免疫再構築と hiv における免疫療法[ 中四国エイズセンター部内学習用資料...

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[ 中四国エイズセンター部内学習用資料 2001/02/01 ] - 1 - 免疫再構築と HIV における免疫療法 Bruce D.Walker MD http://hiv.medscape.com/Medscape/HIV/ClinicalMgmt/CM.v15/CM.v15/public/CM.v15-toc.html 翻訳:広島大学医学部小児科 畝井和彦 西村 裕 目次 始めに 慢性ウイルス感染における免疫防御 HIV-1 に対する免疫反応 HIV 感染での免疫調節 細胞障害性 T 細胞 ヘルパーT 細胞反応 中和抗体 HIV に曝露されたが HIV 抗体陰性の特殊例 免疫調節の限界 免疫疲弊 適切なヘルパーT 細胞機能の欠如 免疫からの逃避 宿主の遺伝因子 CD8 への直接感染 HIV 感染症における免疫能のモニター HAART 時代の免疫再構築 一般的免疫能 胸腺の機能 HIV 特異的免疫能 免疫回復炎症症候群 HIV 感染症における免疫療法へのアプローチ サイトカインを使う治療 養子免疫療法 ワクチン療法 免疫増強を狙った治療中断 受動的抗体療法 遺伝子治療 結語

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Page 1: 免疫再構築と HIV における免疫療法[ 中四国エイズセンター部内学習用資料 2001/02/01 ] - 2 - 始めに HIV感染における免疫療法と免疫再構築能への理解には、このウイルスに対する免疫反

[ 中四国エイズセンター部内学習用資料 2001/02/01 ]

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免疫再構築と HIV における免疫療法 Bruce D.Walker MD

http://hiv.medscape.com/Medscape/HIV/ClinicalMgmt/CM.v15/CM.v15/public/CM.v15-toc.html

翻訳:広島大学医学部小児科 畝井和彦 西村 裕

目次

始めに 慢性ウイルス感染における免疫防御 H I V -1 に対する免疫反応 H I V 感染での免疫調節

細胞障害性 T 細胞 ヘルパーT 細胞反応

中和抗体

H I V に曝露されたが H I V 抗体陰性の特殊例

免疫調節の限界 免疫疲弊

適切なヘルパーT 細胞機能の欠如

免疫からの逃避

宿主の遺伝因子

C D 8 への直接感染

H I V 感染症における免疫能のモニター H A A R T 時代の免疫再構築

一般的免疫能

胸腺の機能

H I V 特異的免疫能

免疫回復炎症症候群

H I V 感染症における免疫療法へのアプローチ

サイトカインを使う治療

養子免疫療法

ワクチン療法

免疫増強を狙った治療中断

受動的抗体療法

遺伝子治療

結語

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始めに HIV 感染における免疫療法と免疫再構築能への理解には、このウイルスに対する免疫反

応について詳しい知識が必要である。この 2 年間に明らかになったデータは免疫システム

がウイルスセットポイントや病気の進行の鍵を握っていることを示している。HAART が

感染者に有益であったことは疑い無いが(1,2)、潜在ウイルスは絶滅できないため、HIV 感

染症の治療の次なる躍進は免疫システムの管理になってきつつある。それ故この総説では

慢性ウイルス感染とさらに HIV 感染に対する免疫反応の詳細な説明から始まり、ウイルス

感染に対する最も重要な免疫反応について記述する。その後、今計画されている特異的免

疫療法について述べる。

慢性ウイルス感染における免疫防御 ヒトのウイルス感染からの回復は、感染を絶滅させるというより、むしろ免疫を介した

封じ込めといった方が良い。これは特にヘルペスウイルス属においてそうである。例えば

EB ウイルス感染で伝染性単核球症に罹患した人は、ウイルス血症を免疫反応により押さ

え込む。ウイルスはその後感染者に終生感染しており、時として唾液腺からウイルスが分

離される程である。しかし、正常な免疫反応があれば、ウイルス血症は抑制され病気が進

行することはない。同様の現象は他のヒトウイルスや動物ウイルスでも見られる。

免疫反応がある種の慢性ウイルス感染を封じ込める方法には多大な労力が必要である。

そして液性と細胞性の免疫反応が役割を担う。免疫調節機構をよりよく理解するには動物

実験での慢性ウイルス感染、例えば LCMV 感染が役に立つ。この動物実験モデルでは、

素早く CD8 細胞の増殖が誘導され、最近の研究によればこの増殖はウイルス特異的細胞

障害性 T 細胞(killer cell, CTL とも呼ばれる)によるものである(3,4)。感染実験後 8 日目に

は CD8 細胞の 70%が LCMV 特異的 CTL になり、感染後の数日間は 6~8 時間で倍増する

ことを示している。

その他の重大な免疫機構でウイルス血症を抑制するものとしてウイルス特異的 CD4 細

胞の反応がある。実際、ネズミの実験では慢性ウイルス感染における CTL の反応にはウ

イルス特異的ヘルパーT 細胞が非常に重要であることが示されている(5)。例えば、ネズミ

の LCMV 感染実験では感染によりウイルス血症が引き起こされるが LCMV 特異的 CTL

の増殖により管理下に置かれる(6)。慢性期には、CTL は持続して存在し、ウイルス血症は

押さえられる。CD4 ノックアウトマウスを用いるか抗 CD4 抗体を使用して CD4 細胞を消

滅した状態にすると、実験結果は全く違うものになる(7,8)。このような状況では病気は進行

する。これらの研究や他の研究も、免疫管理は CTL を介して行われ、この細胞が存続し

機能を保ち続けるのは CD4 ヘルパー細胞に大きく依存していることを示している。

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図1:ウイルス特異的ヘルパーT細胞:マウスの LCMV 感染における効果的な免疫調節に不

可欠である。

液性免疫も慢性ウイルス感染を封じ込めるのに役割を担っているが、中和抗体がどれだ

けの比率を担っているかは明らかでない。動物実験では、中和抗体は CTL や CD4 ヘルパ

ー細胞同様に免疫管理に貢献しているが、中和抗体反応が抑制された状況では細胞性免疫

の役割が大きくなってくる(9)。

Key points

CTL はウイルス感染の免疫管理において非常に重要な役割を果たしている。

効果的 CTL 反応はヘルパーT 細胞の反応に依存している。中和抗体も免疫管理に役割を

果たしている。

H I V -1 に対する免疫反応 HIV-1 感染は進行性かつ残忍な免疫機構の破壊を感染者にもたらすが、ある感染者では

抗ウイルス療法をしないのに持続的に長期間ウイルスを封じ込めておける。1970 年代の終

わり頃から症例報告があり、その患者の血中ウイルス量は検出感度以下で、抗ウイルス療

法は必要ないという。毒性の弱いウイルスに感染した(10-12)、あるいは遺伝的な要因(13-17)

が非進行性か緩徐な進行に関係していることがあげられているが、これらのみで長期緩解

状態を説明できない。長期非進行者の存在は、宿主の免疫機構がこのウイルスを首尾よく

封じ込めることができることを示唆していて、このウイルス感染に対する宿主の免疫反応

をよりよく理解し、感染に対して新しい戦略的療法で戦う理論的解釈を与える。

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慢性 HIV 感染に対する研究は液性及び細胞性免液ともに行われている(18)。ウイルス感

染に対する免疫反応の 2 つの武器は明確に確立されているが、データによるとこれら 2 つ

は共に重要であることが浮かび上がってくる。他の慢性ウイルス感染では、CTL が感染に

よって引き起こされウイルス複製を抑制するのに少なくとも 2 つの仕組みが関与する。一

つは、感染細胞の直接的な破壊である(19)。細胞がウイルスに感染すると、ウイルスはその

細胞の機構を使って新しいウイルス蛋白を生成する。これらの細胞はウイルス複製の構造

物として働き、新しいウイルスは細胞から出芽して他の細胞に感染し、こうして感染が維

持される。同時にこれらのウイルス蛋白が生成され新しいビリオンとして集められ、ウイ

ルス蛋白の蛋白分解が細胞質で起こる。蛋白分解された断片は小胞体に運ばれ、そこでク

ラス・分子と複合体を形成し、細胞表面に運ばれる。ウイルス蛋白(通常 9~10 のアミノ酸)

がクラス I 分子の割れ目に結合すると、免疫機構の信号となり、この細胞に外界の侵入物

がいることを示す。これが引き金となり CTL が TCR を介して直接認識して感染細胞を殺

す。CTL は新しいウイルスが複製される前に感染細胞を認識できる(19)。これは非常に重要

な点で、ウイルスはまだ被覆されておらず傷つけられやすい。感染細胞が新しいウイルス

を複製する前に融解されると、ウイルスは排除される。

図2:CTL によるウイルス血症のコントロール。CTL の破壊力と子ウイルスの産生

CTL の標的となるウイルスの正確な蛋白は、少なくとも部分的には明らかになっている

(20)。これらは個々により相違があり、それぞれのクラス I 分子の細胞表面上によっている。

それぞれの HLA クラス I 対立形質はわずかに違いがあり、そのため結合するウイルスの

ペプチドは違いがある。50 以上のクラス I 対立形質が今では同定されていて、少なくとも

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同じ数だけのウイルスの結合するペプチドがある。これは所謂「クラス I 拘束」という現

象である。例えば p17 ペプチドのシークエンスである SLYNTVATL は HLA A2 拘束に示

され、細胞表面に HLA A2 対立形質複合体として表示される(21)。HLA A2 に結合する殆ど

のペプチドは 2 番目にロイシンを、9 番目にロイシンかバリンを持ち、これらはこの対立

形質に重要な接極残子である。SLYNTVATL は HLA A2 がなく HLA A3 を持つ人に発現

するであろうか。答えは否である。なぜならば、HLA A3 にペプチドが結合する接極子は

HLA A2 のそれとは構造的に違うからである。ペプチドと HLA の反応の厳密な特異性は

小さなシークエンスの変化、例えば 1 つのアミノ酸の違いでも CTL の反応から逃れるこ

とを説明している。

CTL が感染細胞を殺すのと同時に、CTL は可溶性因子を産出して HIV 複製を抑制する

(22)。これらには RANTES, MIP-1α, MIP-1β等があり(23)、その他のものも充分に同定さ

れている(24,25)。これらの因子の放出は、感染細胞の微少環境に重大な影響を与え、引金と

なり TCR が細胞を認識する。RANTES, MIP-1α, MIP-1βは HIV-1 が新しい細胞に感染

するのを、その細胞表面に表示されているある種の coreceptor と競合することにより、そ

の細胞に侵入するのを抑制している。新しいウイルスが複製された後に CTL がその感染

細胞に到着すると、それらの可溶性因子が他の細胞に感染するのを抑制すると考えられる。

この様に CTL は 2 つそれぞれの機構で HIV を調節する。1 つは直接の感染細胞の融解で

あり、もう 1 つは可溶性因子の放出である。それぞれの相対的な役割はまだ不明である。

図3:CTL による HIV-1 複製の阻害

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CTLに加えて、細胞性免疫は常にウイルス特異的ヘルパーT細胞の発生が関わっている。

この細胞は慢性ウイルス感染において CTL の維持に必要である(6)。ヘルパーT 細胞はウイ

ルス蛋白を認識し、それは抗原提示細胞のライソゾーム中で溶解され 12~17 のアミノ酸ペ

プチドにまで分解されたものである。これは細胞表面にクラス II 分子に結合するペプチド

と共に提示される。

図4:ウイルス特異的ヘルパーT細胞:メカニズム

クラス II 分子が結合する接着面とウイルスが結合するペプチドはホットドッグとロー

ルパンに例えられる。クラス II 分子がロールパンで両法の端を開き、ペプチドがホットド

ッグでその両方の端に掛かるのである。ウイルスのペプチドがクラス II 分子接着面に結合

すると、ヘルパーT 細胞のウイルスへの反応を引き起こすが、これは CD4 細胞が活性化さ

れ効率的な免疫反応を引き起こすことによる。どのように相互の関与があるのかは議論が

あるところであるが、おそらく細胞同士の直接的な作用とサイトカインを介した遠隔的な

ものとがあるのだろう。

HIV に対する抗体のほとんどはビリオンの破片に対するものであり、正常ビリオンの構

成成分に対するものはあまりなく、抗ウイルス効果は少ない(26)。しかし、中和抗体は HIV

感染でも認められ、いくつかの違ったエピトープに対するものがある。これらの中にはエ

ンベロープ蛋白に対するものもあり、この蛋白はウイルスの細胞侵入に必要である V3 ル

ープに対するものや CD4 との結合に必要な CD4 結合蛋白がある(27)。中和抗体には、その

エンベロープの直線構造に対して作られるものもあれば 3 次元構造に沿って作られるもの

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もある。中和抗体反応の限界の 1 つは、抗体は典型的な型特異性を持つため、1 つの型の

ウイルスとしか反応せず他のものとは交叉反応しないことだ。これは明らかに免疫管理機

構と密接な関わりがある。ウイルスは宿主内で変異し続け免疫機構から逃れているのだ。

Key Points

免疫機構が HIV を認識するのは、ウイルス蛋白がクラス・分子の断片に結合すること

に依る。それに反応して、CTL は活性化され感染細胞を誘拐したり可溶性因子を放出し

たりしてウイルスを抑制する。CTLの反応はウイルス特異的ヘルパーT細胞で維持され、

ヘルパーT 細胞は抗原提示細胞に提示されたウイルス蛋白を認識する。

症例 1

25 歳の男性が救急病院を受診し、ウイルス性髄膜炎の診断についてのセカンドオピニ

オンを求めた。患者は入院の 5 日前まで健康で、その後徐々に発熱、顎下腺と頚部のリ

ンパ節腫脹、頭痛が出現した。身体の不調を感じていたが、ボストンからカリフォルニ

アの旅行は中止せず、受診 3 日前に飛行機に搭乗した。搭乗中、倦怠感と頭痛が増悪し、

ソルトレイクで降り、地方の救急診療所を受診した。体温は 101F で、軽度の羞明と髄

膜刺激症状を認めた。腰椎穿刺が行われたが、初圧と蛋白、糖は正常であったが WBC 50

であり、全てリンパ球であった。同様の症状を持った人との接触はなかったとのことで

あった。ウイルス性髄膜炎と診断され、特別な治療を受けずにホテルに泊まった。翌日、

頭痛と倦怠感は増悪しており、発熱も持続していた。ボストンに戻ることにして、到着

して大学病院の救急部へ受診し、セカンドオピニオンを求めた。

詳細な問診の後、約 2 週間前に行きずりのセックスを防御なしでしたことを認めた。

所見では、病気様であり、羞明があった。体温は 102F、発疹はなく軽度の頚部及び顎

下腺リンパ節腫脹があり、咽頭に異常なく肺野は清、心は雑音認めず、腹部に異常なく、

軽度の頚部硬直を認めた。検査所見では異型リンパ球を認めず、肝機能正常、Monospot

試験は陰性であった。防御ないセックスをしたことがあったので、HIV 感染の検査が行

われた。血漿中 HIV-RNA 定量が検査され、結果は 1,000,000 コピー/ml 以上であり、

急性期 HIV 感染と考えられた。

H I V 感染での免疫調節 免疫機構は HIV 感染に対して抗ウイルス効果を持つのだろうか。免疫を基本とした治療

が有効な結果が得られていることから、この問いに対する答えは「ある」だ。1~2 年前で

すらこれは活発に議論されていた。ある者は HIV に対する免疫反応は効果なく、無関係な

ものだと言った。しかし、最近の多大な研究では、動物実験も人での感染も含めて免疫反

応はウイルスセットポイントの設定や病気の進行を遅らせるのことが否定できない。これ

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らの研究は免疫療法についての可能性を示唆する。

細胞障害性 T 細胞

HIV に対する免疫反応が重要であるという強力な証拠は、HIV 感染者で非進行性の患者

の研究から示された。ある患者は HIV に感染して 20 年になるが、抗ウイルス療法を受け

たことはないにもかかわらず、血中ウイルス量は低いまま保たれていて(定量 RNA で検出

限界程度かそれ以下)、強力なウイルス特異的 CTL 反応が検出される(28,29)。これらの反応

はクラス I 拘束を受ける多くのエピトープ(換言すれば 9~10 のアミノ酸によるウイルスペ

プチドでクラス・結合面に提示される)で調節されている。さらなる研究では CTL の重要

性は、急性期 HIV 感染者のウイルス血症の軽快は CTL の出現と相関していることからも

示唆される(30,31)。CTL は HIV 感染で多くの標的を持つが、Gag への反応がウイルス血症

の臨床経過と最もよく相関した(32-34)。

ここ 1 年の新たな研究では CTL の抗ウイルス効果を明らかに認めさせる。ある研究で

はフローサイトメトリーを用いて直接 CTL を可視化した。4 分子のクラス・ペプチドによ

る 4 量体が蛍光標識されたストレプトアビデンに結合したため、その 4 量体が直接 T 細胞

レセプターを介して CTL に結合していることが示される(35)。

図5:HLA クラスⅠペプチド四量体:CTL の直接の像

これらの CTL は非常に正確に定量化され、この技術が HLA-2 陽性者に適用されると、

ウイルス量と CTL に負の相関があることが示される。つまりウイルス量が少ない程 4 量

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体は多く標識され、それ故 CTL の反応が強い(32)。この研究は数名の治療していない患者

に適用され、明らかに免疫による防御が示された。

前述のごとく CTL の抗ウイルス効果は、感染細胞を直接殺すのと同様に可溶性抗ウイ

ルス因子を放出しても行われる。これら 2 つの機構は、グランザイムやパーフォリンを放

出して感染細胞を殺すのと、感染細胞で産出された新生ウイルスを RANTES, MIP-1α,

MIP-1βを放出することで抑制する。RANTES, MIP-1α, MIP-1βはマクロファージ指向

性 CCR5(または R5)ウイルスに対して活動性があり、他の可溶性因子は T 細胞指向性

CXCR4(または X4)に対して活動性がある(36)。これらの因子は CTL の分泌顆粒に同居して

おり、T 細胞レセプターに感染細胞が認識されると、共に放出される(37)。in vitro の研究

では CTL は非常に大きな抗ウイルス効果を持つことが示され、少なくともある研究では

Gag とエンベロープ特異的 CTL は RT-特異的 CTL より強力な抗ウイルス効果を持つこ

とが示唆された(19)。さらなる可溶性抗ウイルス因子の同定は、CD4 細胞で産出されるのも

形質細胞で産出されるのも(38)、新しい免疫療法へと導く。

最近の SIV に感染したアカゲザルの研究では CTL 反応はウイルスセットポイントの維

持に関係している証拠を示すデータがある(39,41)。慢性感染を起こしたアカゲザルに抗 CD8

抗体を注入して CD4 を枯渇させると、ウイルス血症は劇的に上昇し、これは CD8 が回復

するまで持続する。4 量体を用いて直接 CTL を可視化する分析を行えば、CTL の回復は

ウイルス血症の減少と相関していることが示される。急性期 HIV 感染動物でも CD8 は減

少しており、もれはウイルスを充分抑制できないこと相関している。これらの動物ではウ

イルス量は減少することはないが、これは急性期感染においてウイルス血症が減じるのは

感染細胞の枯渇によるのではなく、活動性 CD8 細胞による免疫反応の結果であることを

結論づける証拠となる(41)。これらの in vivo でのデータは CTL の抗ウイルス効果を最も直

接証明するものであり、故にこの細胞が免疫修復療法において抜きん出て重要なものであ

る。

ヘルパーT 細胞反応

上記の研究では CTL がウイルス血症の管理の中枢であることが示された。しかし長期

間を観察したの研究では CTL 反応は病気の進行と共に減じる(42-44)。ならば何が CTL の活

動の大きさ、その維持を管理しているのであろうか。他の慢性ウイルス感染の研究からで

は、その有力な候補はウイルス特異的ヘルパーT 細胞である。HIV-1 感染ではヘルパーT

細胞機能の異常が起きており、これは CD4 細胞の数が減じてくる前からそうである。そ

して感染が進行した患者での免疫修復の最も劇的な苦境は HIV-1 特異的ヘルパー細胞反

応がないことである(45)。しかし、感染者でウイルス血症が抑制されていて抗ウイルス療法

を行っていない者の中にはヘルパーT 細胞の HIV-1 Gag への反応が強いことが示されて

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いて、ヘルパーT 細胞の Gag への反応の強さとウイルス量には負の相関が示された。つま

りヘルパーT 細胞の反応が強い者はウイルス量が少ないのである(46-48)。この細胞は活性化

されると RANTES, MIP-1α, MIP-1βといったケモカインを放出し、これらの抗ウイルス

効果のためもあって直接の抗ウイルス効果が発現する(25,37)。もっとも、CTL 反応による抗

ウイルス効果の方が優れており、ヘルパーT 細胞は HIV 感染では二次的な免疫防御を果た

している。従って免疫療法とワクチンにおいてヘルパーT 細胞と同様に CTL も考慮するこ

とが重要である。

中和抗体

これらの細胞性免疫に加え、液性免疫も又ウイルス血症の管理に寄与しているであろう。

中和抗体は直接フリーウイルスを中和し、エンベロープ糖蛋白中のエピトー(ウイルス中の

12~17 のアミノ酸)を標的とする。これらの反応部分は最も変異しやすい部分であり、エン

ベロープ、V3 ループ、CD4 結合部分 、また構造的に決定されるエピトープ(ウイルスの

構造部分による)があげられる(27)。長期非進行者の少なくとも一部は強力で広範囲な中和

抗体反応が検出されている(48)。しかし、中和抗体の HIV 感染における役割は余り明らか

でない。それも中和反応が低いか検出されない感染者でウイルス血症が抑制され、抗ウイ

ルス療法を行っていない者がいるからだ(28,29)。モノクロ-ナル抗体を使った初期の実験で

は中和能力のある抗体はチンパンジーの実験感染を阻止できることが示されたが、必要量

が多く、防御できる期間は限られていた(50)。問題の一部は恐らく in vivo での抗体の大部

分はウイルスエピトープの重要でない部分へのものであり、中和能力がないことであろう

(26)。より効果があり交叉反応範囲の広い中和抗体反応がネズミの実験では得られていて(51)、

人間にも導入できないかという希望がある。

H I V に曝露されたが H I V 抗体陰性の特殊例

HIV 感染における免疫機構の抗ウイルス効果は、HIV に強く曝露されたがずっと感染し

ないままである者からもより深く証明される。HIV に対する免疫反応が、その中に少なく

とも一部は検出されていて、一過性感染であったか検出限度以下の感染であることを示唆

している。この表現形質は最初にガンビアで売春婦から発見された。HIV に強く曝露され

ている 6 人の内の 3 人は CTL 反応が検出されたが持続的に HIV 抗体は陰性であり、これ

らは感染ウイルスを駆逐したと考えられた(52)。最近の研究では曝露されていて感染してい

ない者の中に強力な抗ウイルス効果が CD8 に認められ(53)、さらに実際にウイルスを抑え

込んだのである(54)。これらの者は細胞性免疫が検出され、免疫によるウイルス封じ込めの

その他の例であることを示す。さらなる証明が必要である。

Key Points: HIV感染者の免疫システムで CTLと同時にヘルパーT細胞にも抗ウイルス

効果があり、重要な役割を果たしているという証拠がある。中和抗体の役割ははっきり

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していない。

症例 2

ある患者は直ちに推定される診断について相談に来たが、ウイルス RNA 検査は認可

を受けていないことと、継続的に抗体が陽性化するのを見ていく必要があると告げられ

た。また抗ウイルス療法開始についても相談した。アドヒアランス、副作用、費用につ

いて話し合い、直ちに治療を開始する勧告に従った。患者はまた急性期 HIV 感染におけ

る HIV 特異的免疫反応についての抗ウイルス効果を調べる臨床研究に参加することも

同意した。

免疫調節の限界 上記の研究から免疫機構は HIV に対抗する能力を発揮することが示されるが、ウイルス

血症は治療を行わない感染者の大多数で進行し、病気は増悪する。CTL 反応は初期には存

在するが時間と共に減じてゆき、それは病気の進行に一致する。効果的な免疫機構が欠如

する原因は今だ明らかでないが、数種類の因子が関与している。これらの因子の多くに打

ち勝って衝撃的な免疫療法を得る必要があり、これらの理解が議論には必要である。

免疫疲弊

数多くの研究によると CTL 反応は病気の進行と共に低下し(22)、この低下は直接ウイル

スセットポイントに影響を及ぼす。免疫の疲弊がこの低下を招いているのだろう。動物実

験では抗原量が持続して高ければ CTL 反応は最大となりその後低下する(55)。これは HIV

でもそうである。少なくとも幾らかの研究では HIV 感染で初期の CTL クローナル反応が

低下していることが示されている。これは特異的 VβT 細胞受容体サブセットの消失によ

って裏づけられている(56,57)。しかし抗原量が高い場合 CTL は持続していることを示して

いる研究もある(58)。その他の問題点としてリンパ球の寿命があり、テロメア長を測定した

実験では「老衰」が問題だという(59,60)。この様なデータは、T 細胞反応を増幅させること

は効果があることを示している。

適切なヘルパーT 細胞機能の欠如

CTLが維持できないのはヘルパーT細胞の機能が適切でないことと関係していると思わ

れる。上記のごとくウイルス特異的ヘルパーT 細胞は慢性感染期において CTL を維持する

のに必要であり、ウイルス特異的ヘルパーT 細胞の相対的低下はこれらの反応の維持を損

なうものである(6)。さらに最近のネズミの実験では潜伏期でも in vivo でCTLは存在でき、

この表現形質はヘルパーT 細胞機能が異常な場合により顕著である(5)。これらの結果は、

ヘルパーT 細胞反応の回復は CTL の有効な反応を回復させその他の効果的な免疫反応へ

と導くのかもしれない。

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免疫からの逃避

免疫監視機構からの逃避は、免疫が有効でなくなる大きな要因である。HIV はレトロウ

イルスであり、ウイルスの逆転写酵素が正確でないためすぐ変異株が産生される。CTL の

エピトープで 1 つの変異があるだけでも、クラス I 分子結合面を変化させるか T 細胞レセ

プターとの相互作用に重要な面を変化させれば、充分に CTL の認識を逃れる。長期間の

研究では HIV 感染でもこれは起こり得る。またエピト-プの配列の変異が抗原処理を妨害

するという研究もあり(29,30)、エピトープ配列の変異抗原処理に障害を与えるという研究者

もいる。残基の変化が HIV 特異的 CTL の認識を低下させるとは断言できない。病気の進

行に伴い免疫を逃れるその詳細はまだ不明である(61)。免疫からの逃避は免疫を基にした治

療においては問題点となりうるが、変化していないエピト-プを攻撃目標とするのは治療

法として 1 つの方法ではある。残念ながら免疫機構に攻撃されるエピトープで変異に耐え

られないもののデータはほとんどない。

HIV は他のウイルス同様に、細胞を免疫攻撃から直接受けにくくさせる。ウイルスの

Nef 蛋白は HLA クラス I 発現を抑制することが示された(62,63)。細胞上にクラス I が発現

するにはウイルスのペプチドが提示され、CTL が認識しなければならず、HIV はこれら

の細胞によって融解されるのを免れる(64)。Nef によるクラス I 発現の抑制が細胞の保護に

どのように関わっているのか in vivo では明らかでないが、in vitro ではウイルスに有利で

ある。

宿主の遺伝因子

宿主の遺伝因子も又 HIV に対する免疫反応を規定し、感染者の病気の進行が違う事を説

明するものであろう。ケモカインのコレセプターの多型性も進行の違いに影響を与えるだ

ろうが、その影響は小さい(65-67)。HLA クラス I 分子の多型性が進行に影響を与えること

が長い間予想されてきた。HLA クラス I 分子はウイルスのペプチドを提示して免疫機構に

認識させ、ある対立形質は提示能を変化させる。これまでの数多くの研究は HLA クラス I

対立形質が進行の大きな危険因子に関係していることを示している。長期間にわたる感染

者群の遺伝因子の研究では、HLA クラス I 対立形質に多型性がある方が予後がよい(17)。

ウイルス血症の管理について CTL の重要性を示すものもある。これらの研究では進行は

免疫反応の幅の広さによるという。加えて特異的な HLA 対立因子で早期進行するものは

Cw4 と B35 であることも同定した(17)。MHC 対立因子と免疫反応、病気進行との関連を

さらに研究することが極めて重要である。

C D 8 への直接感染

最近、HIV が直接 CD8 細胞に感染する可能性があることを示す研究が発表された(68)。

活性化された新生児の CD8 細胞は in vitro で R5(マクロファ-ジ指向性)系列の HIV に

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[ 中四国エイズセンター部内学習用資料 2001/02/01 ]

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感染されるが、X4(T 細胞指向性)には耐性である(69)。また In vitro の研究で、異種抗原か

抗CD3/抗B7.1 でCD8 を活性化させるとCD8 と同時にCD4 も発現する。このようにHIV

の CD8 細胞への直接感染は免疫障害へのもう一方の経路であり、特に小児に典型的な急

速進行に関与しているのであろう。大人の CD8 細胞も HIV に感染できると云う報告もあ

り、病気の進行に伴い CD8 が減少してくることと関係しているのかも知れない(70)。しか

し、in vivo で HIV に感染した CD8 が認められないので、CD8 減少の大きな機構ではな

い。

Key Points

感染者の殆どは免疫機構が病気の進行を抑えられない。ヘルパーT 細胞機能が異常を

呈し、CTL 反応は時間と共に減少する。宿主側の要因(特異的 HLA 対立形質)とウイル

ス側の要因(変異により免疫から免れる)の 2 つが免疫による管理を失うのに関与してい

るのであろう。

H I V 感染症における免疫能のモニター これは間もなく状況が変わるであろうが、現在 HIV 特異的免疫性は一般臨床では測定で

きない。全免疫能は幾つか測定されている。ある種の遅延型皮膚過敏反応等である。この

検査は主に注入された抗原に対するヘルパーT 細胞の反応を見るものであり、ストレプト

キナーゼ、ムンプス、カンジダ等がある。この検査の反応性は典型的には病気の進行と共

に減弱し、ウイルス定量検査が出てくる前の時代には、病期を評価する代用マーカーとし

て用いられた。皮膚反応は HAART により回復してくるが、この検査は直接の臨床的相関

はない。他の一般的検査も CD4 数を含めて全体的な免疫能の評価にはなるが限界がある。

ウイルス特異的免疫能検査、例えば CTL 検査、ヘルパーT 細胞機能検査、中和抗体反応

検査等はいつもできるものではない。実際、HIV-1 特異的免疫性を測定する標準的検査法

はない。前述のような検査法は研究機関でのみ可能であり、それぞれの研究者がそれぞれ

の方法で行っている。標準的で感度が高く再現性のよい検査法ができると、非常に効果が

あがる。これは近い将来、新しいフローサイトメトリー分析の出現により可能となり(32,71)、

免疫を基にした治療法の臨床試験において極めて重要な役割を果たすであろう。

Key Points

現在の免疫の監視指標は全免疫能を見るものであって、HIV 特異的免疫反応を見るも

のではない。

H A A R T 時代の免疫再構築 一般的免疫能

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[ 中四国エイズセンター部内学習用資料 2001/02/01 ]

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HIV は免疫機構への感染であり、治療を行わないと容赦ない免疫機能の低下が起こる。

感染は胸腺とリンパ節の構造の破壊を伴うので(72)、感染早期に不可逆的な損傷が起こり、

抗ウイルス療法の効果は限界があるものの、それにより免疫が回復するかもしれないと予

想されてきた。HAART が導入されてから、免疫機構によるウイルス血症の管理の効果が

直接測定できるようになった。日和見感染が劇的に減ったというデータも蓄積された。こ

れらの知見により、免疫再構築能について消極的ではあるが、ある程度の楽観論がでてき

た。

抗ウイルス療法を行ってウイルス量が持続的に抑制されている患者は CD4 数が増加す

ることで、HAART により免疫再構築が初めて示された。劇的な CD4 数の増加を示す者も

いて、日和見感染と死亡の危険性の減少に関わっている。

HAART により免疫再構築が起きるというさらなる証拠は、HAART を施行している患

者で長期的にナイーブ細胞の定量を行った研究からも示される。1997 年、重要な報告がお

こなわれた。Autran ら(73)は、進行した患者で初めて抗ウイルス療法を受ける例について

CD4 細胞表面の分子を検討した。AZT, ddC, RTV 治療により 12 ヶ月の調査中ウイルス量

は速やかに減少した。治療開始 2 週間で CD4 数は速やかに上昇し、徐々にその上昇は緩

やかになり 10%の直線的上昇となった。平均CD4 数は 12%から 18%に上昇し、正常は 45%

ではあるが、開始時より実質的に増加した。この増加は最初の 4 ヶ月間は主にメモリー細

胞の増加によるものであったが、その後ナイーブ CD4 数の著明な増加によるものであっ

た。後半の CD4 増加は、CD4 活性化マーカーの減少に関係していて、抗ウイルス療法に

よりウイルス複製が抑制されたことと合致する。機能面の研究では、抗原とマイトーゲン

を駆逐する T 細胞増殖反応の増加は認められたが、HIV 特異的 T 細胞反応の回復は認め

なかった。

HIV感染者におけるHAARTを施行している例での他の研究でも同様に後期にナイーブ

細胞が増加し、免疫反応が増強して抗原を駆逐することが報告されている。HIV 特異的免

疫反応の増強も報告されたが、ごく控えめなものである(74-76)。HAART によって増加した

ナイーブ細胞が HIV を攻撃するよう誘導できれば、極めて有望なものとなる。最近の他の

研究では HAART により、より広範囲の T 細胞回復を認めるという報告があるが、これは

常に認められるわけではない(77)。HAART によりナイーブ細胞が増加することと、HIV 特

異的免疫性は回復しないことが感染者へのワクチンについての理論的根拠となっている。

また、最近のある報告では HAART はある種の病原体に対して機能的免疫反応を回復さ

せるという。Komanduri ら(78)は HAART を受けている感染者の CMV に対する免疫反応

を研究した。彼等は、CMV による末端器の障害は CMV 特異的リンパ球反応の欠如によ

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[ 中四国エイズセンター部内学習用資料 2001/02/01 ]

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るところが大であり、この反応はガンシクロビルと HAART による治療で速やかに検出さ

れるようになると述べた。これは断片的な分析ではあるが、抗原特異的免疫反応の回復は

ウイルス血症を強く管理することで達成されることを示唆している。

(畝井 和彦)

胸腺の機能

胸腺の機能は加齢とともに低下し、成人ではその存在も機能もないと長い間考えられて

いた。これは加齢とともに胸腺組織の量が進行性に減少するヒトや動物のモデルでの観察

に基づくもので、骨髄抑制の強い化学療法後ではナイーブな細胞の再生は小児より成人の

ほうが遅延し、弱々しい(79)。HIV 感染ではこの進行した胸腺機能不全が胸腺に対する直接

的なウイルスの影響の結果として強調されると仮定されている。HIV は胸腺上皮だけでな

く、胸腺細胞にも感染することが可能である(80)。

免疫再構築に貢献している胸腺の可能性に関して楽天的な理論を示している新しい研究

がある。この研究は CT スキャンで胸腺の体積を測定し、フローサイトメトリーでナイー

ブ細胞の頻度を測定するもので、McCune らは少なくとも一部の HIV 感染成人では胸腺

が活動しているという初めての証拠を示した(81)。豊富な胸腺組織が HIV-1 陽性の 99 例中

47 例で認められ、年齢は 20 歳から 59 歳であった。また高い CD4 数と高い割合の循環し

ているナイーブな CD4 陽性リンパ球もみられた。40 歳かそれ以上の成人で豊富な胸腺組

織の存在が HIV 感染者から認められたのは、おそらく HIV による CD4 数の減少に反応し

て胸腺がその機能を高めたためと考えられている。最近の研究では胸腺は成人でも活動性

があり、HAART により感染者において胸腺からのナイーブな前駆細胞が出され、最終的

には免疫機能は復旧されるという楽天的な考えが示唆されている(82)。

免疫再構築に関する一つの主要な考えは細胞の老化に関して、である。リンパ球は細胞

分裂をおこすためには限られた能力しかないことがわかっている。それぞれの複写の繰り

返しに引き続き、テロメアの長さが減少するが、これが細胞の複写の能力を評価する手段

である。HIV 感染は CD8 におけるテロメアの長さの縮小と関連しており、これらの細胞

が過度に働くことが示唆されている(83)。このことは CD4 では観察されていないが、体内

でこれらの細胞の寿命が縮小している原因である可能性がある。最近の研究の一つで HIV

に対する活性化された免疫反応の長期的な関係について示されている(84)。55 歳の長期非

進行感染者が、ウイルス量は検出できないのにもかかわらず CD4 数が進行性に減少した。

この患者は 15 年以上も感染が持続しており、CD4 数の減少のため、抗ウイルス治療が開

始された。彼の CD4 数の上昇はきわめて緩徐で、そういった反応が見られたのは、延長

した免疫活性と年齢の増加が胸腺の機能不全や不活化と関連しているからかもしれない。

この患者でCD4 減少の原因を突き止めることとHAART がCD4 数を増やせるかどうか確

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[ 中四国エイズセンター部内学習用資料 2001/02/01 ]

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認することがとても重要であろう。同様に、年をとった時に抗ウイルス治療なしにウイル

ス血症を管理できている患者を経過観察することや、免疫荒廃の証拠があるかどうか確認

することも重要であろう。

H I V 特異的免疫能

今まで議論なされてきた内容として、HIV-1 特異的な免疫反応、とりわけ細胞免疫反応

はウイルスのセットポイントを決定するのに重要な役割を果たし、長期非進行患者ではこ

の反応がウイルスの調節に重要であるかもしれない。つまり、これらの反応を復旧させる

能力が免疫再構築の鍵となるにちがいない。残念なことにほとんどの研究が、感染の慢性

期に治療が開始され、長期間におよぶ HAART があっても細胞免疫の再構築はほとんど見

られない。これは HIV-1 特異的なヘルパーT 細胞の反応にとっては特に明白であり(73-75)、

それに比して CMV のような他の病原では細胞免疫反応は増加している。この結果から説

明されることは何だろうか。

一つの可能性は HIV-1 特異的なヘルパーT 細胞の反応は、未治療の感染の急性期にかな

り障害されるかもしれないということである。急性 HIV 感染症は強力に HIV-1 特異的な

ヘルパーT 細胞の反応を誘導し、効果的な抗ウイルス免疫反応を組織化することが予測さ

れる。しかし、HIV-1 が選択的に活性化された CD4 細胞に感染し(83)、これらの細胞はウ

イルス量がもっとも多い期間中優先的に感染の標的となる可能性がある。これらの細胞の

減少や機能不全が CTL の活性化も含めたその後の経過を損なうのかもしれない。あるい

は、これらの HIV 特異的 CD4 細胞は急性感染の早期に高濃度の抗原存在下で、活性化が

引き起こす細胞死をむかえるのかもしれない(84)。

図 6:活性化された HIV 特異的なヘルパーT 細胞は CTL の活性化に必要とされる。

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[ 中四国エイズセンター部内学習用資料 2001/02/01 ]

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もしこの仮説が真実ならば、急性 HIV 感染症患者における早期 HAART の介入を行え

ば、HIV-1 特異的ヘルパーT 細胞機能は高まった状態になるかもしれない。これは実際に

見られていることで、抗体が陽性化するより前に有効な抗ウイルス治療で治療された患者

の一部では、Gag に反応して、HIV-1 特異的ヘルパーT 細胞機能を増強させるが、これは

抗ウイルス治療を行っていないのにウイルス血症がコントロールされている患者にみられ

る反応と類似している(46,47)。それに比して感染の後期で治療を開始された患者では、

HAART はこのような反応の増大を容易にはおこせないようである。ヘルパーT 細胞の反

応の増幅を誘導する HAART の役割は確立されていない。我々は急性感染後 6 ヶ月で治療

を開始した患者でこの反応がみられた患者を経験したが、抗体陽性化の後に治療を開始さ

れた患者の研究が、そのような反応が予期されうる頻度を決定するために必要である。同

様に、これらの反応の誘導が臨床的に有益かどうか決定することも不可欠であろう。

感染の慢性期に始められた、有効な抗 HIV 療法はいくつかの例では HIV-1 特異的な免

疫能が低下することにも注意が必要である(71,87,88)。これはたぶん慢性期の反応を調節する

ための抗原刺激が、持続的にないためである。そのような点から、長期間にわたる HAART

中に完全にウイルス血症が抑制された患者では治療的免疫強化が提案される。

免疫回復炎症症候群

HAART に伴う免疫機能の修復は、すでに存在する病原に対する増強された免疫反応に

よる有害反応も起こしうる。そういった免疫再構築症候群はまだあまり理解されていない

が、さまざまな状況において報告されてきた。ある報告では、CD4 数が 50 /mm3 以下の

5 例に indinavir治療開始後 1-3 週間で発熱と強いリンパ節炎を呈した例が呈示された(89)。

リンパ節生検では予想されていなかった Mycobacterium avium の複合感染による部分的

なリンパ節炎の所見であった。HAART が記憶された CD4 の増加をもたらし、

mycobacterium 特異的な細胞性免疫反応が高度の細菌量によって増幅された結果による

症候群の可能性がある。

免疫再構築症候群は「免疫回復硝子体炎」と名付けられ、CMV(サイトメガロウイルス)

による網膜炎と関連してきた(90)。1997 年に、CD4 数が予測された 50/mm3 の閾値よりも

多い患者における数例の CMV 網膜炎が報告された。これらの患者は CMV 網膜炎の診断

よりも先に全例 HAART を 4-7週間受けており、CD4 数の増加にもかかわらず CMV 網

膜炎を発症したため、HAART が不十分であると解釈されていた。しかし、これらの患者

のほとんどでは典型的な網膜炎の診断の前に眼の感染症が存在した可能性の期間は不明で、

潜伏期間にあった疾患が発症したのは、増強された免疫にその原因があると推測された。

Zegans ら(91)はHAARTを受けた8 例で一過性の硝子体の炎症を報告し、そのうち6 例で、

CMV 網膜炎の存在が知られた。硝子体炎は HAART 開始後 1 ヶ月から 8 ヶ月の間で見ら

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れ、その際に CD4 数は十分に増加していた。その後の 1 ヶ月から 13 ヶ月の経過観察では

CMV 網膜炎の再発は見られなかった。他の報告ではまた、病気が進行した患者での

HAART で黄斑の嚢腫様浮腫と網膜上の膜形成のため視力の低下が見られたという(92)。し

かし、全体的には HAART の普及で新規の CMV 網膜炎は劇的に減少しており、このこと

から CMV の持続的な免疫コントロールのためにバランスが崩れていることが示唆されて

いる。CMV 網膜炎は抗 CMV 治療がなくても、進行した HIV 感染症をもった患者におい

てはプロテアーゼ阻害剤単独で軽快することが報告されている(93)。

ウイルス性肝炎の悪化もまた抗 HIV 療法と関連しており、薬剤性肝障害とウイルス性の

肝炎を区別することが困難なために特に複雑となりうる。このことは、ウイルス性肝炎で

あることが判明していた患者と同様に HCV 感染が診断されていなかった患者でもみられ

ることである。免疫修復への関連性は HCV 抗体陰性で、HCV-RNA 陽性の患者が HAART

により急性肝炎をおこし、抗体が産生されたという報告でみられた(94)。さらに、急性肝炎

発症の時点で血清中 HCV RNA の増加が見られなかったことは、この症候群が HIV 特異

的な免疫の回復と関連していることを示唆している。HCV 感染は HIV 感染者の 8%から

23%に見られるため、この症候群は、管理に関しては最適な状態で解決されるべき重要な

問題である。

総じて、HAART に関連した炎症症候群は楽観視できるものとして考えておいてよいだ

ろう。前述の例では機能的な免疫が、ウイルス血症のコントロールで復旧され、HIV 感染

における特異的な免疫を増加させるような、これからの試みに論理的根拠を提供している

ことを示している。

Keypoints:HAART で治療された患者は典型的には、初期にメモリーCD4 細胞の上

昇がみられ、後でナイーブ CD4 細胞の上昇がみられる。最近の研究では胸腺は成人で

も活動しており、免疫再構築に貢献していることが示されている。一般の病原体に対す

る免疫反応が改善される一方(時に逆に炎症性症候群を呈することにもなるが)、HIV 特

異的な反応の増強はまれで、急性 HIV 感染の期間に HIV 特異的ヘルパーT 細胞の減少

がおこるためかもしれない。

Case Study:Part3

臨床治験の前後で、血液に対して検査が行われ、Gag と Env 蛋白に対する HIV-1 特

異的ヘルパーT 細胞の反応の証拠がみつかった。はじめはどちらの蛋白に対する免疫反

応もみられなかった。患者はアドヒアランスとさらなるウイルス特異的免疫評価のため

に、毎週通院する。3 週間してウイルス量はよくコントロールされ、同時に Gag 特異的

ヘルパーT 細胞の反応の増加がみられ、これは長期非進行患者でも類似した所見がみら

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れる。

H I V 感染症における免疫療法へのアプローチ HIV 感染症において、免疫を再構築させる試みはこの疾患が免疫不全症として最初に特

徴づけられたために、いろいろと行われてきた。早期の試みとしては、同種あるいは共通

遺伝子の骨髄移植、リンパ球輸注、治療的ワクチン、サイトカイン輸注、これらの組み合

わせである。一過性の遅発型過敏反応はよく見られたが、一貫した臨床的効果はみられな

かった。ウイルス血症を制御できないことがこれらの初期の研究でわかっただけであった。

免疫再構築の見通しは HAART の登場でより現実的になり、いまや多数の方法が疾患の経

過を大きく変えつつある。

サイトカインを使う治療

HIV 感染者におけるもっとも広く研究されている研究の一つがインターロイキン

2(IL-2)である。IL-2 は活性化された T リンパ球によって分泌されるサイトカインで、リ

ンパ球の増殖と成熟を調節する。その産生は HIV 感染により減少し、感染者における免疫

治療の可能性があるものとして実験が行われてきた。IL-2 の最初の研究は 10 年以上も前

に行われたが、投与量が多かったためその毒性ばかりが目立っていた。しかし、投与量を

減らし、間欠的投与を行うことで臨床治験が可能となり、IL-2 治療は HIV 感染者におい

て CD4 数を劇的に増加させることがわかってきた。

IL-2 のコントロールのないパイロット研究では CD4 の治療前値が 200/mm3 より多い

患者においては CD4 数の増加が維持されたが、IL-2 による免疫活性は一過性のウイルス

量の増加とも関連した(95)。さらに大規模のコントロール研究では CD4 数が 200/mm3 よ

り多い 60 例の HIV 患者に対して、無作為に IL-2+抗レトロウイルス剤治療(1 種類か組み

合わせのヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤)あるいは抗 HIV 剤のみで比較が行われた(96)。

IL-2 は 8 週間ごとに 5 日間、持続点滴で投与された。6 サイクルの治療後、IL-2 投与群で

は CD4 数が、428±25 から 2 倍の 916±128 となったが、抗 HIV 剤単独の治療群では減

少した。CD4 数のベースラインが高い方が IL-2 治療に対して反応がよく、一日あたりの

IL-2 量が少なくても CD4 数の増加を維持できた。ウイルス量の変化に関しては有意差は

みられなかった。この研究は臨床的な利点を断定できるものではなかった。

さらに最近、簡潔な IL-2 治療方法も実験されており、CD4 数の増加に関しては確実で、

毒性も少ない。無作為に IL-2 の皮下注射(1.5か 7.5μIUを 4 週間毎か 8 週間毎)を行うと、

CD4 数が増加を維持し、とくに量が多い方法でも頻繁な方法でも投与量依存の毒性はみら

れなかった(97)。CD4 数は投与間隔が開いても維持されていた。CD4 数の増加が維持され

ることが臨床的に有益かどうかはさらなる研究が必要である。

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IL-2 治療の臨床的有用性の証明は重要な目的を残している。3 つの臨床治験の結果を総

合すると、CD4 数は調節され、ウイルス量はやや少なくなり、IL-2 治療を受けた患者の

病状の進行や死の危険性を減らすことが可能である。しかし、IL-2 治療による CD4 の増

加が直接的に免疫適格性を高めるかどうかはまだ不明である。進行した HIV 感染症は、メ

モリーCD4 細胞よりもナイーブ CD4 細胞を急速に減少させる。ウイルス感染の免疫的コ

ントロールは免疫適格細胞の広範囲な蓄えに依存するが、HIV 感染症はまず T 細胞の減少

を引き起こす。IL-2 の管理は HIV 感染者のナイーブ細胞とメモリー細胞の両方において

ポリクローナルな増加と関連しているが、T 細胞のレセプターの分析によって証明されて

きたのは、T 細胞の蓄えの減少は少なくとも短期間では IL-2 によっては修復されないとい

うことである(77)。もし CD4 細胞が危機的に減少した場合、IL-2 治療によっては修復でき

ず、他の免疫療法と組み合わせた IL-2 の投与も考えられるべきである。本当に IL-2 治療

が臨床的に有益かどうかに答える 2 つの大規模な治験が計画されてきた。ESPRIT は国際

的な第Ⅲ相の治験で、CD4 の治療前値が 300/mm3 より多い 4000 例の抗 HIV 療法を受け

ている患者に対して IL-2 の皮下注射+抗HIV療法を行う群と抗HIV療法だけを行う群に

分けたものである。データはまだ設定されていない。SILCAAT はより小規模の第Ⅲ相の

類似した治験で、対象はより病状の進行した患者であり(CD4 数が 50/mm3 より多いもの)、

少量の IL-2 の皮下注射で開始される。この治験は 1999 年春に開始された。

IL-2 はまた感染者において持続しているリザーバーからウイルスをあふれ出させる機

構があることが提唱されている。HAART により長期間ウイルスが抑制されていても CD4

の中に HIV-1 が存在する証拠がたくさんの研究室から出されている(98,99)。ウイルスは完全

な形でこのプールの中に潜伏して存在し、細胞が活性化された時に感染力のあるウイルス

粒子を産生できるような能力を保っている。長期にわたる間欠的な IL-2 の投与は CD4 細

胞を活性化させ、HAART の存在下ではビリオンは他の細胞に感染できない。実際、IL-2

+抗 HIV 療法を受けた患者と抗 HIV 療法のみの患者とで、潜伏感染した CD4 細胞の休止

の周期の実験では、前者の方がおおむね対照群よりも感染するウイルス量が少ない[100]。

しかし、現在まで臨床治験の一部として IL-2 投与群の一部で HAART を中止した例では

ウイルス学的再発がおこっている。この再発は潜行感染細胞のリザーバーが減少はしてい

たものの根絶されていなかったためと推察されている。

聖域からもウイルスを排除し、根絶させるという考えは消えつつあるが、IL-2 が根絶よ

りも免疫学的コントロールの状態を達成することを補助するかもしれないといった新しい

データがある。HIV 感染で表現される免疫能の欠如の中心は、ウイルス特異的ヘルパーT

細胞の反応の相対的な欠如であり、ウイルス特異的ヘルパーT 細胞によって産生される鍵

となるサイトカインの一つが IL-2 である。さらに、前述したように IL-2 は感染細胞から

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ウイルスを誘導することができる可能性がある。この 2 点を免疫増強のための治療戦略と

してどのように一つに組み込めばよいのであろうか。ナイーブ細胞が HAART の経過中に

発生してくるのは今や間違いないことであり、これらの細胞が HIV を認識するべく教育さ

れると仮定するのが理にかなっている。しかし、HAART の経過中では、ナイーブ細胞が

発生した時に HIV-1 に対して効果的な免疫反応をおこさせるために十分な抗原が存在し

ないかもしれない。さらに、IL-2 欠乏のために適切に機能しない慢性感染におけるウイル

ス特異的ヘルパーT 細胞も存在するかもしれない。少なくとも理論的には IL-2 はとくに有

益である。それは機能不全ではあるが存在するヘルパーT 細胞を外因性に補助することと、

潜在的なリザーバーからのウイルス抗原の産生を刺激することである。

他のサイトカインは臨床治験を通して見いだされるかもしれない。これらの中で IL-12

は試験管内で HIV 特異的な CTL 機能を増加させることが示されてきた(101)。IL-12 は活性

化された抗原提示細胞で主に産生され、Th-1 型の細胞性免疫反応の発達を促進すると考え

られている。この反応の型は CTL 活性を促進し、感染者におけるウイルス血症の調節に

おいて明らかに重要である。IL-12 はまた、ナチュラルキラーT 細胞の溶解を促進し、試

験管内で HIV 特異的リンパ球の増殖を促進する(102)。リンパ球による IL-12 の産生がHIV

感染者で非感染者に比して減少している事実は、このサイトカインが HIV 感染における重

要な免疫機能を増加させている可能性があることを示唆している。試験管内では HIV 特異

的な CTL 溶解を増加させることが可能である(101)。IL-12 は養子免疫療法研究のために

HIV 特異的な CTL を拡大する点でもまた有用である。サイトカインはまた、ワクチンの

補助剤としての適応性も発見されており、HSV-2 に対する防御免疫のネズミのモデルで

DNA ワクチンと IL-12 の組み合わせが最近報告されている(103)。

総じて HIV 感染者におけるサイトカインの環境も治療手段として有用である。感染が

進行すると IL-2 の産生が減少し、IL-4 の産生が増加することが示されている(104)。進行し

た HIV 感染症における抗原刺激反応の呼び戻しの障害は、試験管内では抗 IL-4 抗体を投

与すると回復し、IL-4 欠乏マウスでは増強された CTL 活性が確認されている(105)。この研

究は生体内での IL-4 産生の減少が免疫学的に有益かどうかという問題を投げかけている。

もう一つのサイトカイン治療と免疫再構築への可能なアプローチは IFN-γが CD8 の細胞

性免疫を増加させ、CD4 を減少させたマウスのモデルにおいてカリニ肺炎を治癒させたと

いう研究によって示唆されている。そうした結果から IFN-γが CD4 の減少した免疫の障

害のバランスをとることを可能にしているかもしれないことが示される。しかし、IFN-

γ治療は用量依存性の毒性が知られており、その全体的な HIV における臨床的有用性が積

極的には追求されていない。

Key Points:IL-2 はリンパ球の増殖と成熟を調節している。間欠的少量の IL-2 治療は

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[ 中四国エイズセンター部内学習用資料 2001/02/01 ]

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CD4 数をかなり増加させるが、その臨床的な重要性はまだ不明である。理論上は、IL-2

は HIV 特異的ヘルパーT 細胞を補助することと、潜在性リザーバー内のウイルスの応答

を刺激することの両方で HIV 感染の免疫コントロールを促進しているのであろう。

養子免疫療法

最も初期の養子免疫療法のプロトコールは共通遺伝子のリンパ球と、あるいは骨髄の輸

注で、HIV 感染に対して双子の間で行われた。明らかな効果はなかったが、この研究はさ

らなる研究への道を開いた。自家細胞の感染者への養子免疫細胞移植のはじめの研究の一

つで Klimas らは(106)CD8 を自家移植した。その CD8 は試験管内で PHA と IL-2 の存在下

で増幅されていた。対象者の CD4 数は 50 から 200/mm3 で自分自身の細胞(研究室で増幅

されている)を 5 回輸注し、最後の輸注の時に IL-2 も投与した。この治療は毒性はなかっ

たが、効果の点でははっきりとした結論は得られず、またウイルス量測定が可能になる前

であったため、ウイルス量に関する報告がなかった。

HIV特異的なCTLのクローンを使用した養子免疫療法の最初の実験はKoenigらによっ

て行われた(107)。Nef におけるエピトープに対する特異的な CTL のクローンは慢性進行性

感染者から確立された。増幅された細胞は IL-2 の存在下におかれた。この実験はウイルス

RNA 量測定が可能になる前に行われたが、大量の細胞の輸注にもかかわらず、検査感度が

悪かったためウイルス血症の低下ははっきりしなかった。しかし、彼らはこれらの細胞に

よって調節された免疫選択力に対する証拠を提供した。それは細胞移植後の内部ウイルス

のシークエンスにおいて、エピトープを完全に欠失したウイルスだけでなく、エピトープ

内部にも突然変異の出現がみられた。明らかな免疫回避の発達だけでなく抗ウイルス効果

の欠乏が示唆しているのは、異なった特異性を持つ多種のクローンの輸注と IL-2 の輸注を

同時に行うことが有用かもしれないということである。これらの最初の研究は免疫再構築

への道が険しいことを示すものであった。

Koenig による早期の研究はモノクローナルとポリクローナルな細胞移植の試みへとつ

ながっていった。Lieberman らは(108)感染者からの HIV-1 特異的細胞を大量に培養する方

法を確立した。そしてこれらを毒性なく安全に患者へ戻すのが可能であることを示した。

しかし、抗ウイルス効果の証明はやはりなされていない。Brodie らは患者からとった Gag

のエピトープに対する特異的 CTL を確立し、サイトカインを加えずに再び輸注した。そ

の後生検で、輸注した細胞がリンパ組織の感染細胞の部位に定着していることを明らかに

した。さらに、CTL 移植は一過性の末梢血単核球(PBMC)の DNA ウイルス量を減少と関

連しているが、数日でウイルス量は治療前値に戻った。十分な CD4 陽性ヘルパーT 細胞の

機能欠如がこれらの一過性減少の原因であると考えられた。

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[ 中四国エイズセンター部内学習用資料 2001/02/01 ]

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さらに最近、移植 CTL クローンの短期間の寿命という問題に Tan らの研究が光をあて

ている(110)。Gag と Pol のエピトープに対する特異的 CTL クローンが慢性 HIV-1 感染の

患者から確立され、2 種類の核酸系抗 HIV 薬の治療にもかかわらずウイルス量が増加して

きた時に再び輸注された。体内で一つのクローンの様子がそのクローンの TCR に結合し

た HLA クラス I ペプチドのテトラマーによって標識化されることでモニタリングされた。

移植された CTL はよく耐えたが、ウイルス血症の減少や CD4 数の変化はみられなかった。

抗ウイルス効果がない理由は生体内では輸注された細胞が急速にアポトーシス(細胞死)を

おこすためとされており、抗原特異的な CTL は輸注後 48 時間でその 90%以上がアポトー

シスを起こすという。アポトーシスのメカニズムの厳密な定義はなされていないが、著者

は十分なウイルス特異的なヘルパーT 細胞機能が欠如しているためと考え、さらに研究が

IL-2 存在下で行われれば成功するかもしれないと提案している。

抗原特異的な細胞を感染者に輸注することに対して、免疫ペプチドによって増幅された

抗原提示細胞を輸注することで免疫を高めようとする試みがいくつかなされている[111]。

非感染者の兄弟から得られた部分的に HLA の合致した樹状細胞を、ウイルスペプチドを

持ったクラス I 分子を誘導するために、免疫原性 HIV-1 ペプチドと培養した。これらの細

胞は輸注された時にもかなり耐えることができた。いくつかの免疫反応の動揺が輸注後に

見られたが、統計学的な有意差はみられなかった。ウイルス量も減少しなかった。免疫回

復に関するわずかな手段がオーストラリアで試みられており、無症候性感染の初期に自家

の PBMCS が凍結保存される方法であった。これらの凍結された細胞は CD4 が減少し始

めた時に解凍され輸注された。CD4 数の増加が何人かで見られ、4 人中 2 人でウイルス量

が 2 分の 1 log 減少した。これらの輸注で臨床的に効果が持続するかどうかはこの研究の

方法では示されなかった。

他の養子免疫療法のアプローチは増幅された CD4 細胞の輸注である。June らは(112)ウ

イルスに感染していないと推測される CD4 を試験管内で増幅するという新しい方法を用

いた。そのプロトコールとは抗 CD3、抗 CD28 モノクローナル抗体を用いて CD4 を増幅

する方法であった。この作戦は細胞表面でウイルス侵入の補助受容体となる CCR5 の出現

を変化させることによって細胞に HIV 感染に対する抵抗力を持たせるというものであっ

た。この計画は慢性進行性の患者の多くで見られる HIV 特異的ヘルパーT 細胞の欠乏を補

正しうる抗原特異的 CD4 の増幅を試験管内で試みるものである。

ワクチン療法

初期の治療ワクチンの実験は残念な結果であったが、これらのワクチンは HAART より

前に行われたものであるから、臨床的に失敗に終わったことはとくに驚くことではないの

であろう(113)。細胞の活性化は予防接種の目的であるが、感染性のあるウイルスの存在下

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[ 中四国エイズセンター部内学習用資料 2001/02/01 ]

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ではこれらの活性化された細胞はウイルスの優先的な標的となる。しかし、HAART の出

現で、多くの有効な抗 HIV 療法のもとでワクチンを行うことが可能となり、活性化された

細胞を感染や消失から守ることが可能になっている。多くの研究が生体内での抗ウイルス

細胞の欠乏を示唆している事実と合わせて考えると、ワクチンの研究に対する強い論理的

証拠が提供される。

もっとも大規模に研究された治療的ワクチンの一つが Remune である。これは不活化ウ

イルスワクチンで、処理と合成中に含まれる不活化段階に大部分のエンベロープ蛋白が除

去されるものである(114,115)。そのワクチンはもともとザイールで得られたウイルス由来で、

clade A のエンベロープと clade G の Ggag を含んでいる。今では 3,000 人以上の患者に試

されている。この実験は抗 HIV 薬併用療法が標準になる頃に始まったので、ワクチンを受

けた患者のほとんどが最大限に抑制的な抗ウイルス治療を受けていた。このワクチンは

HIV に感染した患者に Gag 特異的なヘルパーT 細胞の反応をおこすことが見られ、その反

応は何人かの患者ではおどろくほど強力であった(116)。これらの反応が臨床的に有益かど

うかはまだ明確ではないが、Gag 特異的なヘルパーT 細胞の反応は慢性的に感染している

患者におけるウイルス血症のコントロールと関係しているので、さらに調査をする価値が

ある。

たくさんのエンベロープに基づくワクチンの実験が終了したが、残念な結果も多く起こ

っている。問題の一部は、現在使用可能な遺伝子組み替え蛋白の免疫性の欠如で、生体内

ではもともとの蛋白質のオリゴマー構造を表現していない。現在まで HIV エンベロープ

蛋白のワクチンによって引き起こされる抗体反応は、大部分で見られるウイルスの多くの

種との幅広い交叉反応ではない。いくつかのエンベロープワクチンは HIV-1 特異的なヘル

パーT 細胞を誘導するが(117)、エンベロープに基づくワクチンの能力は、少なくとも現在の

ところは、感染した患者からの最初のウイルス分離株に対する防御に限られそうである。

もっと可能性があり、広く期待されている中和抗体は、最近新しいアプローチが行われて

いる(51)。それらの研究では、“fusion-competent”という免疫原が溶解の一時的な時期に

固定された細胞から産生されている。これはエンベロープと CD4 と補助受容体の相互作

用を含んでいる。この免疫原は活動的感染において機能的なエンベロープをさらに表現し

ている。マウスのモデルでは広範囲に高いレベルの交叉反応性中和抗体がこの

fusion-competent 免疫原に対して誘導される。これらの反応の誘導が感染者に対して有益

かどうかは調査に値することだが、臨床的な治験はまだ計画されていない。

遺伝子組み替えの蛋白に加えて、他のアプローチが行われ、あるいは行われようとして

いる。痘疹ウイルスと類似しているがヒトの細胞における増殖能が限られている

Canarypox のベクターが、ヒトにおけるパイロット研究で使われている(118)。しかし免疫

性に対するデータはなく、ウイルス量に対する効果はまだわからない。HIV 抗体陰性のヒ

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[ 中四国エイズセンター部内学習用資料 2001/02/01 ]

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トを対象にした研究ではこれらのベクターは、抗体だけではなくヘルパーT 細胞と CTL

反応を誘導することができるが、これらの反応は遺伝子組み替え蛋白ワクチンによるブー

ストを含む方法よりもさらに荒っぽい。DNA ワクチンは現在、臨床第 I 相で量を増加させ

ながら治験中で、様々な違った免疫原を含む組み合わせのアプローチが行われている。大

切なことは、まだ HIV 感染症における治療的ワクチンが有用であるかを示すデータはない

が、利用可能なデータを示すもっとも最初の研究が HAART 療法時代になる前に行われた

ため、これらのアプローチは新たに注目するに値することである。

Key Points:CD8 細胞の移植の研究は細胞の寿命の短さと明らかな免疫能の低下によ

って妨げられている。他の実験的なアプローチとして抗原提示細胞や増幅された CD4

細胞の移植がある。治療的ワクチンの初期の研究は失敗に終わったが、HAART との組

み合わせによるさらなる研究が現在認可されている。Remune は HIV 特異的な免疫反

応を高めることと関連しているが、臨床的な重要性は不明である。

免疫増強を狙った治療中断

治療ワクチンに代わるものとしては免疫力増強の意味での患者自身のウイルスの利用が

ある。これに関して議論する前にこのアプローチは非常に注意深くコントロールされた臨

床治験でのみ行われるべきであることをとくに強調しておく。

生きたウイルスのワクチンは最も効果的に利用できるワクチンである。HAART の利用

は理論上ワクチンとしての患者自身の生きたウイルスの量を調節する機会を与えているこ

とになる。このアプローチが HIV 特異的免疫をブーストする効果についてはまた有用なデ

ータはないが、注意深くではあるが楽天的な見方を支持するたくさんの逸話例がある。こ

れらの例は急性 HIV 感染のかなり早期に治療された患者に限られるものであった。ある患

者は早期に急性感染症の治療を受けたが、劇的にウイルス量が減少した。しかし数週後、

合併症により抗 HIV 療法を中止せざるをえなくなった(119)。この結果血漿中ウイルスは増

加し、抗 HIV 療法の再設定によって急速に治療を行った。彼はそのときウイルス量のリバ

ウンドなく治療を一時的に中止したが、結局 6 ヶ月後に患者は永久に治療を中止した。24

ヶ月の経過観察で、ウイルス血症はコントロール下にあり、ウイルス量も 1,000 コピー以

下を保っている。このコントロールは持続的で力強いヘルパーT 細胞と CTL 反応と関連し

ている。

急性感染症の治療後の免疫調節について他の例が報告されているが、それは治療におけ

る一時的な中断と関係している(120)。1999 年に Franco Lori らは、第 6 回レトロウイルス

と日和見感染症に関する会議でデータを示し、間欠的な治療で増強された免疫反応を誘導

するかもしれないという可能性を報告した。この報告で彼は、ごく初期の HIV 感染症の患

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[ 中四国エイズセンター部内学習用資料 2001/02/01 ]

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者において、断続的な治療の中断をするとウイルスのリバウンドが徐々に低くなるという

ことを示した(121)。HIV 特異的免疫を効果的に増強させるためのアプローチとしてさらに

明確にデータを評価する必要がある。注意深くコントロールされた臨床研究を行うことで

この重要な問題に答えることが可能になるだろうし、間欠的治療を反復することによって、

薬剤耐性が増加するかどうかも決定できるだろう(122)。

受動的抗体療法

受動的な高免疫血清の輸注がサルやマウスや免疫不全ウイルス感染のヒトのモデルで実

験されてきた。高免疫の SIV 血清が投与されたサルでは、経口予防接種による防御が獲得

されるが、ウイルス曝露の時期より前に血清が投与される必要がある。それに対してウイ

ルス曝露後 3 週間で血清が投与された時、防御は確認されない(123)。予防的曝露後の他の

研究では、高免疫血清の早期の投与は疾患の進行を遅らせるという(124,125)。それゆえ感染

のごく初期のウイルス血症の減少はありそうでも、受動的抗体療法が慢性 HIV 感染におい

て効果的であるとは解釈できない。Scid-Hu マウスにおける研究では、HIV 投与の 1 時間

前か 4 時間後にモノクローナル中和抗体の輸注が防御に役立つとされたが、すでに感染が

成立している患者では抗体の投与は効果がなかった(126)。ヒトにおける研究では受動的な

抗 HIV 血清の輸注の有益性はジドブジン単独の有益性との統計学的有意差がまだ認めら

れていない(127)。受動的抗体のアプローチはまた粘膜を通した感染を予防する効果は少な

い(128)。違った特異性をもった中和抗体のカクテル療法は試験管内で抗ウイルス活性を増

幅させ、さらなる研究へ期待をもたせている。とくに、曝露の時期に関する設定が研究と

して知られている(129)。

遺伝子治療

細胞に抗 HIV-CTL 活性をもつように変化させる遺伝子操作が達成されてきており(130)、

慢性 HIV 感染症患者におけるこれらの細胞の効果を評価する臨床治験が現在行われてい

る。感染者からリンパ球を採取し、ベクターとともに変換した結果、T 細胞受容体の細胞

内部分(the zeta chain)にリンクした CD4 分子の外部分の発現が見られた。CD4 のその部

分が細胞表面に HIV のエンベロープを発現した感染細胞に遭遇すると、T 細胞受容体の細

胞内部分を通ったシグナルが、導入された細胞を細胞傷害性 T 細胞へ変換させ、感染細胞

を死滅させる。これらの細胞は試験管内では感染者から採取された HIV-1 特異的な CTL

クローンと同じくらい HIV 増殖を抑制する(131)。臨床治験により、ウイルスのセットポイ

ントやウイルスのリザーバーに対して効果があるかどうかが決定されるであろう。多くの

他の遺伝子治療戦略があり、さまざまなベクターの導入や抗ウイルス構造の利用が計画さ

れ、あるものは使用中である。そのような治験は時に遺伝子をマーキングする技術を組み

入れ、とてもわずかではあるが、患者に輸注された後の形質変換リンパ球の運命(動態、役

割、耐久性など)に重要な知見を提供することになるであろう。

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[ 中四国エイズセンター部内学習用資料 2001/02/01 ]

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Key Points:妨害的な治療が、HIV 特異的な免疫反応の増幅やウイルス的寛解の持続

と関連する症例があるが、ほとんどの例ではウイルス血症は急速にリバウンドする。受

容的抗体治療は臨床的有益性がまだ明白でない。抗 HIV 活性を持たせたリンパ球の産生

を目的とした遺伝子治療は現在研究中である。

症例 4:抗ウイルス治療で 18 ヶ月間維持された患者。ウイルス量は 50 コピー以下で、

3 薬剤のアドヒアランスも良好である。ヘルパーT 細胞反応や CTL 反応は、最初の 1 年

間は強かったが、その後減少し始める。CTL 反応は Elisipot 法、tetramer 法、限界希

釈によって検査される。Elispoy 法では CTL は 3 種の違った Gag 蛋白と一つの Nef 蛋

白に対する方向性をもっていることが示され、tetramer 法では陰性であった(現在 p17

の免疫優位な A2 に限られたエピトープに対する反応の測定のみが可能である)。

持続的な免疫反応に基づき、免疫反応の大きさがウイルス血症のコントロールに十分

であるかどうか決定するための実験的なプロトコールとして、彼は治療を中止した。治

療中止後ウイルス量ははじめの 3 週間ではウイルスは検出されなかったが、それから

400、1600、3000 コピーと 10 日間で上昇した。さらに 4 日後ウイルス量は 17000 コピ

ーとなった。治療がすぐに再開され、ウイルス量は急速に検出限界以下となった。

結語

AIDS 治療の次世代は免疫療法である。現在使用できる抗ウイルス剤ではウイルスの根

絶は容易ではないであろう。この数年間で HIV のウイルス血症を調節する細胞性免疫反応

の役割とウイルスのセットポイントが明らかになり、免疫療法の介入に対する標的が明確

になってきた。今まで、HIV の免疫調節を高める増強した HIV 特異的免疫能が述べられ

てきた。HIV を封じ込める免疫調節のゴールは現実的にそして精力的に追求される必要が

ある。

(西村 裕)

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