研究と現場のコーチングとの乖離 - nsca japanthe disconnect between research and...

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34 July 2017  Volume 24  Number 6 NSCA JAPAN Volume 24, Number 6, pages 34-39 Key Words【認定:certification、教育:education、研究:research】 研究と現場のコーチングとの乖離 The Disconnect Between Research and Current Coaching Practices Lawrence W. Judge, PhD, CSCS  Bruce Craig, PhD, FNSCA School of Physical Education, Sport and Exercise Science The Human Performance Laboratory, Ball State University, Muncie, Indiana 要約 今日のコーチの多くは資格認定 プログラムを修了している。プログ ラムはエビデンスに基づく現場指 導の推進を目的としているが、運動 前と運動後のストレッチングに関 して、コーチたちは、最新の研究が 推奨する方法の多くを実際には用 いていない。本稿は、ストレッチン グに関する現在の推奨事項を簡潔 に検討し、それらが実施されていな い事実をデータで示す。議論の目的 は、認定資格が実際のコーチングに どの程度影響を与えるかを明らか にすることである。 が平均レベルに達しなかったことに帰 すことができる。Dickらの研究(9)に おいて、16 年間の傷害記録を分析した 結果、バスケットボールの試合の負傷 率は、練習中の傷害発生率のほぼ 2 倍 であった(延べ 1,000 回の出場に対し、 傷害発生件数は 9.9 件対 4.3 件)。最も よく報告されている傷害は足関節靭帯 の捻挫と膝内障であり、これらは、コ ンディショニングやテクニカルトレー ニングで発生を減らすことのできる部 位である(9)。これらの部位の強化を 目的に作成されたコンディショニング プログラムは、トレーニングプログラ ムにおいて重視されているものの、そ れだけでは十分ではない。傷害は、急 激な過負荷、量の増加、不適切な活動 前のウォームアップやストレッチン グルーティンなど、誤ったテクニック が原因でも発生する(18)。最も重要 な対策は、負傷の原因を特定し、傷害 予防に必要な変更に取り組むことで ある(30)。したがって、もしコーチや ストレングス&コンディショニング (S&C)コーチが、人体が異なるトレー ニング刺激にどのように反応するかに ついてより適切な理解を有していたな はじめに アメリカの大学は、通常、雇用する すべてのスポーツコーチに対し最低学 歴として学士号を要求する。しかし、 例えば体育学、コーチング、あるいは 関連の深い運動生理学など、特定の教 育訓練は要求されない。コーチとして の認定資格を有していることが望まし いが、絶対条件ではない(18)。多くの 場合、コーチの仕事はその応募者の中 からスポーツの実戦経験のある者が選 ばれる。これは、実際的な教育や認定 資格訓練よりも、当該スポーツの参加 経験を有する応募者のほうがコーチの 職務を果たす能力が優れているとみな され、したがってしばしば優先的に採 用されるからである。 2009〜2010年におけるシーズン 中、NCAA(全米大学競技連盟)ディ ビジョンⅠの大学バスケットボール のコーチ 31 名が、主に、チームの成績 がふるわなかったことを理由に解雇 された(10)。大学バスケットボールの シーズン中における不振の原因は、バ スケットボールに関連した傷害が多 かったこと、重要な試合において技術 的、戦術的、身体的なパフォーマンス

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34 July 2017  Volume 24  Number 6

C NSCA JAPANVolume 24, Number 6, pages 34-39

Key Words【認定:certification、教育:education、研究:research】

研究と現場のコーチングとの乖離The Disconnect Between Research and Current Coaching Practices

Lawrence W. Judge, 1 PhD, CSCS  Bruce Craig, 2 PhD, FNSCA1School of Physical Education, Sport and Exercise Science2The Human Performance Laboratory, Ball State University, Muncie, Indiana

要約 今日のコーチの多くは資格認定プログラムを修了している。プログラムはエビデンスに基づく現場指導の推進を目的としているが、運動前と運動後のストレッチングに関して、コーチたちは、最新の研究が推奨する方法の多くを実際には用いていない。本稿は、ストレッチングに関する現在の推奨事項を簡潔に検討し、それらが実施されていない事実をデータで示す。議論の目的は、認定資格が実際のコーチングにどの程度影響を与えるかを明らかにすることである。

が平均レベルに達しなかったことに帰すことができる。Dickらの研究(9)において、16 年間の傷害記録を分析した結果、バスケットボールの試合の負傷率は、練習中の傷害発生率のほぼ 2 倍であった(延べ 1,000 回の出場に対し、傷害発生件数は 9.9 件対 4.3 件)。最もよく報告されている傷害は足関節靭帯の捻挫と膝内障であり、これらは、コンディショニングやテクニカルトレーニングで発生を減らすことのできる部位である(9)。これらの部位の強化を目的に作成されたコンディショニングプログラムは、トレーニングプログラムにおいて重視されているものの、それだけでは十分ではない。傷害は、急激な過負荷、量の増加、不適切な活動前のウォームアップやストレッチングルーティンなど、誤ったテクニックが原因でも発生する(18)。最も重要な対策は、負傷の原因を特定し、傷害予防に必要な変更に取り組むことである(30)。したがって、もしコーチやストレングス&コンディショニング

(S&C)コーチが、人体が異なるトレーニング刺激にどのように反応するかについてより適切な理解を有していたな

はじめに アメリカの大学は、通常、雇用するすべてのスポーツコーチに対し最低学歴として学士号を要求する。しかし、例えば体育学、コーチング、あるいは関連の深い運動生理学など、特定の教育訓練は要求されない。コーチとしての認定資格を有していることが望ましいが、絶対条件ではない(18)。多くの場合、コーチの仕事はその応募者の中からスポーツの実戦経験のある者が選ばれる。これは、実際的な教育や認定資格訓練よりも、当該スポーツの参加経験を有する応募者のほうがコーチの職務を果たす能力が優れているとみなされ、したがってしばしば優先的に採用されるからである。 2009 〜 2010年におけるシーズン中、NCAA(全米大学競技連盟)ディビジョンⅠの大学バスケットボールのコーチ 31 名が、主に、チームの成績がふるわなかったことを理由に解雇された(10)。大学バスケットボールのシーズン中における不振の原因は、バスケットボールに関連した傷害が多かったこと、重要な試合において技術的、戦術的、身体的なパフォーマンス

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査した(18–21)。その結果、資格認定教育を修了したS&Cコーチの多くが、エビデンスに基づく推奨トレーニングに従っていないことが示された。なぜそのようなことが起こるかは不明であるが、認定教育を通してコーチが受けたトレーニングと実際に彼らが現場で採用しているトレーニングとの間の外見上明らかなギャップは、対処すべき問題である。本稿の目的は、運動前と運動後のストレッチングのガイドラインに当てはめたとき、認定資格が実際のコーチング活動にどの程度影響を及ぼすのかを論じることである。

活動前と活動後のストレッチングのガイドライン どのような種類であっても、高強度のトレーニングとエクササイズには、望ましい利益と併せて特定の固有のリスクがあることをコーチは認識している。したがってコーチは、トレーニングや運動処方の費用対効果を秤にかけて、一人ひとりのアスリートのための最善の方法に関して、十分な情報に基づく決定をしなければならない。どんなエクササイズセッションでも、最初に検討することは、アスリートを活動に備えさせる最も効果的な方法を決定することである。アスリートの準備を整える上で、ウォームアップとストレッチングルーティンは望ましい方法である。だが、それをどのように組み立てるかは、それぞれのコーチが選択しなければならない。そのための方法のひとつは、アスリートの準備を行なう際に、科学的に裏付けられた活動前のウォームアップとストレッチングのバリエーションに従うことである

(3,24,27)。活動前のルーティンは筋温を上昇させて弾性を高めることを通じて傷害の発生頻度を減らし、一層効果

ら、それはコーチやチームのパフォーマンスに影響を与えたであろうし、トレーニングテクニックの分野でより優れた経歴を有するコーチの雇用が正当化されたであろう。この 16 年間に及ぶ研究により、頭や顔の傷害が増加している傾向が特筆され、これは、過去 20 年にわたり、男子バスケットボールでは身体的接触の増加が観察されることと関連性があると思われ

(9)、優れたトレーニングテクニックを開発する重要性が強調される。ところが研究によると、コーチングの有効性に影響を及ぼす主な要因は、コーチとしての過去に指導した経験や選手としてプレーした経験(6,12,37)、過去の成功(12)、アスリートにより自覚されるスキルや向上(6,12)、他の選手たちからの社会的支援(11)、組織(12)、地域社会(12)などである。それならば、National Strength and Conditioning Association(NSCA)の認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト(CSCS)のようなコーチのための認定教育プログラムでは、成功するコーチになるための方法をどのように取り入れているのだろうか?これらのプログラムは科学的で実践的なトレーニングの基礎をコーチに提供することを目的に作成されている。さらに、最新研究によって支持される、エビデンスに基づくトレーニング方法も導入する。理論的には、アスリートを試合に備えさせるためには、エビデンスに基づくトレーニング方法が最良の結果をもたらすだろう。ところが残念なことに、トレーニングプログラムを作成する際に、認定資格を有するすべてのコーチが、最新の研究に基づいて推奨される方法を用いるとは限らないのである。我々著者は、様々なスポーツにおいて、試合前と試合後のストレッチングを調

的な生理学的反応を引き起こすことにより、パフォーマンスを向上させると思われる(32,34)。査読された研究論文はあらゆるスポーツコーチが尊重すべき情報源と考えられるが(8)、新しい知見は次々に入手可能になるため、コーチは常に新しい情報についていくことが要求される。新しい、異なるテクニックが頻繁にテストされ評価されているため、研究によって導かれる活動前と活動後のストレッチングテクニックのガイドラインも、何年かかけて変化している(1,5,15,35)。現在のガイドラインでは、一般的には活動前のストレッチングには動的ストレッチングが推奨されている(4,29,32,35)。また静的ストレッチング(SS)またはバリスティックストレッチングは推奨されない。一方、静的ストレッチング(SS)は、活動後のストレッチングとしては受け入れられている (27,36)。

認定資格と現場の実践との乖離 一部のコーチは、スポーツ科学の現在の研究動向を認識し、それを採り入れているが、科学文献を読まず、研究に基づくガイドラインを利用しようとしないコーチは、多くの旧式な方法をいまだに使っている(8,22)。認定プログラムは、コーチにトレーニングテクニックを指導し、研究が支持するエビデンスに基づくテクニックを奨励している。したがって、認定資格を有するコーチなら、トレーニングプログラムを作成する際に自動的に最新の科学的な調査結果を入手し、それを活用する可能性が高いと思われる。しかし、本稿の研究グループの先行研究では、バスケットボール(20)、アメリカンフットボール(21)、テニス(17)、そしてバレーボール(19)などのスポーツにおいて、認定資格を有していても、適切な

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ストレッチングテクニックを用いるとは限らないことが判明した。運動前と運動後のストレッチングに関する認識と実践に関する研究によると、NCAAディビジョンⅠのバレーボールプログラムでは、通常は活動前にSSやBSを行なうべきではないとされているにもかかわらず、42 %のコーチ( n =22 )がこの種類のストレッチングプロトコルを組み合わせて用いていることが明らかになった(19)。さらに、ある種の認定資格(スポーツコーチまたはCSCS)を有していることと、実際の活動前のストレッチング方法との間には相関関係は認められなかった。言い換えれば、資格を有するコーチが、現在の研究成果と一致した活動前のストレッチングを採用する可能性は、資格のないコーチと同程度である。 資格を有するコーチも含め、多くのコーチがストレッチングの方法については誤った考えを支持している(16)。前述した最近の研究に参加した大多数のコーチ(19)は、活動前のグループストレッチングが傷害を予防し( 75%)、パフォーマンスを向上させる( 69.6%)と信じている。ところが最新の研究では、ストレッチングと典型的なスポーツ傷害との間にはほとんど関連がないこと(14,30)、また、特にアメリカンフットボールのような爆発的なスポーツでは、パフォーマンスの向上とも関係がないこと(21)が示されている。同様の研究において(21)、ディビジョンⅠとディビジョンⅢのアメリカンフットボール選手の活動前と活動後のストレッチング方法を評価した結果、専ら動的ストレッチングだけを使っているコーチは、調査に参加したコーチ( n =20 )のうちわずか 3%であった。経験豊富なコーチほど、エビデンスに基づく方法に反して、練習の前に、SSとDS

とPNF(固有受容性神経筋促通法)を組み合わせて使っていた。この研究でも再び、認定資格の有無と活動前のストレッチングの種類との間には有意な関係は認められなかった。これらの研究は、中西部の州のコーチだけを対象にトレーニングの問題を調べたものであり、しかも被験者の数が少ないという限界がある。しかしこの調査結果は、認定資格がトレーニング方法に対するコーチ個人の考え方を変えるのか変えないのかに関して、さらに調査を行なう必要があることを示している。 NCAAのバスケットボールコーチ

(20)の運動前のストレッチングを調べた研究において、23 名( 30.3%)が運動前にDSを使用していると報告した。これは研究が推奨するプロトコルと一致している。しかし、コーチの 56.5%は、活動前のトレーニング処方に、SSやBS、PNFと組み合わせてDSを使っていると報告された。このようなストレッチングテクニックの組み合わせは、バスケットボール選手の爆発的な能力を制限する可能性があり、また、傷害予防上の効果もおそらくないと思われる(16,35)。大多数の入手可能なデータより、活動前のSSは組織のスティフネスを低下させ、伸張反射のような伸張-短縮サイクルの神経要素を変えることにより、一時的にパフォーマンスの低下をもたらすことが明らかになっている(36,39)。これらの変化は、最大筋力と爆発力の低下を招き、バスケットボールのコートでのパフォーマンスの低下をもたらす可能性がある。この特定の研究で最も興味深い調査結果のひとつは、調査に回答したコーチはいずれも、S&Cの専門機関の認定資格を有していなかったことである。 最近の研究では、テニスのコーチの活動前のストレッチング方法に関し

て、認定資格の影響がどのように影響するか調査が行なわれた(17)。その結果から、参加したコーチの 48.7%( n =21 )がS&Cコーチかアスレティックトレーナーから情報を受け取っていたにもかかわらず、なお活動前のルーティンでSSを使っていたことが明らかになった。しかし、全米テニス連盟

(USTA)のパフォーマンス向上認定プログラムは、コーチに影響力をもっているように思われる。この認定資格をもつコーチの中で、研究が推奨する方法に従っていないコーチはわずか21.4%であった。一方、認定資格をもたないコーチの間では 50%が最新の基準に従っていなかった。このテニス連盟のカリキュラムの中では、活動前のストレッチングに関して、現在研究が推奨する方法が採用され、徹底されていると推論できる。したがって、テニスコーチがUSTAの最高パフォーマンス認定コースあるいはNSCAのCSCSを受講・受験することは価値があると思われる。これらのプログラムにはコーチングに効果的な最新の研究動向が含まれている。

何が乖離をもたらすのか? 前述のストレッチングに関する研究が示すように、認定資格で得た知識と現場における実践の間には乖離がある。だが、そのギャップがなぜ起こるのかは説明されていない。この質問への決定的な答えはないが、それを説明する多くの要因が考えられる

(22)。そのひとつは時間である。コーチ向けの認定プログラムは、トレーニング理論と漸進的過負荷の概念について、より良く理解できるように組み立てられているが、学習教材が提供できるのは、その時点で最も新しい科学的研究だけである。最新の知識を常にも

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ち続けるために、コーチにできることのひとつは、Journal of Strength and Conditioning Researchのような、データに基づき最新のエビデンスを提供する学術誌を読むことである。だが、それには時間がかかる。大学レベルのコーチのトレーニングスケジュールは、シーズン前のトレーニングプログラムから始まる。このトレーニングでは、シーズン中のより高強度の要求に応えるために予め必要なコンディショニングや筋力トレーニングを提供する。スポーツにもよるが、試合は 3 ヵ月から 6 ヵ月続く。ポストシーズンの活動は、シーズン中の成果にもよるが、さらに 1 〜 4 週間続く。一旦シーズンが終了しても、1 年の残りの期間は、新人のリクルート、シーズンの分析、次期シーズンの準備などに追われる。そのため、毎月発行される大量の研究を探したり読んだりする自由な時間はごくわずかしか残っていないのが現状である。したがって、コーチやそのS&Cスタッフが専門的ではない情報誌に頼る傾向があることは、驚くべきことではない。 有能なコーチやパーソナルトレーナーは新しいアイデアや技術に後れを取らずについていくために豊富な情報源をもつ必要がある(26)。素人向けの出版物やオンライン情報は多量の情報を収集するのに役に立つ。これらの情報源は現在の科学的な知識の優れた要約を提供することはできるが、コーチやトレーナーが事実を虚構から峻別し認識するためには、若干の科学的な背景知識がなお必要である。コーチは、レップ数、運動負荷、量など、トレーニングの問題は簡単に評価できるが、科学的な結果を解釈することは苦手であり、エビデンスの裏付けのない資料に頼ることもあると思われる。大部分

の資格認定プログラムが提供する科学的な原理と予備知識はコーチの役に立つだろう。しかしそれらが役立つのは、資料を評価する際に実際に知識を応用したときに限られる。フィールドにおいて最新の状態でいることは、自分の情報源が何かにかかわらず難しい課題である。どのような主題にかかわる研究も、その結果は一様ではなく、様々に異なるからである。したがって、研究論文を読み科学的研究の要約に頼るコーチは、内容を鵜呑みにすることなく、批判的な目で検討しなければならない(25)。適正な研究の特徴を明らかにする 3 つの基本的な原理がある。(a)比較対照群は、調査する要素以外の要素はすべて同じでなければならない。

(b) 「n」が大きければ大きいほど結果の信頼性は高い、そして(c)結果に説得力がある。この 3 つの判定基準に当てはまれば有効な結果が保証されるというわけではないが、コーチが研究の問題点を認識することには役立つと思われる。 ピリオダイゼーションの分野に、矛盾する調査結果の好例がある。ピリオダイゼーションが優れたトレーニング方法であるということはよく理解されている。しかし、そのプログラムの最も効果的な種類はしばしば議論の的である。ピリオダイゼーションの概念が最初に提案された際(3)、それはトレーニングの開始時に、多量で低強度のルーティンをコンディショニング改善のために用いて、徐々に少量、高強度に変化させることでパフォーマンスを改善するトレーニングプログラムに関する理論であった。量と強度の変化は本質的に直線的であり、スポーツに関連のある活動を漸進的に増加させることと併せて実施された(3)。この基本的な概念は、ピリオダイゼーションの有

効性を調査した研究者により修正された結果、非線形すなわち波状形ピリオダイゼーションが誕生した。2011 年に発表された 2 つの研究からは、コーチたちが直面していると思われるジレンマが明らかになる。Apelらによる最初の論文(2)は、線形モデルと週単位の波状形のピリオダイゼーションとを比較した。その結果、線形モデルのほうがより効果的であったことが示された。ふたつめの研究はMirandaらによるもの(31)で、線形モデルと日ごとの波状型ピリオダイゼーションとを比較した。その結果は、日ごとに変化する波状型モデルが線形モデルよりも効果的であることが示唆された。矛盾する結果が出ることは研究では珍しくはないが、それらを試す時間がほとんどないコーチにとっては問題となるだろう。我々の知識と、アスリートのトレーニングにピリオダイゼーションを応用する能力との間には大きなギャップがある。大多数のS&C研究は実施場所が大学であること、またコーチやアスリートの多くは介入トレーニングには参加したがらないこと、そのような固有の限界のためにこれらのギャップが生じると思われる(7)。したがって、例えばピリオダイゼーションの再検討を行なった最近のTurnerによるレビュー論文(38)などが、最新情報に後れを取らない最善の方法であるかもしれない。Kirbyらによる別の新しい研究(23)では、漸進的ピリオダイゼーションプログラムがどのように筋力を高め、スピードとパワーを改善できるかを概説している。これらの研究はより一層実用的で、方法や統計数値の解釈も容易である。 最後のギャップの要因として考えられるのは、一部のコーチにとって、研究を理解することは難しいことかも

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しれない。データに基づく研究で使われる方法論、専門用語と科学的概念は紛らわしく、そしてわかりづらい。自分は正確に研究を解釈していると思うコーチもいるかもしれないが、誰でも専門用語に混乱する可能性はある

(14)。先に述べたように、資格認定プログラムはコーチに対して基礎的な科学的知識を提供するが、それらのデータの分析方法や研究技術の欠陥を認識する方法を教えることにはほとんど時間をかけない。先に引用した矛盾するピリオダイゼーションの論文は、この種の問題の具体例である。ひとつの研究はコントロール群を用いたが(2)、ふたつめの研究にはコントロール群が存在しない。コントロール群が存在しないことは研究自体を毀損するものではないが、コントロール群は研究結果を強化できる。研究を検討する際に、研究対象にトレーニングを積んだアスリートを使っているのか、レクリエーションレベルの活動的な入寮生を使っているのかは、もうひとつの留意点である。再び、データベースに基づかない資料や素人情報の利用は、検討のより良い方法であるかもしれない。研究の利用を難しくしている最後の要因は、科学的研究で使われる方法である。この良い例が、内分泌応答または筋生理学を調べた論文にみられる(8,13)。これらの分野の非専門的な文献を読んでいるコーチは、レップ数、仕事量、量などのトレーニング問題を評価することはできるかもしれないが、その結果をもたらした方法を正確に評価することが困難なコーチもいるだろう。現在の研究の最新知識に常に追いついていくことや、発表された論文のすべての内容を理解することが困難であることを考えると、コーチが新しい方法を用いることをためらい、他のコーチたち

に頼ろうとすることは理解できる。

認定資格vs指導 コーチングの教育/認定とメンター

(指導助言者)は、コーチがより効果的なコーチになるために利用できるふたつの有効な手段である。全米の各種スポーツ競技の協会は、実地トレーニングセッションやセミナーを開催し、参考資料を準備し、指導法を教育する様々な試みを提供することによって、コーチを養成する有意義な対策をとっている。コーチのために、専門職としての進歩をもたらす多数の選択肢が用意されていることは明らかである。それぞれの専門職は異なる道を通って、効果的なコーチングに必要な知識やスキルや特性を徐々に獲得する。Malete&Feltz(28)によると、これらの学習コースは、比較的短時間で、コーチングの能力レベルにプラスの影響を及ぼすことが知られている。認定資格プログラムは、幅広い様々な種類の入手可能な知識を通して、エビデンスに基づく現場指導の確立を支援するために存在する。しかし、認定資格がどの程度実際のコーチングに影響を及ぼすかについては、依然疑問が残る。 認定プログラムは達成基準が定められ、専門家が作成に携わっている。またそれらの基準は、基準認証機関によって設定されていることが多く、卓越したコーチングに必要な知識、行動、素質に関して特定の結果を明確に規定している。コーチの資格認定プログラムが、広く認められている認証機関から承認された場合には、その資格認定機関は承認機関によって設定されたプログラムの品質基準を維持することに同意することとなる。過去数年間にストレングストレーニングやコーチングに関する教育/認定プログラムの

数が増加したが、認証機関から正式に承認されていなければ、規制を受けていないため、一般的なカリキュラムガイドラインを満たしていない可能性がある。したがって、米国ウエイトリフティング協会(USAW)は次のような構想を推進した。すなわち、認定資格者が増加すれば、爆発的なリフティング(ウエイトリフティング)の複雑さを習得したコーチの数が増え、この競技の有望な才能を発掘育成し、将来、アメリカは、ウエイトリフティングの国際競技の舞台で競争力のある位置に戻ることができるだろうと。USWAが最近発表した数字によると、USAWに所属する 8,700 名を超える会員のうち 5,400 名が認定資格を有するコーチである(33)。しかし、認定資格を有するコーチが大勢いるにもかかわらず、アメリカのウエイトリフティングチームの現在の国際順位は、これまでのどの時期よりも低い(33)。したがって、認定資格それ自体は必ずしも解決策ではない。しかし、エビデンスに基づく指導法が教えられていることを保証するために、特定の認定資格が認証機関によって承認されているかを確認することは役に立つと思われる。 アシスタントコーチあるいはマネージャーとして指導者とともに仕事をすることは、優秀なコーチになるために必要な特質を向上させることが知られている(11)。指導者は、通常、自分の経験や知識を他のコーチと共有し、若い、まだ経験の浅いコーチの進歩を援助してくれる上級レベルのコーチである。 CSCSのようなエビデンスに基づく認定プログラムでは、カリキュラムの発展のために、この分野の専門家を使ってこの種の実地トレーニングを提供している。しかし、認定プログラムに教育/資格認定の一部として、実地教育

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による指導が体系的に確立されていなければ、経験豊かなコーチと共に働く効果に匹敵する効果は上げられないだろう。

おわりに アメリカでは、様々なスポーツにおいて、将来の、パフォーマンスに優れた競争力のある選手を育成する上で、大学のシステムに大きく依存している。大学スポーツの人気が高まるにつれて、学生や教師、卒業生が母校のチームの成功によって一致団結する。コーチの努力や指導によって育成されるアスリートの特質がある。最も効果的な方法でその能力が開発されたとき、コーチはアスリートがその最大の能力を発揮するのを手助けできる。十分な資格を有するコーチは有能なコーチと定義され、質の高いプログラムの要であり、多くの主要な知識をもって訓練を積み、スポーツの現場において最善の方法でトレーニングを実施することに全力を注ぐ。しかし、主要な知識と最善の方法は、解釈や争点によって変わり、またスポーツによっても異なる。NCAAに所属する大学は、有能なコーチを雇用するために巨額の投資をするが、その費用で知識の豊富な専門職を保証する必要がある。そのひとつの方法は、コーチに認定資格を要求することである。とはいえ、認定資格だけでは、コーチの成功やパフォーマンスを促進するために最新の科学的なガイドラインを用いることを保証できない。資格認定プログラムをはじめ、いくつかの段階を経ることにより、コーチはエビデンスに基づく、必要な知識と技術を習得する機会があり、そして多種多様な環境で機能する特質を有することが保証されるのである。しかし、プログラムが認証基準を満たしている

ことは、質の高いコーチングの教育プログラムにとって、重要ではあるがただひとつの条件にすぎない。もうひとつの重要な側面は、そのプログラムが目標とする集団のニーズと考えられる教育内容を満たしているかどうかである。したがって、コーチが資格認定プログラムを修了しても、すでに確立されている方法論を変えることを躊躇う可能性がある。このような科学と現場における実践とのギャップが存在する理由は明らかではないが、コーチというものは習慣からなかなか抜け出せない傾向があり、しばしば伝統的で独断的な実践に固執し、他のコーチからのアドバイスに依存しやすい。認定資格を有するコーチでさえも、科学的な助言に忠実に従うことができないということは、認定プログラムや学術研究社会にとっての挑戦を意味している。本稿ではストレッチングのガイドラインに関するエビデンスを再検討した。これによる疑問提起は、このストレッチングの基準は、資格認定プログラムで受けた全レベルのトレーニングに適用されるのか、ということである。これは、探究する必要のある研究分野である。◆

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From Strength and Conditioning JournalVolume 36, Number 1, pages 46-51.

Lawrence W. Judge:Ball State Universityの 准教授で大学院コーチングプログラムのコーディネーター。

Bruce Craig:Ball State University 体育・スポーツ・運動科学学部の名誉教授。

著者紹介

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ⒸNSCA JAPAN Volume 24, Number 6, pages 34-39 研究と現場のコーチングとの乖離 The Disconnect Between Research and Current Coaching Practices References 1. Anderson B. Conditioning report: Stretching for football. Natl Strength Coaches Assoc J 2: 14–18, 1980. 2. Apel JM, Lacy RM, and Kell RT. A comparison of traditional and weekly undulating periodized strength

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