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本間 徹(Toru Homma / Koe Maung独立行政法人国際協力機構(JICA国際協力専門員(民間セクター開発:投資・貿易・産業振興) Senior Advisor (Private Sector Development: Investment, Trade & Industry) JICA投資振興アドバイザー ミャンマー計画財務省投資企業管理局(DICA201934ASEAN最新事情講座: ミャンマー経済の現状と将来展望 ミャンマー投資環境動向と 展望 ラスト・フロンティアからの飛躍~ 日本 アセアンセンター・国際 貿易投資 研究所

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本間 徹(Toru Homma / Koe Maung)独立行政法人国際協力機構(JICA)

国際協力専門員(民間セクター開発:投資・貿易・産業振興)Senior Advisor (Private Sector Development: Investment, Trade & Industry)

前JICA投資振興アドバイザーミャンマー計画財務省投資企業管理局(DICA)

2019年3月4日

ASEAN最新事情講座:ミャンマー経済の現状と将来展望

ミャンマー投資環境動向と展望~ラスト・フロンティアからの飛躍~

日本アセアンセンター・国際貿易投資研究所

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主な内容

1. はじめに~本稿の概要・着眼点

2. 民政移管以降のミャンマー投資動向

3. 近年のミャンマー投資環境動向

4. 投資に関連する国家計画・経済政策・投資促進計画

5. ミャンマー投資:まとめと今後の展望

3

1. はじめに~

~本稿の概要・着眼点

ミャンマー投資:はじめに~本稿概要と着眼点

4

FDIいざなう謳い文句「アジアのラスト・フロンティア」いつまで? 2011年の民政移管以降の劇的な改革・開放路線への転換・邁進 高い経済成長、手つかずで高いポテンシャルの国内市場、若くて実直な労働力と価格競争力のある労賃、そして親日、進出意欲掻き立て

このセンチメントは持続可?高い期待vs厳しい現実?実際の投資・経済開発への貢献という果実は?ミャンマー経済・社会と投資企業はウィンウィン?今後のミャンマーの産業の在り方は?どのような議論が既に?その展望は?

民政移管以降の投資環境・動向を概観し、こうした疑問について考えを巡らせつつ、今後の展望・カギを提示

4

ミャンマー基本情報

(出典) MIC/DICA (2015), JICA (2014)等

Mandalay

Nay Pyi Taw

Yangon

5

ウィン・ミン大統領U Win Myint,

6

民政移管以降の投資環境に関する主な動き

年月 出来事

2011年3月 民政移管実現、テイン・セイン政権発足

2012年11月 外国投資法成立

2014年1月 改正特別経済区(SEZ)法成立

2014年7月 投資企業管理局(DICA)のネピドーからヤンゴンへの移転

2015年9月 ティラワ特別経済区(SEZ)正式開業

2016年3月 アウン・サン・スー・チー氏率いるNLD新政権発足、平和裏に移行

2016年10月 新投資法成立(2017年4月に事実上の運用開始)

2016年11月 米国経済制裁解除

2017年12月 新会社法成立(2018年8月施行)

2018年10月 投資・対外経済関係省新設

(出典)各種資料より筆者構成

7

2. 民政移管以降のミャンマー投資動向

(写真) DICA (2019)

• 2011年に民政移管・外資開放路線に移行して以降、外国投資は飛躍的に伸び、 前政権最終年度の2015/16年度(15年4月~16年3月)は3年度前の7倍近く増。最終月に膨大な駆込み投資があった。

• 2015/16年度末の政権交代以降、FDIは停滞・減少傾向に見える。2016/17年度は、政権交代でMIC委員の任命が遅れ、当初3か月弱投資認可が止まったことや、前年度駆込み投資の反動、法制度改正の推移を様子見も要因と考えられるが、それらが無いはずの2017/18年度以降も減少基調。ただし・・・

0102030405060708090

100

2012/13 2013/14 2014/15 2015/16 2016/17 2017/18

14.195

41.071

80.105 94.861

66.498 57.181

ミャンマーへの外国投資流入額(MIC承認ベース:ティラワSEZ含まず)

年度

8

ミャンマーへの外国投資:一見、急増後に停滞民政移管後急増、現政権移行後は停滞・減少。ただし・・・

(出典) DICA (2018), 本間加工分析

億ドル

• セクター別にみると、2014/15~2015/16年度にオフショア鉱区の外資認可が実施されたことおよび中国巨大石油精製案件が当該年度のピークの大きな要因。非石油・ガス投資トレンドは漸増とも読める。

• 件数ベースでは17/18年度が過去最高。製造業投資が件数では全FDIの2/3を占め、額でも再度増加傾向、運輸・通信は携帯電話キャリア他関連が中心で象徴的外資。不動産投資も日系始め増加傾向。

0102030405060708090

100

2012/13 (96件)

2013/14 (137件)

2014/15 (211件)

2015/16 (213件)

2016/17 (138件)

2017/18 (222件)

ミャンマーへの外国投資流入額(MIC承認ベース)

石油・ガス

電力

鉱業

運輸・通信

家畜・水産

農業

他サービス業

ホテル・観光

工業団地

不動産

製造業年度

(件数)

ミャンマーへの外国投資:セクター別&件数動向FDI全体は下降も非石油・ガスFDIは漸増傾向?件数ベースでは17/18年度過去最高

(出典) DICA (2018), 本間加工分析

億ドル

石油・ガス

製造業

運輸・通信

不動産

非石油・ガスFDIトレンド?

9

0 1000 2000

農業

家畜・水産

鉱業

製造業

電力

石油・ガス

運輸・通信

ホテル・観光

不動産

他サービス業

13

4

208

17

1716

1064

3

3

0

0

2001/02-2011/12平均

0 1000 2000

農業

家畜・水産

鉱業

製造業

電力

石油・ガス

運輸・通信

ホテル・観光

不動産

他サービス業

34

46

13

1281

329

1238

1409

293

628

339

2012/13-2018/19年度平均(単位:百万米ドル)

資源型から製造業・通信等へのシフト・セクター多様化

投資セクターの変動・多様化

10(出典) DICA (2019), 本間 (2018)

製造業は件数ベースでは全体の2/3を占める

件数では圧倒的に縫製、金額ではセメント等建材

注: MIC投資認可ベースの数値のため、ティラワSEZの値は含まれていない。2018/19年度は12月末までの3か月間分を計上。

(出典) DICA (2017)

日本の投資分野製造業中心

(累計MIC認可ベース 2017年3月末現在)

11

56%

17%

9%

5%4%

4% 2%2%1%

投資額シェア(%)

製造業 他サービス業 ホテル・観光 運輸・通信 石油・ガス

不動産 農業 漁業 商業

日本の投資認可の多数は製造業、特に件数ベースでは縫製産業が依然主流、近年は食品・農産物加工系製

造業が伸びている。

12

‘17 ‘16 2017年度 件数 (百万USD)

1 1 シンガポール 42 2,163.9632 3 中国 65 1,395.2193 19 オランダ 6 533.9234 7 日本 12 384.1195 6 韓国 14 253.9046 5 香港 23 251.9827 8 イギリス 4 211.1798 - アメリカ 2 128.6809 4 タイ 11 123.858

10 - アラブ首長国連邦 0 100.500計 28か国 222 5,718.086

(参考) (前年度) (138) (6,649.812)

累計(88/89以降) 件数 (百万USD)

1 中国 235 19,949.9082 シンガポール 279 19,011.8013 タイ 117 11,047.2344 香港 167 7,811.8035 イギリス 90 4,340.9176 韓国 152 3,809.5727 ベトナム 18 2,100.2688 マレーシア 63 1,954.6059 オランダ 21 1,528.489

10 日本 104 1,076.069

計 49か国 1,470 76,028.278

• 2017年度は前年度比15.0%減の57.2億ドルと新政権発足後2年連続減少、目標額60億ドルにも達せず。ただし、件数ベースでは、前年度比60.9%増の222件で過去最高を記録。これまでの石油・ガス(2014~2015年度)や携帯電話(昨年度ベトテル)の大型案件認可が一服した中、製造業を中心とした小型案件を多く誘致。

• 国別で日本は前年度7位から4位に浮上、累計でもここ数年の11位からトップ10入り。これに加えて、シンガポール等第三国経由の投資が別途相当規模ある状況を勘案の必要あり。

• 例年同様、シンガポールからの投資が圧倒的に多いが、そのシェアは57.5%から37.8%に減。この中に日系案件を相当に含む。アメリカが、前年の経済制裁解除を受けてか、近年では上位初登場。

• なお、ティラワSEZへの投資は、統計上、このMIC承認ベースの数値に含まれていない旨、留意。

(出典) DICA (2017), 加工分析:本間

投資元国別FDIデータ MIC承認ベース: 2017年度年間実績(17年4月-18年3月)

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伸びてきた日本からミャンマーへの投資政権移行年度除き増加基調続き、相対的順位は上昇、今年度暫定1位

0

50

100

150

200

250

2011/12 (8位)

2012/13 (6位)

2013/14 (9位)

2014/15 (11位)

2015/16 (8位)

2016/17 (7位)

2017/18 (4位)

4.318 54.063 55.711

85.740

219.793

60.423

384.119

日本からミャンマーへの投資額(MIC承認ベース)百万ドル

(注)

• シンガポール等の第三国経由での日本の投資は統計上日本の投資に含まれていない。例えば主な案件として、KDDI&住友商事・携帯電話通信事業/アサヒ非アルコール飲料事業(2014/15)、日立・発電機事業/IHIコンクリ事業(2015/16)、三菱商事・病院事業(2016/17)、鹿島複合開発PPP事業(2017/18)等。

• 外国投資法に基づく投資額のため、経済特区法に基づくティラワSEZへの投資は含まれていない。(出典) DICA (2018), 本間加工分析

年度

第三国経由投資・ティラワSEZ投資を含まない

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第三国経由投資を加えたら

実は結構多かった日本からミャンマーへの投資

470

1,570

2,040

251

114

365

0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000

日本からの直接投資

第三国経由日系投資

計(日本+第三国経由)

日本からミャンマーへの投資額(2011年4月~2016年10月累計)

(日本からの直接投資+第三国経由日系投資)

MICTSEZ

計2,405同期間で(星・中に続く)国別3位に相当→実は多い

計1,684

計721

実質的な日本の総投資額

百万ドル

• 通常の公表統計にはシンガポール等の第三国経由での日本の投資は含まれていないが、2016年に実態が明らかに

• MICベースで、今まで公表されていなかった第三国経由の日系投資は日本直接投資の約3.3倍の規模、合計すると約4.3倍の規模に

• ティラワSEZへの投資も加味すると第三国経由投資は約16.8億ドル、これを含めた実質的な日本の総投資額は約24億ドル、これは同期間(2011~16)の国別第3位に相当

(出典) DICA (2016), Homma (2016), 本間加工

3倍超の規模

4倍超の規模

(出典) MJ Business “DICA’s EYE” 田原アドバイザー (2018)

日本からミャンマーへの投資の実質全体像第三国経由・ティラワSEZ含めると昨年度最高、MIC日本投資額の3.8倍

• 通常の公表統計(MIC認可額)にはシンガポール等第三国経由での日本の投資+ティラワSEZへの投資は含まれていない。これらを含めると、昨年度は公表値の3.8倍の規模に。単純比較で2位に相当。

• これらを含めた額ベースでは、昨年度過去最高。

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民政移管後、急増してきた日本企業の進出

(出典) JCCM (2019), 本間加工

• 2011年度まで50社前後で停滞していたJCCM会員社数は、2011年3月末の民政移管後に急増し、約8倍に躍進。邦字誌が数誌あり、日本食レストランは約150軒、在留邦人が2,370人(2017年1月現在)のコミュニティにしては充実。

050

100150200250300350400

2004

年度

2005

年度

2006

年度

2007

年度

2008

年度

2009

年度

2010

年度

2011

年度

2012

年度

2013

年度

2014

年度

2015

年度

2016

年度

2017

年度

*201

8年度

ミャンマー日本商工会議所(JCCM)会員社数

(*2019年1月末現在)386社↓

JCCMの部会(会員社数)貿易部会(28)金融・保険部会(19)工業部会(88)建設部会(118)流通・サービス部会(92)運輸部会(41)

約8倍増