える。

ランダム化してから60分以内に痙攣重積をコントロールする。

Therapeutichypothermiagroup

・ランダム化後、可能な限り早く実施。・4℃の⽔分を点滴し,その後に頚部・⿏径部を氷で冷却。・深部体温 (⾷道温)32〜34℃を24時間継続。・鎮静はプロポフォール (2mg/kgボーラス後、2〜5mg/kg/hで持続投与)を使⽤。・筋弛緩はシサトラクリウム (0.15mg/kgボーラス、4時間毎)を使⽤。・復温は⽑布で0.25〜0.5℃/hの速度。

・鎮静の維持は低体温療法に⽤いるpropofolの使⽤法に準じる。・Propofol5mg/kg/hでコントロールつかない場合にはbenzodiazepineを加えても良い。

Controlgroup

両群の共通事項

・ランダム化から2時間以内に持続EEG装着。

・48時間は持続EEG装着。(低体温群は復温まで)

・持続EEG導⼊2時間以内に30分間、神経内科医が所⾒を診察。

・両群てんかんが持続する場合はpropofolボーラス。

・24時間以上Burstsupression状態を維持。

Statisticalanalysis

AnnIntensiveCare2016;6:54

以下の研究からサンプルサイズを算出。

・検出⼒:90%・有意⽔準:5% (両側検定)・低体温をしなかった時のprimaryoutcomeの発⽣率:40%・低体温療法をすると20%上昇する・検出すべき差:20%

1:1の割り付けで270⼈必要。

Statisticalanalysis

解析:intention-to-treat解析計算⽅法・Primaryendpoint:Wald検定 (有意⽔準:0.05)・Secondary endpoint:ICU,⼊院中,90⽇後の死亡率ICU在室期間⼊院期間脳波上確認可能なてんかん重積の進⾏1〜3⽇後での難治性てんかん重積または超難治性てんかん重積てんかんの再発

発作持続時間抗てんかん薬の服薬状況MMSEscore

Log-ranktest,Kaplan-Meiermethod

Wilcoxonrank-sumtest

Results

Patientflow

Patientflow

Trialpatients

50代後半、男性、約半数はてんかんの既往あり、院外発症、⽬撃者あり、全⾝性全般発作、強直間代性痙攣の所⾒

Trialpatients

発症から40分で抗てんかん薬投与、急性発症

Temperaturemanagement

・Cooling:てんかん発作発症から5.8時間後に開始された。(Interquartilerange:3.5to8.0)

・⽬標体温到達:138名中135名。(98%)

・⽬標体温までの到達時間:5.2時間(Interquartilerange:3.5to7.1)

Primaryoutcome

90⽇後 GOSscore5(goodrecovery):有意差はなし

Secondaryoutcome

脳波上確認可能なてんかん重積の進⾏:低体温療法群が良好、有意差あり

Secondaryoutcome

Secondaryoutcome

てんかん持続時間、年齢によるサブグループ解析

若年者で低体温療法の効果が期待できるかも

有害事象

コントロール群:100/130(77%)低体温療法群:117/138(85%)

最も多かったのは誤嚥性肺炎。コントロール群:58/130(45%)低体温療法群:71/138(51%)

その他:hypovolemicshock、敗⾎症、尿路感染症、腎不全など

両群で⼊院中死亡率、90⽇後死亡率に差はなし。

Discussion

Discussion

⼈⼯呼吸管理されている痙攣性てんかん重積の患者に対して低体温療法の既存の治療に対しての優位性は認めなかった。

⾼齢者と若年者で低体温療法の効果に差がある。(若年者では有効な可能性がある)

→本介⼊では有意な差を⽰す程のパワーは認めず。⾼齢者はもともとてんかんの予後が悪い。⾼齢者では薬物動態の違いで抗てんかん薬が使いにくい。⻑年使っている薬物との相互作⽤。

若年者での低体温療法のさらなるstudyが必要。

Discussion

・1⽇後の難治性てんかん重積、および脳波上確認可能なてんかん重積の進⾏、超難治性てんかん重積は低体温療法群で少ない。(統計学的有意差を認めるのは脳波上確認可能なてんかん重積の進⾏のみ)

今回の研究での臨床的な予後に影響を与えない。

Limitation

・⼈⼯呼吸管理をしている患者が対象。

→痙攣性てんかん重積の患者の1/3は⾃発呼吸。IntensiveCareMed2014;40:1359-62.

・低体温療法が体表冷却

→経静脈的により短時間で低体温に出来る可能性。

Limitation

・GOS5のみをgoodoutcomeとしている。

→GOS4もgoodoutcomeとみなしてもいいのではないか。

・鎮静薬、抗てんかん薬にpropofolを使⽤。

→Propofolが有害であり、低体温療法の効果を減弱させている可能性。

→⿇酔薬の第⼀選択を何にするかについてevidenceがない。→Propofolは患者を素早く覚醒させることができ使われやすい。

結論

⼈⼯呼吸管理を受ける痙攣性てんかん重積の患者に対して低体温療法は従来の治療に⽐べ機能的予後の点で明らかな利益はない。

批判的吟味

・Secondaryendpointの90⽇後までの機能不全(抗てんかん薬の服薬状況、てんかんの再発、MMSEscore)に関して、情報を得られている⼈数が限られている。

→抗てんかん薬の内服状況、MMSEについては低体温群33名、control群27名

・Adverseeventに関して、⼈数の記載のみで統計学的解析がなされていない。

批判的吟味

・87%は⽬撃者あり、抗てんかん薬投与まで中央値40分とかなり限定的な症例での検討。

・痙攣の原疾患に関しては考慮されていない。→梗塞、出⾎、外傷、抗てんかん薬からの離脱、アルコール

・死因についての記載がない。

・すでに再発予防に⻑期間抗てんかん薬を服⽤している症例が多く、急性期の抗てんかん薬の選択に影響を与えている可能性。

私⾒

・本研究からは患者にとっての有益性は感じない。

・低体温療法に関して若年者では有益な可能性がある。

・てんかん重積の治療はあくまで抗てんかん薬が第⼀。

・原疾患によって低体温療法の効果に差があるのではないか。

・18歳未満での効果は?

・低体温療法を始めるタイミングは?

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