組織的公正研究における マルチ・レベル・アプローチ: 集合...

18
組織的公正研究における マルチ・レベル・アプローチ: 集合レベル概念の測定法に注目して 法政大学キャリアデザイン学部教授 洋一郎 組織的公正研究の流れ 公正研究の波 組織における公正研究は、4つの波に分けることができる(Colquitt, Green- berg, & Zapata-Phelen, 2005)。第1の波は、分配的公正である。この波に含 まれる代表的な理論や研究は、相対的剥奪理論((Stouffer, Suchman, Devin- ney, Star, & Williams, 1949)、交換関係における公正問題(Homans, 1961; Blau, 1964)、衡平理論(Adams, 1965)、必要、平等などの多様な分配的公正 原理の提起などである(Deutsch, 1975 ; Leventhal, 1976)。第2の波は、手続 き的公正である。この波は、コントロール・モデル(Thibaut & Walker, 1975)や手続き的公正ルール(Leventhal,1980)の研究を含む。第3の波は、 相互作用的公正である。これは、権威者から示される正直さ、配慮、尊重など 対人要素に注目した対人的公正研究(Bies & Moag, 1986)、権威者から示され る中立性、信頼性、地位の尊重を取り上げた関係3要因(Lind & Tyler, 1988 ; Tyler & Lind,1992)、権威者からの説明や正当化を強調する情報的公正(Cro- panzano & Greenberg,1997 ; Greenberg,1993)が挙げられる。 さらに、1990年代以降、個人がなぜ、どのように公正を知覚するか、また公 正さに対してどのように反応するかについて、心理的メカニズムを包括的に説 明しようとする立場から統合化への波が現れた。この第4の波は、「集団志向 アプローチ」、「ヒューリスティック・アプローチ」、「反事実(counterfac- 組織的公正研究におけるマルチ・レベル・アプローチ 225 Hosei University Repository

Upload: others

Post on 04-Dec-2020

1 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 組織的公正研究における マルチ・レベル・アプローチ: 集合 ...cdgakkai.ws.hosei.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2016/11/gb...組織的公正研究における

組織的公正研究におけるマルチ・レベル・アプローチ:

集合レベル概念の測定法に注目して

法政大学キャリアデザイン学部教授 林 洋一郎

組織的公正研究の流れ

公正研究の波

組織における公正研究は、4つの波に分けることができる(Colquitt, Green-

berg, & Zapata−Phelen,2005)。第1の波は、分配的公正である。この波に含

まれる代表的な理論や研究は、相対的剥奪理論((Stouffer, Suchman, Devin-

ney, Star, & Williams,1949)、交換関係における公正問題(Homans, 1961;

Blau,1964)、衡平理論(Adams,1965)、必要、平等などの多様な分配的公正

原理の提起などである(Deutsch,1975; Leventhal,1976)。第2の波は、手続

き的公正である。この波は、コントロール・モデル(Thibaut & Walker,

1975)や手続き的公正ルール(Leventhal,1980)の研究を含む。第3の波は、

相互作用的公正である。これは、権威者から示される正直さ、配慮、尊重など

対人要素に注目した対人的公正研究(Bies & Moag,1986)、権威者から示され

る中立性、信頼性、地位の尊重を取り上げた関係3要因(Lind & Tyler,1988;

Tyler & Lind,1992)、権威者からの説明や正当化を強調する情報的公正(Cro-

panzano & Greenberg,1997; Greenberg,1993)が挙げられる。

さらに、1990年代以降、個人がなぜ、どのように公正を知覚するか、また公

正さに対してどのように反応するかについて、心理的メカニズムを包括的に説

明しようとする立場から統合化への波が現れた。この第4の波は、「集団志向

アプローチ」、「ヒューリスティック・アプローチ」、「反事実(counterfac-

組織的公正研究におけるマルチ・レベル・アプローチ 225

Hosei University Repository

Page 2: 組織的公正研究における マルチ・レベル・アプローチ: 集合 ...cdgakkai.ws.hosei.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2016/11/gb...組織的公正研究における

tual)アプローチ」という3種類に区分できる(Colquitt, Greenberg, & Za-

pata−Phelen,2005)。集団志向アプローチは、集団価値モデル、関係性モデ

ル、グループ・エンゲイジメントモデルが代表的理論である(Tyler & Blader,

2003; Blader & Tyler,2009)。ヒューリスティック・アプローチは、公正

ヒューリスティック理論や不確実性管理理論を含む(Lind & Van den bos,

2002)。反事実アプローチは、認知的準拠理論(Folger, 1986)、フェアネス理

論(Folger & Cropanzano,1998)から成る。

近年、上述の4つの波に続く新しいアプローチが、生まれつつある。ひとつ

は公正道徳アプローチであり、もう一つはマルチ・レベル・アプローチであ

る。本論文は、両者の中でも、特にマルチ・レベル・アプローチに注目して、

その測定の問題(measurement issue)について論ずる予定である。次に、公

正道徳アプローチとマルチ・レベル・アプローチについて簡単に解説する。

公正道徳アプローチ

このアプローチは、公正関心に対する道徳的動機を強調するものである。公

正さは、経済的利得や同一性を確認する手段(means)ではなく、それ自体実

現すべき目標(goal)や価値であると見なす。公正関心に対する道徳動機に注

目する考えは、フェアネス理論の「should counterfactual(~すべきであっ

たのに)」という視点でも示されている。一種の反実仮想はアンフェアな知覚

をもたらす重要な要素の一つであると考えられている。Folger(1998; 2001)

は、現在の公正理論が公正さや不公正さを体験する「犠牲者」(当事者)に偏

重していると批判した。すなわち個人は、公正判断のための道徳則や倫理観を

内在させており(Skitka & Housten,2001; Skitka & Mullen,2002)、内発的な

公正動機や関心を有するという考え方である。

Folger et al.(2001;2002)は、公正感を義務心に基づく反応と見なし、自分

の利害に関連のない不公正に怒りを感じたり、そうした違反者を罰したりする

行動の根拠となると主張した。さらに、Folger, Cropanzano & Goldman

(2006)は、道徳心に基づく不公正判断は、個人に怒りをもたらし、さらに違

反者を罰したいという強い感情的反応を伴うと主張した。これら一連の認知過

程は、自動的に行われるが、こうしたメカニズムは適応的な観点からも説明さ

226 法政大学キャリアデザイン学部紀要第7号

Hosei University Repository

Page 3: 組織的公正研究における マルチ・レベル・アプローチ: 集合 ...cdgakkai.ws.hosei.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2016/11/gb...組織的公正研究における

れる。道徳心に基づく公正研究は、公正に関する個人差研究を促した。例え

ば、公正さに対する一般的な関心度を測定する尺度として公正志向性尺度

(Justice orientation scale)が開発されている(Rupp, Byrne, & Wadlington,

2003)。

マルチ・レベル・アプローチ

この研究アプローチは、主に、集団状況における公正さを扱う。公正さを個

人知覚として扱うだけでなく、集合概念と見なす立場である。集団内の個人

は、他者との相互作用を通して公正判断を行う。例えば、代理公正(vicarious

justice; Kray & Lind,2002)や伝播的公正(contagious justice; Degoey,2000)

はこうした考えを概念化したものである。これらの研究は、個人の公正知覚が

集団内(ユニット内)において均質化(低分散)する性質を持つことを示唆す

る。集団内の等質な公正知覚を概念化したものが公正風土(justice climate)

である。理論的には、社会化プロセス、ASAプロセス(Attraction−Selection−

Attrition)、社会的情報処理理論(Social information processing theory)か

ら説明される(Liao & Rupp,2005)。これらの研究は、個人レベルの公正知覚

だけでなく、こうした集団・集合レベルの公正さを考慮する必要性を示唆す

る。

公正風土とは、「集団が全体的としてどのように処遇されているか」を示す

概念として定義される。公正風土は従来の個人的公正とは独立して、個人の態

度や行動を説明する力を示すと考えられている。しかし、公正風土概念の問題

点は、公正処遇の受け手やソースが曖昧であるという点である。集団全体が組

織や上位の権威者から公正に扱われているのかどうかを取り上げるのかあるい

は集団内の個人が公正に扱われているのかどうかに注目するのかが不明確であ

る。先行研究の解釈は、集団内で個人が公正に扱われているかどうかの認識を

部署やチーム単位で集約したものとして測定されている。

公正処遇の受け手やソースが曖昧という問題は、集合的公正概念をさらに精

緻化する必要性を示している(Cropanzano, Li, & James,2007)。そこで筆者

は、集合的公正を整理するために表1のような分類を提起したい。

表1は、公正の処遇のターゲットとソースに分け、それぞれ個人と集団を仮

組織的公正研究におけるマルチ・レベル・アプローチ 227

Hosei University Repository

Page 4: 組織的公正研究における マルチ・レベル・アプローチ: 集合 ...cdgakkai.ws.hosei.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2016/11/gb...組織的公正研究における

表1:集合的公正の類型

ソース

集団内 集団間(外)

個人 集団 個人 集団

ターゲット

個人 ① ② ③ ④

集団 X Y ⑤ ⑥

定したものである。ターゲット(target)は処遇された対象(フェアあるいは

アンフェアに処遇されたのは誰か)を示し、ソース(source)とは、処遇を行

う者(フェアあるいはアンフェアな処遇をする者は誰か)を表す。ターゲット

もソースも集団内と集団間に分けることができる。さらにソースは集団内と集

団間(外)に分けた。

その結果、表1に示すように合計で8パターン(セル)が仮定されるが、こ

の枠組にしたがって各セルの内容について説明する。

集合的公正研究の分類

セル1と2は、伝統的な公正研究の概念化を引き継いでいる。セル1の部分

は、ある個人(当事者)が、集団内の権威者や同僚からフェアに扱われたかど

うかを問題にする。従来の研究における典型的な相互作用的公正がこれに該当

する。これら個人の知覚を集約(aggregate)したものが従来の公正風土であ

る。セル2は、ある個人(当事者)が、集団そのものからフェアに扱われたか

どうかを取り上げる。従来の研究における典型的な分配的公正や手続き的公正

がこれに該当する。これら個人の知覚を集約(aggregate)したものも従来の

公正風土概念と一致する。

セル3と4も従来の公正概念と似ているが、他集団の個人や集団からの処遇

つまり集団間プロセスを取り上げている点においてこれまでの研究と少し異な

る。組織的公正研究は、集団内研究にやや偏っており、集団間プロセスに関す

る知見は必ずしも十分ではない。セル3は、ある個人(当事者)が他集団の個

228 法政大学キャリアデザイン学部紀要第7号

Hosei University Repository

Page 5: 組織的公正研究における マルチ・レベル・アプローチ: 集合 ...cdgakkai.ws.hosei.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2016/11/gb...組織的公正研究における

人から公正に扱われたかどうかを問題にする。これも相互作用的公正の一類型

であると考えられる。会社でいえば、他部署の上位者からフェアに扱われたか

どうかというようなケースが当てはまる。これらの知覚を集約して、公正風土

として概念化することもできよう。セル4は、ある個人(当事者)が、他集団

あるいは集団外の存在から公正に扱われたかどうかを問題にする。これも分配

的公正や手続き的公正が基本的に該当する。これら個人の知覚を集約して、公

正風土を形成することも可能である。

セル5と6は、セル3、4と同様に集団間処遇に注目するが、処遇のター

ゲットが自集団という集合レベルである点が特徴である。集団レベルの処遇が

公正かどうかに注目した概念としては、友愛的剥奪感(fraternal deprivation)

が良く知られている。これは相対的剥奪の一類型である。相対的剥奪理論とは

個人が得た資源に対する満足感が獲得資源の絶対量ではなく、他者が得た資源

と比較した相対量によって決定されると説明するものである(Stouffer, Such-

man, Devinney, Star, & Williams,1949)。友愛的剥奪とは、集団間の比較、

特に準拠集団と他集団との比較によって生じる(不)満足感や剥奪感を表す

(Runciman, 1966)(1)。セル5は、自分の集団が他集団の個人(権限者)から

フェアに扱われたかどうかを問題にする。セル6は、他集団から公正に処遇さ

れたかを問題にする。人種間の差別問題などはこれに該当すると考えられる。

これらの個人知覚を集団ごとに集約すれば新しい公正集合概念となる。

Xと Yのセルは、これに合致する公正さを現実的に想定しにくいので、現

在は定義していない。今後の検討課題である。

マルチ・レベル・アプローチの必要性

5と6のセルは、自集団がフェアに扱われているかどうかを論じている。し

かし、このセルに当てはまる公正知覚を集約し、集合概念と構成した研究は十

分ではない。よって、これらの知覚を集団ごとに集約すれば、新しいタイプの

風土概念として提起できよう。ただし、集合的な概念(collective constrct)

をどのように測定するか(measurement issue)については、方法論的な合意

や理論的根拠が求められる。

1990年代の後半から、組織行動や産業・組織心理学の分野において、マル

組織的公正研究におけるマルチ・レベル・アプローチ 229

Hosei University Repository

Page 6: 組織的公正研究における マルチ・レベル・アプローチ: 集合 ...cdgakkai.ws.hosei.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2016/11/gb...組織的公正研究における

チ・レベルに基づくリサーチが一つの研究トレンドになっている。社会科学で

分析されるデータの多くは階層構造が一般的である。採取されたデータは、多

くの場合、高い水準にネストされた低い水準の観測値(observation)から構

成されている。学校にネストされた生徒、会社にネストされた従業員、個人に

ネストされた繰り返しの測定値(repeated measures)などである。企業組織

とは一般的に階層化された構造体であり、その分析にはマルチ・レベル・アプ

ローチが有効である。

こうした状況において、高い水準(集合レベルの構成概念)をどのように定

義して測定するかという問題は極めて重要である。集合レベルの構成概念は、

Chan(1998)、Hofmann(2002)、Van Mierlo, Vermunt, & Rutte(2009)に

よってタイポロジーやガイダンスが示されている。以下においては、彼らの提

起を紹介しながら、集合的構成概念(collective construct)の基本的な考え方

について説明したい。

マルチ・レベル研究に関する理論的・方法論的論議

社会科学において、研究者達は、まとまりのある一連の観察可能な現象を定

義するためそれらを抽象化し仮説的概念(hypothetical construct)として取

り扱う。これらは構成概念(construct)と呼ばれ、観察された諸現象を理解

するための手がかりとなるものである。心理学における一般的な構成概念は、

能力やパーソナリティであろう。この構成概念は、本来はレベルフリーなもの

である(Morgeson & Hofmann,1999; Hofmann,2004)。例えば、あるサッカー

チームのことを、得点能力に優れたチームであると形容することがある。別の

サッカーチームは、つぼにはまった時は手がつけられないが、気分にむらが

あってもろい点もあると形容される。能力や気分など、元来、個人由来の概念

を用いて集団の特徴を表現するケースは多い。

このように心理学で扱われる概念の多くは、個人レベルと集団レベルの双方

で分析の対象となることが多い。例えば、規範(norm)、効力感(efficacy)、

風土(climate)などは個人レベルと集合レベルの2種類が考えられる。この

場合、個人レベルと集合レベルの値はどのように関連するか、両者は全く別の

測定値なのかという問題である。集合レベルの概念化と測定について様々な考

230 法政大学キャリアデザイン学部紀要第7号

Hosei University Repository

Page 7: 組織的公正研究における マルチ・レベル・アプローチ: 集合 ...cdgakkai.ws.hosei.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2016/11/gb...組織的公正研究における

えが提起されているが、本論文は、個人レベルの測定を集合レベルに集約(ag-

gregate)する方法について簡単に説明する。集合レベルの概念化と測定につ

いてのより詳細な説明は、Bliese(2000)、Kozlowski & Klein(1999)、Hof-

mann(2002)を参照のこと。

コンポジション・モデル(composition model)

コンポジション・モデルは、特定レベルにおいて操作化された構成概念

(construct)が別のレベルにおける別の形態にどのように関係するかについ

て説明するものである(James,1982; Klein, Dansereau, & Hall,1994; Rous-

seau,1985)。個人レベルのデータから集団レベルのデータを構成するための

方法であると言い換えることも可能である。例えば、個人レベルの手続き的公

正が手続き的公正風土にどのように関連するか、個人レベルの感情が集団レベ

ルの感情にどのように関連するかといった研究があげられる。

Chan(1998)は、コンポジションの基本的なタイポロジー(typology)を

提起している。すなわち加算モデル(additive model)、直接合意モデル(di-

rect−consensus model)、レファレント・シフト合意モデル(referent−shift

consensus model)、散らばりモデル(dispersion model)、プロセスモデル

(process model)という5類型である(表1参照)。本論文は、個人レベルの

測定値を集合レベルへと組成(compose)するプロセスに注目するので、直接

合意モデルとレファレント・シフト合意モデルについてさらに説明を加える。

組織研究で使用されるモデルは多くは直接合意モデルとレファレント・シフト

合意モデルのふたつである(Van Mierlo, Vermunt, & Rutte,2009)。

直接合意モデルは、低いレベルにおける集団内合意を用いて、低レベルにお

いて概念化と操作化された概念が高レベルにおいて別の形態を示す概念とどの

ような機能的な同型性(isomorphic)を示すかを明らかにするために用いら

れる(Chan,1998)。高レベルの概念に意味があるかどうかは、低レベルユニッ

ト間の合意に依存する。Van Mierlo et al.(2009)は、Chan(1999)の提起

に基づき、直接合意モデルを次の2ステップから構成されると述べている。第

1ステップは、関心を向けている2つの構成概念(低レベルのものと高レベル

のもの)の定義と操作化を行う。例えば、手続き的公正に対する個々の反応は

組織的公正研究におけるマルチ・レベル・アプローチ 231

Hosei University Repository

Page 8: 組織的公正研究における マルチ・レベル・アプローチ: 集合 ...cdgakkai.ws.hosei.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2016/11/gb...組織的公正研究における

組織に対する手続き的公正知覚と定義する一方で、集団における個々の反応の

平均値を公正風土として定義するというような手続きである。第2ステップ

は、個々の観測値を高レベル(集団レベルなど)に集約するための前提条件に

関する手続きである。低レベルの観測値を集約するための一般的な基準は、集

団内の合意である。個々の反応を平均した値に基づき信頼性と妥当性のある集

団レベルの概念を構築するためには、各メンバーの意見や反応が一貫している

(一定の合意性が見られる)という条件が求められる。例えば、個々の手続き

的知覚を集約し(グループごとに平均値を求めて)公正風土という集団レベル

の概念を構成するためには、各メンバーの手続き的公正知覚が類似している必

要がある。

レファレント・シフト合意モデルは個々の反応をベースに集団レベルの概念

を形成するという点で直接合意モデルと似ている。ただしこのモデルは、個々

人の反応を尋ねる際の質問項目のレファレントを変更(shift)する。例えば、

個人の公正知覚を測定する場合、「あなたは公正に扱われていると思います

か」のようにレファレントは「あなた」である。この質問項目に対する個々人

の反応を集団レベルに集約(平均値化)したものが直接合意モデルである。こ

れに対して、レファレント・シフト合意モデルは、集団の公正風土を測定する

ために、レファレントを以下のようにシフトさせる。つまり「あなたは公正に

扱われていると思いますか」という個人レベルの質問を「あなたの部署は、公

正であると感じますか」というようにレファレントを「あなた」から「(あな

たの)部署」に変更する。この変更バージョンの項目に対する個々の反応を集

団ごとに集約する。これがレファレント・シフト合意モデルである。

直接合意モデルとレファレント・シフト合意モデルのどちらか適切であるか

について明確な判断基準がある訳ではない。例えば、集団効力感は、「我々は

このプロジェクトをやりとげることができる」というようにレファレントは

「私」ではなく「我々」において測定することが一般的である。しかしながら

リーダーシップ研究では、どちらかを一意に決定されているわけではない。

よって直接合意とレファレント・シフトのどちらが適切かについては研究やリ

サーチの状況に応じて、その都度、適切に判断をしていく他はない。

232 法政大学キャリアデザイン学部紀要第7号

Hosei University Repository

Page 9: 組織的公正研究における マルチ・レベル・アプローチ: 集合 ...cdgakkai.ws.hosei.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2016/11/gb...組織的公正研究における

Table1:コンポジション・モデルの類型(Chan(1998)の一部を引用)

異なるレベル間の機能的な連関

典型的な操作的なコンビネーション

(op

erat

ion

alco

mbi

nat

ion)

経験的な支持はどのように得られるであろうか

加算モデル

高レベルユニットの値は低レベルのユニットの

総和(

sum

mat

ion)である。ただし低レベル

ユニット間の分散は考慮せず。

低レベルの得点や値の単純集計(総和)あるい

は平均値。

加算指標の妥当性による。低レベルユニットの

平均値。

直接合意モデル

高レベルの構成概念が意味を持つかどうかは、

低レベルユニット間の合意によって決まる。

集団内合意(

wit

hin

−gro

up

agre

emen

t)がコ

ンセンサス指標であり集約を正当化する。

集約値の妥当性による。集団内合意指標の値

(r w

g)。

レファレント・シフト合意モデル

低レベルのユニット間の合意を検討する。しか

し参照する対象が基本的に個人から集団などに

シフトする。

低レベルユニットの新しいレファレントに関す

る集団内合意がコンセンサス指標であり集約を

正当化する。

集約値の妥当性による。集団内合意指標の値

(r w

g)。

散らばりモデル

高レベルの構成概念が意味を持つかどうかは、

低レベルユニット間のちらばりによって決ま

る。

集団内分散(その派生形)が高レベルの概念と

して操作化される。

散らばり指標の妥当性による。低レベル値にお

ける集団内分布に

Mu

lti−

Mod

alit

yがないこ

と。

プロセスモデル

高レベルのプロセスパラメータと低レベルのプ

ロセスパラメータが相似である。

単一のアルゴリズムはない。すべての重要なパ

ラメータに関して相似がないかどうかを確かめ

る。

各レベルにおいて、原因系(

sou

rce)構成概念

と結果系(

targ

et)の概念との法則的(

no-

mol

ogic

al)妥当性による。これによって各レ

ベルで共通の中核的要素と特定レベルに固有の

要素を区別できる。

組織的公正研究におけるマルチ・レベル・アプローチ 233

Hosei University Repository

Page 10: 組織的公正研究における マルチ・レベル・アプローチ: 集合 ...cdgakkai.ws.hosei.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2016/11/gb...組織的公正研究における

データ集約の正当性を証明する統計的証拠

個人レベルの観測値を集約して高レベルの概念を構成する場合、上記のコン

ポジション・モデルに基づいて変数を構成していく。このように個々の値を集

団や集合レベルに集約することを正当化する統計的根拠が求められる。個人レ

ベルの観測値を集合レベルに集約することを正当化する統計的根拠として次の

4指標が典型的なものとして知られている。すなわち1)rwg、2)ICC(1)、

3)ICC(2)、4)郡内群間分析(within−and−between−analysis1: WABA

1)の4種類である。

rwg:計算式は以下の通りである(2)。

一項目の場合は、以下の式で表わされる。

rwg (1)#1!(Sxj2"!eu

2 )

ここで Sxj2 は、観察された分散であり、!eu

2 は期待される分散を示す。期待

分散は一様分布という強い仮定を置いている。

複数項目(スケール)の場合は、以下の式で表わされる。

rwg (j )# J 1!(ms xj2"!eu

2 )! "

J 1!(ms xj2"!eu

2 )! ""ms xj

2"!eu2

ここで ms xj2 は、各項目の観察された分散の平均値を表し、!eu

2 は上と同様に

期待分散(一様分布)を示す。Jは、尺度を構成する項目数である。

どちらのケースも、rwgとは、仮定された分布(一様分布)に対する観察さ

れた分布の比を意味する。集団ごとの計算結果の平均や中央値を報告すること

が一般的である。rwgは、集団内分散に基づく値であり、集団間の情報は考慮

されていない点に注意したい。

ICC(1)と ICC(2):ICCとは、Intraclass correlation coefficientの頭文字

をとったものであり、級内相関係数と呼ばれる。これらの指標は、集団構成概

234 法政大学キャリアデザイン学部紀要第7号

Hosei University Repository

Page 11: 組織的公正研究における マルチ・レベル・アプローチ: 集合 ...cdgakkai.ws.hosei.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2016/11/gb...組織的公正研究における

念がどれくらい信頼できるかを表すものである。例えば、つまり直接合意モデ

ルとレファレント・シフト合意モデルに基づく集合概念が信頼に値するかどう

かについて判断する指標となる。

はじめに ICC(1)の式は、いくつかあるが ANOVA(分散分析)モデルに基

づき群間分散と郡内分散の要素を対比したものである。以下の式が一般的であ

る(Bartko,1976; Bliese,2000)。

ICC (1)# MSB!MSWMSB"(k!1)MSW

注:MSB=between−group mean square(群間平均平方);MSW=within−

group mean square(郡内平均平方);k=集団のサイズ(一般的には集団サ

イズの平均)

James(1982)は、ICC(1)を評定者間の信頼性(Interrater Reliability)

のインデックス(評定者間での代替可能性〈substitutable〉)とみなし、この

インデックスに基づき個々の反応(観測値)をグループごとに集約することを

推奨した。

2つ目の ICC指標は、ICC(2)である(Bartko,1976; Bliese,2000; James,

1982)。この指標は集団平均の信頼性推定値とされる。つまり集団内の各個人

が合意しているかどうかを推定しているわけではない。次式による。

ICC (2)#MSB!MSWMSB

WABA(Within−and−between analysis):WABA1は2者間相関を級内

と級間に分解したものである。すなわちこの相関は、Xと Yの群間イータ(ηBx

と ηBy)、Xと Yの郡内イータ(ηwxと ηwy)、集団間相関(rBxy)、集団内相関

(rwxy)の4つに分解される。WABA1は、級内イータ(within eta)と級間

イータ(between eta)を比較し、所与の変数の分散が級内、級間、あるいは

両方のどこに所在するかを評価する。下記の式を参照。

組織的公正研究におけるマルチ・レベル・アプローチ 235

Hosei University Repository

Page 12: 組織的公正研究における マルチ・レベル・アプローチ: 集合 ...cdgakkai.ws.hosei.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2016/11/gb...組織的公正研究における

rrTxy "!Bx!By!Bxy !!Wx!Wy!xy

集合概念としての公正さの可能性

本論文は、これまでの組織的公正研究の発展を概説し、これらが個人的公正

に限定されていると述べた。そこで集合レベルの公正さの必要性が指摘され、

筆者はこれを研究するための理論的フレームワークを提起した。その中でも、

表1で説明したように、自集団の処遇に関する公正タイプは十分に焦点が向け

られていないので、今度、発展が期待される。

個人レベルの観測値や測定値を集団レベルに集約する(多くの場合は平均値

を算出する)ための統計的根拠や方法について説明した。このように集団レベ

ルの変数が生成することによって階層線型モデリング(Hierarchical Linear

Modeling=HLM)や構造方程式モデリングを適用することが可能になる。

本論文は、組織的公正のマルチ・レベルに関してのみ論じたが、公正が影響

を与えるアウトカム(満足感、コミットメント、組織シチズンシップ行動)に

ついてもマルチ・レベルを仮定する必要があると思われ(Lavellae Rupp, &

Brockner,2007)。

さらに、近年、リーダーシップにおいてもマルチ・レベル研究が盛んである

が、こうした周辺研究との相互作用も求められると考えられる。さらにこうし

たマルチ・レベルの議論が道徳的アプローチや神経生理学的なアプローチな

ど、近年の新しい研究の流れとどのように関連するかについて道筋をつけるこ

とも今後の研究において求められると考えられる。

実践的な含意について述べると、フェア特にアンフェアな感覚は個人に及ぼ

すインパクトが強く(Gilliland, Benson, & Schepers,1998; Gilliland,2008)、

周囲に伝染しやすいと考えられる。この傾向は、近年の、ポジティブな事象よ

りもネガティブな事象の方が個人に与えるインパクトが強いというポジティ

ブ・ネガティブ・アシンメトリー(positive negative asymmetry)やネガティ

ビティ・ドミナンス(negativity dominance)の観点からも支持される

(Baumeister, Bratslavsky, Finkenauer, & Vohs,2001; Rozin, & Royzman,

236 法政大学キャリアデザイン学部紀要第7号

Hosei University Repository

Page 13: 組織的公正研究における マルチ・レベル・アプローチ: 集合 ...cdgakkai.ws.hosei.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2016/11/gb...組織的公正研究における

2001)。よって個人の些細な不公正知覚が周囲に拡がり従業員の意識が荒廃し

ないようなフェア・マネジメントの徹底が求められる。これは従業員のリテン

ションを促す最も効果的な方策のひとつであろう。

[注]

(1)これに対して、個人間比較によって形成される不満などの感情は利己的剥

奪(egoistic deprivation)と呼ばれる(Runciman,1966)。相対的剥奪と

いえば、一般的に利己的剥奪を意味する。

(2)本論文の示した数式はオリジナル式である。修正バージョンの等式は、

Lindell & Brandt(1997,1999)や Lindell, Brandt, & Whitney(1999)

を参照のこと。

[引用文献]

Adams, J. S.(1965). Inequity in social exchange. In L. Berkwitz(Ed.), Advances

in Experimental Social Psychology(Vol.2, pp.267−299). New York: Academic

Press.

Baumeister, R. F., Bratslavsky, E., Finkenauer, C., & Vohs, K. D.(2001). Bad is

stronger than good. Review of General Psychology,5,323−370.

Bies, R. J. & Moag, J. S.(1986). Interactional justice: Communication criteria for

justice. In R. J. Lewicki, B. H. Sheppard, & M. H. Bazerman(Eds.), Research

on negotiation in organizations(pp.43−55). Greenwich, CT: JAI Press.

Blader, S. L., and T. R. Tyler.(2009). Testing and extending the group engage-

ment model: Linkages between social identity, procedural Justice, economic

outcomes, and extrarole behavior. Journal of Applied Psychology,94,445−464.

Blau, P.(1964). Exchange and Power in Social Life. New York: Wiley.

Bliese, P. D.(2000). Within−group agreement, non−independence, and reliability:

Implications for data aggregation and analysis. In K. J. Klein & S. W. J. Ko-

zlowski(Eds.), Multilevel theory, research, and methods in organizations(pp.

349−381). San Francisco: Jossey−Bass.

Chan, D.(1998). Functional relations among constructs in the same content do-

main at different levels of analysis: A typology of composition models. Journal

of Applied Psychology,83,234−246.

組織的公正研究におけるマルチ・レベル・アプローチ 237

Hosei University Repository

Page 14: 組織的公正研究における マルチ・レベル・アプローチ: 集合 ...cdgakkai.ws.hosei.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2016/11/gb...組織的公正研究における

Colquitt, J. A., Greenberg, J., & Zapata−Phelan, C. P.(2005). What is organiza-

tional justice? A historical overciew. In J. Greenberg & J. Colquitt(Eds).

Handbook of organizational justice.(pp.3−58). Mahwah, NJ: Lawrence

Erlbaum Associates, Publishers.

Cropanzano, R. & Greenberg, J.(1997). Progress in organizational justice: Tun-

neling through the maze. In C. L. Cooper & I. T. Robertson(Eds.), Interna-

tional Review of Industrial and Organizational Psychology(vol.12, pp.317−

372). New York: John Wiley.

Cropanazano, R., Li, A., & James, K.(2007). Intraunit justice and interunit jus-

tice and the people who experience them. Multi−Level Issues in Organizations

and Time,6,415−435.

Degoey, P.(2000). Contagious justice: Exploring the social construction of justice

in organizations. Research in Organizational Behavior,22,51−102.

Deutch, M.(1975). Equity, equality, and need: What determines which value will

be used as the basis of distributive justice? Journal of Social Issues,31,137−

149.

Folger, R. & Martin, C.(1986). Relative deprivation and referent cognitions: Dis-

tributive and procedural justice effects. Journal of Experimental Social Psy-

chology,22,531−546.

Folger, R. & Cropanzano, R.(1998). Organizational justice and human resource

management. Thousand Oaks, CA: Sage Publications.

Folger, R., & Cropanzano, R.2001Fairness theory: Justice as accountability . In J.

Greenberg & R. Folger(Eds.), Advances in organizational justice(pp.1−55).

Lexington, MA: New Lexington Press.

Folger, R., Cropanzano, R., & Goldman.(2005). What is the relationship between

justice and morality ? In J. Greenberg & J. Colquitt(Eds). Handbook of or-

ganizational justice.(pp.215−246). Mahwah, NJ: Lawrence Erlbaum Associ-

ates, Publishers.

Gilliland, S. W.(2008). The tails of justice: A critical examination of the dimen-

sionality of organizational justice constructs. Human Resource Management

Review,18,271−281.

Gilliland, S. W., Benson, L., & Schepers, D. H.(1998). A rejection threshold in jus-

238 法政大学キャリアデザイン学部紀要第7号

Hosei University Repository

Page 15: 組織的公正研究における マルチ・レベル・アプローチ: 集合 ...cdgakkai.ws.hosei.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2016/11/gb...組織的公正研究における

tice evaluations: Effects on judgment and decision−making. Organizational

Behavior and Human Decision Processes,76:113−131.

Greenberg, J.(1993). The social side of fairness: Interpersonal and informational

classes of organizational justice. In R. Cropanzano(Ed.), Justice in the work-

place: Approaching fairness in human resource management(pp.79−103).

Hillsdale, NJ: Lawrence Erlbaum.

Hofmann, T. D. A.(2002), Issues in multilevel research: theory development,

measurement, and analysis, In Rogelberg, S.G.(Ed.), Handbook of Research

Methods in Industrial and Organizational Psychology , Blackwell, Oxford, pp.

247−74.

Homans, G.(1961). Social behavior: Its elementary forms. New York: Harcourt

Brace.

James LR.(1982). Aggregation bias in estimates of perceptual agreement. Jour-

nal of Applied Psychology ,67,219−229.

Klein, K. J., Dansereau, F., & Hall, R. J.(1994). Levels issues in theory develop-

ment, data collection, and analysis. Academy of Management Review,19,195−

229.

Kozlowski, S. W. J., & Klein, K. J.(2000). A multilevel approach to theory and re-

search in organizations: Contextual, temporal, and emergent processes. In K.

J. Klein & S. W. J. Koslowski(Eds.), Multilevel theory, research, and methods

in organizations:3−90. San Francisco: Jossey−Bass.

Kray, J. L., & Lind, E. A.(2002). The injustices of others: Social reports and the

integration of others’ experiences in organizational judgments. Organizational

behavior and human decision processes,89,906−924.

Lavelle, J. J., Rupp, D. E., & Brockner, J.(2007). Taking a multifoci approach to

the study of justice, social exchange, and citizenship behavior: The target simi-

larity model. Journal of Management,33,841−866.

Leventhal, G. S.(1976). Fairness in social relationships. In J. W. Thibaut, J. T.

Spence, & R. C. Carson(Eds.), Contemporary topics in social psychology .

Morristown, NJ: General Learning Press.

Leventhal, G. S.(1980). What should be done with equity theory? New approaches

to the study of fairness in social relationship. In K. Gergen, M. Greenberg, &

組織的公正研究におけるマルチ・レベル・アプローチ 239

Hosei University Repository

Page 16: 組織的公正研究における マルチ・レベル・アプローチ: 集合 ...cdgakkai.ws.hosei.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2016/11/gb...組織的公正研究における

R. Willis(Eds.), Social exchange(pp.27−55). New York: Plenum.

Liao, H., & Rupp, D. E.(2005). The Impact of Justice Climate and Justice Orien-

tation on Work Outcomes: A Cross−Level Multifoci Framework. Journal of

Applied Psychology,90,242−256.

Lind, E. A. & Tyler, T. R.(1988). The social psychology of procedural justice. New

York: Plenum.(菅原郁男・大渕憲一[訳]1995 フェアネスと手続きの社会心

理学:裁判、政治、組織への応用 ブレーン出版).

Lind, E. A. & Van den bos, K.(2002). When fairness works: Toward a general the-

ory of uncertainty management, Research in Organizational Behavior,24,

181−223.

Lindell, M. K. & Brandt, C. J.(1997). Measuring interrater agreement for ratings

of a single target. Applied Psychological Measurement21,271−278.

Lindell, M. K., & Brandt, C. J.(1999). Assessing interrater agreement on the job

relevance of a test: a comparison of the CVI, T, rwg(j), and r*wg( j)indexes. Jour-

nal of Applied Psychology ,84,640−647.

Lindell, M. K., Brandt, C. J., & Whitney, D. J.(1999). A revised index of interrater

agreement for multi−item ratings of a single target. Applied Psychological

Measurement,23,127−135.

Morgeson, F. P., & Hofmann, D. A.(1999). The structure and function of collective

constructs: Implications for multi−level research and theory development.

Academy of Management Review,24,249−265

Rousseau, D.(1985). Issues of level in organizational research: Multi−level and

cross−level perspectives. In L. Cummings & B. Saw(Eds.), Research in or-

ganizational behavior(vol.7, pp.1−37). Greenwich, CT: JAI.

Rozin, P., & Royzman, E. B.(2001). Negativity bias, negativity dominance, and

contagion. Personality and Social Psychology Review,5,296−320.

Runciman, W. G.(1966). Relative Deprivation and Social Justice: A Study of Atti-

tudes to Social Inequality in Twentieth−Century England . Berkeley: Univer-

sity of California Press.

Rupp, D. E., Byrne, Z. S., & Wadlington, P.(2003, April). Justice orientation and

its measurement: Extending the deontological model. Paper presented at the

18th Annual Conference of the Society for Industrial and Organizational Psy-

240 法政大学キャリアデザイン学部紀要第7号

Hosei University Repository

Page 17: 組織的公正研究における マルチ・レベル・アプローチ: 集合 ...cdgakkai.ws.hosei.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2016/11/gb...組織的公正研究における

chology, Orland, FL

Skitka, L. J. & Houston, D. A.(2001). When due process is of no consequence:

Moral mandates and presumed defendant guilt or innocence. Social Justice

Research,14,305−326.

Skitka, L. J. & Mullen, E.(2002). Understanding of fairness in a real−world politi-

cal context: A test of the valued protection model of justice reasoning. Person-

ality and Social Psychology Bulletin,28,1419−1429.

Stouffer, S. A., Suchman, E. A., DeVinney, L. C., & Williams, R. A., Jr.(1949). The

American soldier: Adjustments during away life (vol.1) . Princeton: Princeton

University Press.

Thibaut, J. & Walker, L.(1975). Procedural justice: A psychological analysis.

Hillsdale, NJ: Lawrence Erlbaum.

Tyler, T. R., and S. L. Blader.(2003). The group engagement model: Procedural

justice, social identity, and cooperative behavior. Personality and Social Psy-

chology Review,7,349−361.

Tyler, T. R. & Lind, E. A.(1992). A relational model of authority in groups. In M.

Zanna(Ed.), Advances in Experimental Social Psychology , vol.25(pp115−

191). New York: Academic Press.

Van Mierlo, H., Vermunt, J. K., & Rutte, C. G.(2009). Composing group−level

constructs from individual−level survey data. Organizational Research Meth-

ods,12,368−392.

組織的公正研究におけるマルチ・レベル・アプローチ 241

Hosei University Repository

Page 18: 組織的公正研究における マルチ・レベル・アプローチ: 集合 ...cdgakkai.ws.hosei.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2016/11/gb...組織的公正研究における

ABSTRACT

A study of Organizational Justice in terms of

Multi−Level Perspective: Focus on the measure-

ment issues of collective concepts.

Yoichiro HAYASHI

The present study discusses how we are to conceptualize organizational

justice as a collective concept. Firstly, the authors make a brief review of a

history of individual organizational justice researches along the four waves

of research and theorizing suggested by Colquitt, Greenberg, & Zapata−

Phelan (2004). The following waves of justice studies are also suggested; jus-

tice as a moral approach and multi−level approach. Secondly, the measure-

ment issues of collective concepts are discussed. Specifically, I argue the way

in which the lower level data can be combined to compose the higher level

construct. With regard to procedures for composition, I introduced some sta-

tistical techniques to justify aggregating an individual level data to group

level. Lastly, future research agenda of interaction between individual and

collective justice is discussed.

242

Hosei University Repository