理科教育 目的意識をもって取り組む理科授業 事象提示と働き掛 … ·...

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理科教育 学習項目数は,小単元数を基に,新出用語数は,東京書籍「新しい理科」「新しい科学」に太字で示された用語の数を基に算出した。 生徒が観察,実験に目的意識をもって取り組む理科授業 - 小学校との接続を意図した事象提示と働き掛けを通して - 概 要 本研究は,中学校理科において,小学校との接続を意図した事象提示と働き掛けに よって,生徒が観察,実験に目的意識をもって取り組む授業を目指すものである。中 学校理科教員の意識調査を基に,事象提示と働き掛けの在り方を探るとともに,授業 実践を通してその有効性を検証した。また,研究成果物として「観察実験課題提示・ ワークシート集」を作成した。 1 主題設定の理由 1.1 学習意識調査の結果から 国際的な調査や全国学力・学習状況調査において,理科に対 する学習意識が小学校から中学校にかけて低下することが報告 されてきた。図1に,日本科学技術振興機構が実施した理科学 習実態調査の結果を示す。平成 22 年度の小学校6年生(以下学 年については小6のように略す)と平成 24年度の中2生の理科 に対する学習意識を比較すると,「理科の勉強は好きだ」「理科 の勉強は大切だ」「理科を勉強すれば,私は,疑問を解決したり 予想を確かめたりする力がつく」のいずれの項目においても低 下が見られた。特に,「理科を勉強すれば,私は,疑問を解決し たり予想を確かめたりする力がつく」の項目では,「そう思う」 の回答が 30.0%から14.0%と半数以下になり,理科の有用感が 中学校において失われていることが示された。 1.2 小・中学校の学習内容量の比較,及び全国学力・学習 状況調査の結果から 図2に,宮城県の小・中学校で広く使用されている理科教科 書(東京書籍「新しい理科」「新しい科学」)における,学年ごと の学習内容量 を示す。学習項目数は小5から中3まで増加し 続けている。また,新出用語数は小6と中1の間で大きく増加 している。理科の標準授業時数は小6と中1で同じであること から,中学校では,学習項目当たりの配当時間が尐なくなるこ と,複数の用語の習得が1単位時間内に求められる状況である ことが分かる。 図1 理科に対する学習意識に関する学習 実態調査の結果 41.1 35.2 40.8 39.7 41.5 36.5 31.9 26.3 42.5 36.5 30.0 14.0 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 H22 小6 H24 中2 H22 小6 H24 中2 H22 小6 H24 中2 そう思う どちらかといえばそう思う 〔%〕 理科の勉強 は好きだ 理科の勉強 は大切だ 理科を勉強すれ ば,私は,疑問 を解決したり予 想を確かめたり する力がつく 図2 理科教科書の学年ごとの学習内容量 0 20 40 60 80 100 120 140 小3 小4 小5 小6 中1 中2 中3 学習項目数 新出用語数 必須観察,実験数 〔個〕 平成 25 年度 理科教育研究グループ 専門研究員 角田市立金津中学校 五嶋 理 加美町立中新田中学校 黒澤 かな子 栗原市立若柳小学校 齋藤 義彦 事 研究開発班 牛来 拓二 研究開発班 阿部 光男 発達支援班 千葉 雅弘 - 理科教育 1 -

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Page 1: 理科教育 目的意識をもって取り組む理科授業 事象提示と働き掛 … · 理科教育 ‐理科教育 1‐ 1 学習項目数は,小単元数を基に, 新出用語

理科教育

‐理科教育 1‐

1 学習項目数は,小単元数を基に,新出用語数は,東京書籍「新しい理科」「新しい科学」に太字で示された用語の数を基に算出した。

生徒が観察,実験に目的意識をもって取り組む理科授業

- 小学校との接続を意図した事象提示と働き掛けを通して -

概 要

本研究は,中学校理科において,小学校との接続を意図した事象提示と働き掛けに

よって,生徒が観察,実験に目的意識をもって取り組む授業を目指すものである。中

学校理科教員の意識調査を基に,事象提示と働き掛けの在り方を探るとともに,授業

実践を通してその有効性を検証した。また,研究成果物として「観察実験課題提示・

ワークシート集」を作成した。

1 主題設定の理由

1.1 学習意識調査の結果から

国際的な調査や全国学力・学習状況調査において,理科に対

する学習意識が小学校から中学校にかけて低下することが報告

されてきた。図1に,日本科学技術振興機構が実施した理科学

習実態調査の結果を示す。平成 22 年度の小学校6年生(以下学

年については小6のように略す)と平成 24 年度の中2生の理科

に対する学習意識を比較すると,「理科の勉強は好きだ」「理科

の勉強は大切だ」「理科を勉強すれば,私は,疑問を解決したり

予想を確かめたりする力がつく」のいずれの項目においても低

下が見られた。特に,「理科を勉強すれば,私は,疑問を解決し

たり予想を確かめたりする力がつく」の項目では,「そう思う」

の回答が 30.0%から 14.0%と半数以下になり,理科の有用感が

中学校において失われていることが示された。

1.2 小・中学校の学習内容量の比較,及び全国学力・学習

状況調査の結果から

図2に,宮城県の小・中学校で広く使用されている理科教科

書(東京書籍「新しい理科」「新しい科学」)における,学年ごと

の学習内容量1を示す。学習項目数は小5から中3まで増加し

続けている。また,新出用語数は小6と中1の間で大きく増加

している。理科の標準授業時数は小6と中1で同じであること

から,中学校では,学習項目当たりの配当時間が尐なくなるこ

と,複数の用語の習得が1単位時間内に求められる状況である

ことが分かる。

図1 理科に対する学習意識に関する学習

実態調査の結果

41.1 35.2 40.8 39.7 41.5 36.5

31.9 26.3

42.5 36.5 30.0

14.0

0102030405060708090

H22

小6 H24

中2 H22

小6 H24

中2 H22

小6 H24

中2

そう思う

どちらかといえばそう思う

〔%〕

理科の勉強

は好きだ

理科の勉強

は大切だ

理科を勉強すれ

ば,私は,疑問

を解決したり予

想を確かめたり

する力がつく

図2 理科教科書の学年ごとの学習内容量

0

20

40

60

80

100

120

140

小3 小4 小5 小6 中1 中2 中3

学習項目数

新出用語数

必須観察,実験数

〔個〕

平成 25 年度 理科教育研究グループ

専 門 研 究 員 角田市立金津中学校 五嶋 理

加美町立中新田中学校 黒澤 かな子

栗原市立若柳小学校 齋藤 義彦

指 導 主 事 研究開発班 牛来 拓二

研究開発班 阿部 光男

発達支援班 千葉 雅弘

- 理科教育 1 -

Page 2: 理科教育 目的意識をもって取り組む理科授業 事象提示と働き掛 … · 理科教育 ‐理科教育 1‐ 1 学習項目数は,小単元数を基に, 新出用語

生徒が観察,実験に目的意識をもって取り組む理科授業

- 理科教育 2 -

また,平成 24 年度の全国学力・学習状況調査で,学校質問紙調査において理科の観察,実験時に行

う学習活動の実施状況,児童生徒質問紙調査においては,学習活動への取組意識の調査が行われた。

図3に宮城県の調査結果の一部を示す。学校質問紙調査からは,小・中学校ともに「予想や仮説を基

に計画を立てる活動」よりも「結果を分析し,解釈する活動」の実施割合が高く,中学校ではその差

が広がっていた。一方,学校質問

紙調査と児童生徒質問紙調査を比

較すると,学習活動の実施状況と

児童生徒の取組意識の差はいずれ

も中学校において広がっていた。

特に「結果を分析し,解釈する活

動」の実施状況と,中3生徒の「結

果をもとに考察している」意識の

差は 31.5 ポイントであり,他項目

と比べて大きかった。このことか

ら,中学校の理科授業における学

習活動は,「予想や仮説を基に計画

を立てる活動」よりも「結果を分

析し,解釈する活動」に偏りやす

いこと,教員の実施状況と生徒の

取組意識の間にかい離が生じやす

い現状が示された。

1.3 過去の研究から

宮城県教育研修センター理科教

育研究グループでは,中学校理科

に関して,平成 21 年度に,問題解

決の過程に従って観察,実験の結

果を考察する学習活動を,平成 22

年度に,事象提示から観察,実験

の目的を生徒に理解させる学習活

動を,それぞれ研究し,教員の働き掛けの在り方を示した。これらの研究では,問題を見いだしたり,

予想や仮説を立てて実験の方法を考えたりする観察,実験前の学習活動の重要性を報告している。ま

た,小学校を対象としているが,平成 23 年度に,違いが明確な2つの事象提示とその違いを整理する

学習活動が,児童自らが問題を見いだすために有効であることを,平成 24 年度には,観察,実験にお

ける教材の工夫が,児童から主体的に問題解決する態度を引き出すことを,それぞれ報告している。

過去の研究からは,児童生徒が目的意識をもつことで,観察,実験とその後の学習活動が主体的な

ものになること,中学校理科において,生徒に目的意識をもたせる観察,実験前の学習活動を小学校

の問題解決の過程と同様にして行うには,授業時数の制約があることが示された。

1.4 研究の方向性

以上のことから,本研究では,中学校の理科授業において,生徒が観察,実験に目的意識をもって

取り組むための観察,実験前の学習活動の在り方を探ることとした。また,本研究を進めることで,

観察,実験後の活動における教員と生徒の意識のかい離を防ぐ授業づくりを提案できると考えた。

研究を進めるに当たり,観察,実験前の学習活動では,小学校との接続を意図して,既習事項を振

り返らせたり,小学校で養った問題解決の能力を活用させたりすることが効果的であると考えた。そ

こで,研究の対象を小学校の学習内容と関連がある中1,中2の観察,実験とし,まず,これらの観

察,実験において生徒にもたせる目的意識を明確にすることとした。次に,観察,実験前の学習活動

30

40

50

60

70

80

90

100

教員 生徒 教員 生徒

61.7

93.2

52.1

64.0

【学校質問紙】

「予想や仮説を基に計画を立てる活動」に関する設問

理科の指導として,前年度まで自ら考えた仮説をもとに観察,実験の計画を立 てさせる指導を行いましたか。(小6,中3共通)

「結果を分析し,解釈する活動」に関する設問

理科の指導として,前年度までに,観察や実験の結果を整理し,考察する指導

を行いましたか。(小6)

理科の指導として,前年度までに,観察や実験の結果を分析し,解釈する指導

を行いましたか。(中3)

【児童質問紙・生徒質問紙】

「予想や仮説を基に計画を立てる活動」に関する設問

理科の授業で,自分の予想をもとに観察や実験の計画を立てていますか。 (小6,中3共通)

「結果を分析し,解釈する活動」に関する設問

理科の授業で,どのようなことが分かったのか考えていますか。(小6)

理科の授業で観察や実験の結果をもとに考察していますか。(中3)

10

0

結果を分析し,

解釈する活動

予想や仮説を 基に計画を立

てる活動

中学校

30

40

50

60

70

80

90

100

教員 児童 教員 児童

0

10

結果を分析し,

解釈する活動

予想や仮説を 基に計画を立

てる活動

小学校

〔%〕 〔%〕

図3 平成 24 年度全国学力・学習状況調査の宮城県における学校質問

紙調査と生徒質問紙調査の結果の比較

「当てはまる」「どちらかといえば当てはまる」と回答した割合

68.873.4

84.2

76.8

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生徒が観察,実験に目的意識をもって取り組む理科授業

- 理科教育 3 -

において,生徒に自然の事物・現象を提示したり,結果を予想させたりする場合に,小学校との接続

をどのように意図して行うべきか探る。また,観察,実験前の学習活動が,県内の中学校理科教員の

間でどの程度重視されているか意識調査を行う。その後,観察,実験前の学習活動を具体化するとと

もに,授業実践を行ってその効果を検証することで,生徒が観察,実験に目的意識をもって取り組む

理科授業に迫ることができると考え,本主題を設定した。

2 主題,副題について

2.1 「観察,実験に目的意識をもって取り組む」について

学習指導要領では中学校理科の目標に,「目的意識をもって観察,実験などを行う」とあり,各分

野の目標及び内容に,各項目で行う観察,実験と,観察,実験から見いだすことがそれぞれ明記され

ている。また,学習指導要領解説理科編には,それぞれの観察,実験の方法が例示されるとともに,

生徒が目的意識をもつための活動として「観察や実験を何のために行うか,観察や実験ではどのよう

な結果が予想されるかを考えさせる」と記されている。これらの内容から,本研究では観察,実験に

おいて生徒にもたせる目的意識を,「何のために観察,実験を行うか」に気付くこと,「どのような

観察,実験で予想や仮説が検証できるか」の見通しをもつこと,の2つに集約して捉えることとした。

表1に,学習指導要領及び同解説理科編における,各項目で行う観察,実験の記述と,本研究で捉え

る観察,実験の目的意識をまとめたものを示す。

学習指導要領及び同解説理科編の記述より 本研究で捉える目的意識

項 目

観察,実験の内容と見いだすこと 何のために観察,実験を行うか

観察,実験の方法 どのような観察,実験で予想や仮説が検証でき

るか

(1) 身近な物理現象

ア 光と音

(ア) 光の反射・屈折

光を鏡で反射させる実験を行い,入

射角と反射角が等しいことを見いだ

すこと

鏡が光を反射する現象から光の入射と反射の関

係について考えをもつ

光の進む道筋を記録すること

光の進む道筋を記録することで入射光と反射光

の関係を確かめることができるという見通しを

もつ

(4) 化学変化と原子・

分子

イ 化学変化

(ア) 化合

2種類の物質を化合させる実験を行

い,反応前とは異なる物質が生成さ

れることを見いだすこと

物質が化学変化する現象から反応前とは異なる

物質ができるという考えをもつ

反応前後での物質の色や形状などの

違いが明確なものを取り上げ,生成

した物質を調べること

反応後に生成した物質の性質を調べることで異

なる物質ができたことを確かめることができる

という見通しをもつ

(1) 植物の生活と種類

イ 植物の体のつ

くりと働き

(イ) 根・茎・葉のつ

くりと働き

葉の観察と吸水の実験を行い,葉の

つくりの基本的な特徴と実験結果を

関連付けて捉えること

植物の蒸散や吸水の現象から,葉と吸水の関係

について考えをもつ

葉の断面や気孔を観察すること,蒸

散が行われると吸水が起こることを

調べること

葉の断面や気孔のつくりを観察したり,蒸散が

行われるときの吸水の様子を調べたりすること

で,吸水に関する葉の働きを知ることができる

という見通しをもつ

(4) 天気とその変化

イ 天気の変化

(ア) 霧や雲の発生

大気中の水蒸気が凝結する現象を,

気温の変化と関連付けて捉えること

大気中の水蒸気が凝結する現象と気温の変化の

関係について考えをもつ

水蒸気が水滴に変化する現象から,

露点を測定すること

露点を測定することで,気温の変化に伴い水蒸

気が凝結することを確かめることができるとい

う見通しをもつ

以上の捉えに基づき,教科書記載の観察,実験のそれぞれについて,生徒にもたせる目的意識を押

表1 学習指導要領及び同解説理科編における,各項目で行う観察,実験と,本研究で捉える観察,実験の目的意識

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生徒が観察,実験に目的意識をもって取り組む理科授業

- 理科教育 4 -

さえることとした。

2.2 「事象提示と働き掛け」について

学習指導要領解説理科編には,観察,実験のねらいの達成や時間確保の観点から,問題の把握,仮

説の設定,実験による検証,結果の分析や解釈などの学習活動のうち,「ある部分を重点的に扱った

り,適宜省略したりするといった工夫が必要である」と記されている。本研究では観察,実験前の学

習活動を,実験で扱う事物・現象の提示(事象提示)と,「何のために観察,実験を行うか」に気付

かせる働き掛け(働き掛けⅠ),「どのような観察,実験で予想や仮説を検証できるか」の見通しを

もたせる働き掛け(働き掛けⅡ)の3つの活動に絞り込むこととした。表2に,本研究で行う事象提

示と働き掛けⅠ,Ⅱの内容を示す。

事象提示は,観察,実験が何に関するものか,どのような器具を用いて行われるかを生徒に示すも

のである。生徒によっては,事象提示だけで「何のために観察,実験を行うか」に気付くことも予想

される。事象は,変化が明確で,課題となるものを生徒が大まかに捉えることができるものとする。

働き掛けⅠは,事象提示を受けて,生徒に「何のために観察,実験を行うか」の意識を明確にもた

せるもので,問い掛けや発問により予想や仮説につながる視点を与えるものである。

働き掛けⅡは,事象提示の事物・現象や器具,働き掛けⅠの予想や仮説を基にしながら,生徒に「ど

のような観察,実験で予想や仮説を検証できるか」の見通しを与えるもので,問い掛けにより生徒に

考えを整理させながら,どのような方法が観察,実験に適しており,どのような結果が得られれば何

が明らかになるかの視点を与えるものである。

上記の3つの活動はどのように行うべきか,また,生徒が思考の過程や結果を記録するワークシー

トはどのようなものが適切か,をそれぞれ探ることとした。

2.3 「小学校との接続を意図した」について

中学校学習指導要領解説理科編では,理科の内

容の改善の要点として,科学に関する基本的概念

の一層の定着を図る観点から,「エネルギー」「粒

子」「生命」「地球」などの科学の基本的な見方

や概念を柱として構成し,その際,小・中学校の

一貫性2に十分配慮したとしている。また,第1

分野の目標では,表3に示した小学校で育成する

問題解決の能力と,中学校における科学的に探究

する能力の基礎のつながりが示されており,「比

較したり,条件に目を向けたりするなどの小学校

で培った能力」を更に高めながら,観察,実験の

結果を分析して解釈するなどの能力の育成を図

り,探究的な活動を行うことが,生徒の課題解決

への意欲を高めるとしている。

表2 本研究で行う事象提示と働き掛けⅠ,Ⅱの内容

内 容

事象提示 実施する観察,実験が何に関するもので,どのような器具を用いて行われるかを捉えることがで

きるような事物や現象を提示する

働き掛けⅠ 提示した事象から予想や仮説につながる視点がもてるような働き掛けを行う

働き掛けⅡ 予想や仮説を検証するために,観察,実験の方法を見いだすことができるような働き掛けを行う

表3 小学校で育成する問題解決の能力

(小学校学習指導要領解説理科編より)

学 年

「問題解決の能力」 内 容

第3学年

「比較」

身近な自然の事物・現象を比

較しながら調べること

第4学年

「関係付け」

自然の事物・現象を働きや時

間などと関係付けながら調べ

ること

第5学年

「条件制御」

自然の事物・現象の変化や働

きをそれらにかかわる条件に

目を向けながら調べること

第6学年

「推論」

自然の事象・現象についての

要因や規則性,関係を推論し

ながら調べること

2 平成 24 年度から中学校の理科教科書に小学校で行った観察,実験や既習事項が記載されるようになった。

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生徒が観察,実験に目的意識をもって取り組む理科授業

- 理科教育 5 -

これらのことから,本研究では,小学校との接続を意図した事象提示と働き掛けを,事象提示にお

いては,小学校で行った観察,実験の基本操作と既習事項に留意すること,働き掛けⅠ,Ⅱにおいて

は,小学校での既習事項を取り扱うことで内容の関連を図ったり,問題解決の能力を活用する問い掛

けや発問をしたりすることとした。中2で行う,電圧を変化させたときの電流の大きさを調べる実験

を例に,事象提示と働き掛けⅠ,Ⅱの内容と小学校との接続について表4に示す。

この表中の電熱線,乾電池のつなぎ方,回路の作製に関わる既習事項や基本操作については,生徒

の定着度に差があることが報告されている。そのため,事象提示において,実際に回路をつくらせた

り,電熱線が小6で作製した発泡スチロールカッターの刃であることを示したりして,既習事項を確

認するとともに実験器具への抵抗感を軽減させるなどの支援が求められる。働き掛けⅠ,Ⅱにおいて

は,「関係付け」ながら調べる問い掛けに対しては,生徒は容易に反応できると予想されるが,「推

論」しながら調べる問い掛けに対しては,前提となる知識や原理,法則を適用する思考が必要となる

ことから,段階的に問い掛けたり,説明を一部加えたりするなどの配慮をすべきであると考えた。

また,小中一貫校などの先行事例では,中学校での学習のつまずきの原因として,計算などの数的

処理が複雑になること,観察,実験によって見いだす対象が規則性や法則性などの一般性を帯びたも

のになること,直感では捉えにくい現象についてモデルを基に思考することなど,が挙げられ,それ

らに対するいくつかの配慮すべき事項が示されている。

観察,実験前の学習活動において,以上のような配慮や支援をすることは,生徒の学習のつまずき

を防ぎ,教員と生徒の意識のかい離を解消することにつながると本研究では考えた。そこで,予想さ

れる学習のつまずきと小学校との接続を図る上での配慮や支援を,表5の4項目にまとめた。

項目 観察,実験において予想される学習のつまずき つまずきに対する配慮や支援

既習事項・生活経験 用語の知識,概念の理解,生活経験の不足により,

観察,実験の見通しをもつことができない

内容の一部を確認したり,実物を示し

たりする場面の設定

原理・法則の適用,

問題解決能力の活用

理解や思考の不足から既習の原理や法則を適用し

ながら観察,実験の結果を分析したり,問題解決の

能力を活用して考えや結論を導き出したりするこ

とができない

学び直しをしたり,段階的に問い掛け

たり,説明を一部加えたりする場面の

設定

技能・操作

使用する器具に不慣れであったり,技能が定着して

いなかったりすることから,適正な結果を得ること

ができない

器具に応じて学習形態を変え,器具の

操作と扱いを学ばせる場面の設定

数的処理

観察,実験で得たデータを計算することが必要とな

る場合,計算に対する抵抗感や苦手意識から,分

析・解釈を進めることができない

結果を表にまとめたり,グラフに表し

たりすることで規則性を見いだすこ

とができるワークシートの構成

以上のように,小学校との接続を意図した事象提示と働き掛けⅠ,Ⅱを行うことによって,生徒は

観察,実験に目的意識をもって取り組み,その結果を主体的に分析し,解釈することができるように

なると本研究では考えた。また,観察,実験の内容に応じた配慮や支援をあらかじめ設定することで,

生徒の全員が観察,実験に取り組み,自ら結論を導き出すことができると考えた。

事象提示と働き掛けⅠ,Ⅱの内容 小学校との接続(学年)

事象提示 電熱線を含む回路に直列につなぐ電池を1個増やすと,電圧計と

電流計の指針の振れが大きくなることを見せる

回路の作製 (小3)

乾電池の数やつなぎ方を変えた

ときのモーターの回り方(小4)

電熱線 (小6)

働き掛けⅠ 電流計の振れが大きくなったのは何が関係しているか発問する 問題解決の能力「関係付け」

(小4)

働き掛けⅡ 電圧の大きさと電流の大きさが比例するかどうか調べるには,電

圧をどう変化させるとよいか問う 問題解決の能力「推論」 (小6)

表4 電圧を変化させたときの電流の大きさを調べる実験(中2)の事象提示と働き掛けⅠ,Ⅱにおける,小学校との接続

表5 予想される学習のつまずきと小学校との接続を図る上での配慮や支援

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生徒が観察,実験に目的意識をもって取り組む理科授業

- 理科教育 6 -

そこで,中1,中2の各単元の指導計画を立てた上で,観察,実験の事象提示と働き掛けⅠ,Ⅱを

具体化したものとして,観察,実験の課題提示案を,生徒が授業中に思考の過程や結果を記録するも

のとしてワークシート案を,それぞれ作成することとした。次に,これらを使って授業実践を行い,

課題提示案,ワークシート案の有効性を検証するとともに改善を加え,「観察実験課題提示・ワーク

シート集」としてまとめることで,生徒が目的意識をもって取り組む理科授業づくりを提案すること

とした。本研究の研究構想図を2.4に示す。

2.4 研究構想図

3 研究目標

中学校理科において,小学校との接続を意図した事象提示と働き掛けの在り方を,意識調査によっ

て探るとともに,授業実践を通して検証し,生徒が観察,実験に目的意識をもって取り組む授業づく

りを提案する。

生徒が観察,実験に目的意識をもって取り組む理科授業

理科教育の現状

小・中の教科書の比較から 平成 24 年度全国学力 ・学習状況調査結果から

学習内容量の増加 教員と生徒の

意識のかい離

中学校で

学習意識の低下

学習意識調査の結果から

効率的に目的意

識をもたせる働

き掛けが必要

過去の研究から

研 究 内 容

中1,中2 「観察実験課題提示・ワークシート集」

授業づくりの提案

方法を考えさせる

働き掛けⅡ

何のために

観察,実験を行うか

どのような観察,実験で

予想や仮説を検証できるか

予想や仮説に

つながる

働き掛けⅠ

内容と器具

を捉える

事象提示

観察,実験前の学習活動の在り方

検証

改善

授業実践

・見通しをもった

観察,実験

・生徒主体の

分析・解釈

・生徒自ら

結論を導出

実践研究

意識調査の実施(中学校理科教員対象)

調査研究

研究成果物

参考 実践単元 選定

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生徒が観察,実験に目的意識をもって取り組む理科授業

- 理科教育 7 -

4 研究の方法と内容

4.1 調査研究

中学校理科教員に対して,1,2年生で行う観察,実験に関する意識調査を行い,その結果を分析

し,教科書で扱う各観察,実験の課題提示案の方向性を探る。

4.1.1 調査対象

県内の中学校理科教員(大河原地区,大崎地区,栗原市,塩竈市,多賀城市・宮城郡)

4.1.2 調査方法

質問紙による調査

4.2 実践研究

作成した教科書で扱う各観察,実験の課題提示案の有効性を,授業実践を通して検証する。

4.2.1 実践対象

(1) 角田市立金津中学校 第1学年1組

(2) 加美町立中新田中学校 第2学年4組

(3) 角田市立金津中学校 第1学年2組

4.2.2 分析方法

(1) 教員の問い掛けに対する生徒の発言と生徒間の話合いの発話の分析

(2) ワークシートの記述内容の分析

(3) 授業実践終了後の生徒を対象とした質問紙調査を実施し,事象提示と働き掛けによる生徒の学習

意識への影響を分析

5 調査研究の実際

5.1 「理科の学習指導に関する調査」について

事象提示と働き掛けⅠ,Ⅱにおいて,小学校との接続を観察,実験の課題提示案にどのように示す

べきかを探るため,小学校の学習内容をどのようにして確認しているか,また,どの単元の観察,実

験においてどのような指導上の困難を感じているかについて,指導の実態を踏まえる必要があると本

研究では考えた。そのため,次の4項目について意識調査を行い,109 人から回答を得た。

項目1:小学校での学習内容の確認方法

項目2:観察,実験を指導する際,重視している学習活動

項目3:中1及び中2の教科書の大単元3ごとの生徒に身に付けさせることに難しさを感じている

資質や能力(観点別評価の4観点ごと)

項目4:中1及び中2の大単元のうち特に指導が難しいと感じるものとその具体的な学習活動

以下の図4~8に,それぞれの項目についての結果を示す。

5.1.1 項目1:小学校での学習内容の確認方法

3 教科書では,学習指導要領の項目について,単元として記載されており,大項目を大単元として表記した。

53.2

29.3

6.4

42.2

45.9

23.9

24.8

43.1 26.6

0% 20% 40% 60% 80% 100%

中学校教科書で小学校とのつながりを確認する

学習指導要領で小学校との関連を確認する

小学校教科書で観察,実験経験を確認する

必ず行う ときどき行う あまり行わない 全く行わない

図4 小学校での学習内容の確認方法(n=109)

0

0

4.6

〔%〕

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生徒が観察,実験に目的意識をもって取り組む理科授業

- 理科教育 8 -

図4のように,中学校教科書に記載されている小学校の学習内容の要点を,ほとんどの教員が確認

していた。一方,小学校教科書を用いて,観察,実験の内容及びその扱いについて確認している教員

は 30.3%であった。

5.1.2 項目2:観察,実験で重視する学習活動

図5のように,観察,実験前の学習活動では,①~③の活動を「とても重視している」「やや重視し

ている」と回答した教員の割合が9割を超えた。特に,②の「何のために行う観察,実験かを生徒が

理解すること」については「とても重視している」の回答だけで約7割を占めた。また,④の活動を

「とても重視している」「やや重視している」と回答した教員の割合も6割を超えた。

観察,実験後の学習活動では,⑤の活動を「とても重視する」「やや重視する」と回答した教員の割

合が9割を超え,平成 24 年度の全国学力・学習状況調査の学校質問紙調査の教員の意識と同様の結果

となった。

5.1.3 項目3:身に付けさせることに難しさを感じている資質や能力

図6のように,「大地の変化」以外の大単元では「科学的思考・表現」が,「大地の変化」では「観

図6 身に付けさせることに難しさを感じている資質や能力(n=109)

9

40

16 6

0

20

40

60

80

関 科 技 知

〔人〕

A 植物の世界

6

41

18 9

0

20

40

60

80

関 科 技 知

〔人〕

B 身のまわりの物質

8

52

22 19

0

20

40

60

80

関 科 技 知

〔人〕

C 身のまわりの現象

20

35 36

15

0

20

40

60

80

関 科 技 知

〔人〕

D 大地の変化

25

62

27

39

0

20

40

60

80

関 科 技 知

〔人〕

G 電気の世界

12

39 31

18

0

20

40

60

80

関 科 技 知

H 天気とその変化 〔人〕

13

65

18

31

0

20

40

60

80

関 科 技 知

E 化学変化と原子・分子

〔人〕

5

31 21

12

0

20

40

60

80

関 科 技 知

〔人〕

F 動物の世界と生物の変遷

関:「関心・意欲・態度」 科:「科学的思考・表現」 技:「観察・実験の技能」 知:「知識・理解」

33.0

69.7

44.0

10.1

41.3

3.7

36.7

63.3

27.5

50.5

52.3

54.1

33.9

52.3

36.7

57.8

11.0

0% 20% 40% 60% 80% 100%

①事象を提示し,疑問や問題を見いださせること

②何のために行う観察,実験かを生徒が理解すること

③生徒が観察,実験結果の予想や仮説を立てること

④生徒が観察,実験方法や分析方法を考えること

⑤観察,実験結果から,生徒自身で分析すること

⑥観察,実験を生徒が互いに改善・評価すること

⑦日常生活や社会との関連を生徒に考えさせること

とても重視している やや重視している あまり重視していない 全く重視していない

図5 観察,実験で重視する学習活動(n=109)

0

4.6 0 4.6

5.5 0 5.5 0 2.8 0

3.7

〔%〕

観察,実験後の学習活動

観察,実験前の学習活動

3.7

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生徒が観察,実験に目的意識をもって取り組む理科授業

- 理科教育 9 -

察,実験の技能」が,4観点の中で最も多く挙げられた。特に「科学的思考・表現」は「化学変化と

原子・分子」と「電気の世界」においては,半数以上の教員が挙げていた。また,「関心・意欲・態

度」と「知識・理解」は,大単元の中では「電気の世界」で最も多く挙げられた。

中1と中2を比較すると,第1分野では,エネルギー領域は4観点の全てで,粒子領域は3観点で

中2の方が多くなった。特に「科学的思考・表現」は粒子領域で 24 人,「知識・理解」はエネルギー

領域で 20 人多くなった。また,第2分野は,生命領域,地球領域とも2観点で中2の方が尐なく,第

1分野と比べて学年間の差が小さかった。

5.1.4 項目4:指導の難しさ

図7に特に指導が難しいと感じる

大単元について2つまで挙げてもらっ

た結果を,図8にその大単元の具体的

に難しい学習活動の結果を示す。

指導が難しい大単元として,半数以

上の教員が「電気の世界」を,約3分

の1の教員が「大地の変化」を挙げた。

また,「身のまわりの現象」「化学変

化と原子・分子」「天気とその変化」

を挙げた教員は5分の1以上であった。

一方,生命領域と「身のまわりの物質」は,5.1.3の項目3で「科学的思考・表現」をいずれ

も 30 人以上が挙げていたが,本項目において生物領域を挙げた教員は尐数で,「身のまわりの物質」

を挙げた教員はいなかった。

さらに,「結果の考察から結論を導き出させる働き掛け」が,「身のまわりの現象」「化学変化と

原子・分子」「電気の世界」「天気とその変化」で最も多く挙げられた。一方,「観察や実験の技能

を身に付けさせること」は「大地の変化」で最も多く,「天気とその変化」では2番目に多く挙げら

1:「問題を見いだすために提示する事象を選ぶこと」

2:「目的意識をもたせるための働き掛け」

3:「予想や仮説を立てさせるための働き掛け」

4:「観察や実験の方法を計画させる働き掛け」

5:「観察や実験の技能を身に付けさせること」

6:「観察や実験結果を表やグラフで分析し解釈させること」

7:「結果の考察から結論を導き出させる働き掛け」

8:「小学校の学習内容と関連を図ること」

9:「日常生活や社会とのつながりを実感させること」

C 身のまわりの現象(n=23)

2

10 8 4 3 1

14

1 5

0

10

20

30

1 2 3 4 5 6 7 8 9

〔人)

2 2 5 5 6

3

10

0 0 0

10

20

30

1 2 3 4 5 6 7 8 9

〔人〕

H 天気とその変化(n=22) D 大地の変化(n=38)

9

2 5

9 12

5 8

0 4

0

10

20

30

1 2 3 4 5 6 7 8 9

〔人〕

G 電気の世界(n=63)

4 9

13

5 2 4

14

2 5

0

10

20

30

1 2 3 4 5 6 7 8 9

〔人〕

8 13

16

6 9

13

27

4 8

0

10

20

30

1 2 3 4 5 6 7 8 9

〔人〕 E 化学変化と原子・分子(n=30)

図8 特に指導が難しいと感じる大単元の「具体的に難しい学習活動」

5

0

23

38

30

6

63

22

0 20 40 60 80

A 植 物 の 世 界

B 身のまわりの物質

C 身のまわりの現象

D 大 地 の 変 化

E 化学変化 と 原子・分子

F 動物の世界と生物の変遷

G 電 気 の 世 界

H 天 気 と その変化

図7 特に指導が難しいと感じる大単元(n=109)

〔人〕

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生徒が観察,実験に目的意識をもって取り組む理科授業

- 理科教育 10 -

れた。また,「目的意識をもたせるための働き掛け」は「身のまわりの物質」で,「予想や仮説を立

てさせるための働き掛け」は「化学変化と原子・分子」と「電気の世界」で2番目に多く挙げられた。

5.2 調査研究の考察

意識調査の結果を,小学校との接続,観察,実験で重視する学習活動,指導の難しさの3つの観点

で考察し,教科書で扱う各観察,実験の課題提示案及びワークシート案作成の参考とした。

小学校との接続については,小学校教科書で確認する割合は3割程度であり,小学校の授業でどの

ように実験結果を考察したり,結論を導き出したりするかなどの学習活動を把握している教員の割合

は尐なかった。そこで,観察,実験の課題提示案には,問題解決の能力を活用する問い掛けなどを行

う場合,教師の働き掛けと生徒にもたせたい意識をあらかじめ明示しておくことが適切と考えた。

観察,実験で重視する学習活動については,観察,実験前の学習活動のうち,「何のために行う観察,

実験かを生徒が理解すること」「事象を提示し,疑問や問題を見いださせること」「生徒が観察,実験

結果の予想や仮説を立てること」を「とても重視している」「やや重視している」と回答した教員の割

合が9割を超えた。このことから,事象提示と働き掛けⅠ,Ⅱの在り方を示すことが,県内の理科教

員の授業づくりに一定の役割を果たすと考えた。

指導の難しさについては,大単元では「電気の世界」「大地の変化」を,学習活動では「結果の考察

から結論を導き出させる働き掛け」を挙げた教員が多かった。また,「目的意識をもたせるための働き

掛け」や「予想や仮説を立てさせるための働き掛け」については,第1分野で難しさを感じている教

員が多かった。このことから,観察,実験の課題提示案では働き掛けⅠ,Ⅱの発問や問い掛けの内容

を明確にするとともに,ワークシート案は働き掛けⅠ,Ⅱのそれぞれに対して生徒が思考したことを

記入できるようにして,予想したことや見いだしたことを整理しながら結論を導き出すようにするこ

とで,指導の難しさを解消できるのではないかと考えた。

6 実践研究の実際

6.1 授業実践で扱う観察,実験について

授業実践において扱う観察,実験は,次のア~エの観点で選ぶこととした。

ア 結果を予想したり,仮説を立てたりすることが比較的容易で,生徒自身で実験方法を考えるこ

とが可能である。

イ 事象提示と働き掛けⅠ,Ⅱにおいて小学校での既習事項や,問題解決の能力が活用できる。

ウ 結果の数的処理や実験操作の習熟など,小学校との接続を図る上での予想される学習のつまず

きと,それに対する支援が関わっている。

エ 多くの教員から,予想や仮説を立てさせたり,原理や法則を活用させたり,結果を分析し解釈

させたりする指導が難しいとして挙げられている。

実践1では,事象提示と働き掛けⅠ,Ⅱの流れ及びワークシートの在り方を探るため,ア,イの観

点を重視し,「ばねを引く力の大きさとばねののびの関係」を調べる実験を扱うこととした。また,実

践2,3ではエの観点を重視し,実践2で,ア~エの観点を全て含む,「電圧を変化させたときの電流

の大きさ」を調べる実験を,実践3では,イ~エの観点を含む,「凸レンズによってできる像」を調べ

る実験をそれぞれ扱うこととした。特に,実践3については,原理や法則の活用を含むことから,本

研究で目指す授業づくりの汎用性についても追究できると考えた。

6.2 授業実践における実験の課題提示案の作成について

実践1~3に向けて,まず,それぞれの実験を含む項目を中単元として,配当する授業時数を決め,

指導計画を立てて一連の学習の流れを明確にするとともに,各実験において生徒にもたせる目的意識

を押さえた。さらに,事象提示で使用する器具,学習形態,働き掛けⅠにおける発問,働き掛けⅡに

おける問い掛けをそれぞれ決め,各実験の課題提示案を作成した。

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生徒が観察,実験に目的意識をもって取り組む理科授業

- 理科教育 11 -

「実験の内容」(学年) 何のために実験を行うか どのような実験で予想や仮説を検証できるか

実践1

「ばねをひく力の大きさと

ばねののびの関係」(中1)

ばねを引く力の大きさとばねの

のびの間の関係について考えを

もつ

力の大きさを変えて,ばねののびの長さを調

べれば確かめることができるという見通しを

もつ

実践2

「電圧を変化させたときの

電流の大きさ」 (中2)

回路に流れる電流と加わる電圧

には,比例の関係があるという考

えをもつ

回路を作り,一定の割合で電圧の大きさを変

えたときの電流の大きさを測定することで確

かめることができるという見通しをもつ

実践3

「凸レンズによってできる像」

(中1)

凸レンズによってできる像ので

き方には,何か決まりがあるとい

う考えをもつ

凸レンズと物体の距離を変えて,像の位置や

大きさ,向きを調べることで確かめることが

できるという見通しをもつ

課題提示案の構成は,事象提示,働き掛けⅠ,Ⅱのそれぞれを横長の囲みとその下の左,中央,右

の欄とし,横長の囲みに,事象提示,働き掛けⅠ,Ⅱの内容を,下は,左の欄に生徒にもたせたい意

識を,中央の欄に準備物,教員の演示内容,問い掛け,板書事項などを,右の欄に小学校との接続内

容を示すこととした。

図9.1~9.3に,実践1における実験の課題提示案を,それぞれ事象提示と働き掛けⅠ,Ⅱの

3つに分けて示す。

事象提示については,教員が演示で行うのか,班ごとに生徒が操作するのか分かるように,学習形

態を示した。また,事象提示の操作には,生徒が実験で行う操作にもつながることを意識し,適正な

結果が得られるような工夫点についても示した。

図9.1 実践1における実験の課題提示案(事象提示の部分)

表6 実践1~3の実験において,生徒にもたせる目的意識

図9.2 実践1における実験の課題提示案(働き掛けⅠの部分)

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生徒が観察,実験に目的意識をもって取り組む理科授業

- 理科教育 12 -

働き掛けⅠ,Ⅱについては,問題解決の能力を活用しながら生徒に目的意識をもたせていく活動と

なるため,中央の欄と左の欄に,教員の発問や問い掛けと予想される生徒の反応を対話形式で示した。

また,働き掛けⅡは,実験の方法について考えていく活動でもあることから,実験の正しい測定がで

きるように,指示の要点となる事項も示すこととした。

以上のような実験の課題提示案に加えて,ワークシート案を作成し,生徒が学習活動に合わせてか

き込みながら,思考の過程を整理したり,実験の結果を記録したりできるようにすることとした。

6.3 授業実践の実際

6.3.1 実践1「ばねをひく力の大きさとばねののびの関係」について

実施日 平成 25 年 10 月 30 日(水)

実施学級 角田市立金津中学校 第1学年1組 18 人

班構成 1~4班の計4班(1班当たり4または5人)

6.3.1.1 実験の課題提示案,ワークシート案の作成

(1) 実験の課題提示案の作成

実践1は「身のまわりの現象」の中単元「いろいろな力の世界」の3時間目に当たり,実験を通

して,ばねを引く力の大きさがばねののびの長さと関係があることに気付くとともに,測定誤差や

比例関係など,数的処理の基礎を身に付けることが求められる。

学習内容は,小3の「風やゴムの働き」と接続しており,生徒は,ゴムの力で動くものづくりを

通して,ゴムを長く引くほど車を遠くまで動かすことが間回すことができることを経験している。

また,ばねは引く力の大きさによってのび方が変わることは生活の中で経験していると考えた。そ

のため,事象提示では,引く力を大きくすると,ばねののびも伴って大きくなることを示し,その

上で働き掛けⅠでは,ばねののび

と引く力の関係について発問し,

比例関係を予想させて,実験の目

的を確認することとした。また,

働き掛けⅡでは,予想の検証とい

う意識をもたせるために,ばねに

定量おもりをつり下げる方法と定

規でばねののびを測る方法につい

て問い掛け考えさせることとした。

(2) ワークシート案の作成

図 10 に,実践1のワークシート

案を示す。ワークシート案の構成

は,実験の目的,結果の予想,実図 10 実践1のワークシート案

図9.3 実践1における実験の課題提示案(働き掛けⅡの部分)

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生徒が観察,実験に目的意識をもって取り組む理科授業

- 理科教育 13 -

験方法,実験結果,結果から分かったこと,まとめを順に並べるものとした。働き掛けⅡでは,ば

ねにおもりをつり下げた図をあらかじめ載せておき,実験方法を考える助けとなるようにした。

6.3.1.2 実践1の授業記録

学習活動

(所要時間) 内 容 生徒の様子

事象提示

(1分 28 秒)

スタンドにつり下げたばねを手で下に引い

た後,引く力を大きくしてばねをもう一度引

き,ばねののびが変わる様子を見せた。

ばねを下に引くとのびる様子を,うなず

きながら観察していた。

働き掛けⅠ

(1分 49 秒)

ばねを引く力を2倍,3倍にするとばねのの

びはどうなるか生徒に問い掛け,結果を予想

させながら,定量的な要素に気付かせた。

ばねに加える力を2倍,3倍にすると,

ばねののびは2倍,3倍になるという発

言があり,比例関係を予想していた。

働き掛けⅡ

(29 分 33 秒)

ばねを引く力を2倍,3倍にするには,手で

ばねを引くことが適切ではないことを示し,

どうすればよいか問い掛けた。

定量おもりを使うとよいことに気付い

た生徒と,定量おもりを見て納得する生

徒がいた。

ばねののびを測るためには,ばねに定規をど

のように当てるとよいか,ワークシートにか

き込ませた後,班ごとに考えさせ,最後に全

体で方法を確認した。

ワークシートの図を基にして,定規をど

こに当てるのかについて,それぞれの班

で話し合い,適切な方法を考え付くこと

ができた。

実 験

(17 分 10 秒)

班ごとにばねののびを測定するように指示

した。

測定結果を表にまとめながら,より正確

に測るために装置を見直す班もあった。

6.3.1.3 実践1の分析

(1) 生徒の発言と生徒間の話合いの発話から

図 13~15 に,働き掛けⅠの教員の発問に対する生徒の発言,働き掛けⅡと実験中の生徒間の話合

いの発話をそれぞれ示す。

働き掛けⅠでは,ばねに加える力とばねののびの関係を定量的に捉えさせるための発問に対して,

「ばねに加える力を2倍,3倍にすると,

ばねののびも2倍,3倍になる」という発

言を得ることができた。

働き掛けⅡでは,生徒S1の発言に対し

てS2が応対したり,S4がワークシート

を見せてS1へ説明したりする発話が得ら

れ,ばねののびの測定方法を自分たちで考

えようとしていた。

図 11 働き掛けⅡの場面で,手では正確に力を

2倍3倍にできないことを確認する生徒

図 12 実験中,様々な角度から正確にばね

ちののびを測定しようとする生徒

発問と発言

働き掛け

T :ばねを引く力を2倍にしたとき,ばねののびは

どうなるでしょうか。

S :2倍になる。

T :3倍にしたらどうでしょう。

S :3倍。

図 13 働き掛けⅠの教員の発問と生徒の発言

(以下,Tは教師,Sは生徒を示す)

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生徒が観察,実験に目的意識をもって取り組む理科授業

- 理科教育 14 -

実験中は,おもりをつるす前に次の結果を予測したり,おもりの数を2倍にするとばねののびが

2倍だと確認したりする発話や,誤差に配慮しながら測定している発話が得られた。

(2) ワークシートの記述から

図 16 にワークシートの記述内容を示す。

ワークシートに自分の予想を記述した生徒はいなかった。これは,ワークシートが実験の目的,

予想の順に構成されていたことによると考えられる。一方,実験方法については,何もつり下げな

いばねと,おもりをつり下げたばねを比較し,ばねののびを測定するには,ばねのどの部分を0cm

として測定すればよいか多くの生徒が記述していた。実験結果については,ばねののびの変化の量

を記述したり,おもり1個をつり下げたときのばねののびの倍数であることを示したりと,比例の

関係を見いだそうとしていたが,時間の関係上,実験結果から分かったこと(考察)までは記述す

ることができていなかった。

(3) 事後調査から

図 17 に,事後に「実験の目的の理解」「実験方法の計画」「結論の導出」において,ふだん受けて

いる理科授業と比較して「できた」と

感じたかを調査した結果を示す。「実験

目的の理解」や「結論の導出」につい

ては,ふだんよりできたと感じた生徒

は半数以下であった。一方,方法を見

いださせた「実験方法の計画」につい

ては,ふだんの理科授業よりできた,

と感じた生徒は 15 人となった。

図 16 ワークシートの「予想」「実験方法」「実験結果」の記述

予想 実験方法

18 人全員が記述していなかった。

実験結果

図 17 事後調査の結果(n=18)

7人

15人

8人

0% 20% 40% 60% 80% 100%

実験の目的の理解

実験方法の計画

結論の導出

ふだんの理科授業よりできた

〔%〕

発 話

働き掛けⅡ

S1:のびってどこのこと?

S2:ここからここまでだよ。

S3:ここも入るのではないの?

S2:だめだよ。面倒くさい。

S4:(方法を書いたワークシートを見せる。)

S2:ここからだよ。ここからここまで測ればいい

よ。

S5:ここのばねのところね。

S2:やっぱりこっちの方が楽だよ。

S1:定規はこっちではないの?

S2:それだと面倒なの。定規をここにこうやって

当てる。

図 14 働き掛けⅡの生徒間の話合いの発話(3班)

発 話

実験中

S1:次何 cm?

S2:たぶん 9.4cm。

S3:(おもりを)つるすよ。

S4:9.4cm だ。計算どおり。

S2:2倍だね。

S2:次5つ目。24。あれ。

S4:23 だよ。

S2:ええと。何か変わったな。

何か全然分からないね。

S1:結果にどう書く。

S2:約2倍,3倍,4倍になる。

S1:約って?

S4:いろいろあるんだよ。たぶん。

図 15 実験中の生徒間の話合いの発話(3班)

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生徒が観察,実験に目的意識をもって取り組む理科授業

- 理科教育 15 -

6.3.1.4 実践1のまとめ

働き掛けⅠにおいて,授業中の生徒の発言から,多くの生徒が比例の関係を予想したものと判断し

たが,ワークシートには記述がなく,事後調査では,実験の目的を理解して取り組んだと回答した生

徒の割合は高くなかった。このことから,生徒の発言を引き出すことができても,「何のために実験を

行うか」の意識をもつことができたのは生徒の一部で,生徒の全員に対する意識付けの活動が不足し

ていたことが分かった。また,働き掛けⅡでは,ワークシートの活用と話合いを通して,多くの生徒

に目的意識をもたせることはできたが,班ごとに考えた方法を教員がそれぞれ確認したため,30 分近

い時間が掛かってしまった。実験中は,班ごとに積極的に測定したり,主体的に結果を調べたりして

おり,事象提示,働き掛けⅠ,Ⅱを行ったことの有効性はある程度示されたが,実験中に生徒の全員

が「何のために実験を行うか」の意識をもつための指示の改善が,実践2への課題として残った。

6.3.2 実践2「電圧を変化させたときの電流の大きさ」について

実施日 平成 25 年 11 月8日(金)

実施学級 加美町立中新田中学校 第2学年4組 30 人

班構成 1~8班の計8班(1班当たり3または4人)

6.3.2.1 実験の課題提示案,ワークシート案の作成

(1) 実験の課題提示案の作成

実践2は「電気の世界」の中単元「電流の性質」の7時間目に当たり,前時までに並列回路と直

列回路に流れる電流や電圧の大きさについて学習している。実験を通して測定機器の操作を習熟し

たり,数的処理によって結果を分析したりすることが求められる。

学習内容は,小4の「電流の働き」と接続しており,生徒は直列につなぐ乾電池の数を増やすと

モーターの回転が速くなることを経験しているが,電熱線に関する知識や電流計の操作については

定着度に差があることが予想される。そのため,事象提示では,電熱線が,小6の「電気の利用」

を学習した際に実験で扱った,発泡スチロールカッターの刃と同じ素材を使用していることを示す

とともに,前時までの復習として電流計と電圧計のつなぎ方を確認することにした。

実践1の課題から,生徒の思考の流れに沿ったワークシートを作成するとともに,働き掛けⅠで

は,回路に流れる電流と加わる電圧は比例関係ではないか,という考えをもたせるための発問をし

た後で,ワークシートに予想を記入するよう指示し,思考を整理させることとした。また,働き掛

けⅡでは電圧を一定の幅で変化させることに気付かせるよう問い掛けを絞り,実験において何を調

べるのか生徒に意識させるようにした。これらの働き掛けが,実験後の主体的な分析,解釈や結論

の導出につながるかを検証することとした。

(2) ワークシート案の作成

図 18 に,実践2のワークシー

ト案を示す。生徒の思考の流れに

沿ったワークシートになるように,

事象提示と働き掛けⅠ,Ⅱの指示

に合わせてそれぞれ簡潔に記述で

きる構成とした。また,実験の目

的についての記述欄を,ワークシ

ートの冒頭ではなく,働き掛けⅠ

を受けて予想を記入する欄の次に

設けた。実験結果を記入する欄に

ついては,項目を書かずに罫線だ

けを引いた表を示し,働き掛けⅡ

において実験方法を考えた後で何

を記録するか確認することとした。 図 18 実践2のワークシート案

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生徒が観察,実験に目的意識をもって取り組む理科授業

- 理科教育 16 -

6.3.2.2 実践2の授業記録

学習活動

(所要時間) 内 容 生徒の様子

事象提示

(10 分 30 秒)

電流計と電圧計のつなぎ方を全体で復習

した後,班ごとに電熱線をつないだ回路

をつくらせ,乾電池を1個から2個に増

やしたときの電流計と電圧計の指針の動

きに注目させた。

回路図を見ながら相談して回路をつくっ

て,乾電池を増やしたときの指針の振れか

ら,電流と電圧がともに大きくなることに

気付いた。

働き掛けⅠ

(7分 00 秒)

電圧を3倍,4倍にすると電流の大きさ

はどうなるか生徒に発問し,予想させた

後,ワークシートに記入するよう指示し

た。その後,実験の目的を確認した。

ワークシートに予想を記入し,教員の発問

に対して指名された生徒の発言と同じかど

うか確認していた。

働き掛けⅡ

(7分 50 秒)

電圧を大きくするには乾電池の数を増や

すこと,一定の割合で電圧を大きくする

には電源装置を用いるとよいことに気付

くように順に問い掛けた。

電池の数を1個ずつ増やすとよいことに全

員がうなずいていた。電源装置を用いるこ

とに気付いた後は,電圧を1Vずつ上げる

方法をとることを全体で確認した。

ワークシートの罫線の枠に,どのように

測定結果をまとめたらよいか問い掛け

た。

表から変化の割合を見ることや,測定値を

基にグラフに表すという発言があった。

実 験

(24 分 40 秒)

班ごとに測定するように指示した。 既につくっていた回路を再度つくり直して

実験したり,電源を入れたまま結果を記録

したりしている班があった。

6.3.2.3 実践2の分析

(1) 生徒の発言と生徒間の話合いの発話から

図 21~23 に,働き掛けⅠ,Ⅱの教員の発問

や問い掛けに対する生徒の発言,実験中の生

徒間の話合いの発話をそれぞれ示す。

事象提示で電圧の変化に伴い電流も変化し

ていることをあらかじめ見ていたため,働き

掛けⅠではほとんどの生徒から「比例するだ

ろう。」という発言を得ることができた。

図 19 事象提示の場面で,班ごとに回路のつなぎ方を確認し合う生徒

図 20 実験の実施の場面で,予想と異なる 結果となり測定し直す生徒

発問と発言

働き掛けⅠ

T :電圧を3倍,4倍にすると,電流の大きさ

はどうなると思いますか。

S :比例している。

S :だいたい比例。

T :皆さんの予想を聞きます。

S :電圧が大きくなると回路に流れる電流も大

きくなります。

T :同じ予想の人は手を挙げてください。

(ほとんどの生徒が手を挙げる。)

図 21 働き掛けⅠの教員の発問と生徒の発言

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- 理科教育 17 -

働き掛けⅡでは,電池の数を1個ずつ増やしていけばよいこと,電源装置を使用することの利便

性や電圧を1Vずつ大きくすればよいという発言を得ることができた。

実験中は,1Vから2Vに電圧を大きくしたときの電流の値が2倍になっていないことから,測

定をやり直そうとしたり,誤差ではないかという発話が出たりした。また,電流の値の変化の割合

がほぼ一定になることに気付いたり,隣の班の結果と比較して確認したりする発話が得られた。

(2) ワークシートの記述から

図 24 にワークシートの記述内容を示す。

予想の記述から,生徒の全てが働き掛けⅠでもたせたいと考えた意識をもち,目的を理解して実

験に取り組んでいたことがうかがわれる。実験結果の記述では,表から比例の関係を見いだすために,

電流の大きさの変化に注目して分析していた。中には,グラフをかいて分析している生徒もいた。実

験結果から分かったことの記述では,予想につながる比例の関係であることを見いだした生徒は多

くなかった。これは,計器の目盛りを斜めから読んでいたり電熱線の発熱により抵抗値が大きくな

ったりしたために,生徒が測定した値と理論値との差が大きくなったためと考えられる。

予想 ・電圧が3倍,4倍になると 実験結果

電流も3倍,4倍になる・・・23 人

・比例している ・・・ 7人

実験結果から分かったこと

・電圧と電流はほぼ比例の関係になっている ・・・・・・・・・・・・・ 14 人

・全てではないがほぼ一定の割合で電流が大きくなっている ・・・・・・・ 12 人

・予想とは異なり比例の関係になっていない ・・・・・・・・・・ 2人

・比例かどうかは分からないが,長い電熱線になると電流の流れ方が小さくなる 2人

《ワークシートの記述》

図 24 ワークシートの「予想」「実験結果」「実験結果から分かったこと」の記述(30 人中)

問い掛けと発言

働き掛けⅡ

T :比例になると予想しましたが,で

は何をどのように変化させて調

べていきますか。

S :電池の数を1個ずつ直列に増や

す。

T :電池を5個,10個と増やすと

大変です。

S :電源装置だ。

T :電池の代わりに電源装置を使い

電圧を大きくしていきましょう。

どのように大きくしていきます

か。

S :1Vずつ大きくします。

図 22 働き掛けⅡの教員の問い掛けと生徒の

発言

発 話

実験中

S1:61mAです。(測定を続ける)

S1:これ微妙だな。

S2:もう一回見る。(測定を続ける)

S1:もう一回2Vに戻して。

S3:誤差がある?(測定を続ける)

S4:不規則になっている・・・。

S2:誤差あり過ぎじゃないか?(測定を続ける)

S2:実験結果から分かったこと・・・。

比例していないってこと?(しばらく無言)

S2:比例っていうか,同じくらいずつ増えるのでは?

S1:言われればそうだな。

S5:(隣の班から)誤差があった?

S6:うん。

S1:これは誤差なのかな?かなり違うのでは?

S2:もう一回したい。

図 23 実験中の生徒間の話合いの発話(2班)

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- 理科教育 18 -

(3) 事後調査から

図 25 に「実験の目的の理解」「実験方法の計画」「結論の導出」の3項目で調査した結果を示す。

「実験の目的の理解」については,生徒

の全員が何を調べる実験か理解していた。

また,「実験方法の計画」については「よ

くできた」が 14 人,「尐しできた」が

15 人,「結論の導出」については「よく

できた」が 23 人,「尐しできた」が6人

で,生徒のほとんどが実験の方法を考え,

結論を導き出したという意識をもってい

たが,「あまりできなかった」がそれぞ

れ1人であった。実験では測定誤差によ

り結果が予想と大きくずれたこともあり,様々な迷いを生じさせたものと考えた。

6.3.2.4 実践2のまとめ

働き掛けⅠでは,発問の後で生徒の全員がワークシートに予想を記述し,実験の目的も理解できて

いた。これは,事象提示において,小学校との接続を意図して測定機器のつなぎ方や電熱線について

説明したり,事象提示の内容をワークシートに簡潔に記述させたりしたことで,授業展開が円滑にな

ったことによるものと思われる。また,前時までの復習として,実験の回路をつくらせたことで,生

徒の定着度の差に影響されずに実験を行うことができた。働き掛けⅡを,電圧を変化させる幅に関す

る問い掛けに絞ったことは,生徒が自分たちの予想を検証しようとする実験中の態度につながり,事

後の意識調査も良好であった。本単元の予想や仮説を立てる学習活動は,実態調査では多くの教員か

ら難しいと挙げられていたが,ワークシートに記述する活動を,事象提示,働き掛けⅠ,Ⅱのそれぞ

れに設定したことで,生徒は目的意識をもって実験に取り組むことができていた。

課題としては,正確に実験操作を行わせるための指示の在り方が挙げられる。本実践では,教員の

指示不足から,班によっては操作や測定が不正確になったために比例関係を見いだす結果を得ること

ができず,結果の分析・解釈や結論の導出に迷いを生じさせた。

6.3.3 実践3「凸レンズによってできる像」について

実施日 平成 25 年 12 月 17 日(火)

実施学級 角田市立金津中学校 第1学年2組 19 人

班構成 1~4班の計4班(1班4人または5人)

6.3.3.1 実験の課題提示案,ワークシート案の作成

(1) 実験の課題提示案の作成

実践3は「身のまわりの現象」の中単元「光の世界」の5時間目に当たり,実験を通して凸レン

ズによってできる像のでき方の規則性を見いだし,凸レンズで屈折した光の進み方を説明できるよ

うになることが求められる。また,本単元では事象提示前の学習活動として「焦点」「焦点距離」等

の用語や凸レンズを太陽光が通ったときの光の進み方についての学習があり,学習したばかりの知

識を活用しながら実験に取り組むことが求められる。

学習内容は,小3の「光の性質」と接続しており,生徒は焦点に光を集めた経験がある。この現

象と比較して考えさせるため,光学台に置いた物体からの光は,凸レンズによって焦点には集まら

ず,別の位置に実像を結ぶことを初めに提示することにした。また,実践2の課題から,光学台を

正確に操作できたかを確認するため,事象提示において凸レンズから物体までの距離を班ごとに測

らせるとともに,働き掛けⅠでは,発問により実像の大きさと物体の位置が関係することを,働き

掛けⅡでは物体を 10 ㎝ずつ近づけながら測定することを示し,光学台上の物体の位置を生徒に意識

させるようにした。

24人

14人

23人

6人

15人

6人

0% 20% 40% 60% 80% 100%

実験の目的の理解

実験方法の計画

結論の導出

良くできた 尐しできた あまりできなかった 全くできなかった

図 25 事後調査の結果(n=30)

よくできた

0 人

1 人

0 人

1 人

0 人

0 人

〔%〕

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- 理科教育 19 -

また,実践3は,課題提示案を改善するための意見を得るため,金津中学校の教員を授業者とし

て行い,授業後の検討会で聞き取

りをすることとした。

(2) ワークシート案の作成

事象提示前の学習活動ではノー

トを用いることとし,事象提示か

らはワークシートを用いることと

した。

図 26 に実践3のワークシート

案を示す。事象提示で確認させた

い内容を記入できるように質問を

設けるとともに,働き掛けⅠで予

想したり,働き掛けⅡで実験方法

を考えたりできるような構成とし

た。

6.3.3.2 実践3の授業記録

学習活動

(所要時間) 内 容 生徒の様子

事象提示前の

学習活動

(14 分 42 秒)

「凸レンズ」「焦点」「焦点距離」の用語を説

明し,凸レンズを通った後の光が,焦点に集

まる場合と集まらない場合の光の進み方を押

さえた。

用語の説明を聞き,凸レンズの焦点の位

置を指し示すことができた。

事象提示

(15 分 56 秒)

班ごとに光学台を操作するように指示した。

光学台上に物体を置くと焦点に光が集まら

ず,スクリーンを遠ざけるとある距離で像が

映ることを見せた。また,この像を「実像」

と呼ぶことを説明した。

光学台の目盛りに注意しながら協力し

て物体やスクリーンを動かし,映った実

像について,気付いたことをそれぞれが

ワークシートに記入していた。

班ごとに物体やスクリーンの位置を変えさ

せ,様々な位置に実像ができることを見せた。

物体の位置を変えると実像の位置も変

わり,実像の大きさや向きが変わること

に気付いていた。

働き掛けⅠ

(8分 42 秒)

他の班の実像を見せ,実像の大きさがそれぞ

れ違ったことには何が関係しているか発問

し,発言を基に予想したことや理由をそれぞ

れワークシートに記入させた。

班ごとに実像の大きさが違うのは,物体

とレンズの距離が関係しているという

発言から,全員が予想を記入できてい

た。

働き掛けⅡ

(4分 18 秒)

班ごとに振り返り,実像のでき方を調べるに

は物体をどのように動かすとよいか問い掛

け,発言を基に代表に発言させた。

物体を近づけるとよいという発言を参

考に,適切な方法を選ぶことができた。

物体を 10 ㎝ずつ近づけることを指示し,記録

する項目を確認させた。

既に実像の大きさや位置が変わること

を見いだしており,記録する項目を確認

していた。

実 験

(6分 22 秒)

班ごとに測定するように指示した。 手際よく操作できていた。実像は遠くに

できるほど大きくなるという見通しを

もっていた。

図 26 実践3のワークシート案

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- 理科教育 20 -

図 27 事象提示の操作の場面で,実際に 図 28 働き掛けⅡの場面で,実験方法を

実像を映している様子 生徒に確認させている様子

6.3.3.3 実践3の分析

(1) 生徒の発言と生徒間の話合いの発話から

図 29~31 に,働き掛けⅠ,Ⅱの教員の発問や問い掛けに対する生徒の発言,実験中の生徒間の話

合いの発話をそれぞれ示す。

事象提示では,物体の位置を決めてからスクリーンを移動させて実像を映す操作を行ったことで,

働き掛けⅠにおいて,実像のでき方が凸レンズに対する物体の位置と関係していることに着目した

発言が多かった。

働き掛けⅡでは,事象提示の際に気付いたことを班ごとに振り返る話合いを行ったが,それを基

に,生徒の全員が実験結果として何を記録すればよいかを捉えることができた。そこで挙げられた

内容を生かして,適切な実験の方法を全員で確認することができた。

実験中は,結果への見通しから予想しながら実験を進める様子が見られた。また,生徒によって

は,物体と凸レンズの中心までの距離は像の大きさと比例の関係にあるのではないかといったよう

に,独自の予想を立て,検証を行っている発話も得られた。物体を焦点距離の位置に置いたときに

は,スクリーンをどの位置に動かしても実像ができないことから,他の班の結果を確認し合う発話

も得られた。

話合いの発話

実験中

(3班)

S1:距離 30 ㎝のときはどうかな。

S2:(物体を移動させる)いいよ。

S3:スクリーンは 15.5 ㎝。離れた。

S2:大きさはやっぱりさっきより大

きい。

S4:比例ではないみたいだ。

S3:同じ距離でもない。

(4班)

S5:20 ㎝にしたよ。

S6:大きさは普通。

S7:普通って何。

S6:(物体と)同じくらいの大きさ。

S7:同じって書こうよ。

S5:焦点までいくよ。

S8:色は見える。映らないな。

図 31 実験中の生徒間の話合いの発話

(3班及び4班)

発問と発言

働き掛けⅠ

T :いろいろな位置にいろいろな大きさの実像ができ

ていましたが,実像のでき方は何と関係してい

ると思いますか。

S :物体の場所。

S :物体と凸レンズまでの長さ。

図 29 働き掛けⅠの教員の発問と生徒の発言

問い掛けと発言

働き掛けⅡ

T :実像のでき方を調べるためには,物体をどのよう

に動かせばよいですか。

S :物体をまず凸レンズから遠くに離してだんだん

近づければよいと思います。

T :さっきは物体とスクリーンをいろいろ動かして

いる班もありました。

どちらの方法で実験するとよりよいですか。

S :だんだん近づける方法がいいです。

図 30 働き掛けⅡの教員の問い掛けと生徒の発言

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生徒が観察,実験に目的意識をもって取り組む理科授業

- 理科教育 21 -

予想 ・物体の位置(場所)によって実像のでき方が決まる ・・・・・・・・・11 人

・物体と凸レンズの距離によって決まる ・・・・・・・・・・ 7人

・焦点からどのくらい離れているかによって決まる ・・・・・・・・・・ 1人

実験結果

実験結果から分かったこと

主な記述内容

ア 物体を凸レンズに近づけるほど,実像は大きく,できる位置は遠くなる。

イ 向きは上下左右反転したままである。

ウ 焦点距離より近い位置では実像ができない。

・ア,イ,ウの要素を含んだ記述をした生徒 ・・・・・・・・・・・・ 8人

・ア,イの要素を含んだ記述をした生徒 ・・・・・・・・・・・・ 6人

・アの要素を含んだ記述をした生徒 ・・・・・・・・・・・・ 4人

・焦点より遠いならば必ずどこかで実像はできる ・・・・・・・・・・・・ 1人

《ワークシートの記述》

(2) ワークシートの記述から

図 32 に,ワークシートの記述内容を示す。

予想の記述では,生徒の全員が実像のでき方を物体の位置と関係付けて捉えていた。中には,図

33 のように,光の進み方をかいた生徒もおり,事象提示前の学習

活動を活用しながら考えていた。実験結果の記述では,実像の大

きさについて自分の言葉で表現するなど,規則性を示そうとした

ものが多かった。また,焦点距離の2倍の位置に当たる 20cm の位

置に物体を置いたときの実像の大きさを「物体と同じ」「中」など

と記述しており,次時の学習に生かせる内容が多かった。結果か

ら分かったことの記述では,ほとんどの生徒が物体と凸レンズの

距離と実像ができる位置,大きさの関係を正しく記述していた。

(3) 事後調査から

結果を図 34 に示す。「実験の目的の理解」

については,1人が「あまりできなかった」

と答えていたが,「実験方法の計画」「結論

の導出」については,全員が「よくできた」

「尐しできた」と答えていた。特に,「結論

の導出」については「よくできた」が 14

人であり,生徒が実験に目的意識をもって

取り組むうちに,像のでき方を見いだすこ

とができるようになったものと思われた。

図 32 ワークシートの「予想」「実験結果」「実験結果から分かったこと」の記述(19 人中)

9人

10人

14人

8人

8人

4人

0% 20% 40% 60% 80% 100%

実験の目的の理解

実験方法の計画

結論の導出

よくできた 尐しできた あまりできなかった 全くできなかった

図 34 事後調査の結果(n=18)

0 人

0 人

0 人

0 人

0 人

1 人

〔%〕

図 33 生徒が光の進み方をかいた図

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生徒が観察,実験に目的意識をもって取り組む理科授業

- 理科教育 22 -

(4) 授業後の検討会から

実践3は,角田市立金津中学校の協力を得て,専門研究員以外の教員に事象提示と働き掛けⅠ,

Ⅱを活用して授業を行ってもらった。授業後に,指導者及び参観者による検討会を行い,授業を通

して感じたことや,ふだんの生徒の反応との違いについて聞き取りを行った。その際に出た主な意

見についてまとめたものを,次の図 35 に示す。

《肯定的な意見》

・ふだんは,観察,実験の目的を提示するところから始め,方法や注意点を説明してから,観察,実

験を行う流れでの授業を行っている。このように,事象を提示し,目的を見いださせる授業展開は

新鮮であり,生徒の反応もよかった。

・結果を出す観察,実験のみでなく,目的を見いだすための事象提示において,生徒自身の操作で行

うことは思考が段階的に深まる印象があり,とても有効だと感じた。

《改善に向けた意見》

・事象提示で行う実験と本番の実験をつなぐ働き掛けⅠの発問を,どのように行うかが難しかった。

より具体的に示されるとよいと感じる。

・実際に太陽の光を集める実験を短時間でも取り入れるなど,小学校の学習を再体験させることで自

信をもって発言する生徒が増えるのではないか。

・実験する要素が多かったり,初めて出会う現象を扱ったりする場合には,自由に生徒に操作させる

ことも有効ではないか。

図 35 授業後の検討会における実践者及び参観者から出た主な意見

6.3.3.4 実践3のまとめ

事象提示において,レンズやスクリーンの位置が変わると実像の大きさも変わっていくことを示し

たため,働き掛けⅠの発問に対して生徒の発言が活発になり,働き掛けⅡの問い掛けに対しては班ご

とに意見をまとめ発表することができた。また,ワークシートの記述からは,生徒の全員が目的意識

をもっていたことが分かり,事象提示,働き掛けⅠ,Ⅱを行う上で有効な学習形態の在り方について

も探ることができた。

この実験は記録する要素が多く,多くの教員から指導が難しいと挙げられたものである。また,事

象提示前の学習活動があり,それぞれの活動を行う時間的な制約もあった。しかし,実践3では,事

象提示において光学台の操作と距離の測定の指示ができ,生徒が実験において適切に操作を行ったた

め,1単位時間で計画どおりに学習活動を終えることができた。一方,授業後の検討会においては,

生徒が自信をもって学習に参加するために,場と時間を設定することが望まれるという意見も挙げら

れた。指導が難しいと予想される実験を含む中単元では,あらかじめ全体を見通した上で,小学校の

学習の再体験をさせたり,事象提示前の学習活動を実験の前時に行ったりできるように指導計画を立

てることが適切と思われる。

6.4 実践研究の考察

授業実践の結果を,事象提示における既習事項,基本操作,学習形態,問題解決の能力を活用させ

る発問や問い掛けの有効性,ワークシートの効果の3観点で考察した。

事象提示では,実践1~3のいずれにおいても,実験で使う器具をそのまま用いた。生徒は器具の

操作を経験したことで実験を円滑に行うことができた。実践2で既習事項と関連させて電熱線などを

示したことも実験の取り組みやすさにつながっていた。また,実践2と3では,電流計や電圧計のつ

なぎ方,光学台の操作においては学習のつまずきが予想されたが,学習形態を班などの小集団とした

ことで,生徒の全員が1単位時間のうちに結論を導き出すことができた。

働き掛けⅠ,Ⅱでは,問題解決の能力を活用させる発問や問い掛けを行ったが,実践1~3を通し

て,事前に予想していた通りの発言や発話を生徒から引き出すことができた。また,実践2と3では,

その発言や発話を参考に,生徒の全員に予想させることができ,実験の目的意識をもたせることに効

果的であった。

ワークシートについては,事象提示,働き掛けⅠ,Ⅱのそれぞれに対応した欄をつくり,書く活動

を設定した。このことで,生徒は思考を整理しながら予想を明確にし,実験に取り組むことができる

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生徒が観察,実験に目的意識をもって取り組む理科授業

- 理科教育 23 -

ようになった。また,実験で記録する項目を考えさせたことで,実験中にも生徒どうしが話し合い,

教員の指示がなくても結果を検証したり,測定誤差を考えたりしていた。

授業実践を通して,生徒が観察,実験に目的意識をもって取り組むための,事象提示,働き掛けⅠ,

Ⅱの在り方を示すことができたと考える。

7 理科授業づくりの提案と「観察実験課題提示・ワークシート集」の作成

7.1 生徒が観察,実験に目的意識をもって取り組む理科授業づくりの提案

本研究では,教科書記載の観察,実験について,生徒にもたせる目的意識と小学校との接続の内容

を押さえ,予想される学習のつまずきとそれに対する支援についてまとめた。また調査研究において

は,県内の中学校理科教員が小学校での学習活動の確認方法,観察,実験において重視する学習活動,

指導に難しさを感じている単元と学習活動について,それぞれ知ることができた。これらを受けた実

践研究では,事象提示と働き掛けⅠ,Ⅱの3つの活動で,生徒が観察,実験の目的意識をもつことが

できたかどうか,授業の発話,ワークシートの記述,事後調査を基に分析した。研究を通して,観察,

実験前の学習活動において生徒に目的意識をもたせることで,生徒が観察,実験とその後の学習活動

を主体的に行うようになることも明らかになってきた。

本研究で見いだした理科授業づくりの流れを図 36 に示す。

初めに,単元の指導計画に基づいて,観察,実験に配当する授業時数と事象提示前の学習活動が必

要かどうか確認する。さらに,観察,実験のねらい,使用する器具と操作及び観察,実験を通して見

いださせることを,学習指導要領及び同解説理科編を基に確認する。

次に,観察,実験の目的意識を押さえ,事象提示,働き掛けⅠ,Ⅱで行う学習活動を設定する。す

なわち,「何のために観察,実験を行うか」に気付かせる事象提示と働き掛けⅠを,「どのような観察,

実験で予想や仮説を検証できるか」について見通しがもてるような働き掛けⅡをそれぞれ具体化する。

事象提示においては,実施する観察,実験が何に関するものかをつかむことができるよう,関連を

図ることができる既習事項や生活経験を確認し,提示する実物や資料を選ぶ。また,提示内容や使用

器具に応じて,一斉の活動の中で教員が演示を行うのか,あるいは班やペア,個別の活動を設定する

のかといった,学習形態を決定する。働き掛けⅠにおいては,生徒が予想や仮説を立てる際にどの問

① 観察,実験の明確化

観察,実験のねらい,使用する器具や操作,観察,実験を通して見いださせること

② 目的意識の押さえ,事象提示と働き掛けの設定

「何のために観察,実験を行うか」

・事象提示・・・・ 既習事項と関連した実物や資料

提示内容や使用器具に応じた学習形態

・働き掛けⅠ・・・ 問題解決の能力を活用して,予想や仮説を立てさせる発問

予想や仮説について書く活動

「どのような観察,実験で予想や仮説を検証できるか」

・働き掛けⅡ・・・ 問題解決の能力を活用して,適切な方法を見いださせる問い掛け

ワークシートの記入欄の構造化

③ 事象提示と働き掛けを行う際に配慮すること

板書の構造化,既習事項の習熟度の差への配慮,事象提示前の学習活動の設定

図 36 生徒が目的意識をもって観察,実験に取り組む理科授業づくりの流れ

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生徒が観察,実験に目的意識をもって取り組む理科授業

- 理科教育 24 -

題解決の能力を活用させるのが有効かを考えた上で発問を具体化する。また,生徒一人一人が自分の

予想や仮説を立てることができたかを確認できるように,ワークシートを使った書く活動を設定する。

働き掛けⅡにおいては,観察,実験の装置や操作,結果の記録方法のどの要素が,予想や仮説の検証

に直接結び付くかを確認し,生徒が観察,実験方法を見いだすことができるような問い掛けを具体化

する。また,生徒に観察,実験結果の何を記録させることで,結論を導き出すことができるかを確認

し,ワークシートを構造化する。

最後に,事象提示,働き掛けⅠ,Ⅱを行う際に配慮することについて確認する。学習活動,板書及

びワークシートの関連が生徒にとって明確になるように,構造化を図った板書計画を立てる。また,

それまでに学習した知識や原理,法則の活用が求められる観察,実験の場合には,生徒一人一人の習

熟度に差があることが想定されるため,既習事項の確認や,学び直しの時間を設定する必要がある。

観察,実験の直前に学習した事項を適用する観察,実験の場合には,1単位時間内に事象提示前の学

習活動を設定した後で観察,実験を実施する必要がある。このような学習活動の設定を,指導計画や

1単位時間での指導計画を基に必要に応じて行う。

以上のような流れの授業づくりを行うことで,生徒は観察,実験に目的意識をもって取り組み,結

果の分析・解釈を主体的に行うとともに,導き出した結論を自分のものにできると考えた。

7.2 観察実験課題提示・ワークシート集

上述の理科授業づくりの流れに即し,中1,中2の教科書の記載に基づいて,中単元ごとの指導計

画,観察,実験の目的意識一覧,観察,実験ごとの観察,実験の課題提示案及びワークシート案を作

成し,「観察実験課題提

示・ワークシート集」と

してまとめた。

図 37 に中単元ごとの

指導計画を中2の「電流

の性質」の一部を例にし

て示す。指導計画は,観

察,実験に配当する授業

時数とともに,各時の主

な学習内容を記載するこ

とで,中単元における一

連の学習の流れを示すと

ともに,その中での観察,

実験の位置付けが確認で

きるようにした。

図 38 に目的意識一覧

をエネルギー領域の一部

を例にして示す。目的意

識一覧は,「エネルギー」

「粒子」「生命」「地球」

の領域ごとに作成した。

生徒にもたせる観察,実

験の目的意識を示すとと

もに,そこから導かれる

観察,実験の目的を明示

した。

図 37 中単元「電流の性質」の指導計画(抜粋)

図 38 エネルギー領域の目的意識一覧(抜粋)

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生徒が観察,実験に目的意識をもって取り組む理科授業

- 理科教育 25 -

7.2.1 観察実験課題提示案

実践1の際に作成した実験の課題提示案は,観察,実験の目的意識とともに,既習事項,活用する

問題解決の能力,予想される学習のつまずきとそれに対する支援を理科授業づくりの要素として捉え,

作成した。しかし,それぞれ要素の位置付けが不明確であり,授業実践の際に事象提示と働き掛けⅠ,

Ⅱを生徒の目的意識に十分につなげることができなかった。そこで,理科授業づくりのそれぞれの要

素と事象提示,働き掛けⅠ,Ⅱとの関係が明確になるよう,観察,実験の課題提示案に改善を加え作

成した。

また,事象提示,働き掛けⅠ,Ⅱを行う際,ワークシートに書く活動との関連が図りやすいように,

観察,実験の課題提示案に明記した。図 39 に観察,実験の課題提示案の書式を示す。

イ 観察,実験のねらいを示すとともに,生徒にもたせる目的意識を明示した。

ロ 観察,実験の前に確認すべき小学校での既習事項や,観察,実験の際に適用が求められる直前の

学習事項について,それぞれ「既習事項の確認」「事象提示の前の学習活動」として記述した。教

員が押さえるべき既習事項は,「小学校の接続」の欄及び枠外の「観察,実験のポイント」に

必要に応じて記述した。

ハ 提示する事象を示した。留意点や準備物等は,枠外の「観察,実験のポイント」に記述した。

二 働き掛けⅠの内容を示した。活用させる問題解決の能力を示すとともに,教員の発問ともたせた

い生徒の意識を対話形式で具体的に示した。

ホ 働き掛けⅡの内容を示した。その際,生徒に見いださせる事項について対話形式で示し,教員か

らの指示事項や安全面への配慮については,枠外の「観察(実験)」に示した。

その他,観察,実験後の分析・解釈や導き出させたい結論,日常生活との関連などは,枠外の

「観察,実験の後で」に記述した。

図 39 観察,実験の課題提示案の書式

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生徒が観察,実験に目的意識をもって取り組む理科授業

- 理科教育 26 -

7.2.2 ワークシート案

実践1で作成したワークシート案では,初めに観察,実験のねらいを生徒が明確に捉えた上で,予

想や仮説を立てたり方法を考えたりする項目を設定したが,授業実践を通して,事象提示の際の記述

が,その後の思考を行う上で重要であることや,観察,実験のねらいが予想や仮説を立てる過程で見

いだされることが明らかになり,生徒の思考の流れに沿ってワークシートの項目を設定した。

ワークシートの構成は,左半分を目的の理解,予想や仮説及び観察,実験方法の計画などの観察,

実験前の学習活動について構造化した。また,右半分は,観察,実験結果の記録,分析・解釈及びま

とめの項目を配置した。図 40 にワークシート案の書式を示す。

A 「やってみよう」の欄には質問を並べ,生徒が事象提示の内容を確認しながら,働き掛けⅠ

で教員が行う発問に対する意識を高めることができるようにした。また,既習事項を活用するこ

とが求められる観察,実験では,この欄を「確認」とした。

B 発問を示し,生徒が何に対して予想や仮説を立てればよいか明確になるようにした。

C 予想や仮説から,全員で確認して板書した観察,実験の目的を記入する欄を設けた。

D 観察,実験の方法について,生徒が見いだした要点を空欄に記入するようにした。また,その

下には観察,実験結果を得るために重要となる指示事項や安全への配慮事項を記入する欄を設けた。

E 生徒が,何を記録することで予想や仮説を検証できるかを確認した上で,記録欄を作成できる

ように,項目を空欄にした。

F 観察,実験結果に基づいて,生徒一人一人が分析し解釈したことを記入する欄を設けた。

G 観察,実験を通して導き出した結論を全員で確認し板書にまとめたものを記入する欄を設けた。

ワークシート案と併せて,記入例も作成した。生徒にもたせたい意識や得させたい結果,導き出さ

せたい結論を,具体的な例を示すことでより授業者が利用しやすくなると考える。

図 40 ワークシート案の書式

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生徒が観察,実験に目的意識をもって取り組む理科授業

- 理科教育 27 -

7.3 研究成果物の発信

「観察実験課題提示・ワークシート集」は,図 41

に示すように,「宮城県総合教育センター」Web サイト

の「Miyagi Science Web」内に掲載した。中単元ごと

に指導計画とともに,観察,実験ごとの課題提示案及

びワークシート案を学年ごとに掲載し,必要な部分を

ダウンロードできるようにした。ワークシート案につ

いては,自校で活用しやすいように編集可能な形式で

掲載した。

本県の中学生が観察,実験に目的意識をもって取り

組む理科授業を実現するため,「観察実験課題提示・ワ

ークシート集」を活用し,実践していただきたいと考

える。

8.研究のまとめ

8.1 研究の成果

(1) 調査研究を通して,本県の中学校理科教員が観察,実験で重視している学習活動と,学習活動ご

とに感じている指導の難しさの実態を把握することができ,本研究の目指す「生徒が観察,実験に

目的意識をもって取り組む」ことの意義と,事象提示と働き掛けの在り方をつかむことができた。

(2) 実践研究を通して,事象提示と働き掛けⅠ,Ⅱの際に意図する小学校との接続やワークシートの

在り方を探ることができ,授業づくりを提案することができた。これを基に,「観察実験課題提示・

ワークシート集」を作成することができた。

(3) 授業実践における発言や発話の記録,ワークシートの記録,事後調査からは,事象提示と働き掛

けⅠ,Ⅱによって生徒に目的観察をもたせることが,実験やその後に結果を分析し解釈する学習活

動を,生徒主体で行わせることにつながることが示された。本研究で提案する授業づくりが,全国

学力学習状況調査の本県の結果に現れた,「観察,実験の結果を分析し解釈する学習活動」における

教員による実施状況と生徒の取組意識のかい離を防ぐものであると考える。

8.2 今後の課題

(1) 調査研究の結果では,地学領域の指導において「観察や実験の技能を身に付けさせること」に難

しさを感じる教員が多かった。観察における試料の作成,顕微鏡の操作等の技能を身に付けさせる

には,時間を十分に確保した上で繰り返し指導することが求められる。このような観察では,実際

の操作に入る前に,どのような目的意識をもたせることが適切であるか,今後の検討が必要である。

(2) 本研究の事象提示は,観察,実験の結果からどのような結論を導き出せそうかを意識して設定し

たものである。一方,単元の指導計画を立てる際には,学習への興味・関心を高めたり,理科を学

ぶことの意義や有用性を理解させるために,社会や日常生活と関連した事物・現象の提示を組み入

れることも多い。このような単元全体の学習に関わる事物・現象は本研究の事象提示と関連させる

ことが効果的であり,その在り方の追究が求められる。

(3) 本研究の事象提示と働き掛けⅠ,Ⅱは,既存の実験器具等を使い,小学校との接続を意図するこ

とで,生徒が観察,実験の目的意識をもつことができるものとした。一方,学習指導要領には,充

実させる学習活動の一つとして,「問題を見いだし,観察,実験を計画する学習活動」が挙げられて

いる。この活動は学習活動に応じて指導計画に組み入れるとされているが,授業で実施する際には,

生徒に様々な思考をさせたり,試行錯誤させたりすることが求められる。年間指導計画に「問題を

見いだし,観察,実験を計画する学習活動」を組み入れる際には,本研究とは異なる事象提示と働

き掛けにより,目的意識をもたせる過程を探る必要がある。

図 41 「Miyagi Science Web」への掲載イメージ

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生徒が観察,実験に目的意識をもって取り組む理科授業

- 理科教育 28 -

主な参考文献 「*」はWeb 上の資料

全般的な参考書

[1]文部科学省:「小学校学習指導要領」 東京書籍 2009

[2]文部科学省:「中学校学習指導要領」 東山書房 2008

[3]文部科学省:「小学校学習指導要領解説理科編」 大日本図書 2009

[4]文部科学省:「中学校学習指導要領解説理科編」 大日本図書 2009

[5]文部科学省:「高等学校学習指導要領解説理科編 理数編」 実教出版 2009

[6]小学校理科文部科学省検定済教科書「新しい理科3~6」 東京書籍 2010

[7]中学校理科文部科学省検定済教科書「新しい科学1~3」 東京書籍 2010

第1章

[8]国立教育政策研究所:「国際数学・理科教育動向調査の 2007 年及び 2011 年調査結果報告」11111 * 2008,2012

http://www.nier.go.jp/timss/2011/gaiyou2007.pdf http://www.nier.go.jp/timss/2011/T11_gaiyou.pdf

[9]国立教育政策研究所:「平成 24 年度全国学力・学習状況調査解説資料小学校理科,中学校理科」 * 2012

http://www.nier.go.jp/12chousa/12kaisetsu_shou_rika.pdf

http://www.nikkei.com/edit/news/special/gakute/2012/chugaku_kaisetsu_rika_1.pdf

[10]日本科学技術振興機構:「『平成 22 年度小学校理科学習実態調査』結果報告」 * 2011

http://www.jst.go.jp/cpse/risushien/elementary/cpse_report_015A.pdf

[11]日本科学技術振興機構:「『平成 24 年度中学校理科学習実態調査』結果報告(速報)」 * 2013

http://www.jst.go.jp/cpse/risushien/elementary/cpse_report_015A.pdf

第2章

[12]岡村定矩ら:「教科書作成趣意書『新しい科学』」 東京書籍 2010

[13]小学校理科文部科学省検定済教科書「たのしい理科3年,4年,5年上・下,6年上・下」 大日本図書 2010

[14]中学校理科文部科学省検定済教科書「理科の世界1年~3年」 大日本図書 2010

[15]中学校理科文部科学省検定済教科書「未来へひろがるサイエンス1~3」 啓林館 2010

[16]中学校理科文部科学省検定済教科書「自然の探究1年~3年」 教育出版 2010

[17]文部科学省:「小学校理科の観察,実験の手引き」 * 2012

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/senseiouen/1304651.htm

[18]国立教育政策研究所:「小学校・中学校理科用 基礎基本を確実に定着させる指導の工夫―定着度

の低い事例についてのフォローアップ資料―」 東京書籍 2012

[19]中央教育審議会:「学校段階間の連携・接続等に関する作業部会(第 11 回)配付資料」 * 2012

資料3-2:研究開発学校,教育過程特例校における小中連携,一貫教育の取組

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/045/siryo/__icsFiles/afieldfile/2012/02/15/1315644_3.pdf

資料3-3:教育課程特例校における小中連携,一貫教育の取組

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/045/siryo/__icsFiles/afieldfile/2012/02/15/1315644_4.pdf

[20]神奈川県立総合教育センター:「幼小,小中 校種間連携学習指導事例集 学びのギャップを埋めよう!」 * 2012

http://kjd.edu-ctr.pref.kanagawa.jp/gap/gap.pdf

[21]兵庫県教育委員会:「小・中学校連携に係る効果的な取組事例」 * 2012

http://www.hyogo-c.ed.jp/~gimu-bo/rennkei/24syoutyuurenkeirihuretto.pdf

第4章

[22]Nuthall, G.A., & Flanders, N. A. The classroom behavior of teachers: an overview.

International Review of Education, 18(4), 561-568. 1972

[23]西川 純:「中学生の教科学習への参加構造と学びの関係」 臨床教科

教育学会誌 2003