第Ⅱ相臨床試験...

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-1421-2.第Ⅱ相臨床試験・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・評価資料ト-67 海外では,志願者にインフルエンザウイルスを接種し,Ro64-0796 の感染に対する発症抑制効果を検 討した実験的ヒトインフルエンザ試験(プロトコール No.GS97-802 及び NP15757)を実施した。本節で はこれら実験的に行われた予防試験の有効性,安全性の成績について記載する。なお,インフルエンザ ウイルス感染はウイルスの分離,又は HAI 抗体価(4 倍以上の上昇)によって確認した。 1-2-1.実験的ヒトインフルエンザ A 型に対する予防試験(GS97-802・・・・・・・・・評価資料ト-6 本試験(プロトコール No.GS97-802)は 19 月から 月まで,米国の で健康成人 志願者を対象に行った。試験の概略を表ト-2-1-1 に示す。 健康成人 37 例をプラセボ投与群(13 例),Ro64-0796 100mg o.d.投与群(12 例)及び Ro64-0796 100mg b.i.d.投与群(12 例)の 3 群に無作為(二重盲検)に割り付け,治験薬投与開始 24 時間後に鼻腔内に A/Texas/36/91 ウイルス株(HN1)を接種した。 表ト-2-1-1 実験的ヒトインフルエンザ A 型に対する予防試験の概略(GS97-802項目 内容 治験の目的 Ro64-0796 A 型ウイルスに対する予防投与後のウイルス学的効果及び安全性を実験 的に検討する。 試験の種類 プラセボを対照とした無作為割付 1) による二重盲検試験 対象 選択基準 健康成人志願者(性,人種は問わない) 18 歳≦年齢≦40 既往歴,身体検査,バイタルサイン,臨床検査,心電図検査で重大な異常所見を 認めない志願者 試験開始 60 日以内の血清 HAI 抗体価≦1:8 非喫煙者又は 1 日平均 10 本以内の喫煙者で本試験期間中は禁煙可能な志願者 医師,治験スタッフの言語を充分理解できる志願者 文書同意が得られ,プロトコールの規定に従うことが可能な志願者 除外基準 臨床的に重大な気管支肺,心臓,消化管,腎臓,肝臓,神経の疾患又はアレルギ ー病変の既往がある志願者 被験者の安全性確保又は試験の評価を妨げるような臨床検査値異常を有する志願 治験薬投与前 1 週間以内に上気道感染を含む急性疾患を有した志願者 ウイルス接種前 3 日以内に発熱した志願者 ウイルス接種前 60 日以内に他の治験薬を服薬した志願者 薬物中毒,アルコール依存の既往を有する志願者 B 型肝炎,HIV 感染症を有する志願者 妊娠テストで陽性反応を示す女性志願者 妊婦,授乳婦又は試験期間中避妊の意志のない志願者 接種ウイルス懸濁液の成分にアレルギー反応を示す志願者 評価に影響する薬剤を慢性的に使用している志願者 目標症例数 42 例(プラセボ;14 例,100mg o.d.;14 例,100mg b.i.d.;14 例) 使用薬剤 Ro64-0796/V02 100mg カプセル,Ro64-0796/V04 プラセボカプセル 用法・用量 A/Texas/36/91(H1N1)型インフルエンザウイルス接種(接種量 10 6 TCID 50 を経鼻的に 接種)24 時間前から Ro64-0796 カプセルを 1 日 1 回又は 2 回の経口投与。 使用薬及び併用療法 試験期間中は解熱又は症状改善用アセトアミノフェンと有害事象の治療以外の薬剤は 禁止する。但し,経口避妊薬の適正投与は差し支えない。 投与期間 5 日間 検査・観察項目及び時期 表ト-2-1-2 のとおり。

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Page 1: 第Ⅱ相臨床試験 ......有効性の評価は開始時にHAI抗体価が高かった4例を除く33例(プラセボ投与群;12例,100mg o.d. 投与群;11例,100mg b.i.d.投与群;10例)で行った。①ウイルス学的効果

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1-2.第Ⅱ相臨床試験・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・評価資料ト-6,7

海外では,志願者にインフルエンザウイルスを接種し,Ro64-0796 の感染に対する発症抑制効果を検

討した実験的ヒトインフルエンザ試験(プロトコール No.GS97-802 及び NP15757)を実施した。本節で

はこれら実験的に行われた予防試験の有効性,安全性の成績について記載する。なお,インフルエンザ

ウイルス感染はウイルスの分離,又は HAI抗体価(4倍以上の上昇)によって確認した。

1-2-1.実験的ヒトインフルエンザ A型に対する予防試験(GS97-802)・・・・・・・・・評価資料ト-6

本試験(プロトコール No.GS97-802)は 19 年 月から 月まで,米国の で健康成人

志願者を対象に行った。試験の概略を表ト-2-1-1 に示す。

健康成人 37例をプラセボ投与群(13例),Ro64-0796 100mg o.d.投与群(12例)及び Ro64-0796 100mg

b.i.d.投与群(12 例)の 3 群に無作為(二重盲検)に割り付け,治験薬投与開始 24 時間後に鼻腔内に

A/Texas/36/91 ウイルス株(H1N1)を接種した。

表ト-2-1-1 実験的ヒトインフルエンザ A型に対する予防試験の概略(GS97-802)

項目 内容

治験の目的Ro64-0796 の A 型ウイルスに対する予防投与後のウイルス学的効果及び安全性を実験

的に検討する。

試験の種類 プラセボを対照とした無作為割付 1)による二重盲検試験

対象

選択基準

① 健康成人志願者(性,人種は問わない)

② 18歳≦年齢≦40歳

③ 既往歴,身体検査,バイタルサイン,臨床検査,心電図検査で重大な異常所見を

認めない志願者

④ 試験開始 60日以内の血清 HAI抗体価≦1:8

⑤ 非喫煙者又は 1日平均 10本以内の喫煙者で本試験期間中は禁煙可能な志願者

⑥ 医師,治験スタッフの言語を充分理解できる志願者

⑦ 文書同意が得られ,プロトコールの規定に従うことが可能な志願者

除外基準

① 臨床的に重大な気管支肺,心臓,消化管,腎臓,肝臓,神経の疾患又はアレルギ

ー病変の既往がある志願者

② 被験者の安全性確保又は試験の評価を妨げるような臨床検査値異常を有する志願

③ 治験薬投与前 1週間以内に上気道感染を含む急性疾患を有した志願者

④ ウイルス接種前 3日以内に発熱した志願者

⑤ ウイルス接種前 60日以内に他の治験薬を服薬した志願者

⑥ 薬物中毒,アルコール依存の既往を有する志願者

⑦ B型肝炎,HIV感染症を有する志願者

⑧ 妊娠テストで陽性反応を示す女性志願者

⑨ 妊婦,授乳婦又は試験期間中避妊の意志のない志願者

⑩ 接種ウイルス懸濁液の成分にアレルギー反応を示す志願者

⑪ 評価に影響する薬剤を慢性的に使用している志願者

目標症例数 42例(プラセボ;14例,100mg o.d.;14例,100mg b.i.d.;14例)

使用薬剤 Ro64-0796/V02 100mgカプセル,Ro64-0796/V04 プラセボカプセル

用法・用量A/Texas/36/91(H1N1)型インフルエンザウイルス接種(接種量 106 TCID50を経鼻的に

接種)24時間前から Ro64-0796 カプセルを 1日 1 回又は 2回の経口投与。

使用薬及び併用療法試験期間中は解熱又は症状改善用アセトアミノフェンと有害事象の治療以外の薬剤は

禁止する。但し,経口避妊薬の適正投与は差し支えない。

投与期間 5日間

検査・観察項目及び時期 表ト-2-1-2のとおり。

Page 2: 第Ⅱ相臨床試験 ......有効性の評価は開始時にHAI抗体価が高かった4例を除く33例(プラセボ投与群;12例,100mg o.d. 投与群;11例,100mg b.i.d.投与群;10例)で行った。①ウイルス学的効果

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評価方法(項目)及び

評価基準

-A型インフルエンザ感染の同定-

ウイルスが鼻腔内洗浄液から分離されること,又はベースラインに比較して HAI 抗体

価が 4倍以上上昇することによって同定された。

-有効性-

①主要評価項目:

・ウイルス感染例の割合

②副次的評価項目

・ウイルス力価のピーク

・ウイルス放出期間(ウイルス接種時から放出が認めなくなるまでの時間)

・ウイルス放出量(ウイルス接種後 7 日間,鼻腔内洗浄液検体中に放出されたウイル

ス力価を AUC(台形法)で比較する。)

・インフルエンザ感染による総症状スコアの AUC

(被験者及び医療スタッフは熱,筋肉痛,頭痛など 14 の症状について,それらの程

度を 1(軽度に該当),2(中等度に該当),3(高度に該当)で記録し,7つの症状(熱,

筋肉痛,頭痛,喉の痛み,咳,不快感,鼻症状)に複合,点数化し,それらを AUC

(台形法)で表す)

・インフルエンザ感染による 7 つの症状が改善するまでの期間(ウイルス接種時から

消失又は軽度改善までの時間)

-安全性-

・有害事象

治験薬投与開始から投与終了後 2 日目(オントリートメント期間)までに発現した有

害事象,及び投与終了 3 日目から観察期終了(オフトリートメント期間)までに発現

した有害事象を観察する。薬剤との因果関係は,「なし」「ほとんどない」「否定できな

い」「多分あり」で評価した。

・臨床検査値

一般血液,生化学,尿検査

-薬物動態-

本概要書ヘの項,1-2-1.「実験的ヒトインフルエンザ A 型に対する予防試験(海外;

GS97-802)」に成績を示した。

検定方法

有効性の主要評価項目については Fisher Exact test により,副次的評価項目のウイ

ルス力価及び放出量,総症状スコアについては Wilcoxon rank sum test,期間について

は Weighted Mantel-Haenszel testによりプラセボと比較する。

施設数 1施設( /米国)治験期間 19 年 月~19 年 月

1) 割付調整因子:なし

[用法・用量の設定根拠]

本試験は 100mgの 1日 1 回投与と 100mgの 1日 2回投与で実施した。投与量はラット 14日間の毒性試

験成績(無毒性量:500mg/kg/日)を考慮し,動物の感染モデルと in vitroにおける効果カプセル剤承認時資料,

及び第Ⅰ相臨床試験(単回,反復投与)評ト-3,4の投与量から設定した。

[症例数の設定根拠]

本試験の目標症例数は 42例(実薬投与群 28例,プラセボ投与群 14例)と設定した。プラセボ投与群

のインフルエンザ感染率を 75%と仮定し,実薬投与群のプラセボ投与群に対する感染率の差が 45%(75%

に対して 30%)であるとき,両側 5%の有意水準で検出されうる例数とした。

なお,実際に本試験に登録された総症例数は,37例(実薬投与群 24例,プラセボ投与群 13例)であ

った。37例の場合,プラセボ投与群に対して実薬投与群が 47%の差を検出(両側 5%の有意水準)するの

に 80%の検出力をもつ。

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表ト-2-1-2 検査・観察項目及び時期 (GS97-802)

1 日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目 8日目 9日目 3-4週 スクリーニング am pm am pm am pm am pm am pm am pm am pm am pm am 同意取得 √ 既往歴 √ 診察・問診 √ √ ウイルス接種 √b) 治験薬投与 √ √ √ √ √ √ √ √ √ √ バイタルサイン √ √ √ √ √ √ √ √ √ √ √ √ √ √ √ √ √ 体温 √ √ √ √ 2√ 2√ 2√ 2√ 2√ 2√ 2√ 2√ 2√ 2√ 2√ 2√ √ 心電図 √ 血液学的検査 √ √ √ 生化学検査 √ √ √ 尿検査 √ √ √ 妊娠テスト √ √ √ 薬物・アルコール中毒 √ HAI抗体価 a) √ √ 鼻洗浄 (ウイルス培養) √ √ √ √ √ √ √ √ 中耳圧 √ √ √ √ √ √ √ 症状スコア √ √ √ √ √ √ √ √ √ √ √ √ √ √ √ 薬物動態 √ √ √ サイトカイン √ √ √ インフルエンザ特定サイトカイン √ √ √ 有害事象 √ √ √ √ √ √ √ √ √ √ √ √ √ √ √ √

a) 被験者は試験開始前 60日以内に HAI抗体価を測定する。b) ウイルス接種は 2日目の夕方の治験薬投与後に行われる。

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1)症例の内訳

37例を無作為に 3群に割り付けた。内訳を図ト-2-1-1 に示す。プラセボ投与群が 13例,100mg o.d.

投与群が 12 例,100mg b.i.d.投与群が 12 例であり,全例が安全性の解析対象となった。また,有効性

は投与開始時に HAI抗体価が高かった 4例を除いた 33例が解析対象となった。

登録症例: 37

プラセボ:13 100 mg o.d.:12 100 mg b.i.d.:12

12

13

12

10

11

12

図ト-2-1-1 症例の構成(GS97-802)

2)被験者背景

安全性の解析対象例 37例の被験者背景を表ト-2-1-3に示す。

表ト-2-1-3 被験者背景(GS97-802)

プラセボ 100mg o.d. 100mg b.i.d. N = 13 N = 12 N = 12

性別 例数 13 12 12 男性 8 ( 62%) 8 ( 67%) 5 ( 42%) 女性 5 ( 38%) 4 ( 33%) 7 ( 58%)年齢 (歳) 例数 13 12 12 平均値 20.7 25.3 25.5 標準偏差 1.5 6.1 6.6 中央値 21.0 23.0 22.5 範囲 18 - 24 18 - 37 18 - 37体重 (kg) 例数 13 12 12 平均値 69.4 71.9 74.6 標準偏差 9.5 15.7 16.0 中央値 72.6 69.6 73.7 範囲 53 - 84 53 - 96 59 - 114身長 (cm) 例数 13 12 12 平均値 168.5 170.1 168.8 標準偏差 10.3 8.4 8.1 中央値 175.0 172.5 170.5 範囲 151 - 185 157 - 185 155 - 180

人種 例数 13 12 12 白色人種 11 ( 85%) 8 ( 67%) 10 ( 83%) 黒色人種 1 ( 8%) 3 ( 25%) 2 ( 17%) 東洋人 0 ( 0%) 1 ( 8%) 0 ( 0%) スペイン系 0 ( 0%) 0 ( 0%) 0 ( 0%) その他 1 ( 8%) 0 ( 0%) 0 ( 0%)

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3)有効性

有効性の評価は開始時に HAI抗体価が高かった 4例を除く 33例(プラセボ投与群;12例,100mg o.d.

投与群;11 例,100mg b.i.d.投与群;10例)で行った。

①ウイルス学的効果

主要評価項目である A型インフルエンザウイルス感染例(ウイルス分離又は HAI抗体価が 4倍以上上

昇)の割合を表ト-2-1-4に示す。感染例はプラセボ投与群で 8例,100mg b.i.d.投与群で 4例,100mg o.d.

投与群で 2 例に認められ,本剤各用量群を合計した Ro64-0796 治療群はインフルエンザ感染例を抑制す

るものと考えられた(Fisher Exact test;p=0.0656)。なお,ウイルス分離によって感染を確認した症

例は,プラセボ投与群で 12例中 6例であり,本剤治療群では 1例も認められなかった。

表ト-2-1-4 インフルエンザに感染した割合(GS97-802)

プラセボ 100mg b.i.d. 100mg o.d. Ro 64-0796治療群

N = 12 N = 10 N = 11 N = 21

評価例数 12 (100%) 10 (100%) 11 (100%) 21 (100%)非感染例 4 (33%) 6 (60%) 9 (82%) 15 (71%)感染例 8 (67%) 4 (40%) 2 (18%) 6 (29%)p値 a) NA 0.3913 0.0361 0.0656

a) Fisher Exact test NA = 該当せず

副次的評価項目のウイルス放出量(AUC),ウイルス力価(log10TCID50/mL)のピークの結果を表ト-2-1-5

に示す。

Ro64-0796治療群では両群ともウイルス放出は認められず,ウイルス放出の抑制効果が示唆された。

表ト-2-1-5 ウイルス放出量及び力価ピーク(GS97-802)

プラセボ 100mg b.i.d. 100mg o.d. Ro64-0796治療群

N = 12 N = 10 N = 11 N = 21

ウイルス放出量(log10 TCID50・h/mL)

例数 12 10 11 21平均値 134.7 0.0 0.0 0.0標準偏差 173.5 0.0 0.0 0.0最小 0.0 0.0 0.0 0.0下側四分位点 0.0 0.0 0.0 0.0中央値 42.0 0.0 0.0 0.0上側四分位点 279.8 0.0 0.0 0.0最大 438.0 0.0 0.0 0.0

p値 a) NA NA NA 0.0005

ウイルス力価ピーク(log10 TCID50/mL)

例数 12 10 11 21平均値 1.6 0.0 0.0 0.0標準偏差 1.9 0.0 0.0 0.0最小 0.0 0.0 0.0 0.0下側四分位点 0.0 0.0 0.0 0.0中央値 0.8 0.0 0.0 0.0上側四分位点 3.2 0.0 0.0 0.0最大 5.0 0.0 0.0 0.0

p値 a) NA NA NA 0.0004

a) Wilcoxon rank sum test(プラセボとRo64-0796治療群との比較)

NA = 該当せず

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②インフルエンザ症状に対する効果

インフルエンザウイルス感染による諸症状(熱,頭痛,筋肉痛,喉の痛み,咳,不快感,鼻症状)ス

コアの AUCと症状改善期間を表ト-2-1-6に示す。

Ro64-0796治療群における AUCの中央値及び平均値は,いずれの群もプラセボ投与群より低値を示し

た。治療群の中央値(71.2)はプラセボ投与群(191.9)に比較し,有意に軽減した(Wilcoxon rank sum

test;p=0.0284)。

またインフルエンザ症状改善期間において,Ro64-0796治療群の中央値は 68.4時間,プラセボ投与群

は 139.6時間であり,Ro64-0796治療群は統計学的有意に期間短縮効果を示した(Weighted Mantel-

Haenszel test;p=0.0499)。

表ト-2-1-6 インフルエンザ症状に対する効果(GS97-802)

プラセボ 100mg b.i.d. 100mg o.d. Ro 64-0796治療群 N = 12 N = 10 N = 11 N = 21

総症状スコア a)

(スコア・ 時間)

例数 12 10 11 21平均値 237.1 122.7 90.7 105.9標準偏差 185.4 74.2 138.7 111.2最小 0.0 35.0 0.0 0 .0下側四分位点 104.2 71.2 0.0 36.6中央値 191.9 99.6 43.7 71.2上側四分位点 380.3 138.3 112.7 136.0最大 547.2 263.7 460.1 460.1p値 b) NA NA NA 0.0284

症状改善期間 c) (時間)

例数 7 8 1 9平均値 126.0 68.6 - 73.4標準誤差 13.5 12.1 - 11.8最小 68.1 19.8 154.9 19.8下側四分位点 91.4 39.6 - 44.0中央値 139.6 68.1 - 68.4上側四分位点 156.1 101.1 - 110.4最大 156.1 111.6 154.9 154.9p値 d) NA NA NA 0.0499中央値の95% 91.4, 156.1 35.2, 110.4 -, - 44.0, 110.4信頼区間

a) 総症状スコア:熱, 頭痛,筋肉痛,喉の痛み,咳,全身不快感,鼻症状b) Wilcoxon rank sum test(プラセボとRo64-0796治療群の比較)

c) Kaplan-Meier曲線からの推定統計量

d) Weighted Mantel-Haenszel test(プラセボとRo64-0796治療群の比較)- = 算定できず NA = 該当せず

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4)安全性

全ての症例がインフルエンザウイルス接種 24時間前から治験薬の投与を開始し,スケジュールどおり

に試験を終了したため,37例を安全性の解析対象例とした。

①有害事象

治験薬投与開始から投与終了 2日後までに発現した有害事象を投与群別に表ト-2-1-7に示す。

37例中10例(27.0%)13件の有害事象が報告された。その内訳は,プラセボ投与群で13例中 2例(15.4%)2

件,100mg o.d.投与群で 12例中 1例(8.3%)1 件,100mg b.i.d.投与群で 12例中 7例(58.3%)10件であ

った。

100mg b.i.d.投与群で最も多く報告された有害事象は胃腸障害(4 例 7 件)であり,いずれも因果関

係は否定できなかった。100mg o.d.投与群で認められた 1 件は軽度な鼻炎であり,因果関係は「ほとん

どない」と判断された。本試験で重度の有害事象,早期中止例はなかった。また,重篤な有害事象や死

亡例は認めなかった。

②臨床検査値

本試験で認められた特記すべき臨床検査値の異常を表ト-2-1-8に示す。

37 例中 10 例(27.0%)に 11 件の異常が認められた。最も多かったのはリンの上昇であった。これらの

検査値異常は最終検査日にみられており,その後の検査は実施されていない。異常値の発現頻度は用量

には無関係であり,担当医師はこれらの異常を臨床上問題となる値ではないと判断した。

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****)))):新薬承認情報提供時に置き換え

表ト-2-1-7 有害事象(GS97-802)

プラセボ 100mg o.d. 100mg b.i.d. N = 13 N = 12 N = 12

No. (%) No. (%) No. (%) 全体 発現例数 2 (15.4) 1 (8.3) 7 (58.3) 発現件数 2 1 10

胃腸障害 嘔気 1 (7.7) - 2 (16.7) 上腹部痛 - - 1 (8.3) 下痢 - - 1 (8.3) 消化不良 - - 1 (8.3) 消化器不調 - - 1 (8.3) 嘔吐 - - 1 (8.3) 発現例数 1 (7.7) - 4 (33.3) 発現件数 1 - 7 呼吸器・胸郭・縦隔障害

鼻充血 - - 1 (8.3) 鼻炎 - 1 (8.3) - 発現例数 - 1 (8.3) 1 (8.3) 発現件数 - 1 1

生殖系・乳房障害 月経困難症 - - 1 (8.3) 発現例数 - - 1 (8.3) 発現件数 - - 1

感染症・寄生虫症 尿路感染 - - 1 (8.3) 発現例数 - - 1 (8.3) 発現件数 - - 1

傷害・中毒 裂傷 1 (7.7) - - 発現例数 1 (7.7) - - 発現件数 1 - -

注釈: 一人の被験者が同一の有害事象を複数認めた場合は,因果関係最も高いものを選択

表ト-2-1-8 特記すべき臨床検査値異常 a)(GS97-802)

項目(単位) 異常傾向 施設 被験者*)*)*)*) 検査日 異常値 開始時 用法・用量

ALT(GPT)(U/L) 高値 fhhc 9 86.00 10.00 100mg o.d.

高値 fhia 9 74.00 8.00 100mg b.i.d.

血尿 (0 ~ 4+) 高値 fhfj 7 3.00 1.00 100mg b.i.d.

高値 fhic 9 3.00 1.00 プラセボ

好中球(fraction) 低値 fhgc 9 0.36 0.46 100mg o.d.

リン(mmol/L) 高値 fhfi 9 1.68 0.94 プラセボ

高値 fhga 9 2.07 1.19 100mg b.i.d.

高値 fhgc 9 1.74 1.13 100mg o.d.

高値 fhhf 9 1.78 0.97 プラセボ

高値 fhha 9 1.65 1.26 100mg b.i.d.

高値 fhhe 9 1.65 1.13 プラセボ

a)ロシュ社によって規定された異常値(評ト-6,p212-256 Appendix 3 参照)

Page 9: 第Ⅱ相臨床試験 ......有効性の評価は開始時にHAI抗体価が高かった4例を除く33例(プラセボ投与群;12例,100mg o.d. 投与群;11例,100mg b.i.d.投与群;10例)で行った。①ウイルス学的効果

-150-

5)結論

A型インフルエンザウイルス接種前から Ro64-0796 100mg o.d.及び 100mg b.i.d.を 5日間投与したと

ころ,本剤治療群はプラセボ投与群に比較してウイルス感染を抑制した(Fisher Exact test;p=0.0656)。

なお,感染例において本剤治療群にウイルスの放出を認めた症例は 1 例もなく,プラセボ投与群は 6 例

に認めた。また,本剤はウイルスの増殖を抑制し,本剤治療はプラセボ投与群に比較して,ウイルス感

染によるインフルエンザ症状の重症度及び改善期間をいずれも有意に軽減(重症度:Wilcoxon rank sum

test;p=0.0284),又は短縮(改善期間:Weighted Mantel-Haenszel test;p=0.0499)する効果を示し

た。その効果は 100mg o.d.投与群で充分に認められた。

Ro64-0796投与において最も多く認められた有害事象は胃腸障害であり,高用量群の 100mg b.i.d.で 4

例(33.3%)7件に認められ,いずれも因果関係は否定できなかった。しかし,これらの事象によって中止

に至った症例はなく,本剤の安全性は特に問題ないと判断された。

以上のことから,本剤は A型インフルエンザウイルス感染症の発症抑制に有用であると推察された。

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-151-

1-2-2.実験的ヒトインフルエンザ B型に対する予防試験(NP15757)・・・・・・・・・・評価資料ト-7

本試験(プロトコール No.NP15757)は 19 年 月から 月まで,米国の で健康成人志

願者を対象に行った。試験の概略を表ト-2-2-1 に示す。

健康成人 58例をプラセボ投与群(19例),Ro64-0796 75mg o.d.投与群(19例)及び Ro64-0796 75mg

b.i.d.投与群(20 例)の 3 群に無作為(二重盲検)に割り付け,治験薬投与開始 24 時間後に鼻腔内に

B/Yamagata/16/88ウイルス株を接種した。

表ト-2-2-1 実験的ヒトインフルエンザ B型に対する予防試験の概略(NP15757)

項目 内容

治験の目的Ro64-0796の B型ウイルスに対する予防投与後のウイルス学的効果,及び安全性を実験

的に検討する。

試験の種類 プラセボを対照とした無作為割付 1)による二重盲検試験

対象

選択基準

① 健康成人志願者(性,人種は問わない)

② 18歳≦年齢≦65歳

③ 血清 HAI抗体価<1:8

④ 妊娠テストで陰性反応を示す女性志願者

⑤ 試験期間中は避妊に同意できる志願者

⑥ 体重が正常範囲内(1983 Metropolitan Height and Weight Table)にある志願者

⑦ 文書同意が得られ,プロトコールの規定に従うことが可能な志願者

除外基準

① 臨床的に重大な腎臓,心臓,肺,血管,神経,代謝疾患(糖尿病,甲状腺機能,

副腎機能),免疫不全,肝炎又は肝硬変を有する志願者

② 移植を受けた志願者

③ ステロイド又は免疫抑制剤で治療中の志願者

④ 喘息の慢性治療を受けている志願者

⑤ 急性上気道感染,耳炎,気管支炎,副鼻腔炎,又はこられの症状に対して,治験

薬投与 2週間以内に抗生物質や抗ウイルス剤を服用した志願者

⑥ 投与開始前 6ヵ月以内にワクチンを接種した志願者

⑦ 投与開始前 4週間以内に他の治験に参加した志願者

⑧ 大麻使用者

⑨ 薬物中毒,アルコール依存の既往を有する志願者

⑩ B型肝炎,HIV感染症の志願者

⑪ 妊婦,授乳婦又は試験期間中避妊の意志のない志願者

⑫ 薬剤又は接種ウイルス懸濁液の成分にアレルギー反応を示す志願者

⑬ スクリーン検査前の 3ヵ月間に 750mL以上の献血/失血した志願者

目標症例数 60例(プラセボ;20例,75mg o.d.;20例,75mg b.i.d.;20例,)

使用薬剤 Ro64-0796/V01 75mgカプセル,Ro64-0796/V02 プラセボカプセル

用法・用量B/Yamagata/16/88型インフルエンザウイルス接種(接種量 107 TCID50を経鼻的に接種)

24時間前から Ro64-0796カプセルを 1日 1 回又は 2回の経口投与。

使用薬及び併用療法

試験期間中は経口避妊薬,解熱又は症状改善用アセトアミノフェンの投与は差し支え

ない。その他の併用薬と有害事象の治療は医師の慎重な判断に任せる。薬物代謝に影

響を及ぼすことで知られている薬剤(フェニトイン),運動調節作用のある薬剤(メト

クロプラミド),腎排泄型薬剤(プロベネシド)の使用は禁止する。

投与期間 7日間

検査・観察項目及び時期 表ト-2-2-2のとおり。

評価方法(項目)及び

評価基準

-B型インフルエンザ感染の同定-

ウイルス接種後 24時間以降,ウイルスが鼻腔内洗浄液から分離されること,又はベー

スラインに比較して HAI抗体価が 4倍以上上昇することによって同定された。

-有効性-

①主要評価項目:

・ウイルス感染例の割合

②副次的評価項目

・ウイルス力価のピーク

・ウイルス放出期間(ウイルス接種時から放出が認めなくなるまでの時間)

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-152-

・ウイルス放出量(ウイルス接種後 7 日間,鼻腔内洗浄液検体中に放出されたウイル

ス力価を AUC(台形法)で比較する。)

・インフルエンザ感染による総症状スコアの AUC

(被験者及び医療スタッフは熱,筋肉痛,頭痛など 14 の症状について,それらの程

度を 1(軽度に該当),2(中等度に該当),3(高度に該当)で記録し,7つの症状(熱,

筋肉痛,頭痛,喉の痛み,咳,不快感,鼻症状)に複合,点数化し,それらを AUC

(台形法)で表す。)

-安全性-

・有害事象

治験薬投与開始から投与終了後 2 日目(オントリートメント期間)までに発現した有

害事象,及び投与終了 3 日目から観察期終了(オフトリートメント期間)までに発現

した有害事象を観察する。薬剤との因果関係は,「なし」「ほとんどない」「否定できな

い」「多分あり」で評価した。

・臨床検査値

一般血液,生化学,尿検査

-薬物動態-

本概要書ヘの項,1-2-2.「実験的ヒトインフルエンザ B 型に対する予防試験(海外;

NP15757)」に成績を示した。

検定方法

有効性の主要評価項目については Fisher Exact test により,副次的評価項目のウイ

ルス力価及び放出量,総症状スコアについては Wilcoxon rank sum test,期間について

は Weighted Mantel-Haenszel testによりプラセボと比較する。

施設数 1施設( /米国)治験期間 19 年 月~19 年 月

1) 割付調整因子:なし

[対象(ワクチン接種例及び糖尿病患者)について]

19 年 月から実施した実験的ヒトインフルエンザ A 型に対する予防試験評ト-6は,ギリヤード・サイ

エンス社によって行われ,対象者のワクチンに対する規定は除外基準に設けていなかった。

一方,19 年 月から実施した本試験は,ロシュ社により行われ,「投与開始前 6 ヵ月以内にワクチ

ンを接種した志願者」という除外基準を設けた。

先に実施した実験的ヒトインフルエンザ A型に対する予防試験においては 37例の登録者の内,開始時

すでに抗体価が高かった症例(抗体価>1:8)が 4例登録された。これらの症例は有効性評価に影響を与

える可能性を否定できないため,有効性の解析から除外した。従って,その後に実施した本試験では,

ワクチンに関する規定を新たに設けることが必要であると考えられた。なお,本試験においてはシーズ

ンのワクチンの効果を排除できる期間として,6 ヵ月以上(ワクチン接種時期としては 19 年 月)

あれば評価に影響を与えないものと考えられた。

また,本試験においては糖尿病患者を除外基準に設けた。その理由は,19 ~19 年の冬期インフル

エンザシーズンに実施した海外第Ⅲ相治療及び予防試験では,糖尿病患者を除外基準として設定してい

たためである。糖尿病患者は免疫能が弱くインフルエンザに罹患しやすい集団であるとともに,重症化

しやすい集団であり,実験的にウイルスを接種する本試験からは倫理的配慮の面から除外することが妥

当であると考えた。

[症例数の設定根拠]

本試験の目標症例数は 60例(実薬投与群 40例,プラセボ投与群 20例)と設定した。プラセボ投与群

のインフルエンザ感染率が 67%,実薬投与群の感染率が 22%(感染率の差 45%)とした場合,両側 5%の有

意水準で検出されうる例数とした。

なお,プラセボ投与群の感染率は,本試験前に実施された実験的ヒトインフルエンザ A 型に対する予

防試験評ト-6のデータに基づいて推定された。

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-153-

[用法・用量の設定根拠]

本試験は B型ウイルスに対する効果を実験的に明らかにする目的で計画された。なお,本試験の用法・

用量は,同時期に臨床推奨用量の検討を含めた第Ⅲ相臨床試験が行われていたため,当該試験で検討さ

れていた用法・用量を用いることが適切であると判断した。従って,本試験は 75mgの 1日 1 回及び 2回

の 7日間投与で実施した。 設定理由の詳細は本概要書トの項,1-3-2.「外国人における予防試験」に記

載した。

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表ト-2-2-2 検査・観察項目及び時期(NP15757)

検査日

1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目項目 スクリーニング

1~14日

投与前

-1 日 am pm am pm am pm am pm am pm am pm am pm

8日目

am

3-4週

文書同意取得 xxxx

既往歴 xxxx

診察・問診 xxxx xxxx

心電図 xxxx

バイタルサイン xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx

体温 xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx

HIV検査 xxxx

B型肝炎検査 xxxx

尿検査 xxxx xxxx xxxx xxxx

臨床検査 xxxx xxxx xxxx xxxx

薬物中毒検査 xxxx xxxx

妊娠テスト xxxx xxxx xxxx

治験薬投与 xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx

ウイルス接種 xxxx

HAI抗体価 xxxxa)a)a)a) xxxx

鼻洗浄

(ウイルス培養)

xxxxb)b)b)b) xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx

症状スコア xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx

薬物動態

(投与前)xxxx xxxx xxxx xxxx

有害事象 xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxxa) 投与開始前 8週間以内に測定。b) 鼻洗浄液量の採取はウイルス接種 12時間前に実施。

-154-

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-155-

1)症例の内訳

59例を無作為に 3群に割り付けたが,治療を開始した症例は 58例であった。内訳を図ト-2-2-1 に示

す。プラセボ投与群 19例,75mg o.d.投与群 19例,75mg b.i.d.投与群 20例が有効性,安全性の解析対

象となった。

登録症例:59

中止:1

投与開始症例:58

プラセボ:19 75mg b.i.d.: 20

19

19

20

20

19

19

75mg o.d.: 19

図ト-2-2-1 症例の構成(NP15757)

2)被験者背景

安全性の解析対象例 58例の被験者背景を表ト-2-2-3に示す。

表ト-2-2-3 被験者背景(NP15757)

プラセボ 75mg b.i.d. 75mg o.d. N = 19 N = 20 N = 19

性別 例数 19 20 19 男性 9 ( 47%) 9 ( 45%) 11 ( 58%) 女性 10 ( 53%) 11 ( 55%) 8 ( 42%)年齢 (歳)

例数 19 20 19 平均 21.2 22.2 20.4 標準偏差 2.2 2.1 1.4 中央値 21.0 21.5 20.0 範囲 19 - 27 19 - 27 18 - 23 体重 (kg) 例数 19 20 19 平均 70.8 68.7 64.8 標準偏差 8.8 13.7 10.9 中央値 72.0 68.0 63.0 範囲 57 - 83 53 - 96 46 - 89 身長 (cm) 例数 19 20 19 平均 173.5 171.2 171.8 標準偏差 8.6 10.7 8.7 中央値 173.0 168.5 172.0 範囲 160 - 188 156 - 197 148 - 183 人種 例数 19 20 19 白色人種 17 ( 89%) 18 ( 90%) 15 ( 79%) 黒色人種 0 ( 0%) 1 ( 5%) 2 ( 11%) 東洋人 1 ( 5%) 1 ( 5%) 2 ( 11%) スペイン系 0 ( 0%) 0 ( 0%) 0 ( 0%) その他 1 ( 5%) 0 ( 0%) 0 ( 0%)

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3)有効性

有効性の評価は 58例(プラセボ投与群;19例,75mg o.d.投与群;19例,75mg b.i.d.投与群;20例)

で行った。

①ウイルス学的効果

主要評価項目であるB型インフルエンザウイルス感染例は,プラセボ投与群で16/19例(84%),75mg o.d.

投与群で 17/19例(89%),75mg b.i.d.投与群で 16/20例(80%)に認められ,3群間の感染例数に差はなか

った。ウイルス感染を認めた 49例の内,ウイルス分離症例(表ト-2-2-4)はプラセボ投与群の 14/19例

(74%)に対し,75mg o.d.と 75mg b.i.d.を合計した Ro64-0796 治療群は 22/39 例(56%)であった(Fisher

Exact test;p=0.2564)。なお,プラセボ投与群に対する Ro64-0796治療群の相対リスク減少率は 24%

であった。

また,副次的評価項目であるウイルス学的検討(表ト-2-2-5)において,Ro64-0796 治療群はウイル

ス放出量の有意な抑制(Wilcoxon rank sum test;p=0.0332),ウイルス力価ピークの有意な抑制(Wilcoxon

rank sum test;p=0.040),さらに,ウイルス放出期間の有意な短縮(Weighted Mantel-Haenszel test;

p=0.034)を認め,本剤の B型ウイルスに対する抗ウイルス活性が示唆された。

表ト-2-2-4 インフルエンザウイルス分離の割合(NP15757)

ウイルス放出 プラセボ 75mg o.d. 75mg b.i.d. Ro64-0796治療群

N=19 N=19 N=20 N=39

評価例数 19 (100%) 19 (100%) 20 (100%) 39 (100%)

非放出例数 5 (26%) 8 (42%) 9 (45%) 17 (44%)

放出例数 14 (74%) 11 (58%) 11 (55%) 22 (56%)

p値 a) ND ND ND 0.2564

a) Fisher Exact test ND = 実施せず

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表ト-2-2-5 ウイルス放出量,力価ピーク及び放出期間(NP15757)

プラセボ 75 mg o.d. 75 mg b.i.d. Ro64-0796治療群

N=19 N=19 N=20 N=39

ウイルス放出量 (log 10 TCID50・h/mL) 例数 19 19 20 39 平均値 160.8 77.6 38.6 57.6 標準偏差 169.7 108.7 58.0 87.6 最小 0.0 0.0 0.0 0.0 下側四分位点 0.0 0.0 0.0 0.0 中央値 66.9 36.0 10.0 10.0 上側四分位点 324.7 173.2 63.4 80.9 最大 453.5 352.1 215.3 352.1 p値 a)    ND   ND  ND 0.0332

ウイルス力価ピーク(log10 TCID50/mL)例数 19 19 20 39平均値 2.3 1.4 0.9 1.2標準偏差 2.1 1.5 1.0 1.3最小 0.0 0.0 0.0 0.0下側四分位点 0.0 0.0 0.0 0.0中央値 1.8 1.2 0.8 0.8上側四分位点 4.5 2.8 1.9 2.0最大 5.8 4.5 3.3 4.5p値 a)     ND  ND  ND 0.040

ウイルス放出期間 b) (時間) 例数 19 19 20 39平均値 86.2 59.2 44.8 51.8標準誤差 14.4 13.9 11.1 8.8最小 0.0 0.0 0.0 0.0下側四分位点 0.0 0.0 0.0 0.0中央値 83.8 59.8 35.9 35.9上側四分位点 143.5 119.9 83.8 95.9最大 143.6 143.7 143.4 143.7p値 c)       ND   ND  ND 0.034中央値の95%信頼区間 35.9, 143.5 0.0, 119.8 0.0, 71.8 0.0, 71.6

a) Wilcoxon rank sum test(プラセボとRo64-0796治療群の比較) b) Kaplan-Meier 曲線からの推定統計量 c) Weighted Mantel-Haenszel test (プラセボとRo64-0796治療群の比較) ND = 実施せず

②インフルエンザ症状に対する効果

インフルエンザ感染による諸症状(熱,頭痛,筋肉痛,喉の痛み,咳,不快感,鼻症状)スコアの AUC

を表ト-2-2-6に示す。

AUCの中央値及び平均値は,両 Ro64-0796投与群において,いずれの群もプラセボ投与群より低値を

示した。Ro64-0796の 2用量群を合計した Ro64-0796治療群の中央値(95.4)は,プラセボ投与群(125.9)

に比較して低値を示したが,統計学的有意差は認めなかった(Wilcoxon rank sum test;p=0.4969)。

表ト-2-2-6 インフルエンザ症状に対する効果(NP15757)

総症状スコア a) プラセボ 75 mg o.d. 75 mg b.i.d. Ro64-0796治療群 N=19 N=19 N=20 N=39例数 19 19 20 39平均値 157.2 123.2 116.2 119.6標準偏差 134.5 104.8 98.0 100.1最小 0.0 12.0 11.9 11.9下側四分位点 30.0 36.0 30.0 36.0中央値 125.9 95.4 90.0 95.4上側四分位点 298.1 185.0 167.6 180.0最大 389.1 361.8 346.8 361.8p値 b)     ND ND ND 0.4969

a) 総症状スコア = 熱,頭痛,筋肉痛,喉の痛み,咳,不快感,鼻症状b) Wilcoxon rank sum test(プラセボとRo64-0796治療群の比較)

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4)安全性

①有害事象

治験薬投与開始から投与終了 2日後までに発現した有害事象を投与群別に表ト-2-2-7に示す。

58例中 21 例(36.2%)36件の有害事象が報告された。その内訳は,プラセボ投与群で 19例中 7例(9件),

75mg o.d.投与群で 19例中 5例(9件),75mg b.i.d.投与群で 20例中 9例(18件)であり,75mg b.i.d.

投与群の頻度が高かった。

嘔気は 75mg b.i.d.投与群で 3件に認められ,いずれも因果関係は否定できなかった。75mg o.d.投与

群において認められた因果関係が否定できなかった有害事象は 1 件(咳嗽)であった。本試験では重度

の有害事象,早期中止例はなかった。また,重篤な有害事象や死亡例は認めなかった。

表ト-2-2-7 有害事象(NP15757)

プラセボ 75mg o.d. 75mg b.i.d.

N = 19 N = 19 N = 20 No. (%) No. (%) No. (%)

呼吸器・胸郭・縦隔障害 鼻閉 2 (10.5) - 3 (15.0) 咳嗽 1 (5.3) 1 (5.3) - 咽喉痛 1 (5.3) - 1 (5.0) 鼻炎 - - 1 (5.0) いびき - - 1 (5.0)

全身障害・局所様態 注射部位疼痛 2 (10.5) - 2 (10.0) 疲労 - - 3 (15.0) 浮動性眩暈 - 1 (5.3) - 注射部位炎症 - 1 (5.3) - 悪寒 - 1 (5.3) -

胃腸障害 嘔気 - 1 (5.3) 3 (15.0) 上腹部痛 1 (5.3) - - 口内炎 - - 1 (5.0) 歯痛 - - 1 (5.0) 嘔吐 - - 1 (5.0)

神経系障害 頭痛 1 (5.3) 2 (10.5) -

良性・悪性新生物 (嚢胞,ポリープを含む) 嚢胞 - 1 (5.3) -

生殖系・乳房障害 月経困難症 1 (5.3) - -

筋骨格・結合組織・骨障害 筋痛 - - 1 (5.0)

精神障害 神経過敏 - 1 (5.3) -

注釈: 一人の被験者が同一の有害事象を認めた場合,因果関係が高いものを選択し,因果関係が同一の場合は程度の重いものを選択

②臨床検査値

本試験で認められた特記すべき臨床検査値の異常を表ト-2-2-8に示す。

58例中 6例(10.3%)に 8件の異常が認められた。75mg b.i.d.投与群で 4例(6件),75mg o.d.投与群

で 1例(1 件)に認めた。これらの異常値に対しては治療を必要とせず,中止した症例はなかった。75mg

o.d.投与群で報告された ALT の上昇は回復を確認したが,その他の検査値異常については,その後の検

査が実施されていないため確認されていない。また,担当医師はこれらの異常を有害事象と判断しなか

った。

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****)))):新薬承認情報提供時に置き換え

表ト-2-2-8 特記すべき臨床検査値異常 a)(NP15757)

正常範囲

項目(単位) 患者*)*)*)*) 投与群

下限 上限

異常傾向 開始時 異常値 検査日

ALT (GPT) (U/L) ffid 75mg o.d. 0.00 30.00 高値 9.00 91.00 8

二酸化炭素 (mmol/L) ffjf プラセボ 22.00 30.00 高値 27.00 34.00 8

血尿 (0 ~ 4+) ffge 75mg b.i.d. 0 1 高値 0 4 8

リンパ球数 (fraction) ffgi 75mg b.i.d. 0.16 0.45 低値 - 0.08 12

単球 (109/L) ffag 75mg b.i.d. 0.20 0.95 低値 0.30 0.00 8

好塩基球 (109/L) ffhd 75mg b.i.d. 1.83 7.25 低値 1.70 0.90 8

蛋白尿 (0 ~ 4+) ffge 75mg b.i.d. 0 1 高値 0 2 8

白血球数 (109/L) ffgi 75mg b.i.d. 4.30 10.80 高値 7.20 21.40 12

a) ロシュ社によって規定された異常値(評ト-7, p217-278 Appendix 4参照)

5)結論

B型インフルエンザウイルス接種前から Ro64-0796 75mg o.d.及び 75mg b.i.d.を 7日間投与したとこ

ろ,本剤治療群はプラセボ投与群に比較してウイルス感染例の発現を抑制することは確認出来なかった。

しかし,ウイルス分離を確認した感染例の割合は本剤治療群で少なかった。また,本剤のウイルス増殖

抑制効果により,本剤治療群はプラセボ投与群に比較して,ウイルスの放出量(Wilcoxon rank sum test;

p=0.0332),力価のピーク(Wilcoxon rank sum test;p=0.040),放出期間(Weighted Mantel-Haenszel

test;p=0.034)において,統計学的有意な抑制を示した。

安全性に関しては,プラセボ投与群,Ro64-0796 75mg o.d.投与群で有害事象の頻度は同様であった。

一方,75mg b.i.d.投与群で嘔気が 3件(15%)認められ,いずれも因果関係は否定できなかった。しかし,

これらの事象によって中止に至った症例はなく,臨床検査値から特に問題となる異常値は認められなか

ったことから,本剤の安全性は良好と考えられた。

以上のことから,本剤は B型インフルエンザウイルス感染症の予防に有用であると推察された。

Page 19: 第Ⅱ相臨床試験 ......有効性の評価は開始時にHAI抗体価が高かった4例を除く33例(プラセボ投与群;12例,100mg o.d. 投与群;11例,100mg b.i.d.投与群;10例)で行った。①ウイルス学的効果

-160-

1-3.第Ⅲ相臨床試験・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・評価資料ト-8~13,追加参考資料ト-1

本剤の日本人に対する有効性及び安全性を検証する目的で,国内ではインフルエンザウイルス感染症

の発症抑制効果を検討する試験(プロトコール No.JV15824)を多施設共同にて実施した。

一方,米国では成人を対象に臨床推奨用量の検討を含めた大規模な試験(プロトコール No.

WV15673/697)を実施した。また,他に南半球及び米国,欧州の北半球で 65 歳以上の高齢者を対象とし

た試験(プロトコール No.WV15708及び WV15825)と家族(同居)世帯内の感染抑制効果を検討した試験

(プロトコール No.WV15799及び WV16193)を実施した。

1-3-1.日本人における予防試験(JV15824)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・評価資料ト-8

国内での第Ⅲ相臨床試験(プロトコール No.JV15824)は,海外臨床試験とのブリッジング試験として計

画した。ブリッジング試験の妥当性については 19 年 月 日の医薬品機構相談で了承され,プロトコ

ールは海外で実施された第Ⅲ相臨床試験(プロトコール No.WV15697/ 673)を参考に,対象基準,用法・

用量及び評価基準など,同様な設定とした。試験の概略を表ト-3-1-1 に示す。

表ト-3-1-1 日本人における予防試験の概略(JV15824)

項目 内容

治験の目的

Ro64-0796のA又はB型インフルエンザウイルス感染症予防に対する有効性及び安全性を以下の評価項目を指標として,プラセボを対照に二重盲検法にて検証する。

① 臨床的インフルエンザウイルス感染症患者の発症率② 非臨床的及び無症候性インフルエンザウイルス感染症患者発症率③ インフルエンザ様疾患患者発症率④ 有害事象(安全性)

試験の種類 プラセボを対照とした無作為割付 1)による二重盲検試験

対象

選択基準

① インフルエンザ様症状(37.5℃以上の発熱,鼻症状,喉の痛み,咳,筋肉又は関節等の痛

み,倦怠感又は疲労感,頭痛,悪寒又は発汗)を有さない志願者

② 年 齢 :同意取得時に 16歳以上の志願者

③ 性 別 :不問

④ 入院・外来:不問

⑤ 文書による同意が得られた志願者

除外基準

① 入院を必要とする様な重大な疾患(肝,腎,心,肺,血管,神経,内分泌(糖尿病,甲状

腺機能,副腎機能),免疫不全,癌)を有する志願者

② 呼吸器系の細菌感染症を併発している志願者

③ 試験開始前 8ヵ月以内にインフルエンザワクチンが接種された志願者

④ 試験期間中にインフルエンザワクチンの接種を予定している志願者

⑤ 試験開始前 4週間以内に塩酸アマンタジン,ザナミビル水和物の投与を受けた志願者

⑥ 薬物アレルギーの既往を有する志願者

⑦ アルコール依存,薬物中毒の既往を有する志願者

⑧ 試験開始前 3ヵ月以内に他の治験薬が投与された志願者

⑨ 既に Ro64-0796の治験(治療又は予防試験)に参加した志願者

⑩ 妊婦,授乳婦又は妊娠している可能性のある志願者もしくは試験期間中避妊の意志のない

志願者

⑪ 移植を受けた志願者(角膜移植は除く)

⑫ ステロイド(外用剤を除く)又は免疫抑制剤にて治療を受けている志願者

⑬ アセトアミノフェン禁忌(消化性潰瘍,アスピリン喘息,アセトアミノフェン過敏症)の

志願者

⑭ その他,治験責任医師又は治験分担医師が不適当と判断した志願者

目標症例数 300例(プラセボ;150例,75mg o.d.;150例)

使用薬剤 Ro64-0796/V14 75mgカプセル, Ro64-0796/V16 プラセボカプセル

用法・用量 1回につき Ro64-0796 1 カプセルを 1日 1 回,夕食後に経口投与。

使用薬及び併用療法

本試験の有効性及び安全性に関する評価に影響を及ぼすと考えられる下記の薬剤は併用しない。

・アセトアミノフェンを除く解熱鎮痛薬,鎮咳去痰薬,総合感冒薬,抗ヒスタミン薬(これらの市販薬を含む)

・塩酸アマンタジン,ザナミビル水和物

・他の治験薬

Page 20: 第Ⅱ相臨床試験 ......有効性の評価は開始時にHAI抗体価が高かった4例を除く33例(プラセボ投与群;12例,100mg o.d. 投与群;11例,100mg b.i.d.投与群;10例)で行った。①ウイルス学的効果

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投与期間中に発熱,頭痛,筋肉痛などのインフルエンザ症状が激しく,被験者がやむを得ずその治療を必要とした場合は,症状軽減のためアセトアミノフェンを使用してもよい。さらに,持続し改善しない場合は,被験者の倫理的配慮,及び主要評価に与える影響は少ないと判断し,対症療法として他の解熱鎮痛薬,鎮咳去痰薬,抗ヒスタミン薬を投与してもよい。また,有害事象に対する治療薬剤及び併用禁止薬剤以外の薬剤については,治験責任医師又は治験分担医師の判断で併用してもよい。

投与期間 42日間

検査・観察項目及び時期 表ト-3-1-3のとおり。

評価方法(項目)及び評価基準

有効性の評価項目は,Intent-To-Treat(ITT)集団で検討する。この集団は治験薬を少なくとも 1回以上投与された集団である。インフルエンザ感染の確認は鼻/咽頭ぬぐい液の培養結果が陽性の場合,又は HAI抗体価がベースラインから 4倍以上上昇している場合のいずれかと定義する。

-有効性-

①主要評価項目:投与終了日まで観察

臨床的インフルエンザウイルス感染症患者の発症率

・インフルエンザと確認(ウイルスの検出又は投与前に比較し 4 倍以上の抗体価上昇)され,

37.5℃以上の発熱を伴う 2 つ以上のインフルエンザ症状(呼吸器症状及び全身症状)を認

めた症例の発症率を評価する。なお,インフルエンザ症状の定義は以下のとおりとする。

呼吸器症状:咳,喉の痛み,鼻症状

全 身 症 状 :悪寒又は発汗,頭痛,筋肉又は関節等の痛み,倦怠感又は疲労感

②副次的評価項目:

非臨床的インフルエンザ感染症患者の発症率

・インフルエンザと確認(ウイルスの検出又は投与前に比較し 4 倍以上の抗体価上昇)され,

37.5℃以上の発熱を伴うが,2つ以上のインフルエンザ症状(呼吸器症状及び全身症状)が

認められなかった症例,もしくはインフルエンザ感染が確認され,症状を 1 つ以上認める

が,37.5℃以上の発熱を伴わない症例の発症率を評価する。

無症候性インフルエンザ感染症患者の発症率

・インフルエンザと確認(ウイルスの検出又は投与前に比較し 4倍以上の抗体価上昇)された

が,37.5℃以上の発熱及びインフルエンザ症状(呼吸器症状及び全身症状)が認められな

かった症例の発症率を評価する。

インフルエンザ様疾患患者の発症率

・ 来院時においてインフルエンザ様症状を認めたが,感染(ウイルスの検出,又は投与前に比

較し 4倍以上の抗体価上昇)が確認できなかった症例の発症率を評価する。

安全性は治験薬が 1 回でも投与され,投与開始後に安全性に関する観察,検査が 1 回でも実施さ

れている症例を実際に服用した治験薬群へ組み込んで検討した(安全性解析集団)。

-安全性-

・有害事象

治験薬投与後,新たに発現した有害事象,投与開始前からの症状(インフルエンザ症状を除く)が治験中に増悪したもの及び臨床検査値の異常変動は,治験薬との因果関係を問わず有害事象

として取り扱う。薬剤との因果関係は,「なし」「ほとんどない」「否定できない」「多分あり」「あり」「不明」で評価した。

・臨床検査値

一般血液,生化学,尿検査

検定方法有効性の主要評価項目については Fisher Exact test により,副次的評価項目については同検定によりプラセボと比較する。

施設数 33施設

治験期間 19 年 月~20 年 月

1) 割付調整因子:施設で層化

[対象(ワクチン接種例)について]

本試験において実施前のシーズンにおけるワクチン接種例を参加可能とした根拠について,以下に示

した。

ワクチンの理論は,血清中の抗体価がある程度(一般的には 64 倍~128 倍)保有されていれば感染を

阻止し,そして抗体価が高いほど感染阻止の可能性も高まることから,インフルエンザシーズン前にワ

クチン接種によって抗体産生を促し,ある程度以上の抗体価に到達させることである。本邦では,通常

10月から翌年 1月ぐらいの間にワクチン接種が実施されている。ワクチン接種後の抗体価は,一般的に,

接種後 1週間から上昇し始め,2回目の接種 1ヵ月後までにはピークに達し,3ヵ月後まではほぼその値

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を維持,その後徐々に低下の傾向を示す。この抗体価の推移から,ワクチンの予防効果が期待できるの

は接種 2週間後から 3~6ヵ月後までと考えられている。

また,インフルエンザウイルスは抗原変異を起こしやすく,同じ亜型に属するウイルスでも流行のた

びに少しずつ変化すると考えられている。このことから,毎年,ワクチン製造用として選択されるウイ

ルス株は,来たるシーズンの流行ウイルス株を予測して決定され,新たなワクチンが製造されている。

以上のことから,仮に前のシーズンに接種したワクチンの効果が残存していても,その効果は極めて

弱いことが予想され,また,本試験は無作為割付による二重盲検試験であることから,本剤の予防効果

の評価に与える影響は少ないものと考えられた。なお,8ヵ月という数値については,国内の本試験の開

始が最も早い場合は 19 年 月であり,その前のシーズンの流行は 3月でほぼ終結していることから,

4月以降のワクチン接種例を除外するために設定した。

[目標症例数の設定根拠]

海外の予防試験(プロトコール No.WV15673/697)評ト-9 成績より,主要評価項目である臨床的インフル

エンザウイルス感染症患者の発症率は,プラセボ投与群が 4.8%,Ro64-0796 75mg o.d.投与群が 1.2%で

あり,Ro64-0796投与群の相対リスク減少率は 76%であった。この値を参考として本試験の相対リスク減

少率を 80%と仮定した。

本試験の目標症例数の設定においては,海外試験計画時と同様,主要評価項目である臨床的インフル

エンザウイルス感染症患者の発症率をプラセボ投与群 10%と仮定した。また,プラセボ投与群に対する相

対リスク減少率は 80%とし,Ro64-0796 投与群の発現率は 2%と仮定した。このとき全体の発症率は 6%と

なる。実際にこの発症率は予測できないため,治験開始後盲検下において再検討することとした。

この仮定をもとに,10000回のモンテカルロシミュレーションにより,両側有意水準 5%において Fisher

Exact testにて有意となる確率を計算し,表ト-3-1-2に示す。

表ト-3-1-2 プラセボ投与群10%,Ro64-0796投与群2%での検出力(両側有意水準5%)

これより,検出力が 80%以上となるのは,各群で 150例以上必要となる。

試験開始時の設定に基づき, 19 ~19 年冬期インフルエンザシーズンに収集した 189例を盲検下で

検討した結果,主要評価項目である臨床的インフルエンザウイルス感染症患者の発症例は 11 例であり,

全体の発現率は 5.8%であった。これは,本試験開始時に仮定した 6%に近い値である。

従って,19 ~20 年冬期インフルエンザシーズンに向けて目標症例数の変更は行わず,試験開始時

の設定のとおり各群 150例,合計 300例として実施した。

[予防試験実施及び有効性評価項目の臨床的意味合い]

予防試験実施及び主要評価項目の臨床的意味合いについては,インフルエンザ対策の第一選択肢とし

ては,基本的にワクチンによる感染予防である。日本をはじめとする欧米先進国では,高齢者などのハ

イリスク集団及び医療従事者へのワクチン接種を勧めている。ワクチンの有効率は 60~90%といわれるが,

新型ウイルスの出現,抗原性変異を繰り返すウイルス側要因,被接種者の免疫能及び免疫獲得までの期

間,ワクチン生産量の不足など解決すべき問題点もある。本邦では予防対策として塩酸アマンタジンの

使用が認められているが,B型ウイルスには効果がないこと,耐性ウイルスの出現頻度,副作用の問題な

1群の例数 検出力

125例 70.7%

150例 80.9%

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ど充分とは言い切れない。これら問題点を補完する意味において,新しい安全で有効な予防内服薬が望

まれている。

さらに本剤は,薬効・薬理試験よりインフルエンザウイルス感染からの防御作用が示唆され,また,

実験的に行われた予防試験評ト-6,7よりウイルス感染率の低下が認められている。

これらのことから,本邦においてもインフルエンザウイルス感染症の発症抑制効果を検討することの

意義は大きいと判断し,海外同様,有効性の評価項目は臨床的に重要と考えられるインフルエンザウイ

ルス感染症の発症率とし,発熱と呼吸器系及び全身系臨床症状 7症状の内,2つ以上のインフルエンザ症

状を有する臨床的に重要な感染症の発症率を主要評価項目と設定した。

また,副次的評価項目について,非臨床的インフルエンザ感染症患者の発症率は,主要評価項目の基

準は満たさないものの,それに準ずる評価項目として臨床的意味合いがあると判断した。

無症候性インフルエンザ感染症患者の発症率は臨床的な意味合いは少ないものの,本剤は抗ウイルス

剤であることから,感染に至ってもその作用機序であるウイルス増殖阻害作用によって,発症率が抑制

されることを期待して評価項目とした。

インフルエンザ様疾患患者の発症率は,本剤のウイルス感染症患者以外の症例に対する有効性評価の

ために評価項目とした。

表ト-3-1-3 検査・観察項目及びスケジュール(JV15824)

投 与 期 間(日目) 観察期間観 察 項 目

登 a)

時 1a) 8 15 22a) 29 3643日目 a)

又は中止時症状発現時 a) 50 57日目 a)

患者背景 ●

同意取得 ●

投 与

インフルエンザ症状 ● ● ● ●a) ●a)

体 温 ● ● ● ●a) ●a)

血 圧 ● ● ● ●b)

心拍数 ● ● ● ●b)

呼吸数 ● ● ● ●b)

臨床検査 ● ● ● ●b)

抗体検査 ● ●

ウイルス検査 ● ● ● ●

自覚症状 ● ● ● ●c)

他覚症状 ● ● ● ● ●c)

注)8,15,29,36,50日目は原則として来院が可能な症例について実施し,やむを得ず来院出来な

い症例については可能な限り電話にて確認する。

a) 来院日(なお,登録時と 1日目は同日となることがある。)b) 43日目又は中止時点においてインフルエンザ症状を認めた場合は観察する。c) 43日目又は中止時において追跡調査が必要と判断された場合は引き続き当該症状が消失もしくは軽快するまで観察する。

d) 57日目の時点で追跡調査が必要と判断された場合は引き続き当該症状が消失もしくは軽快するまで観察する。

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1)症例の内訳

本試験における症例の内訳を図ト-3-1-1 に示す。登録基準に合致した症例は 308例(プラセボ投与群

153例,75mg o.d.投与群 155例)であった。一方,未登録にも関わらず,治験薬の投与が行われた症例

が 4例(プラセボ投与群;2例,75mg o.d.投与群;2例)あったが,これらの症例は全ての解析から除

外した。

有効性の解析対象となった症例(ITT解析集団)は,登録症例中プラセボ投与群 153/153例(100%),75mg

o.d.投与群 155/155例(100%)の合計 308/308例(100%)であった。また,安全性はプラセボ投与群 153

例,75mg o.d.投与群 155例の合計 308例を解析対象とした。

なお,表ト-3-1-4に示すように,本試験途中で投与後中止もしくは脱落となった症例は,75mg o.d.

投与群の 3例(同意撤回,医師の指示に従わない,有害事象)であった。従って,本試験を中止脱落す

ることなく終了した症例は,プラセボ投与群 153例(100%),75mg o.d.群 152例(98.1%)であった。また,

試験終了 4週間以内の死亡例はなかった。

登録症例:308

プラセボ:153 75mg o.d.:155

中止例:0 中止例:3 有害事象に よる中止例:1

153

153

155

155

図ト-3-1-1 症例の構成(JV15824)

表ト-3-1-4 投与後中止例の内容(JV15824)

Neuraminidase Inhibitor / ( Ro64-0796 ) / jv15824 / Phase3 PROPHYLAXIS解析内容:終了・中止別例数および中止理由別例数解析対象:Safety

----------------------------------------------------------------------------------------------- 早期中止理由 プラセボ 75mg o.d. N = 153 N = 155 ----------------------------------------------------------------------------------------------- 終了例数 153 (100.0%) 152 ( 98.1%) 中止例数 - 3 ( 1.9%)

中止理由 重篤な有害事象が発現し,投与の継続が困難と判断された - 1 ( <1%) 被験者が治験責任医師または治験分担医師の指示に従わない - 1 ( <1%) 被験者または代諾者が投与の中止を希望した - 1 ( <1%) ----------------------------------------------------------------------------------------------Program : $PROD/cdp01288/jv15824/neucdb321_safety.sas / Output : neucdb321_safety.out実行日時: 14JUN2000 13:33

有害事象による中止例:0

投与開始症例:308

未登録で治験薬投与

4例(各群;2例)

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2)被験者背景

安全性解析対象例 308 例の被験者背景を表ト-3-1-5 に示す。年齢,性別,喫煙の有無,体重,入院・

外来の因子中,両群間に有意な偏りはなかった。少数例ではあるが,65 歳以上の高齢者がプラセボ投与

群で 10例,75mg o.d.投与群で 11 例登録された。

表ト-3-1-5 被験者背景(JV15824)

Neuraminidase Inhibitor / ( Ro64-0796 ) / jv15824 / Phase3 PROPHYLAXIS解析内容:患者背景解析対象:Safety

------------------------------------------------------------------------------------------------------ プラセボ 75mg o.d. N= 153 N= 155 検定 統計量/p値 ------------------------------------------------------------------------------------------------------ 年齢 N 153 155 F 0.0073/ 0.9319 平均 34.0 34.2 標準偏差 15.5 14.8 中央値 26.0 27.0 最小-最大 19.0 - 83.0 18.0 - 77.0 年齢1 N 153 155 Wilcoxon 12.8032/ 0.0771 16~19歳 2 ( 1.3%) 2 ( 1.3%) 20~29歳 83 ( 54.2%) 87 ( 56.1%) 30~39歳 29 ( 19.0%) 16 ( 10.3%) 40~49歳 11 ( 7.2%) 26 ( 16.8%) 50~59歳 15 ( 9.8%) 10 ( 6.5%) 60~69歳 4 ( 2.6%) 7 ( 4.5%) 70~79歳 8 ( 5.2%) 7 ( 4.5%) 80~89歳 1 ( <1%) - 年齢2 N 153 155 Wilcoxon 2.7906/ 0.2478 65歳未満 143 ( 93.5%) 144 ( 92.9%) 65~74歳 6 ( 3.9%) 10 ( 6.5%) 75~84歳 4 ( 2.6%) 1 ( <1%) 性別 N 153 155 Chisq 0.1240/ 0.7250 男性 84 ( 54.9%) 82 ( 52.9%) 女性 69 ( 45.1%) 73 ( 47.1%) 喫煙の有無 N 153 155 Chisq 0.2340/ 0.6290 あり 61 ( 39.9%) 66 ( 42.6%) なし 92 ( 60.1%) 89 ( 57.4%) 体重 N 153 153 F 0.0002/ 0.9878 平均 59.3 59.3 標準偏差 12.2 10.5 中央値 57.6 57.7 最小-最大 37.0 - 115.3 39.6 - 99.6 体重1 N 153 155 Chisq 2.0000/ 0.3680 60kg未満 86 ( 56.2%) 85 ( 54.8%) 60kg以上 67 ( 43.8%) 68 ( 43.9%) 不明 - 2 ( 1.3%) 入院・外来 N 153 155 外来 153 (100.0%) 155 (100.0%)  ------------------------------------------------------------------------------------------------------%は,治療群ごとにその集団に対する症例数の割合を算出。F:分散分析,Wilcoxon:Wilcoxon rank sum test,Chisq:χ2検定Program : $PROD/cdp01288/jv15824/neucdb221_safety.sas / Output : neucdb221_safety.out実行日時: 14JUN2000 14:11

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3)有効性

有効性の評価(ITT 解析対象例)は表ト-3-1-6 に示すように,治験薬を少なくとも 1 回以上投与され

た 308例(プラセボ投与群 153例,75mg o.d.投与群 155例)で行った。なお,抗体検査によってウイル

ス感染を認めた症例は 35/308 例(11.4%)であり,プラセボ投与群が 28/153 例(18.3%),75mg o.d.投与

群が 7/155例(4.5%)であった。また,ウイルス分離症例は 75mg o.d.投与群で少なく,プラセボ投与群の

15例に対し,75mg o.d.投与群が 5例であった。

表ト-3-1-6 有効性解析対象例のデータセット(JV15824)

症例数解析対象 投与群

解析対象例 除外例

ITT(Intent-To-Treat)解析対象例75mg o.d.

プラセボ

155

153

0

0

標準(Standard)解析対象例75mg o.d.

プラセボ

152

150

3

3

①臨床的インフルエンザウイルス感染症患者の発症率

主要評価項目として評価した 37.5℃以上の発熱を伴い,インフルエンザ症状が 2 つ以上認められたイ

ンフルエンザウイルス感染症の発症率を表ト-3-1-7に示す。感染症発症例はプラセボ投与群の 13/153例

(8.5%)に対して,75mg o.d.投与群は 2/155例(1.3%)であり,統計学的に有意な差であった(Fisher Exact

test;p=0.00323)。なお,本剤投与群のプラセボ投与群に対する相対リスク減少率は 85%であった。また,

発症率の差を示す絶対リスク減少率は 7.2%であった。

また,治験実施計画書適合例として症例の採否を決定した標準(Standard)解析においても,感染症

発症例はプラセボ投与群の 13/150 例(8.7%)に対して,75mg o.d.投与群は 2/152 例(1.3%)であり,統計

学的に有意な差であった(Fisher Exact test;p=0.00321)。なお,本剤投与群のプラセボ投与群に対す

る相対リスク減少率は 85%であった。

65歳以上の高齢者に感染症発症例はなかった。

表ト-3-1-7 臨床的インフルエンザウイルス感染症患者の発症率(JV15824)

Neuraminidase Inhibitor / ( Ro64-0796 ) / jv15824 / Phase3 PROPHYLAXIS解析内容:インフルエンザウイルス感染症患者の発現率解析対象:ITT

------------------------------------------------------------------------------- Placebo Ro 64-0796 75mg o.d. N= 153 N= 155 ------------------------------------------------------------------------------- インフルエンザウイルス感染症患者: N 153 (100.0%) 155 (100.0%) なし 140 ( 91.5%) 153 ( 98.7%) あり 13 ( 8.5%) 2 ( 1.3%) 抑制効果 NA 85% 抑制効果の95%信頼区間 NA 44.88- 97.02 p値 a) NA 0.003230 リスク差の95%信頼区間(%) NA 2.4 - 12.0 -------------------------------------------------------------------------------- a) Fisher Exact testProgram : $PROD/cdp01288/jv15824/neudb411_itt.sas / Output : neudb411_itt.out実行日時: 20JUN2000 2:42

Page 26: 第Ⅱ相臨床試験 ......有効性の評価は開始時にHAI抗体価が高かった4例を除く33例(プラセボ投与群;12例,100mg o.d. 投与群;11例,100mg b.i.d.投与群;10例)で行った。①ウイルス学的効果

-167-

②非臨床的インフルエンザ感染症患者の発症率

副次的評価項目である非臨床的インフルエンザ感染症(発熱又は症状が主要評価の基準に満たない感

染症)患者の発症率を表ト-3-1-8 に示す。感染症発症例はプラセボ投与群の 8/153 例(5.2%)に対して,

75mg o.d.投与群は 3/155 例(1.9%)であった(Fisher Exact test;p=0.13700)。なお,本剤投与群のプ

ラセボ投与群に対する相対リスク減少率は 63%であった。

表ト-3-1-8 非臨床的インフルエンザ感染症患者の発症率(JV15824)

Neuraminidase Inhibitor / ( Ro64-0796 ) / jv15824 / Phase3 PROPHYLAXIS解析内容:非臨床的インフルエンザウイルス感染症患者の発症率解析対象:ITT

-------------------------------------------------------------------------------------- プラセボ 75mg o.d. N= 153 N= 155 -------------------------------------------------------------------------------------- 非臨床的インフルエンザウイルス感染症患者: N 153 (100.0%) 155 (100.0%) なし 145 ( 94.8%) 152 ( 98.1%) あり 8 ( 5.2%) 3 ( 1.9%) 抑制効果 NA 63% 抑制効果の95%信頼区間 NA -11.99- 93.49 p値 a) NA 0.137000 リスク差の95%信頼区間(%) NA -0.8 - 7.4 -------------------------------------------------------------------------------------- a) Fisher Exact testProgram : $PROD/cdp01288/jv15824/neudb4121_itt.sas / Output : neudb4121_itt.out実行日時: 20JUN2000 2:43

③無症候性インフルエンザ感染症患者の発症率

副次的評価項目である症状を伴わない無症候性インフルエンザ感染症の発症率を表ト-3-1-9 に示す。

感染症発症例はプラセボ投与群の 8/153 例(5.2%)に対して,75mg o.d.投与群は 6/155 例(3.9 %)であっ

た。

表ト-3-1-9 無症候性インフルエンザ感染症患者の発症率(JV15824)

Neuraminidase Inhibitor / ( Ro64-0796 ) / jv15824 / Phase3 PROPHYLAXIS解析内容:無症候性インフルエンザウイルス感染症患者の発症率解析対象:ITT

-------------------------------------------------------------------------------------- プラセボ 75mg o.d. N= 153 N= 155 -------------------------------------------------------------------------------------- 無症候性インフルエンザウイルス感染症患者: N 153 (100.0%) 155 (100.0%) なし 145 ( 94.8%) 149 ( 96.1%) あり 8 ( 5.2%) 6 ( 3.9%) 抑制効果 NA 26% 抑制効果の95%信頼区間 NA -73.99- 83.25 p値 a) NA 0.597000 リスク差の95%信頼区間(%) NA -3.3 - 6.0 --------------------------------------------------------------------------------------- a) Fisher Exact testProgram : $PROD/cdp01288/jv15824/neudb4122_itt.sas / Output : neudb4122_itt.out実行日時: 20JUN2000 2:43

Page 27: 第Ⅱ相臨床試験 ......有効性の評価は開始時にHAI抗体価が高かった4例を除く33例(プラセボ投与群;12例,100mg o.d. 投与群;11例,100mg b.i.d.投与群;10例)で行った。①ウイルス学的効果

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④インフルエンザ様疾患患者の発症率

副次的評価項目であるウイルス感染が確認されず,インフルエンザ様症状を示した症例の発症率を表

ト-3-1-10に示す。症状発症例はプラセボ投与群の 15/153例(9.8%)に対して,75mg o.d.投与群は 29/155

例(18.7%)であった。

表ト-3-1-10 インフルエンザ様疾患患者の発症率(JV15824)

Neuraminidase Inhibitor / ( Ro64-0796 ) / jv15824 / Phase3 PROPHYLAXIS解析内容:インフルエンザ様症状を有するがインフルエンザウイルス感染が確認できない患者の発症率解析対象:ITT

-------------------------------------------------------------------------------------- プラセボ 75mg o.d. N= 153 N= 155 -------------------------------------------------------------------------------------- インフルエンザ様症状を有する患者: N 153 (100.0%) 155 (100.0%) なし 138 ( 90.2%) 126 ( 81.3%) あり 15 ( 9.8%) 29 ( 18.7%) 抑制効果 NA -91% 抑制効果の95%信頼区間 NA -208.54- 11.42 p値a) NA 0.034000 リスク差の95%信頼区間(%) NA -16.6 - -1.2 --------------------------------------------------------------------------------------- a) Fisher Exact testProgram : $PROD/cdp01288/jv15824/neudb4123_itt.sas / Output : neudb4123_itt.out実行日時: 20JUN2000 2:44

4)安全性

①有害事象

治験薬投与開始から治験薬投与終了 2 日後(オントリートメント期間)までに発現した有害事象の種

類,頻度などを器官別に表ト-3-1-11 に示す。

有害事象はプラセボ投与群で 67/153 例(43.8%)156 件,75mg o.d.投与群で 76/155 例(49.0%)155

件認められた(p=0.356,χ2検定)。頻度の高かった有害事象は,75mg o.d.投与群では上腹部痛 15件(9.7%),

下痢 13件(8.4%),嘔気 8件(5.2%),嘔吐 7件(4.5%)などの胃腸障害,及び頭痛 11 件(7.1%),鼻漏 6

件(3.9%)であった。一方,プラセボ投与群では上腹部痛 10件(6.5%),下痢 21 件(13.7%),嘔気 4件(2.6%),

嘔吐 4件(2.6%),頭痛 9件(5.9%),鼻漏 3件(2.0%)であった。

有害事象を重症度(程度)別に表ト-3-1-12 に示す。高度の事象はプラセボ投与群に 1 件(上腹部痛)

認められ,中等度の事象はプラセボ投与群 6例(3.9%)に 8件,75mg o.d.投与群 10例(6.5%)に 10件

と本剤投与群でやや多かった。主な症状は胃腸障害であった。軽度事象の発現件数は,プラセボ投与群

50例(32.7%)に 112件,75mg o.d.投与群 66例(42.6%)に 114件であった。

何らかの治療を要した有害事象を表ト-3-1-13に示す。治験薬中止を要した事象はプラセボ投与群では

認められず,75mg o.d.投与群で糖尿病の悪化の 1 件が認められた。当該症例は 7□歳,男性で 5 年間に

わたり未治療の糖尿病を有しており,発症時期から推測すると,おそらく高齢者に多いインスリン非依

存型糖尿病と考えられた。治験薬投与開始 17日目に口渇,多飲,食欲不振,体重減少という糖尿病の典

型的な症状を発現し,翌日,患者自身の判断で服用を中止した。その 2 日後に治験実施医療機関を受診

し,血糖値上昇,糖尿陽性,尿ケトン体陽性にて糖尿病の悪化と診断された。血糖値上昇は生理食塩液

点滴で改善したが,他の糖尿病症状は投与中止 4日後も継続していた。なお,投与中止 17日後には糖尿

病症状消失が確認された。糖尿病の悪化は本剤投与後に発現しており,本剤との因果関係は完全に否定

はできないと判断された。しかしながら,投与開始前から体重減少がみられていたことを考慮すると,

食事などの他の交絡因子が糖尿病コントロールに影響を与えた可能性も考えられた。

その他,プラセボ投与群で妊娠例が 1 件報告された。なお,糖尿病の悪化及び妊娠例は重篤な有害事

象として報告された。

Page 28: 第Ⅱ相臨床試験 ......有効性の評価は開始時にHAI抗体価が高かった4例を除く33例(プラセボ投与群;12例,100mg o.d. 投与群;11例,100mg b.i.d.投与群;10例)で行った。①ウイルス学的効果

-169-

有害事象に対する治験責任医師/分担医師による因果関係別有害事象を表ト-3-1-14 に示す。治験薬と

の因果関係が「否定できない」と判定された有害事象は,プラセボ投与群 20例(13.1%)29件,75mg o.d.

投与群 15例(9.7%)16件と本剤投与群で少なかった。「多分あり」「あり」と判定された有害事象は各群

2件であった。

65 歳以上の高齢者で因果関係が否定されなかった有害事象は,65 歳から 74 歳でプラセボ投与群に 6

例中 1例 1 件,75mg o.d.投与群に 10例中 4例 9件認められ,75歳から 84歳ではプラセボ投与群に 4例

中 1例 1 件,75mg o.d.投与群の 1例には 2件認められた。本剤投与群において認めた主な事象は胃腸障

害(4件)であったが,いずれも軽度なものであり,65歳未満に認めた有害事象と違いはなかった。

なお,オフトリートメント期間中(投与終了 3 日目以降に発現)に認められた有害事象は,プラセボ

投与群に 11 例(7.2%)15件で,主なものは下痢(3件),頭痛(3件)であり,75mg o.d.投与群に 19例(12.3%)

24件で,主なものは下痢(5件),上腹部痛(3件)であった。

有害事象の詳細については別冊有害事象例一覧表に示した。

Page 29: 第Ⅱ相臨床試験 ......有効性の評価は開始時にHAI抗体価が高かった4例を除く33例(プラセボ投与群;12例,100mg o.d. 投与群;11例,100mg b.i.d.投与群;10例)で行った。①ウイルス学的効果

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表ト-3-1-11 有害事象(JV15824)

-------------------------------------------------------------------------------------------------------- プラセボ (%) 75mg o.d.(%) 器官分類 有害事象 N= 153 N= 155 -------------------------------------------------------------------------------------------------------- 全有害事象 1回以上発現した総症例数 67( 43.8) 76( 49.0) 全有害事象 総発現件数 156 155 胃腸障害 1回以上発現した総症例数 38( 24.8) 50( 32.3) 総発現件数 64 70 下痢NOS 21( 13.7) 13( 8.4) 上腹部痛 10( 6.5) 15( 9.7) 嘔気 4( 2.6) 8( 5.2) 腹痛NOS 8( 5.2) 3( 1.9) 嘔吐NOS 4( 2.6) 7( 4.5) 腹部膨満 3( 2.0) 6( 3.9) 口内炎 4( 2.6) 1( <1) 軟便 2( 1.3) 3( 1.9) 悪心 2( 1.3) 1( <1) 咽喉痛NOS 2( 1.3) 1( <1) 便異常NOS - 3( 1.9) 歯肉炎 - 2( 1.3)

臨床検査 1回以上発現した総症例数 21( 13.7) 19( 12.3) 総発現件数 36 31 白血球増加 3( 2.0) 4( 2.6) 蛋白尿陽性 2( 1.3) 4( 2.6) アルブミン尿陽性 2( 1.3) 3( 1.9) リンパ球数減少 2( 1.3) 3( 1.9) 血中ブドウ糖増加 1( <1) 4( 2.6) 好中球数増加 2( 1.3) 3( 1.9) アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加 3( 2.0) 1( <1) アラニン・アミノトランスフェラーゼ増加 4( 2.6) - 好酸球数増加 2( 1.3) 2( 1.3) 白血球減少 3( 2.0) 1( <1) 好中球数減少 2( 1.3) - 神経系障害 1回以上発現した総症例数 15( 9.8) 14( 9.0) 総発現件数 15 14 頭痛NOS 9( 5.9) 11( 7.1) 浮動性めまい(回転性眩暈を除く) 3( 2.0) 1( <1) 不眠症NEC 2( 1.3) - 呼吸器,胸郭および縦隔障害 1回以上発現した総症例数 9( 5.9) 7( 4.5) 総発現件数 13 8 鼻漏 3( 2.0) 6( 3.9) 咳嗽 4( 2.6) - 鼻出血 2( 1.3) -

感染症および寄生虫症 1回以上発現した総症例数 6( 3.9) 9( 5.8) 総発現件数 6 9 扁桃炎NOS 3( 2.0) 1( <1) 齲歯NOS 1( <1) 2( 1.3) 感染性下痢 - 2( 1.3) 全身障害および投与局所様態 1回以上発現した総症例数 3( 2.0) 9( 5.8) 総発現件数 3 12 悪寒 - 4( 2.6) 倦怠感 2( 1.3) 2( 1.3) 疲労 - 3( 1.9) 胸痛NEC - 2( 1.3) 筋骨格,結合組織および骨障害 1回以上発現した総症例数 6( 3.9) 3( 1.9) 総発現件数 6 3 関節硬直 2( 1.3) 1( <1) 関節痛 3( 2.0) - 生殖系および乳房障害 1回以上発現した総症例数 4( 2.6) 1( <1) 総発現件数 4 1 月経困難症 2( 1.3) 1( <1) 代謝および栄養障害 1回以上発現した総症例数 2( 1.3) 3( 1.9) 総発現件数 2 3 食欲不振 2( 1.3) 2( 1.3)  -------------------------------------------------------------------------------------------------------- いずれかの治療群で1%以上発現した症状を示した。

Page 30: 第Ⅱ相臨床試験 ......有効性の評価は開始時にHAI抗体価が高かった4例を除く33例(プラセボ投与群;12例,100mg o.d. 投与群;11例,100mg b.i.d.投与群;10例)で行った。①ウイルス学的効果

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表ト-3-1-12 程度別有害事象(JV15824)

Neuraminidase Inhibitor / ( Ro64-0796 ) / jv15824 / Phase3 PROPHYLAXIS解析内容:オントリートメント期間:全有害事象(因果関係なし=含む):治療群/最高時程度毎の集計解析対象:Safety

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 治療 有害事象 計(%) 軽度(%) 中等度(%) 高度(%) 重度(%) ブランク(%) ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- プラセボ 1回以上発現した総症例数 67( 43.8) 50( 32.7) 6( 3.9) 1( <1) - 21( 13.7) (N= 153) 総発現件数 156 112 8 1 - 35 75mg o.d. 1回以上発現した総症例数 76( 49.0) 66( 42.6) 10( 6.5) - - 19( 12.3) (N= 155) 総発現件数 155 114 10 - - 31 -----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------オントリートメント期間=投与終了後から2日目まで%は,治療群ごとにその集団に対する症例数の割合を算出。1症例について2回以上同一有害事象が発生した場合には,最高時程度が最も高いものを選択。最高時程度:ブランク(内訳)=臨床検査異常+妊娠Program : $PROD/cdp01288/jv15824/neucdc22d126_safety.sas / Output : neucdc22d126_safety.out実行日時: 20JUN2000 21:14

表ト-3-1-13 治療を要した有害事象(JV15824)

処置内容 R群(総件数 155件) P群(総件数 156件)

無処置 112件 (72.3%) 116件(74.4%)

中止 1件 ( 0.6%) 0件 ( 0%)治験薬の

処置 休薬 3件 ( 1.9%) 5件 (3.2%)

要治療 43件 (27.7%) 40件(25.6%)

R群;Ro64-0796 75mg o.d.投与群 ( )内は総件数に対する割合

P群;プラセボ投与群

表ト-3-1-14 因果関係別有害事象(JV15824)

Neuraminidase Inhibitor / ( Ro64-0796 ) / jv15824 / Phase3 PROPHYLAXIS解析内容:オントリートメント期間:全有害事象(因果関係なし=含む):治療群/因果関係毎の集計解析対象:Safety

---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- ほとんど 否定でき 治療 有害事象 計(%) なし(%) 不明(%) ない(%) ない(%) 多分あり(%) あり(%) ---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- プラセボ(N= 153) 1回以上発現した総症例数 67( 43.8) 39( 25.5) - 21( 13.7) 20( 13.1) 1( <1) 1( <1) 総発現件数 156 87 - 38 29 1 1 75mg o.d.(N= 155) 1回以上発現した総症例数 76( 49.0) 56( 36.1) 1( <1) 23( 14.8) 15( 9.7) 2( 1.3) - 総発現件数 155 102 1 34 16 2 -  ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------オントリートメント期間=投与終了後から2日目まで%は,治療群ごとにその集団に対する症例数の割合を算出。1症例について2回以上同一有害事象が発生した場合には,治験薬との因果関係が最も高いものを選択。因果関係が同一の場合は,最高時程度の最も高いものを選択。Program : $PROD/cdp01288/jv15824/neucdc22d116_safety.sas / Output : neucdc22d116_safety.out実行日時: 14JUN2000 13:51

Page 31: 第Ⅱ相臨床試験 ......有効性の評価は開始時にHAI抗体価が高かった4例を除く33例(プラセボ投与群;12例,100mg o.d. 投与群;11例,100mg b.i.d.投与群;10例)で行った。①ウイルス学的効果

-172-

②臨床検査値

本試験で認められた臨床検査異常変動は有害事象として報告され,その成績は表ト-3-1-11 に示した。

ここでは「医薬品等の副作用の重篤度分類基準」に基づき,投与前後の重篤度グレードを表ト-3-1-15に

示す。本試験においては,特に臨床的に問題となる異常変動は認められなかった。

臨床検査値の詳細については別冊臨床検査値一覧表及び散布図に示した。

表ト-3-1-15 臨床検査値(JV15824)

Neuraminidase Inhibitor / ( Ro64-0796 ) / jv15824 / Phase3 PROPHYLAXIS解析内容:臨床検査値 厚生省による重篤グレード別による前後集計解析対象:Safety --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- プラセボ Ro 64-0796 75 mg o.d. ------------ ------------ ------------ ------------ ------------ ------------ ------------ ----------- 臨床検査項目 BL 0 1 2 3 BL 0 1 2 3 --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- AST(GOT) 0 149( 97.4%) 2( 1.3%) 0 0 0 153( 98.7%) 0 0 0 1 1( 0.7%) 1( 0.7%) 0 0 1 0 2( 1.3%) 0 0 2 0 0 0 0 2 0 0 0 0 3 0 0 0 0 3 0 0 0 0 ALT(GPT) 0 147( 96.1%) 0 0 0 0 149( 96.1%) 1( 0.6%) 0 0 1 3( 2.0%) 2( 1.3%) 0 0 1 2( 1.3%) 1( 0.6%) 0 0 2 0 0 1( 0.7%) 0 2 0 0 2( 1.3%) 0 3 0 0 0 0 3 0 0 0 0 γーGTP 0 150( 98.0%) 0 0 0 0 153( 98.7%) 0 0 0 1 2( 1.3%) 1( 0.7%) 0 0 1 1( 0.6%) 1( 0.6%) 0 0 2 0 0 0 0 2 0 0 0 0 3 0 0 0 0 3 0 0 0 0 Al-p 0 151( 98.7%) 0 0 0 0 155(100.0%) 0 0 0 1 1( 0.7%) 1( 0.7%) 0 0 1 0 0 0 0 2 0 0 0 0 2 0 0 0 0 3 0 0 0 0 3 0 0 0 0 総ビリルビン 0 151( 98.7%) 2( 1.3%) 0 0 0 152( 98.1%) 0 0 0 1 0 0 0 0 1 3( 1.9%) 0 0 0 2 0 0 0 0 2 0 0 0 0 3 0 0 0 0 3 0 0 0 0 BUN 0 152( 99.3%) 1( 0.7%) 0 0 0 153( 98.7%) 1( 0.6%) 0 0 1 0 0 0 0 1 1( 0.6%) 0 0 0 2 0 0 0 0 2 0 0 0 0 3 0 0 0 0 3 0 0 0 0 クレアチニン 0 150( 98.0%) 1( 0.7%) 0 0 0 149( 96.1%) 2( 1.3%) 0 0 1 1( 0.7%) 1( 0.7%) 0 0 1 4( 2.6%) 0 0 0 2 0 0 0 0 2 0 0 0 0 3 0 0 0 0 3 0 0 0 0 白血球数 0 137( 91.3%) 8( 5.3%) 1( 0.7%) 0 0 131( 87.3%) 6( 4.0%) 0 0 1 3( 2.0%) 1( 0.7%) 0 0 1 5( 3.3%) 6( 4.0%) 0 0 2 0 0 0 0 2 2( 1.3%) 0 0 0 3 0 0 0 0 3 0 0 0 0 赤血球数 0 149( 99.3%) 0 0 0 0 149( 99.3%) 1( 0.7%) 0 0 1 1( 0.7%) 0 0 0 1 0 0 0 0 2 0 0 0 0 2 0 0 0 0 3 0 0 0 0 3 0 0 0 0 ヘモグロビン 0 146( 97.3%) 1( 0.7%) 0 0 0 145( 96.7%) 0 0 0 1 1( 0.7%) 0 0 0 1 1( 0.7%) 1( 0.7%) 2( 1.3%) 0 2 0 0 2( 1.3%) 0 2 0 0 0 1( 0.7%) 3 0 0 0 0 3 0 0 0 0 血小板数 0 150(100.0%) 0 0 0 0 149( 99.3%) 0 0 0 1 0 0 0 0 1 0 0 1( 0.7%) 0 2 0 0 0 0 2 0 0 0 0 3 0 0 0 0 3 0 0 0 0 尿蛋白 0 150( 98.0%) 2( 1.3%) 0 0 0 145( 96.0%) 3( 2.0%) 0 0 1 1( 0.7%) 0 0 0 1 2( 1.3%) 0 0 0 2 0 0 0 0 2 0 0 1( 0.7%) 0 3 0 0 0 0 3 0 0 0 0  ---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------Program : $PROD/cdp01288/jv15824/neudc45_safety.sas / Output : neudc45_safety.out実行日時: 14JUN2000 14:07

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5)結論

有効性の主要評価項目である ITT 解析対象集団の臨床的インフルエンザウイルス感染症患者の発症

率は,プラセボ投与群が 8.5%(13/153例)であったのに対し,75mg o.d.投与群は 1.3%(2/155例)と両群

間で有意な差が認められた(Fisher Exact test;p=0.00323)。標準(Standard)解析集団においても

臨床的インフルエンザウイルス感染症患者の発症率は,プラセボ投与群 8.7%(13/150例),75mg o.d.

投与群 1.3% (2/152例)であり,ITT解析対象集団の成績と同様に,プラセボ投与群に対して 75mg o.d.

投与群は発症率が有意に低かった(Fisher Exact test;p=0.00321)。

副次的評価項目である非臨床的インフルエンザウイルス感染症患者発症率,無症候性インフルエン

ザウイルス感染症患者発症率は,いずれもプラセボ投与群に比較して減少を示した。一方,インフルエ

ンザ様疾患患者発症率では,プラセボ投与群に比較して 75mg o.d.投与群が高かった(プラセボ投与群;

9.8%,75mg o.d.投与群;18.7%)。この結果は海外試験成績(プロトコール No.WV15673/697)と比べて

も異なる傾向を示した(プラセボ投与群;1.3%,75mg o.d.投与群;1.0% トの項,1.3.2.外国人にお

ける予防試験,表ト-3-2-9)。国内試験では両投与群とも発症率が高く,特に,75mg o.d.投与群で高い

発症率を認めたことについて,以下のように考察する。

国内試験のインフルエンザ様疾患患者の定義は,37.5℃以上の発熱,またはインフルエンザ症状(呼

吸器症状,全身症状;咳,喉の痛み,鼻症状,悪寒又は発汗,頭痛,筋肉又は関節の痛み,倦怠感又は

疲労感)のいずれかの症状を認めるが,ウイルス感染が確認されない症例である。一方,海外の本定義

は,37.2℃以上の発熱,かつインフルエンザ症状の内,呼吸器症状(咳,喉の痛み,鼻症状)及び全身

症状(悪寒又は発汗,頭痛,筋肉又は関節の痛み,倦怠感)を各々1つ以上を認めるが,ウイルス感染

が確認されない症例である(本概要書トの項,3-3-1.国内と海外の試験方法及び評価基準の比較(表ト

-7-3-1))。このように海外の定義では,臨床的インフルエンザ感染症患者と同様に発熱と 2つのインフ

ルエンザ症状が必須である。この定義の違いが国内試験の発症率を全体的に高くした原因であると考え

る。なお,本概要書トの項,3-3-2.予防試験成績の比較,2)副次的評価項目に海外の定義を用いた成績

を示した(表ト-7-3-8)。この集計によるインフルエンザ様疾患患者発症率は,国内試験がプラセボ投

与群の 2.0%(3/153例),75mg o.d.投与群が 1.9%(3/155例)であり,海外試験の結果(プラセボ投与

群;1.3%(7/519例),75mg o.d.投与群;1.0%(5/520例))と大きな違いは認められなかった。

次に,インフルエンザ様疾患患者発症率が本剤投与群でプラセボ投与群に比較して高くなった原因

について考察する。

上述のように国内試験では,何らかのインフルエンザ様症状を 1 つでも認めた症例は,ウイルス感

染例であれば臨床的インフルエンザ感染症患者あるいは非臨床的インフルエンザ感染症患者として評

価され,ウイルス非感染例であればインフルエンザ様疾患患者として評価された。すなわち,かぜ症候

群やアレルギー性鼻炎などのインフルエンザとは別の原因による鼻症状などを認めた症例も,インフル

エンザ様疾患患者として評価された。この様な症例は,被験者が無作為に割り付けられた本試験におい

て,プラセボ投与群と本剤投与群で同程度存在するものと考えられる。本試験において,1つ以上の何

らかのインフルエンザ様症状を訴えた症例(臨床的インフルエンザ感染症患者+非臨床的インフルエン

ザ感染症患者+インフルエンザ様疾患患者)は,プラセボ投与群が 36/153例,75mg o.d.投与群が 34/155

例であり,両群間に違いはなかった。この内,インフルエンザ感染の割合を同程度とすると,本剤投与

群では本剤の予防効果により臨床的,非臨床的インフルエンザ感染症患者数は,プラセボ投与群に比べ

て少なくなり,これら予防効果の認められた症例はウイルス非感染例となり,結果としてインフルエン

ザ様疾患患者として評価される。すなわち,もともと背景としてインフルエンザ様症状を有する一定の

被験者の内,本剤の予防効果によりウイルス感染例が少なくなった分,インフルエンザ様疾患患者の発

症率が,プラセボ投与群より高くなったことが想定される。

本試験では 65歳以上の高齢者(21 例)において,インフルエンザウイルス感染症は発症しなかった。

以上の有効性成績から,本剤 6週間の予防投与により,発熱及びインフルエンザ症状を伴うインフル

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エンザウイルス感染症の発症抑制効果が確認された。

本試験におけるオントリートメント期間中に認められた有害事象の発現率は,プラセボ投与群で

43.8%(67例/153例),75mg o.d.群で 49.0%(76例/155例)であった(χ2検定;p=0.356)。有害事象

により試験を中止した症例は 75mg o.d.投与群で 1 例(0.6%)であった。このことは本剤の高い忍容性

を示している結果と考える。プラセボ投与群に比較し 75mg o.d.投与群で多く認められた症状は,海外

同様,嘔吐,嘔気及び上腹部痛などの胃腸障害であった。臨床検査及びバイタルサインの推移において

は両群間で同様な傾向であり,特に臨床的に意味のある変動も認められなかった。なお,プラセボ投与

群で報告された有害事象の内,胃腸障害の発現率が 24.8%と器官別でもやや高かった。その原因につい

て明らかではないが,プラセボ製剤の組成の面から,その含有添加物がこれらの発現に影響を及ぼした

可能性は低いと考えられた。

以上の成績から,本剤は成人(16歳以上)に対し,発熱やインフルエンザ症状を有するインフルエン

ザウイルス感染症の発症抑制を示す有効な薬剤であると考えられた。また,本剤投与により,有害事象

に起因する中止例は 1例だけであり,ほとんどの症状は本剤継続・無処置にて消失していたことから,

本剤の安全性は高いと考えられ,有用なインフルエンザウイルス感染症の予防内服薬であると判断され

た。