第4回 沼津高専技術職員 学内発表会...

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第4回 沼津高専技術職員 学内発表会 予稿集 日 時: 平成27年3月16日(月) 13:10~14:30 会 場: 沼津高専 共通棟2F 共通教室4 プログラム: 13:10 開会挨拶 小林 隆志 技術室長 13:20~13:35 三次元測定機の利用状況と今後の活用 佐々木 俊亮 ものづくり系班 p.1 13:35~13:50 手巻きウインチを題材とした設計製作教材の開発 中川 秀則 ものづくり系班 p.4 13:50~14:05 校長室入退室管理システムの開発 中村 玲治 電機電子情報系班 p.7 14:05~14:20 固体乾燥測定用装置の製作 鈴木 猛 物理化学系班 p.11 (各発表12分・質疑応答3分) 14:20 閉会挨拶 小林 隆志 技術室長 沼津高専技術室 gijutsu.numazu-ct.ac.jp 平成27年3月16日

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第4回 沼津高専技術職員

学内発表会 予稿集

日 時:

平成27年3月16日(月) 13:10~14:30

会 場:

沼津高専 共通棟2F 共通教室4

プログラム:

13:10 開会挨拶

小林 隆志 技術室長

13:20~13:35 三次元測定機の利用状況と今後の活用

佐々木 俊亮 ものづくり系班

p.1

13:35~13:50 手巻きウインチを題材とした設計製作教材の開発

中川 秀則 ものづくり系班

p.4

13:50~14:05 校長室入退室管理システムの開発

中村 玲治 電機電子情報系班

p.7

14:05~14:20 固体乾燥測定用装置の製作

鈴木 猛 物理化学系班

p.11

(各発表12分・質疑応答3分)

14:20 閉会挨拶

小林 隆志 技術室長

沼津高専技術室

gijutsu.numazu-ct.ac.jp

平成27年3月16日

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三次元測定機の利用状況と今後の活用

沼津高専技術室 ものづくり系班

佐々木 俊亮

1. 緒言

近年のものづくりにおいては加工技術の向上が著しく,それは複雑な形状の測定や高精度の測

定の必要性を意味する.

本校でも平成 23 年度に三次元測定機(以下 CMM)が導入されたが,本来製品の精度検査が主

目的の測定機であるためか,教育機関である本校では使用頻度が低く,有効活用できていないの

が現状である.本稿では,現在の使用実績を踏まえ,CMM の使用頻度向上を目指すと共に,学

生に対する教育効果の高い CMM の使用方法について考察する.

2. 本校設備

本校で所持している三次元測定機と各部品等を以下に記載する.

三次元測定機は平成 23 年度に本校地域共同テクノセンターに設置された後,平成 24 年度に行

われた教育研究支援センターA 棟(元第一機械実習工場)の改修工事終了に伴い移設され,現在

は精密測定実験室に設置されている.

三次元測定機:Mitutoyo CRYSTA-APEX S574(Figure 1)

(測定範囲 X:505 Y:705 Z:405)

プローブヘッド:PH10M

スキャニングモジュール:SP25M

スタイラス:(Table1 参照)

オプション:

SCANPACK(輪郭測定)

TRANSPACK(CAD データの入出力)

VISIONPACK(画像プローブによる測定)

CAT1000S(3D モデルとの照合)

Table1 所有スタイラス一覧

型番 ボール径 有効長さ

MS3-1.0R4 φ1.0 4

MS3-1.0-R12 φ1.0 12

MS3-2.0R32.5 φ2.0 32.5

MS3-3.0R12 φ3.0 12

MS3-4.0R17 φ4.0 17

MS3-4.0R36 φ4.0 36

MS3-4.0R46 φ4.0 46

Figure 1 CRYSTA –APEX S574

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Table3 CMM使用実績(平成26年度) [時間]

授業 課外活動 研究 その他 計

4 月 6 0 0 0 6

5 月 0 0 0 4 4

6 月 0 0 8.5 0 8.5

7 月 0 0 0 5.5 5.5

8 月 0 0 0 2 2

9 月 0 0 0 0 0

10 月 6 0 9 0 15

11 月 3 0 28.5 4 35.5

12 月 6 0 7 0 13

1 月 5 0 1 0 6

計 26 0 54 15.5 95.5

3. 使用実績

CMMが導入された平成 23 年度から 25年度までの使用状況をTable2にまとめる.

表中の「依頼」は学内学外問わず依頼を受けて測定したもの,「その他」は授業準備や操作習熟のため

に使用した時間とする.なお,発表者以外にも本校には 2名のCMM使用者がいるが,その使用時間は

含まれていない.

3年間の使用時間よりCMM の使用頻度が低い

と考え,より詳細なデータを取るために平成 26

年度より管理簿の記入項目を変更した.これによ

り使用者全員分の使用時間を使用用途で分類した

データを取った.月毎,用途毎の使用時間をまと

めた表をTable3に記す.

この結果を踏まえ,各項目についての使用状況

について次項に記す.

4. 測定機使用の現状と改善点

4-1 実習授業における利用

現在本校ではCMMに関して制御情報工学科第 3学年での機械工作実習における一つのテーマ

として実習を行っている他,機械工学科・電気電子工学科・電子制御工学科・物質工学科の 4学

科ではガイダンスのワークショップ見学で数分程度の紹介をしている.

5 学科の内で最も工場実習を重要とする機械工学科では 2年次に4回(計 12時限分)の工作測

定の実習があるが,これは平成 24 年度のカリキュラム変更に伴って実習・実験に当てられる授業

時間が減少している状態である.平成 23年度に導入された時,CMM を授業として組み込むか検

討する以前に,工作測定の実習内容を一部削減し時間数を減らさなければならない状況であった

ため,現在機械工学科の学生に対しては 1年次のガイダンスで数分程度紹介するにとどまってい

る.

Table2 CMM使用実績(平成25年度まで)[時間]

授業 依頼 その他 計

23 年度 0 18 29 47

24 年度 12.5 0 11 23.5

25 年度 15 20 4 39

計 27.5 38 44 109.5

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現在行っている実習の中で,真円度・真直度の測定では偏心検査器とダイヤルゲージを使用し

ているが,これら幾何公差の評価はCMMでも可能であり,測定物の形状によっては他の幾何公

差についても評価が行える.つまり,この実習内容の変更を検討すればCMMを授業内で扱うこ

とができるだけでなく,同時に幾何公差についての理解を深めさせることも可能であると考えら

れる.しかし,発表者は機械工学科の実習では別の項目を担当しており,さらに平成 28 年度から

は実習を担当している技術職員が減るためCMMの取扱いを実現する以前に工作測定の実習時間

自体が今迄通り行えるかという問題がある.

4-2 課外活動,卒業研究での利用

本校の課外活動においてロボコン部,エコランコンテスト,高専祭学科プロジェクトなど様々

な場面で工場を利用して部品製作を行っているが,加工した部品についてCMMを使用して測定

をする,ということはない.この理由としては,CMM について知らない・製品に細かい精度を

求めない,この 2点が考えられる.

特に後者について,本校の課外活動は試作,試験,改善という考えが薄く,期限が迫っている

中で形になればよい・動けばよいという風潮があるように思える.そのため,高精度の寸法測定

や幾何公差の評価を行えるCMMを必要とせず,ノギス・マイクロメータによる測定や現物合わ

せでの仕上げで済ませている事がほとんどである.

これは卒業研究の大部分についても同様の事が言えるが,今年度に関しては 1件の卒業研究で

CMMが有効に活用された.その研究については同様の測定を繰り返し行う可能性が高いためプ

ログラムを作成し,次年度以降研究が引き継がれた後にも対応できる状態となり,CMM本来の

使用方法に近い活用ができた.これは,学生から研究のデータを取る方法についてセンターへの

相談があった際にこちらからCMMの使用を提案したものだった.

4-3 教育効果を狙った利用

機械製図の寸法や公差の記入方法などにおいて,その加工方法や加工後の精度検査の方法を考

慮した図面の書き方は重要な要素である.つまり,精度検査に広く使用されるCMM による測定

方法や,各種機能を知ることは設計・製図を行う上でも有用な知識であり,これは本校卒業生が

企業に求められている部分であると言える.

また,CMM では幾何公差の評価をすることができ,これは幾何公差の意味について実践的に

体験し習得する一つの手段となることも考えられる.

これらのことから,CMMについて学ぶには製図や加工に関する基礎知識が不十分な低学年で

はなく,高学年で行うほうが高い教育効果が得られると思われる.

5. 結言

今回,CMMの使用についての現状をまとめたが,問題点の一つは校内への周知が足りず,学生・教

職員問わず何が可能でどのように使えるか知らない人が大多数だということであり,この発表をもって

少しでも使用の機会が増えることを期待している.

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手巻きウインチを題材とした設計製作教材の開発

沼津高専技術室 ものづくり系班

中川秀則

はじめに

高専の機械工学科の特徴は,大学とは異なり

低学年から機械製図や機械工作実習を数多く

学習することが特徴である.そのため高学年に

おいて設計から製作まで一連のプロセスを通

したものづくりの実践的教育(以後,設計製作

実践教育)が従来は可能であった.しかし近年

の産業構造の変化に伴い学習カリキュラムも

大幅に変更され,設計から製作までの実践教育

を行う時間確保が難しく,短時間でより多くの

ことを学ばねばならない状況である.

本研究では,基本的な材料力学や機械加工お

よび機械製図を学習した学生を対象とした,短

時間のカリキュラムで行える設計製作プロセ

スを学習するための教材を紹介する.

1.新旧カリキュラムの授業時間と題材設定

本教材は 1 年間の教材である.しかしながら

それまでの機械科としての基本的な専門教育

を修得したうえで成り立つものであるため,低

学年における機械加工および製図の時間を含

め授業時間を論ずる.

新旧カリキュラム時間の比較を表 1 に示す.

旧カリキュラムでは設計製作実践教育の題材

として二軸歯車減速機を製作していた.新カリ

キュラムでは製図,加工実習ともに時間数が減

っているため,低学年における基礎実習の見直

しも含め,新たな設計製作実践教育をマネジメ

ントする必要があった.

二軸歯車減速機では設計・製作に時間を要す

るため構造・製作において比較的容易な手巻き

ウインチを題材とした.

2.設計製作教育プロセス

図 1(a)の基本概念に基づき図 1(b)に示

す設計製作教育プロセスを考えた.方眼紙に構

造や形状を考えて機械製図法に基づき構想図

を作図することにより機械をデザインする部

分が特徴である.このプログラムはグループで

行う.構想図を基にグループ内で分担して加工

仕様書を作成し,その後,製作の際はグループ

内で仕様書を交換し,加工を行う.他人の書い

た仕様書を理解し加工を行うことで設計から

製造への伝達方法やコミュニケーションの重

要性を教授する.

3.設計製作教育のためのウインチ仕様

学生に与える基本的な仕様として,図 2 に示

す 1 段歯車機構のウインチを考えた.

手巻きによるトルクと錘(荷物)によるトル

クとの釣り合いから,

i

DWFL

1

2

DH (1)

を満たせば,錘を持ち上げることができる.こ

こで F は手巻きによる力,LHはハンドル長さ,

W は錘の重さ,DDは巻胴直径,i=Z1/Z2(速比)

であり,Z1,Z2 はそれぞれ大歯車と小歯車の

歯数である.

仕様

強度設計

構想図の作成

加工仕様書

材料どり・市販部品購入

部品加工・組立

性能試験

図1 基本的な機械設計の概念と設計製作

教育プロセスの紐付け.

部品表の作成

設計

(考える過程)

製図

(情報伝達過程)

製作

評価

発想

(a) (b)

旧カリキュラム 新カリキュラム

製図 150+(63) 142+(41)

加工実習 192+(60) 126+(50)

単位:時限(1 時限=45 分授業)

括弧内:設計製作実践教育に要する時間

表 1 新旧カリキュラム授業時間比較

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5

設計仕様の各パラメータ{(F ,W,DDおよ

び i)式(1)}を変更して各グループに与える.

4.各グループの設計および機械加工方法

各グループは仕様を元に各強度計算を行い,

部品形状を設計する.設計した部品を基に全体

の構想図を作図する.

機械加工部品は,全部で 16 点となる.加工

部品は,モデルコアカリキュラム(V-A-5 工作)

に基づき代表的な工作機械(汎用旋盤,フライ

ス盤,円筒研削盤,ボール盤,溶接)で製作す

る.また,板材部分はレーザー加工機を用いる.

これら機械加工はグループ内で分担して加

工するため,全員が加工を理解しておく必要が

ある.そこで低学年における基礎実習を見直し,

ウインチの加工がスタートするまでの 126 時

限(表1参照)で必要な基礎加工をすべて網羅

するカリキュラムとした.

5.加工所要時間と組立て,性能試験

表 2 に 1 グループ 7 名編成(加工担当者は A

~G で表示)を想定した加工分担の一例を示す

とともに表 3 に各担当者の加工時間を示す.こ

のように割り当てることで担当者によってば

らつきはあるが,平均して 1 名あたり約 5h で

部品を加工できる.

ここでレーザー加工は,作図した CAD デー

タを用いて CAD/CAM システムにより行った

また,板材部分の厚さをすべて同じとし一枚の

SS400 材から製作することを設計時に考慮さ

せたことで加工時間を短縮した.ワイヤカット

加工は,マニュアルプログラミングにより行っ

た.伝達軸(原軸と巻胴軸)の旋盤加工は NC

旋盤を用いて,対話式プログラミングにより加

工した.各種数値制御工作機械による加工時間

はそれらプロセスの時間も含んでいる.加工は

トータルで 25h を要した.図 3 に製作したウ

インチを示す.組

立て時間は 2h で

ある.性能試験は

予め質量が与えら

れた錘を巻き上げ,

その際ハンドルに

かかる荷重をバネ

秤で測定する.(図

4)測定荷重を縦 図 3 製作したウインチ

爪軸

図 2 設計製作用ウインチの機構.

爪 爪車 原軸

小歯車

大歯車

巻胴フランジ

錘(荷物) フランジ

巻胴軸

軸受

巻胴

表 2 加工部品の加工方法と時間および

担当者配置の例. 加工部品 方法 時間[h] 担当者

原軸

NC旋盤 ※1

A,B

研削 1

フライス備2 0.5

巻胴軸

NC旋盤 ※1

研削 1

フライス 0.5

爪軸 汎用旋盤

2 F,G

スペーサー 2

ドラム

(巻胴,フランジ,

巻胴フランジ)

レーザー ※2 C

汎用旋盤 3.5 D

アーク溶接 0.5 D

穴あけ 0.5 D

ベアリングマウント フライス 3.5

E 穴あけ 0.5

ハンドル

(ハンドルの腕,

ハンドル取手)

レーザー ※2 C

汎用旋盤 1.5 F,G

爪,爪車,

ケーシング板 レーザー ※2 C

小歯車 ワイヤ

カット 2

C 大歯車

穴あけ 0.5

合計 19.5

表 3 各担当者の加工時間.

加工担当者 A,B C D E F,G

加工時間 6.5h 4.5h 4.5h 4h 5.5h

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6

軸,質量を横軸として示す.(図 5)設計値で

ある理論値と比較し差異を考察させる.

6 班編成(クラス人数 42 名)を想定すれば,

計 12 回(1 班 2 回の実習(6h))の実習と 1

回の組立ておよび性能試験の時間を確保すれ

ば,半期の授業時間内で製作可能である. 残

りの授業時間は加工ミスの修正や安全性の考

察などの時間に充てることができる.ただし加

工時間は学生によって加工の進捗度に個人差

が出ることには注意が必要である.

6.実際に行ったことによる成果と問題点

2014 年度機械工学科 3 年生に対し,この教

材を用いて授業を行った.アンケートの結果か

ら,ものづくりの流れに関する理解や現在まで

に修得した知識や技術の重要性に関しては,理

解でき重要性を認識できたということで,概ね

狙い通りの結果が得られたと考えられる.また

設計通り完璧とはいかないまでも全グループ

がウインチを完成させた(図 6)ことで学生は

達成感も得られ一定の教育効果が得られたと

推察できる.

今後の課題としては多くの学生が困難と感

じている知識の不足や製図の技術力不足を的

確にフォローしていくことである.またカリキ

ュラム実施の最初にアナウンスしてある一年

間の流れと設計製作のビジョンが伝達不足で

ある点も改善の必要性を感じた.

7.おわりに

本教材は実践的な設計製作プロセスを学習

できるとともにグループによる課題解決学習

も可能である.

また学生に与える仕様やアイディアによっ

て様々なウインチができることが期待できる.

本教材が設計製作教育のための教材の土台

となれば幸いである.

参考文献

松田伸也,中川秀則:工学教育,62-5,pp.33-38,2014

図 4 性能試験

バネ秤

ハンドルを水平に

図 6 2014 年度製作品

0

500

1000

1500

2000

2500

0 5 10 15 20

理論値 測定値

図 5 錘とウインチによる巻き上げ力

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校長室入退室管理システムの開発

沼津高専技術室 電気・電子・情報系班

中村 玲治

1.開発の目的

校長室の入退室者を管理するシステムを作成し、総務課の業務の効率化に貢献する。メーカー

に開発を頼むと数百万円かかるところ、独自に開発することによって安価で開発することができ

る。

2.開発の背景

「校長とある教員が打ち合わせしているとき、別の教員が打ち合わせに参加するために総務課

に問い合わせることがあり、その際、現状では返答のために校長室に誰がいるか確認することが

困難である。この解決として、バーコード・押しボタンスイッチによる入力によって、事務室に

設置したディスプレイに校長室の入室者および校長の状況を表示するシステムがあると便利であ

る」という指摘が総務係長からあった。それにあわせて当該システムを開発することにした。そ

の他、ディスプレイ表示を工夫することにより、校長室の状況の把握が容易になる。

3.システムの要件及び概要

このシステムは「校長室入退室管理システム」と題しているが、校長室の施錠・解錠を行うわ

けではなく、教職員証のバーコード・押しボタンスイッチの操作を制御用のコンピュータの入力

として、事務室に設置したディスプレイに校長室の入室者および校長の状況を表示するものであ

る。総務課から提示された入出力の要件は以下の通りである。

・校長室へ入室している人のリストを表示すること

・教職員証のバーコードを入力として使用すること

・入室者が退室したことを把握すること

・校長の状況を総務課の押しボタンスイッチによる入力によって表示できること

・入室者がおらず、校長の状況を特別に表示する必要がないときは、総務課内の大型ディスプ

レイに、業務ポータルにある校長の予定表を表示すること

・表示は総務課内のディスプレイに表示し、総務課の人が容易に確認できるようにすること

・校長室前で機器を収納する場所はできるだけ小さくすること

・入室者のあり、なしを校長室前で表示できるようにすること

4.開発

4.1 構成図・物品構成

図 1 にシステムの構成図、表 1 にシステムで使用する機器を示す。

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PC は総務課で利用してい

ない物を利用させていただい

たので経費はかからない。

できマウスはPCの入力と

して押しボタンスイッチを使

用するためのシステムである。

本来は身体障害者がパソコン

を操作するための装置として

町田健治氏が開発した[1][2]。付属している

ソフト「JoyToKey」と組み合わせることによ

ってスイッチの操作をPCの数値入力に変換

することができる。事務部、および校長室前

の2カ所で使用するので2個必要である。標準

ではできマウス1個に付きスイッチは4個ま

で使用可能だが、事務部ではスイッチを8個

使用するため、スイッチを12個まで使用でき

るオプションパーツをあわせて使用する。

デバイスサーバーは遠隔地の USB デバイ

スを操作するための装置である[3]。

4.2 接続

接続について検討した。当初の予定ではバーコードリーダー

やできマウス本体に接続したデバイスサーバー校長室前に置き、

事務室に設置したルーターを無線接続する予定だった。しかし、

デバイスサーバーに接続した USB キーボードから文字入力を

し、無線により接続された PC に文字を表示させるテストを行

った結果、50%程度しか入力した文字を認識することができな

かった。これではとても実用に耐えないので、改善を必要とし、

有線接続とすることにした。なお、特に表示することがないと

きに待機画面を表示するのに学内ネットワークを使用するため、このルーターは学内ネットワー

クに接続している総務課のルーターに接続する。

有線接続のためにはケーブルを配線する場所が必要である。管理棟 2 階事務室の床は上げ底に

なっており下がケーブル配線場所、上が絨毯という構造であり任意の場所をケーブルモールとし

て使用することができる(図 2 参照)。また、天井に穴が開いており、これを使用して事務室外に

接続することができる。よって、事務室内の接続には床を使い、校長室前の機器と事務室の機器

の接続には天井の穴を経由して天井裏にケーブルを通すことによって接続することにした。

図 2:ケーブルモールとして 使用できる事務室の床

表 1:主要な用品一覧

品名 メーカー 型番

PC 富士通 FMV-A8290

バーコード

リーダー キーエンス BL-185

できマウス 町田健治氏[1]

押しボタン

スイッチ 町田健治氏[1]

デバイス

サーバー サイレックス

SX-DS- 3000WAN

ルーター IOデータ WN-G300GR

棚 白井産業 いろはこ

IRH-B2025GR

図 1:システムの構成図

USB接続

USB接続

デバイスサーバー 無線LANAP

バーコードリーダー

できマウス

スイッチ1個

PC

モニタ

できマウス

スイッチ8個

LAN接続

校長室 事務室

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4.3 ソフトウェア開発

以下、ソフトウェア制御が必要な部分を列挙する。

・デバイスドライバ(できマウス、バーコードリーダー等)

・バーコード入力を数値入力に変換する

・ボタン入力を数値入力に変換する

・入力値を画面表示に変換する。なお上記の他に PC 上で文字を直接入力することができる

・入力がない場合に、待機画面として校長の予定表を表示する

このうち、デバイスドライバはメーカー製の物を使用する。バーコード入力を数値入力に変換す

るためには、「AutoID Keyboard Wedge」というソフトウェアがキーエンスから提供されている

のでそれを利用する。ボタン入力は「JoyToKey」の設定により数値に変換できる。よって、独自

にプログラミングするところは、変換した数値をディスプレイ上の表示データに変換するところ

と、入力がない場合に、待機画面として校長の予定表を表示するところである。

この部分を Windows Powershell によってプログラミングした[4]。また入室者が多いときは文

字を小さくすることによって一画面で全部表示するようにした。ただし総務委員会の時は入室者

が 20 人以上いるため文字が小さくなりすぎるので専用の文字入力を行うよう総務課に指示する

ことにした。

バーコードによる入力の可否を利用者に知らせることは音声で行い、正常に入力できたとき

「OK」、エラーが起きたとき「error」と発音するようにした。また、ログイン時等に余計な音が

鳴らないようにした。PC 起動後最初のバーコード入力時に音を鳴らすのに 30 秒ぐらいかかって

おりこれでは利用者へのメッセージにならないので対応した。

その他、ディスプレイ表示の設定として、タスクバーの非表示、スリープ状態への移行を行わな

いような設定などを行った。タスクバーの非表示化のためには Taskbar Disabler[5]というソフ

トを使用したが、なぜか Windows7 内部の仕様によりスタートボタンだけ別扱いだったので別個

対応した。また誰が入室したかの確認のために、ログを 60 日保存するようにした。

4.4 事務室内の機器収納ボックスについて

事務室でスイッチを入れる箱を工場に加工していただいた。

図 3 にこれを示す。また、工事が必要になるので、業者との打

ち合わせを行った。

4.5 校長室前の機器収納ボックスについて

当初、無線 LAN アクセスポイントからの電波を受け取るデバイスサーバー、バーコードリー

ダー、バーコードリーダー用電源ユニット、電源を取るためのテーブルタップ等を内蔵するため、

木製の箱を教育研究支援センターに作っていただいた。図 5(a)にこれを示す。

しかし、校長室前の壁に設置するには大きすぎるという指摘があり、また上述の接続方法の変

更によりデバイスサーバーを内蔵する必要がなくなったので、箱に内蔵する物品の構成を見直し、

ほとんどの物品を天井裏に収納するようにした。

図3:事務室でスイッチを入れるボックス

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図 4:校長室前の箱に入れる物品の見直し

電源タップスピーカー

デバイスサーバーバーコードリーダー

スイッチ

電源タップ

スピーカー

できマウス

N-UB

電源ユニット

ボックス 天井裏

バーコードリーダー

N-UB

電源ユニット

デバイスサーバー

できマウススイッチ

ボックス

この結果、箱を小さくすること

ができた。図 5(b)にこれを示す。

小型のスピーカーを蓋の後ろに

直接取り付けるため、金属製では

ショートしてしまう。そのため、

アクリル製の蓋を教育研究支援セ

ンターに新たに作ってもらった。

図 6 の箱の蓋は金属製の厚さ 0.6mm のものだが、新しく作って

もらった蓋は厚さアクリルの厚さ 3mm の物である。なお、上か

らペンキを塗り、その際バーコードリーダーが読み取りするため

の穴の部分をペンキで塗らないようにするため、その分の穴は不

要である。図 6 にこれを示す。

5.終わりに

まだ事務部の予算の関係もあり運用は始まっていないが、稼働可能な状態である。運用開始後、

事務部でどのように運用されているか確認し、改良点を見つけたい。

参考文献

[1]「できマウス。」プロジェクト.Dekimouse.<http://dekimouse.org/wp/>

[2]マイナビ.みんなで作る「できマウス。」プロジェクトとは.

<http://news.mynavi.jp/articles/2005/01/05/dekimouse/>

[3]サイレックス・テクノロジー.SX-DS-3000WAN.

<http://www.silex.jp/products/usbdeviceserver/sxds3000wan.html>

[4]ペイエット、ブルース(2007)「Windows PowerShell イン アクション」(株式会社クイープ訳)、

ソフトバンククリエイティブ

[5]oideyasu.OneClick Software 公開サイト“おいでやす”.

<http://hp.vector.co.jp/authors/VA052362/>

図5(b):新しく作っていただいたボックス 図5(a):当初作っていただいたボックス

図 6:新しく作ったアクリル製の蓋

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固体乾燥測定用装置の製作

沼津高専技術室 物理・化学系班

鈴木 猛

1.はじめに

沼津高専物質工学科4年実施している化学工学実験では、固体乾燥の測定に使用している装置

があるが、安定した測定が出来ていなかった。そこで、安定的に行えるように改良した装置を製

作した。その過程と改良前の装置との測定データの比較を報告する。

2.背景

この実験は、固体の乾燥過程における重量変化を測定し、その結果より、乾燥速度曲線の作成、

空気境膜伝熱係数、境膜物質移動係数などの決定を行い、乾燥機構の基礎を学習することを目的

としている。

測定で重要なことは、試料の時間に対する重量変化を正確に測定することである。この実験の

導入当初より重量の測定には、ばね、直示天秤、電子天秤と使用する天秤の種類を変えてきた。

天秤の精度は向上しているが、乾燥器の上に天秤を設置するという構造は変えずに測定装置を組

んできたため、天秤が熱の影響を受け安定した測定ができずにいた。天秤の精度が向上により、

データのばらつきも正確に表れてきていた。

熱の影響は、秤量皿を吊り下げるための穴から吹き上がる温風と、吊り下げ金具を伝わる熱に

よるものである。この熱の影響を排除する必要性を感じていたところであったが、昨年の中間試

験の直前に装置が故障したのをきっかけに装置を製作することとした。

3.製作

製作にあたっては下記の事を考慮した。

・乾燥器の下に天秤を設置し、熱の影響を受けにくい構造とする。

・従来使用してきた乾燥機は大型で、天秤の上に設置するのは困難。

・測定試料は、約 1 ㎝の直方体であることから大型である必要はない。

・温度は、実験条件が最高 110℃までなので高温の耐熱性は必要ない。

・小型一体化して卓上で実験が出来るようにする。

これらの事より、旧型ではあるが電子天秤を改造して装置を製作することとした。

作業工程

1.天秤の防塵カバー(図 1)を改造して乾燥機を製作した。

2.ステンレス板を教育研究支援センターのレーザー加工機で切断し、内容器(図 2)、カバーそ

れぞれの形状に加工した。

3.内容器を防塵カバーに取り付け、そこにシリコンラバーヒーター(図 3)を取り付けた。

4.開口部より断熱材のロックウール(図 4)を入れ、カバー(図 5)・ドア(図 6)を取り付け

た(図 7・図 8)。

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図 1 天秤 図 2 内容器 図 3 シリコンラバーヒーター

チョウバランス JP-160 ステンレス板 厚さ 0.3 ㎜ 50×150 ㎜

図 4 断熱材 図 5 カバー 図 6 ドア

ロックウール ステンレス板 厚さ 0.3 ㎜

図 7 完成品・拡大 図 8 完成品・全体

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4.測定データの比較

軽石を固体試料とした、改良前の装置と改良した装置のそれぞれの測定結果を図 9、10 に、そ

の結果より、乾燥速度曲線を図 11、12 に示す。

図 9 乾燥時間と重量の関係 図 10 乾燥時間と重量の関係

改良前 改良後

図 11 乾燥速度曲線 図 12 乾燥速度曲線

改良前 改良後

5.まとめ

図 9,10 は試料の重量変化のばらつきにそれほど違いが見られない。しかし、図 11,12 の乾

燥速度が一定となる恒率乾燥期間を比較すると、改良前(図 11)では、乾燥速度のばらつきが大

きくなっているのに対して、改良後(図 12)では、ばらつきは小さくなっている。また、改良前

に使用していた天秤の最小表示重量が 0.001g に対して、改良に使用した天秤の最小表示重量が

0.0001g であることから、今までの装置に比べて非常に安定した測定が行えるようになったこと

がわかる。

このことから、今回の装置の改良は、学生実験の質の向上に役立つものとなったと考えられる。

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平成27年3月16日

第4回 沼津高専技術職員学内発表会 予稿集

沼津高等専門学校技術室 広報担当

内野・青田・桶田・中川・原田