生活利便性からみた 大規模住宅団地の持続可能性評価に関す...

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生活利便性からみた 大規模住宅団地の持続可能性評価に関する研究 0656086 横山千尋 平成21年度 卒業論文 - 大分市における開発規模5ha以上の住宅団地を対象として - 佐藤誠治・小林祐司 建築・都市計画研究室

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Page 1: 生活利便性からみた 大規模住宅団地の持続可能性評価に関す …生活利便性からみた 大規模住宅団地の持続可能性評価に関する研究 0656086横山千尋

生活利便性からみた

大規模住宅団地の持続可能性評価に関する研究

0656086 横山千尋

平成21年度 卒業論文

- 大分市における開発規模5ha以上の住宅団地を対象として -

佐藤誠治・小林祐司 建築・都市計画研究室

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第1章 序論

第2章 研究対象地域

第3章 人口構成及び周辺環境から見た住宅団地の特徴把握

第4章 住宅団地の持続可能性評価

第5章 総括

目次

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背景

※新産業都市(昭和42年)

昭和39年 新産業都市に指定され、

工業化していきました。

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※新産業都市(昭和42年)

(人)

人口

〈大分市の人口〉※国勢調査より

昭和40年以降

急増それを機に、

人口が急激に増加しました。

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〈団地の計画戸数〉

昭和40年代

※登録簿台帳(09.03.31)

計画

戸数

それに伴い、

大規模団地開発が進んでいきました。

※城南団地(昭和36年代)

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※明野団地(昭和44年代)

こうして、 大規模団地は、

誕生しました。

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目的住民の暮らしやすさに左右されると考えられる指標の抽出

各住宅団地の

■現在と将来の人口構成

各住宅団地の徒歩圏域内にある

■施設立地状況

■公共交通利便性の現状把握

それらの3点を合わせて、居住環境の評価から類型化行う

大分市の住宅団地を対象

類型化から、今後、住宅団地が持続可能な課題を検討

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対象団地

対象大規模住宅団地 60団地

① いくつかの行政庁で5ha以上の開発面積を

大規模開発として扱っていること

② 開発して5年以上経過していること

③ 人口変動で扱う平成21年3月の人口が集計できること

大分都市計画区域内の住宅団地 413団地

開発規模5ha以上の住宅団地 77団地

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対象団地

大分駅

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20歳以上65歳未満

人口変動

20歳以上65歳未満

コーホート要因法より

25年後の年齢階級別人口構成を算出

S37 - S50 開発

S51 - S63 開発

H1 以降 開発

H21の人口構成 H46の人口構成

※生残率・純移動率・出生性比 ‥‥国立社会保障・人口問題研究所の大分市の仮定値

※年齢別出生率 ‥‥ 全国と大分県の合計特殊出生率の比から算出した仮定値

25年後将来現在

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人口変動

20歳以上65歳未満

H21の人口構成

36%

58%

H1以降の開発団地

各世代構成の平均割合をみると、

・20歳未満が36%

・20歳〜65歳未満が58%

と子育て世代が伺える。

S37 - S50 開発

S51 - S63 開発

H1 以降 開発

現在

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人口変動

20歳以上65歳未満

H21の人口構成

27%S50以前の開発団地

各世代構成の平均割合をみると、

・65歳以上が27%

と高齢化が既に進んでいる。

S37 - S50 開発

S51 - S63 開発

H1 以降 開発

現在

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人口変動

20歳以上65歳未満

H21の人口構成

このように、現在の人口構成は、開発年を経

過した団地ほど高齢化が進んでおり、住宅団

地の開発年によって世代構成が異

なることがわかった。

S37 - S50 開発

S51 - S63 開発

H1 以降 開発

現在

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20歳以上65歳未満

人口変動

H46の人口構成

各世代構成の平均割合をみると、

・65歳以上が27%

と、高い割合を示す。

27%将来 H1以降の開発団地

S37 - S50 開発

S51 - S63 開発

H1 以降 開発

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20歳以上65歳未満

人口変動

H46の人口構成

各世代構成の平均割合をみると、

・65歳以上が約40%と、

高い割合を示している。39%

38%

将来 S50以前の開発団地

S51〜S63の開発団地

S37 - S50 開発

S51 - S63 開発

H1 以降 開発

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人口変動

20歳以上65歳未満

H46の人口構成

将来

このように、将来の人口構成は、どの開発年も高

齢者の割合が高く、開発年による違いは

みられなくなる。

S37 - S50 開発

S51 - S63 開発

H1 以降 開発

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20歳以上65歳未満

人口変動

20歳以上65歳未満

H21の人口構成 H46の人口構成

将来将来

今後にあたり、人口減少、少子高齢化が深刻化していくことが予測される。

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周辺環境

圏域設定各住宅団地内に立地する住居系建物の重心から

400m圏域を住民の徒歩圏と仮定する。

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施設立地密度住宅団地の居住環境評価の指標の一つとして

最低限必要と考えられる施設の選定

※(財)日本地図センターの「暮らしやすさ」評価スコアのカテゴリを参考

各住宅団地の施設立地密度の算出

買い物機能 児童・高齢者福祉機能 金融機能健康維持機能

・スーパー

・薬店

・医療機関

・薬局

・金融機関

・郵便局

・福祉施設

・幼稚園

・保育園

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(軒/10ha)

(m)

中心市街地からの距離

施設立地密度

中心市街地(大分市役所)からの距離と

各住宅団地の施設立地密度の関係

※施設立地密度が、0(軒/10ha)の場合は省く。

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(軒/10ha)

(m)

12km

中心市街地からの距離

施設立地密度

※施設立地密度が、0(軒/10ha)の場合は省く。

12kmを超えると、施設立地がほとんど

みられないことから、郊外にいくほど施

設立地密度が低下している。

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大分市役所

〈スーパーマーケット〉

郊外の住宅団地、高齢化率の高いいくつかの住宅団地でも、

スーパーが立地していない団地が存在しており、自家用車や公共

交通機関の利用が余儀なくされている。

高齢化率とスーパーの立地密度の分布図

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公共交通利便性

高齢化率

団地NO

駅までの距離

1km

住宅団地から1km以内に駅のある住宅

団地は、6団地と少ない。

〈駅〉

※住宅団地と駅までの距離との関係

大分市役所

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高齢化率

バス停がない住宅団地も存在しており、

自家用車に依存しなければならない

現状である。

〈バス停〉

※バス停の単位開発面積当たりの立地密度と

中心市街地(大分市役所)からの距離の関係

大分市役所

公共交通利便性

中心市街地からの距離

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類型化

■平成21年の人口構成比

■施設立地密度

■公共交通利便性

主成分分析

クラスター分析

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主成分分析

第1主成分

生活支援施設充実性

第2主成分

生活基礎施設充足性

第3主成分

居住者の世代交代

第4主成分

住宅団地の規模

第5主成分

中心部への交通利便性

〈軸の解釈〉

結果から、5つの主成分を得ることができました。

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クラスター分析 (ward法)

公共交通利用型高齢化進行団地高齢化率23.4%

施設立地密度がやや低い

私的交通利用型生活団地20歳未満人口が39.5%

施設立地・バス停密度が低い

公共交通利用型高齢化団地

高齢化率32.3%

食を確保する施設立地密度が低い

徒歩型生活可能大規模団地

人口、開発面積が非常に高い

施設立地密度がやや高い

徒歩型生活可能団地20歳未満人口が30.2%

施設立地・バス停密度が高い自動車依存型郊外団地

中心市街地・駅までの距離が遠い

施設立地密度、バス停密度も低い

1クラスター

3クラスター

2クラスター

4クラスター

5クラスター

6クラスター

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結果

クラスター 団地数 分類

1 26 公共交通利用型高齢化進行団地

2 8 私的交通利用型生活団地

3 11 自動車依存型郊外団地

4 5 公共交通型高齢化団地

5 3 徒歩型生活可能団地

6 7 徒歩型生活可能大規模団地

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結果

大半以上の住宅団地は、「最低限の生活ができる環境が不十分」という考察か

ら、現状のままでは住宅団地の持続可能性は低いといえる。

特に人口減少、少子高齢化、団地内の個人商店の閉店など、あらゆる社会的な問題から住

宅団地で暮らしていく不安を煽るさまざまな兆候がみられた。

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今後の課題・対策土曜市のような店舗出店主体が

食料品を販売するなどの

多様な形態といった

民間のボランティア

大分市が一部で行っている

交通の便の悪い地域に対しての施策である

「ふれあいタクシー」事業等の

行政サービス

検討、充実させることが、課題解決のひとつだと言える。