アジア研究教育拠点事業 最終年度 実施報告書(平...

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様式7 アジア研究教育拠点事業 最終年度 実施報告書(平成23~27年度) 1.拠点機関 日本側拠点機関: 神戸大学 (中国側)拠点機関: 青島大学 (韓国側)拠点機関: CHA 大学 (ベトナム)拠点機関: ハノイ医科大学 (フィリピン)拠点機関: セイントルークスメディカルセンター (タイ)拠点機関: チュラロンコーン大学 2.研究交流課題名 (和文):アジアのヘリコバクターピロリ感染及び胃がん予防研究教育拠点形成 (交流分野:医歯薬学) (英文): Construction of a collaborative research and education center for Helicobacter pylori infection and gastric cancer prevention in Asia (交流分野:Medical, Dental and Pharmaceutical Science研究交流課題に係るホームページ:http:// www.med.kobe-u.ac.jp/asiahp/index.html 3.採用期間 平成 23 4 1 日~平成 28 3 31 5 年度目) 4.実施体制 日本側実施組織 拠点機関:神戸大学 実施組織代表者(所属部局・職・氏名):学長・武田 コーディネーター(所属部局・職・氏名):医学研究科・教授・東 協力機関:東京大学、京都大学、長崎大学、福井大学 事務組織:国際部国際企画課 相手国側実施組織(拠点機関名・協力機関名は、和英併記願います。) (1)国名:中国 拠点機関:(英文)Qingdao University (和文)青島大学 コーディネーター(所属部局・職・氏名):(英文) School of MedicineProfessorTIAN Zi-Bin

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Page 1: アジア研究教育拠点事業 最終年度 実施報告書(平 …...6月12~14日に、神戸で胃がん診療のトレーニングセミナーを実施し、我が国 の先進的な胃がん診療を普及させ、構築してきた胃がん予防対策ネットワークの継続的運

様式7

アジア研究教育拠点事業 最終年度 実施報告書(平成23~27年度)

1.拠点機関

日 本 側 拠 点 機 関: 神戸大学

( 中 国 側 ) 拠 点 機 関: 青島大学

( 韓 国 側 ) 拠 点 機 関: CHA大学

( ベ ト ナ ム ) 拠 点 機 関: ハノイ医科大学

( フ ィ リ ピ ン ) 拠 点 機 関: セイントルークスメディカルセンター

( タ イ ) 拠 点 機 関: チュラロンコーン大学

2.研究交流課題名

(和文):アジアのヘリコバクターピロリ感染及び胃がん予防研究教育拠点形成

(交流分野:医歯薬学)

( 英 文 ): Construction of a collaborative research and education center for

Helicobacter pylori infection and gastric cancer prevention in Asia

(交流分野:Medical, Dental and Pharmaceutical Science)

研究交流課題に係るホームページ:http:// www.med.kobe-u.ac.jp/asiahp/index.html

3.採用期間

平成 23 年 4 月 1 日~平成 28 年 3 月 31 日

( 5 年度目)

4.実施体制

日本側実施組織

拠点機関:神戸大学

実施組織代表者(所属部局・職・氏名):学長・武田 廣

コーディネーター(所属部局・職・氏名):医学研究科・教授・東 健

協力機関:東京大学、京都大学、長崎大学、福井大学

事務組織:国際部国際企画課

相手国側実施組織(拠点機関名・協力機関名は、和英併記願います。)

(1)国名:中国

拠点機関:(英文)Qingdao University

(和文)青島大学

コーディネーター(所属部局・職・氏名):(英文)School of Medicine・Professor・TIAN

Zi-Bin

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協力機関:(英文)Xi’an Jiaotong University, Bei Hai Hospital, Shanghai Jiaotong

University, The North Hospital of Liaoning, Peking University

(和文)西安交通大学、北京北海病院、上海交通大学、遼寧省北方病院、北京大学

経費負担区分:パターン2

(2)国名:韓国

拠点機関:(英文)CHA University

(和文)CHA大学

コーディネーター(所属部局・職・氏名):(英文)Cancer Prevention Research Center

・Professor・HAHM Ki-Baik

協力機関:(英文)Yonsei University, Inha University Hospital, Konkuk University

(和文)ヨンセイ大学、インハ大学病院、コンクック大学

経費負担区分:パターン2

(3)国(地域)名:ベトナム

拠点機関:(英文)Hanoi Medical University

(和文)ハノイ医科大学

コーディネーター(所属部局・職・氏名):(英文)Pediatric Department・Associate

Professor・NGUYEN Van Bang

協力機関:(英文)Bach Mai Hospital, Military Central Hospital 108, Cho Ray Hospital

(和文)バックマイ病院、中央軍事病院 108、チョーライ病院

経費負担区分:パターン2

(4)国(地域)名:フィリピン

拠点機関:(英文)St. Luke’s Medical Center

(和文)セントルークスメディカルセンター

コーディネーター(所属部局・職・氏名):(英文)St. Luke’s College of Medicine・

Assistant Professor・BONDOC Edgardo

協力機関:(英文)Health Future Foundation

(和文)健康未来財団

経費負担区分:パターン2

(5)国(地域)名:タイ

拠点機関:(英文)Chulalongkorn University

(和文)チュラロンコーン大学

コーディネーター(所属部局・職・氏名):(英文)School of Medicine・Professor・

MAHACHAI Varocha

協力機関:(英文)Chiang Mai University, Khon Kaen University, National Cancer

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Institute

(和文)チェンマイ大学、コンケン大学、国立がん研究所

経費負担区分:パターン2

5.研究交流目標

5-1.平成27年度研究交流目標

<研究協力体制の構築>

本事業の国内及び海外研究機関はいずれも長年交流のある機関であり、これまでの 4 年

間の研究交流により、研究協力体制は十分構築されている。また、セミナーにおいて、ヘ

リコバクターピロリ感染と胃がん予防の、各国の現状について意見交換と研究交流が進め

られてきている。今年度は最終年度であり、これまでに引き続き、相互の研究者の育成交

流を行うとともに、今後の継続的な研究協力体制について議論の上、システムを構築する。

今年度は、6 月 12~14 日に、神戸で胃がん診療のトレーニングセミナーを実施し、我が国

の先進的な胃がん診療を普及させ、構築してきた胃がん予防対策ネットワークの継続的運

営について意見交換する。また、6月 25~26日には第 21回日本ヘリコバクター学会を研究

代表者東が主催して神戸で開催するため、本事業で形成されたネットワークを、学会の海

外交流事業と連携して継続性を強化する。11月 4~6日には、セントルークスメディカルセ

ンターにおいて、セミナーを開催して、今後の研究協力体制継続のための遠隔教育システ

ムを構築する。今年度は最終年度であり、本事業における海外拠点の1つであるフィリピ

ンのセントルークスメディカルセンターに海外中核拠点として、消化器がん診断・治療研

究教育センターを設置し、本事業のネットワーク構築の継続を図る。

<学術的観点>

胃がんはピロリ菌感染症と考えられているが、アジア諸国において、ピロリ菌感染率と

胃がん死亡率の乖離が認められる。この”Asian enigma”を明らかにするために、胃がん

の多い、日本、韓国、中国と少ないフィリピン、タイ、その中間のベトナムでこれまで採

取したピロリ菌の病原因子解析と、宿主因子の解析結果をまとめる。特に、ピロリ菌のゲ

ノム解析に加え、病原因子 CagA の遺伝子多型を解析と、宿主の免疫応答における胃粘膜内

のサイトカインの発現の解析結果についてまとめ、”Asian enigma”の原因となる病態に

ついて明らかにする。

<若手研究者育成>

引き続き海外研究機関から若手研究者を招へいし、日本の研究者の指導を受けると共に、

日本の若手研究者との意見交換により、双方の若手研究者のアジア共通の研究意識を向上

させる。また、日本の若手研究者を積極的に海外の研究機関に派遣し、日本の若手研究者

のアジアでのリーダーシップ意識を高める。また、フィリピンのセントルークスメディカ

ルセンターに設置する消化器がん診断・治療研究教育センターに若手研究者を長期滞在さ

せ、事業終了後の継続的な若手研究者育成体制を整備する。

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<その他(社会貢献や独自の目的等)>

ピロリ菌感染による胃発がんの問題は、胃がんの死亡率が世界的に高い韓国、日本、中

国を含むアジア共通の問題であり、本課題で構築した研究教育拠点における成果をホーム

ページから継続的に世界に発信する。特に、日本では、平成 25年 2月からヘリコバクター

ピロリ感染胃炎に対して除菌治療が保険適用になり、ほとんどの感染者が除菌対象となり、

胃がん予防が図られており、このようなシステムを海外へ発信することにより、胃発がん

抑制に貢献していく。

5-2.全期間を通じた研究交流目標

ヘリコバクターピロリ(ピロリ菌)は世界保健機構より 1 群の発がん因子に認定されてい

る。現在、胃がんにより年間約 60 万人が世界で死亡し、その約 6割がアジアで占めている。

しかし、ピロリ菌感染による胃がん発症のオッズ比は、約 2~23 と国や地域により大きく

異なる。日本、韓国、中国などの東アジアでは、ピロリ菌感染率が高く胃がん死亡率が極

めて高い。しかし、同じアジアの中でも、フィリピンやタイではピロリ菌感染率は高いが、

胃がん死亡率は極めて低い。このピロリ菌感染の病態の“Asian enigma”を明らかにする

ことが、ピロリ菌感染による胃発がんの病態解明につながると考えられる。本研究交流目

標は、ピロリ菌感染の病態の“Asian enigma”を明らかにし、胃がん予防対策を構築する

ための研究教育拠点を形成することであり、その目標達成のために、以下のことを実施す

る。

1)ピロリ菌感染による胃発がんの菌体病原因子を明らかにする。

2)ピロリ菌感染による胃発がんの宿主因子を明らかにする。

3)胃発がんにおける環境因子を明らかにする。

4)菌体-宿主-環境相互作用によるピロリ菌感染の胃発がんリスクを明らかにし、それぞ

れのリスクの重みを定量化し、胃発がんのリスク診断法を開発する。

5)アジアにおいて、ピロリ菌感染及び胃がん予防研究教育拠点を形成し、ピロリ菌感染

における胃発がん領域の情報の集約と発信の場として機能させる。

6)オーダーメイドの胃がん予防対策法を開発し、前向きのコホート調査を開始する。

7)セミナーを年1回開催すると共に、研究交流により、グローバルな若手人材を養成す

る。

目標に対する達成度とその理由

□研究交流目標は十分に達成された

■研究交流目標は概ね達成された

□研究交流目標はある程度達成された

□研究交流目標はほとんど達成されなかった

【理由】

学術研究において、ピロリ菌感染による胃発がんの菌体病原因子として、CagA が最も重

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要な作用を示すことを明らかにした。また、ピロリ菌のゲノム解析を進め、胃がん死亡率

の高い東アジアと低い欧米のピロリ菌のゲノムの違いについて解析を進め、日本の株を含

む東アジア株はヨーロッパ株と、病原因子などホストとの相互作用因子、酸化還元、ゲノ

ム・プロテオーム維持、エピジェネティクスで大きく異なっていることを明らかにした。

特に、東西で oipA、hopMN 等の外膜蛋白質遺伝子や、細胞表面にあってヒトのルイス抗原

を擬態するリポ多糖合成酵素である futA/futB に大きな違いが認められた。このような違

いが宿主との相互作用に違いが生じると考えられた。また、全ゲノム遺伝子配列による系

統樹解析で、ピロリ菌は、西アフリカ型とヨーロッパ型が分かれ、さらにそこからアメリ

ンド型と東アジア型の祖先が分かれることが示された。これら成果を 2 つの論文に発表し

ている。一方、ピロリ菌感染における胃発がんの宿主因子についても解析が進められ、感

染宿主の胃粘膜の炎症応答の強さが発がんリスクになり、胃粘膜中の IL-8発現量がリスク

指標になることを明らかにし、これについてもタイの協力研究者との共著として論文発表

をしている。

さらに、ピロリ菌感染において、ピロリ菌の 4 型分泌装置を介してヒト胃粘膜被蓋上皮

細胞に移入されたピロリ菌由来の病原毒素 CagAが、エクソソームの構成因子として胃の被

蓋上皮細胞から放出され、全身循環系に入ることを初めて明らかにした。本成果は、これ

まで CagA 陽性ピロリ菌感染で発症リスクが高まるとされている胃がんや胃外疾患の病態解

明に新たな展開となることが期待される。

共同研究とセミナーにおいて、若手研究者を中心として、交流が進められ、上記基礎研

究に加え、臨床的にわが国が長年築き上げてきた胃がん検診システムと胃内視鏡を用いた

胃がんの診療システムについて、参加アジア 5 カ国に指導し、拠点形成の基盤を築くこと

が出来た。これまでの本事業における交流により、特にピロリ菌感染による胃がんリスク

が高い、韓国及び中国のヘリコバクター学会との連携が強化され、日本ヘリコバクター学

会が核となり、本事業による拠点を継続的に運営することが可能になった。また、本事業

における海外拠点の1つであるフィリピンのセントルークスメディカルセンターに海外中

核拠点として、消化器がん診断・治療研究教育センターを設置し、本事業のネットワーク

構築の継続を図ることが出来、アジアにおいて、確固たるピロリ菌感染及び胃がん予防研

究教育拠点を形成し、胃がん予防対策が構築された。さらに、セミナーは 5 年間で、計 10

回開催し、多数の参加者により、グローバルな若手人材養成が実現できた。

以上より、この 5カ年において、目標が概ね達成されたと考える。

6.研究交流成果

6-1.平成27年度の成果

(研究協力体制の構築状況、学術面の成果、若手研究者育成、社会貢献や独自の目的等

についての平成27年度の成果を簡潔に記載してください。なお、交流を通じての相手

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国からの貢献及び相手国への貢献を含めてください。)

研究協力体制の構築状況

今年度は最終年度であり、これまでに引き続き、相互の研究者の育成交流を行うととも

に、今後の継続的な研究協力体制について議論の上、システムを構築した。特に今年度は、

日本拠点コーディネーター東が第 21回日本ヘリコバクター学会を神戸で開催し、その際に

「アジアのヘリコバクター感染と胃がん」についてのサテライトシンポジウムを組むこと

が出来、本事業を多くの学会関係者に紹介することが出来、今後は学会としてアジア諸国

との連携を推進強化することに合意を得ることが出来た。また、本事業における海外拠点

の1つであるフィリピンのセントルークスメディカルセンターに海外中核拠点として、消

化器がん診断・治療研究教育センターを設置し、本事業のネットワーク構築の継続を図る

ことが出来た。この拠点により本事業の継続的運営が確固たるものとなった。

中国:6月 19~21日に中国の海外拠点である青島大学において、Tian 教授と今後の研究協

力体制について意見交換した。青島大学には、平成 23年 4月~27年 3月まで神戸大学大学

院医学研究科博士課程に在籍し、学位を取得した Lin 助教が帰学している上に、これまで

に、10 名の若手研究者が神戸大学に研修に来ており本事業の中国拠点として機能している。

また、平成 27 年 3月に神戸大学医学研究科と青島大学医学部との間で大学部局間協定を締

結し平成 28 年 5 月に日本拠点コーディネーターの東が青島大学客員教授就任予定であり、

今後の組織的な継続的研究協力体制が構築された。

8月 21~23日には、中国の研究協力機関北京大学の Hu教授が会長として北京で開催され

た第 10回中国ヘリコバクター学会に研究代表者東が出席し、ヘリコバクターピロリ感染と

胃がんについての特別講演をするとともに、本事業におけるヘリコバクターピロリ感染及

び胃がん予防研究教育拠点形成について学会参加者に広く周知することが出来た。また、

東は日本ヘリコバクター学会の理事であり、中国ヘリコバクター学会理事長の Hu 教授と、

日中のヘリコバクター学会と連携して、継続的研究協力体制構築について意見交換するこ

とが出来た。

韓国:10月 16~18 日に、韓国の拠点機関である Cha大学に研究代表者東が招待され、ヘリ

コバクターピロリ感染と胃がんについての特別講演を発表し、本事業について広く周知す

ることが出来た。また、日本と韓国は双方のヘリコバクター学会で毎年ジョイントシンポ

ジウムを開催するなど密な連携を取っており、韓国拠点コーディネーターである Hahm 教授

と、今後の学会と連携して、継続的研究協力体制を構築することを確認した。

ベトナム:拠点機関である Hanoi Medical Universityは神戸大学大学院医学研究科と部局

間教育・研究協定を平成 18 年 5 月に締結しており長年の交流実績を有している。また、

Nguyen 准教授はヘリコバクター研究のベトナムでの第一人者で、小児科医であり、ベトナ

ムにおける小児のヘリコバクターピロリ感染率の継時的調査研究を進めており、今後の研

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究協力関係継続についても同意を得た。

フィリピン:神戸大学医学研究科とセントルークスメディカルセンターとの間で平成 27年

10 月に連携協定を締結した。また、昨年度に依頼のあったセントルークスメディカルセン

ターにおける国際先進消化器内視鏡センター設立について 4月 15~18日、9月 21~25日に

引き続き現地で協議を重ね、設立について最終合意を得た。

10月 11~15 日には、セントルークスメディカルセンターにおいて、国際先進消化器内視

鏡センター開設式及びセミナーを開催した。本事業における海外拠点の1つであるフィリ

ピンのセントルークスメディカルセンターに海外中核拠点が形成され、消化器がん診断・

治療研究教育センターを設置することが出来、本事業のネットワーク構築の継続が可能と

なった。

11月 4~6日には、セントルークスメディカルセンターの国際先進消化器内視鏡センター

において、ヘリコバクターピロリ感染と胃がん及び胃癌予防についてのジョイントセミナ

ーを開催し本海外中核拠点をフィリピン国内外に周知することが出来た。平成 28 年 1 月 3

日より、神戸大学から 1 名同センターに常駐し、消化器がん診断・治療研究教育センター

を指導運営している。

タイ:チュラロンコーン大学医学部と神戸大学医学研究科は平成 17年 8月に大学部局間協

定を締結しており、定期的な人材交流が行われてきている。Mahachai 准教授はタイにおけ

るヘリコバクター研究の第一人者で、平成 27 年 5 月 15~20 日アメリカ消化器病週間(ワ

シントン DC)において、本事業における継続的研究協力体制構築について協議し、同意を

得た。

また、6月 25~26日には第 21回日本ヘリコバクター学会を研究代表者東が主催して神戸

で開催した。本事業で形成されたネットワークを、学会の海外交流事業と連携して継続性

を強化することについて意見交換することが出来た。

本学会では国内協力研究者である東京大学畠山教授が 特別講演「ピロリ菌がんタンパ

ク質 CagAの機能とその制御」を発表し、ピロリ菌感染による胃発がんメカニズムについて

CagA の重要性を示した。また、アジアのヘリコバクターピロリ感染及び胃がん予防のサテ

ライトシンポジウムを開催し、海外拠点機関から中国青島大学 Tian教授、韓国 Cha大学 Hahm

教授、ベトナムハノイ大学 Nguyen准教授が参加し、これまでの研究成果についての報告会

をするとともに、今後の研究教育拠点継続について確認することが出来た。

学術面の成果

これまでに、我々は、ピロリ菌感染分子メカニズムにおいて、ピロリ菌の病原因子 CagA

が 4 型分泌装置を介して感染宿主細胞内に注入されることが起点となり、さまざまな細胞

内シグナル伝達のカスケードが攪乱され、胃がんを始めとする胃粘膜病変を発症すること

が明らかにしてきた。一方で、ピロリ菌が直接感染するのは主に胃粘膜表層の被蓋上皮細

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胞であり、細胞寿命の短い被蓋上皮細胞内のシグナル変化がどのように胃がん発症に関与

するのか、また、ピロリ菌感染に関与する胃外疾患(特発性血小板減少性紫斑病、冠動脈

疾患など)の病態メカニズムについては不明であった。

そこで、我々は、ピロリ菌由来病原因子 CagAが、何らかの形で、胃粘膜被蓋上皮細胞か

ら他の細胞や組織へと運ばれることによって、さまざまな疾患を発症するのではないかと

考えた。近年、細胞が分泌する小胞であるエクソソームは、血液、尿、唾液、母乳などの

体液中に存在し、タンパク質や DNA、マイクロ RNAなど細胞間情報伝達に必須な物質を安定

的に保持し、細胞から細胞へと運んでいくことが明らかにされてきた。

我々は、CagA 陽性ピロリ菌によって胃粘膜上皮細胞内に注入された CagAがエクソソーム

として細胞外へ分泌され、血液を通して離れた細胞、組織へ運ばれるという仮説を立てた。

まず、CagA 陽性ピロリ菌に感染した胃がん患者の血清からエクソソームを回収し、液体ク

ロマトグラフィー質量分析装置(LC-MS/MS)を用いてエクソソームに含まれるタンパク質

を網羅的に解析した。結果、エクソソームに含まれる代表的なタンパク質とともに、ヒト

胃がん由来ピロリ菌が持つ CagA と同一配列のアミノ酸配列を同定した(図1)。したがっ

て、CagA が胃粘膜上皮細胞のみに存在するのではなく、エクソソームとして血液中へと運

ばれていることを初めて明らかになった。

さらに、エクソソーム中の CagA の生理学的機能を調べるため、培養細胞に cagA 遺伝子

を導入した CagA 発現胃がん培養細胞と cagA遺伝子を導入していない CagA陰性胃がん培養

細胞、それぞれからエクソソームを回収し、サイズと形状を観察し(図2A)、細胞との相

互作用を解析した。CagA 陽性胃がん細胞由来エクソソームには、ピロリ菌感染患者由来エ

クソソームと同様に CagAが含まれていた。CagAは細胞内でチロシンリン酸化を受けること

で、細胞の増殖・分裂を促す SHP-2 を活性化させて、がん化を引き起こす。このリン酸化

された CagA により活性化された SHP-2は、細胞の異常増殖及び運動性を亢進させ、ハチド

リのくちばしのような形の細胞伸長(ハミングバード表現型)を誘導することが分かって

いる。そこで、CagA 陽性エクソソームをヒト培養胃がん細胞の培養系に添加したところ 24

時間後にハミングバード表現型が観察された(図2B)。この結果より、CagA が生物活性を

保持したままエクソソームから他の細胞医内へ運ばれ機能発現したと考えられた(図3)。

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図1 CagA 陽性ピロリ菌感染者(A)及びピロリ菌非感染者(B)における血清由来エクソ

ソーム中の CagA 配列の同定

液体クロマトグラフィー質量分析装置(LC-MS/MS)にて血清から単離したエクソ

ソームに含まれるタンパク質を解析した。ヒト胃がん由来ピロリ菌株が持つCagAの配

列の内の(a)-(d)の4つの配列と同一の配列が、ピロリ菌感染胃がん患者由来のエク

ソソームからのみ同定された。

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図 2 エクソソームの電子顕微鏡像(A)、ヒト胃がん培養細胞へ CagA 陰性及び陽性エクソ

ソームを添加した後の細胞形態変化の観察(B)

リン酸化された CagA が細胞内に注入されると、ハチドリのくちばしのような伸長した細胞

(ハミングバード表現型)が観察される。(スケールバー:Aは 100ナノメートル、Bは 50

マイクロメートル)

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図 3 エクソソームによるピロリ菌 CagA タンパク質の輸送

ピロリ菌により細胞内に注入された CagA はエクソソームとして血液中を移動し、さまざま

な細胞・組織へと運ばれる。

本研究で、ピロリ菌由来の病原毒素 CagAがエクソソームの構成因子として胃の被蓋上皮

細胞から放出され、全身循環系に入ることを初めて明らかにした。本成果は、これまで CagA

陽性ピロリ菌感染で発症リスクが高まるとされている胃がんや胃外疾患の病態解明に新た

な展開となることが期待される。

ベトナムにおいて採取されたピロリ菌の cagA 遺伝子を、胃がん 11 株、十二指腸潰瘍 9

株、胃潰瘍 2 株、計 22 株で解析した。ベトナム株は全て東アジア型の CagA であり、疾患

による違いは認めなかった。cagA 遺伝子の全塩基配列をこれまで報告された臨床分離株も

含め系統樹解析を行ったところ、これまでにベトナムの株は同じ東アジアのクラスターに

入るものの、日本の東アジア型とは細分された枝に分かれた。また、日本の欧米株(主に

は沖縄で分離された株)は欧米の欧米株とは異なった日本特有のクラスターに位置してい

た(図 4)。

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図 4:cagA遺伝子の系統樹解析

AB19

0934

-Jap

an

AB09

0081

-Jap

an

AB09

0078

-Jap

an

AB19

0952

-Jap

an

AB09

0089

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n

AB1909

44-Ja

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AB190939-Japan

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AB190945-Japan

AB090080-Japan

AB090087-JapanAB090076-JapanAB090074-JapanAB090077-Japan

AB090084-Japan

AB090073-Japan

AB090075-Japan

AF202972-Japan

AF367251-China

DQ306710-China

AF249275-China

AF367250-China

EU681369-Hongkong

VietnamHP-No22

VietnamHP-No14Vietnam

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VietnamHP-No17

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AY884089-USA

AY884088-USA

AB190956-Japan

AB190943-JapanAB190946-JapanAB190941-JapanAB190951-Japan

AB190940-Japan

AB090086-Japan

AB190948-Japan

AB190950-Japan

AF083352-Australia

AY330639-Europe

AF282853-Australia

AB015416-America

AB015414-America

DQ067454-USA

VietnamHP-No28

DQ985738-France

AB090082-Japan

EF195723-IndiaEF195722-India

EF195721-FranceAF202973-Australia

AB015413-America

AF247651-Australia

AB190937-Japan

AB015415-America

AY330644-Europe

0.01

East-Asian CagA

Western CagA

J-Western CagA sub-type

さらに、平成 26年度からスタートしたオーダーメイドの胃がん予防対策法をもとにした

前向きコホート調査を今年度データー整理するとともに、2 年目の調査を進めた。平成 26

年度に健診受診者を対象に 8910 名が前向きコホート調査にエントリーされた。内訳を表 1

に示す。本研究では上部消化管内視鏡検査を施行した健診受診者を対象として、ピロリ菌

感染とピロリ菌の CagAの分子型をチェック、質問票で、喫煙、飲酒等の生活習慣をチェッ

クし、除菌治療の履歴も確認した。今後、この母集団を毎年追跡調査し、胃がん発症など

を確認していく。

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表 1 ピロリ菌感染と胃発がん前向きコホート調査エントリー者内訳

若手研究者育成、社会貢献や独自の目的等

今年度は、日本拠点コーディネーター東が第 21回日本ヘリコバクター学会を神戸で開催

し、その際に「アジアのヘリコバクター感染と胃がん」についてのサテライトシンポジウ

ムを組むことが出来、本事業を多くの学会関係者に紹介することが出来、今後は学会とし

てアジア諸国との連携を推進強化することに合意を得ることが出来た。また、フィリピン

のセントルークスメディカルセンターに消化器がん診断・治療研究教育センターを設置す

ることが出来、若手研究者を長期滞在させ、事業終了後の継続的な若手研究者育成体制を

整備することが出来た。

社会貢献として、平成 27年 6月 28日に東が主催した第 21回日本ヘリコバクター学会時

に市民公開講座を神戸大学医学部会館で開催した。本会では、「ピロリ感染胃炎の除菌療法

について」と「胃がんに対する体にやさしい内視鏡治療」について市民に対し講演した。

また、同時に参加者 127名を対象に尿中ピロリ菌抗体検査を実施し、44名約 34.6%が陽性

と判定し、陽性者に対して、除菌治療のための医療機関受診を勧め、一般市民に広くピロ

リ菌感染が胃がんの危険因子であることを周知することが出来た。

(1)平成27年度に学術雑誌等に発表した論文・著書 1 本

うち、相手国参加研究者との共著 0 本

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(2)平成27年度の国際会議における発表 5 件

うち、相手国参加研究者との共同発表 0 件

(3)平成27年度の国内学会・シンポジウム等における発表 14 件

うち、相手国参加者との共同発表 0 件

(※ 「本事業名が明記されているもの」を計上・記入してください。)

6-2全期間にわたる研究交流成果

(1)研究協力体制の構築状況

① 日本側拠点機関の実施体制(拠点機関としての役割・国内の協力機関との協力体制

等)

・神戸大学大学院医学研究科消化器内科学分野 東 健: 研究統括、ピロリ菌感染によ

る胃発がんの、菌体因子、宿主因子、環境因子の相互作用解析を進めた。また、それらの

リスク因子の重みを定量化し、胃発がんのリスク診断法を開発する。この 5 年間で、国内

の協力機関とも密接な連携体制を構築してきた。最終年度には東が第 21回日本ヘリコバク

ター学会を主催することになり、日本側研究協力者及び海外の拠点機関のコーディネータ

ーが集まり、5年間の総括をすることが出来た。

日本側研究協力機関及び協力研究者

・東京大学医学部微生物学講座 畠山昌則 ピロリ菌感染における菌-宿主相互作用解

析:ピロリ菌感染における感染細胞内のシグナル伝達の変化による胃発がんメカニズムを

解析した。ピロリ菌の病原因子 CagA はがん蛋白であることを示し、CagAのヒト胃粘膜上皮

細胞内でのシグナル伝達に及ぼす影響につき解析を進めた。

・京都大学医学部消化器内科学講座(平成 27年度から京都大学大学院総合生存学館総合生

存学) 千葉 勉 胃発宿主応答解析:ピロリ菌感染による宿主の免疫応答、及びピロリ

菌感染により生じる炎症による宿主側遺伝子変化を解析した。ピロリ菌が引きおこす胃粘

膜の炎症により、activation-induced cytidine deaminase (AID)が胃粘膜上皮細胞で発現

され、遺伝子変異が生じることを明らかにした。

・長崎大学熱帯医学研究所細菌学分野 平山壽哉、磯本 一 ピロリ菌胃発がん病原因子

解析:ピロリ菌の病原因子である細胞空砲化毒素(VacA)による感染宿主細胞内のシグナル

伝達変化と胃発がんの関連を解析した。

・福井赤十字病院 山崎幸直 ピロリ菌ゲノム解析:ピロリ菌ゲノム解析、特にピロリ菌

の病原因子 CagA や VacA の遺伝子解析を進めた。また、ピロリ菌感染と胃発がんについて

の前向きコホート調査を実施した。

・神戸薬科大学臨床薬学講座 水野成人 胃発がん環境因子解析:胃発がんの食事因子を

中心とした環境因子を解析している。

・神戸国際医療交流財団 田中紘一 胃がん予防対策構築及びセミナー開催:ピロリ菌感

染による胃発がんリスク診断法の確立と胃がん予防対策構築、また課題における海外の研

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究者の受け入れや年 1年開催するセミナーの開催準備を担当した。

② 相手国拠点機関との協力体制(各国の役割分担・ネットワーク構築状況等)

中国: Qingdao University の Zi-Bin Tian教授は中国における消化器病学研究の第一人者

であり、日本側コーディネーター東と共にピロリ菌研究に従事した。ピロリ菌の病原因子

の解析と、ピロリ菌除菌治療による胃発がん抑制について、前向きコホート調査を中国で

行った。平成 23~26 年に Qingdao University から大学院生が1名神戸大学に在籍し、学

位取得後は Qingdao Universityで助教として勤務し継続的に協力体制を取っている。

また、中国の協力機関の協力研究者 Hu教授が、平成 26年 8月 8日~10日と平成 27年 8月

21~23 日の 2 回にわたり中国ヘリコバクター学会を主催し、東は学会に招待され、ヘリコ

バクターピロリ感染と胃がんについての特別講演をするとともに、本事業におけるヘリコ

バクターピロリ感染及び胃がん予防研究教育拠点形成について学会参加者に広く周知する

ことが出来た。また、東は日本ヘリコバクター学会の理事であり、中国ヘリコバクター学

会理事長の Hu教授と、日中のヘリコバクター学会と連携して、継続的研究協力体制構築に

ついて意見交換することが出来た。

韓国: Cha University の Ki-Baik Hahm 教授は韓国におけるピロリ菌研究者の第一人者で

あり、ピロリ菌感染―炎症―発がんスパイラルを解析した。また、韓国特有の食材におけ

るピロリ菌抗菌作用や抗炎症作用を解析し、胃がん予防効果について検討した。

また、日本と韓国は双方のヘリコバクター学会で毎年ジョイントシンポジウムを開催する

など密な連携を取っており、韓国拠点コーディネーターである Hahm教授と、今後の学会と

連携して、継続的研究協力体制を構築することを確認した。

ベトナム: Hanoi Medical University は神戸大学大学院医学研究科と部局間協定を締結し

ている。ベトナムのピロリ菌感染と胃がんの関係を解析し、北部では南部に比べ胃がん死

亡率が高く、ピロリ菌の病原因子について解析を進めた。

フィリピン: St. Luke’s Medical Center の Natividad教授はフィリピンのピロリ菌研究

の第一人者である。フィリピンにおけるピロリ菌研究グループの代表者を務めている。フ

ィリピンでは、ピロリ菌感染率が高いが、胃がん死亡率が低い。この原因の一つとして、

フィリピンのピロリ菌は欧米型の CagAを有する株の頻度が高いことが示された。

また、2015 年 10 月 11~15 日には、セントルークスメディカルセンターにおいて、国際先

進消化器内視鏡センターを開設した。本事業における海外拠点の1つであるフィリピンの

セントルークスメディカルセンターに海外中核拠点が形成され、消化器がん診断・治療研

究教育センターを設置することが出来、本事業のネットワーク構築の継続が可能となった。

平成 28年 1月 3日より、神戸大学から 1名同センターに常駐し、消化器がん診断・治療研

究教育センターを指導運営している。

タイ: Chulalongkorn University は神戸大学大学院医学研究科と部局間協定を締結してい

る。Varocha Mahachai 助教授はタイのピロリ菌及び消化器がん研究の第一人者であり、平

成 24 年 12 月に Asian Pacific Digestive Week 2012 の学術プログラム委員長を務め、バ

ンコクで、Mahachai 助教授と日本側コーディネーター東が中心となり、韓国、中国、ベト

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ナム、フィリピンの拠点機関の研究者と研究打ち合わせが出来た。また、2014 年 1月 31日

~2 月 1 日に世界 18 か国 32 名の著名なピロリ研究者が集まり京都で開催された Kyoto

global consensus report on Helicobacter pylori gastritis に日本側コーディネーター

東、日本側研究協力者千葉と Mahachai助教授が参加し、本事業におけるネットワーク継続

を確認した。

③ 日本側拠点機関の事務支援体制(拠点機関全体としての事務運営・支援体制)

神戸大学国際交流推進本部と連携創造本部および担当部局事務部問が連携し、日本学術

振興会との連絡調整、外国人研究者招へいに係る手続き、委託費の適正執行・管理等の各

種支援を行った。

(2)学術面の成果

我々は、ピロリが胃粘膜上皮細胞に接着すると、ピロリ菌の4型分泌装置がピロリの細

胞膜からヒト上皮細胞膜へ針をさすように突き刺さり、その内腔を通して病原タンパク

CagAがピロリから胃粘膜上皮細胞内へと注入され、上皮細胞内に注入された CagA は上皮内

でチロシンリン酸化を受け、チロシンリン酸化された CagAが、細胞の増殖や分化に重要な

役割を担う細胞質内脱リン酸化酵素である Src homology phosphatase-2 (SHP-2)と結合す

ることを認めた。CagA との結合により SHP-2 のチロシンフォスファターゼ活性は著しく増

強される。CagA によって脱制御された SHP-2 は Ras 非依存的に Erk MAP キナーゼの持続的

活性化を引き起こすことが認められた。Erkの持続活性化は細胞の運動性ならびに細胞周期

制御に重要な役割を果たすことが知られており、CagA-SHP-2 複合体による Erk の持続的活

性化は異常増殖シグナル生成に関与することが推察されている。また、CagA により活性化

された SHP-2 が直接脱リン酸化する細胞内基質分子として focal adhesion kinase (FAK)

が同定された。FAK は細胞-基質間相互作用の基盤となる細胞接着班を制御することにより、

細胞運動を制御する。SHP-2は FAKのキナーゼドメイン活性化ループ内に存在するチロシン

リン酸化部位を脱リン酸化し、FAKキナーゼ活性を抑制する。FAKの活性低下に伴い細胞接

着班の新生が抑制され、細胞-基質間相互作用の低下による細胞運動能の増大が引き起こさ

れる。さらに、CagA はチロシンリン酸化非依存的に肝細胞増殖因子受容体 c-Met やアダプ

ター分子 Grb2に結合することが報告されており、細胞の増殖や分化に関わる NF-κBや NFAT

などの転写因子を活性化することも明らかにされている。CagA によるこれら分子の機能的

脱制御も胃上皮細胞傷害に相乗的に作用する。一方、CagAはチロシンリン酸化非依存的に、

細胞極性形成と維持に必須のセリン/スレオニンキナーゼである partitioning-defective

1b (PAR1b)と結合を介して PAR1bキナーゼ活性を抑制すると同時に、非定型的蛋白キナー

ゼ C (aPKC)依存的な PAR1bのリン酸化を阻害することにより、上皮細胞極性を破壊するこ

とが示されている。また、CagA は E-cadherin の結合蛋白であるβ-catenin を脱制御する

ことも示唆されており、細胞間接着装置の不活化を介して正常胃粘膜構造を破壊し、ピロ

リ感染に伴う胃粘膜炎症を促進させることが示唆される(図 5)。

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また、胃がん症例と健常対照者

から、胃内視鏡下生検組織を採取

し、ピロリ菌の培養及び菌の DNA

の抽出、組織から DNAと RNAの抽

出を継続的に実施した。日本、中

国、フィリピン、ベトナム、タイ

のピロリ菌を採取し、遺伝子解析

を進め、日本中国 18株(慢性胃炎

7株、十二指腸潰瘍株 11株)、フ

ィリピン 19株(慢性胃炎 8株、胃

潰瘍 6株、十二指腸潰瘍 3株、胃

がん 2株)、ベトナム 22株(胃潰瘍 2株、十二指腸潰瘍 9株、胃がん 11株)、タイ 41株(慢

性胃炎 23株、胃潰瘍 3株、十二指腸潰瘍 4株、胃がん 8株)の病原因子 cagAの遺伝子多型

を解析した(表 2)。東アジア型の cagA の頻度が、胃がん死亡率の高い中国、日本、胃がん

死亡率の中等度のベトナムで高く、胃がん死亡率の低いフィリピン、タイでは低いことが

認められた。

表 2 cagA多型分布

China Philippine Vietnam Thai Japan

- East Wes

t

- East West - East Wes

t

- East Wes

t

- East Wes

t

CG 0 7 0 - 3 5 - - - 2 12 9 0 35 0

GU - - - 0 0 6 0 2 0 0 3 0 0 22 1

DU 0 10 1 - 1 2 0 9 0 2 2 0 0 18 1

GC - - - - 1 1 0 10 1 1 5 2 0 29 0

tota

l

0 17 1 0 5 14 0 21 1 5 22 11 0 104 2

CG:慢性胃炎、GU:胃潰瘍、DU:十二指腸潰瘍、GC:胃がん、-:cagA 陰性、East:東アジ

ア型、West:欧米型

また、これまでに、日本の 4 株(慢性胃炎 1 株、十二指腸潰瘍 1 株、胃がん 2 株)の全ゲ

ノム遺伝子解析を行い、系統樹解析を行ったところ、ピロリ菌は、西アフリカ型とヨーロ

ッパ型が分かれ、さらにそこからアメリンド型と東アジア型の祖先が分かれることが示さ

れた(図 6)。

CagA

CagA

4型分泌装置

CagA-P

Src CagA-P-SHP-2

SHP-2

MekErk

細胞増殖異常

細胞分化異常

FAK-P

FAK

細胞接着班の減少

細胞運動亢進

図5 ピロリ菌-宿主細胞間クロストーク

胃粘膜上皮細胞

ピロリ菌

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図 6 ピロリ菌全ゲノムの系統樹解析

ゲノムの違いを調べると、日本の株を含む東アジア株はヨーロッパ株と、病原因子など

ホストとの相互作用因子、酸化還元、ゲノム・プロテオーム維持、エピジェネティクスで

大きく異なっていた。特に、東西で oipA、hopMN 等の外膜蛋白質遺伝子や、細胞表面にあ

ってヒトのルイス抗原を擬態するリポ多糖合成酵素である futA/futB に大きな違いが認め

られた。このような違いが宿主との相互作用に違いが生じると考えられる。(表 3)。

表 3 ピロリ菌外膜蛋白の東西での遺伝子の違い

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一方、ピロリ菌感染における胃発がんの宿主因子についても解析が進められ、タイにお

ける胃がん 86例、良性胃疾患 134 例の検討で、宿主の胃粘膜の炎症応答の強さが発がんリ

スクになり、胃粘膜中の IL-8発現量がリスク指標になることを明らかにした(表 4)。

また、日本の胃がん 17例、良性胃疾患 12例も合わせて検討したところ、両国において、

同じく胃粘膜中の IL-8発現量が有意に高いことを明らかにした(図 7)。

さらに、今年度、ピロリ菌により細胞内に注入された CagAはエクソソームとして血液中

を移動し、さまざまな細胞・組織へと運ばれることを世界で初めて明らかにした(平成 27

図 7

表 4

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年度の学術面成果参照)。また、平成 26 年度からスタートしたオーダーメイドの胃がん予

防対策法をもとにした前向きコホート調査を今年度データー整理するとともに、2年目の調

査を進めた。平成 26 年度に健診受診者を対象に 8910 名が前向きコホート調査にエントリ

ーされた。本研究では上部消化管内視鏡検査を施行した健診受診者を対象として、ピロリ

菌感染とピロリ菌の CagAの分子型をチェック、質問票で、喫煙、飲酒等の生活習慣をチェ

ックし、除菌治療の履歴も確認した。今後、この母集団を毎年追跡調査し、胃がん発症な

どを確認していく(平成 27年度の学術面成果参照)。

以上、本事業において、ピロリ菌感染による胃発がんの菌体因子、宿主因子について解

析ができ、さらに、オーダーメイドの胃がん予防対策法をもとにした 8910名という大規模

な前向きコホート調査が開始された。

(3)若手研究者育成

本事業により、共同研究で日本側参加者 144 名、中国側参加者 71 名、韓国側参加者 16

名、ベトナム側参加者 14名、フィリピン側参加者 23名、タイ側参加者 20名、計 288名が

参加した。また、セミナーはこの 5年間で 10回開催し、数多くの研究者が参加した。特に、

今年度は、日本拠点コーディネーター東が第 21回日本ヘリコバクター学会を神戸で開催し、

その際に「アジアのヘリコバクター感染と胃がん」についてのサテライトシンポジウムを

組むことが出来、本事業を多くの学会関係者に紹介することが出来、今後は学会としてア

ジア諸国との連携を推進強化し、若手研究者育成に当たることに合意を得ることが出来た。

また、フィリピンのセントルークスメディカルセンターに消化器がん診断・治療研究教育

センターを設置することが出来、若手研究者を長期滞在させ、事業終了後の継続的な若手

研究者育成体制を整備することが出来た。さらに、派遣・受入研究者も 5 年間で、それぞ

れ、55 名、165名と多くの若手研究者の交流による育成が出来た。

(4)アジア地域における研究教育拠点の構築

これまでに、Qingdao Univ.、Hanoi Med. Univ.、Chulalongkom Univ.、St. Luke’s Medical

Center と神戸大学医学研究科とは部局間協定を締結している。また、日本側コーディネー

ター東は、本事業における海外拠点とはいずれも 10年以上の交流を有している。本事業に

より、これら海外拠点との連携がさらに強くなった。特に、最終年度に日本側拠点コーデ

ィネーター東が第 21 回日本ヘリコバクター学会を主催したこともあり、韓国及び中国のヘ

リコバクター学会と日本のヘリコバクター学会の連携も強化され、本事業におけるアジア

のヘリコバクターピロリ感染及び胃がん予防研究教育拠点は確固たるものになった。さら

に、最終年度に本事業における海外拠点の1つである St. Luke’s Medical Centerに国際

先進消化器内視鏡センターが設立され、海外中核拠点が形成され、消化器がん診断・治療

研究教育センターを設置することが出来た。フィリピンは ASEAN諸国の中心的位置にあり、

アジア最大の英語圏である。当センターの設置により本事業のネットワーク構築の継続が

可能になり、さらに、世界に広く情報発信が出来る体制が構築された(図 8)。平成 28年 1

月 3 日より、神戸大学から 1 名同センターに常駐し、消化器がん診断・治療研究教育セン

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ターを指導運営している。

(5)社会貢献や独自の目的等

社会貢献として、平成 24年 3月 11日、平成 25年 3月 17日、平成 26年 3月 9日、平成

27年 6月 28 日と 4回にわたり、一般市民公開講座を開催し、ピロリ菌と胃がんについて広

く市民に普及活動を行った。特に平成 27 年は、東が主催した第 21 回日本ヘリコバクター

学会時に市民公開講座を神戸大学医学部会館で開催し、学会と連携した形で、一般市民に

広くピロリ菌感染が胃がんの危険因子であることを周知することが出来た。

(6)予期しなかった成果

これまで、ピロリ菌感染により、ピロリ菌由来の病原毒素 CagA が、4 型分泌装置を介し

てヒト胃粘膜被蓋上皮細胞内に移入し、上皮細胞内のシグナル伝達異常が生じることが認

められてきた。本事業において、CagA がエクソソームの構成因子として胃の被蓋上皮細胞

から放出され、全身循環系に入ることが初めて明らかにされた。本成果は、これまで CagA

陽性ピロリ菌感染で発症リスクが高まるとされている胃がんや胃外疾患の病態解明に新た

な展開となることが期待される。

(7)今後の課題・問題点及び展望

本事業で始まった前向きコホート調査を引き続き継続し、ピロリ菌感染胃発がんのリス

ク因子を実証することが今後の課題である。また、本事業で構築されたヘリコバクター学

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会を中心としたアジア諸国との連携をもとに、本ネットワークを発展的に継続することが

課題である。そのためにも、本事業で設立された海外拠点の1つである St. Luke’s Medical

Center における国際先進消化器内視鏡センター及び消化器がん診断・治療研究教育センタ

ーを、海外中核拠点として位置づけ、ピロリ菌感染と胃がん予防研究教育活動を ASEAN 諸

国、さらに、世界に広く情報発信していく。

日本ではピロリ菌感染者に対して除菌治療が保険適用になっているが、海外ではまだま

だ除菌治療について社会的認識がなされていない。今後、本事業により構築されたネット

ワークをもとに、アジア各国に除菌治療についての効果について周知し、除菌治療を普及

させていくことが重要である。

(8)本研究交流事業により全期間中に発表された論文等

①全期間中に学術雑誌等に発表した論文・著書 10 本

うち、相手国参加研究者との共著 1 本

②全期間中の国際会議における発表 37 件

うち、相手国参加研究者との共同発表 0 件

③全期間中の国内発表・シンポジウム等における発表 39 件

うち、相手国参加研究者との共同発表 0 件

(※ 「本事業名が明記されているもの」を計上・記入してください。)

(※ 詳細は別紙「論文リスト」に記入してください。)

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7.平成27年度及び全期間にわたる研究交流実績状況

7-1 共同研究

整理番号 R-1 研究開始年度 平成 23年度 研究終了年度 平成 27年度

研究課題名 (和文)アジアのヘリコバクターピロリ感染及び胃がん予防研究教育拠

点形成

(英文)Construction of a collaborative research and education

center for Helicobacter pylori infection and gastric cancer

prevention in Asia

日本側代表者

氏名・所属・職

(和文)東 健・神戸大学・教授

(英文)Takeshi AZUMA・ Kobe University・ Professor

相手国側代表者

氏名・所属・職

(英文)中国:TIAN Zi-Bin・Qingdao University・Professor

韓国:HAHM Ki-Baik・CHA University・Professor

ベトナム:NGUYEN Van Bang・Hanoi Medical University・Associate

Professor

フィリピン:BONDOC Edgardo・St. Luke’s College of Medicine・

Assistant Professor

タイ:MAHACHAI Varocha・Chulalongkorn University・Professor

参加者数 日本側参加者数 144名

中国側参加者数 71名

韓国側参加者数 16名

ベトナム側参加者 14名

フィリピン側参加者 23名

タイ側参加者 20名

27年度の研究

交流活動及び得

られた成果

・ 中国側拠点機関である青島大学へは同大学病院から留学生として在

籍している神戸大学大学院生を 3度派遣し、中国拠点との連携の強化・

継続を図った。

・ 2015年 4月下旬には仙台で開催された第 101回日本消化器病学会総

会に東教授が参加し、ピロリ菌感染と胃がんについての最新知見を収集

するとともに、日本の協力機関と今後の連携について打ち合わせをする

ことが出来た。

・ 同年 5月中旬にはワシントン D.C.にて研究課題に関するセミナーに

参加し、研究成果の発表を行い、海外にアピールすることが出来た。

・ 同年 6月上旬には、医員1名、大学院生1名、技術補佐員1名が東

京で開催されたイルミナゲノムサミットに参加し本事業におけるピロ

リ菌ゲノム解析を進展することが出来た。

・ 同年 7 月上旬にも同上の方々が東京で開催された Next Generation

Sequencer 現場の会第四回研究会に参加し、ピロリ菌ゲノム解析につい

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て意見交換することにより、研究の進展を図ることが出来た。

・ フィリピン側拠点機関であるセントルークスメディカルセンターへ

は東教授が 2度訪問し、研究課題に関する打ち合わせを行い、本事業終

了後の海外拠点として、セントルークスメディカルセンターに消化器が

ん診断・治療研究センター設立することに合意を得た。

・ 2016年 2月中旬には大学院生が東京で開催された 25th Conference

of the Asian Pacific Association for the study of the Liver に参

加し、炎症と発がんについて新たな知見を得ることが出来た。

・ 同年 2月下旬には、特命教授が東京で開催された第 21回日本消化

管学会総会学術集会に参加し、ピロリ菌感染と胃がんについての最新の

知見を得ることが出来た。

全期間にわたる

研究交流活動及

び得られた成果

の概要

本事業において、日本の若手研究者の先進的海外共同研究機関への派遣

により、若手研究者の研究能力・国際的視野が向上し、恒常的な交流へ

の人脈形成が確立できた。胃がんに関しては、わが国が長年築き上げて

きた胃がん検診システムと胃内視鏡を用いた胃がんの診療システムは

世界最高水準であり、本研究における若手研究者の育成により、我が国

がリーダーシップをとって、アジアでのピロリ菌感染及び胃がん予防研

究教育拠点の継続的構築が確立される。ピロリ菌感染の病態は、欧米と

日本を中心としたアジアで大きな違いが認められる。これまでに、ピロ

リ菌の全ゲノム解析では、東アジア株と欧米株との間に大きな違いが存

在し、特に、ピロリ菌の外膜蛋白や病原因子遺伝子に違いが大きいこと

が示されている。したがって、これらの違いが菌‐宿主相互作用に影響

することが考えられた。最終年度である今年度の研究交流活動により、

これまでの結果を解析し、ピロリ菌感染胃発がんリスクが明らかにされ

た。また、構築したネットワークを継続するために、フィリピンのセン

トルークスメディカルセンターに国際先進消化器内視鏡センターを設

置し、若手研究者を長期滞在させ、事業終了後の継続的な若手研究者育

成体制を整備した。

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7-2 セミナー

(1)全期間において実施したセミナー件数

平成 23年度 平成 24年度 平成 25年度 平成 26年度 平成 27年度

国内開催 1 回 1回 2回 2回 2回

海外開催 1 回 1回 0回 0回 1回

合計 2 回 2回 2回 2回 3回

(2)平成27年度セミナー実施状況

整理番号 S-1

セミナー名 (和文)日本学術振興会アジア研究教育拠点事業「第 4回神戸国際

消化器内視鏡ハンズオンセミナー」

(英文)JSPS Asian CORE Program “The 4th Kobe International

Endoscopy Hands-on Seminar“ “

開催期間 平成 27 年 6月 12日 ~ 平成 27年 6月 14日(3日間)

開催地(国名、都市名、

会場名)

(和文)日本、神戸、ポートピアホテル及び神戸医療機器開発セン

ター

(英文)Japan・Kobe・Portopia Hotel and MEDDEC

日本側開催責任者

氏名・所属・職

(和文)東 健・神戸大学・教授

(英文)Takeshi AZUMA・Kobe University・Professor

相手国側開催責任者

氏名・所属・職

(※日本以外で開催の場合)

(英文)

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参加者数

        派遣先

派遣元

セミ ナー開催国

(日本)

A. 12/25

B. 10

A.

B. 2

A.

B. 1

A. 1/3

B.

B. 1/3

B.

B. 14/31

B. 13

シンガポール

(日本側)

<人/人日>

合計

<人/人日>

日本

<人/人日>

イギリ ス

( 日本側)

<人/人日>

中国

<人/人日>

韓国

<人/人日>

A. 本事業参加者(参加研究者リストの研究者等)

B. 一般参加者(参加研究者リスト以外の研究者等)

※日数は、出張期間(渡航日、帰国日を含めた期間)としてください。これによりがたい

場合は、備考欄を設け、注意書きを付してください

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27

セミナー開催の目的 アジア諸国において、胃がん予防システム構築のために、上部消化

管内視鏡検査・治療について、世界をリードする日本で、海外の若

手研究者に、臨床症例の画像による胃がん診断・治療の提示に加え、

生体ブタを用いて実技指導を実施する。今回は、最終年度でもあり、

臨床症例によるライブデモンストレーションを組み込み、より実臨

床に沿うセミナーを開催する。

セミナーの成果 平成 24 年、25年、26年に引き続き、今年度も早期胃がんに対する

先進的内視鏡治療である ESDに重点をおいて、胃がん内視鏡診断の

講演に加え、ハンズオントレーニングを、技術提供用生体豚 5体、

切除胃を数個用意し、十分に対応できるように準備をした。セミナ

ーでは、指導者として 13名、被訓練者として 23名(アジア 5名、

英国 4名、米国 4名、メキシコ 4名、オーストラリア 2名、インド

2 名、ニュージーランド 1 名、ロシア 1 名)、助手等 9 名が参加し

た。参加研究者は、人間の消化器構造に近い生体豚に対して最新の

医療機器を用いた内視鏡治診断・治療法を習得するという貴重な機

会を得ることができ、彼らにとって大変有意義な研究会であった。

アジア諸国の若手研究者が、世界最先端の日本の胃がん予防システ

ムについて理解するとともに、彼らの内視鏡技術の向上が図られ、

自国における胃がん予防システム構築が進められることが期待さ

れる。

セミナーの運営組織 神戸大学大学院医学研究科消化器内科学分野と公益財団神戸国際

医療交流財団が主体となって、開催準備等事務的運営を行った。日

本側協力機関の研究代表者が運営委員としてセミナーのプログラ

ム構成等を決定した。

開催経費

分担内容

と金額

日本側 内容 国内旅費 423,110 円

外国旅費 977,620 円

その他経費 456,332 円

謝金 385,150 円

備品・消耗品購入費 86,400 円

外国旅費・謝金等に係る消費税 109,021 円

合計 2,437,633円

中国側 内容 外国旅費

韓国側 内容 外国旅費

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整理番号 S-2

セミナー名 (和文)日本学術振興会アジア研究教育拠点事業「アジアのヘリコ

バクターピロリ感染と胃がん」

(英文)JSPS Asian CORE Program “Helicobacter pylori infection

and gastric cancer in Asia“

開催期間 平成 27 年 6月 25日 ~ 平成 27年 2月 26日(2日間)

開催地(国名、都市名、

会場名)

(和文)日本、神戸、ポートピアホテル

(英文)Japan・Kobe・Portopia Hotel

日本側開催責任者

氏名・所属・職

(和文)東 健・神戸大学・教授

(英文)Takeshi Azuma・Kobe University・Professor

相手国側開催責任者

氏名・所属・職

(※日本以外で開催の場合)

(英文)

参加者数

        派遣先

派遣元

セミ ナー開催国

(日本)

A. 3/8

B. 1005

A. 1/3

B. 2

A. 1/2

B.

A. 2/6

B.

A. 7/19

B. 1007

日本

<人/人日>

中国

<人/人日>

韓国

<人/人日>

ベト ナム

<人/人日>

合計

<人/人日>

A. 本事業参加者(参加研究者リストの研究者等)

B. 一般参加者(参加研究者リスト以外の研究者等)

※日数は、出張期間(渡航日、帰国日を含めた期間)としてください。これによりがたい

場合は、備考欄を設け、注意書きを付してください

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セミナー開催の目的 海外研究機関より共同研究の進捗状況の報告を受け、これまでの研

究結果を解析する。また、第 21 回日本ヘリコバクター学会と共催

して、日本側研究者に加え世界的に著名な研究者の教育的講演を行

う。さらに、海外研究機関でのピロリ菌感染と胃がん及び胃がん検

診についての問題点を議論し、アジアにおけるピロリ菌感染及び胃

がん予防対策ネットワーク構築について、具体的方策を議論する。

セミナーの成果 ピロリ菌感染と胃がんという、アジア共通の問題を、日本、韓国、

中国、ベトナムというアジア諸国との共同研究交流により解析し、

アジア発のオリジナルな知見を世界に向けて発信することを目標

としており、アジア各国の若手研究者に世界における独自性を持た

せることが出来た。本研究においてアジアにおけるピロリ菌感染及

び胃がん予防対策ネットワークを構築することが、若手研究者の継

続的育成につながった。セミナー招聘者に世界的な著名な研究者を

加えることにより、諸外国の研究者を巻き込んだピロリ菌と胃がん

に関する幅広い疫学研究、臨床研究へと広がることが期待される。

セミナーの運営組織 神戸大学大学院医学研究科消化器内科学分野と公益財団神戸国際

医療交流財団が主体となって、開催準備等事務的運営を行った。日

本側協力機関の研究代表者が運営委員としてセミナーのプログラ

ム構成等を決定した。

開催経費

分担内容

と金額

日本側 内容 国内旅費 270,540 円

合計 270,540 円

中国側 内容 外国旅費

韓国側 内容 外国旅費

ベトナム側 内容 外国旅費

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整理番号 S-3

セミナー名 (和文)日本学術振興会アジア研究教育拠点事業「アジアにおける

ピロリ菌感染及び胃がん予防対策」

(英文)JSPS Asian CORE Program “Management of Helicobacter

pylori infection and gastric cancer prevention in Asia“

開催期間 平成 27 年 11月 4日 ~ 平成 27年 11月 7日(4日間)

開催地(国名、都市名、

会場名)

(和文)フィリピン、マニラ、セントルークスメディカルセンター

(英文)Philippine・Manila・St. Luke’s Medical Center

日本側開催責任者

氏名・所属・職

(和文)東 健・神戸大学・教授

(英文)Takeshi AZUMA・Kobe University・Professor

相手国側開催責任者

氏名・所属・職

(※日本以外で開催の場合)

(英文)BONDOC Edgardo・St. Luke’s College of Medicine・

Assistant Professor

参加者数

A. 本事業参加者(参加研究者リストの研究者等)

B. 一般参加者(参加研究者リスト以外の研究者等)

※日数は、出張期間(渡航日、帰国日を含めた期間)としてください。これによりがたい

場合は、備考欄を設け、注意書きを付してください

派遣先 派遣元 (フィリピン)

A. 1/4

B. 4

A. 2/8

B. 150

A. 3/12

B. 154

日本 <人/人日>

合計 <人/人日>

フィリピン <人/人日>

セミナー開催国

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セミナー開催の目的 海外研究機関より共同研究の成果報告を受け、日本側研究者に加え

世界的に著名な研究者の教育的講演を行う。また、海外研究機関で

のピロリ菌感染と胃がん及び胃がん検診についての問題点を議論

し、アジアにおけるピロリ菌感染及び胃がん予防対策ネットワーク

構築について、具体的方策を議論する。さらに、今後の研究協力体

制継続のための遠隔教育システムを構築する。

セミナーの成果 ピロリ菌感染と胃がんという、アジア共通の問題を、日本とフィリ

ピンとの共同研究交流により解析し、アジア発のオリジナルな知見

を世界に向けて発信することを目標としており、アジア各国の若手

研究者に世界における独自性を持たせることが出来た。本研究にお

いてアジアにおけるピロリ菌感染及び胃がん予防対策ネットワー

クを構築することが、若手研究者の継続的育成につながった。セミ

ナー招聘者に世界的な著名な研究者を加えることにより、諸外国の

研究者を巻き込んだピロリ菌と胃がんに関する幅広い疫学研究、臨

床研究へと広がることが期待される。今年度は最終年度であり、日

本の若手研究者を本事業における海外拠点の1つであるフィリピ

ンのセントルークスメディカルセンターに常駐し、本事業のネット

ワーク構築の継続を図った。

セミナーの運営組織 神戸大学大学院医学研究科消化器内科学分野とセントルークスメ

ディカルセンターが主体となって、開催準備等事務的運営を行っ

た。

開催経費

分担内容

と金額

日本側 内容 外国旅費 316,180円

外国旅費・謝金等に係る消費税 25,294円

合計 341,474円

フィリピン

内容 開催経費

( )側 内容

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7-3 研究者交流(共同研究、セミナー以外の交流)

(1)平成27年度実施状況

所属・職名

派遣者名

派遣・受入先

(国・都市・機関) 派遣期間 用務・目的等

神 戸 大 学 ・ 講

師・森田圭紀

中国・青島・

青島大学

2015/06/19-

2015/06/21

海外拠点である青島大学との共同研究

の進展を図る。

滋賀医科大学・

センター長・久

津見弘

中国・青島・

青島大学

2015/06/19-

2015/06/21

海外拠点である青島大学との共同研究

の進展を図る。

神戸大学・特命

教授・梅垣英次

中国・青島・

青島大学

2015/06/19-

2015/06/21

海外拠点である青島大学との共同研究

の進展を図る。

(2)全期間にわたる実施状況概要

平成 25 年度は神戸大学・東健教授、東京大学・畠山昌則教授、京都大学・千葉勉教授の 3

名が 7 月 24 日~7 月 26 日にシンガポール国立大学で行われた学会”The 6th Annual

Scientific Meeting of the Singapore Gastric Cancer Consortium”に出席し、胃癌に関

する研究内容を発表した。

平成 26 年度は神戸大学・東健教授、同大学・森田圭紀講師の 2 名が 6 月 20 日~6 月 22 日

に中国側拠点機関である青島大学にて研究課題に関するセミナーに参加し、研究成果の発

表を行った。

平成 27年度は神戸大学・森田圭紀講師、同大学・梅垣英次特命教授、滋賀医科大学・久津

見弘センター長が 6 月 19 日~6 月 21 日に中国側拠点機関である青島大学にて The

Conference of Qingdao Digestive Disease in 2015 & The 4th China-Japan Forum on

Endoscopyに参加し、同大学との共同研究の進展を図った。

7-4 中間評価の指摘事項等を踏まえた対応

※中間評価の指摘事項等を踏まえ、交流計画等に反映させた場合、その対応について記載

してください。

「参加各国の研究者にも、アジアにおけるピロリ菌感染率と胃がん死亡率の乖離

“Asian enigma”を解明し、アジアにおける胃がん予防対策を構築するという、本課題

の最終ゴールをよく理解してもらい、諸外国の研究者を巻き込んだピロリ菌と胃がんに

関する幅広い疫学研究、臨床研究が必要である。」という中間評価の指摘を踏まえ、平

成 26年度からスタートしたオーダーメイドの胃がん予防対策法をもとにした前向きコホー

ト調査を今年度データー整理するとともに、2年目の調査を進めた。平成 26年度に健診受

診者を対象に 8910名が前向きコホート調査にエントリーされた。本研究では上部消化管内

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視鏡検査を施行した健診受診者を対象として、ピロリ菌感染とピロリ菌の CagAの分子型を

チェック、質問票で、喫煙、飲酒等の生活習慣をチェックし、除菌治療の履歴も確認した。

今後、この母集団を毎年追跡調査し、胃がん発症などを確認していく。また、同じく中国

においても青島大学が中心となって、ピロリ菌感染と胃発がんに対する前向きコホート調

査が平成 27 年度から開始された。

また、中国の協力機関の協力研究者 Hu教授が、平成 26年 8月 8日~10日と平成 27年 8

月 21~23日の 2回にわたり中国ヘリコバクター学会を主催し、東は学会に招待され、ヘリ

コバクターピロリ感染と胃がんについての特別講演をするとともに、本事業におけるヘリ

コバクターピロリ感染及び胃がん予防研究教育拠点形成について学会参加者に広く周知す

ることが出来、また、東は日本ヘリコバクター学会の理事であり、中国ヘリコバクター学

会理事長の Hu教授と、日中のヘリコバクター学会と連携して、継続的研究協力体制構築に

ついて意見交換することが出来た。

また、日本と韓国は双方のヘリコバクター学会で毎年ジョイントシンポジウムを開催する

など密な連携を取っており、韓国拠点コーディネーターである Hahm教授と、今後の学会と

連携して、継続的研究協力体制を構築することを確認した。

今年度は、上記学会等で諸外国の研究者との交流により、ピロリ菌と胃がんに関する幅

広い疫学研究、臨床研究への展開へと進展してきている。

最終年度に日本側拠点コーディネーター東が第 21回日本ヘリコバクター学会を主催したこ

ともあり、韓国及び中国のヘリコバクター学会と日本のヘリコバクター学会の連携も強化

され、本事業におけるアジアのヘリコバクターピロリ感染及び胃がん予防研究教育拠点は

確固たるものになった。さらに、最終年度に本事業における海外拠点の1つである St.

Luke’s Medical Center に国際先進消化器内視鏡センターが設立され、海外中核拠点が形

成され、消化器がん診断・治療研究教育センターを設置することが出来た。フィリピンは

ASEAN諸国の中心的位置にあり、アジア最大の英語圏である。当センターの設置により本事

業のネットワーク構築の継続が可能になり、さらに、世界に広く情報発信が出来る体制が

構築された。

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8.研究交流実績総人数・人日数

8-1 平成27年度の相手国との交流実績

日本 中国 韓国 ベトナム フィリピン タイ アメリカ

(日本側) 合計

日本 7/46

(1/4)

0/0

(1/3)

0/0

(0/0)

3/13

(10/122)

0/0

(0/0)

2/12

(0/0)

12/71

(12/129)

中国 1/3

(1/3)

1/3

(1/3)

韓国 1/2

(0/0)

1/2

(0/0)

ベトナム 2/6

(0/0)

2/6

(0/0)

フィリピン 0/0

(3/42)

0/0

(3/42)

タイ 0/0

(0/0)

0/0

(0/0)

シンガポール

(日本側)

1/11

(0/0)

1/11

(0/0)

イギリス

(日本側)

1/3

(0/0)

1/3

(0/0)

合計 6/25

(4/45)

7/46

(1/4)

0/0

(1/3)

0/0

(0/0)

3/13

(10/122)

0/0

(0/0)

2/12

(0/0)

18/96

(16/174)

※各国別に、研究者交流・共同研究・セミナーにて交流した人数・人日数を記載してくだ

さい。(なお、記入の仕方の詳細については「記入上の注意」を参考にしてください。)

※日本側予算によらない交流についても、カッコ書きで記入してください。(合計欄は( )

をのぞいた人数・人日数としてください。)

8-2 平成27年度の国内での交流実績

30/ 65 ( ) 3/ 8 ( ) 1/ 5 ( ) 3/ 5 ( ) 37/ 83 ( 0/ 0 )

41 2 3 合計

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8-3 全期間にわたる派遣・受入人数

年度 平成 23年度 平成 24年度 平成 25年度 平成 26年度 平成 27年度

派 遣 人 数

(人)

9

(5)

10

(3)

12 7 12

(12)

受 入 人 数

(人)

25

(2)

28

(3)

19

(6)

21

(14)

6

(4)

※各年度の年次報告書9-1(H25、26年度分は8-1)(各年度の相手国との交流実績表)

の人数を転記してください。相手国側マッチングファンド等日本側予算によらない交流に

ついては( )で記載してください。

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9.経費使用総額

9―1 平成27年度経費使用額

(単位 円)

経費内訳 金額 備考

国内旅費 1,231,140

外国旅費 2,975,300

謝金 385,150

備品・消耗品購入費

99,502

その他の経費 3,165,372

外国旅費・謝金等に係る消費税

243,536

計 8,100,000研究交流経費配分額以内であること。

810,000

研究交流経費の10%を上限とし、必要な額であること。また、消費税額は内額とする。

8,910,000

国内旅費、外国旅費の合計は、研究交流経費の50%以上であること。

研究交流経費

合  計

業務委託手数料

9―2 全期間にわたる経費使用額 (単位 千円)

平成23年度 平成24年度 平成25年度 平成26年度 平成27年度

国内旅費 4,280 2,963 3,308 1,692 1,231

外国旅費 722 2,013 2,519 2,928 2,975

謝金 145 185 0 422 385

備品・消耗品購入費 2,829 636 1,777 47 100

その他の経費 1,727 3,102 1,216 3,308 3,165

外国旅費・謝金等に係る消費税

17 101 130 243 244

合計 9,720 9,000 8,950 8,640 8,100

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※各年度の年次報告書11(H23)、10(H24)、9(H25、26)(各年度の経費使用額)を

千円単位にして転記してください。

10.相手国マッチングファンド使用額

10-1平成 27年度使用額

相手国名 経費負担区分

平成27年度使用額

現地通貨額[現地通

貨単位] 日本円換算額

中国 パターン2

[ 145,069元 ]

2,513,000円相当

韓国 パターン2

[620,609.60ウォン]

60,000 円相当

ベトナム パターン2 [ 47,604.613ドン ] 240,000 円相当

フィリピン パターン2 [ 250,000ペソ ] 606,000 円相当

タイ パターン2 [ 0 ] 0円相当

※交流実施期間中に、相手国が本事業のために使用したマッチングファンドの金額につい

て、現地通貨での金額、及び日本円換算額を記入してください。

※経費負担区分

パターン1:日本側研究者の経費は振興会が、相手国側研究者の経費は相手国側学術振興機関等が負担。

パターン2:派遣国が派遣にかかる費用を負担し、受入国が受入にかかる滞在費等を負担。

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10-2 全期間にわたる相手国のマッチングファンドの状況概要

相手国名 経費負担区分

全期間にわたる使用額

現地通貨額[現地通

貨単位] 日本円換算額

中国 パターン2

[1,177,011元 ]

16,945,000円相

韓国 パターン2 [27,065,729 ウォン]

[ 3000 USD ]

2,976,000円相当

ベトナム パターン2 [655,895,293ドン] 2,664,000円相当

フィリピン パターン2 [ 2,258,120ペソ ] 5,412,864円相当

タイ パターン2 [1,620,960バーツ] 4,704,000円相当