第53回⽇本消化器内視鏡技師研究会 講演要旨 平成16年10⽉24⽇ ... · 2020. 7....

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第 53 回⽇本消化器内視鏡技師研究会 講演要旨 平成 16 年 10 ⽉ 24 ⽇(⽇) 13:00〜17:00 福岡サンパレス 大ホール 【要望演題】 「内視鏡検査治療介助における内視鏡技師の役割と⼯夫」 1.上部消化管⽌⾎術における内視鏡技師の役割と⼯夫 昭和伊南総合病院 内視鏡室 内視鏡技師 田中知恵美 藤井 秀康 浜子 看護師 工藤 明美 ⽬的 近年,消化器内視鏡領域の処置,治療における内視鏡技術の進歩は⽬覚しいものがあります。 それに伴い内視鏡技師の役割も必要不可⽋となってきています。しかし,消化器内視鏡技師と しての認知度はいまだ確⽴されていないのが現状です。今⽇の処置・治療における中で緊急 度,重要度ともに最も⾼い上部消化管出⾎に対する消化管⽌⾎術において,内視鏡技師の役割 について検討したので報告します。 ⽅法 上部消化管出⾎で処置・治療内視鏡における内視鏡技師の役割として,?@患者の状態経過観 察記録⽤紙を作成し病棟看護師への申し送り時間を測定した。私たちスタッフも記⼊に時間が かからないよう,事前に,検査項⽬,薬剤名は書き込んであります。?A 処置・治療時における

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  • 第 53 回⽇本消化器内視鏡技師研究会 講演要旨

    平成 16 年 10 ⽉ 24 ⽇(⽇) 13:00〜17:00

    福岡サンパレス 大ホール

    【要望演題】 「内視鏡検査治療介助における内視鏡技師の役割と⼯夫」

    1.上部消化管⽌⾎術における内視鏡技師の役割と⼯夫

    昭和伊南総合病院 内視鏡室

    内視鏡技師 ○ 田中知恵美 ・ 藤井 秀康 ・ 原 浜子

    看護師 工藤 明美

    ⽬的

    近年,消化器内視鏡領域の処置,治療における内視鏡技術の進歩は⽬覚しいものがあります。

    それに伴い内視鏡技師の役割も必要不可⽋となってきています。しかし,消化器内視鏡技師と

    しての認知度はいまだ確⽴されていないのが現状です。今⽇の処置・治療における中で緊急

    度,重要度ともに最も⾼い上部消化管出⾎に対する消化管⽌⾎術において,内視鏡技師の役割

    について検討したので報告します。

    ⽅法

    上部消化管出⾎で処置・治療内視鏡における内視鏡技師の役割として,?@患者の状態経過観

    察記録⽤紙を作成し病棟看護師への申し送り時間を測定した。私たちスタッフも記⼊に時間が

    かからないよう,事前に,検査項⽬,薬剤名は書き込んであります。?A 処置・治療時における

  • 処置具および必要物品の準備マニュアルを作成し準備時間を測定した。必要な物をセット化し

    てマニュアルを作成した。?B 処置・治療時の介助ポイントのマニュアルを作成し内視鏡医およ

    び内視鏡技師の満⾜度についてアンケート調査しました。介助ポイントマニュアルを熟知する

    とともに,⽌⾎処置でもっとも難しい⽌⾎クリップ操作を習得することも必要です。以上3項

    ⽬の導⼊前後について⽐較検討した。

    結果

    ?@患者の状態経過観察記録⽤紙の導⼊は,病棟看護師への申し送りの効率化につながり平均 1

    分間から 30 秒間程度に申し送り時間が短縮した。特に処置・治療内容と鎮静剤等の薬剤使⽤

    量が明らかとなり,検査後に必要な観察項⽬および観察時間が明瞭化され,リスクマネージメ

    ントの観点からも有⽤であった。

    ?A 準備マニュアル導⼊後,経験年数に関係なく適切な準備が短時間で出来るようになり,導⼊

    後準備時間が導⼊前に⽐べ平均5分間短縮した。

    ?B 介助ポイントマニュアル作成後,経験年数にかかわらず,介助が効率的出来るようになり,

    処置時間が短縮化し,内視鏡医および内視鏡技師の両者の処置に対する満⾜度が⾼まった。

    結論

    内視鏡室における業務の効率化,改善を果たすためのガイドライン,マニュアル作成は安全で

    質の⾼い内視鏡的治療,特に緊急度が⾼い消化管⽌⾎術を⾏うために今後ますます重要と思わ

    れました。そして,これらの業務改善のためのマニュアル作成は内視鏡技師の⼤切な役割のひ

  • とつと考え,また,物品がすぐにわかるようしておく事も必要になると思います。内視鏡医が

    処置治療に専念でき,患者様の苦痛を軽減するために,内視鏡技師は,内視鏡医の介助のみに

    重点をおかず,内視鏡におけるチーム医療の要としてのマネージャー的役割を果たしていくこ

    とが重要と思われました。

    連絡先︓〒399-4191 ⻑野県駒ヶ根市⾚穂 3230

    ?? 0265-82-2121 fax 0265-82-2118

    2.内視鏡的粘膜下層剥離術の内視鏡技師による「術前訪問」の有⽤性

    ―患者アンケート調査による検証―

    済生会熊本病院 消化器病センター 内視鏡室

    内視鏡技師 ○ 永野 美鈴 ・ 鳴海 淑子 ・ 鈴木田的子

    仲井 康裕 ・ 市原 みき ・ 橋本由利子

    医師 江口 洋之 ・ 藤本 貴久 ・ 多田 修治

    【はじめに】

    早期胃癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(以下 ESD と略す)は,開腹術に⽐べて患者への侵

    襲を軽減し,QOLを維持するという点で極めて有⽤な治療法であり,なかでも切開剥離法は

    完全切除がより確実である。しかし,この治療法は⾼度な技術が要求され穿孔などの合併症の

    危険性が⾼く,ESD を受ける患者の不安も⼤きいと予想される。

    当院内視鏡室では,2002 年 9 ⽉よりプライマリー内視鏡技師による「ESD 術前訪問」を開始

  • した。術前訪問に使⽤するパンフレットの内容は,⼊室から治療までの⼀連の流れと合併症に

    ついて写真を⽤いて説明している。また,スタッフが統⼀した訪問ができるように訪問の仕

    ⽅,治療後の⼊⼒の仕⽅も記載している。私達が⾏っている術前訪問は有⽤であるのか,患者

    アンケート調査を⾏ったので,その結果を報告する。

    【対象・⽅法】

    1.対象︓2002 年 9 ⽉〜2003 年 8 ⽉までの 1 年間に ESD を受けた患者 80 名

    (年齢 33 歳〜87 歳︓平均 67 歳,男性 60 名,⼥性 20 名)

    2.⽅法︓?@2002 年 9 ⽉,ESD 術前訪問パンフレットと情報収集⽤チェックリストを作成。

    ?AESD 術後にアンケートを依頼し,退院前に回収した 40 名と電話による調査を⾏った 40

    名。

    【結果・考察】

    アンケート1の「治療前の不安はありましたか」の問い(複数回答)に対し,多い順に

    1)ただなんとなく不安 14 名

    2)治療はうまくいくだろうか 13 名

    などの結果が得られた。漠然とした治療そのものに対する不安,その他に時間の⻑さや⿇酔

    の効き⽅といった治療中の具体的な不安の声が聞かれている。内視鏡技師として,その患者が

    どの様な事を知りたいと思っているのかを⾒極め情報を提供することが重要である。

    アンケート2,「治療を受ける前に看護師が訪室し,治療についての説明を⾏ったことで安⼼

  • できましたか」の問いに対し,66 名(82%)の患者が安⼼できたと答えた。

    当内視鏡室では ESD チーム 4 名と ERCP チーム 3 名の⼆つに分かれている。それぞれのチー

    ムによるプライマリー制で,より専⾨性を追求した看護を提供している。特に ESD チームは毎

    週⾦曜⽇に内視鏡プロジェクトチームによる医師と合同のカンファレンスを⾏い治療に関する

    ディスカッションを⾏っていることで,医師の説明で分からないことを内視鏡技師が補⾜し,

    医師に聞けない細かい質問にも答えてくれるという安⼼感また,明⽇⾃分が治療を受ける時,

    ⽴ち会ってくれる⼈に前⽇に会えたという安⼼感がこの様な結果になったのではないかと思わ

    れる。

    アンケート3の説明内容に対し満⾜だった 66 名(82%)説明内容に関しては,医師の治療説明

    終了後に訪問し,パンフレットを⽤いマニュアルに従って説明を⾏っている。

    アンケート4の説明時間は 65 名(81%)の患者が適当だと答えている。説明時間は患者の負担

    を考え 10 分程度としていたことが良い結果に繋がった。

    アンケート5,「治療を終えて現在,不安や⼼配なことはありませんか」の質問では,⾷事内

    容や再発はしないだろうかといった不安であった。⾷事内容については退院指導につなげても

    らい,再発に対しては,定期的な外来による検査(内視鏡検査など)で援助を⾏うことで不安の

    軽減につなげる必要がある。

    アンケート6,「治療前の看護師,内視鏡技師の訪問は必要だと思いますか」の質問では,必

    要と思うが 77 名(96%),理由としては,

  • 1)治療につく⼈が話してくれると安⼼する,

    2)病棟看護師より専⾨の看護師から聞いた⽅が安⼼する

    等の患者の声が聞かれた。今回のアンケート結果で 8 割が必要であると答えており,術前訪問

    は不安の軽減に役⽴っていることが確認できた。しかし,少数意⾒の中にはパンフレットの穿

    孔の写真をみせて不安が増強したとの意⾒もあった。今後はパンフレットの⾒直しは必要であ

    るが,パンフレットを⾒せる否かの判断は,主治医や病棟看護師の情報を得て,患者の性格を

    ⾒極め,また患者の希望を踏まえて今後は検討していく必要がある。

    術前訪問を開始したことでわかったことは,患者の不安を取ることはできないが,軽減につな

    げる事に関しては内視鏡技師として,疾患に対する知識や治療法の⼿技を熟知し,医師とのカ

    ンファレンスを持ちより良い治療看護の提供が必要になる。

    【まとめ】

    ?@術前訪問については患者の 82%が安⼼できていたと回答が得られた。しかし治療に関して

    の様々な不安を抱えており,プライマリー内視鏡技師は的確な情報を患者に伝えることが重要

    であると考えられた。

    ?AESD は⾼度の技術が要求され,穿孔および合併症の危険性が⾼いので,患者の不安をなくす

    ため,私たち内視鏡技師は,疾患に対する知識・技術の習得に⽇々努⼒が必要である。

    「引⽤・参考⽂献」

  • 1)JJNスペシャル No.48,1995,12「看護研究にいかす質問紙調査」

    2)九州消化器内視鏡技師会会誌,2002,7

    3)第 33 回⽇本看護学会論⽂集(成⼈看護1),2002

    4)総合消化器ケア 2000, No.3. No.6

    連絡先︓〒816-4193 熊本市近⾒ 5-3-1 ?? 096-351-8000

    3.切開・剥離術における内視鏡技師の役割

    山形県立日本海病院 内視鏡室

    内視鏡技師 ○ 斎藤 明美 ・ 斎藤 教子

    看護師 高野 千穂 ・ 澤山 裕明

    医師 本間 清明

    【⽬的】

    近年,内視鏡先端から突出させた処置具で病変の切除を⾏う切開・剥離術(ESD)が広く普及

    しつつあり,当院でも 2002 年 5 ⽉より導⼊した。今回後述の通り検討を加え,いかに安全な

    ESD を施⾏するかについて内視鏡技師の役割を考えた。

    【対象・⽅法】

    当院で ESD を施⾏した 290 例を対象とし,従来の EMR と⽐較しながらこれまでの経験を省み

    た。

  • 【結果】

    従来の EMR に⽐べて ESD は,⾼い難易度,⻑い術時間が特徴であった。また,下部消化管に

    おいては消化管穿孔 2 例を認め(いずれも内視鏡下に縫縮し抗⽣剤投与で術後 6 ⽇以内に退

    院),偶発症の危険性が⼤きいことも指摘し得た。

    【考察】

    前述の 3 点につき,対策と留意点を考察した。

    ⾼い難易度に対しては,処置具ハンガー(図)を⽤い

    た処置具の整理整頓,焦げ付いた処置具先端の洗浄

    が安全な ESD に寄与できた。また,難易度が⾼い

    だけに術者は内視鏡操作に没頭しやすく,後述のモ

    ニタリングも重要であった。難易度を軽減するため

    の多様な処置具には,ハンドルの基部に⾊違いのマ

    ーカーを取り付け,⼀⽬で指⽰を受けた処置具を判別できるようにした。処置具の先端は⾮常

    に⼩さく同⼀メーカーのハンドルは似ているため,⾒分けるために有⽤であった。

    ⻑い術時間に対応するために,⻑時間にわたるセデーションが必要であった。当院ではペンタ

    ゾシン,ヒドロキシジン,フルニトラゼパム,ミダゾラムを組み合わせて使⽤しているが,⾎

    中酸素飽和度,⼼電図,⾃動⾎圧計で 2 分半毎モニタリングを⾏い術者の指⽰を仰いだ。ま

    た,術前から⾎液凝固のための薬剤投与を⾏うため,危険度の⾼い患者さんには弾性ストッキ

  • ングを使⽤し⾎栓症発症を予防した。

    偶発症については術者が事前に⼗分な説明を⾏うことも重要であるが,技師も⼿技内容とその

    有⽤性・危険性を理解し患者さんの理解を助けた。また,偶発症が発症してしまった場合で

    も,早急に対応可能である状態を⽤意した。具体的には,クリップを常に使⽤できる状態と

    し,救急処置具も⼿の届く範囲に⽤意した。

    また,抄録提⽰後に経験した迷⾛神経反射によると考えられた術中徐脈症例を提⽰し,モニタ

    リングの重要性を改めて認識した。

    【結論】

    幸いなことではあるが,これまでの ESD 症例において上部消化管における穿孔例を認めていな

    い。今後も,安全に留意しながら質の⾼い治療を提供したいと考えている。

    連絡先︓〒999-8501 ⼭形県酒⽥市あきほ町 30 番地

    ?? 0234-26-2001 FAX 0234-26-5114

    4.ITナイフを⽤いた切開・剥離術を介助する看護師の役割

    静岡県立静岡がんセンター 内視鏡室

    ○ 須原 真弓 ・ 小泉 聡美 ・ 中川 麻美

    岸川真由美 ・ 脇坂 晃代 ・ 山嵜美奈子

    渡辺由美子 ・ 沼野美登利 ・ 村田 一枝

  • 蓮池 典明 ・ 乾 哲也 ・ 山口裕一郎

    小野 裕之

    【背景】

    近年,早期胃癌に対する治療として,内視鏡的粘膜切除術(EMR)が広く施⾏されているが,

    腫瘍径が⼤きい癌や潰瘍瘢痕を有する癌に対する切開・剥離術(以下 ESD)が提唱され,次第

    に広まりつつある。ESD は,従来法とは全く異なる⼿技であり,出⾎や穿孔などの問題がある

    など,介助⽅法にも⼯夫が必要である。

    【⽬的】

    当院では,開院当初から IT ナイフ法による ESD を⾏っており,適応拡⼤病変や,⾼齢・合併

    症等のリスクの⾼い症例も多い。そこで当院における ESD を介助する看護師の役割について報

    告する。

    【当院における ESD 症例】

    IT ナイフを⽤いた早期胃癌に対する ESD 症例は,2002 年 9 ⽉の開院から 2004 年 8 ⽉まで

    の約 2 年間に 327 件であった。327 件中 215 件(66%)がガイドライン外の症例であった。

    ガイドライン外の症例では,施⾏時間が⻑く,偶発症の発⽣率が⾼くみられた(偶発症率 穿

    孔︓7% 後出⾎︓16%)。

    【当院における ESD を介助する看護師の役割】

    看護師の役割は 1.事前の情報収集と患者訪問 2.ESD ⽤ワゴンに使⽤機器・処置具・薬剤の準

  • 備 3.直接介助︓IT ナイフ法の⼿順に沿った介助 4.間接介助︓直接介助者の介助と,患者の観

    察・苦痛の除去・不安の軽減,記録の4つである。

    ESD は通常の EMR に⽐して⼿技が複雑で必要とされる処置具が多い。このことに加えて,当

    院では,適応拡⼤病変における ESD を積極的に⾏っているため,出⾎や穿孔の危険性も⾼く,

    これに対応することが必要となる。そのため,介助者はどのような病変に対しても円滑で安全

    な治療介助ができ,出⾎や穿孔などの際も即座に対処できるようにしなければならない。

    その具体的な⼯夫として,以下の 4 点を⾏っている。

    1)治療に必要な情報収集のための⽤紙を作成

    2)事前の訪問による情報の再確認と患者の不安の軽減

    3)ESD ⽤ワゴンの作成

    ?@⽌⾎セット

    ?A 穿孔時の穿刺セット

    4)処置具掛けハンガーを使⽤し,処置具が取り出しやすいようにしている。また,ハンガーの

    下部にビニール袋を取り付け,周辺機器への汚染防⽌を図っている。

    【考察】

    情報収集・患者訪問を⾏うことにより,治療前に患者の状態が把握でき,観察ポイントの

    明確化・治療に伴う合併症の予測とそれに応じた準備を事前に⾏うことができる。それによ

    り,患

  • 者の個別性に応じた看護・介助を⾏うことができていると考える。また,訪問時に治療中の状

    況を

    説明することで,患者が治療中の状況を具体的にイメージでき,患者と家族の不安の軽減にも

    繋っ

    たと考える。

    処置具掛けハンガーや ESD ⽤ワゴンの作成により,必要物品がもれることなく準備でき,治療

    況に応じたスムーズな介助ができる。処置具掛けハンガーを使⽤することで処置具の取り扱い

    がスムーズに⾏え,また,ESD 専⽤ワゴンの作成により,合併症発⽣時の緊急処置時に必要物

    品を即座に準備,対処し,状態の重篤化を防ぐことができていると考える。

    【まとめ】

    ESD を介助する看護師にはこのように⾼度な知識と熟練した技術が必要とされる。これ

    らは,ESD 介助の経験数によっても⾝についていくものであるが,経験数にかかわらず治療の

    介助

    を円滑に⾏なっていくためには?@更なる介助の⼯夫?A 看護師のレベルに応じた達成⽬標の設

    定 ?B

    ESD の知識と技術を習得するためのカリキュラム作成・指導⽅法,以上の項⽬の検討が必要で

    ある。

  • また,退院後も後出⾎が起こっているため,今後は受診時から継続した看護が⾏えるよう,外

    来・

    病棟・内視鏡の連携を図り,⼊院前オリエンテーションや退院指導,退院後の⽣活指導の⾒直

    しを⾏なっていきたい。

    連絡先︓〒411-8777 静岡県駿東郡⻑泉町下⻑窪 1007 番地

    TEL 055-989-5222(内線 2270)

    5.EMR切開・剥離法(ESD)介助における技師の役割

    北海道大学病院 光学医療診療部

    ○ 岩崎 毅 ・ 加藤 元嗣 ・ 中川 宗一

    浅香 正博

    近年,内視鏡および周辺機器の進歩により,内視鏡検査・治療の普及にはめざましいものが

    ある。最近では,切開・剥離法(以下,ESD)の開発・普及により,スネア法やキャップ法では

    ⼀括切除が不可能であった⼤きさの病変も⼀括切除が可能となった。しかし,ESD による内視

    鏡的切除は,出⾎や穿孔などの合併症の多さ,術時間の⻑さ,⾼度な内視鏡⼿技の必要性など

    から,解決すべき問題点も多く残っている。

    ESD は術者だけではなく,その治療を円滑に⾏うために介助者の役割が重要になってくる。

    当院では 2000 年 8 ⽉から ESD を開始し 2004 年 10 ⽉現在まで早期胃癌症例だけで 74 例施

  • ⾏しており,その全例に内視鏡技師が介助者として介⼊している。そこで,当院で施⾏した

    ESD74 例を以下の項⽬で再評価し,ESD における内視鏡技師の役割について検討したので報

    告する。

    ?@術時間︓術時間は ESD にとって最も問題になる項⽬である。当院 ESD74 例の平均術時間

    は 90.3±66.3 分であった。病変の⼤きさ別で検討すると,ESD を開始してからの 2 年間

    (2000 年 8 ⽉〜2002 年 7 ⽉)⼿技が安定していない時期での症例 27 例では⼤きさと術時間で

    は相関傾向が表れなかったが,⼿技が安定したと考えられる 2002 年 8 ⽉以降での症例 47 件

    では,病変の⼤きさと術時間で相関がみられた。また,病変部位別で⾒ると前庭部領域(L領

    域)の術時間が短く平均 57.4±33.9 分(最短で 20 分)で治療を終えている。これに対し胃体

    上・中部(U,M領域)の術時間は,平均 111±71.2 分であった。このように病変の⼤きさ,部

    位,術者の熟練度,⽂献による報告では潰瘍の有無等でも術時間は変化する。しかし,それぞ

    れのパラメータを事前に把握していれば,予想術時間が得られてくる。内視鏡技師は術時間等

    の事前に得られる情報を把握し,患者に対する治療説明や,内視鏡室の1⽇の予定を決定する

    際に活⽤し,治療の流れを円滑に進⾏させることがひとつの役割と考える。

    ?A 使⽤処置具︓従来の EMR 法と⽐較して異なる点といえば使⽤する処置具の多さもある。当

    院における従来法(53 例)による1症例の平均処置具数は 4.6±0.7 個程度に対し,当院 ESD74

    例の平均処置具数は 9.4±0.8 個であった。処置具が多い分,鉗⼦の⼊れ替えも多くなってく

    る。当院では平均 25.4±14.1 回(従来法では 8.4±3.5 回)もの処置具の⼊れ替えが⾏われてお

  • り,⾼周波装置を使⽤する処置具はその都度切開効率を考慮して出⼒設定を変更しなければな

    らない。図1に当院の⾼周波装置の電⼒及びモード設定を⽰す。

    当院では局注液にヒアルロン酸 Na を使⽤している。⼀般的な上部局所注射針では液の粘度が

    ⾼いために円滑な局所注射ができない。そのためシース部が出来るだけ太いものを選択してい

    る。さらに,術場の整理や処置具の⼊れ替えを円滑にする⽬的で鉗⼦スタンドを⾃主製作した

    り,術者と介助者の距離の幅を広範囲にするため,すべての処置具が有効⻑ 1990?o 以上の処

    置具(下部⽤ディスポーザーブル)に変更するなどの⼯夫もした。

  • 事前情報(⼤きさ,病変部位,潰瘍の有無,患者の疾患情報,使⽤処置具等)に基づいて処置具

    の特質(図2)を把握したうえでの効率のよい処置具の選択,準備はもちろんのこと使⽤する処

    置具の円滑な操作技術の習熟,環境整備も重要になる。

    ?B 合併症率︓当院早期胃癌症例 74 例中穿孔例は 1 例(約 1.3%),翌⽇に再出⾎し緊急内視

    鏡⽌⾎術を施⾏した例は1例(約 1.3%)であった。輸⾎を必要とした重篤な症例は起こってい

    ない。当院は,全国の合併症率よりもはるかに下回っており,安全に治療が⾏えている事が⽴

    証されている。

    最後に円滑に安全な ESD を⾏うために,医師とのコンビネーションの確⽴,患者および病変の

    情報の把握,術場環境の整備,処置具の操作の習熟等が,内視鏡技師にとって重要であると考

    える。

  • 連絡先︓〒060-8648 札幌市北区北 14 条⻄5丁⽬

    ?? 011-706-5723 E-mail:[email protected]

    6.安全な切開・剥離法をめざして

    ― 脱気防⽌弁付オーバーチューブの改良型の使⽤経験 ―

    服部胃腸科 内視鏡室

    内視鏡技師 ○ 木下 伸任 ・ 小浦満寿生 ・ 中村真智子

    志垣 文浩

    臨床検査技師 古庄 誠二 ・ 崎村 文裕 ・ 園田 直子

    医師 蓮田 究 ・ 後藤 英世 ・ 尾田 恭

    服部 正裕

    【はじめに】

    早期癌に対する内視鏡治療において,切除標本の病理学的検索のために『⼀括切除』が最も重

    要な事である。従来法のストリップバイオプシーやキャップ法なのでは,⼀括切除できる病変

    の⼤きさが限られていたが,切開剥離法を⽤いると⼤きな病変に対しても⼀括切除が可能にな

    った。そのため内視鏡治療において『切開剥離法』は不可⽋な⼿技と⾔える。当院においても

    2002 年 4 ⽉〜2004 年 3 ⽉までに 69 例の切開剥離法を施⾏している。切開剥離法を施⾏する

    ためには数種類のデバイスを使⽤するが,補助的デバイスとして,住友ベークライト社製脱気

    防⽌弁付オーバーチューブ R(以下オーバーチューブ)を⾷道のスライディングヘルニア患者に

  • 対して,エアー漏れを防ぎ視野を確保する為に使⽤している。しかし,オーバーチューブでは

    期待通りの効果が得られないため,オーバーチューブを改良し,数例に使⽤し良好な結果を得

    ているので報告する。

    【オーバーチューブの使⽤⽬的】

    ・エアー漏れを防ぎ視野の確保(⾷道スライディングヘルニア)

    ・内視鏡による刺激の緩和(内視鏡を頻回に出し⼊れする場合)

    ・誤飲予防

    【製作⼿順】

    使⽤機種︓GIF-Q240(挿⼊部先端直径 10.2?o)

    ?@ディスポーザブル⼿袋(ラテックス製)の中指部分を切り取る

    ?A 切り取った指先部分の先端部約 2?o を切り取る(断端約 10?o)

    ?B ⻑さ約 60?o〜70?o のフード完成

    ?C オーバーチューブキャップ側のマウスピースロック部を覆う様に,フード根部側から取り付

    ける

  • 【結果】

    ラテックス製のフードを取り付け脱気防⽌弁を⼆重にする事により,呼吸運動に反応しフード

    部分が⾵船状に膨らんだり縮んだりしエアー漏れが防⽌できた。

    【考察】

    オーバーチューブのキャップ側にラテックス製のフードを取り付け,脱気防⽌弁を⼆重になる

    様に改良し使⽤した。このラテックス製フードは,市販のディスポーザブル⼿袋の指の部分を

    切り取り⽤いた物で,⼿間も経費も殆どかからず実⽤的である。実際の動きとしては,呼吸運

    動に反応して後付けのラテックス製のフード部分が,⾵船状に膨らんだり縮んだりするもので

    ある。当初はフードの部分をテープで固定し使⽤したが,使⽤中にフードの部分が内視鏡の出

    し⼊れにより脱落の不安があったため,マウスピースロックを含むキャップ側全体を覆うよう

    に変更した。脱気防⽌弁を⼆重にする事により個⼈差はあるものの視野の確保が向上し,より

    安全な治療が施⼯できるようになった。なお,使⽤中にフードの脱落や,破損などのトラブル

  • は現在まで数例に使⽤したが1度も発⽣していない。製作時のポイントとしては,フードの先

    端の⽳は内視鏡に対して少し⼩さく窮屈な程度にし,内視鏡の滑りが悪い場合はオリーブオイ

    ルを使⽤し対応している。また,フードのストローク⻑は短すぎるとフードが⾵船状に膨らま

    ないので,40mm〜50mm 程度が経験上良い様である。注意点としては,キャップ側全体を

    フードで覆う場合に,マウスピースロックにひっかけて破損しやすいので注意を要する。

    【オーバーチューブ改良型の評価】

    ?@材料が安価で経済的である

    ?A ⼿間や時間が殆どかからない

    ?B 内視鏡の種類に対して柔軟に対応できる

    ?C ストローク⻑が⾃由に調整可能である

    ?D エアー漏れ防⽌効果が向上する

    【まとめ】

    今回,オーバーチューブの改良型を製作し使⽤した。結果,エアー漏れが防⽌でき,今まで以

    上に視野の確保が良好になり,より安全な切開剥離を施⾏するうえで有効であった。現在,内

    視鏡的治療に対しては,さまざまな処置具が使⽤され,われわれ内視鏡技師に対しても⾼度な

    技術や知識が求められている。その現状において,今まで以上に安全で安楽な治療が施⾏出来

    るように,相違⼯夫を含めた積極的な取り組みが必要であると考える。

    連絡先︓〒860-0004 熊本市新町 2 丁⽬ 12-35

  • ?? 096-325-2300 Fax 096-352-4778

    E-mail︓[email protected]

    7.⼤腸内視鏡検査における技師の役割に関する検討

    慈山会医学研究所付属坪井病院 内視鏡センター

    内視鏡技師(看護師) ○ 佐藤利枝子 ・ 真壁美江子

    看護師 小栗山和子 ・ 伊藤 幸子 ・ 横山 智子

    青木さとみ ・ 田中 久子

    医師 湖山 信篤 ・ 山下 直行 ・ 加藤 博之

    齋藤 行世 ・ 工藤 由比 ・ 桜澤 信行

    ⽬的

    ⼤腸内視鏡検査(以下 TCS)は⼤腸癌検診の精密検査法として⽋かせない検査になってい

    るが,最近では検診要精査などの症状がない⽅が増えている。そのような⽅は,特に苦痛なく

    検査を終了したいという思いがある。しかし TCS は,苦痛の有無や程度に個⼈差があり,⾝体

    的・精神的苦痛が⼤きいほど受診率の低下につながる。多くの⽅に苦痛なく TCS を受けていた

    だき,検診精査受診率を向上させることを⽬的として,TCS 時の疼痛と検査の印象をアンケー

    ト⽅式で調査・分析し,介助者の役割を検討した。

    対象

    8 ヶ⽉間に消化器症状が無く,TCS を施⾏された被検者 410 例を対象とした。

    「内訳︓便潜⾎反応陽性・⼈間ドック・スクリーニング(他疾患術前,ポリペクトミー後

  • follow)」

    ⽅法

    ?@検査前に施⾏医による問診(TCS の有無・腹部⼿術既往・最終反応便の状態)を⾏い,終

    了後に検査時の疼痛と検査の印象を 5 段階で評価し,記⼊して頂いた。(表1)?A 同時に施⾏医

    と介助者も疼痛評価を 5 段階で評価した。(表2)?B 検査は鎮痙剤の筋注のみを⾏って施⾏し

    た。?C 検査時の疼痛及び印象を分析する際は,5 段階の評価のうち,1〜2 を疼痛なし・悪印

    象なし,3〜5 を疼痛あり・悪印象ありとした。

    表1 被検者へのアンケート 表2 施行医と介助者の疼痛評価 検査時の疼痛について

    1:痛みを感じなかった 2:1、2 回の痛みはあったが、思ったほどひど

    くない

    3:数回痛かったが我慢できた

    4:たびたび痛く、なんとか我慢した

    5:とても痛かった。2度とや

    りたくない

    検査の印象について 1:苦しくなかった。また検査はここでやりた

    い 2:一応満足した。大腸の検査は思ったほど苦

    しくない 3:辛かったが検査をしてよかっ た 4:辛かったが検査だからしょう がない 5:検査といわれても、これだけはもう嫌だ、

    苦しい

    1:全くない 2:一過性の痛み

    3:数回の痛み、我慢している様子

    4:頻回の痛み、必死で我慢している

    5:やめてくれの訴えあり

    結果

    (1)被検者の疼痛については 1〜2(疼痛なし)が 74%,施⾏医・介助者の疼痛なしの評価はそ

    れぞれが 81%で被検者,施⾏医,介助者の結果に相関を認めた。(図1)

    (2)疼痛・印象の 3〜5(疼痛あり)を分析したところ,前処置不良な⽅や,⾍垂炎・婦⼈科な

    どの下腹部⼿術の既往がある⽅が多かった。(図 3)

  • (3)検査の印象評価では,1︓苦しくなかった。2︓⼀応満⾜したが,70%であった。(図 2)

    (4)TCS は以前より苦痛をともなう検査という認識があったが,結果 70%以上の多数の⽅が疼

    痛や苦痛といった悪印象を持たず検査を受けることができた。

    まとめ

    介助者(看護師,技師)の役割として,

  • ・検査前に前回検査時の疼痛の有無や,腹部の⼿術既往を問診することは重要である。

    ・前処置の不良が検査後の印象不良につながることから,検査前に最終反応便の確認をして,

    その状態に合わせた処置(浣腸など)を適切に⾏うことが必要である。

    ・検査時には不安の緩和とともに被検者の状態を常に観察し,適切な腹部の⽤⼿圧迫や,鎮痛

    の必要性を施⾏医に助⾔することが重要である。

    おわりに

    この研究結果から現在当院では,検査前に患者様の⾝体的・精神的な状態の把握をすると共

    に,TCS 前に介助者により体形や腹部⼿術歴などの問診を⾏い,患者様に合わせたスコープを

    医師と共に選択し使⽤している。また TCS 歴を聴取し,前回 TCS 時に痛みが強かった⽅や不

    安が強い⽅には,鎮静剤の使⽤も勧めている。さらに,既往歴や抗凝固剤の服⽤の有無を事前

    に確認し,安全に検査が施⾏できるよう配慮している。

    参考⽂献︓

    1)⽥村君英他︓ナースのための消化器内視鏡マニュアル,学研,18 2003

    2)多⽥正⼤他︓新消化器内視鏡マニュアル,南江堂,2002

    3)⽥中三千男他︓消化器内視鏡看護―基礎から学びたいあなたへ,⽇総研

    連絡先︓〒963-0197 福島県郡⼭市安積町⻑久保 1-10-13 ?пF024-946-0808

  • 【⼀般演題】(1.看護・インフォームドコンセント)

    8.病棟看護師教育における内視鏡技師のかかわり

    広島県厚生連尾道総合病院 内視鏡センター

    内視鏡技師 ○ 楠見 朗子 ・ 小田原由起子 ・ 森田恵理子

    水野 智子

    消化器内科医師 花田 敬士 ・ 大江 啓常 ・ 佐々木敦紀

    【はじめに】

    内視鏡検査の発展に伴い,処置が複雑化しており,検査中の的確な介助だけでなく,病棟での

    充分な観察や看護が不可⽋となっている。今回,当院で 2 年にわたって実施した病棟看護師対

    象の消化器内視鏡勉強会(以下勉強会と略す)に参加後,更に内視鏡の知識を深めたいと希望

    した看護師に⾏ったアンケート調査を通して内視鏡技師の病棟へのかかわりにつき考察した。

    【調査⽅法】

    対象は,過去 2 年間の⽉ 2 回,1年間シリーズの勉強会に参加した,のべ 75 名(看護師 67

    名・臨床検査技師 8 名)のうち,更に継続参加を希望した 28 名で,勉強会の内容についての

    要望を⾃由記述式でアンケート調査した。

    【結果】

    集計結果は,最新検査の実際と看護 10 名(胃・⼤腸粘膜下層剥離術 5 名,超⾳波内視鏡下⽣検

  • 5 名),膵・胆道系検査の実際と看護 9 名,画像・所⾒の⾒⽅を知りたい 9 名,内視鏡検査全

    般の理解 8 名,事例検討 6 名,検査実際の⾒学 2 名であった。

    【考察】

    私達が勉強会を開始して 2 年経過した。平成 12 年に消化器内視鏡技師の資格を取得したが,

    当時は病棟と内視鏡室を兼務しており,病棟看護師の内視鏡検査に於ける知識不⾜を実感した

    ことが,勉強会開始のきっかけとなった。内容は,消化器の解剖・⽣理から内視鏡検査の実際

    と看護までを講義形式で,⽉ 2 回で1年間を 1 クールとし,同内容を 2 クール施⾏した。2 ク

    ール⽬の中頃より,参加者の減少が⾒られたが,内視鏡検査後のヒヤリハットは発⽣してい

    た。勉強会の継続は必要であるが,運営⽅法の検討が急務と判断し,3 年⽬は,参加希望者を

    事前に把握し,固定メンバー制とした。更に,参加者に勉強内容についての要望をアンケート

    調査した。その結果,病棟看護師と内視鏡技師の意識統⼀を図ることができ,勉強会運営の⽅

    針決定が容易となった。また,2 年間に及ぶ基礎を中⼼とした勉強会受講後にもかかわらず,

    検査全般の理解が希望項⽬に上がったことより,勉強会継続の必要性を確信した。

    最優先項⽬の最新検査の実際と看護は,病棟看護師の関⼼が⾼い理由として,検査導⼊以前の

    情報提供の不⾜が考えられた。⼀⽅,膵・胆道系検査の実際と看護に対する要望が多かった理

    由として,当院では,胆道ドレナ-ジ,ステント留置,交換など ERCP 関連処置が年間 260〜

    280 件と多く,処置後の病棟における観察が重要視されていることが⽰唆された。また,当内

    視鏡センターは画像ファイリングシステムが,院内オーダリングシステムと直結しており,病

  • 棟でも内視鏡画像の閲覧が可能であるが,病棟看護師の内視鏡所⾒の理解にやや問題がある現

    状が明らかとなった。当院では,内視鏡検査・処置を病棟看護師が直接介助する機会に乏し

    く,クリニカルパスや術中記録,⼝頭での申し送りなどを通じて患者の情報提供に対応してい

    るが,検査・治療内容の充分な理解には限界があると思われた。

    今後,調査結果を⼗分考慮した勉強会を通じて,病棟看護師が内視鏡検査・治療を理解できる

    ように働きかけ,内視鏡センタ-から病棟へつながる質の⾼い継続看護の実現にむけて努⼒を

    続けていきたい。

    【結語】

    今回,当院における病棟看護師の勉強会に対する要望をアンケートにより調査した。集計の結

    果,病棟看護師は従来の内視鏡検査の更なる理解に加え,⼊院期間が⻑く,処置後に関わる頻

    度が多い検査や,観察ポイントが不明な新しい検査への関⼼が⾼いことが判明し,勉強会運営

    における病棟看護師と内視鏡技師の意識統⼀の⼀助となった。調査結果を考慮した情報提供を

    ⾏い,継続看護のレベルアップの架け橋として病棟看護師と関わることは,今後の技師の役割

    の⼀つであると考えられた。

    連絡先︓〒722-8508 広島県尾道市古浜町 7-19

    TEL 0848-22-8111 FAX 0848-24-8811

    9.患者・家族の内視鏡説明・同意書に対する意識調査

  • 広島赤十字・原爆病院

    内視鏡看護師 ○ 澄川 八重 ・ 藤木かおり ・ 井原 弘子

    出口 里美

    内視鏡技師 岡本明日佳 ・ 小浦 光佐

    医師 古川 善也 ・ 石井 芳樹 ・ 服部 宜裕

    谷 洋 ・ 松本 能里 ・ 山本 昌弘

    田 利晶 ・ 山岡 義文

    事務 北野 仁美 ・ 川上 由香

    ?T.はじめに

    昨年新たに内視鏡検査の説明・同意書を作成した。これには合併症の頻度・死亡率の数値や,

    同意の有無・場所・時間の記載欄があるなど,従来とはかなり異なっていた。今後こうした同

    意書が増加すると思われるが,⼀⽅で患者の不安,混乱が増すのではないかとの懸念もあっ

    た。そこで,説明・同意書が患者や家族に与える影響をアンケート調査した。

    ?U.対象・⽅法

    外来で上部内視鏡検査を予約した 270 例と健康管理センター(ドック)で予約した 100 例の

    計 370 例を対象とした。外来では予約時に患者⽤と家族⽤,ドックでは患者⽤のアンケート⽤

    紙を渡し,検査当⽇に回収した。外来患者 139 名,家族 106 名,ドック 60 名の回答を得た。

    回答者の男⼥⽐は 6︓4 であった。

    ?V.結果

    1.検査に対する不安

    外来では 28%が「不安がある」と回答し,そのうち検査回数別では初回が 64%,2 回以上が

  • 21%であった。ドックでは 33%が「不安がある」と回答し,初回が 57%,2 回以上が 30%

    であった。

    2.説明・同意書による不安の変化及び項⽬

    外来では 13%が「少し不安になった」,81%が「変わらない」,5%が「安⼼した」となっ

    た。ドックでは 3%が「⾮常に不安になった」,20%が「少し不安になった」,75%が「変わ

    らない」であった。不安になった項⽬は「偶発・合併症の可能性,危険性」が⼀番多かった。

    3.説明・同意書の必要性

    外来では患者・家族の 42%が「必要」と答え,「必要ない」は 20%であった。ただ,ドック

    では「必要」が 38%,「分からない」が 40%あった。

    4.同意の⽇時・場所及び家族のサインの記載

    患者・家族ともに「必要」「必要ない」「分からない」の割合はほぼ同じであった。

    ?W.考察

    1.検査に対する不安

    検査に対する不安を軽減させる主な要因が 2 つある事が明らかになった。

    ⼀つ⽬は検査経験の有無である。「不安がある」と回答した外来患者とドックを検査回数別で

    ⾒ると,初回の⽅が多く,2 回以上になるとその占める割合は低い。このことから過去の検査

    経験が,不安を軽減させる⼀因であると考える。

    ⼆つ⽬は主治医の説明の実施である。説明・同意書をとる事で主治医と患者・家族のコミュニ

  • ケーションの場が増え,結果主治医に対する信頼感が増し,それが安⼼感となり,ひいては検

    査に対する不安を軽減させたのではないかと考える。

    2.説明・同意書による不安の変化及び項⽬

    説明・同意書を読むことが患者・家族の不安,混乱を増加させるとの懸念があったが,必ず

    しも不安が⽣じるとは⾔い切れないことが明らかになった。ただドックにおいては,「不安が

    ⽣じた」と回答した⼈の割合が⾼くなり,検査回数別で⾒ると 2 回⽬以上の⽅が多い傾向にあ

    ったが,これは病院の変化に⼾惑いを感じ,また説明・同意書を読むことで改めて検査に対す

    る危険性を認識したためだと考える。

    不安が⽣じた項⽬としては,「偶発・合併症の可能性,危険性について」が⼀番多く,検査に

    おける命の危険性を改めて認識した結果と考える。

    3.説明・同意書の必要性

    ⼗分理解してから検査を受けたいと考える患者・家族が増えてきていると考えられ,説明・同

  • 意書の必要性が⾼まっていると推測できる。ただ,「分からない」と回答した⼈の割合も⾼

    く,さらにドックでは「必要である」と回答した⼈の割合とほぼ同じであった。これは,患者

    の⼾惑い・医療ミスへの懸念が⼤きく関わっていると考える。

    4.同意の⽇時・場所及び家族のサインの記載

    説明・同意書を読むことで患者と家族が互いに理解し合えるという利点がある⼀⽅,家族に知

    られたくない⽅や中には家族がいない⼈もおり,この項⽬には個⼈の持つ背景や家族構成が⼤

    きく関わってくるため,個⼈にあわせた対応が必要であると考える。

    ?X.まとめ

    今回の調査で,説明・同意書をとることが必ずしも患者・家族の不安を増⼤させるものではな

    いことが分かった。有⽤性としては,患者と主治医のコミュニケーションの場が増え,患者等

    の安⼼感につながること,患者と家族が情報を共有できるということがある。しかし,時とし

    て過去の検査経験が説明・同意書に対して⼾惑いを抱かせることや,プライバシーの⾯から家

    族の同意をとることに反対する意⾒もあり,注意が必要と考えられた。

    「参考⽂献」

    1)⽇本消化器内視鏡学会卒後教育委員会︓消化器内視鏡ガイドライン,医学書院,2002.

    2)中村 隆︓医療事故の防⽌,第 52 回⽇本消化器内視鏡技師研究会(シンポジウム資料),

    2004.

  • 連絡先︓〒730-8619 広島市中区千⽥町 1-9-6

    ?? 082-241-3111(内線 2220)

    10.上部内視鏡検査後に⼀過性全健忘を来たした症例から看護師の役割を学ぶ

    郡山医療生協 桑野協立病院

    ○ 影山 陽子 ・ 景山 雪子

    【はじめに】

    ⼀過性全健忘(transient global amnesia: 以下 TGA)は,⼀般的に精神的・⾁体的ショック

    後に発⽣する。発⽣頻度は 10 万⼈中 10 ⼈前後,男⼥差はなく,50 歳以上に好発すると⾔わ

    れており,それ程稀な疾患ではない。しかし,上部内視鏡検査(以下 GS)ではきわめて稀な合併

    症である。今回我々が経験した 2 症例と,⽂献検索し得た 8 症例をまとめ報告する。

    【症例】

    症例 1︓55 歳 ⼥性。主訴︓逆⾏性・前向性健忘。現病歴︓1999 年 11 ⽉ 19 ⽇に健康診断の

    ため GS を施⾏した。前処置後,特に問題なく検査を終了したが,帰宅途中に悪⼼あり病院に

    ただちに再来した。検査等の記憶を消失しており,頭部 CT 検査をおこない異常なく TGA と診

    断された。既往歴・家族歴︓特記すべきこと無し。経過︓2時間後にも記憶が戻らなかったが

    夫と帰宅し,翌⽇には完全に記憶が戻った。

    症例 2︓76 歳 ⼥性。主訴︓逆⾏性・前向性健忘。現病歴︓2003 年 7 ⽉ 5 ⽇健康診断のため

    GS を施⾏した。検査前,検査に対する不安があり昨⽇は眠れなかったと訴えていた。検査中

  • は特に問題なく終了したが,約 10 分後呆然とした表情で歩⾏していた。看護師に「私はどこ

    へ⾏こうとしていたの。」と同じ質問を繰り返し,病院に来てからの逆⾏性健忘と前向性健忘

    があり,医師の診察を受け頭部 CT 検査が正常であったため,TGA と診断された。既往歴・家

    族歴︓特記すべきこと無し。経過︓約 2 時間後に GS を⾏ったことを思い出し帰宅した。

    【考察】

    ⼀般的に TGA の頻度は⽐較的多いが,GS 後の TGA の報告は少なくこれまでに 8 例のみであ

    る。TGA の原因は後内側視床,海⾺を両側に侵す⼀過性虚⾎と考えられている。誘因として,

    疼痛,冷⽔,性交,⿇酔,運動負荷試験,内視鏡検査,運動,軽微な頭部外傷,精神的なショ

    ック,脳⾎管造影,蜂刺されなどが挙げられる。我々の 2 例を加えた 10 例を検討すると全例

    が⼥性であり,発⽣年齢に共通する年齢層はなく,共通する既往疾患もなく,前処置薬が誘因

  • との報告もない。その結果,GS 後の TGA は,GS の経験があり不安が強い⼥性に起きるので

    はないかと考えられる。GS 検査⽬的は症状が無く健康診断⽬的が 6 例,腹痛精査が1例,不

    明 3 例である。GS 経験回数は 2 回以上が 6 例,不明 4 例である。検査前の不安は検査に対す

    る不安が 4 例,結果に対する不安が 2 例,不明が 4 例であった。発作発⾒時間は検査室離室後

    6 例,検査直後1例,不明 3 例であり,時間が経過してから発⾒される場合が多い。症状は,

    意識障害や神経学的な異常が無い状態で突然最近の記憶が失われ,⾃分の置かれている状況を

    把握できなくなることである。発作中は記憶の構築ができなくなるため,何度も同じ質問や動

    作を繰り返すことがある。TGA の予防には,不安の軽減のため静脈⿇酔下検査等の⼯夫と精神

    的援助が必要と考える。TGA の発⾒は,検査室を離れてからがほとんどであるため,GS 後の

    経過観察が必要である。TGA の症状が健忘のため,脳梗塞,脳出⾎との鑑別が必要である。

    【まとめ】

    1)GS のまれな合併症である TGA を 2 例経験した。2)GS の経験者で不安が強い⼥性は注意が

    必要である。3)TGA の発⾒には各部署の看護師の連携が重要である。4)医療スタッフは TGA

    の知識を持つことが⼤切である。5)TGA の予後は良好であり経過観察のみでよい。

    「参考⽂献」

    1)宍⼾正枝他︓当院においてGIF後に⼀過性全健忘を起こした 2 症例.第 15 回福島県消化

    器内視鏡技師研究会, 10.1999

    2)澤⽥幸久他︓上部消化器内視鏡検査が誘因と考えられた⼀過性全健忘の 1 例.Progress of

  • Digestive Endoscopy 60︓44-46, 2002

    3)仲 紘嗣︓上部消化管検査が誘因と考えられた⼀過性全健忘の⼀例.北勤医誌代 24︓29-

    31, 1997

    4)城下 裕他︓上部消化管内視鏡検査が関連して発⽣した⼀過性全健忘の 1 例.Gastroentrol

    Endosc 32︓589-592, 1990

    5)篠原幸⼈︓⼀過性全健忘症候群.Dimentia 3︓193-200, 1989

    6)安江耕作 他︓胃内視鏡検査が誘引となり繰り返した⼀過性全健忘の⼀例.第9回認知神経

    科学会プログラムB1-01

    7)CLINICAL NEUROSCIENCE,17 (8)︓942-943,1999 医学中央雑誌

    8)⽯原哲也他︓SPECT.IH-MRS を⽤いた⼀過性全健忘の成因に関する検討,脳卒中 19 巻 3

    号.180-186

    9)⼤塚康史他︓新しい SPECT 解析システム eZLS により両側海⾺の脳⾎流低下を認めた⼀過

    性全健忘の⼀例.臨床神経学, 2︓977-979, 2002

    10)⾦⼦恵⼦他︓消化器内視鏡施⾏前の患者ケア.臨床看護 18︓797-801, 1992

    11)⾼橋恵︓消化器内視鏡施⾏後の患者ケア.臨床看護 18︓812, 1992

    12)清⽔昭⼦他︓気管⽀鏡検査を初めて受ける患者が抱える不安.⽇本看護学会論⽂集,第 33

    回成⼈看護?U︓336-338,2002

    連絡先︓〒963-8034 福島県郡⼭市島 2-9-18 ?? 024

  • ?? 024-933-5422 FAX O24-923-6169

    E-mail: [email protected]

    11.上部消化管内視鏡検査におけるプロポフォールの有⽤性

    昭和伊南総合病院 内視鏡室

    内視鏡技師 ○ 原 浜子 ・ 藤井 秀康 ・ 田中知恵美

    看護師 工藤 明美

    消化器科 堀内 朗 ・ 梶山 雅史

    プロポフオールは,全⾝⿇酔剤で,欧⽶では,鎮静剤としても広く使⽤されている。⿇酔後の

    グット・クオリティ・オブ・リカバリー意識の回復の速さと質に優れていて,咽頭反射や声帯

    運動の抑制があり,呼吸抑制もある薬剤です。

    ⽬的

    最近,上部消化管内視鏡検査,(以下 EGD)において,鎮静剤使⽤を希望される⽅が増えてい

    ます。しかし鎮静剤使⽤に伴う検査中,及び検査後の安全性については,いまだ確⽴されてい

    ないのが現状です。現在では,鎮静剤は,多種多様な物がありますが,半減期が短く,短時間

    で覚醒することができるプロポフォールについて,EGD における使⽤経験に基づきその有⽤性

    を報告します。

    ⽅法

    1.対象は,上部消化管スクリーニング検査⽬的に EGD を希望され,鎮静剤の投与を希望し⽂

  • 書にてインフォームドコンセントを得られた被検者 760 名,男性 450 名,⼥性 310 名平均年

    齢 52 歳に対し,プロポフォールを 75 歳以下 40?r,724 名,

    平均年齢 50.5 歳 76 歳以上 30?r,36 名,平均 78 歳を静脈内投与後,通常の⼿順で EGD が

    施⾏された。

    2.1)検査中に経⽪的動脈酸素飽和度(以下 SPO2)を測定した。

    2)内視鏡技師が被検者のマウスピースの保持や体動の抑制に要した頻度及び時間を測定し

    た。

    3)被検者が検査台より⾃⼒で起き上がれるまでの回復時間及び,直線歩⾏が可能なまでの時

    間を

    測定した。

    4)被検者が内視鏡室退室直前に EGD の苦痛度について聞き取り調査を施⾏した。

    結果

    1.プロポフォール投与後,SPO2 が 90%未満に低下した被検者は,75 歳以下では,3%,

    724 名中 22

    名,76 歳以上では2%,36 名中1名認めたが始めから SPO2 の低い⼈もこの中に⼊っていま

    す。

    2.マウスピースの保持を要した被検者は,75 歳以下では 41%,認め要した時間は 2 分 30 秒

    でした。

  • 76 歳以上では 22%認め,要した時間は1分でした。体動の抑制を要した被検者は,75 歳以下

    1%認め,要した時間は 3 分 40 秒でした。

    3.10 分後に⾃⼒で検査台より起き上がることができたのは,75 歳以下で 98%,76 歳以上

    で,97%

    であった。30 分後に直線歩⾏が可能であったのは,75 歳以下で 99%,76 歳以上で 94%であ

    った。

    4.聞き取り調査では,75 歳以下で苦しくなかったが 92%,苦しかったが 8%で,76 歳以上で

    は苦し

    くなかったが 100%であった。

    プロポフォールの⻑所,短所

    ⻑所では覚醒が早い。拮抗剤が必要ない。注射が⼀度で済む。咽頭反射が抑制される。

    短所では覚醒が早すぎる。呼吸抑制がある。マウスピースの保持や体動の抑制が必要である。

    ⾎管

    痛がおきる時がある。

    結論

    プロポフォールの使⽤によりほとんどの被検者は,苦痛がなく,呼吸抑制も認めずに短時間で

    検査前の状態に回復することができた。プロポフォールは,従来の鎮静剤同様,苦痛を軽減さ

  • せるのみならず,使⽤後の回復が早く,検査後の安全性にも優れており,スクリーニング⽬的

    の EGD に有⽤な鎮静剤と考えられました。

    連絡先︓〒399-4191 ⻑野県駒ヶ根市⾚穂 3230

    ?? 0265-82-2121 fax 0265-82-2118

    12.経⽪内視鏡的胃瘻造設患者の胃瘻管理の現状

    和歌山県立医科大学付属病院 中央内視鏡部

    看護師 ○ 角田 晴子 ・ 田又 美季

    内視鏡技師 石井千有季 ・ 岩田 里美 ・ 松阪いく子

    医師 瀧藤 克也 ・ 中田 博也 ・ 一瀬 雅夫

    <序論>

    経⽪内視鏡的胃瘻造設術(以下 PEG と略す)の普及により,経⿐胃管から開放されて QOL

    が改善すること,誤嚥性肺炎の減少など多くの有⽤性が唱えられている。当院中央内視鏡部で

    は,今まで,PEG 挿⼊時の看護に対する研究に取り組んできた。しかし,PEG 前後の看護につ

    いては病棟看護師に⼀任しており,まして退院後の胃瘻管理については全く把握できていない

    のが現状である。そこで,今回退院後の胃瘻管理の現状を把握し,医療継続性の観点からアン

    ケート調査を⾏った。

    <対象と⽅法>

    1999 年 1 ⽉から 2003 年 10 ⽉までに当院で胃瘻を造設した患者 63 ⼈を対象に,PEG 挿⼊

  • 前の医師からの説明の現状や退院指導内容,在宅での現状やトラブルについて,アンケートを

    作成,郵送した。その中で本研究の趣旨に同意を得られた 27 ⼈より回答を得た。

    <結果および考察>

    アンケートの回収率は 43%であった。PEG 前の医師の説明については,納得できたと回答

    した⼈は 85%であった。その中で PEG 挿⼊後の感想として 19%がイメージと同じ,52%が

    ほぼ同じと回答したが,イメージと⼤きく違った⼈も 3%あった。説明の⽅法を⾒ると 70%が

    ⾔葉や⼿書きの説明であり,統⼀した説明⽤紙がないため,内容に差が⽣じているのではない

    かと推測できた。退院時指導の実施者は看護師が 37%で医師が 26%であった。このことから

    も退院指導は看護師に⼤きく委ねられている現状が明らかとなった。

    退院指導に納得で

    きた⼈は 52%と約半

    数にとどまった。退

    院時の説明内容につ

    いては,胃瘻の構

    造・使い⽅,栄養剤

    の注⼊速度に関するものが 37%,注⼊時の姿勢が 33%と多く,胃瘻交換の場所4%,交換⽅

    法や合併症に関するものが 11%と少なく,先々のことまで考慮できていない傾向が⾒うけられ

  • た。

    退院後のトラブル発⽣率は 56%と⾼率で,内容は⽪膚のただれ,ボタンの抜去,挿⼊部の⾁

    芽形成などが多かった。トラブル発⽣時の相談者は,現在の主治医,受け持ち看護師,訪問看

    護師などさまざまであった。このことを反映するように⾃由記述でも,「トラブルが発⽣して

    も誰に相談してよいのかわからない」との回答があり,ここでも継続看護の充実がはかれてい

    ない現状があった。現在の療養場所では⾃宅が 40%と多く,次いで病院が 19%で,胃瘻の管

    理者は,配偶者が 33%で,平均年齢は 65.5 歳と⾼齢な結果であった。

    PEG 挿⼊後は,在宅医療や⾃⽴に向うことが望ましく,そのためには,患者,家族が安⼼し

    て胃瘻管理を続けていけるよう⽀援していくことが不可⽋である。今回の研究結果より,現状

    では⻑期展望に⽴った退院指導がおこなわれておらず,医療継続性のうえでも問題があること

    が明らかとなりました。また今回の調査では,造設前のインフォームドコンセントの充実度と

    その後の受け⼊れの関連性は明らかにできなかったが,⾃由記述の中で,「PEG を⼊れたら退

    院できるといわれたのに,結局⼊院中に亡くなって⾮常に残念だ。」という意⾒もあり,やは

    りリスクを含めたインフォームドコンセントの充実をはかり,患者,家族が⾃⼰決定できるこ

    とを⽬指す必要があると痛感した。

    今後は病棟看護師の退院指導の実態調査を深めるとともに,指導内容を統⼀するためパンフ

    レットを作成し活⽤いていきたい。また内視鏡技師が中⼼となり,勉強会の開催もおこなって

    いきたい。

  • <結論>

    胃瘻造設後,退院してからのトラブル発⽣は 56%と⾼率で,今後偶発症発⽣の可能性を含め

    た説明や退院指導の充実が必要である。

    「参考⽂献」

    1)新井安⼦︓継続看護を⽬指した内視鏡的胃瘻造設術(PEG)クリニカルパスおよび説明⼩冊⼦

    の作成,⽇本消化器内視鏡技師研究会会報,pp53-54,2003

    2)津川信彦︓看護サイドからみた PEG と在宅医療,消化器内視鏡,pp571-577,2003

    3)上野⽂昭︓ナースのための通信教育 胃瘻が基礎からわかる PEG ケア,⽇総研,pp3-14

    4)新⾕周三︓摂⾷障害患者に在宅併⽤栄養管理を施⾏した 12 例,神経内科,pp253-258,

    2001

    5)和⽥太郎︓経⽪内視鏡的胃瘻造設術︓脳神経外科患者の⻑期栄養管理における経験,脳神経

    外科 28 巻 10 号,pp873-879,2000

    6)伊藤雅啓︓経⽪内視鏡的胃瘻造設患者の⻑期観察例の検討,広島医学 50 巻 9 号,pp827-

    829,1997

    7)⽥中雅夫︓最新 PEG ケア,照林社,2002

    8)臨床看護 5,経⽪内視鏡的胃瘻造設術(PEG)とケアの実際,ヘルス出版,2003

    連絡先︓〒641-8509 和歌⼭県和歌⼭市紀三井寺 811-1 TEL 073-447-2300(代表)

  • 13.苦痛の少ない⼤腸内視鏡検査をめざして

    〜患者アンケート結果からの報告〜

    東海大学医学部付属病院 内視鏡室

    内視鏡技師 ○ 渡部 玲子 ・ 本村 郁子 ・ 中村 玲子

    池田とみ子

    看護師 花木由香里 ・ 宇都宮良美 ・ 小野寺恵津子

    武藤美枝子

    医師 白井 孝之 ・ 鈴木 孝良 ・ 峯 徹哉

    ⽬的

    ⼤腸内視鏡検査(以下,CF)の検査需要は増加しているが,時に痛い苦しいという印象から敬

    遠されがちである。今回,患者アンケートにより背景別の痛みの程度を調査し,その対応法を

    検討したので報告する。

    対象および⽅法

    2003 年 3 ⽉ 10 ⽇〜2004 年 1 ⽉ 7 ⽇の期間において,平均回盲部到達時間に差がない 6

    名の施⾏医によって,鎮痛,鎮静⽬的の注射をせずに,回盲部まで挿⼊された CF の被検者を

    対象として,検査後にアンケートを実施し,426 枚を回収した。(回収率 90%)対象となっ

    た被検者の年齢,性別,体格(BMI),⼿術歴,CF 歴の条件により 5 段階評価した痛みの程

    度にどのような違いがあるかと,その痛みの程度に適した対応について検討した。使⽤した電

    ⼦スコープは,オリンパス光学社製の CF240I,CF240AI,硬度可変式スコープ+UPD

  • (CF240DI)の 3 機種である。

    以下に痛みの程度の 5 段階評価の基準を⽰す。

    1.痛みはなかった(痛みは殆どないか,気にならない程度)

    2.ごく軽度の痛み(時に苦痛と感じたが,容易に我慢できた)

    3.中程度の痛み(苦痛であったが,なんとか我慢できた)

    4.かなり痛いが耐えられる範囲内(かなり痛く,我慢するのに相当の⾟抱を要した)

    5.耐え難い痛み(耐え難く中⽌を強く希望した。または,2 度とこの検査を受けたくないと思

    った)

  • 結果

    今回の検討ではマン・ホィットニーのU検定を使⽤し,有意差検定を⾏った。機種間による

    痛みの程度には,有意差はなかった。年齢別では,40 歳未満の若年者群は痛みが⼤きく,40

    歳以上 60 歳未満との検定ではP値が 0.001,60 歳以上との検定でもP値は 0.001 であっ

    た。性別では⼥性のほうが痛みが⼤であった。男性との検定ではP値が 0.001 以下であった。

    体格(BMI)による影響は,BMI が 24 より⼤きい肥満群において痛みが⼩さかった。やせ気

    味(BMI︓〜≦20)との検定ではP値は 0.001 以下,普通(BMI︓20

  • 値は 0.001 以下であった。⼿術歴による影響は⾒られなかった。CF 歴別では,初回における

    痛みが⼤きく,2回⽬以上の被検者との検定ではP値が 0.023 であった。

    痛みに対する患者側の希望は,痛みの程度が⼩さい 1 や 2 は「何もしないでよい」や無回答が多

    かったが,痛みが⼤きくなるにつれて,「鎮痛剤の注射」の希望が増え,無回答が減少した。⾃

    由記⼊項⽬では,「医師,介助者による声かけ(励まし)」,「説明しながら,検査をする」とい

    うものが多かった。

    考察

    ?@若年者,⼥性,普通もしくはやせ気味,CF検査初回の被検者は,有意に痛みの程度が強

    い。

    ?@

    ?A「医師,介助者による声かけ(励まし)」,「検査中の説明」は⽋かせない。

    ?B 痛みの程度が⼤きいときには,鎮痛剤の注射の使⽤を検討する必要がある。

    ?C ⾳楽などの⽅法は,痛みの程度が気にならない時や逆にかなり痛い時には,あまり期待

    されていないことが判った。

    結語

    苦痛の少ない⼤腸内視鏡検査を実現する為に,検査前及び検査中の説明を充実させると

    ともに,被検者の観察(精神的,⾁体的)を⼗分に⾏い,効果的な声かけ・タッチングを

    し,場合によってはセデーション使⽤の提案をしたり,特記事項を次回の検査時に利⽤で

  • きるように記録に残すなどの⼯夫により,最適な検査を提供できるように⼼掛け,内視鏡

    看護の充実を図ることが⾮常に重要であることが再認識された。

    連絡先︓〒259-1193 神奈川県伊勢原市望星台 TEL0463-93-1121(内)3253

    14.⼤腸内視鏡検査における前処置のオリエンテーションの改善

    〜排便スケールとビデオを活⽤して〜

    杏林大学医学部付属病院 内視鏡室

    内視鏡技師・看護師 ○ 降矢 貴子

    看護師 亀山 京子 ・ 辻本知保里

    はじめに

    当院の外来での⼤腸内視鏡検査に対する前処置の説明は,パンフレットを⽤いた⽂章と⼝頭で

    ⾏っていたが「どのような便の状態で検査が受けられるのか,イメージがつかない」という声が

    散⾒され,検査可能な便の状態の判断に差が⾒られていた。

    ⼀⽅,⼤腸内視鏡検査のオリエンテーションは,他施設で⼀連の流れを視覚的に説明し,効果

    が得られたとの報告がある。私達は検査可能な便の状態を視覚的に表現することにより,イメ

    ージがつき認識が⾼まるのではないかと考え,排便スケールとビデオを活⽤したオリエンテー

    ションの改善を試みた。

  • ⽬的

    オリエンテーションの改善を図り,判断基準を提供し,検査可能な便の状態に対する認識を⾼

    める。

    ⽅法

    対象 院内で洗腸剤を服⽤し,⼤腸内視鏡検査を受けた外来患者

    期間 平成 15 年 5 ⽉〜平成 16 年 1 ⽉

    ⽅法 従来の⽅法でオリエンテーション(従来法)

    排便スケールとビデオを⽤いてオリエンテーション(排便スケール法)

    ※ 両群共に

    ?@オリエンテーション後アンケート調査

    ?A 洗腸剤服⽤後,患者が検査可能な便の状態を判断した時点で,看護師がスケール評価

    ◇アンケート内容

    検査の経験の有無

    検査可能な便の状態をイメージ出来たか否か

    検査可能な便の状態(⾊・濁り・カスに分類)を理解出来たか

    ?B 両群の結果を⽐較

    39 歳以下が少なかった為,40 歳以上の 202 例(従来法 114 例・排便スケール法 88 例)をχ

    ⼆乗検定で有意差を⽐較検討した。

  • 結果

    ・『年齢・性別・経験の有無』で有意差は認められなかった。

    ・『検査可能な便の状態をイメージ出来た』と答える割合は 9 割で,有意差は認められなかっ

    た。

    ・『検査可能な便の状態』のアンケートの正答率は⾼く,従来法 86.8%,排便スケール法

    97.7%と有意差を認めた。

    ・『検査可能な便の状態』を判断できた患者は,従来法 43.9%,排便スケール法 65.9%と有

    意差を認めた。

    考察

    従来法で『イメージ出来た』と答える患者は 9 割だったが,実際にスケール評価をしてみる

    と,検査可能な便の状態で申し出てくる患者は 4 割だった。イメージとは『⼼の中に思い浮か

    べる像・全体的な印象』1)というように⼈の想像は多種多様で,便の状態を⾔葉と⽂字で伝

    えることに限界があり,判断に差が出ていたのだと思われる。⼀⽅,検査可能な便の状態の正

    答率や,スケール評価も排便スケール法が良好であり,便に対する質問は減少した。⽊場らが

    『教育・指導の場⾯で⽤いる媒体の⼀番基本的な⼿段は⾔葉による説明であるが,それに⽂字

    という視覚から⼊るものを加えると,受け⼿はより理解しやすくなる。更に単に⽂字の羅列よ

    りもそれを表す写真や絵,または模型や実物といった,より具体的な形で提⽰されると受け⼿

    はもっと理解しやすくなる』2)と述べているように,排便の変化がわかる写真や,腸内の映

  • 像を提⽰したことが良好な結果に結びついたと考えられる。また⽊場らが『⼀回の説明ではわ

    かりにくい内容の場合や患者の理解度に応じ,患者が納得するまで繰り返し⾒直すことができ

    る。すなわち反復学習ができることである。』3)と述べている。看護師の説明とビデオを数

    回視聴覚し,排便スケールで繰り返し確認できるようになった。このように反復学習できたこ

    とが,患者の判断基準の向上につながったと考えられる。判断が出来なかったケースでは『カ

    スの区別が難しい』『ビデオが速すぎて分かりづらい』という声が聞かれた。これは画像の限

    界と映像の切り替えが速い為ではないかと思われる。

    結語

    排便スケールやビデオを活⽤した視覚的オリエンテーションは,検査可能な便の状態を認識す

    るために有効であった。

    「引⽤⽂献」

    1)新村出︓広辞苑,岩波書店,1999

    2)3)⽊場冨喜︓看護実践の教育・指導技術,P94,⽇総研出版,1995

    「参考⽂献」

    1)尻無濱岸⼦︓⼤腸内視鏡検査前処置における観便表の有⽤性,看護技術,Vol.49(3),P65〜

    67,2003

    2)荒⽊美和⼦︓ビデオ視聴による⼤腸内視鏡検査前処置のオリエンテーションの充実,⽇本消化

  • 器技師会会報,P43〜44,2000

    3)⼤塚哲︓⼤腸内視鏡検査オリエンテーションビデオの活⽤について,⽇本消化器技師会会報,

    P57,1999

    4)能瀬真知⼦︓⼤腸内視鏡検査における前処置の検討,⽇本消化器技師会会報,P59〜60,1999

    5)朝倉裕美︓⼤腸内視鏡検査を受ける外来患者へのオリエンテーション,消化器内視鏡ケア,

    ⽇総研出版,P35〜42,1998

    6)⼭崎信也︓なるほど統計学とおどろき Excel 統計処理,医学図書出版,2003

    連絡先︓〒181-0004 東京都三鷹市新川 6-20-2 TEL︓0422-47-5511(内線 5061)

    15.⼤腸内視鏡検査前処置不良の要因を探る

    岩手県立胆沢病院 内科外来

    内視鏡技師 ○ 佐々木美穂 ・ 福田 直見 ・ 佐藤 絹子

    医師 熊谷 進司 ・ 相澤 宏樹 ・ 萱場 尚一

    研究⽬的

    当院では年間平均 2300 例程度の全⼤腸内視鏡検査(TCS)を⾏っている。検査は午前より⾏っ

    ており以前は,残渣・残便による前処置不良で再検となる率(以下再検率とする)が平均して

    約3%と⾼かった。再検の判断は担当医師が⾏なうが,⽔洗・吸引・体位変換を⾏なっても⼗

  • 分な観察が⾏なえない場合に再検となる。これまでに便秘症の⼈・便秘症でない⼈に分け前処

    置を⼯夫し再検率を低下させてきた。更に再検率を低くする⽬的で前処置不良の要因を患者背

    景より分析し,前処置の選定・⼯夫に役⽴てたいと考え調査を⾏なったので報告する。

    前処置⽅法

    TCS の前処置として,従来はゴライテリー法(ニフレック?2?)を基本とし,現在は,便秘症の

    ⼈・便秘症でない⼈に分け,適宜ピコスルファート Na(ラキソベロン?),クエン酸 Mg ⾼張液

    (マグコロール P?)などを使⽤している。

    研究⽅法

    対象及び期間

    A群;H15 年 11 ⽉〜12 ⽉の間にTCS可能であった群 179 例

    B群;H13 年 4 ⽉〜H15 年 8 ⽉の間に残渣・残便によって再検となった群 179 例

    ⽅法

    1)⽇本消化器内視鏡技師会⼤腸内視鏡検査前処置アンケート調査報告書より前処置不良の要因

    として考えられる項⽬を抽出し,A群・B群において調査した。

    2)調査内容︓?@年齢?A 性別?B 基礎疾患?C 腹部⼿術歴の既往?D 下剤服⽤状況?E その他の薬

    剤服⽤状況

    3)調査内容?@〜?E について統計学的に検討した。

  • 結果

    1)年齢ではU検定により⾼齢者に再検が多いことがわかった。平均年齢では,A群 60.3 歳・

    B群が 66.4 歳だった。性別では 2 群において有意差はなかった。

    基礎疾患として⼼・腎疾患・⿇痺では有意差はなく,腹部⼿術歴でも有意差はなかった。

    2)χ2乗検定により基礎疾患として脳疾患・糖尿病の⼈で有意に再検率が⾼く,特に糖尿病に

    おいては HbA1c7.5%以上の⼈に特に再検率が⾼かった。

    3)常⽤から時折服⽤している⼈を下剤服⽤群とし,⾮服⽤群と⽐較するとB群に有意に下剤服

    ⽤者が多かった。便秘の原因となる薬剤のうち,向精神薬,膀胱鎮痙作⽤薬,筋弛緩薬を服⽤

    する⼈は,B群に有意に多かった。

    考察

    TCS では検査の前処置として⾷事制限や下剤投与などの負担は避けられず,再検査の苦痛は⼤

    きいと考えられる。再検群には⾼齢者,糖尿病のコントロール不良者,脳疾患患者が多かっ

  • た。⾼齢者では腸の働きが衰え,体⼒の低下や運動不⾜などで便秘になりやすく,個⼈差はあ

    るものの理解⼒の低下なども再検率を⾼くしている要因のひとつであると考えられる。糖尿病

    や脳梗塞では,疾病による機能低下が再検率を⾼くしている原因と考えられる。また,前処置

    不良の要因として,下剤・向精神薬・筋弛緩薬・膀胱鎮痙作⽤薬の服⽤が挙げられた。⾼度の

    便秘例には検査前にゆとりを持った排便コントロールが必要と考えられる。

    今回前処置不良の要因を明らかにしたことで,前処置の選定には普段の排便状態を知ることの

    みならず,個々の理解度・症状・リスク・ライフスタイルなどを⼗分に考慮し対応する必要性

    を再確認した。

    今回のデータをもとにさらに前処置の⼯夫に務め,前処置不良の要因を問診時に再確認しチェ

    ックリストにするなどして負担を最⼩限にした検査となるようにしていきたい。

    「参考・引⽤⽂献」

    1)緒⽅晴彦,ほか︓⼤腸内視鏡検査前処置アンケート調査報告書,⽇本消化器内視鏡学会 2002

    2)勝⼜伴栄︓⾼度便秘例への腸管前処置.消化器内視鏡 2000;12(6):880-881

    3)⾼野正博︓⼤腸の病気,2002.

    連絡先︓〒023-0864 岩⼿県⽔沢市⿓ヶ⾺場 61

    TEL 0197-24-4121 FAX 0197-24-8191

  • 【⼀般演題】(2.前処置)

    16.より苦痛の少ない⼤腸内視鏡検査をめざして

    〜モサプリド併⽤マグコロールP液の有⽤性〜

    小樽掖済会病院 消化器科

    内視鏡技師(看護師) ○ 北野 由紀 ・ 木戸 照子

    看護師 塚本友美子 ・ 野上 奈々

    医師 佐々木宏嘉 ・ 近江 直仁

    【背景と⽬的】

    当院では従来,⼤腸内視鏡検査の前処置としてニフレック?を⽤いてきたが,特有の味のため

    に服⽤しにくいという患者様の声や,病変発⾒率の低下を防ぐ⽬的で服⽤量を 4000ml まで追

    加しなければならないケースが多く⾒られていた。そのため,患者様の苦痛が軽減でき,かつ

    洗腸効果の⾼い前処置法を確⽴するために,これまでにも様々な検討を重ねてきた。

    中でもニフレック?服⽤経験者に対しマグコロールP?等張液(以下マグP)についてのアンケ

    ート調査を⾏ったところ,84%の患者様がマグ P はニフレック?より服⽤しやすいと回答して

    いた。そこでマグP単独での前処置の導⼊を試みたが,服⽤限度量 2400ml では 92%の患者

    様が当院における洗腸基準を満たさず不⼗分であった。

    今回我々は,患者様の⽀持が⾼かったマグPを使⽤した上で,その洗腸能⼒を上げるために,

  • 腸管運動改善薬であるモサプリドとマグPを併⽤し,従来のニフレック?法と⽐較検討したの

    で報告する。

    【対象と⽅法】

    1.対象︓2004 年 3 ⽉〜6 ⽉

    当院において⼤腸内視鏡検査を⾏った外来患者様 95 名

    2.⽅法︓95 名を検査予約時に無作為にニフレック?単独群(以下NIF群)とマグP+モサプリ

    ド群(以下MGP群)に分けた。ただし,胃・⼤腸⼿術症例は研究対象から除外した。

    3.前処置法(表1参照)

    4.検討項⽬︓排便回数・総服⽤量・服⽤時間・検査時の洗腸度の 4 項⽬で,洗腸度はブライン

    ドで検査医が評価した。

    【結果】

    排便回数の平均はNIF群 9 回,MGP群 7 回でMGP群の⽅が少なかった。総服⽤量の平均

    はNIF群 2914 ml,MGP群 2184 ml でMGP群が少なく,さらにその 34%は 2000 ml

    未満で服⽤終了していた。服⽤時間はNIF群 3 時間 5 分に対し,MGP群 2 時間 24 分でM

    GP群の⽅が短かった。検査医が⾏った洗腸度は『きれい・ややきれい・ふつう・ややきたな

    い・きたない』の 5 段階で評価を⾏い,観察に⽀障がないとされる『きれい・ややきれい・ふ

    つう』を合わせると,NIF群 89%,MGP群 81%という結果となり,ほぼ同等であった。

  • 【考察】

    モサプリドは胃排出促進作⽤と腸管蠕動促進作⽤を有しているため,マグPの服⽤量を減少さ

    せ,短時間で洗腸を終了させることができたと考えられる。

    前回の検討においてマグP単独では当院の洗腸基準を満たすことができなかったが,今回モサ

    プリドを併⽤させたことで洗腸基準を満たすことができた。これは補助洗浄効果という点で有

    効であったと考えられる。またモサプリドは,⼼臓系の副作⽤の問題があったシサプリドに変

    わる運動機能改善薬として安全性が⾼いことが知られている。そのため⼼疾患を持つ患者様や

    ⾼齢者に対しても⽤いることができ,多くの患者様に対応できると推定される。マグP⾃体の

    服⽤しやすさにモサプリドの補助洗浄効果と安全性が加わり,また可能な限り少ない服⽤量に

    抑えることで今後も患者受容度の増⼤が期待される。

    【結語】

    モサプリド併⽤マグコロールP?服⽤法は,服⽤しやすさ・洗腸能⼒などの点で患者様の受容

  • 性が⾼く,当院での洗腸基準を満たすことができた。

    参考⽂献

    1)今村保⽂,倉岡隆,⻫藤聡ほか︓腸管洗浄液に併⽤する Cisapride と Mosapride との⼤腸内視

    鏡前処置効果の⽐較.⽇本⼤腸検査学会雑誌 18.1:221-224.2001

    2)抱井昌夫,光島徹︓消化管運動促進剤クエン酸モサプリド併⽤による経⼝腸管洗浄液減量の試

    み.Pharma Medica 17:132-133,1999.

    連絡先︓〒047-0031 北海道⼩樽市⾊内 1-10-17

    ?? 0134-24-0325 fax 0134-25-3408

    【⼀般演題】(3.機器関連)

    17.上部消化管内視鏡検査時のオーダーメードマウスピース作成の試み (第2報)

    神辺町国民健康保険神辺町立病院 内視鏡室

    内視鏡技師 ○ 藤本 悦子 ・ 神原 幸子 ・ 野々平裕子

    内視鏡室看護師 安原加奈美

    (岡山大・院・公衆衛生学) 医師 小島 真二

    緒⾔

    上部消化管内視鏡検査時のマウスピースの装着は,検査の安全な実施に不可⽋であるが,時と

  • して検査中に⼝から外れて検査の妨げになったり,内視鏡破損の原因になることがある。特に

    ⾼齢者の場合マウスピースの保持が困難な事例が多く,これまで当内視鏡室でもマウスピース

    ラバー使⽤等様々な⼯夫を実践してきた。しかしながら,検査・処置時間の⻑い症例では,ひ

    も付きマウスピースでも検査中の再装着が必要な事例が散⾒された。そこで,内視鏡検査時の

    マウスピースの安定性を向上し不快感を軽減する⽬的で,⻭科印象材を⽤いてオーダーメード

    でマウスピース(以下 OM)を作製し検査に使⽤したところ,⾮常に有⽤な結果を得たので報告

    する。

    ⽅法

    1.当院で 2004 年 6 ⽉?9 ⽉に上部消化管内視鏡検査を受け,調査に協⼒が得られた 31 名を対

    象として,調査紙法によりマウスピースに関する抵抗感,苦痛,検査中の気がかり,維持の努

    ⼒,改善の要望,検査中の外れについて検討した。

    2.当院で 2004 年7⽉?9⽉に上部消化管内視鏡検査を受け,⻭科印象材を⽤いた OM に関す

    る⽬的・⽅法・リスク・選択の⾃由について情報提供を⾏い同意が得られた18 名には,実際

    に使⽤していただき,その印象をアンケートにて調査した。

    【OM の作成⽅法】

    1)義⻭除去,⼝腔内観察,問診。

    2)⻭科⽤咬合採得印象剤(3M ESPE 製 ExpressTM 印象材 パテ#7312)の2剤を均⼀に練

    和。練和開始後 30 秒以内にマウスピースの切⻭の当たる部分に巻く。

  • 3)15 秒間⼗分に噛んだ後,静かに⼝腔から取りだし⾃然硬化させる。

    結果

    1.従来のマウスピースの現状

    対象事例の 29%が検査中にマウスピースが気がかりだったと回答し,45%に改善の要望が

    あった。マウスピースの外れを年齢,性別,検査の経験回数から分析したがいずれも有意差が

    認められなかった。前⻭⽋損の有無で群別し検討すると,前⻭⽋損なし群では 16 例中 5 例

    (31%),前⻭⽋損群の 15 例中 11 例(73%)で検査中にマウスピースが外れ,また「気が

    かり」が前⻭⽋損なし群で 2 例(12%),前⻭⽋損群で7例(46%)であった。

    2.OM と従来品との⽐較

    検査中のマウ�