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1 第 4 回 ASEAN+3 Bond Market Forum(ABMF)国際会議について 日証協・平成 23 年 6 月 30 日~7 月 1 日 去る 6 30 日から 7 1 日の 2 日間にわたり韓国済州島において、本協会がナショナル・ メンバーを派遣しているアジア債券市場の共通化・標準化の検討プロジェクトASEAN3 Bond Market Forum(略称 ABMF)」の第 4 回国際会議が開催された。 【本会議のポイント】 1.第 4 回目の国際会議となった本会議でのサブ・フォーラム 1 (債券市場の規制の枠組みの 標準化・共通化を議論する審議グループ)のメイン・テーマは、ABMF の究極の目標であ る標準化されたアジア債券市場(或いは、アジア版ユーロボンド市場)が、近い将来、登 場した場合に、ルール・メーキングの主体となる可能性が高い 「アジア広域型 SRO Asian SRO)」に対する認識の共有化と、同時に各国 SRO との連携の強化をいかに図っていくか という点であった。 2.このため、日韓それぞれの自主規制機関である韓国金融投資協会(KOFIA)及び日本証 券業協会(JSDA)の債券市場に対する自主規制の内容、及び取引所 SRO である韓国証券 取引所(KRX)と東京証券取引所(内容は東京 AIM)の債券に関する自主規制の内容を報 告し、ASEAN 諸国の代表との意見交換を行った。 3.SRO の議論は、ASEAN 諸国でも受け止め方はまちまちで、インドシナ諸国のうちカン ボジア、ラオスなど資本市場の揺籃期にある諸国では、そもそも規制当局しか存在せず、 SRO がどのようなものであるかについて高い関心を示す一方、一定程度の発達した資本市 場を持ちながら、SRO を認めていないマレーシア、フィリピン、インドネシアなどはやや 慎重な姿勢を見せた。 4.いずれにせよ、債券市場が基本的に店頭市場中心に取引を行われていくことを見据えれ ば、共通化・標準化されたアジア債券市場の実現の暁には、自主規制の在り方が問題とな ることから、近い時期に ABMF の下に SRO 検討小委員会のようなものを立ち上げ、議論 を深めることが提案された。 5.2番目のテーマは、これまで議論があまりされてこなかった、証券化市場の共通化・標 準化の問題であり、アジア債券市場の問題の一つとして韓国側から問題提起があった。 6.3番目のテーマは、今年の 4 月以降、ABMF の事務局を務めるアジア開発銀行(ADB

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第 4 回 ASEAN+3 Bond Market Forum(ABMF)国際会議について

日証協・平成 23 年 6 月 30 日~7 月 1 日

去る 6 月 30 日から 7 月 1 日の 2 日間にわたり韓国済州島において、本協会がナショナル・

メンバーを派遣しているアジア債券市場の共通化・標準化の検討プロジェクト「ASEAN+3

Bond Market Forum(略称 ABMF)」の第 4 回国際会議が開催された。

【本会議のポイント】

1.第 4 回目の国際会議となった本会議でのサブ・フォーラム 1(債券市場の規制の枠組みの

標準化・共通化を議論する審議グループ)のメイン・テーマは、ABMF の究極の目標であ

る標準化されたアジア債券市場(或いは、アジア版ユーロボンド市場)が、近い将来、登

場した場合に、ルール・メーキングの主体となる可能性が高い「アジア広域型 SRO(Asian

SRO)」に対する認識の共有化と、同時に各国 SRO との連携の強化をいかに図っていくか

という点であった。

2.このため、日韓それぞれの自主規制機関である韓国金融投資協会(KOFIA)及び日本証

券業協会(JSDA)の債券市場に対する自主規制の内容、及び取引所 SRO である韓国証券

取引所(KRX)と東京証券取引所(内容は東京 AIM)の債券に関する自主規制の内容を報

告し、ASEAN 諸国の代表との意見交換を行った。

3.SRO の議論は、ASEAN 諸国でも受け止め方はまちまちで、インドシナ諸国のうちカン

ボジア、ラオスなど資本市場の揺籃期にある諸国では、そもそも規制当局しか存在せず、

SRO がどのようなものであるかについて高い関心を示す一方、一定程度の発達した資本市

場を持ちながら、SRO を認めていないマレーシア、フィリピン、インドネシアなどはやや

慎重な姿勢を見せた。

4.いずれにせよ、債券市場が基本的に店頭市場中心に取引を行われていくことを見据えれ

ば、共通化・標準化されたアジア債券市場の実現の暁には、自主規制の在り方が問題とな

ることから、近い時期に ABMF の下に SRO 検討小委員会のようなものを立ち上げ、議論

を深めることが提案された。

5.2番目のテーマは、これまで議論があまりされてこなかった、証券化市場の共通化・標

準化の問題であり、アジア債券市場の問題の一つとして韓国側から問題提起があった。

6.3番目のテーマは、今年の 4 月以降、ABMF の事務局を務めるアジア開発銀行(ADB)

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の担当者及びそのコンサルタントらにより集中的に実施された各国の債券市場調査の結果

報告であり、既に、日本以外にも中国、韓国、香港、ベトナム、インドネシア、タイの債

券市場に関するガイドブックが完成している。クエスチョネア(各国債券市場に関する調

査項目を示した質問状)に回答のなかった、マレーシア、フィリッピンについても、ADB

事務局で作業を肩代わりし、一応のたたき台が示された。提出のない、シンガポールやブ

ルネイ、インドシナ諸国にも今後、協力を呼び掛ける予定。これらの各国債券ガイドブッ

クは、質量ともこれまでに例を見ない充実した内容であり、高いレベルのものである。

7.オブザーバーとして参加した、二日目のサブ・フォーラム 2 では、サブ・フォーラム 1

と同様、今年の 4 月以降、各国の債券市場インフラに関する集中的な調査を行った結果が

報告され、約定から決済にいたる市場インフラについて各国毎の実態について相当程度解

明され、かつその多様性が確認された。

8.今後、9 月にインドネシアで開催される第 5 回国際会議までに、各国の債券ガイドブック

を完成させ、ABMI 等の上部機構に対し、ABMF の活動結果についての中間報告を行う予

定である。

1.ABMF 設立の背景

この ABMF は、アジア債券市場育成イニシアティブ(Asian Bond Markets Initiative:通称

ABMI~アブミ~)1の中で規制の枠組みを扱うタスク・フォース 3 の下部審議機関として、昨年

の秋に、金融当局者以外に幅広く市場関係者の参加を呼び掛けて設立されたものである。

ABMF は、ASEAN+3 の債券市場の規制面、インフラ面を含めたさらなる標準化・調和化を推

進し、アジアに眠る巨大な貯蓄を投資に導くための方策について 2 年間の予定で実務レベルの協議

と作業を行うが、各国の債券市場を取り巻く規制面の共通化を話し合うサブ・フォーラム 1 と、市

場インフラの共通化を協議するサブ・フォーラム 2 の二つの部会をもつ。本協会からは、SF1 に

審議メンバーとして職員1名と協会員の証券会社から2名の委員(ナショナル・エクスパート)を

派遣している。

アジアで最大の債券市場を形成している日本の経験が、このプロジェクトで一つの市場育成の模

範として生かされれば有意義であり、また、アジアの債券市場がより標準化され整備されることに

1 1997 年に発生したアジア通貨危機の再来を防止するための一つの方策として市場整備が遅れているアジア

地域の債券市場を強化しようという趣旨で 2003(平成 15)年に ASEAN+3 の財務大臣会議での合意に基づ

き開始されたものであり、ABMF が設立される昨年までの 7 年間、政府間の協議を中心にアジア債券市場

の共通化・標準化の議論を行ってきた。この間、アジアでは、ADB 等の国際機関や JBIC 等の政府系金融

機関による現地通貨建て債券の発行等を通じ、債券の発行体及び種類の多様化が進展。また、2010 年 11

月には、域内の企業が発行する社債に保証を供与することで、現地通貨建て債券の発行を支援し、域内債券

市場の育成に貢献するための「信用保証・投資ファシリティ(CGIF)」が設立されている。

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より、日系企業の現地通貨建債券発行による資金調達もこれまで以上に活発化し、日本の証券ビジ

ネスにとってもビジネスチャンスとなるとともに、日本の社債市場の国際化・活性化にも結びつく

ことが期待される。

1997 2002 2008 2009 2010中国 57.74 342.3 2212.64 2567.08 3052.04香港 44.87 68.09 92.46 144.03 163.75インドネシア 2.81 55.7 70.04 98.9 106.46韓国 36.09 486.18 816.7 1016.25 1149.15マレーシア 54.5 78.82 166.11 185.4 246.55フィリピン 16.7 27.41 56.69 63.08 73.31シンガポール 23.77 61.14 127.54 140.79 178.66タイ 10.06 46.92 140.94 176.86 224.63ベトナム 0 0.28 13.29 12.04 15.32

0

1000

2000

3000

4000

5000

6000

1997 2002 2008 2009 2010

ベトナム

タイ

シンガポー

フィリピン

マレーシア

韓国

インドネシア

香港

中国

(注)数値は国債及び社債の発行残高の合計。

(出所)アジア開発銀行”AsianBondsOnline”

ASEAN+3(日本を除く)の現地通貨建て債券市場の規模

(10 億米ドル)

アジア通貨危機の時に比

べ、アジア債券市場は格段

に厚みを増している

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ABMF の位置づけ

なお、ABMF の議論の基本的方向性は、以下の通りである。

(1)ABMF の結成に先行して、ABMI のタスク・フォース 4 の下で実施された Group of Experts

(GoE)の市場インフラの調査及びその報告書の結果を踏まえ、再度、規制の枠組みの観点を

加え、市場関係者も含んだ形で、多様なアジア各国の債券市場の制度的枠組みについて調査

項目(クエスチョネア)を確定し、それに基づく再調査を行い、標準化、調和化の提言を行

ASEAN + 3 財務大臣会議

ASEAN + 3 財務大臣・中央銀行総裁代理会議

アジア債券市場育成イニシアティブ(ABMI)

(ABMI : Asian Bond Markets Initiative 財務省・日銀が参加)

Task force 1

現地通貨建て債券の

発行の促進

Task force 2

現地通貨建て債券の

需要の促進

Task force 3

規制枠組みの改善

共同議長:

日本(財務省)、マレーシア

Task force 4

債券市場関連インフ

ラの改善

平成 22年 5月「ASEAN+3債券市場フォーラム」

(ABMF : ASEAN+3 Bond Market Forum)設置(合意)

平成 22年 9月第1回会合(東京)、同年 12月第 2回会合(マニラ)、平成 23

年 2月第 3回会合(クアラルンプール)、同年 6月第 4回会合(韓国済州島)

○ 2つのサブ・フォーラムが設置

(SF1)各国市場の規制及び市場慣行に係る情報収集(ナショナル・メンバー:

日証協、東証、全銀協、ナショナル・エキスパート:日本の証券会社 2 社)

(SF2)市場インフラ、メッセージ・フォーマット等の調和化によるアジア全域

の債券取引決済の効率化、STP化の促進(保振等が参加)

GOE

(Group Of Experts)

保振、外資系証券会社が

参加

平成 22年 4月 23日

GOE報告書「クロスボ

ーダー債券取引・決

済上の障害の特定及

び除去を提言」

「ABMF国内検討グループ(ABMF-J)」設置:平成 22年9月 21日の第1回

会合以降、ABMF国際会議の開催時期に合わせ 1~2週間前に定期的に開催

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(2)調査に際し、最大の債券市場の規模を誇る日本が率先して、自らの市場構造、制度の徹底的

洗出しを行い、各国に調査項目の模範例を提示する。なお、中国と並び、日本に次ぐ債券市

場の規模を誇る韓国も同様の模範例を提示する。

(3)各国の制度の洗い出し、調和化というボトムアップ・アプローチに加え、アジア全域にユー

ロボンド市場に類似したプロ向け債券市場をトップダウンで創出する。(但し、後者は、前

者の作業の進展状況をみながら、各国の理解を徐々に得ることとする。)

2.これまでの議論の経緯

(1) 第 1 回東京会議(2010 年 9 月 28 日)とその後の動き

第 1 回国際会議では、各国のナショナル・メンバー、エキスパートの紹介が行われた後、日本の

財務省及びアジア開発銀行(ADB)から、上記の方向性について説明が行われ、概ね参加者のコ

ンセンサスが得られた。なお、サブ・フォーラム 1 の議長に、日本のナショナル・メンバーの伊藤

豊氏(東証)が選出され、副議長にはマレーシア代表のリー・クワン氏(CIMB)が選出された。

また、ADB コンサルタントの犬飼重仁早稲田大学法学学術院教授から、ABMF での今後の各国の

債券市場の実情の調査のために開発したクエスチョネアの説明と、それを用いた基礎作業の手順に

関する説明が行われた。

なお、特に第 1 回会議で目立った議論としては、マレーシア代表より、アジア地域のソブリン格

付が欧州諸国と比べ低位に置かれていることから、アジア地域全般を対象とするアジア独自の格付

機関の創設も緊急の課題であるとの問題提起が行われた。この他、ABMF の協議は ASEAN 諸国

で拡大しつつあるイスラム金融の動向にも十分に配慮した議論が必要との意見の表明もあった。

この東京会議で確認された作業の方向性に従い、その後、日本サイドで関係者が集まり、日本の

債券市場の特徴に関しての洗出し作業が開始された。本協会のこれまでの日本の債券(特に社債)

市場の改革に関する議論の記録や、債券売買に関するデータベースなども、有効に活用され、最終

的に 100 ページを優に超える報告書が作成された。

また、同様の作業を進めている韓国側の協議主体である ABMF-K との意見調整のための会合が

11 月 11 日にソウルで開催された。今後、定期的に協議を継続することが確認された。

(2) 第 2 回マニラ会議(2010 年 12 月 13 日~14 日)

クエスチョネアに回答する形で、日本の債券市場に関する日本側の調査報告書案が提示された。

また、前回の東京会議でのコメント等を反映した修正クエスチョネア(Questionnaire)について

の提示と内容説明。特に ABMF の開始以前に公表されている GoE レポートとの継続性、視点の違

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いについて犬飼教授より説明。なお、参加者との意見交換で、クエスチョネアに将来のイノベーシ

ョン等の変化要因への対応や、証券化商品、イスラム債券(スクーク)市場の整備状況などの最近

の新しいトレンドについても調査項目として追加すべきとの意見があり、正式に承認された。

また、本協会からは、国内債券市場の改革に関する議論の蓄積やデータ収集における自主規制機

関の役割について報告を行った。

サブ・フォーラム 1 の副議長を務めるマレーシアの代表からは、再び、アジアのソブリン格付に

ついてより客観的な評価を実現するために、ASEAN+3 で出資する独自の国際的格付機関(ICRA)

の創設の意義と、当面、アジア各地域の国内格付機関について相互認証を推進していくことが提案

された。また、各国ごとの現地通貨建債券募集に係るレギュレーションについても ASEAN+3 内

で相互認証を推進し、これらを 2011 年 3 月のタスク・フォース会合に提起し、2011 年度内にも

その承認を得る必要性についてスピーチが行われた。

この他、韓国債券市場、日本国債(JGB)、東京プロボンドマーケット、フィリッピン債券市場

などについての個別のプレゼンが行われた。

今後の論点として、債券インデックス、アジア・ファンド・パスポーティングなどのテーマが紹

介された。

(3) 第 3 回クアラルンプール会議(2011 年 2 月 16 日~17 日)

サブ・フォーラム 1 の副議長国であるマレーシアのクアラルンプールで開催された第 3 回国際会

議のメイン・テーマは、マレーシアのかねてからの主張であるアジアの格付機関の相互連携の推進

と、アジア広域型の格付機関の創設問題であった。このため、インドネシア、マレーシア、フィリ

ッピン、中国、韓国の各国地場格付機関及びアジア格付機関連合(ACRAA)の代表が招かれ報告

とパネル討論が行われた。また、格付問題は機関投資家の視点からも、検討が加えられた。

同会議では、ABMF の将来的な問題の一つである、アジア・ファンド・パスポーティングにつ

いても、これを推進するステート・ストリート銀行の代表者から報告が行われた。

また、各国の債券市場の調査の経過報告として、特に、韓国での進捗状況が報告された。

これまでの経過状況のまとめ

2010 年 9 月 21 日 ABMF-J 第 1 回会議(於:保振)

9 月 28 日 第 1 回国際会議(於:東京、三田合同庁舎)

11 月 11 日 ABMF-J&ABMF-K 合同会議(於:ソウル)

12 月 6 日 ABMF-J 第 2 回会議(於:財務省)

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12 月 13 日~14 日 第 2 回国際会議(於:マニラ)

1 月 17 日 ABMF-J&ABMF-K 合同会議の 2 回目のイベントとして「韓国債券市場セミ

ナー」(於:早稲田大学)開催

2 月 8 日 ABMF-J 第 3 回会議(於:財務省)

2 月 16 日~17 日 第 3 回国際会議(於:クアラルンプール)

6 月 23 日 ABMF-J 第 4 回会議(於:財務省)

3.本第 4回国際会議の概要(会場:済州島へービッチ・ホテル)

(1)日程

[1 日目](6 月 30 日)サブ・フォーラム 1 の会合(日証協はナショナル・メンバーとして参加)

時 間 テーマ スピーカー

08:40-08:50 歓迎スピーチ *ヒョウング・テ・キム博士:韓国資本市場研究院(KCMI)

社長

第1部:ASEAN+3 クロスボーダー市場とアジア SRO に向けた提言

08:50-09:10 基調報告 [報告者]

*スク・ヒョン博士:KCMI リサーチ・フェロー

地域の選別された自主規制機関(SROs)との対話

09:10-10:45 ・地域の自主規制機関の間

の連携促進

・地域の規制・監督当局及

び自主規制機関の間にお

ける債券の発行・流通のス

タンダード及び慣行の促

[+3 諸国の SRO 代表による報告]

*スング・ウク・ヤング氏:韓国金融投資協会(KOFIA)

調査&国際部ディレクター

*椎名隆一:日本証券業協会国際部部長

[SRO としての取引所代表による報告]

*ミン・スク・リー氏:韓国取引所(KRX)マネージャー

*伊藤豊氏:東京証券取引所・東京 AIM、COO

[ASEAN についての概観]

*トーマス・ミョウ氏:CIMB 投資銀行エクゼキュティブ・

バイス・プレジデント兼本部長

10:45-11:00 コーヒー・ブレーク

11:00-11:30 [討論]

ASEAN+3 における SRO

の役割、有益なスタンダー

ド・慣行の促進

・ASEAN の SROs からのコメント

・次の段階(ユーロボンド及びレギュレーション S のアジ

ア版)

第 2 部:ASEAN+3 クロスボーダー証券化市場に向けた提言

11:30-12:00 基調報告 [報告者]

*ピル・キュー・キム博士:KCMI リサーチ・フェロー

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12:00-12:30 [討論]

地域における証券化の促

進及び調和について

*セイウーン・フワン博士:KCMI リサーチ・フェロー

*ソング・ジェー・リー博士:アジア開発銀行、OREI、主

任金融部門スペシャリスト(FS)

12:30-13:45 ランチ・ブレーク

第 3 部:情報収集アップデート:ADB コンサルタントからの報告

13:45-14:00 市場調査結果及び全体評

[報告者]

*犬飼重人教授(早稲田大学法学学術院)

14:00-14:30 中国、インドネシア及びマ

レーシアについての報告

[報告者]

*犬飼重人教授

14:30-15:00 質疑応答

15:00-15:30 タイ、ベトナム、香港につ

いての報告

[報告者]

*犬飼重人教授

15:30-16:00 質疑応答

16:00-16:15 コーヒー・ブレーク

16:15-16:45 フィリッピン、韓国及び日

本についての報告

[報告者]

*犬飼重人教授

16:45-17:15 質疑応答

17:15-18:10 次のステップ及び SF1 の

作業プラン

・午前部の討議(地域にお

ける SRO の役割及び共通

発行プログラムのアジ

ア・バージョン)

・ラウンド・テーブル討議

18:10-18:15 クロージング・リマークス *伊藤豊氏:SF1 座長

[2 日目](7 月 1 日)サブ・フォーラム 2 の会合(日証協はオブザーバーとして参加)

時 間 テーマ スピーカー

08:45-08:55 開会演説 *ジョン・ヒュング・リー氏:SF2 座長

情報収集アップデート:ADB コンサルタントからの報告

08:55-09:10 情報収集の構造及び全体

的評価

[報告者]

*乾泰司博士(NTT データ)

09:10-09:50 中国・インドネシアに関す

る報告

[報告者]

*乾泰司博士/マチアス・シュミット氏

09:50-10:10 メンバー/エキスパート

からのコメント・質問

10:10-10:50 マレーシア・タイに関する [報告者]

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報告 *乾泰司博士/マチアス・シュミット氏

10:50-11:10 メンバー/エキスパート

からのコメント・質問

11:10-11:25 コーヒー・ブレーク

11:25-12:05 ベトナム・香港に関する報

[報告者]

*乾泰司博士/マチアス・シュミット氏

12:05-12:25 メンバー/エキスパート

からのコメント・質問

12:25-13:30 ランチ・ブレーク

13:30-14:10 フィリッピン・韓国に関す

る報告

[報告者]

*乾泰司博士/マチアス・シュミット氏

14:10-14:30 メンバー/エキスパート

からのコメント・質問

14:30-15:00 日本に関する報告、メンバ

ー/エキスパートからの

コメント・質問

[報告者]

*乾泰司博士/マチアス・シュミット氏

15:00-15:15 コーヒー・ブレーク

情報セッション

15:15-16:00 Omgeo による報告及び質

疑応答

[報告者]

*ホン・クン・パーク氏/田中雄二氏

16:00-17:15 次のステップ及び作業プ

ラン

[報告者]

*乾泰司博士

17:15-17:45 [討論]情報の展開方法

17:45-18:00 クロージング・リマークス *ジョン・ヒュング・リー氏:SF2 座長

(2)本会議(サブ・フォーラム 1)の議論要旨

今回の済州島での会議でのサブ・フォーラム 1 での審議事項は以下の 3 点であった。

・債券に関する自主規制機関(SRO)の役割と地域間協力及びアジア広域型の Asian SRO の

必要性について

・証券化市場の共通化・標準化について

・各国市場調査の経過報告と成果物の紹介

① SRO の地域間協力とアジア広域型の Asian SRO の必要性について

現在、アジア債券市場の標準化・共通化のアプローチについては、各国市場の徹底調査・分析

を通じたボトムアップ方式と、それとは別にアジア地域に政府間の合意によりトップダウン方式

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でかつてのユーロボンド市場のようなオフショア市場を創設する考え方(特に、本件の事務局で

ある ADB 等が構想)の両にらみで、検討が行われている。いずれの方向性をとるにせよ、標準

化・共通化したアジア債券市場が実現した暁には、ルール・メーキングの主体をどこが担うかが

問題となる。そして、債券市場が一部の新興国を除き店頭取引が中心である以上、そのルール・

メーキングやインフォースメントを自主規制を中心に考えるのは自然な流れである。

ボトムアップ方式によるアプローチの場合には、地域間の SRO の連携・協力が必要となるし、

トップダウン方式によるユーロボンド型債券市場の実現であれば、国境を越えた広域型 SRO(こ

れを Asian SRO と呼ぶ。)が必要となってくる。

現時点では、その制度論の詳細を論じるのは時期尚早ではあるが、今のうちから議論を始めて

おくのは有意義であるとの認識から、今回の会議では、まず、日韓の SRO がそれぞれ、どのよ

うな業務を行い、債券市場における役割を担っているのかを紹介するという趣旨で、韓国側から

韓国金融投資協会(KOFIA)と韓国証券取引所(KRX)、日本側から本協会と東京証券取引所(の

中の東京 AIM)の 4 社が、それぞれの業務内容について報告を行い、他の ASMF メンバー国と

の意見交換を行った。なお、当初、参加が予定されていた、中国の銀行間債券市場の SRO であ

る NAFMII は、直前になって参加を取りやめた。

日韓両国の SRO からの報告のあった後、他の ASMF メンバーとの意見交換では、この SRO

についての各国の受け止め方に微妙なニュアンスの差が感じられた。因みに、ASEAN+3 の枠

組みで総合的な SRO の機能をもつのは KOFIA と本協会しかなく、他に債券市場に特化した

SRO をもつ国として中国(NAFMII)、タイ(ThaiBMA)、ベトナム(VBMA)の 3 か国だけで

ある。ある程度の国内債券市場のスケールを持つマレーシア、インドネシア、フィリッピン、シ

ンガポールでは SRO の機能を担う機関は存在せず、香港もおそらく政治的な理由で SRO 機能

を認めていない。また、ラオス、カンボジア、ブルネイなどは、国内市場が立ち上がったばかり

であり、規制当局しか存在しない。

このように、各国の市場の発展段階が異なるため、SRO についての考え方に差が生じること

となる。たとえば、市場が立ち上がったばかりのラオス、カンボジア両国は SRO について率直

にどのような機能を有するのか基礎から学びたいというスタンスであり、本協会が主催するアジ

ア証券フォーラムなどにオブザーバー参加の希望を表明している。一方で、規制当局に債券市場

の監督権を与えているマレーシア、インドネシア、フィリッピンなどは、SRO の創設について

やや慎重な姿勢をとっている。

いずれにせよ、SRO が何であるか、もう尐し各国の理解を深める必要があろうということに

なり、ABMF の下に、SRO について議論する場(専門委員会など)を早急に設けるとの ADB

事務局側の考えが表明された。

なお、冒頭の日韓の SRO の報告では、KOFIA が提供する債券関係のサービスの多様性(各

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種債券価格情報公表制度、インデックスの開発、債券取引プラットフォームの提供等)が、特に

目をひいた。

② 証券化市場の共通化・標準化について

証券化(securitization)市場の問題は、サブプライム・ローンの証券化商品がリーマンショ

ックの原因となった事情を反映してか、ここ数年、ABMI での共通化・標準化の対象としては目

立った議論はなく、また ABMF でも当初、テーマからはずれていたが、昨年 12 月にマニラで

開催された第 2 回国際会議で、議論の必要性が提起され、調査項目の一つに取り上げられた。今

会議では、日本と同様の証券化法制を有する韓国側から証券化市場の現状について報告があった。

③ 各国市場調査の経過報告と成果物の紹介

ADB 事務局と ADB コンサルタント(犬飼教授)が中心になって進めている ABMF メンバー

国の債券市場調査は、各国のクエスチョネアによる基本情報を基に、4 月以降、各国の集中的な

訪問調査を実施。全体で 100 件を超える各国機関とのインタービューを実施した結果、かなり

精緻な報告書(Bond Market Guide)が成果物として出てきた(この報告書の作成責任主体は、

基本的には ABMF メンバー各国だが、ADB 事務局及び実質的には ADB コンサルタントが編集)。

これまで、クエスチョネアへの回答をもとに、報告書としてまとめられたのは日本、韓国、中

国、インドネシア、タイ、香港、ベトナムの 6 か国+1 特別行政区であり、クエスチョネアへの

回答を提出しなかったフィリッピン及びマレーシアの 2 か国についても、ADB 事務局が他の公

開資料をもとに取りまとめた。ただし、これらの諸国については、報告書の内容をチェックし、

必要な修正加筆を行うものとされた。

まだ、基礎資料の提出のないブルネイ、ラオス、カンボジアについても何らかの行動をとるよ

うに要請がなされた。なお、シンガポールは、ABMF の会合自体に参加を拒んでいるようであ

ることから、債券市場についてのガイドブックをまとめるのは難しいとみられている。

なお、こうしたアジア債券市場の網羅的な調査を通じて、ADB コンサルタントは、以下のよ

うな、アジア債券市場に関する標準化の課題を指摘した。

ASEAN+3 各国の債券関連制度の多様性・相違点

1. 社債発行に関する準拠法の違い 会社法に基づく国と証券法等に基づく国とがある。

2. 有価証券(又は債券)の定義のあり

会社法、証券法、中央銀行の通達、自主規制ルール、取

引所の上場規則など国によって異なる。

3. 管轄当局(規制当局) しばしば債券の種類によって異なる場合がある。

4. 発行承認方法 国により違いがある。

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5. 自主規制機関(SROs)の役割 国により違いがある。

6. 債券の上場目的 多様である。単に開示目的のための上場(profiling

listing)もあれば、実際に売買を目的とする上場(real

listing)もある。

7. 債券上場義務 国により違いがある。

8. 主たる取引場所 店頭か取引所か国により違いがある。

9. 格付の必要性 国により違いがある。

10.債券の登録方法 国により違いがある。

11.債券のステータス 持参方式か登録方式か国により違いがある。

12.債券の形式 非券面方式か券面発行方式か国により違いがある。

13.非券面債券のステータス 完全非券面化か、券面不動化か国により違いがある。

14.非券面債券の券面化債券への交換性

の有無

国によって違いがある。

15.トラスティー制度 国によって違いがある(日本は「社債管理者制度」)

16.プロ投資家/機関投資家の定義 国によって違いがある。

17.公募市場のレギュレーション 重要情報の完全開示に対する制度の違い、流通市場にお

ける継続開示制度の発達度に違いがみられる。

18.私募の取り扱い 市場の発展度に応じて違いがある。私募を取引規制の対

象外とする国もある。

(3)今後の会合予定

目先、9 月にインドネシアで開催される第 5 回国際会議までに、各国の債券ガイドブックを完成

させ、ABMI 等の上部機構に対し、ABMF の活動結果についての中間報告を行う予定である。ま

た、10 月に開催予定の ABMI タクスフォース会議では、ABMF の第 2 ステージに関する活動計画

が決定される予定である。

2011 年 8 月 1 日

9 月 12 日~

13 日

10 月 20 日

12 月

12 月末まで

・ASEAN+3 債券市場フォーラム日本部会(ABMF-J)主催「アジア債

券市場の最新動向」の開催

・第 5 回 ABMF 国際会議(インドネシアにて)

上部機関(ABMI)への中間報告案についての審議

・ASEAN+3 ABMI タクスフォース会議(韓国にて)

第 2 フェーズの活動計画案

・第 6 回 ABMF 国際会議(中国にて)

第 2 フェーズの活動計画案の採択

・中間(第 1 フェーズ)報告案の公表

(以後も四半期に一度程度、定期会合開催予定)

以上