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「桜(俳句)」から「イペー( haicai )」へ ブラジルにおける俳句の流れ ブラジルにおける俳句の紹介は 2 つの流れからなる。一つは 20 世紀初頭の ヨーロッパで盛んだったジャポニズムを通してである。ブラジルの文学者が フランス語で書かれた作品と出会い、紹介したことである。日本の 伝統的な俳句というよりも、三行詩として解釈されていた。 時を同じくして、ブラジルへの日本人移住が始まる。 これがもう一つの流れであり、俳句が haicai してブラジルに普及する大きな 貢献となったのである。 O HAIKAI Lava, escorre, agita a areia. E enfim, na batéia fica uma pepita. (Guilherme de Almeida) 洗い、水を切り、ゆさぶる 砂を。 やがて篩に 残るは一粒の金 Nas pontas dos galhos, dançam pela brisa, as bolas, das flores de ipê... (H. Masuda Goga) 枝の先 そよ風に踊る イペーの花よ ポルトガル語の季語集を編集し、イペーハイカイ同好会を主催 ブラジルの詩人アルメイダは日本文化との親交が深く、独自の ポルトガル語俳句の韻律をつくった イベロアメリカ研究所共同研究「グローバル化時代のラテンアメリカ研究と教育」 *イペー:ブラジルの国花で haicai の春の季語になっている

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Page 1: 「桜(俳句)」から「イペー(haicai)」へ€¦ · 「桜(俳句)」から「イペー(haicai)」へ ̶ブラジルにおける俳句の流れ̶ ブラジルにおける俳句の紹介は2つの流れからなる。一つは20世紀初頭の

「桜(俳句)」から「イペー(haicai)」へ ̶ブラジルにおける俳句の流れ̶

ブラジルにおける俳句の紹介は 2つの流れからなる。一つは 20世紀初頭の ヨーロッパで盛んだったジャポニズムを通してである。ブラジルの文学者が フランス語で書かれた作品と出会い、紹介したことである。日本の 伝統的な俳句というよりも、三行詩として解釈されていた。 時を同じくして、ブラジルへの日本人移住が始まる。 これがもう一つの流れであり、俳句が haicaiと してブラジルに普及する大きな 貢献となったのである。

畑打ℕて俳諧国を拓くべし

(高浜虚子)

珈琲の花明かりより出でし月

(佐藤念腹)

夜桜のごとくイペῴの花明かり(増田恆河)

涸れ滝を仰ぎて着きぬ移民船

(上塚瓢骨)

O HAIKAI Lava, escorre, agita a areia. E enfim, na batéia fica uma pepita. (Guilherme de Almeida)

洗い、水を切り、ゆさぶる 砂を。 やがて篩に

残るは一粒の金

Nas pontas dos galhos, dançam pela brisa, as bolas, das flores de ipê... (H. Masuda Goga)

枝の先 そよ風に踊る イペーの花よ

ポルトガル語の季語集を編集し、イペーハイカイ同好会を主催

ブラジルの詩人アルメイダは日本文化との親交が深く、独自の ポルトガル語俳句の韻律をつくった

一九〇八年、笠戸丸の船上で詠んだこの句がブラジルでの俳句の

始まりといわれている

ブラジルに移住する弟子、佐藤念腹に贈った餞別の句

コーヒー農園で豆を捥ぐ手は、壮大な自然を繊細な俳句に変えていった

念腹に師事し、後にブラジルの季語集を編集、ポルトガル語で作る俳句

―haicai―の普及に努めた

蛍火やブラジル移民われには是(佐藤念腹)

師の思いを受け継ぎ、ブラジルにおいて俳句普及運動に生涯をささげた

イベロアメリカ研究所共同研究「グローバル化時代のラテンアメリカ研究と教育」

*イペー:ブラジルの国花で haicai の春の季語になっている