会社の危機的状況回避のための経営合理化策! 希望退職・退...

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(1)経営合理化策としての希望退職・退職勧奨の位置付け (2)希望退職・退職勧奨・整理解雇の相互関係 (1)退職勧奨の意味 (1)希望退職の手順 (2)希望退職募集通知の記載例 (3)応募者数が不足した場合の対応 会社の危機的状況回避のための経営合理化策! 法的リスク回避の実施手順 希望退職・退職勧奨・整理解雇

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(1)経営合理化策としての希望退職・退職勧奨の位置付け(2)希望退職・退職勧奨・整理解雇の相互関係

(1)退職勧奨の意味

(1)希望退職の手順(2)希望退職募集通知の記載例(3)応募者数が不足した場合の対応

会社の危機的状況回避のための経営合理化策!

法的リスク回避の実施手順希望退職・退職勧奨・整理解雇

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雇用調整のステップ1

(1) 経営合理化策としての希望退職・退職勧奨の位置付け

使用者側の一方的意思表示によらない希望退職や退職勧奨による任意退職の促進は,有効な整理解雇を実施するための準備手続として位置付けられますが,整理解雇との関係からのみ理解するのは一面的に過ぎるでしょう。

例えば,東日本電信電話・エヌ・ティ・ティエムイー事件(東京高判平20.3.26)では配転命令権の効力が争われましたが,従業員にとって過酷な合理化を強行する正当性はないと主張する控訴人らに対し,裁判所は,使用者側が平成12年から平成13年にかけて4回にわたり希望退職者を募集して,約6,500名の社員が希望退職したこと,それでもなお営業収益の減少を止めることができなかったことに言及して,控訴人らの主張を斥けました。また,日刊工業新聞社事件(東京高判平

雇用調整(人員削減)と一口に言っても,実施される状況は様々です。直ちに雇用調整をしなければ破産する危機的状況にある場合もあれば,経営合理化の手段として雇用調整が望まれる状況にある場合もあります。そして,経営合理化の内実も多様であり,業績悪化が懸念される中で将来の危機的状況を回避するための経営合理化もあれば,経営効率の一層の向上を目指した経営合理化もあります。いわゆる市場主義の立場からは,経営合理化に資する限り,すべての雇用調整を可能とすべきであるとの主張もありうるところでしょう。この立場によれば,使用者側の一方的な意思決定による雇用調整=整理解雇も原則として制限すべきでないということになるでしょう。しかし,周知の通り,現行の労働法の裁判所による運用は,そのような立場を採用していません。裁判所の伝統的立場は,終身雇用と年功序列賃金が日本企業の世界経済における競争力強化に資するとの政策的判断に基づき,解雇権濫用法理等によって労働者の地位を法的に保護するものであり,社会状況の変化に伴ってその立場にも若干変化の兆しがあるとはいえ,現在も整理解雇は一定の要件が満たされなければ無効と判断されます。そして,その要件の1つとして,役員給与の減額,残業抑制,配転,出向,一時帰休,希望退職等の解雇回避努力義務を履行したかどうかが吟味されます。これは裏からいえば,単に経営効率を向上させるための整理解雇は認められないことを意味しています。整理解雇が認められない場合は,使用者側の一方的意思表示によらない雇用調整策を講じる必要があります。また,整理解雇が認められる場合でも,使用者側の一方的意思表示によらない雇用調整策をあらかじめ講じることが,解雇権濫用法理における客観的合理性と社会的相当性を充足するための重要な要素ないし要件とされています。そこで本稿では,従業員側の自由な意思形成に基づく退職による雇用調整策である希望退職および退職勧奨と,使用者側の一方的な意思表示に基づく雇用調整策である整理解雇の相互関係について検討した後,それぞれの手順や留意点について実務的観点から説明します(なお,整理解雇の手順と実務対応については次号(12月号)で解説します)。

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20.2.13)では,退職金削減のための就業規則改訂の効力が争われましたが,ここでも裁判所は,希望退職者募集による人件費の削減を含む様々な経営合理化策にかかわらず債務超過の状態が継続したことを,就業規則不利益変更の合理性を結論付ける事情の1つとして触れています。このように,就業規則の変更による退職金・賃金カットや単身赴任・転居・遠距離通勤等が必要となる配転等,従業員の意思に反して精神的・経済的負担を強いる権限行使に際しては,整理解雇権行使の場合と同様に,あらかじめ希望退職制度を実施することが合理性,正当性判断の考慮要素となります。したがって,実務的には,希望退職制度および退職勧奨の実施は,財政状況に問題がある場合に適法に執りうる選択肢を拡げ,整理解雇のみならず,従業員に負担を強いる経営合理化策一般の実施を可能にするための施策として位置付けられます。

(2) 希望退職・退職勧奨・整理解雇の相互関係

1) 希望退職と整理解雇-整理解雇前に希望退職を実施しなくてもよい場合最近の裁判例(インフォーマテック事件,東京高判平20.6.26)を含め,多くの裁判例で,解雇回避努力義務を尽くしたといえるかどうかの判断材料として,希望退職制度の実施の有無が考慮されていることは周知の通りです。しかし,状況によっては希望退職制度の実施をしないという判断が適切な場合もあります。例えば,静岡フジカラーほか2社事件(静岡地判平16.5.20)において裁判所は,「被告静岡フジカラーは,希望退職者募集によって社員を半減した場合には,その期は

黒字化が可能であるとしても,退職者に対する退職金の支払いが不可能であり,また,残った人員で事業を継続することが困難であること,さらに,次の期が赤字になれば,残された従業員の退職金の支払いが困難になると考えてこれを行わなかったと認められる…ところ,前記のとおりの売上の減少傾向が続き,経営状態が悪化していたこと,実際に本件営業譲渡をした後,不動産譲渡代金相当の貸付けを受けなければ従業員全員の退職金の支払いが不可能であったことなどからすれば,希望退職者募集による会社再建が不可能と考えた被告静岡フジカラーの判断が不合理なものであったとはいえない。」と判断しました。また,東京都土木建築健康保険組合事件

(東京地判平14.10.7)では,被告が解雇に先立って職員全員に対する希望退職の募集も,原告に対する一時帰休や希望退職などの勧奨もしなかったことについて,「従業員の解雇をする使用者の一般的な対応としては,やや適切を欠いていたことは否めない。」としながらも,「しかしながら,…被告は,本件解雇前に,経営改善策として,収入面の増加(保険料率の見直し),支出面の削減(付加給付の見直し,保険事業の見直し,諸経費節減)を実施し,さらに,人件費の合理化にも着手していることが認められること,本件解雇が原告の勤務実績・勤務実績の不良に着目してされたものであること,原告に対する平成10年度以降の勤務評定において配置替先がないとの意見が付されていることに照らすと,職員全員に希望退職を募っていないことや原告に希望退職等を打診していないことをもって,解雇回避努力を尽くしていないとまではいえない。」として,希望退職制度の実施が可能であっても,他の人件費合理化の施策がとられており,勤務実績等に照らし

●●● 希望退職・退職勧奨・整理解雇の実施手順(上)

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て原告のみを解雇の対象として選定したことに合理性がある場合には,希望退職制度を実施しなくても解雇回避努力義務違反とはいえないと判断しました。類似の判断をしたものとして,「職員25

名程度の法人で,職員としての適格性において明らかに劣る者がいる場合に,希望退職者を募らなければならないと解するのは相当でない」と判示したもの(東京地決平12.6.1)があります。また,コーブル・ファーイースト事件(大阪地堺支決平13.9.18)はカーペット製造機・タフト機の販売,改造,サービス等を業務とする従業員10人未満の会社による整理解雇に対して従業員が地位保全仮処分を申し立てた事案ですが,会社側が「債務者のような従業員10人未満の会社で希望退職を行えば,その後の事業継続に支障が生じることは明らかであって,希望退職の募集を行うことはできなかった。」と主張したのを受けて,裁判所は,「小規模で各職種に熟練した従業員が存在する債務者会社において,予め希望退職の募集及び配置転換を行わなかったことは必ずしも是認できないものではな」いと判断しました。東洋酸素事件(東京高判昭54.10.29)では,アセチレン部門閉鎖に伴う整理解雇に先立って他の部門の従業員に希望退職の募集をかけなかった点について「一般に企業が特定の事業部門を閉鎖するにあたり,同事業部門の従業員の配置転換先を確保するために他部門の従業員につき希望退職者を募集すべき義務があるか否かは,当時の諸般の事情を考量して判断されるべきものである。…本件アセチレン工場閉鎖の当時はわが国経済の高度成長の最盛期に当り,産業界一般に求人難の時期であったため,控訴人会社としては,全従業員について希望退職者を募集するときは,他企業とくに規模

拡張中の同業他社から控訴人会社の酸素部門,営業部門の従業員に対する引抜きを誘発することを恐れたこと,また,希望退職者を募集する以上は,その方法に工夫を加えたとしても,控訴人会社において必要とする熟練従業員等がこれに応じた場合に,これを阻止することは困難であるとともに,これらの従業員に代えて技倆未熟なアセチレン部門の従業員を配置するときは,少なくとも当分の間作業能率の低下は避けられないこと,さらに,前記のとおり控訴人会社の酸素部門等においては現業職員及び特務職員につき多大の過員を抱え,自然減耗による減員の方針を維持してきたところであるから,右部門の希望退職者に代えて全般に年齢の比較的若いアセチレン部門の従業員を配置するときは,右人員の合理化計画に支障が生ずる恐れがあつたこと,昭和45年7月中旬に控訴人会社が本件整理解雇を行う旨を公表したところ,47名の被解雇者について地元の同業各社や大手有名会社を中心に関東一円の企業122社から延べ1,220名に及ぶ求人の申入れが控訴人川崎工場に殺到し,当時は再就職事情が極めて良好であつたことが認められる。 …以上の事実を勘案すると,控訴人会社が当時全社的に希望退職者を募集することによって会社経営上大きな障害が生ずることを危惧したのはあながちこれを杞憂として理由なしと断ずることはできず,右認定の事実を総合考量すると控訴人会社は当時希望退職者を募集すべきであり,これによりアセチレン部門閉鎖によって生ずる余剰人員の発生を防止することができたはずであるということはできない。」と判断しました。これらの裁判例に照らすと,以下の場合などは,希望退職制度を実施しないことが合理的な判断として是認されうるといえるでしょう。

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① 希望退職者に対する退職金の支払い原資の調達が見込めない場合

② 小規模会社で,すでに余剰人員が合理的に特定されており,広く希望退職の募集をかける意味がない場合

③ 会社が小規模で希望退職制度を実施することにより事業の継続に支障が出ることが予期される場合

④ 一部門の閉鎖による整理解雇であり,他の部門に希望退職の募集をかけて閉鎖する部門の従業員を維持しようとすれば,事業に支障が生ずる合理的な懸念がある場合

ただ,実務的には,あさひ保育園事件(最判昭58.10.27)において,希望退職者募集の措置をとらなかったことを解雇権濫用の理由として摘示されたことに鑑み,保守的な見地から,希望退職制度の実施に特段の支障がなければ,整理解雇に先立って希望退職制度を実施すべきものと考えておくのが安全です。

2)退職勧奨と整理解雇退職勧奨については,クレディ・スイス・ファースト・ボストン・セキュリティーズ・ジャパン・リミテッド事件(東京地判平17.5.26),弥生工芸事件(大阪地判平15.5.16),平和学園高校事件(東京高判平15.1.29),ワキタ事件(大阪地判平12.12.1),ケイエスプラント事件(鹿児島地判平11.11.19)などにおいて,解雇回避努力義務違反の有無の判断の際に,退職勧奨が行われたか否かが考慮されています。希望退職に比べて,判決文中で触れられる例は少ないものの,整理解雇に先立つ解雇回避努力義務の施策の1つであるという位置付けは希望退職と変わりません。注意しなければならないのは,「退職勧奨」

という用語で意味する施策が2種類ある点です。1つは希望退職者を募集する場合の対象従業員に対して実施するもの(実際に希望退職者募集をかけるかどうかを問わない),もう1つは将来見込まれる整理解雇の対象従業員に対して実施するものです。通常は前者の対象従業員の範囲のほうが,後者の対象従業員の範囲より広くなります。現実には,将来の整理解雇を視野に入れている場合で,整理解雇対象従業員の選定が終了しているとき(つまり整理解雇対象従業員が特定している場合)の退職勧奨は,後者の意味におけるものとして,すなわち整理解雇の対象従業員のみに対して実施されるのが普通です。これは,整理解雇との関係では,手続きの相当性の要件を充足させるために必要なものと考えられます。しかし,整理解雇に先立つ解雇回避努力義務の施策としての退職勧奨は,前者の意味におけるものを指します。つまり,特定の従業員を解雇するに先立ち,人件費削減の努力として,他の従業員に対して任意退職の働きかけをすることを指します。後者の意味における退職勧奨後,退職勧奨に応じなかった従業員を整理解雇したような場合は,逆に,退職勧奨自体が整理解雇に類似するものとして,その人選の合理性や退職勧奨の手続きの相当性などが吟味され,場合によっては不法行為と評価されることもあります。

3)希望退職と退職勧奨理論的には,希望退職と退職勧奨は相互に独立した人員削減の施策であり,一方の実施・不実施とは無関係に,他方の実施・不実施を決めることができます。実務的には,希望退職者の募集を告知するだけでは目標とする削減数を達成するこ

●●● 希望退職・退職勧奨・整理解雇の実施手順(上)

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とができない場合には,募集期間中に対象従業員と別に面談して,退職勧奨をするのが通常です。この場合は,希望退職を退職勧奨が補完ないし促進する関係にあります。また,上記の通り小規模の会社では希望退職の実施が現実的でない場合が多く,逆に大規模の会社で大幅な人員削減を目指す場合には各従業員への個別のアプローチでは十分でない場合があります。このように希望退職と退職勧奨は,会社の規模に応じた人員削減施策として相補的な関係にあります。しかし,希望退職と退職勧奨との間には,整理解雇との関係と異なり,どちらを先行させるべきというような先後関係や条件関係はありません。したがって,個別的な事情に応じてその施策の採否を決定することになります。あえて類型的指針を挙げるとすれば,次のような点を考慮すべきでしょう。

① (a)希望退職の実施による弊害がなく(弊害として必要な人材の流出等),(b)希望退職の実施によって目標削減数が達成できる可能性があるときは,退職勧奨に先立って希望退職を実施する。

退職勧奨は対象労働者の意欲や忠誠心を喪失させ,疑心暗鬼を招くおそれがあるため,希望退職のみで目標の達成が可能であれば,退職勧奨をしないのが適当です。もちろん,目標削減数が達成できなかったときには次のステップとして退職勧奨の実施を検討することになります(その際,第二次希望退職を実施するかどうかは事情-目標削減数,他の経営合理化策

との比較等-による)。

② 削減対象の従業員個人が特定しており,対象外の従業員に退職されると業務に支障が生じる客観的な事情があるときは,希望退職を実施せず,退職勧奨を実施する。一般論としては,従業員数の多い会社では,そのような事情は認められにくいでしょう。

③ (a)希望退職の実施による弊害がなく,(b)削減対象の従業員個人の一部が特定しているが,特定された従業員以外の従業員の削減も必要なときは,希望退職と並行して特定された削減対象従業員に対する退職勧奨を実施する。退職勧奨は対象従業員との間に緊張関係を生みますが,希望退職実施の一環として退職勧奨することにより,個別にアプローチした場合よりも緊張の度合いを緩和することが可能になります。

希望退職の手順と実務対応2

希望退職制度とは,人員削減を目的として,一定の募集期間を設けて,使用者側で希望者にとって魅力的な退職パッケージを用意し,従業員にアナウンスして従業員の自発的な応募による退職を促す制度であり,人員削減策としては退職勧奨や整理解雇と比べて,対象従業員に対する働きかけが最もソフトなものです。

(1)希望退職の手順

希望退職制度を実施する場合の手順は,

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別稿(本誌2009年3月号)でもご紹介した通り,次の通りです。

① 人員削減の対象,目標値,募集時期の検討

② 退職パッケージの条件の検討③ 組合・従業員との協議④ 希望退職制度の正式決定(取締役会決議)

⑤ 従業員への説明⑥ 従業員からの応募の受付,承認,合意書の作成

個々の手順の説明は省略しますが,将来整理解雇を実施する可能性がある場合は,特に③の組合・従業員との協議のプロセスを重視する必要があります。後述の通り,整理解雇の有効性の判断において考慮される手続きの相当性には,人員合理化策の策定段階からの組合・従業員への通知,協議が考慮されます。したがって,後日のありうべき紛争に備えて,組合・従業員とのやりとりは書面化しておくのがベターです。

●●● 希望退職・退職勧奨・整理解雇の実施手順(上)

○年○月○日関係従業員 各位

○○○○株式会社代表取締役 ○○○○

希望退職実施のご案内当社は,本年3月期まで○期連続で営業損失を計上し,支店数の削減,新規雇用の中断,役員報

酬カット等の合理化を進めてまいりましたが,財務状況の悪化を改善するには至っておらず,今期も営業損失を計上する見込みです。

当社経営陣は,直ちに大規模な経営合理化策を実施しなければならない状況であることを認識し,当社の置かれた現状の分析とその基本方針を経営改革大綱としてまとめ,先日従業員の皆様に配付いたしました。そこでもご説明した通り,経営効率改善のためには,とりわけ製造部門の人員をスリム化して費用の圧縮を図ることが不可欠な施策と判断いたしましたので,下記要項の通り希望退職制度を実施いたしますことをご案内させていただきます。

関係従業員の皆様には,当社の現状にご理解をいただき,応募のご検討をいただきますようお願い申し上げます。

記従 業 員 ○○工場従業員募集人員 ○○人募集期間 ○年○月○日から○年○月○日まで退 職 日 ○年○月○日退職条件 別紙の通り応募方法 所定の退職届を所属長経由で人事課宛に提出する。

なお,当社は退職届受領後速やかにその受理・不受理を決定し,応募者に通知する。受理された場合,退職合意書を応募者と当社との間で締結する。

以 上

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(2)希望退職募集通知の記載例

⑤の従業員への説明においては,誤解を避けるため,文書で希望退職の募集条件を通知します。記載例としては,以下の通りです。有価証券報告書提出会社でなければ,会社の財務情報は公開されません(会社法上,大会社以外の会社が公開するのは貸借対照表のみ)。このため,対象従業員と経営陣との間には大きな情報の格差があります。従業員の自由な意思形成により退職に応じてもらうためには,財務状況を一定程度開示するのが妥当です。その際,過去の事実に関しては正確を期すとともに,将来の予測に関しては断定的な言い方を避ける必要があります。また,開示の仕方としては,開示情報がまちまちになったり,誤った情報を開示したりするのを避けるため,対象労働者に個別に説明するよりも,書面にまとめて記載したうえで配付する方法がよいでしょう。別紙の退職条件には,次のような事項を記載します。

① (会社都合退職による)退職金の支払い② 特別退職金の支払い(severance pay)③ 未消化有給休暇の買上げ④ 退職日前の有給の就業不要(再就職専念)期間の付与

⑤ 希望がある場合の再就職の支援 等

また,退職合意書の様式には,退職条件にかかる条項に加え,秘密保持義務,清算条項,管轄条項等を規定します。なお,競業避止条項(退職後一定期間の同業他社への就職の禁止等)については,会社側の事情で退職する従業員の再就職の機会を制限するものであり,特別退職金が

それによる不利益を考慮した相当の高額である場合でなければ,有効性を否定される可能性が高いでしょう。

(3)応募者数が不足した場合の対応

募集期間が経過しても応募者数が募集人員に達しなかった場合の対応については,以下の点を考慮して決めることになります。

① 応募した従業員の退職による人件費削減額と目標削減額の差異

これが多額である場合は,さらなる合理化策を実施する必要がありますので,それらを検討することとなります。

② さらなる人員削減が必要な場合は同一条件での第二次希望退職の実効性の有無例えば希望退職募集時に退職勧奨も実施し,応募しなかった対象従業員から勧奨拒否の通知がなされた場合などは,同一募集条件での第二次希望退職の実効性は極めて低いと考えられます。

③ 募集条件引上げの可否と新しい募集条件による第二次希望退職の実効性の有無応募者がわずかで,特別退職金額を見直す財政的余地がある場合には,募集条件を改善して第二次希望退職を実施することを検討します。

これらを考慮した結果,なお人員削減を図ることが必要であり,希望退職の募集では効果が望めないと判断した場合で,退職

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勧奨を希望退職と並行して実施しなかったときは,退職勧奨の実施に移行することになります。

退職勧奨の手順と実務対応3

(1) 退職勧奨の意味

「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(以下,「均等法」という)6条4号では,「退職の勧奨」という用語が出てきます。この「退職の勧奨」の意義については,「労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し,事業主が適切に対処するための指針」(以下,「指針」という)第2,10(1)が,「『退職の勧奨』とは,雇用する労働者に対し退職を促すことをいう。」という簡明な定義を規定しています。退職勧奨は,もちろん「退職の勧奨」と同義です。指針は簡単な記載をしていますが,「退職を促す」方法は多様であり,使用者側の用意した退職条件による退職合意の申込みへの承諾や,希望退職への応募を促すことを含みます。雇用調整策としての退職勧奨の具体的手順は,希望退職とほぼ同じであり,以下の通りです。なお,希望退職と並行して実施する場合は,希望退職と退職勧奨を1つの統合的人員削減策として実施することが可能です。

① 対象従業員の(範囲の)特定,勧奨スケジュールの検討

② 退職パッケージの条件の検討③ 組合・従業員との協議④ 退職勧奨実施の正式決定(取締役会決議)

⑤ 対象従業員への説明・勧奨⑥ 対象従業員からの退職届の提出または対象従業員との合意書の作成

以下,各手順と,実務的問題への対応策について説明します。

① 対象従業員の(範囲の)特定,勧奨スケジュールの検討「(範囲の)」を括弧に入れたのは,対象従業員を個人のレベルまで絞り込む場合と,希望退職と同様に,所属部門,年齢,勤務評定等を基準とした対象範囲のみを絞り込む場合がありうるためです。対象従業員の絞込みに際して,強行法規,公序や労働協約に違反することはできません。前述の通り,均等法6条4号は,退職勧奨において性別により差別的取扱いをしてはならない旨を規定し,指針第2,10(2)は,同号により禁止される取扱いを列挙していますが,対象の絞込みに関連して禁止される行為は次の3つです。

(ⅰ)退職勧奨の対象を男女いずれかのみとすること

(ⅱ)退職勧奨にあたって,能力および資質の有無等を判断する場合に,その方法や基準について男女で異なる取扱いをすること例として,男性の場合は最低の評価がなされているもののみを対象とし,女性の場合は特に優秀という評価がなされているもの以外を対象とする場合が挙げられています。

(ⅲ)退職勧奨にあたって,男女いずれかを優先すること

●●● 希望退職・退職勧奨・整理解雇の実施手順(上)

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男性については50歳以上を対象としながら女性については45歳以上を対象とする場合が挙げられています。

また,国籍,宗教的・政治的信条,門地等による差別的取扱いも認められません(労働基準法3条)。勧奨スケジュールについては,目標削減数を達成する緊急性の度合いや,希望退職の募集と並行して実施するか否かによって決まってくるのが普通ですが,時間に余裕があり,対象人数が限られているときは,対象従業員に対して一斉に勧奨するのではなく,個別に1人ずつ勧奨していく方法も考慮すべきです。一斉に複数の対象従業員に対して勧奨を実施すると,それらの従業員が連帯して退職パッケージの条件の引上げ要求や法的権利の行使など,集団的な対抗措置を図る可能性があり,従業員ごとの個別の条件設定による勧奨を困難にします。個別に時期をずらして,例えば勤務成績が最も悪い従業員等から勧奨し,退職させることに成功すれば,合理化施策の努力として他の中核的従業員の理解も得られ,コストも抑えることができ,社内の結束を損うことなく目的を達することができます。もちろん,長期にわたって漸次的に実施すれば,従業員が「次は自分か」と疑心暗鬼になり,忠誠心や業務効率に悪影響を与えかねないデメリットもありますので,ケース・バイ・ケースの検討が必要です。

② 退職パッケージの条件の検討退職勧奨は,雇用関係の終了に同意するように従業員を説得する交渉です。雇用関係は,法的には契約関係であり,契約関係の交渉は,損得の合理的な妥協点を探るこ

とによって同意に向かうため,退職することによるメリットを理解させることが基本となります。魅力的な退職パッケージ(特別退職金の支給等)が提供できれば,勧奨がやりやすくなるのは確かです。希望退職の場合,応募者に対して同一の条件を適用するのが普通です(応募者を勤続年数などで複数のカテゴリーに分けることがあるのはもちろんですが,同一カテゴリーに属する従業員には同一の条件が適用されます)。これに対して,退職勧奨の場合は,個々の従業員によって異なった退職パッケージの条件を策定することが可能です。実務的には,退職日(再就職先が見つかるまで在籍させる等),年休の取扱い,退職日までの期間の出勤の要否,再就職支援等において,個別の事情を勘案して別異の取扱いをします。特別退職金の支給額についても各対象従業員との交渉で決める場合もありますが,そのような情報は漏洩のおそれがあり,ある従業員を説得するために合理的な理由のない特別退職金の上積みをすると,他の対象従業員からも特別退職金の増額を要求されることがありますので,合理的な説明がつくかどうかを慎重に検討のうえ決定する必要があります。退職勧奨の条件の決定に際して,強行法規,公序や労働協約に違反することができないのは,対象従業員の選定の場合と同様です。例えば,指針第2,10(2)は,退職勧奨の条件を男女で異なるものとすることを明確に禁止していますし,国籍,宗教的・政治的信条,門地等によって条件を差別することも違法です。

③ 組合・従業員との協議退職勧奨は,対象従業員に個別に働きかけるものであるため,社内への十分な情報

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提供をせずに実施すると,従業員全体を無用な不安に陥れることになります。また,対象従業員にも,「自分だけが不利に扱われているのではないか」,「経営合理化とは別の理由で勧奨されているのではないか」といった疑念を招き,勧奨を長期化させ,説得を阻害する要因にもなります。したがって,対象従業員がごく少数である場合を除き,事前に組合等と協議し,理解を得ておくのが適当です。また,労働協約に規定がある場合に,それに従わなければならないのは言うまでもありません。

④ 退職勧奨実施の正式決定(取締役会決議)雇用削減策としての退職勧奨の実施は,希望退職と同様に,「重要な業務執行」(会社法362条4項)に該当するため,取締役会設置会社においては,取締役会決議が必要になります。

⑤ 対象従業員への説明・勧奨実務的にもっとも悩ましいのは,対象従業員に対し,どこで,誰が,どのように勧奨するかという問題です。一般の交渉と同様に,勧奨の仕方に決まった方法はなく,対象従業員の年齢,性格,職種,用意した退職パッケージの条件,会社の財務状況によっても変わってきます。ただし,不当な退職勧奨行為が権利侵害として不法行為を構成しうることは,判例の準則となっており(下関商業高校事件,最判昭55.7.10),最近の裁判例(東京都ほか(警視庁海技職員)事件,東京地判平20.11.26)でも確認されているところです。当然のことながら,勧奨に容易に応じない従業員に対する半強制的な過度の勧奨や「いじめ」的行為は禁止されます。また,

対象従業員の同意を得るためには,さらに一歩進んで,従業員の立場に立った交渉姿勢が求められます。以下,もう少し詳細に退職勧奨一般に共通していえることを説明します。実施場所社内の会議室や上司または人事担当者の部屋で実施されることになりますが,息詰まるような圧迫感のある部屋は,できる限り避けるべきです。窓のある,第三者に盗み聞きされることのない,ある程度広い(圧迫感のない)静かな部屋で行うのが望ましいといえます。勧奨の担当者勧奨は,対象従業員の所属する職場の部長,部門長,人事の責任者,担当役員,小規模の会社であれば社長など,外形的にみて権限と責任のある地位にある者が担当します。退職は対象従業員にとって極めて重要な決断ですから,使用者側としても重大事であることを認識し,それに相応しい担当者が自ら勧奨に臨むべきです。また,勧奨は交渉ですので,「言った・言わない」の問題を防ぎ,あるいは担当者の不適切な勧奨行為を予防するためには,2人の担当者で勧奨にあたることが望ましいといえます。しかし,威圧的な雰囲気を避けるため,あるいは信頼関係のある上司を通じた説得の効果を期待して,担当者にシミュレーション等による教育を施したうえで,1人の担当者で勧奨にあたらせることが妥当な場合もあるでしょう。労務コンサルタントや弁護士が勧奨に同席することは,再生手続き中である場合など,特に専門的な情報を対象従業員に説明する必要がある場合を除いて,避けたほうがよいでしょう。なお,近親者を通じて勧奨をすることは,対象従業員の自由な意思形成を阻害するた

●●● 希望退職・退職勧奨・整理解雇の実施手順(上)

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め,違法です(鳥屋町職員事件,金沢地判平13.1.15)。実施時間,回数,頻度下関商業高校事件(最判昭55.7.10)では,対象従業員を長期間(2カ月から4カ月)にわたり,10回以上(各回短いときで20分,長いときで2時間15分)勧奨したケースが,不法行為を構成すると判断されました。社会的相当性の限度を超える執拗な勧奨は,会社および担当者の損害賠償責任を発生させることがあります。使用者側の経営環境,人員削減に至る事情,対象従業員に対する勧奨の理由,退職の条件等を対象従業員に正確に伝えるため,書面を手交して説明し,対象従業員の意向を確認する最初の勧奨は,ある程度時間がかかるのは致し方ないとしても,その説明が終了し,対象従業員から,質問もなく,結論が出せない旨または退職の意思はない旨の回答がなされ,新たな説得材料もないのに,長時間にわたって勧奨を続けることは,慎まなければなりません。実施回数,頻度については,判例に照らしますと,毎週のように10回以上呼び出して勧奨するのは行き過ぎと判断される可能性が高いでしょう。また,対象従業員がそれ以上の退職勧奨の拒否を表明したり,退職しない旨の意思を明確に表示したりした場合は,使用者側に既存の退職パッケージよりも有利な条件を提示する用意があり,その条件によって勧奨に応じる可能性がある場合や,対象従業員の拒絶の意思が誤解に基づく場合を除いて,勧奨を中断すべきです。勧奨の態様退職勧奨は,雇用関係の終了に同意するように従業員を説得する交渉です。しかし,雇用関係は商取引にかかわる契約関係にはない要素を持っています。雇用

関係により従事する仕事およびその職場は,従業員の社会における自己実現の基盤であり,従業員の人間の尊厳に深くかかわっています。使用者側としては,従業員の尊厳に配慮し,損得勘定のみに訴えないようにすることが重要です。また,通常の交渉では,同意した場合のメリットとともに,同意しない場合のデメリットを理解させようとします。しかし,雇用関係において仕事と職場を提供するのは他ならぬ使用者ですから,雇用関係を維持した場合のデメリット(キャリアアップ,給与アップが望めない等)を説くことは,従業員からは,「満足な仕事や職場環境を提供するつもりはない」というハラスメント的言辞と解釈されかねません。したがって,デメリットを説くときは内容と表現に注意を払う必要があります。いったん従業員の退職の意思表示がなされても,後に撤回されたり,意思表示に瑕疵(錯誤,詐欺,強迫等)があると主張されたり,退職条件の理解について齟齬が生じたりする可能性が高いことに留意する必要があります。とりわけ意思表示の瑕疵は争われやすいので,従業員の自由な判断に基づく意思表示であることを確保するような対応が求められます。侮蔑的,威圧的,誤導的な物言いは避けなければなりません。抽象的には以上に留意しながら勧奨することになりますが,より具体的には次のように進めます。

(a)財務状況,人材削減の必要性の説明業績の低下・低迷の状況,営業収支の推移,これまでとられた経営合理化策(役員報酬削減など)を説明します。

特 集

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(b)当該従業員を退職勧奨の対象に選定した理由の説明

これまでの貢献への感謝を述べるとともに,所属部門やポジションの廃止,所属部門の縮小の必要性と当該従業員の家族状況など,選定理由を説明します。

(c)退職パッケージの条件の説明

(d)勧奨に応ずるか否かは任意である旨および会社として退職勧奨に応じてもらいたい旨の表明

退職勧奨の担当者は,勧奨に応じてもらうべく説得にあたるため,「辞めてもらうほかない」という趣旨の発言をすることになります。会社の意思,方針を明確に伝えることは望ましいことですから,そのような発言になることは仕方がありません。しかし,従業員側からは退職を強要しているように理解されるおそれがあり,実際に,紛争になることもしばしばです。そこで,会社の意思を伝える際に,「勧奨に応ずるか否かはあくまで任意であるが」という枕詞を付することを原則とするのがよいでしょう。

(e)勧奨に応じない場合でも,状況が好転せずやむをえないときは整理解雇もありうる旨の通知

整理解雇も視野に入れた退職勧

奨である場合は,その旨を伝えるべきです(伝えなければ,整理解雇の相当性(手続的妥当性)の瑕疵の問題となるおそれがあります)。整理解雇に言及するときは,「その可能性もある」と言うにとどめます(退職勧奨により相当程度人員削減が達成されれば,整理解雇は困難になりますので,「退職勧奨に応じなくても整理解雇になる」という言い方は誤導的で,避けるべきです)。

退職パッケージについては,その詳細を記載した書面を手交します。このほか,退職勧奨をするに至った経緯の概要,退職勧奨への回答期限,および上記(d)(e)について記載した書面を手交することも考えられます。

⑥ 対象従業員からの退職届の提出または対象従業員との合意書の作成希望退職と並行して実施する場合は,希望退職の手続き(希望退職への応募,企業側の承認,合意書の作成)の中に退職手続が吸収されています。希望退職と独立に実施する場合は,退職パッケージの説明書を手交する際に,退職届のフォームを添付し,退職条件通知書と独立の退職届を提出させてもよいですし,次ページのように書面の上半分を企業から従業員に対する通知書,下半分を退職届として,従業員に退職届分に署名捺印させて提出させる方法もあります。

●●● 希望退職・退職勧奨・整理解雇の実施手順(上)

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特 集

○年○月○日○○○○ 殿

○○○○株式会社代表取締役 ○○○○

退職条件通知書

貴殿には,入社以来当社に多大なる貢献をいただき大変感謝しております。

さて,当社は,一昨年来の急激な経営環境の変化と収益の下落に対応し,残業抑制,役員報酬カット等の合理化を進めてまいりましたが,財務状況の悪化を改善するには至っておらず,選択と集中により○○事業の大幅な縮小をすることを決定いたしました。これに伴い貴殿の[部門,職種,ポジション]の廃止も決定されました。

貴殿の処遇につきましても,[職種変更]を含め,鋭意検討いたしましたが,当社には貴殿の能力および経験に相応しいポジションを見付けることが困難なことから,別紙記載の通りの退職パッケージを提案させていただくことといたしましたので通知いたします。

別紙をよくお読みになり,別紙記載の通りの条件で退職することを希望される場合は,○年○月○日までに下の退職届に作成の日付を記載し,署名捺印のうえ,○○にご提出ください。

以 上

○○○○株式会社 御中

退 職 届

私は,別紙を読み,十分に理解したうえで,私自身の判断で別紙記載の通りの条件で退職することとしましたので届出いたします。

  年 月 日 [氏名]       印