第10回日本腹腔鏡下ヘルニア手術手技研究集会 - …...hernia...

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Page 1: 第10回日本腹腔鏡下ヘルニア手術手技研究集会 - …...Hernia Repairにおける剥離の工夫 網木 学 四谷メディカルキューブ 臍を縦切開し、正中患側の腹直筋前鞘を2cm縦切開する。腹
Page 2: 第10回日本腹腔鏡下ヘルニア手術手技研究集会 - …...Hernia Repairにおける剥離の工夫 網木 学 四谷メディカルキューブ 臍を縦切開し、正中患側の腹直筋前鞘を2cm縦切開する。腹

第10回日本腹腔鏡下ヘルニア手術手技研究集会今こそ見直そう、安全で再発させないラパヘル -正しい解剖認識と適切な手術手技-

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RP1-1

安全で再発させないTAPPを行うためのlandmarkの重要性高木  剛西陣病院 外科

再発させない、術中合併症を来さない安全なTAPPをするうえで、なにより必要なのは絶えずlandmarkを確認しながら行うことと思われる。腹膜切開を開始する際には、ヘルニアの状態把握、精管・精巣動静脈の走行確認を行ってから開始し、外側へ向かって腹膜前剥離を行う際は腹膜といったlandmarkを意識しつつ剥離する。腹側の腹膜前の剥離を行う際は同様に腹膜のみ把持して適切な方向に牽引するといった意識があればエネルギーデバイスが安全に使用することが可能となり壁側の血管や膜の損傷を防ぐことができる。そして、内側に移行する歳は、精管といったlandmark(男性の場合)を確実に確認した後にその内側から膀胱前腔を開放して基本的には鈍的剥離する。剥離を行う前に、恥骨・Cooper靭帯の位置関係を予測して愛護的に剥離することでCooper靭帯周囲の細血管損傷を防ぐことができる。ヘルニア門の状態を最終確認したうえで、十分ヘルニア門を覆うことが可能なmeshを選択とそのmeshが留置できる腹膜前腔剥離範囲の確認。留置と固定する際には、必要なlandmark:Cooper靭帯、腹直筋付着部、下腹壁動静脈の確認を十分にする。最後に、切開した腹膜は3-0吸収糸にて腹膜剥離面が腹腔側に露出しないように、腹側腹膜を壁側に翻転させて連続縫合閉鎖することで術後癒着防止に繋がると考え行っている。臍部5mm(opticalviewmethod)、右側腹部5mm、左側腹部3.5mmポート配置でのTAPPを定型化して行っているので、その手技を供覧する。 

RP1-2

TAPPにおけるメッシュの配置、固定まで根本鉄太郎1、添田 暢俊1、伊東 藤男2、齋藤 拓朗1

1福島県立医科大学会津医療センター外科、2公立岩瀬病院外科

当科では2013年よりTAPPを導入し、「再発させない」ことを常に意識してきた。再発の原因としては1)腹膜前腔の剥離範囲不足、2)メッシュのサイズ不足、3)メッシュのずれ・捲り上がり・逸脱などと考える。対策は1)ヘルニア門からの十分な剥離(3cm以上)。2)適正な大きさのメッシュを展開。主にはBARD3DMaxlightLsize(15×10cm)使用。3)メッシュの確実な固定。メッシュがヘルニア門とMPOを充分にカバーしていることを確認後、ヘルニア門の上方、下腹壁動静脈の内側・外側、Cooper靱帯、メッシュ内側縁、メッシュ外側縁(メッシュ下外側を除く)に吸収性タッカーにて10-15発固定する。タッカーを打つ際には術者が体表から手で適度な圧迫をかけて固定する。ただし、上前腸骨棘から2cm以内の範囲では外側大腿皮神経の損傷に留意して、固定をしない。また、メッシュのずれ、捲り上がりはメッシュ下外側に多いのではないかと考え、タッカーでは固定できないメッシュの下外側を吸収糸にて1針ゆるく浅く、神経を避けていることを視認しながら固定する。そして、手術終了(気腹解除)時に腹膜前腔の炭酸ガスを吸引し、腹腔内より腹膜越しにメッシュを透見し、ずれ・捲り上がりを確認する。今回、卒後7年目のTAPPビデオ(メッシュ配置から固定)を提示し、ご指導を仰ぎたいと思います。

RP1-3

脂肪織の層を認識したTAPPの手術手技蛭川 浩史立川綜合病院 外科

TAPPは腹腔内から腹膜外腔を広く剥離しメッシュを留置する手技である。腹膜外腔には脂肪織が充満しているが、これらの脂肪織の境界を認識し適切な層で剥離を行うことが重要である。われわれは、これらの脂肪織を腹壁側、腹膜・膀胱側、精索に沿った脂肪の3つに分けて認識している。これらの脂肪織は、いわば所属が異なるため、境界には太い血管や神経が渡ることはないと考えられる。鉗子による腹膜の牽引方向を調節し、腹腔鏡下の詳細な観察のもと、これらの脂肪織と脂肪織の間の粗な層を認識して剥離を進める。多くの場合、電気メスによる鋭的剥離が可能である。とくに剥離を膀胱側に進めるときは重要な手技である。内側に脂肪織が多く、剥離の層が同定できないときは、頭側で、下腹壁動静脈の前から内側に剥離を進めると、認識しやすくなる。けして脂肪織には切り込まない。また、迷ったとき、出血したときは正しい層に戻り、遠目(鳥瞰する視野)にして剥離層を認識する。出血させることのない、正しい層での充分に広い範囲の剥離により、充分に大きなメッシュを留置する事ができる。これにより、合併症の少ない、再発の少ない良好なアウトカムが得られると考える。メッシュはフラットなメッシュを使用している。長方形の四隅の剥離が不十分となりやすいため、メッシュの展開が悪い時は、躊躇なく剥離を追加する。

RP2-1

Single-Port Totally Extraperitoneal Preperitoneal Hernia Repairにおける剥離の工夫網木  学四谷メディカルキューブ

臍を縦切開し、正中患側の腹直筋前鞘を2cm縦切開する。腹直筋を外側へ圧排し、腹直筋後鞘を露出する。ラッププロテクター FFmini typeを挿入し、5㎜ EZトロッカーを3本挿入したキャップを装着する。8mmHgで送気し、腹直筋と後鞘の間の疎性結合組織を剥離していく。弓状線から連続するattenuatedposteriorrectussheathの存在を意識し、その表面に沿って進んでいくとCooper靭帯へ到達する。内側の空間を十分に作成した後に外側へ向けて剥離を進め、下腹壁血管外側の腹横筋繊維を広く露出させる。腹膜外腔の空間をできるだけ広く作成しておくことにより、その後のparietalizationが容易となる。sacを適度な力で牽引し、腹膜のみの層を露出させ、輸精管との間を丁寧に剥離する。sacはModifiedRoederKnotにより体外から結紮し、切離する。断端は必要に応じてend-loopで補強を行う。輸精管の剥離は内側臍ヒダまで行う。

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TEPにおける剥離範囲、メッシュの展開について大野浩次郎佐久総合病院 佐久医療センター 外科

TEPでは、まず臍下部を縦切開し、正中よりやや患側の腹直筋前鞘を縦切開する。腹直筋を外側へ圧排して腹直筋後鞘を露出し、そこから腹膜前腔の術野作成を開始する。AttenuatedPosteriorRectalSheathを術野背側に落としながらRetzius腔へ到達し、恥骨・Cooper靱帯・下腹壁動静脈をLandmarkにして剥離を進める。可及的に剥離を行った後、腹部正中の恥骨より4横指頭側の位置、それと臍の中点にそれぞれ操作用5mmトロッカーを挿入する。腹膜縁をやや尾側、外側に追求し、ヘルニア嚢の全周性の剥離を試みる。ヘルニア嚢の処理については鞘状突起の存在を意識しておくことが重要であり、処理の過程で内鼠径輪から伸びる鞘状突起を確認した場合には、確実に結紮・切離するよう心がける。 剥離範囲について、当院では外側は上前腸骨棘付近、内側は恥骨結合の正中を超える位置、背側は臍動脈索と精管の交点、腹側は弓状線付近までを目安にしている。メッシュについては、十分な剥離範囲が確保できればLap-ProGrip(10cm×15cm)を使用している。固定が不要のため、固定の際の神経損傷や血管損傷のリスクが軽減できる。メッシュを展開する際に、一点を押さえて、そこを支点にして展開していくとずれの少ない展開が可能になる。また、メッシュとそれに接する組織が弦と弧の関係にあることを意識すると、組織に密着したメッシュ展開となる。動画では剥離の後のメッシュ展開について供覧する。

RP2-3

安全で再発のないTEPの手技:ヘルニア嚢処理とメッシュ展開荻野 信夫大阪府済生会富田林病院 外科

【はじめに】TEPにおいてヘルニア嚢(I型)剥離について操作困難を覚える術者が多いのではないだろうか? ヘルニア嚢を損傷せず、出血させないコツを披露したい。またメッシュ展開は早期再発を防ぐ最重要ポイントだがこれについてもお見せする。1)腹直筋後鞘に続くAttenuatedposteriorrectalsheathを意識的に穿破してRetzius腔に入った後に点在する脂肪が腹壁側か膀胱側かを判断しながら効率よく剥離する。重要なランドマークである下腹壁動静脈とクーパー靱帯を確認する。2)下腹壁動静脈の走行を確認後、内鼡径輪方向への鈍的剥離をすすめ、ついたて状となっている癒合した膜様組織(浅葉、Arreguiのspermaticsheath?)の内鼡径輪レベルで正中側から外側へ突破し、疎な腹膜前腔に至る。ヘルニア嚢(腹膜縁)を確認後その腹側は薄く脆弱なので”内側”から鈍的剥離を行い透見される精管を確認し、ヘルニア嚢のみをisolateするように丁寧に鈍的剥離をすることで輸精管周囲の小血管からの出血は回避できる。3)次にヘルニア嚢外側に移り嚢を腹側に牽引しながら剥離し、薄膜と脂肪に包まれた精巣動静脈を背側に落とし込み温存する。陰嚢に至らないヘルニアではヘルニア嚢は完全剥離可能だが陰嚢ヘルニアでは吸収糸で体内結紮切離する。切離の際は精管、精巣動静脈が確実に背側に温存されていることを確認すること。4)ヘルニア嚢を頭側に牽引し、腹膜縁をたどりParietalizationを完成させる。鼠径床の剥離は内側は恥骨結合まで、外側は上前腸骨棘付近まで行いメッシュ展開のスペースを作成する。メッシュはアナトミカルタイプのラージサイズをMPOを中心にクーパー靱帯下縁、閉鎖孔もカバーするよう留置する。タッカーによる固定はII-3型、両側例以外は原則不要だがメッシュ下縁の背側に腹膜が入りこまずメッシュの折り返りがないことを確認した後にメッシュを鉗子で固定しつつ脱気する。

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当院で考える安全で再発させない腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(TAPP)若林 正和相模原協同病院 消化器病センター外科

当院では2013年よりTAPPを導入した。TAPPは壁から天井の手術であり、背側の剥離に比較し腹側の剥離は不十分になりがちなことが多い。当科では、メッシュがきっちり入るように剥離するのはもちろんであるが、特に内頭側の剥離は十分に行い、メッシュを適切な位置に展開し、メッシュの辺縁が手前に折れないような確実なタッキングを行うこととしている。内側のメルクマールとしては、Ⅰ型の場合は腹直筋正中、Ⅱ型の場合は腹直筋正中をやや超える程度までの剥離としている。また頭側においては、ヘルニア門よりも3cm頭側までの剥離が必要であると考えている。外側においては、当科では経験がないものの、メッシュの背側からの捲れ上がりによる再発についての報告があるため、腹膜縫合後にもメッシュが手前側に捲れていないように剥離するよう心掛けている。ヘルニアの状態をしっかりと認識し、メッシュの特性も考慮した、腹側に十分な至適剥離を行い手術することが再発を防ぐためには肝要であると思われる。当科で考える安全で再発させないTAPPについて、動画を供覧する。

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後期研修医執刀のTAPP法手技亀田 靖子、田崎 達也、田妻  昌、新原 健介、佐々木 秀、香山 茂平、杉山 陽一、上神慎之介、新宅谷隆太、宮下 浩平、今村 祐司、中光 篤志JA広島総合病院外科

【当科での鼠径部ヘルニア手術の現状】当科では、一人の医師がTAPP法の術式を定型化した後、その医師の指導のもと後期研修医の執刀が開始された。過去の手術の既往により腹腔内癒着が予想される症例、緊急手術では前方到達法、その他の大部分の症例ではTAPP法を選択している。腹腔鏡下胆嚢摘出術を完遂でき、TAPP法における腹膜縫合を安全かつスムーズに(概ね20分以内)行うことができた後期研修医はTAPP法の執刀機会が得られる。鼠径部切開法は全例、後期研修医が執刀しているが、TAPP法における鼠径部解剖の理解が鼠径部切開法で役に立っている印象はない。【TAPP法手技】左右どちらの症例も精巣動静脈の外側で腹膜切開を開始する。外鼠径ヘルニアでは、腹腔鏡で最初に観察できるレベルでのヘルニア門に沿って、まずヘルニア嚢を環状離断する。下腹壁動静脈、精巣動静脈、精管は腹膜前筋膜深葉の腹壁側に位置するため、モノポーラメッツェン剪刃で腹膜だけを切開すれば損傷することはない。精管の内側で疎性結合組織を切開し、Retzius腔に入る。内側には損傷すると止血に難渋する血管が存在するため、内側剥離に入る前に、精管外側での剥離層を十分に広げておく。その後、正中まで内側剥離を行う。前腹壁側は、鋭的に凝固切開する。以上により、myopectinealorificeから3cm以上離れた剥離が完成される。

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TAPPにおける腹膜切離から腹膜前腔の剥離和田 英俊市立島田市民病院 外科

症例は60歳代男性で右のI-2の症例。ヘルニア門頭側の腹膜切離から腹膜前腔の剥離の動画をノーカットで提示する。 ヘルニア門頭側の腹膜は下腹壁血管を損傷しないように、腹膜を手前に引きLCSのパッド(もしくは鋏)を腹膜に沿わせるように挿入し切離する。ヘルニア門周囲の腹膜を全周切離後、臍動脈の外側、精管・下腹壁動静脈の内側でFowlerのいうextraperitoneal fasciaのmembranouslayerを縦に切離する。この段階ではCooper靭帯を露出せず、腹膜前腔の疎な層に広く入ることを心掛ける。この内側の剥離でtensionがかかったら無理をせず、背側、外側、頭側の腹膜前腔の剥離を鈍的に行う。外側は外から上前腸骨棘を圧迫しlandmarkとする。IPtractより頭側の剥離はmembranous layerを切離し最初に剥離した内側の剥離層と同じ層に入るようにする。下腹壁血管外側で,はmembranouslayerで形成されるsecondaryinternalinguinalringを意識して切離する。内側の剥離では臍動脈と腹膜縁を左手鉗子で同時に把持し手前に牽引することで、umbilicalprevesicalfasciaを板状にすることができるため、剥離ラインを容易に確認することができる。最内側は左右の腹直筋の間に存在する脂肪組織を確認するようにする。