私の現代俳句 東京多摩地区現代俳句協会...

18
1 宿西 会報 No.128

Upload: others

Post on 11-Sep-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 私の現代俳句 東京多摩地区現代俳句協会 兜太と鬼房gendaihaiku.gr.jp/wp/wp-content/uploads/2019/02/128tama.pdf― 2 ― 一方、鬼房との出会いは二十七、八歳の頃、宮城県栗原市で

―  ―1

 

私が俳句を始めたのは小学四年生の頃で阿部みどり女の「駒

草」への投句がきっかけだった。たまたま居合わせた句会でみ

どり女の選に入った。これを機に「駒草」に投句を開始し、高

校の文芸部では詩作にも熱中。生意気にも文芸部の機関誌に

「現代俳句小論」という文章を書いたこともあった。これから

の俳句は現代を表現できることが大切で、有季よりも無季の俳

句に可能性を見いだしたいという内容であった。

 

私が金子兜太を知ったのは,たしか十八歳の頃だったと思

う。

 

当時、私が最も魅力を感じたのは、昭和四十年前後に出版

された金子兜太の『短詩型文学論』や『今日の俳句』だった。

「海程」入会のきっかけともなった。とくに『今日の俳句』は

光文社のカッパブックスの一冊で内容はもちろんだが、装丁が

現代的でたいへん魅力的だった。むさぼり読んだことを覚えて

いる。

 

もう一つ参考になったのが筑摩書房の「

現代日本文学全集」

の『現代俳句集』で金子兜太の他に佐藤鬼房、鈴木六林男、高

柳重信など魅力的な俳句ばかりでこんな素晴らしい俳句がある

のかと惚れ込んだ。

 

そんなことがきっかけとなり金子兜太に「

海程」

に入会希望

の葉書を出したら、すぐに返事が来た。投句をしたら、また励

ましの葉書が来た。句評も添えてある。うれしくなって東京の

海程」

月例会に顔を出すようになった。

多摩風土記(旧府中宿高札場・御旅所)

 

府中市内で旧甲州街道と川越道、川崎道が交

差するが、その南西角地に高札場(こうさつ

ば)が遺されている。屋根があり、江戸時代に

は札掛けの木柵に、切支丹の禁止や徒党の禁止

など、掟書や触書を記した高札が掲げられてい

た。都内に現存するものは極めて少なく都の旧

跡に指定されている。この場所は大國魂神社の

御旅所でもある。�

(健介)

高野ムツオ

私の現代俳句―兜太と鬼房

第三十五回俳句大会講演録より

東京多摩地区現代俳句協会

会報No.128

Page 2: 私の現代俳句 東京多摩地区現代俳句協会 兜太と鬼房gendaihaiku.gr.jp/wp/wp-content/uploads/2019/02/128tama.pdf― 2 ― 一方、鬼房との出会いは二十七、八歳の頃、宮城県栗原市で

―  ―2

 

一方、鬼房との出会いは二十七、八歳の頃、宮城県栗原市で

の俳句大会でお会いしたことに始まる。その折、私が詠んだ句

に  

色鳥の声青空に滲み入る

 

がある。鬼房が、この句の小鳥は冬の小鳥の方がふさわしい

と語ったのが今も忘れられない。

 

その数年後、鬼房の句集『地楡』の評を「海程」に書いた

折、そのうち遊びに来いと葉書を貰った。ためらっていたが、

初訪問の折は翌朝四時近くまで話し込んでいた。

 

昭和六十年に「

小熊座」

が創刊される。投句してもよいかと

お伺いしたところ、「あんたは止めとけ」と言われたが、文章

連載の依頼が来た。一回目は入院先へ届けた。「

もう来ないか

と思った」

といいながら「

小熊座」

の編集や選句に取り組んで

いる姿が心に残った。そうこうしている内に小熊座の校正、編

集にも携わるようになった。

 

鬼房が兜太と初めて会ったのは昭和二十六年十一月十五日。

鬼房は当時社会性を求めて俳句を一人で作っていた。東北では

そうした俳句を作る俳人は誰もいなかった時代である。

 

兜太はレッドパージの煽りで左遷同様、福島に赴いていた。

共に俳句を語る相手に飢えていた。「一晩泊めてもらう」予定

で福島の兜太邸に鬼房は出かけたが、実際は二泊した。帰る日

の夕方まで、朝、阿武隈川をちょっと眺めたのと厠に立った以

外は何時間も俳句の話が途絶えることがなかった。

 

兜太は「鬼房俳句の真髄」という講演を平成十八年二月二十

六日に小熊座の招きでしてくれている。

 

兜太の講演は、まず福島の出会いから始まった。そして鬼房

が半年前に上梓した第一句集『名もなき日夜』が大阪の「夜盗

派」の俳人達にあまり評価されなかったエピソードを伝える。

 

俳句を作りながら俳句形式を軽く考えていたと兜太は指摘す

る。しかし鬼房には俳句形式への信頼感、誠実さがあると言

う。私はこれは鬼房であると同時に兜太自身のことであると気

付き始めた。

 

この講演の内容は私にたいする戒めでもあった。俳句形式を

信じ己の表現形式として自覚し学び取れということである。

 

俳句形式を学び取ること、これは一回性である。つまり、一

句なすごとに一回ずつ俳句形式と向かい合い俳句を学び取る必

要がある。無自覚にただ五七五に言葉を委ねるのではない。

 

金子兜太の句、その代表句はそのほとんどが従来の俳句のセ

オリーをどこかで破っている。いや超えている。超えながらも

間違いなく俳句伝統を担い屹立している。

 

金子兜太はそれこそ「一句一句」俳句形式と火花を散らし渡

り合って俳句を生んできたのだ。その渡り合う場として考える

日常があるとも強調した。

 

講演の感動は今も昨日のことのように覚えている。そしてそ

の五日後に皆子夫人が亡くなる。いかに大切な時間を割いて話

をしてくれたのか、今になってその有り難さに気付いている。

 

以下に当日の講演で紹介した兜太と鬼房の句を戦時の俳句、

戦後の俳句、風土の俳句、エロスとスカトロジーの俳句、晩年

の俳句のジャンルに分けて記す。����������

Page 3: 私の現代俳句 東京多摩地区現代俳句協会 兜太と鬼房gendaihaiku.gr.jp/wp/wp-content/uploads/2019/02/128tama.pdf― 2 ― 一方、鬼房との出会いは二十七、八歳の頃、宮城県栗原市で

―  ―3

 

戦時の俳句

魚雷の丸胴蜥蜴這い廻りて去りぬ�

金子兜太 

被弾のパンの樹島民の赤子泣くあたり

水脈の果て炎天の墓碑を置きて去る

夕焼に遺書のつたなく死ににけり�

佐藤鬼房

濛濛と数万の蝶見つつ薨る

捕虜吾に牛の交るは暑くるし

 

戦後の俳句

手の傷も暮しの仲間雪青し�

金子兜太

青年鹿を愛せり嵐の斜面にて

暗闇の下山くちびるをぶ厚くし

彎曲し火傷し爆心地のマラソン

どれも口美し晩夏のジャズ一団

死ねば善人蟻一匹がつくる影�佐藤鬼房

青年へ愛なき冬木日曇る

縄とびの寒暮いたみし馬車通る

戦あるかと幼な言葉の息白し

齢来て娶るや寒き夜の崖

 

風土の俳句

曼珠沙華どれも腹出し秩父の子�

金子兜太

霧の村石を放らば父母散らん

沢蟹・毛桃喰い暗らみ立つ困民史

梅咲いて庭中に青鮫が来ている

おおかみに蛍がひとつ付いていた

むささびの夜がたりの父わが胸に�

佐藤鬼房

蝦夷の裔にて木枯をふりかぶる

陰に生る麦尊けれ青山河

冬蔵す季の重みや父の国

縄文の漁が見ゆ藻屑の火

 

エロスとスカトロジーの俳句

華麗な墓原女陰あらわに村眠り�

金子兜太

最果ての赤鼻の赤魔羅の岩群

陰しめる湯浴みのあとの微光かな

野良猫のふぐりは白露三個分

草に糞まるここに家建てんか�

佐藤鬼房

生きてまぐはふきさらぎの望の夜

亜隆隆ほどの朝魔羅遠辛夷

白桃を食ふほの紅きところより

 

晩年の俳句

炎天の墓碑まざとあり生きて来し�

金子兜太

福島や被曝の野面海の怒り

河より掛け声さすらいの終わるその日

またしても兵の一人として病死�

佐藤鬼房

終戦の日を南溟に生きてゐし

翅を欠き大いなる死を急ぐ蟻

Page 4: 私の現代俳句 東京多摩地区現代俳句協会 兜太と鬼房gendaihaiku.gr.jp/wp/wp-content/uploads/2019/02/128tama.pdf― 2 ― 一方、鬼房との出会いは二十七、八歳の頃、宮城県栗原市で

―  ―4

梅雨曇父の遺品をいかにせむ国分寺

秋山ふみ子

逢ひたしと念ふ銀河の渡し舟狛 

淺見 

玲子

担任の癖文字黴の通信簿多 

足立喜美子

酔芙蓉許し合える程でなく清 

穴原 

達治

噴水のうしろに母が佇っている稲 

新井 

温子

カラフルな遊具の眩し秋暑し八王子

荒川勢津子

八月や祈るばかりの人の群多 

有坂 

花野

点鬼簿をとび立つ気配黒あげは国分寺

安西  

脱ワープ出

せむ燃える地ほ

球し

より銀河へと小

石橋いろり

終戦忌七十余年の物語練 

石原 

俊彦

落ち鮎の命いただく塩加減八王子

市川 

春蘭

なまくらな包丁叱り南瓜切る青 

一ノ瀬順子

秋霖雨でもくらしーの浮いてゐる狛 

伊東  

老鶯の声透き通る那須の山調 

絲布 

みこ

仔豚啼く農学校の野分晴れ町 

稲吉  

足馴らし揉む土踏まず男郎花練 

岩崎清太郎

マイカーを手放す老よ能登薄暑小 

植竹 

利江

空わたるがらごろがらりはたた神東久留米

上原 

重一

帰るさに母より父の手掘り芋町 

宇賀いせを

手術後の夢のあやなす夏暁かな小金井

浮海 

早苗

蜻蛉より小さき赤牛草千里西東京

内田 

牧人

新涼やもののいのちは目玉から武蔵野

江中 

真弓

鳥の巣に鳥いる平成最後の日府 

大井 

恒行

虫の音をはさんで閉じる文庫本立 

大友 

恭子

玉手箱秋の海にぞありぬべき三 

大森 

敦夫

新盆の兜太の眼

火ほのおぼし星

昭 

岡﨑たかね

死ぬまでは兜太と居たい曼珠沙華武蔵野

岡崎 

万寿

押せばごろん叩けばぽこんと冬瓜小金井

岡本 

久一

朝未だき山猫の来る猛暑かな飯 

奥野 

亜美

目分量で生きて来た道蟬の殻国 

長田 

和江

おしろいの種採る火星遠ざかる国 

折原あきの

雲の峰ついと戦に突き当る多 

柏田 

浪雅

穏やかにそして普通に冷や奴国分寺

加藤 

道代

爽涼や鳩の視界の中に居る稲 

門野ミキ子

一筆箋繰る立秋の風一枚西東京

金谷サダ子

八月十五日興安丸の緑十字日 

野亀津ひのとり

薄暑かな改札口へ四十段西東京

河  

順子

一山の紅葉のみこみ湖朱しさいたま

河井 

時子

あけぼの集

Page 5: 私の現代俳句 東京多摩地区現代俳句協会 兜太と鬼房gendaihaiku.gr.jp/wp/wp-content/uploads/2019/02/128tama.pdf― 2 ― 一方、鬼房との出会いは二十七、八歳の頃、宮城県栗原市で

―  ―5

そこかしこ供花がありて秋の雨立 

川川島 

一夫

地球狂う人また狂う秋暑し稲 

川田 

忠雄

言葉を黄葉するまで使ったか太 

川名つぎお

爆竹の喧騒裡往く精霊船調 

菅 

さだを

母の背の小さくなりし芋水車清 

神崎 

幸子

生きて来しそれぞれの手や焚火の輪小 

城内 

明子

労いのことばさらりと敬老日練 

岸本 

陽子

箸先にあはれ蝗の後肢八王子

国枝金之助

シャンプーの同じ残り香夜の秋武蔵野

高坂 

栄子

碁ご

敵がたきに一矢報いるソーダ水東村山

五藤  

神の座の青き稜線野分行く町 

小山 

健介

胸の火を幾度焦がし心太東久留米

紺谷 

睡花

サングラス異界の色を少し入れ西東京

近藤 

斗升

強制換気強制揚水安全宣言立 

今野 

修三

認可外保育所おひるねの時間多 

斉田  

けふも来て翅を休める夏の蝶東大和

境  

英子

立看板光と風の叫び消ゆ八王子

櫻本 

愚草

水打って父の世よりの風を待つ東久留米

佐々木克子

かなかなや佛足石に水少し府 

笹木  

月光を浴び花のごと火焔土器八王子

佐藤  

風鈴の音が薄闇引き寄せる調 

佐藤  

ドンと腹祭太鼓の音が突く府 

佐藤八重子

秋祭る灯が裏山の杉に点く青 

沢田 

改司

見舞いし日何処ともなく花栗匂う八王子

柴 

れいこ

迷走台風ヴァイオリン哭いている昭 

芝崎 

綾子

地球儀の埃を拭う原爆忌練 

島  

彩可

茄子の花一番遠い昨日かな西東京

白尾 

幸子

座敷童両手にいっぱい赤のまま調 

白戸 

麻奈

月下美人誉められたいは誰にかな世田谷

鈴木 

浮葉

この猛暑災害廃棄の仮置場立 

鈴木かずえ

孫の来て活気づきたる夏座敷小 

鈴木 

寿江

鰈煮て白身をほぐすその日まで練 

鈴木りつ子

スローバラードのかたちで新酒酌む町 

栖村  

崩るると見せて膨らむ雲の峰板 

諏訪部典子

鉛筆の長短の束わが秋思小 

関   

平らなり二百二十日の成層圏町 

関根 

曳月

スーパームーン鏡餅が飛びたがる武蔵野

髙野 

公一

軒のなき大東京の大夕立清 

谷村 

鯛夢

あけぼの集

Page 6: 私の現代俳句 東京多摩地区現代俳句協会 兜太と鬼房gendaihaiku.gr.jp/wp/wp-content/uploads/2019/02/128tama.pdf― 2 ― 一方、鬼房との出会いは二十七、八歳の頃、宮城県栗原市で

―  ―6

邯鄲と蝉が夢見る一夜かな稲 

玉木 

康博

ジェット機の火星をよぎる半ズボン日 

玉木  

千葉産のブス梨の味が一番東久留米

田村  

人生はたかが百年星月夜三 

田山 

光起

災害の地を流浪せし鬼やんま稲 

地原 

光夫

石は黙寄り添いたきは吾亦紅八王子

辻  

升人

花サビタ私にもある反古の恋東村山

寺尾 

令子

夫なくて大回遊のわれは鯨立 

遠山 

陽子

少年の顔に陰影夏果てる西東京

戸川  

みんみんを鳴かせて曙杉しずか杉 

飛永百合子

初蝉かはたまたいつもの耳鳴りか相模原

鳥海 

高志

過労死の蟻一匹に蟻集たか

る清 

永井  

深閑と湖燦々と秋の空町 

長澤 

義雄

夏座敷鴨居に並ぶ肖像画八王子

中島 

秀次

行く当てをふと忘れけり蟬時雨小 

中條 

啓子

音のない語り豊かに夜の秋西東京

中田とも子

オスプレイ花野上空攪拌す国分寺

中野 

淑子

老いてなおときめき残る酔芙蓉座 

長野 

保代

八月や何もなかつたやうに海青 

中村ゆき子

稲妻の狙ひ定むる夜の鉄塔武蔵野

夏目 

重美

手おくれと思ふあれこれ梅雨の蝶八王子

夏目  

身に入むや道路に小さき手向け花町 

成戸 

寿彦

エーイャサー駅前広場の夏まつり世田谷

西前 

千恵

ゲジゲジや墓に置かれて安茶碗昭 

西村 

智治

秒針の音のみ冴える八月は多 

抜山 

裕子

堂堂と庭の真ん中羽抜鶏三 

根岸 

敏三

冬草や片付けられない人とゐる三 

根岸  

被爆者と同じ齢を生きて夏小 

野口 

佐稔

初茄子や夫はスマホを知らず逝く青 

萩原 

芙沙

木犀の若枝の小揺れ星が出る東大和

橋爪 

鶴麿

深草の百夜の恋や露と消ゆ武蔵野

蓮見 

順子

窓に薄明かり人の世の淋しさ武蔵野

蓮見 

徳郎

油蝉楽屋で出番待っている羽 

花貫  

俎板のリズム正調秋立ちぬ川 

原田 

麦吹

一位の実含む友より含まさる青 

樋口 

光江

竹夫人母にたてがみあるを知る日 

日野 

百草

独り居の暮し見にくる鬼やんま多 

平山 

道子

ふわり巻く光の記憶白木槿横 

藤井 

みき

あけぼの集

Page 7: 私の現代俳句 東京多摩地区現代俳句協会 兜太と鬼房gendaihaiku.gr.jp/wp/wp-content/uploads/2019/02/128tama.pdf― 2 ― 一方、鬼房との出会いは二十七、八歳の頃、宮城県栗原市で

―  ―7

無欲とは祈りに似たり天の川鎌 

藤倉 

頼江

色褪せし配給通帳八月来調 

藤原はる美

漁り火のひとつとなりぬ流れ星練 

淵田 

芥門

小鳥来る朝礼はじまる小学校八王子

冬木  

再びの生存証明夏便り多 

星野 

幸子

パン生地に練り込む胡桃母の忌くる羽 

堀部 

節子

体育の日や勝虫の弓袋羽 

堀部 

嘉雄

草紅葉ふいに足許から谺国 

前田  

さるすべり居づらくしたのは私国 

前田 

光枝

終戦忌語らず秘めしこと多し武蔵野

松戸  

穭田の少年発光の腕かいな

もつ木更津

松本 

まり

落葉径日暮は人を迷わせる八王子

松元 

峯子

だれもいない海辺の短い秋よ東久留米

三池  

夏の雲球音ひびく分校よ東久留米

三池しみず

風紋を踏み昼顔に会ひに行く小金井

三浦 

土火

父にある行きつけの石青葉風世田谷

三浦 

文子

午後四時の鬱というかギガンジウム町 

三木 

冬子

向日葵や健康家族のスニーカー国分寺

水落 

清子

新生姜厨に入るる山の風三 

水野 

星闇

蠍座や畑にばつくり洞ガ

 マ窟

の口日 

満田 

光生

立葵傘寿の姉のハイヒール小金井

宮井 

洋子

ケーブルの六分間の青葉騒昭 

宮腰 

秀子

ボランティア玉の汗なり災害地小 

宮寺 

幸子

反戦を叫びし兜太天の川八王子

三山 

喜代

立秋や髭を濡らして猫戻る小金井

村井 

一枝

夜空をば狭しと乱舞の花火かな多 

村山  

特売が枕詞の秋刀魚買う武蔵野

望月 

哲土

秋場所のさじき珊瑚の髪かざり立 

山口 

楓子

何もできずただ青い八月の空町 

山崎せつ子

をみなにも七人の敵夕立雲東村山

山﨑美紗緒

くさや焼く度胸もなくて夏終わる府 

山本 

徳子

瑞瑞し青葉の多摩に老いるかな多 

山本みつし

水葬の毛布一枚のこりけり府 

吉澤 

利枝

朝顔やちゃっかり木の枝借りて青東大和

吉田雄飛子

紫陽花の常套手段首を切る東久留米

吉平たもつ

一日の無為を咎むる残暑かな国 

吉村春風子

ちりとりに昨日と今日の凌霄花立 

米澤 

久子

猿山のサルノコシカケ天高し青 

渡部 

洋一

あけぼの集

Page 8: 私の現代俳句 東京多摩地区現代俳句協会 兜太と鬼房gendaihaiku.gr.jp/wp/wp-content/uploads/2019/02/128tama.pdf― 2 ― 一方、鬼房との出会いは二十七、八歳の頃、宮城県栗原市で

―  ―8

127

秋山ふみ子

母の日や難産だったかも知れぬ

永井  

 

一読して不思議な印象を受けました。中

七からの措辞は色々な示唆に富んでいると

思います。お母様への思い、生を享けた我

が身への思い。「かも知れぬ」という表現

により想像が広がります。「母の日」への

直球の一句と納得しました。

足立喜美子

平和とはふつうの暮らし麦の秋

安西  

 

何とシンプルで幸せを感じる中七の措辞

であろうか。この七十三年間、私達は戦

争に巻き込まれる事もなく過ごしてきた。

「平和とは」寝て起きて食べて仕事なり好

きなことをして、ふつうに暮らせる事に他

ならない。「麦の秋」が絶妙。

新井 温子

振り向けば呼んでいたのは紫木蓮

境  

英子

 

呼ばれたような気がして振り返ってみた

が、そこには誰もいない。ただ紫木蓮が咲

いているだけ。すこしがっかりだが、でも

何故か納得。日常の何気ない行動を詠んで

いながら、紫木蓮が季語として、活き活き

と効いていると思う。

有坂 花野

春日傘たためば本当の孤独

斉田  

 

人は一人で生まれ一人で死んでゆく。

 

冬がすぎて春が来た喜びにそれを忘れて

いる。何かの拍子に、例えば日傘をたたん

でまぶしいばかりの陽光のもとにその身を

さらすとき、否応なく生命の孤独を実感し

てしまうのである。

飯田 玉記

人生の平平凡凡心太

根岸 

敏三

 

現代では毎日が天災、人災、事件、事故

と怖い話が茶飯事であるなかで、このお句

のように、いかに「普通」が幸せであるか

を痛感し、又一生をこんなふうに過ごせて

行けたらとつくづく思いました。飯

田 浩子

栗咲くや犀うつうつと柵揺らす

近藤 

斗升

 

自然のままの草地や湿地でのびのびと生

きていたであろうものを、捕えられて動物

園に囲われている。その心情を思えばうつ

うつと柵を揺らす行動もさもありなんと思

う。ましてや季節は栗の花咲く頃。季語が

ぴたりと決っていると感じた。

池田 洸生

竹落葉頷いてゐる笠智衆稲

吉  

 

これは松竹映画、小津安二郎監督のメガ

フォンによるモノクロ映画のワンーンであ

りましょう。初夏の暖かい日差しに竹落葉

を掃きながら娘役の原節子と頷きながら会

話している笠智衆、そんな昭和のノスタル

ジーに浸ってしまいます。

石橋いろり

緑さす松本「草間彌生」展

菅 

さだを

 

七月初旬まで開催していた松本美術館の

草間彌生展は見応えがあった。前衛芸術家

らしい極彩色の立体作品は皆伸びやかで、

緑なす松本の広い空間に生き生きとした像

が映える。地名と固有名詞だけでコアなイ

メージを結像。実験的な句。

植竹 利江

伝言板は既にまぼろし著莪の花

三木 

冬子

 

私が小学校の頃は駅に伝言板があり、よ

く覚えている。まだ電話が各家庭に普及し

ていない頃、地味な存在だったが、貴重で

あった。今、メールで連絡ができるように

なり、私も便利に使っている。情感のこ

もった句である。

Page 9: 私の現代俳句 東京多摩地区現代俳句協会 兜太と鬼房gendaihaiku.gr.jp/wp/wp-content/uploads/2019/02/128tama.pdf― 2 ― 一方、鬼房との出会いは二十七、八歳の頃、宮城県栗原市で

―  ―9

127

上原 重一

前世はたぶんにんげん蠅生る

日野 

百草

 

蠅が生れた直後を見たか、蠅そのものを

見て詠んだ句だろう。ああ、自分も、そう

ありたいものだと考えた作者。生れ変わる

なら蠅がいい、と想像したのか?私自身

は、再生など真っ平だが、この想像は愉快

なのだ。色々考えさせる。

宇賀いせを

蟻と戯る一万歩越えたから

新井 

温子

 

七五五の十七音、少しも定型感覚やリズ

ミックな調子が損なわれていない。助詞

「から」の措辞の効果が大きく、句に一種

のユーモアを添える。時速4キロの一万歩

は、道端の、街中の風物を皮膚感覚で捉え

る。

浮海 早苗

合鍵を子らに持たせて曼珠沙華

梅沢れい子

 

楽しい家庭も子らが独立、そのうちつれ

あいに先立たれ、ひとりになる。私の囲り

にも多い。でも子らに頼らずにひとりで生

き、俳句仲間とも楽しみ、今を生き切る。

私が音信不通になったら、家の鍵を開けて

…。曼珠沙華の季語がとてもいい。

岡本 久一

横縞のTシャツが好き海を恋う

三池  

 

作者は、Tシャツの横縞に夏の海の水平

線を見つけた。それはある夏の日のアバン

チュールにつながる。なんて甘いことを

言ったがそんなことであってもなくても

やっぱり「海は母」なのだ。永遠に恋し

い。結びの「海を恋う」が切ない。

亀津ひのとり

八月六日天井裏にイエス様

前田  

 

この句の前で立ち停り反芻しきり。一瞬

の劫火に焼かれた市民と天井裏にあった十

字架のイエスか、或いは全く別のストー

リーか。句に触発されるものは七十三年経

て尚拭いきれざる深い悲しみ、歎きまた神

に対する問いかけか。明日は八月六日。

川田 忠雄

ふらここに夜風がそっと乗りにくる

中條 

啓子

 

見事な擬人化句である。

 

真夜中の公園だろうか、昼間、子供達と

思う存分遊んだふらここは熟睡している。

そこへ夜風が音もなくやってきて、静かに

揺らしている。ふらここを癒しているの

だ。楽しい句です。

紺谷 睡花

渓流の瀬音を集め夕河鹿長

澤 

義雄

 

河鹿は河川の清冽な水を好むそうだ。そ

れが「渓流の瀬音を集め」るという措辞に

いかにも涼しさを感じる。作者はそこに佇

みしばしの憩いを得たのだろうか。都会の

喧噪を逃れたひとときが、まざまざと目に

浮び涼感を共有した。

近藤 斗升

青梅をごろごろ洗い恙なし

平山 

道子

 

梅干を製するため青梅を洗っているの

か。ごろごろの質感が快い。親の代から

か、もしかしたらもっと以前からあるこの

家のしきたりかも知れない。季節ごとの規

範を守るささやかな暮らしに満足し、一家

の恙ないことに幸せを感じている。

佐藤  茉

こどもの日こどものような父がいる

島  

彩可

 

作者のふと呟いた様な現代仮名遣いに、

父を思う優しさと寂しさを、諦観の滲む眼

で大きく包み込む様な日常が思われ、母で

はなく、父である事が胸を打つ。多分、大

好きなお父様の今を受け止めた一句、と思

いました。

Page 10: 私の現代俳句 東京多摩地区現代俳句協会 兜太と鬼房gendaihaiku.gr.jp/wp/wp-content/uploads/2019/02/128tama.pdf― 2 ― 一方、鬼房との出会いは二十七、八歳の頃、宮城県栗原市で

―  ―10

127

白戸 麻奈

和蝋燭揺れ百物語はじめませう

鈴木 

浮葉

 

この和蝋燭にはどんな綺麗な絵が描かれ

ているのでしょう。その灯の中で百物語を

始めようとするモノは泉鏡花の戯曲にでて

くる妖しく美しい女性でしょう。しかし、

この美女に夢中になっていると、ロクでも

ない目に会いそうです。

鈴木かずえ

風光る昭和を知らぬ親子づれ

白尾 

幸子

 

昭和を生きた者として幼少より戦争の不

安や苦しみを経験した。戦後七十三年、平

穏に過すことの有難さをしみじみと思う。

平成育ちの親子が、おだやかな日々を幸せ

いっぱいに歩む光景が偲ばれ、ほほえまし

く思う。幸多かれと祈るのみです。

玉木 康博

弛緩せる我を一喝夏燕亀

津ひのとり

 

加齢も伴い、夏の暑さが私をうつむき加

減にさせていましたが、この句で背筋を伸

ばしました。中句が、肩越しに滑空する燕

の姿をよくあらわしており、「夏燕」と表

現したことも「一喝」の強さを示している

と思います。

中田とも子

樹々渡る天狗を見たり青嵐

星野 

幸子

 

ふと、高尾山に行った時のことを思い出

していました。頂上からは、新宿のビル群

を眺め、薬王院では法螺貝を鳴らしながら

帰ってくる僧列に会い、滝に打たれている

人を見ながらの下山道は、正に天狗さまに

逢えそうなひとときでした。

夏目 重美

夏木立そのひとの髪真白くて

大森 

敦夫

 

生気に満ちた夏木立と、中七以下との対

照が情感を醸し出す。「そのひと」は作者

にとって大切な人、「そのひと」の老いを

夏木立の中で実感した瞬間を見事に詠み

切っている。下五を「真白くて」と止めた

ことで効果的余韻を残している。成

戸 寿彦

硝子戸やこの頃来ない雀の子

鍵尾 

美鶴

 

この句から、硝子戸の向こうにいる人の

姿が、まず浮かび上がってくる。「この頃

来ない雀の子」という措辞から、春から夏

へと移りゆく「雀の子」の成長の季節感と

それを客観的に眺める人のやさしい眼差し

がよく描かれた佳句と思う。

西前 千恵

平和とはふつうの暮らし麦の秋

安西  

 

いま世界中で人災は元より、天災も地

震、水害、台風、猛暑と、こころ安まらな

い日々が続いています。ふつうの暮らしが

出来るこれこそが平和だと、作者の平和を

祈る気持ちが「麦の秋」のあたたかなやさ

しい季語にこめられていると思います。

原田 麦吹

大根を引き大根に倒さるる

永井  

 

お父さん畑へ行って大根取って来てと、

家庭菜園に。葉のよく繁った丸々と太った

大根、深く刺さった大根はなかなか抜けな

い。渾身の力を入れるが抜けない。左右に

揺さぶる、やっと抜けたが力余って仰向け

に。今夜の風呂吹き。美味、滑稽、諧謔だ。

日野 百草

母の日や難産だったかも知れぬ

永井  

 「だったかも知れぬ」ということは聞い

ていなかったはずだ。なのに難産と推測し

ている。自らの現状か、成れの果てか、そ

れとも出産に立ち会っただけか──何も説

明することなく母の日の季題に掛かるだけ

の難産の一言、はっとさせられた。

Page 11: 私の現代俳句 東京多摩地区現代俳句協会 兜太と鬼房gendaihaiku.gr.jp/wp/wp-content/uploads/2019/02/128tama.pdf― 2 ― 一方、鬼房との出会いは二十七、八歳の頃、宮城県栗原市で

―  ―11

127

平山 道子

つくしんぼ仲良きこともくたびれる

城内 

明子

 

日常生活の中でのいろいろな関係性を、

私達は絆といって大切にしている。友人と

の仲も然り。だが加齢などと共に体力も少

しずつ衰え、絆に向ける配慮の不十分さが

ストレスともなる。「つくしんぼ」から作

者の複雑な思いがよく伝わってくる。

古川 夏子

沈黙も言葉のひとつ夕端居

吉村春風子

 

沈黙は金。台所あたりで妻がぶつぶつ何

か言っている。聞いているような、ぼーと

聞き流すような珠玉の刻が流れる。縁に涼

風、笠智衆が居るような昭和の一風景。

冬木  喬

ところてん言葉の要らぬ間柄

根岸  

 

名優笠智衆の絶妙な会話の間について名

画「東京物語」の脚本家野田高梧は、笠の

無言の佇まい自体が言葉になっていると

言っている。掲句でそれを思う。

 

ここでの間柄には、静謐で豊かな時間が

流れている。心太が所を得て動かない。

堀部 嘉雄

蟻と戯る一万歩越えたから

新井 

温子

 

健康管理のため、毎日一万歩を歩くこと

に決めている。万歩計を覗くと一万歩を越

えていた。これからは余禄の時間である。

ふと、足元を見ると、蟻が懸命に行動して

いる。忽ち虜になった。歩く眼から作句の

眼に変わった作者が見える。

前田 光枝

前の人に隠れて覗くまむし草

沢田 

改司

 

ご自分だろうか隠れて覗いているのは、

それとも近所の子供たちの様子かしら。得

意気に「これまむし草って言うのよ」と誰

かが言った。こっちを向いている。ドラク

エのデビルプラントのようなモンスター花

を受け入れる時間が欲しい。

松戸  圭

ほととぎす時間どんどん透きとおる

山崎せつ子

 

時鳥の顕著な鳴き声を敢えて時間の流れ

に秘めて、辺りに清純な透明感を漂わせて

いる。近隣の山林公園などで聞くその声は

正に〈ほっちょんかけたか〉と語りかけて

くる。万葉集を始め古歌にも多く詠まれて

いる。作者の感性に脱帽。

三池  泉

旅先のメーデー固き茹で卵

小山 

健介

 

次のメーデーに皇太子が天皇に即位する

という。どうして?といいたい。若い頃、

メーデーの帰りに、国会議事堂の前で「岸

を倒せ」というシュプレヒコールのジグザ

グデモに参加した。どこの旅先だろうか。

メーデーに出会い、固い茹で卵がぴったり。

水野二三夫

清明やバタビヤの道に拾はれし猫

奥野 

亜美

 

一読、大木惇夫の『戦友別盃の歌』を

思った。「わが征くはバタビヤの街、君はよ

くバンドンを突け、」という有名な戦中の詩

の一節。バタビヤとは蘭領時代のジャカル

タのこと。猫の姿と椰子油の饐えたような

独特な空気の匂いとが不思議に調和する。

宮井 洋子

麦秋の入曽をすぎてチェロの人

西村 

賢治

 

入曽は西武線狭山市駅の一つ手前の駅で

ある。新興住宅地だがまだ田園地帯の名残

りがある。乗客の少なくなった初夏の車内

にチェロを抱えた人が居る、というその場

が入曽である。明るく詩情のあるふれた佳

句である。

Page 12: 私の現代俳句 東京多摩地区現代俳句協会 兜太と鬼房gendaihaiku.gr.jp/wp/wp-content/uploads/2019/02/128tama.pdf― 2 ― 一方、鬼房との出会いは二十七、八歳の頃、宮城県栗原市で

―  ―12

127

宮寺 幸子

大股も小股も一歩山開き渡

部 

洋一

 

ひんやりとした山の空気を感じながら一

歩々々踏みしめて登った若き日の山歩き。

あのときの感覚がいま甦ります。もう、二

度と登れない、山の楽しさを、思い出させ

てくれました。

望月 哲土

麦熟れて『東方見聞録』の国

折原あきの

 

マルコ・ポーロの頃の日本は豊かな金の

産出国であったが、今やそうではない。

 

しかし一面の熟れた麦畑を目にして、そ

の眩い金色に、日本はやはり黄金の国と感

じたのだ。物は考えようという作者の明る

い性格が窺われて楽しい作品。山

崎せつ子

落ち着かぬ果物ナイフ雷しきり

岩崎清太郎

 

夕食後の団欒のシーンだろうか、卓の白

い皿の上に果物ナイフが置かれている。果

物が何かの表記はない。果物が主役ではな

くあくまでナイフに重点が置かれている。

折から雷鳴が何度も聞こえる。思わずナイ

フを見る。何かキラリとした様に思った。

豊  宣光

雨蛙はたと鳴きやむ暗さかな

佐藤八重子

 

雨蛙は雨が降りそうになると鳴くとい

う。その鳴き声がはたとやんだ。空は黒雲

で覆われている。雨が近づいてきたのであ

る。あるいは、すでに降り始めているのか

もしれない。一瞬を切り取り、雨蛙と暗さ

を結びつけた感覚が鋭い。

米澤 久子

蟻と戯る一万歩越えたから

新井 

温子

 

蟻にちょっかいを出した事はあります

が、温子さんはウォーキングの一万歩を越

えた時に、蟻を見つけてどの様にして戯れ

たのでしょう。「蟻と戯る」と上七に置き、

「一万歩越えたから」と意表をついた措辞

のつけ方、大好きな句です。

我妻 民雄

死にたれば小蟹は潮へ身を合わす

三浦 

文子

 「身を合わす」は、古今和歌集(序)に

ある言葉で、帝と臣下とが歌聖人麿の歌に

より心をひとつにするの意であった。精神

的意味あいが濃い。死んだ小蟹を万物の母

である海が迎えにくる、いや海と身を合わ

すべく小蟹は死んだのだろう。

〇未定だった秋の吟行会の句会場が決定し

ました。吟行地の都立武蔵国分寺公園に

隣接した都立多摩図書館の二階セミナー

室です。厳しい抽選を何とか勝ち抜き確

保しました。皆さん、11月17日、ぜひ吟

行に参加してください。�

(石橋いろり)

〇本年四月より入会させていただきまし

た。今回初めての投句です。どうぞよろ

しくお願いいたします。�

〈石原俊彦〉

〇今年は厳しい夏でした。40 .8度Cという

高温記録の土地に住んでいるので、水を

こまめに飲んでひたすら家に籠っていた

日々です。でも、夜は虫の音に秋の気配

を感じているこの頃です。�〈一ノ瀬順子〉

〇髙野公一様、前号で拙句をお取り上げご

講評いただきまことに有り難うございま

した。こころ籠る評文、これからの励み

になります。�

(植竹利江)

〇ただいま、引き籠り実行中。もう、何が

起こってもたじろぎません。�〈奥野亜美〉

〇連日猛暑日が続きましたが、私は日中は

巣籠り状態でした。夜の八時になるとパ

トロールを兼ねての散歩です。�(五藤航)

〇平成の終りの年というのに、何という異

あけぼの便り

Page 13: 私の現代俳句 東京多摩地区現代俳句協会 兜太と鬼房gendaihaiku.gr.jp/wp/wp-content/uploads/2019/02/128tama.pdf― 2 ― 一方、鬼房との出会いは二十七、八歳の頃、宮城県栗原市で

―  ―13

常。猛暑続きの日々と、台風のよくまあ

来ることか。宇宙の異常か! 

涼しい国

が暑かったり、水害、大雨、台風、地震

と何とも辛いニュースばかり。皆様どう

ぞご自愛下さい。平成の次は静かな年に

なって欲しいものです。�

(玉木祐)

〇かつて被災地を経験した自分には、今夏

の日本各地の災害はまことに無残でお気

の毒。しばし途方に暮れた少年の日が、

今も脳裏によみがえる。�(地原光夫)

〇今年の夏の暑さは格別でした。これが当

たり前の夏になっていくと思うと怖いで

す。昔は冷房もありませんでしたが、自

然の涼風が懐かしいです。やはり昔は良

かった。�

(飛永百合子)

〇当会のイベントにいつも一番乗りで参

加されつねに好成績を収められていた、

木下蘇陽さんが今春亡くなられました。

又、先の俳句大会でも入賞され、今号で

は作品が一句鑑賞に取り上げられている

梅沢れい子さんも、入賞を知ることなく

突如他界されました。当会をこよなく愛

して下さったお二人のご冥福を心よりお

祈り申し上げます。�

(永井 

潮)

〇今年の「千両千両井月さんまつり」の

シンポジウムは、『幕末維新伊那街道の

夜明け』、井月俳句大会の講演テーマは

『井月と一茶』です。楽しみです。

(夏目重美)

〇やりたいこと、書きたいこと、話した

いことまだまだたくさんあるのですが、

残っている体力と相談すると、手遅れ、

残念と思うことの多いこの頃です。

(夏目 

瑶)

〇連日の猛暑に悲鳴を上げています。早く

涼しくならないかなと願うばかりです

が、どうぞお体お大切にお過ごしくださ

いますように。�

(西前千恵)

〇この夏の猛暑は、九十歳をとうに超えた

我が身にはかなりのボディブローでし

た。でも、涼風立つ頃にはまたもとの元

気になれるかと思っています。

(原田麦吹)

〇伊東類様、林みよ子様、127号で拙句

をお取り上げ鑑賞くださり有り難うござ

いました。大変うれしく存じます。お元

気でお過ごしください。�

(前田光枝)

〇猛暑お見舞い申し上げます。一日一日、

過ごすのが精一杯です。�

(松元峯子)

〇猛暑、酷暑、炎暑、遂に危険気象とまで

言われる夏でした。熱中症に気をつけよ

うと、庭の雑草の繁茂にも目をつぶっ

て、もっぱらエアコンの効いた部屋です

ごし、100回記念の高校野球をテレビ

で楽しみました。�

(三木冬子)

○岸本陽子様、127号で拙句を鑑賞して

いただきまして本当にありがとうござい

ました。何よりの励みでございます。重

い腰を上げ、終活をと思っております。

(水落清子)

○俳号を現役時代から職場の句会で使って

いた星せ

闇あん

に改めます。初学の頃、傾倒し

た蛇笏の高弟松村蒼石の「寒月のひかり

にとほき星の闇」から戴いたもの。

(水野二三夫)

○図書館のリサイクル図書で、矢島渚男さ

んの『与謝蕪村散策』を手に入れ、毎日

読んでいますが、教えられることが多い

です。蕪村は苦労人であり優しい父親で

もあったようですね。�

(宮井洋子)

○皆様、長い間お世話になりましたが、こ

の度、同居の息子が突然再起不能の病に

倒れて、四月以来入院、完治の見込みは

ありません。皆様との楽しかった思い出

を忘れません。今年いっぱいでお別れし

ます。本当に有り難うございました。

(三山喜代)

○前号で私の句をご鑑賞下さいました加藤

道代様、有り難うございました。編集の

方々のご健康祈り上げます。

(山﨑美紗緒)

Page 14: 私の現代俳句 東京多摩地区現代俳句協会 兜太と鬼房gendaihaiku.gr.jp/wp/wp-content/uploads/2019/02/128tama.pdf― 2 ― 一方、鬼房との出会いは二十七、八歳の頃、宮城県栗原市で

―  ―14

平成30年7月29日(日)

    於・武蔵野スイングホール

 

異例の進路を辿る台風に気を揉むな

か、東京多摩地区現代俳句協会・俳句大

会が開催された。出句者一九九名、投句

数一〇七四句、当日出席者八八名と盛会

であった。大森敦夫事務局次長の司会に

より恒例の会歌斉唱、根岸敏三副会長の

開会の辞、吉村春風子会長の挨拶があり、

本日の講師、高野ムツオ先生からご挨拶

句を戴いた。

  

台風のしっぽにつかまり多摩に来た

 

続いてご来賓の松澤雅世都区協・会長、

尾崎竹詩神奈川県

協・事務局長、並

木邑人千葉県協・

幹事長の各氏より

ご祝辞を賜りまし

た。金子兜太先生

に黙祷を捧げ、現

代俳句協会副会

長・小熊座主宰の

高野ムツオ先生に

よる記念講演「私

の現代俳句丨兜太と鬼房」があった。句

の心情を深く掘り下げ、俳句は混沌が大

切で、「創造であり、自然から学び、自

分で踠もが

きながら探る」との熱いメッセー

ジを戴いた。また会場に兜太、鬼房の墨

蹟が展示され参加者の目を惹いた。

 

休憩後、石橋いろり事業部長から成績

発表があり、大会賞はかわにし雄策氏が

受賞された。30位までの入賞者も顕彰し、

かわにし氏が謝辞を述べられた。続いて

大会選者の特選句披講に移り、特選賞が

各人に授与された。大会選者各氏からの

特選句についての講評も頂いた。

 

ついで各部からの報告と行事案内があ

り、最後に戸川晟副会長の閉会の挨拶に

より大会は滞りなく終了した。

 

引き続きの懇親会ではご来賓の方々を

囲み、和やかに交流の輪が拡がり、また

現俳出版部長の津高里永子氏から句集上

梓をお考えの方には本部出版部がサポー

トする旨のご案内を頂き、懇親会も名残

を惜しみつつ散会した。�

(関梓・記)

第36回東京多摩地区

現代俳句協会俳句大会

来賓の並木さん、尾崎さん、松澤さん

大会賞・かわにし雄策氏 左は吉村会長

会場風景

高野ムツオ先生の講演

Page 15: 私の現代俳句 東京多摩地区現代俳句協会 兜太と鬼房gendaihaiku.gr.jp/wp/wp-content/uploads/2019/02/128tama.pdf― 2 ― 一方、鬼房との出会いは二十七、八歳の頃、宮城県栗原市で

―  ―15

第36回 

俳句大会 

入賞作品

〈大会賞作品〉

肩書きがふわっと取れて草の絮

かわにし雄策

〈入賞作品〉

大根を引き大根に倒さるる永井  

日向ぼこニュースがニュース消して行く

原田 

洋子

すでに名で呼ばれし胎児春近し

菅沼 

淑子

蜩の他は無口な村境地原 

光夫

風船やぶつかりあひて傷つかず

根岸  

晩年の素顔の軽さ藍浴衣遠山 

陽子

耕せる限りの棚田盆の月宇賀いせを

紙風船突けば昭和の音がする

一ノ瀬順子

句読点打っても打っても春の夢

島 

さくら

炎天や負けて他校の校歌聞く

満田 

三椒

省略が効きすぎている羽抜鶏

冬木  

つぶやきの形と思ふ木の実かな

秋山ふみ子

これ以上伸びない手足籐寝椅子

飛永百合子

ネギ坊主横並びにはもう飽きた

村井 

一枝

達者かと電話のむこう咳ひとつ

松本  

どくだみの競わぬ白にして孤独

関戸 

信治

田を打つて土の匂ひを持ち帰る

広瀬 

元幸

夏草や可愛いい年寄なんて無理

藤倉 

頼江

タンポポの光持て来る見舞の子

吉田 

久美

跡取りのない田案山子が意地を張る

桑田 

制三

もの言ふを蟇に待たれてをりにけり

市川 

山猿

墓洗うだけの帰郷や駅弁買う

梅沢れい子

死ぬときも怒つてゐます原爆忌

原田 

麦吹

与太兜太母のふところ山笑ふ

山口 

楓子

大仏の背中で遊ぶかたつむり

沢田 

改司

点滴や春光あつめあつめ落つ

水落 

清子

するすると桃むけただけ二重丸

島田 

啓子

今日無事の夏大根の辛さかな

越前 

春生

しがらみを抜け陽炎になっている

佐々木克子

〈大会選者の特選句〉

 

高野ムツオ 

緑さすビニール傘の無名性平山 

道子

 

松澤 

雅世 

大好きと好きの窪みに春一番

島田 

啓子

 

尾崎 

竹詩 

日向ぼこニュースがニュース消して行く

原田 

洋子

 

並木 

邑人 

アカシア散る紙の鍵盤鳴るように

石橋いろり

 

沢田 

改司 

母の日のささやかなれど予約席

戸川  

 

橋爪 

鶴麿 

貼り紙の角のめくれて夏が来る

山崎せつ子

 

安西  

篤 

逝き方は生き方の〆さくら咲く

永井  

 

岩崎清太郎 

若葉風パン屋の広い硝子窓梅沢れい子

 

岡本 

久一 

冬草や片付けられない人とゐる

根岸  

 

金谷サダ子 

一睡の中を幾たび桜咲く髙野 

公一

 

田村  

實 

紙風船突けば昭和の音がする

一ノ瀬順子

 

地原 

光夫 

借景の春がベンチに置いてある

山本 

敏倖

 

遠山 

陽子 

耕して大地に耕されてゐる永井  

 

冬木  

喬 

雪しんしん国の出口が見付からない

原田 

洋子

 

前田  

弘 

昼顔に同じ声掛け同じ顔前田 

光枝

 

宮川としを 

寒卵割れば飛び出す小宇宙関根 

正義

 

三池  

泉 

死ぬときも怒つてゐます原爆忌

原田 

麦吹

 

柏田 

浪雅 

孕み子に手足の揃う日永かな

鈴木 

砂紅

 

江中 

真弓 

ほととぎすどんどん時間すきとおる

山崎せつ子

 

三浦 

土火 

山の子のあいさつしかと青胡桃

青木 

絢子

 

佐々木克子 

朝顔の紺のとけゆく隠岐の海

三浦 

土火

 

水野二三夫 

レーザーで謎解く古墳星流る

平田  

Page 16: 私の現代俳句 東京多摩地区現代俳句協会 兜太と鬼房gendaihaiku.gr.jp/wp/wp-content/uploads/2019/02/128tama.pdf― 2 ― 一方、鬼房との出会いは二十七、八歳の頃、宮城県栗原市で

―  ―16

 

吉村春風子 

えご散るや昭和平成見尽くして

佐々木克子

 

根岸 

敏三 

達者かと電話のむこう咳ひとつ

松本  

 

永井  

潮 

選 

ネギ坊主横並びにはもう飽きた

村井 

一枝

 

山崎せつ子 

どくだみの競わぬ白にして孤独

関戸 

信治

 

稲吉  

豊 

もの言ふを蟇に待たれてをりにけり

市川 

山猿

 

戸川  

晟 

若竹や靴特大の娘婿田山 

光起

 

小山 

健介 

春愁はホチキスで留め外に出でよ

山下 

遊児

 

大友 

恭子 

落椿毎朝拾ふおばあさん田村  

 

根岸  

操 

南から北から弔歌麦の秋武良 

竜彦

 

蓮見 

徳郎 

大根を引き大根に倒さるる永井  

 

石橋いろり 

錆声の海女が浮出る雲の峰地原 

光夫

 

大森 

敦夫 

昼炬燵母の飴缶ふた開いて池田 

洸生

第6回 

俳句研究会

6月23日(土)立川市子ども未来センター

担当幹事 

根岸敏三 

夏目瑶 

秋山ふみ子

     

玉木康博 

根岸操 

戸川晟

     

石橋いろり 

飛永百合子

     

参加者40名

★講話……川島一夫氏

     「自己変革と俳句の進展」

この家も英字表札濃あじさい

門野ミキ子

ふんわりと時間が浮いて合歓の花

山崎せつ子

栗の花苦手な人を遣り過ごす

関   

高々と雨を上げたる蓮の花髙野 

公一

未来とは大きな刺の茄子の花

川島 

一夫

茅花流し何度も使う茶封筒前田  

一いっ

幅ぷく

の墨絵の匂う夏座敷紺谷 

睡花

ときめきは不意に来るもの夏座敷

吉村春風子

愛犬がじっと動かず蛍狩り玉木 

康博

黒南風や図書館よりの督促状

秋山ふみ子

女にも覚悟はありぬサングラス二本松よし子

どうしてを飲み込んでいるレモン水

戸川  

時の日や掃除ロボットまた転進

稲吉  

荒梅雨や言葉少なく聞上手大森 

敦夫

晴れ男雨の菖蒲を誉めちぎる

飛永百合子

ゴミ袋下げどくだみの香を連れて

松元 

峯子

沖縄に住めば分かるか慰霊の日

永井  

白鷺の片足立ちの思案かな山口 

楓子

風捉え風の押しだす青田波河井 

時子

額の花百の石仏百の顔水落 

清子

角帯の風切る姿杜若佐藤八重子

梅雨晴間動物たちの向かう場所

前田 

光枝

ボウフラがダガジグダガジグエーホッホー

淵田 

芥門

武蔵野に余生つくろふ鉄線花

大友 

恭子

手遅れと思ふあれこれ夏の蝶

夏目  

女王蟻次の方舟待つつもり関根 

曳月

あぢさゐの今年のいろをよしとせず

亀津ひのとり

万緑や鏡の中にある故郷佐々木克子

扇風機前を陣取りフィットネス

根岸  

自動ドアならず真夏のローカル線

水野二三夫

梅雨空や一つのことば迷宮に

石橋いろり

化粧とふかなしき言葉鮎の宿

柏田 

浪雅

生きるとは拳の綱や沖縄忌夏目 

重美

天頂の月に耿々大西日長澤 

義雄

梅雨寒のちつとも減らぬ大ジョッキ

三浦 

土火

予報官指示棒の先梅雨前線根岸 

敏三

荒梅雨や太字の長寿健診書西前 

千恵

蛍飛び廃炉ゆらめく時流る櫻本 

愚草

浜木綿に吹かれて今朝は油壷

大槻 

正茂

優しさは試練経てこそ梅雨昏るる

飯田 

玉記

第7回 

俳句研究会 

7月28日(土)立川市子ども未来センター

担当幹事 

水野二三夫 

夏目瑶 

秋山ふみ子

     

飛永百合子 

根岸敏三 

大森敦夫

Page 17: 私の現代俳句 東京多摩地区現代俳句協会 兜太と鬼房gendaihaiku.gr.jp/wp/wp-content/uploads/2019/02/128tama.pdf― 2 ― 一方、鬼房との出会いは二十七、八歳の頃、宮城県栗原市で

―  ―17

     

佐藤八重子

     

参加者28名

★講話……小山健介�

     「多摩風土記を書いて」

涼しさは埴輪の腰のくびれかな

根岸  

かなしみの当たりどこなし冷奴

越前 

春生

虫の音をはさんで閉じる文庫本

大友 

恭子

塩を舐め中止と決める神輿渡御

小山 

健介

炎天や一塁二塁遠くなる根岸 

敏三

立葵傘寿の姉のハイヒール宮井 

洋子

山の風入れたポケット鰯雲水落 

清子

臍曲る野分接近多摩句会三浦 

土火

一八や正座の母が兄叱る佐藤八重子

おままごとしていた八月十五日

飯田 

玉記

バス停は森の入口蝉しぐれ秋山ふみ子

青芒風のうわさは信じない佐々木克子

手花火や母を受け継ぐ片ゑくぼ稻吉  

古代蓮見るたび一つ若返る永井  

牧場の牛の反芻雲の峰戸川  

べらぼうめぇどぜう丸鍋熱燗でぇ

淵田 

芥門

朝顔をとりどり咲かせ四世代

関   

異常とは始まりのとき熱帯夜

川島 

一夫

さるすべり白い嘘ならすぐ忘る

前田  

着地点目ざす青鷺風を呼ぶ白尾 

幸子

ひとしきり風の梳きゆく半夏生

吉村春風子

かなかなや今日仕残したこといくつ

山崎せつ子

一睡の夢まさびしく骸蝉水野二三夫

みんみん蝉何訴ふや鳴きつのり

夏目  

立葵なぎ倒されて空威張り大森 

敦夫

ありがたく団扇の風をいただきぬ

飛永百合子

真備町の空訝しがる翡かわ

翠せみ

石橋いろり

六条や怨みな負ひそゆすらうめ

大槻 

正茂

第8回 

俳句研究会 

8月25日(土)武蔵野市かたらいの道・

        

市民スペース

担当幹事 

夏目重美・夏目瑶・秋山ふみ子

     

根岸操・石橋いろり・関 

     

参加者 

39名

★講話……三浦土火

     「土火俳話

      

~ゴカイのたわごと~」

追伸の本音一行夜の秋越前 

春生

病葉をむしりなんとなく孤独

松元 

峯子

象徴の老ゆる背丸し敗戦忌宮井 

洋子

シャンプーの同じ残り香夜の秋

高坂 

栄子

新涼やすつくと高きシェフ帽子

稻吉  

老々介護出来る幸せ小鳥くる

水落 

清子

少年の顔に陰影夏果てる戸川  

鉛筆の長短の束わが秋思関   

東京の空が窮屈糸とんぼ新井 

温子

何もできずただ青い八月の空

山崎せつ子

母の忌や隠岐へと海霧の十三里

三浦 

土火

みんみんを鳴かせて曙杉しずか飛永百合子

窓といふ窓開け放つ涼新た山口 

楓子

一日の無為を咎むる残暑かな吉村春風子

紅一点弾ける末っ子鳳仙花佐藤八重子

死ぬときも我流を通し百日紅

前田  

人は人吾れは吾れなり盆踊鈴木 

浮葉

遺影でしか会えぬ父親終戦忌

石原 

俊彦

選ぶなら脇役がよし秋鰯根岸  

口寄せをしてくれそうな月夜茸

藤井 

みき

羅や喪主の安堵の透けて見ゆ

永井  

再稼働牡丹燈籠灯を入れる櫻本 

愚草

秋めくや銀座の夜の縄暖簾長澤 

義雄

銀河系のこの片隅の五・七・五

石橋いろり

片つぽの耳は蜩いとでんわ淵田 

芥門

それぞれの看取りの話秋日影

秋山ふみ子

夏果ての身に添う影をもてあます

佐々木克子

嵐去り忿怒のごとき雲の峰夏目  

目標変更の果てのいのちや長崎忌

亀津ひのとり

水神よ海山彦よ鎮め夏玉木 

康博

まくなぎを連れて西より大男

柏田 

浪雅

青春のよみがえる夏甲子園西前 

千恵

雑貨屋のコーヒーガムや秋澄めり

大森 

敦夫

装ひの力を借りし秋暑かな真壁 

正江

浜木綿や砂丘を渡る風のはて

大槻 

正茂

通学路目立つことなし赤のまま

根岸 

敏三

林間にもろもろの声夏了る水野二三夫

金子兜太の声あるラジオ野分来る

小山 

健介

坪庭の白砂眩しき竹の春夏目 

重美

Page 18: 私の現代俳句 東京多摩地区現代俳句協会 兜太と鬼房gendaihaiku.gr.jp/wp/wp-content/uploads/2019/02/128tama.pdf― 2 ― 一方、鬼房との出会いは二十七、八歳の頃、宮城県栗原市で

―  ―18

編集後記

☆鵯の声は時に賑やか過ぎると感じるが、その

うち空飛ぶ車が出現するとか。頭上は騒音では

なく鳥たちの声で充たされたい。�

(梓)

☆実家の老々介護の手伝いで度々郷里に帰って

いる。観光地化の裏で地方の衰退が進むのを痛

感。そういう現実も句に詠んでいきたい。�(光)

☆あんなに暑かった夏も、過ぎ去ってみると妙

に懐かしささえも感じる。紅葉の秋、食欲の

秋、吟行の秋、じっくり味わってみたい。�(百)

☆朝夕の犬の散歩では、季節の移り変わりが分

かり、つど季語に気付かされることが多い。つ

くづく、俳句をやっていたことに感謝。�

(せ)

☆性的少数者を表すLGBTが注目されてい

る。今年広辞苑に載り訂正文が出されて話題に

なった。LGBはそれぞれ性的指向、Tは性自

認の問題と言う。俳句も、異性の立場で作られ

た句があるが、どうなのだろう。�

(潮)

俳句研究会

第11回 

11月24日(土)午後1時

    

立川市子ども未来センター

    

立川駅南口徒歩13分

    (とじ込みはがきの地図参照)

    

電話042・529・8682

    

*講話 

夏目 

瑶氏

第12回 

12月22日(土)午後1時

    

立川市子ども未来センター

    

*講話 

沢田改司氏

第1回 

1月26日(土)午後1時

    

立川市子ども未来センター

    

*講話 

夏目重美氏 

    (いずれも会費五百円、出句三句)

〈在宅句会〉(投句参加)

▽開催日の一週間前までに投句してください。

▽出句は一人三句です。(選句はありません)

▽20×3㎝程の短冊に一句ずつ書いてください。

▽参加費は千円です。(出句時にお送りください)

▽句会終了後、全作品の得点入り清記用紙と高

点句、出句された作品の成績、寸評等をリポー

トとしてお送りします。 

(投句先)〒180-

0006

    

武蔵野市中町3-

29-

19 

蓮見 

徳郎方

    「俳句研究会」投句係宛  

事務局だより

―題字は三橋敏雄氏―

印刷所 

株式会社 

清水工房

    

TEL 

042-

620-

2626

ご 案 内

平成三十年十月二十四日発行

発行人 

吉村春風子

編集人 

永井 

発行所 

東京多摩地区現代俳句協会事務局

    

〒195―

0055

    

町田市三輪緑山1―

28―

19

稲吉 

豊方

    

TEL 

044-

987-

1716

304名(正会員244名・一般会員60名)

☆新入会員 

5名(敬称略)*印は正会員

*中島ひで(八王子市)  

石原俊彦(練馬区)

*菊池美知枝(町田市)*安達昌代(小平市)

*石川春兎(多摩市)

◆�

多摩地区協へのご入会は、随時受け付けて

おります。現代俳句協会会員で多摩地区に在

住の方は、会費は無料(申し込み手続き不

要)。それ以外の方は年会費2千円です。

 

お問合せ・ご連絡は事務局(下欄枠内)まで

★会員の現況(9月末現在)

日 

時 

平成30年11�

月17日(土)

場 

所 

都立武蔵国分寺公園

交 

通 JR西国分寺駅徒歩7分

集 

合 

西国分寺駅改札�9時30分

句会場 

都立多摩図書館セミナー室 

1時より

    (詳細は別紙をご覧ください)

★秋の吟行会

日 

時 

平成31年3月30日(土)午後2時

会 

場 

武蔵野スイングホール

    JR武蔵境駅北口徒歩2分

    (詳細は別紙をご覧ください)

★平成31年度定時総会

   

並びに陽春俳句会