第1章 接遇・介助に関する教育の実施状況 - mlit...1.2...
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1.1 事業者アンケートの概要
第1章 接遇・介助に関する教育の実施状況 1.1 事業者アンケートの概要
接遇・介助教育の実施状況、教育マニュアルの整備状況、内容等の整備を把握するために、
交通事業者の接遇・介助教育の実施状況について、アンケート調査を実施した。 対象は全国の鉄道主要各社、主要な都市圏から選択した路線バス事業者(車両台数が多い事
業者)である。アンケートの配布・回収数は次のとおり。
表 1-1 アンケートの回収状況
事業種別 鉄 道 バ ス 合 計 配布数 31 25 56 回収数 28 18 46 回収率 90% 72% 82%
1.2 接遇・介助教育の実施状況
(1)高齢者・障害者等に対する接遇・介助教育の実施状況 回答を得られた 46 事業者の 96%を占める 44 社が接遇・介助教育を「行っている」と回答し
ている。鉄道事業者(JR、大手、準大手民鉄の各一部)は全てが実施していた。
1 1
44
行っている
行っていない
検討中である44
なお、平成 11 年に交通エコモ財団が実施したアンケートで、「行っている」と回答した事業者
は 56%にとどまっていた(75 社対象。内タクシー事業者6社含む)。
単位:事業所数(n=46)
表 1-2 接遇・介助教育の実施状況
鉄道 バス 合計
行っている 28 16 44
行っていない 0 1 1
検討中である 0 1 1
回答事業者数 28 18 46
図 1-1 接遇・介助教育の実施状況
1
1.2 接遇・介助教育の実施状況
(2)教育プログラム等マニュアルの有無
教育プログラム、ハンドブック等のマニュアルを使用している事業者は、接遇・介助教
育を実施している事業者の約 6 割以上を占めている。 事業者が使用中の教材をみると、運輸全般について職員として把握していなければいけ
ない事柄を整理したものが多く、これらの教材のなかで、高齢者・障害者等への接遇・介
助が取り上げられている。
所数(n=46)
2 1
16
29
マニュアルがある
マニュアルはない
教育を実施していない
無回答
表 1-3 教育プログラム等マニュアルの有無
図 1-2 単位:事業
表 1-4 教育プログラム等マニュアルの例 その1
事業者名 「マニュアル
の名称」
接遇・介助に関わる内容
鉄道事業者 鉄道事業者 A 「駅管理と日
常業務」
事故発生や火災発生の緊急事態の対応や、事故防止の観
点から、駅務員の業務についてまとめられている。 第4章 お客さまへの対応においては、心構え、車いす
使用者、視覚障害者、聴覚障害者への応対を解説。乗車駅
から降車駅への連絡票(見本)も添付している。 車いす使用者への応対については、乗降の申し出を受け
た場合の対応手順、車いすの取扱方法等についてもイラス
トを用いて紹介している。 鉄道事業者 B
「鉄道事業本
部 接客マニ
ュアル」
接客マニュアルは、20 シーンに分けてシーン別に対応を
示している。その内接遇・介助に関する項目は、「目の不自
由な方が電車を利用される」「車椅子ご利用の方が電車を利
用される」の2シーン紹介されており、対応がまとめられ
ている。 鉄道事業者 C
「お客さまへ
の接遇」
STEPⅠ~STEPⅥの6つに分けて接遇を説明している。 STEPⅤは「身体障害者の方への対応」として、車イス利用、
視覚障害、聴覚障害のお客さまへの基本的な応対手順やポ
イントをまとめている。 鉄道事業者 D
「駅職員の接
客マナーガイ
ドブック」 (平成 14 年 3 月)
状況別に 10 項目に分類し、お客さまへの対応を説明して
いる。 接遇・介助に関しては、交通弱者という位置づけで「目
の不自由なお客様」「車椅子のお客様」「耳の不自由なお客
様」「高齢のお客様1、2」でそれぞれまとめられている。
鉄道 バス 合計
マニュアルがある 16 13 29
マニュアルはない 11 3 16
教育を実施していない - 2 2
無回答 1 - 1
回答事業者数 28 18 46
教育プログラム等マニュアルの有無
2
1.2 接遇・介助教育の実施状況
表 1-5 教育プログラム等マニュアルの例 その2 バス事業者 バス事業者 A
「乗務員ハン
ドブック」 (平成 14 年3月)
乗務員として基本的に知っていなければいけない、Ⅰ.
運賃関係、Ⅱ.車内機器操作関係、Ⅲ.お客さまへの対応、
Ⅳ.危機管理で構成されている。 Ⅲ.お客さまへの対応については、高齢者・障害者だけ
でなく、ベビーカー使用者、外国人への応対例も示してい
る。Ⅲ章は 14 ページ、クイズも挿入されている。 バス事業者 B
「安全運転の
ための検証」 (平成 15 年6月)
安全運転、車いす使用者の介助、高齢者の車内事故防止
に関する具体例をもとにした教本。全 15 ページ。 車いす使用者の介助については、乗降介助、車いすの固
定等をスロープ、固定装置の図解で説明している。 バス事業者 C
「乗務の手引
(運転士編)」
スロープ板の設置と操作手順、車いす使用者の乗降取扱
手順をフローで示しており、盲導犬の取扱についても記載
している。
バス事業者 D 「バリアフリ
ー 高齢者・身
障者援助マニ
ュアル」
外部教育機関のテキストを使用している。テキストは「お
年寄りを理解するために」「虚弱や障害のあるお年寄りへの
援助技術」「障害者への援助技術」「交通事業者としての援
助」で構成されている。お年寄りの身体的・精神的な状況
を示し、様々な場面における援助を紹介している。また、
視覚障害や聴覚障害のお客さまへの援助技術も説明してい
る。 バス事業者(3
社) 「バス運転者
のための行動
マニュアル」 (平成 14 年3月)
神奈川県バス協会の発行のテキストを利用している。テ
キストは「はじめに」「交通バリアフリー法とは」「応対す
るときのマナー」「車いす利用のお客様への対応」「車いす
の基礎知識」「視覚障害のお客様への対応」「その他のお客
様への対応」「ベビーカーへの対応」「車内のお客様に協力
を求めるときの注意点」「割引・無料乗車券制度」の 11 項
目で構成されており、カラーのイラストを用いて説明し、
分かりやすく簡潔にまとめられている。
(3)教育の開始時期
教育プログラムの開始時期は、1990 年代後半から、交通バリアフリー法の施行された
2000 年以降に集中している。
単位:事業者数(n=44)
1 1 2
11
165
それ以前
1980~1984年
1985~1989年
1990~1994年
1995~1999年
2000~2005年
図 1-3 教育プログラムの開始時期
3
1.2 接遇・介助教育の実施状況
表 1-6 教育プログラムの開始時期
鉄道 バス 合計
それ以前 - 1 1
1980~1984 年 1 - 1
1985~1989 年 2 - 2
1990~1994 年 3 2 5
1995~1999 年 9 2 11
2000~2005 年 11 5 16
無回答 2 6 8
回答事業者数
(教育を実施中の事業者)
28 16 44
(4)受講対象者の部署、職位等 受講対象者職位の傾向としては、現場の職員に限定している事業者と、事務所職員まで対象
を拡大している事業所に大別される。乗務員、旅客施設の新人職員は全員受講対象としている事
業者も複数みられた。
表 1-7 受講対象者の部署、職位等(鉄道事業者)
職位
管理職のみ
新任管理職のみ
新任者全て
担当者のみ
希望者のみ
全て 計
部署 社内 鉄道部門 乗務員 運転手のみ 8 8
車掌のみ 3 3
乗務員全て 1 1 8 10
駅係員 4 1 4 20 29
保守職員 1 1
鉄道部門全て 1 2 1 2 6
総務部門 1 1
社内全て 1 2 3 1 7
グループ会社全て 1 1
計 7 5 9 1 1 43 66
注)28 社の意見数(複数回答)。
表 1-8 受講対象者の部署、職位等(バス事業者)
件 数
運転手(乗務員) 14
新入の乗務員 3
事故惹起者、苦情の多い者 1
営業所職員 3
注)16 社の意見数(複数回答)。
4
1.2 接遇・介助教育の実施状況
(5)教育時間数、対象者数 ①教育時間数 1回あたり2時間程度の講習を実施している事業者が多い。年間の延べ時間でみると、
9時間以下の事業者から 200 時間以上(たとえば、7 時間のプログラムを 30 クラスに
実施)の事業者まで差がある。
0
1 13
10
5
8
6
0.5~1時間/回
2時間/回
3時間/回
4時間/回
5時間/回
6~10時間/回
11時間以上/回
図 1-4 1回の
表 1-9 1回の
鉄
0.5~1時間/回
2時間/回
3時間/回
4時間/回
5時間/回
6~10 時間/回
11 時間以上/回
②対象者数
対象者数は、鉄道事業者の場合、年間 14~より人数に差がある。また、バス事業者の場
事業者により乗務員の数に幅が生じる結果と
5
単位:事業者数(n=43)
教育時間数
教育時間数
道 バス 合計
2 8 10
11 2 13
3 2 5
- - -
1 - 1
7 1 8
5 1 6
2,000 人となっており、各事業者の規模に
合も同様に、108~800 人となっており、
なった。
1.2 接遇・介助教育の実施状況
(6)教育の目的 事業者における接遇・介助教育の目的は、「具体的な接遇・介助方法の習得」が最も多
いが、「接遇・介助レベルの更なる向上」「心のバリアフリーを含む接客サービスの向上」
「障害者(団体)と接する機会を設けて理解を深める」等、さらに教育内容を充実させて
いく傾向にある。 事業者別にみると、鉄道事業者では外部の教育機関を活用した「民間研修機関等の資格
取得」、バス事業者では「車内事故の防止」が多い。
表 1-10 教育の目的(自由回答)
鉄道 バス 合計
◇移動制約者の理解 3 9 12
◇具体的な接遇・介助方法(全般)の習得 12 13 25
◇接遇・介助レベルの更なる向上 6 2 8
◇車いす等の取扱方法の習得 3 6 9
◇車いす固定方法の習得 注) - 2 2
◇心のバリアフリーを含む接客サービスの向上 6 1 7
◇障害者(団体)と接する機会を設けて理解を深める 1 1 2
◇高齢者・障害者の擬似体験を通した介助方法を習得 3 2 5
◇指導者の育成 3 - 3
◇民間研修機関等の資格取得 8 - 8
◇車内事故の防止 - 5 5
◇車内・車外アナウンスの習得 - 1 1
回答事業者数(教育を実施中の事業者):44 事業者(複数回答)
注)上表では「車いす固定方法の習得」を教育の目的として回答しているバス事業者は
2社であるが、アンケート調査に回答したバス事業者(16 社)に電話で追跡調査
したところ、全ての事業者が車いす固定装置の取扱方法に関する教育を実施してい
ることが明らかになった。 しかし、国土交通省の既存調査*では、車いす使用者から、慣れていない運転手
は車いすの固定に時間がかかる等の意見が挙がっており、継続的な教育の実施が必
要と考えられる。一方、複数のバス事業者から車いす使用者に対しては、短時間の
乗車であっても安全確保のために車いす固定に協力してほしいという意見も挙が
っており、乗務員及び車いす使用者への車いす固定の必要性についての周知等が課
題である。 *「バス車両における高齢者・障害者の安全性に関する調査」国土交通省、平成 17 年3月
6
1.2 接遇・介助教育の実施状況
(7)会社で実施している教育内容 会社(部署)の教育において実施している内容としては、「乗降用スロープ、昇降機等
の機器操作の実習を行っている」「外部の教育機関を利用している」が最も多い。
表 1-11 会社で実施している教育内容
鉄道 バス 合計
乗降用スロープ、昇降機等の機器操作の実習を行っている 20 14 34
外部の教育機関を利用している 19 4 23
教育内容の再確認のため、定期的に講習会を開催し、再受講を勧めている 8 7 15
障害者団体等との日常的な協力関係があり、継続した意見聴取を行っている 7 7 14
現場の職員からの意見、アイデアを教育に取り入れている 7 5 12
新しい教育内容を追記する等教育プログラムの定期的な更新を行っている 6 6 12
その他の取組み 14 4 18
回答事業者数(教育を実施中の事業者):44 事業者(複数回答) <外部の教育機関の内訳>
鉄 道 バ ス
東京都福祉保健局心身障害者福祉セン
ターの協力を得て研修用テキスト等を
作成中。作成したマニュアルを基に、バ
ス乗務員を教育指導する管理監督者を
対象に東京都福祉保健局心身障害者福
祉センターの教育を受講する予定。
1
民間研修機関による研修 1
民間研修機関による研修 20
堺市社会福祉事務所 1
東京都福祉保健局心身障害者福祉セ
ンター 1
保健福祉局の専門職員による車いすの
乗車実習 1
外部の教育機関を利用していると回
答した事業者数 19
外部の教育機関を利用していると回答
した事業者数 4
注)OJT による接遇教育を実施 1 事業者(複数回答)
<その他の取組みの内訳>
鉄道 バス 合計
◇高齢者・障害者の疑似体験 7 3 10
◇障害者を講師に招いての意見交換を含む研修 4 1 5
◇駅ボランティアと職員が同時に参加する疑似体験等の研修 2 - 2
◇民間研修機関等の資格取得 2 - 2
◇苦情や指摘を受けた乗務員に対する個別教育・指導 - 1 1
回答事業者数(教育を実施中の事業者):18 事業者(複数回答)
7
1.2 接遇・介助教育の実施状況
(8)教育内容に関する職員からの意見、お客さまからの指摘事項 教育内容に関する職員の方からの意見、お客さまからの指摘事項で今後反映していきた
い事柄等を整理した。 鉄道事業者の「利用者のニーズに応じた接遇・介助」は、エレベーター等の駅設備の拡
充に伴い、介助を希望しない利用者がいる実態を反映した意見である。「乗車駅から降車
駅までの確実なサポート」「介助の際の利用者への声かけの徹底」等、接遇・介助の更な
る充実を今後反映したい事項として挙げている。 バス事業者は、運転手が直接利用者と接する機会が多く、かつ地域に根ざした交通機関
であることを反映して、利用者からの要望により、「障害者(団体)との交流、意見交換」
「運転士と障害者のお客さまで実技講習を開催」等に取り組んでいる。「苦情・感謝等利
用者意見のデータベース化」のデータを分析し、社内教育に活用している事業者もある。 表 1-12
教育内容に関する職員及びお客さまからの指摘事項で今後反映したい事項(自由回答)
鉄道 バス 合計
◇接遇・介助教育全般の推進 4 4
◇利用者のニーズに応じた接遇・介助 2 2
◇乗車駅から降車駅までの確実なサポート 2 2
◇安心感のある接遇・介助 1 1
◇態度、言葉づかいの指導 1 1
◇介助の際の利用者への声かけの徹底 1 1
◇優先席に関する乗車マナー向上 1 1
◇障害者(団体)との交流、意見交換 3 3
◇運転士と障害者のお客さまで実技講習を開催 1 1
◇車いす使用者への対応マニュアルの作成 1 1
◇苦情・感謝等利用者意見のデータベース化と分析 1 1
◇車外放送の徹底 1 1
◇施設・車両のバリアフリー化推進
(ノンステップバス導入率の拡大) 3 1 4
◇車内設備の改善 1 1
◇車両バリアフリー化設備、車いす等の最新情報の収集 1 1
8
1.2 接遇・介助教育の実施状況
表 1-13 鉄道事業者の意見詳細(お客さまからの指摘事項で今後反映したい事項)
◇接遇・介助教育全般の推進(4件)
・ 高齢者、障害者のお客さまの接客サービス全般の向上(3件)
・ 全職員が介助についての知識を深め、積極的なサポートに努める
◇利用者のニーズに応じた接遇・介助(2件)
・ バリアフリー設備の整備された駅を利用するお客さまの中には、係員による介助を受けず
に自分で乗降することを希望する人もいるので、お客さまのニーズに応じた対応方法を検
討していきたい
・ スロープ板による乗降介助の徹底(但し、お客さまの意向による)
◇乗車駅から降車駅までの確実なサポート(2件)
・ 車いすについて乗車、降車の確実なサポート
・ 車いすをご利用のお客さまに対する駅間連絡がスムーズにいくよう、注意・徹底を図って
いきたい
◇安心感のある接遇・介助(1件)
・ メリハリのある態度で信頼感、安心感を与えられる応対方法を教育したい
◇態度、言葉づかいの指導(1件)
・ 一部係員に対して「手伝ってもらえたが、態度、言葉づかいが悪い」とのご指摘を受ける
ことがあるので、全てのお客さまに気持ちよく乗車して頂けるよう、特に態度、言葉づか
いについて教育していきたい
◇介助の際の利用者への声かけの徹底(1件)
・ 車いす操作時、必ず声かけを行い信頼関係を築く
◇施設・車両のバリアフリー化(3件)
・ 駅施設・車両におけるバリアフリー化の推進(更なる設備の充実)(3件)
◇優先席に関する乗車マナー向上に努める(1件)
表 1-14 バス事業者の意見詳細(お客さまからの指摘事項で今後反映したい事項)
◇障害者との交流、意見交換(3件)
・ 障害者団体とバス事業者との定期的な懇談会に出席し、お互いの問題点を協議しているこ
とを今後とも継続していきたい
・ 障害者を講師に招いて障害者側の気持ち等について学習をした。「生の声」を聞くことで意
思の疎通ができたとの反響だった
・ 障害者団体等との交流や意見交換をしていきたい(障害者等の目線に立った対応を推進す
るため)
◇障害者のお客さまからの要望で運転士と実技講習を開催(1件)
・ 障害者のお客さまからの要望で、営業所で運転士の人達と実技の練習を開催した経緯があ
り、これからも続けていきたい
◇車いす使用者への対応マニュアルの作成(1件)
・ 車いす利用者がバスに乗車する際の対応マニュアルの作成。乗車人数等の状況で対応する
ため、統一したマニュアルの作成が困難、現状は適宜対応することとなっている。
◇苦情・感謝等利用者意見のデータベース化と分析(1件)
・ 現場における高齢者・障害者のお客さまからの苦情事例や感謝事例をデータベース化し、
分析し研修に生かしている。
◇バス停での乗車、降車位置、車外放送の徹底(1件)
◇ノンステップバス導入率の拡大(1件)
◇車内設備の改善(1件)
◇車両バリアフリー化設備、車いす等の最新情報の収集(1件)
9
1.3 今後取り組む内容
1.3 今後取り組む内容 会社において取り組む意向のある接遇・介助に関わる教育内容等の自由意見を整理した。
「高齢者・障害者の疑似体験」が 12 社と最も多く、「高齢者・障害者との意見交換」と合わ
せた参加体験型研修の継続した実施意向がうかがえる。 鉄道事業者、バス事業者ともに、単なる介助を体験するだけでなく、高齢者・障害者に
ついて理解を深める講義を設けている事が多く、従来は全ての事業者で対象とされていな
かった知的障害者等への対応を挙げた事業者もみられた。「お客さま接遇(サービス)分
野の講師による講習」を予定しているバス事業者もあり、本調査でも交通事業者以外のサ
ービス業全般における接遇・介助の現状を調査した。(参考1を参照)
表 1-15 会社において今後取り組む内容(自由回答)
鉄道 バス 合計
◇高齢者・障害者の疑似体験 4 7 11
◇車いす使用者の介助等の実技講習 3 2 5
◇高齢者・障害者との意見交換 3 2 5
◇継続的な教育受講者のフォローアップ 2 2 4
◇教育プログラムの整備 3 - 3
◇気づきと心のバリアフリーの推進 1 3 4
◇知的障害者等への対応 2 - 2
◇内部障害者、聴覚障害者等への対応 1 - 1
◇指導的立場の職員向け研修の充実 1 1 2
◇受講者意見の教育への反映 1 - 1
◇利用者の状況に応じた接遇・介助 - 1 1
◇接客態度、言葉づかい等の研修 - 1 1
◇お客さま接遇(サービス)分野の講師による講習 - 1 1
◇高齢者向け安全乗車教室の開催 - 1 1
◇車内事故防止のための研修 - 1 1
◇新型車両、バス停の改良に伴う対応 - 1 1
◇バス停への正着停車の徹底 - 1 1
◇ノンステップバスの拡充 - 1 1
◇福祉バスの運行受託の拡大 - 1 1
◇研修内容全般の充実 2 4 6
10
1.3 今後取り組む内容
表 1-16 鉄道事業者の意見詳細(会社において今後取り組む内容)
◇高齢者・障害者の疑似体験(4件)
・ バリアフリー教室等、職員が疑似体験できる教習を今後も実施していきたい
・ サービスには個人に対する理解とやさしさがないと意味がないので、高齢者の心理を学習す
るため、疑似体験講習を行っていきたい
・ 高齢者のお客さまに対する研修として疑似体験の実施
・ 障害者のお客さまへの接客サービスの向上のため、心身障害者福祉センターの職員の方を講
師にお願いし、参加体験型研修を実施
◇車いす使用者の介助等の実技講習(3件)
・ 車いすの実習の継続
・ 実技面での教育を更に拡充する
・ 現場で使用されている機器を集合研修においても使用体験させる必要があると考えており、
例えば今年度の研修からはホームと車両との間の「渡り板」を用いて実習させている
◇高齢者・障害者との意見交換(3件)
・ 社外地域団体等との積極的な交流により、スキルアップを図ると同時に情報交換を進めてい
きたい
・ バリアフリー整備を実施するにあたり、「バリアフリー化検討委員会」を設置し、障害者の
方等から意見を聴き進めていることから、今後も継続して実施し、整備を進めていきたい。
・ 講義型の研修が多くなってしまうため、障害者施設等を訪問し、日常生活のことや交通機関
の利用等についての意見を聞きたい
◇継続的な教育受講者のフォローアップ(2件)
・ 社員より資格取得後のフォローをしてほしいという意見があるので検討していく
・ 資格をとっても毎日使うわけではないので、年に1回の振り返りが大切であり、今後も続け
る必要がある
◇教育プログラムの整備(3件)
・ 現場における高齢者・障害者のお客さまからの苦情事例や感謝事例をデータベース化し、分
析し、研修に生かしている
・ 高齢者・身体障害者等への対応マニュアル(職員向)を作成中(平成 18 年3月完成予定)
・ 車いすやスロープ等機器に関する具体的な取り扱いマニュアル等の整備
◇知的障害者への対応(2件)
・ 知的障害をもつお客さまへの応対の向上
・ 今年度から研修所の年次研修の中で、知的障害者の母親を呼び話を聞いた。次年度も計画的
に実施を予定している(対象:駅職員、乗務員 平成 17 年度 計 137 名受講)
◇内部障害者、聴覚障害者等への対応(1件)
・ 内部障害や聴覚障害等外見上わかりにくい障害があるお客さまに対しての理解
◇気づきと心のバリアフリーの推進(1件)
・ バリアフリー化された駅ではお客さまが一人で自由に利用しているが、駅係員の気が付かな
いところで転んだり困ったりしている方もいるので、今後もおもてなしの心を持って応対し
たい
◇指導的立場の職員向け研修の充実(1件)
・ 管理者としての現場指導方法、管理者に求められるサービスについて取り組みたい
◇受講者意見の教育への反映(1件)
・ 教育を受講した係員の声を基に今後も教育等の拡充を図っていく予定
◇研修内容全般の充実(2件)
・ 交通バリアフリー法の趣旨を踏まえ、よりきめ細かい応対ができるよう今後とも研修内容等
を十分検討していきたい
・ 鉄道施設には多くのバリアが存在するが、ハード面の整備には経費と時間がかかるためソフ
ト面での整備としてこれまでの研修を幅広く実施していきたい
11
1.3 今後取り組む内容
表 1-17 バス事業者の意見詳細(会社において今後取り組む内容)
◇高齢者・障害者の疑似体験(7件)
・ 相手の身になった応対ができるよう、高齢者・障害者の疑似体験を今後とも積極的に教育に
取り入れていきたい(3件)
・ 乗務員に器具を使い高齢者の疑似体験を行う予定(2件)
・ 社員全員(運転士、ガイド、事務員)に高齢者・障害者の疑似体験の実施
・ 今後も継続して、高齢者・障害者の擬似体験を充実させ、サービスの向上及び事故防止につ
なげていきたい
◇車いす使用者の介助等の実技講習(2件)
・ スロープ板装着実習の充実
・ 車いすを使っての乗降研修を行っていきたい
◇高齢者・障害者との意見交換(2件)
・ 高齢者等のバス利用促進・定着を図るべく、自治体や運輸当局と連携をとりながら、利用促
進イベント、交通バリアフリー教室等、有機的に行いたい
・ 障害者との交流会開催
◇継続的な教育受講者のフォローアップ(2件)
・ 車いすの固定方法を理解していない乗務員がいるため、教育(実習)の再徹底を行う
・ 障害者への対応について実践を中心とした再確認を行っていきたい
◇気づきと心のバリアフリーの推進(3件)
・ 心のバリアフリーに関する教育を充実していきたい(2件)
・ 運転者に対して、高齢者・障害者への思いやりやいたわりの気持ちを養う教育をしたい
◇指導的立場の職員向け研修の充実(1件)
・ 高齢者・障害者の視点を加えた参加体験型の研修を取り入れていく予定である。研修にあた
っては、初めに乗務員を教育指導する立場にある職員に対して参加体験型の研修を実施し、
次いで乗務員に対して高齢者・障害者等に対する接遇研修を行うことを検討している
◇利用者の状況に応じた接遇・介助(2件)
・ 高齢者・障害者の行動特性等を理解させ、お客さまの状況にあわせた適切な対応や接遇の向
上に努めたい(2件)
◇接客態度、言葉づかい等の研修(1件)
・ 接客態度、言葉づかい等の接遇向上研修を行っていきたい
◇お客さま接遇(サービス)分野の講師による講習(1件)
・ お客さま接遇(サービス)分野について十分な知識がある講師による教習の実施
◇高齢者向け安全乗車教室の開催(1件)
◇車内事故防止のための研修(1件)
・ 車内事故防止の観点から高齢者・障害者への接遇に関して何らかの教育をしていきたい
◇新型車両、バス停の改良に伴う対応(1件)
・ 各車両やバス停等実情に合わせた適切な対応を今後も引き続き検討していきたい
◇バス停への正着停車の徹底(1件)
◇ノンステップバスの拡充(1件)
◇福祉バスの運行受託の拡大(1件)
◇研修内容全般の充実(4件)
・ 高齢者・障害者の利用率増加が予測されるため、乗務員教育を第一に教育課程のあり方、内
容等を検討改善していきたい
・ 平成 15 年9月以降実施している乗務員研修について研修の充実を図る
・ バス運転者に対する高齢者・障害者への接客応対教育を行っていきたい
・ 各営業所において教育機会を設け、車いす使用者等障害者への接遇・介助方法を統一してい
きたい
12