第2部 職場研修 づくりの...20 第二部 職場研修実施の手順を知る...

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職場研修 づくりの 実際 第2部は実践編として、職場研修の仕組みづくりや 実践的な手順について紹介します。 2

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Page 1: 第2部 職場研修 づくりの...20 第二部 職場研修実施の手順を知る 2職場研修実施の手順を知る 職場研修をつくる手順を確認します。いきなり年間の研修計画をつくるわけではありません。

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第一部

職場研修づくりの実際第2部は実践編として、職場研修の仕組みづくりや実践的な手順について紹介します。

第2部

Page 2: 第2部 職場研修 づくりの...20 第二部 職場研修実施の手順を知る 2職場研修実施の手順を知る 職場研修をつくる手順を確認します。いきなり年間の研修計画をつくるわけではありません。

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第二部

福祉職員に求められる能力とは

●はじめに、福祉職員に求められる能力の特性を押さえておきましょう。「福祉職員の能力特性」をあらかじめ押さえておくことが、職場研修の仕組みづくりや能力開発の出発点となります。

●特に、能力分野を専門性と組織性とで分けて考えると、職場研修の強化ポイントをとらえやすくなります。

●専門性の高い職員が必ずしも実践能力が高い職員とはいえません。福祉サービスは職場で提供するものですから、専門性とともに、職場組織の中でうまく行動できる(=組織性の高い)職員が求められます。

●つまり、専門性と組織性をバランスよく備えている職員が実践能力の高い職員といえます。

福祉職員に求められる能力とは1

1 福祉職員に求められる能力分野(専門性と組織性)

業種・職種固有の専門性● 専門知識・スキル

福祉職員共通の専門性● 福祉サービスの基本理念

組織性(=マネジメント)● チームワーク ● 問題解決● リーダーシップ ● 能力開発● コミュニケーション

●スキルは3つに分けることができます。コンセプチュアル・スキルは特に管理職に求められる能力です。

3 福祉サービス実践に求められるスキルの中身

テクニカル・スキル ・実務を遂行するための知識、技術 ・専門性や組織性に関する知識、技術

ヒューマン・スキル ・コミュニケーション能力、チームワーク力

コンセプチュアル・スキル ・問題解決能力や総合的な判断能力

本書では「専門性」と「組織性」の開発を研修において最も重視しています

●専門性と組織性を底流で横断的に支える能力として、「やる気」「知識」「スキル」の3つの能力があります。●やる気を引き出すには明確な目標と職場内での良好なコミュニケーションがカギとなります。

2 専門性と組織性を横断的に支える能力

価値観・態度・やる気 (やる気になる) 援助に対する考え方、価値観、倫理観・意欲

知識・情報 (分かる) 援助活動に関する知識や情報

技術(スキル)・技能 (できる) ノウハウや知恵、思考・行動パターン

やる気を引き出す研修はOJTが有効です

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第二部

職場研修実施の手順を知る

職場研修実施の手順を知る2●職場研修をつくる手順を確認します。いきなり年間の研修計画をつくるわけではありません。●職場研修をつくるには、経営理念の確認から始まり、研修の評価に至るまでの研修管理のサイク

ルを押さえておくことが重要です。

研修管理の手順 意義 ポイント

1経営理念・サービス目標の確認

・研修とは、法人としてより良いサービスを提供するために行うものです。そして、法人としてどのような特徴のあるサービスを提供するかは、法人の経営理念をもとに定められます。・つまり、研修を実施する意義や目的とは、経営理念の追求、実現であると言い換えることもできます。・従って、経営理念を確認することは、研修を実施する出発点になります。

・組織として「こうありたいと思うこと」「他組織と比べて優位でありたいと思うこと」を明確化する。・創業者の理念と現在の内外の環境の両面から確認する。

2 人材育成方針の策定・点検

・経営理念を実現するために、どのような人材を育成したいか等、法人としての基本的な考え方をまとめておくことは、一貫性のある人材確保(職員募集)や人材育成の基盤になります。

・経営理念を実現するために組織として「このような職員に育てたい」という基本的な考え方を端的な表現で簡潔に示す。

3 研修実施要綱の策定・改正

・研修の実施にあたっての運営体制や役割、基準を実施要綱として明文化しておくことで、法人にとっても職員にとっても、行うべきことが明らかになり、安定的な研修の実施につながります。

・経営理念、人材育成方針をもとに、研修の実施要綱を明文化する。

4 研修体系の策定・改正

・年度を超えた研修体系を策定しておくことで、毎年の研修計画をゼロからつくる必要がなくなり、効果的・効率的に年度の研修計画が策定できるようになります。

・年度を超えて実施する研修の体系図をつくる。

5 年度研修計画の策定・改正

・年度ごとに研修計画を策定すれば、利用者の変化や職員の研修ニーズに対応できる計画となります。

・研修体系に基づき、年度研修計画を策定

6 研修の実施・研修目的や研修ニーズ、対象者に応じて研修形態・研修技法を組み合わせることで有意義な研修実施となります。

・年度計画に基づき、計画的に実施

7 研修の評価 ・研修を評価し、改善することで、次回の研修がステップアップします。

・研修実施後は必ず実施の効果性や課題を分析し、次年度に改善として反映させる。

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第二部

職場研修の形態を知る

職場研修の形態を知る3●職場研修には、OJT、OFF-JT、SDSの3つの形態があります。●研修というと外部研修をイメージしがちですが、職場研修の主役はOJTです。比率を参考に組み合わせてみてください。

研修区分 概要 形態 実施例 特徴 比率

OJT職務を通じて行う研修

日々の仕事の中で随時行う

・仕事の打ち合わせのとき・仕事をしているとき

・気がついた時にいつでも行えるので、即効性が高い

計画的に行う ・個別の職員の育成計画に基づいて実施する ・中長期的な人材育成に効果的

個別に行う・業務に同行させる・育成面談による指導・新任職員へのOJT指導者を配置

・「個別」に「日常」で行う場合と「計画的」に行う場合がある

集団で行う ・ケースカンファレンス・委員会活動

・「集団」では「計画的」に行う場合が多いが、「日常」でも行うことができる

OFF-JT職務を離れて行う研修

職場内で行う ・外部講師を招いて行う・内部講師が行う

・研修に参加しやすいので、積極的に充実させたい研修形態である

職場外で行う ・外部団体主催研修に派遣する

・他職場の取り組みを知ることができ、新たな刺激となる・人的ネットワークが広がる・リフレッシュになる

SDS 自己啓発援助制度

経済的支援 ・資格取得者に研修助成金を支給 ・職場の研修風土の醸成に効果的

時間的支援 ・職務の免除・特別休暇の付与

・就業規則に自主研修にかかる休暇制度等を設置する

場の提供 ・自主勉強会の会場提供・資格取得講座の開催

・内部職員による資格取得講座の開催は職場の人材育成にも効果的

研修情報の提供 ・他団体主催研修案内を周知する ・研修出張適用、職務免除適用、

単なる情報提供、の違いがある

OJT :OntheJobTraining(職務を通じての研修) OFF-JT :OfftheJobTraining(職務を離れての研修)SDS :SelfDevelopmentSystem(自己啓発援助制度)

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第二部

職場研修の整備状況をチェック

●職場の研修の仕組みがどの程度整備されているか、職場研修制度整備状況チェック表【様式1】で点検してみましょう。充足している点と不足している点が見えてきます。

職場研修の整備状況をチェック4(1)職場研修制度を点検する

職場研修制度整備状況チェック表 【様式1】(様式集P51)

分野 No. チェックポイント ×

①職場研修の組織風土

1 職員の勤務条件の改善や資質能力の向上に前向きな職場風土がある2 職場でサービスや仕事についてのビジョンや目標を語り合う雰囲気がある

3 仕事の基本が厳しく徹底されるとともに、個性や創造性が尊重される風土がある

4 職場の管理者、指導者層は率先して模範を示し、ともに学ぶ姿勢がある5 職員研修の成果が利用者サービスの改善に結びついていると実感できる

②研修体制

6 研修担当者が決められている7 職員研修の理念や方針が明文化されている8 職員研修の予算は毎年算定している9 研修担当者の役割は明確にされており、ある程度の裁量権も認められている10 職員研修の体系、実施要綱が定められ、職員に周知されている

③OJT

11 管理者や指導者層はOJTの必要性を認識している12 新任職員に対するOJTは意識的に行われている13 日常の機会をとらえて適宜、指導育成が行われている14 管理者、指導者層に対するOJT研修が行われている15 OJTの対象者や指導項目を特定した「意図的・計画的指導」が行われている

④OFF-JT

16 外部機関への派遣研修は年度計画に基づき実施され、復命書の提出や伝達研修が行われている

17 職場内での集合研修が年度計画に基づき実施されている

18 職場内の集合研修を行う場合、実施要領を作成・配付する等、効果的な動機づけや進行管理が行われている

19 派遣研修の実施にあたっては、できるだけ多くの情報を収集し、研修ニーズに合致したコースを選択している

20 職場内での集合研修では、多様な研修技法が効果的に活用されている

⑤SDS

21 外部機関の研修会や研究集会等への自主的な参加が奨励されている22 職員の資格取得を奨励し、通信教育等の受講に便宜が図られている23 自主的勉強会や学習サークルが奨励されている24 自己啓発援助についての基準があり、職員に周知されている25 自己啓発援助に関する年度計画がある

【職場研修制度整備状況チェック表の使い方】1 職場研修制度整備状況チェック表を○×で点検する。2 職場研修制度整備状況集計表で8つの分野の○の数を集計し作図する。

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第二部

職場研修の整備状況をチェック

【参考:「福祉の職場研修担当者養成コース研修資料」(全国社会福祉協議会 2012年版)】

職場研修制度整備状況集計表 点数分野 1点 2点 3点 4点 5点

①職場研修の組織風土

②研修体制

③OJT

④OFF-JT

⑤SDS

⑥研修計画

⑦研修実施

⑧研修評価

職場研修制度整備状況チェック表 (つづき)

分野 No. チェックポイント ×

⑥研修計画

26 研修計画は毎年策定されている27 年度研修計画は、職員に周知されている28 年度研修計画は前年度の研修の評価をふまえて策定されている29 年度研修計画は、重点テーマや重点施策が設定されている30 職員との面談をとおしての個人別の研修計画がある

⑦研修実施

31 専門職としての資質能力向上(専門性)を高める研修を実施している

32 組織人としての資質能力向上(組織性)を高める研修を実施している

33 研修は、計画-実施-評価のサイクルで運用している

34 研修はOJT、OFF-JT、SDSの3つの形態で実施している

35 研修は、到達目標を明確にして実施している

⑧研修評価

36 研修はその都度、①研修成果、②実施経過、③計画内容を評価している

37 研修担当者は、研修結果の内容や評価を記録し、その都度、管理者や関係者に報告している

38 研修で学んだことを実務に生かす工夫が行われている

39 年度末には研修実績を総合的に評価し、次年度に反映している

40 研修がその後のサービス向上に役立っているか効果測定を行っている

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第二部

職場研修の整備状況をチェック

●職場研修の制度を点検したら、次は実施状況を点検してみましょう。●「新任研修は行っているが、主任等指導的職員の研修の機会がない」「援助技術等の専門性を深める研修は行っているが、チームワーク等の組織内での役割行動を確認する(組織性)研修は行われていない」等の課題が浮かび上がります。

(2)職場研修の実施状況を点検する

職場研修点検シート 【様式2】(様式集P53)(記入例)

対象 内・外 必・選 研修名 現状から見えてきた課題

OFF-JT

組織性科目

管理職職場内

必修管理職研修が計画的に実施されていない。人材育成や経営の理論を学び当事業所に照らし点検する視点が必要。

選択

職場外必修選択

係長職場内

必修 係長昇任時に職場内での必修研修が必要であるが、小規模事業所のため指導できる人材がいない。当面、職務階層別研修は必修にしたい。

選択

職場外必修選択 職務階層別研修(チームリーダー)

主任職場内

必修職務階層別研修の参加が本人の自覚に任され低調である。中堅職員としての育成方針とあわせて位置付けの検討が必要。

選択

職場外必修選択 職務階層別研修(中堅職員)

主事職場内

必修 新任職員研修 小規模事業所のため採用は小人数でかつ不定期。採用と職場内新任研修は計画的かつ定期的に実施できるようにしたい。

選択

職場外必修選択 職務階層別研修(初任)

専門性科目

共通職場内

必修選択

職場外必修 人権研修選択 ○○セミナー

○○職職場内

必修部会主催研修の周知はするが、参加は本人の希望に任されている。そのため参加が固定化している

選択

職場外必修選択 ○○担当者講習会(部会主催)

OJT共通 職場内 必修 各種委員会・会議を活用して指導育成 先輩による新人指導は行われているが、

先輩職員個人の自覚に任されており、組織的ではない。

主任 職場内 必修主事 職場内 必修

SDS 共通 職場内 選択 研修機材貸出 機材貸出以外にみるべきSDSがない。

【職場研修点検シートの使い方】① 実施している研修を該当の「研修名」欄に記入する。② 枠が埋まる部分は出来ている部分。埋まらない部分は出来ていない部分。実施していない場合は、実施して

いない理由や今後実施すべきか等を分析する。 ※ 研修の整備状況は、シートが埋まっているか否かで判断するわけではありません。

シートは職場研修の実施状況を整理・点検するためのツールとしてご活用ください。

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第二部

研修の実施体制を整備する

●役職員が一体となり、職場ぐるみで研修を充実させていくことが、働きやすい職場づくりにつながります。働きやすい職場になれば、職員のやる気や満足感が高まり、サービスの向上につながります。ひいては、経営の安定化につながります。

●まずは役職員の役割と業務を確認し、職場研修の整備に取り掛かりましょう。 特に、小規模事業所で管理者が研修担当者を兼務する場合は、一方的に事業所の方針で職員研修を

実施するのではなく、職員の研修ニーズを吸い上げるプロセスを大切にすることが重要です。

(1)役職員の役割・業務とポイント

研修の実施体制を整備する5

(2)研修担当者の設置とその業務●研修担当者に選任されても、何をすべきか今一つピンと来ないことが多いのではないでしょうか。具体的な業務を挙げますので参考にしてください。

項目 業務 ポイント

計画・前年度からの引き継ぎをふまえて年間研修計画原案を立案・年間研修計画を周知

・単なる前年度踏襲にならないように注意。前年度の評価をふまえて改善する。

運営

OJT ・OJT担当者との連絡 ・密に連携をとる。・OJT担当者連絡会を活用するとよい。

OFF-JT

・研修案内、参加者調整・研修参加手続き事務、本人への連絡・参加者からの報告等の書類を収受、保管・研修報告会の開催

・外部研修への派遣調整業務中心にならないように注意。職場内集合研修のほか、OJT、SDSとのバランスを意識する。

SDS・研修情報の周知・費用助成事務・研修機材の保管、管理、貸出

・職場としてどこまで整備するかにより業務項目は異なる。

委員会 ・研修委員会の運営(事務局)・OJT担当者連絡会の運営(事務局)

・研修委員会と役割分担し、一人で業務を抱え込まないように注意。

評価・参加者アンケート、研修報告を受け、研修の効果を分析(評価)・次年度への課題を整理

・研修委員会と役割分担のもとに実施。

役職員 役割・業務 ポイント

経営者 研修理念や仕組み、環境整備を行う

・職員研修に関心を持ち続ける。・経営者の職場研修への熱意が、サービス改善、職員の定着、人材確保につながる。

管理者 研修担当者の進行をバックアップ ・研修担当者の悩みや相談に耳を傾ける。

職員・面談を通して個別研修計画をつくる・研修に積極的に参加する・研修報告をする

・サービス改善、自己実現のために研修参加は不可欠。・一人ひとりの職員が自己啓発に努める情熱と、職場が責任を持って育てるという熱意が職場研修を進める力になる。

トップの姿勢が大きい

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第二部

研修の実施体制を整備する

(3)研修委員会の設置とその業務(発展)●研修委員会を設置することで、研修担当者が一人で研修業務を抱え込むことなく、相談しながら進めることができます。研修担当者と研修委員会が相互に相談・協力することで、職場研修が無理なく浸透します。

小規模事業所で研修委員会まで組織できないときは、既存の職員会議等で職員研修をテーマに設定し、職員間で職場研修を考える機会を設けると良いでしょう。

頻度 業務 ポイント

毎年

年度研修計画の企画 ・前年度の評価をもとに、継続する研修と見直しをする研修とを整理。

研修実施状況の進行把握 ・研修の参加状況の把握。

研修実施後の評価 ・研修実施後の参加者アンケートを分析。・年度研修の実績を評価。

不定期

人材育成方針の策定(改正) ・経営方針との整合性がとれているかを点検。・職員にとってなじみやすい表現になっているかを点検。

研修体系の策定(改正) ・OJT、OFF-JT、SDSがバランスよく組み込まれているかを点検。・必修科目、選択科目をそれぞれ点検。

研修委員会の業務

研修委員会の形態

設置 規模 構成

常設が望ましい。

各部署の意見が反映しやすい規模、意見を出しやすい人数に留める。

新任職員も参加できる視点があるとよい。職場の規模

にもよるが10人以内が目安。

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第二部

経営理念を確認する

経営理念を確認する6

経営理念を深めるための職場内研修のすすめ方(例)

●経営理念を全職員参加またはプロジェクトを組織して、確認(または策定)する一例を紹介します。参考にしてみてください。また、職場内研修のテーマとして取り組むことも有効です。

【手順】❶ 創業者の起業の理念を押さえる。❷ 今、職場の置かれた状況を役職員でSWOT分析(※)をしてみる。❸ 利用者や地域に対して「私たちはどうありたいか」を役職員から集約する。❹ 集約した結果を経営理念と照らし合わせる。❺ 経営理念を点検し、必要があれば修正をする。❻ 必要により、経営理念を実現するための下位基準として行動指針を策定する。

●職場研修は、言い換えれば経営理念を実現するための具体的な教育活動です。そのため、研修計画は経営理念と明確にリンクしている必要があります。

●経営理念はできるだけ短い言葉で、端的かつ象徴的な表現でまとめ、常に思い起こせる言葉を用いることが望まれます。

経営理念とは

「何のためにこの組織(自分たち)は存在しているのか」「誰にどのような価値を提供するのか」という事業所の存在価値を示したもの。他の事業所に比べた優位性を象徴するもの。

15文字程度が覚えやすいですね

内部環境

外部環境

強み 弱み

・サービスの質が高い・実習生からの評判が良い

・利用率が低下傾向・中心を担っていた○○さんが退職

機会

強みと機会を生かして何ができるか?・グループホームの展開

弱みで機会を逃さないためには何をすべきか?・地域へのPRの強化

・�市内で一人暮らし高齢者が増加

脅威

他法人には脅威でも強みを生かしてできることは何か?・実習生採用制度の創設

脅威に対して自職場への影響を最小限に抑えるには何をすべきか?・事業再編の中長期計画の策定・管理職の育成制度の見直し

・有効求人倍率が高い・介護報酬の改定

(※参考:SWOT分析の記入例)

強み×機会

強み×脅威

弱み×機会

弱み×脅威

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第二部

職員育成方針をつくる

職員育成方針をつくる7

[1]すべての人に思いやりと感謝の心をもって行動できる職員を育成する[2]思い込みではなく、技法や理論を尊び行動できる職員を育成する

●経営理念を確認したら、経営理念の実現を念頭に法人としての職員育成方針を立てましょう。●法人として「どのような職員になってほしい」か、また、「自分たちはどのような職員になりたいか」をまとめます。このことが次の具体的な「求められる職員像」の設定につながります。職員を募集する際の指針にもなります。

●また、現実の職場は非常勤やパート職員が多くの部分を担っていることが多いことから、これらの職員の募集、育成にも適用できる視点をもつことが大切です。

職員育成方針の策定手順 (例)

●職員育成方針は職員とともに策定すると、帰属意識の向上や定着化に寄与します。プロジェクトチームを組織し、全役職員参加でつくるのが理想的です。

●職員育成方針の策定過程そのものが実践的な研修の場になります。積極的に職員を巻き込みましょう。

【策定手順】❶ 「私は組織やチームに対してどのようになりたいか」「私は利用者や地域に対してどのようになりたい

か」を職員から集約する。❷ 「どのような職員になってほしいか」を役員間

で意見集約する。❸ それぞれの意見集約結果を経営理念と照合

し、職員育成方針にまとめる。

短い言葉でまとめるとよいですね

職員育成方針の策定手順イメージ(例)

自組織やチームに対して

時間管理を心がけたい

ミーティングで意見が言えるようになりたい

次回の園内発表会にむけ準備をしたい

利用者や地域に対して

利用者から学ぶ姿勢を忘れない

利用者の背景をふまえたアセスメントを心がけたい

社協のボランティアコーディネーターと連携を深めたい

どのような職員になってほしいか

利用者が退所した後も信頼される職員であってほしい

専門性を深めてほしい

後輩を思いやる職員になってほしい

❶ 職員意見集約

❸ 〈職員育成方針〉としてまとめる

❷ 役員意見集約

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第二部

求められる職員像を描く

求められる職員像を描く8

求められる職務遂行能力の把握手順 (例)

●全職員の参加やプロジェクトを組織して実施すると、実践的な研修の場となります。こういった作業過程そのものが職場内でのコミュニケーションを促し、働きやすい職場づくりにつながります。

●当面は空欄があってもかまいません。話し合い・アイデアを持ち寄る等、充実させる取り組みが大切です。

❶ 作業(ワーク)では自身の職種や役職をもとに作成する。❷ 専門性と組織性の能力分野に分けて、さらに、利用者、地域、職員自身、経営者・職場から、実際に求め

られた事柄を挙げる。❸ その事柄を遂行するために必要とされた能力、または必要とされる能力(=研修ニーズ)をまとめる。

(1)求められる職務遂行能力●職員育成方針を策定したら、求められる職員像をまとめてみましょう。職員育成方針の策定過程である程度、求められる職員像が見えてきたと思います。

●求められる職員増を描くにあたり、求められる職務遂行能力を点検してみましょう。求められる職務遂行能力は、求められる職務遂行能力点検シート【様式3】を使って点検することができます。

求められる職務遂行能力点検シート 【様式3】(様式集P54)【職種:○○職】【役職:○○】(記入例)

分野 観点 利用者から 地域から 職員自身として 経営者・職場から

専門性

事柄①�聴覚障害のある○○さんと意思疎通を図ること②○○ができること

①�ボランティア団体との関係の強化

①�福祉や関連領域に関する幅広い知識

①服薬管理の徹底

能力①手話②○○する感覚

①�アウトリーチするフットワーク力

①社会福祉士 ①薬に関する基礎知識

組織性

事柄①�敬語を知らないと不快にさせた

能力①敬語の使い方 ①行動力

②課題発見力

●自分が実際に求められた「事柄」(事実)をできるだけ挙げてください。

●その事柄を果たすために必要とされた「能力または研修ニーズ」を記入します。

●「組織性」とは組織で仕事をするうえで必要な能力分野のことで、社会人として共通に必要な能力ともいえます。(P19参照)

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第二部

求められる職員像を描く

(2)求められる職員像を描く

求められる職員像作成シート 【様式4】(様式集P55)(記入例)

区分 観点 求められる職員像

全体

専門性 ①すすんで専門知識・技術を学ぶ職員

組織性 ①職員間のチームワークとお互いの立場を尊重できる職員

共 通 ①考えて行動できる職員

役職

管理職

専門性

組織性

共 通

係長

専門性

組織性

共 通

主任

専門性

組織性

共 通

主事

専門性

組織性

共 通

職種

○○職

○○職

○○職

●職員育成方針と求められる職務遂行能力をもとに、求められる職員像をまとめます。必要により、職種や役職ごとに分けて作成することもあります。

●すべての枠を埋める必要はありません。優先順位の高い部分から策定します。

●利用者や地域との関係をみて、専門性と組織性の能力分野欄(分けにくい場合は共通欄)に、価値観(態度・意欲・やる気)、知識・情報、技術(スキル)・技能の観点から求められる職員像を描きます。

●簡潔に書きましょう。

価値観(態度・意欲・やる気)、知識、技術の分野に分けて検討してもよいですね

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第二部

研修の実施要綱をつくる

研修の実施要綱をつくる9●実施要綱は「職場研修のあり方や研修の実施に必要な手続き、方法等についての項目」を一つの文書としてまとめたものです。

●毎年の研修計画を立てる際の基準になりますので、ぜひまとめておきましょう。●一度まとめておくと、以降は必要な時に該当箇所を改正すれば済みますので、研修が安定的に実施・運営されるようになります。

●要綱の見本が【様式5】(様式集P56)にありますのでご参照ください。

項目 ポイント

1 目的とねらい 職員の資質向上を図り経営理念を実現するために定めることを意識する

2 職員育成方針 経営理念を実現するために法人としての育成方針を定める

3 求められる職員像 育成方針に基づき、求められる職員像を明示する

4

研修の実施体制(1)役職員の役割(2)研修担当者(3)研修委員会

職場全体で研修を実施する体制を整備する

5研修体系(1)研修体系図(2)研修体系の変更

OJT、OFF-JT、SDSを含めて体系を整備する

6年間の研修計画(1)年度研修計画の作成(2)年間研修計画一覧

研修体系に基づき、年度単位の研修計画を立案する

7

OJTの実施(1)全職員の責務(2)育成面談(3)OJT担当者

育成面談やOJT担当者(指導者・リーダー)に関する項目を定める

8OFF-JTの実施(1)OFF-JTの構成(2)参加手続方法

OFF-JTの参加に関する手続きを定める

9 SDS(自己啓発援助) SDSの種類を定める

10 研修の評価と見直し 研修評価と見直しの方法を定める

11付則(1)所管(2)要綱の改正手続き

所管先と要綱改正手続きを定める

12

様式(1)年度研修計画兼育成計画表(個人用)(2)研修企画書(職場内OFF-JT用)(3)研修受講申込書兼復命書(4)研修助成申請書

必要な様式を定める

研修実施要綱で明示すべき項目 (例)

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第二部

研修体系をつくる

研修体系をつくる

●研修体系は、OJT、OFF-JT、SDSの3つの研修形態を組み合わせて、バランスよく構成します。

研修体系図 【様式6】(様式集P61)(記入例)

対象 内・外 必・選 No. 研修名 備考(主催)

OFF-JT

組織性科目

管理職

職場内 必修1 新任管理職研修2 評価者研修(管理職)

職場外

必修3 職務階層別研修(管理職課程) 東社協4 ハラスメント研修5 メンタルヘルス研修

選択

6 経営基礎研修 東社協7 経営実務研修 東社協8 スーパービジョン研修 東社協9 リスクマネジメント研修

係長

職場内 必修10 新任係長研修11 評価者研修(係長コース)

職場外必修

12 職務階層別研修(チームリーダー課程) 東社協13 ハラスメント研修14 メンタルヘルス研修

選択 15 リスクマネジメント研修

主任

職場内 必修 16 新任主任研修

職場外必修 17 職務階層別研修(中堅課程) 東社協

選択18 OJTリーダー研修19 ビジネススキル研修

主事職場内 必修 20 新任職員研修

職場外必修 21 職務階層別研修(初任者課程) 東社協選択 22 ビジネススキル研修

専門性科目

共通

職場内必修 23 園内実践発表会選択 24 ○○資格取得講座

職場外

必修 25 人権研修(同和研修)

選択26 ○○セミナー27 ○○部会研修28 東京都○○研究大会

事務職 職場外 選択29 会計研修30 防火管理者講習

○○職 職場外 選択 31 ○○技術講習

OJT共通 職場内 必修

32 育成面談・スーパービジョン33 各種委員会・会議を活用しての指導育成34 ケース会議を活用しての指導育成

主任 職場内 必修 35 OJT担当者としての指導主事 職場内 必修 36 OJT担当者からの指導

SDS 共通 職場内 選択37 資格取得助成38 指定研修職務免除39 機材貸出

●組織性科目は、組織内での役割行動を学ぶ科目を指します。チームワークの良い職場づくりには欠かせません。

●専門性科目は、福祉サービス提供に必要な知識や技術に関する科目です。

職場改革の近道は、まず管理職員が変わることです。管理職研修も欠かさず設定しましょう。

OFF-JTだけでなく、OJT、SDSも一体的に作ることがポイントです。

10

Page 16: 第2部 職場研修 づくりの...20 第二部 職場研修実施の手順を知る 2職場研修実施の手順を知る 職場研修をつくる手順を確認します。いきなり年間の研修計画をつくるわけではありません。

33

第二部

年度研修計画をつくる

●年度研修計画を策定するにあたっては、職員の育成方針のもとに、今年度の重点目標をつくります。

●年度研修計画は、職員の意向を十分にふまえた計画づくりが、研修意欲の向上に欠かせません。

年度研修計画をつくる

(1)職場全体の研修計画

平成  年度研修計画(事業所用) 【様式7】(様式集P62)

職員育成方針

1 すすんで専門知識・技術を学ぶ職員となる。(例)2 ○○できる職員になる。(例)

今年度の重点目標

1 新○○制度を全職員が理解し、実践に生かす。(例)2 職場内研究発表会を実施する。(例)

対象 内・外 必・選 No. 研修名 講師等 日程 会場 内容 備考

組織科目

管理職職場内

必修選択

職場外必修選択

係長職場内

必修選択

職場外必修選択

主任職場内

必修選択

職場外必修選択

主事職場内

必修選択

職場外必修選択

専門科目

共通職場内

必修選択

職場外必修選択

○○職 職場内必修選択

OJT

共通 職場内 必修

主任 職場内 必修

主事 職場内 必修

SDS 共通 職場内 選択

【研修担当者の評価】1 個々の研修の評価 2 研修全体の評価

●年度別の研修計画は研修体系から導き出されます。

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Page 17: 第2部 職場研修 づくりの...20 第二部 職場研修実施の手順を知る 2職場研修実施の手順を知る 職場研修をつくる手順を確認します。いきなり年間の研修計画をつくるわけではありません。

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第二部

年度研修計画をつくる

●個人別の研修計画は、個人別の育成計画でもあります。その人の立場や求められている研修ニーズに基づき、職場として計画的に人材育成に取り組みましょう。本人からの自己申告を基に面談で計画化する手順を経ることが、本人のモチベーションアップにつながります。

●OFF-JTだけでなく、OJT、SDSも含めて計画化することが大切です。

(2)個人別研修計画

平成  年度研修計画兼育成計画表(個人用) 【様式8】(様式集P63)(記入例)【本人記入欄】

所属 職種 職名 氏名

昨年度の自己評価

強化できた職務遂行能力 不足していることがわかった職務遂行能力

①利用者の話が以前よりは聞けるようになった。②利用者の生活の背景を考えるようになった。

①仕事の手順を覚えるのに精いっぱいだった。②すすんで発言することが少ない。

今年度の重点目標 ①業務手順を理解し、ゆとりを持って周囲に気配りのできる仕事をする。

今年度の研修計画(①自己申告→②面談で決定)

No. 研修会名 受講目的 面談結果可否

OFF-JT

SDS

個々の研修の評価(期末に記入) 研修全体の評価(期末に記入)

【上司コメント記入欄】

所属 職種 職名 氏名

指導目標

期首

期末

【OJT担当者コメント記入欄】(該当者のみ)

所属 職種 職名 氏名

指導目標

OJT指導計画

期間 内容・方法

期末