第14回 愛知県建築士事務所協会 愛知建築賞 · 第14回...

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2 建築あいち 2020 年7月号 14 愛知県建築士事務所協会 愛知建築賞 (経営委員会) 岐阜商工信用組合本店 岐阜県岐阜市 株式会社竹中工務店名古屋一級建築士事務所 会長賞

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2 建築あいち 2020年7月号

第14回 愛知県建築士事務所協会 愛知建築賞� (経営委員会)

岐阜商工信用組合本店岐阜県岐阜市 株式会社竹中工務店名古屋一級建築士事務所

会 長 賞

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3建築あいち 2020年7月号

岐阜市中心部の官庁街における、金融機関本店と本部の移転新築計画。分散していた本部機能を統合し業務効率化を図ると共に、街並みとの調和や、職員の連携強化、地域への開放を目指した。狭幅で敷地外部への眺望が得にくい計画地に際し、セクション毎に積層させた中高層の建物ではなく、横の連携を高めるための奥行きのある低層のオフィスを計画した。機能やセキュリティレベルに応じて「3つのセクション」にグルーピングし、それぞれのエリアがテ

ラスに向けて開くことで、お互いの気配や建物のどこからでもテラスの光や緑、自然風を感じられる気持ちの良い環境を創出し、距離によってプライバシーを確保した。「スキップフレーム工法」により、室内環境の向上や環境負荷の低減、狭幅地での効率的な施工を実現させた。国交省省CO2先導型プロジェクトの選定や、地域の材料を多く採用することで、新しい価値を周辺地域に発信するプレゼンスの向上も目指した。

設計意図

間口が狭く奥行きの深い敷地に低層で構成された、秀逸な出来映えの事務所建築である。奥行き側の中間部分に2つの中庭を大きく設けたことにより、建物の表面積がかなり広くなり、通風採光はもとより、視覚的にも開放感あふれる内部空間となっている。内外装とも地場の建材を多用して上質な環境を実現しているところは、地域に密着した金

融企業としての気概が表現されている。2階3階の空間の豊かさはよく表われているが、1階の空間の様子が応募書類からは伝わらない。主にサービスエリアが占めているので仕方がないと思うが、駐車スペースから上階の交流、共創、共有ゾーンへのアプローチ動線、及び本部に至るエントランス部分をもう少し豊かにする空間表現が欲しかった。

審査委員長講評(名古屋大学名誉教授 谷 口 元)

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4 建築あいち 2020年7月号

椙山女学園大学附属 椙山こども園愛知県名古屋市

優 秀 賞

第14回 愛知県建築士事務所協会 愛知建築賞

株式会社日建設計一級建築士事務所

幼保連携型の「こども園」の整備が社会的に急がれており、その事例の一つからの応募である。キャンパス内の施設群と周辺の戸建て住宅群をつなぐデザインを追求した姿勢は高く評価できる。しかしそれが景観形成の観点として成功しているかどうかは、提出写真からは定かではない。室内

の「めくる」と表された、緩やかにカーブした天井については、従来の同種施設にはない空間効果をもたらせていると思われる。内観の緩やかな空間の実現と、外観の従来型の直線的な切妻屋根のギャップが、ここで過ごす子供たちにどのような印象を与えるかが、少し気がかりである。

審査委員長講評

大学のキャンパスの隣に建つ、大学附属の幼保連携型認定こども園の新築計画である。建物は雁行させ、キャンパス沿道からつづく桜並木との間に空間を生み、そこにアプローチを計画した。敷地いっぱいに広がる屋根は住宅スケールに分節し、大学の大きな建築群と裾野に広がる戸建住宅群をつなぎ、街並みの連続性を創出した。建物はイエ型を用いて、屋根・壁をアスファルトシングルでくるみ、独創的で愛嬌のある外観とした。活動拠点とな

る保育室は、稜線が徐々に開いていく曲率を持った寄棟形状の天井として、その隙間に照明を仕込んだ。すべての機能を1フロアで納め、学齢ごとにグルーピングしつつ、それらを連続させた明快な平面計画を実現した。「絵本に親しみ、豊かな心を育てる」という教育理念のもと、絵本や作品展示ができる棚を建具と一体的にデザインし各所に展開した。様々な出会いがあり、異学齢が刺激し合う計画を目指した。

設計意図

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5建築あいち 2020年7月号

エンジニアリングセンター 研究棟愛知県長久手市 矢作建設工業株式会社一級建築士事務所

優 秀 賞

第14回 愛知県建築士事務所協会 愛知建築賞

鋭く切り取られたような屋根と壁による L型の造形がエントランス越しに見える印象であり、強烈なインパクトがある。東と北面の全面的なガラスカーテンウォールも大胆な造形で、評価に値する。環境負荷軽減のために設けられたダブルスキンのカーテンウォールにどのような工夫が為さ

れているか、メインの2階執務室や1階会議室・研究室のレイアウトがどう為されているかが知りたかった。立派なエントランスゲートも応募対象とされているようだが、ゲートから本建物風除室への長いアプローチ、歩道及び植栽帯内の歩廊の扱いが平凡で、違和感を覚える。

審査委員長講評

当エンジニアリングセンターは愛知県長久手市に所在する研究開発施設で、中部地区最大級の実験装置を備え、防災・減災に加え社会のニーズを実現する技術開発や ICT の活用による生産性向上など、建設に関する幅広い開発を行っている。当研究棟はそのセンターの機能拡充を目的に、研究員の執務スペースのみならず、外部との共同研究や情報発信の場としても機能する施設として計画された。

自然の驚異に対するチャレンジ、自然環境との融合・共生、そして技術開発における先進性の表現をテーマに、豊かな緑地を背景に開放感あふれる洗練された建築計画を目指した。水平ラインを強調したシャープなフォルムに透明感のあるガラス張りのファサードが特徴の外観デザインで、環境負荷の低減や、ユニバーサルデザイン、防災等にも配慮した設計となっている。

設計意図

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6 建築あいち 2020年7月号

株式会社CURIOUS design workers一級建築士事務所WOODEN TRUSS愛知県名古屋市

奨 励 賞

第14回 愛知県建築士事務所協会 愛知建築賞

閑静な住宅街にて鉄骨造からの建て替え計画。木造大工である施主から木造で計画しながら人が集まりやすいように大空間がほしい、趣味のアートを増やしながらインテリアを充実させていきたいという要望を頂いた。南側隣地の建物によって1階には日照があまり見込めないため2階 LDKとし、8寸勾配の屋根で天井高を高くしながら木製トラス構造による大空間を実現させた。また南側と北側に大開口窓を設置して屋外との繋がりをもたせながら風の抜けと採光を確保し、住宅の快適性を向上させている。

インテリアは木製トラスの主張が強いため、トラス下弦材を80cm上部に上げるシザーストラスとして木構造の主張を抑えた。2階 LDKワンフロアとなるため、視線をはずしてくつろぐ場所をつくるために玄関ホールを第2のリビングと位置付けて階段で緩やかに繋ぎ、踊り場に趣味のアートを飾る棚を設置して訪問者とのコミュニケーションをはかれるように計画した。

設計意図