研究推進機構希少糖研究センターの紹介 for mass...希少糖生産の流れ...

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研究推進機構 希少糖研究センターの紹介 D-グルシトール L-グリトール D-グリトール L-グルシトール L-タリトール L-アルトリトール D-タリトール D-アルトリトール L-グロース D-グルコース L-マンニトール D-イディトール D-マンニトール L-イディトール D-ソルボース L-タガトース D-タガトース D-プシコース アリトール ガラクチトール D-ガラクトース D-アロース L-プシコース L-ガラクトース L-イドース D-マンノース D-イドース Lの領域 DLの領域 Dの領域 D-アルトロース D-タロース L-グルコース D-グロース L-マンノース L-フラクトース L-アロース L-アルトロース L-タロース 入口1 入口3 入口2 入口4 イズモリング (ヘキソース) D-タガトース 3-エピメラーゼ ケトース ケトース アルドースイソメラーゼ アルドース ケトース オキシドリダクターゼ ポリオール ケトース アルドース ポリオール アルドースリダクターゼ L型とD型の点対称焦点 D型からL型への入り口 D-フラクトース L-ソルボース “希少糖”とは自然界にほとんど存在しない単糖です。地球上 には非常に多くの糖質がありますが、そのほとんどは植物が太 陽光線を受け光合成によってできるデンプンです。デンプンは単 糖であるD-グルコース(ブドウ糖)の集合体で、ヒトはデンプンな どの糖質を食べエネルギーに変えて生命維持をしています。そ D-グルコースの構造が少しずつ異なってできているのが希少 糖で、その仲間は約50種類ほどあります。単糖はD-グルコース などのようにエネルギー源としてしか利用されていないと言われ、 希少糖自体の価格も非常に高価なものであったため研究がなさ れていませんでした。しかし私たちはこれまでに希少糖は甘み があるがカロリーがほとんど無く、また一部の希少糖にはヒトに 生理活性作用(体に良い効果をもたらす作用)があることが分 かってきました。私たちは全種類の希少糖をたくさん、そしてより 安価に作ることによって食品や医薬品などに広く利用されるよう にしたいという夢をもって研究しています。 希少糖は、アルデヒド基をもつアルドース、ケトン基をもつケ トース、アルコールをもつ糖アルコールの3種類に分類されます。 図1のイズモリングは希少糖を作る設計図で、アルドースは赤、 ケトースは青、糖アルコールは黄色で示してあります。希少糖を 作る上で欠かせないのが微生物が作る酵素です。各単糖と単糖 とを結んでいる線は、相互を原料として酵素反応により得ること ができることを意味しています。下の図は、D-グルコースと同じ 炭素数6の設計図を示したイズモリングです。 希少糖の原料は太陽光線が源であり、 主にデンプンの形となりエネルギーを蓄える。 デンプンを分解すると多くのブドウ糖が得られる。 ちなみにブドウ糖は地球上で最も多い単糖である。 エネルギーの流れ 光合成 エネルギーの蓄 エネルギーの蓄 でんぷん セルロース ショ糖(砂糖) 分解 二酸化炭素 二酸化炭素 食糧・飼料 乳糖 砂糖の結晶写真 希少糖D-アロースの結晶写真 希少糖D-プシコースの結晶写真 地球上の単糖の 存在比を示して いる。 KAGAWA UNIVERSITY

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Page 1: 研究推進機構希少糖研究センターの紹介 for mass...希少糖生産の流れ 希少糖の生産工程は、大きく分けて5工程から成り立っています。まずは

研究推進機構希少糖研究センターの紹介

D-グルシトールL-グリトール

D-グリトールL-グルシトール

L-タリトールL-アルトリトール

D-タリトールD-アルトリトール

L-グロース D-グルコース

L-マンニトール D-イディトール

D-マンニトールL-イディトール

D-ソルボース

L-タガトース

D-タガトース

D-プシコース

アリトール

ガラクチトール

D-ガラクトース

D-アロース

L-プシコース

L-ガラクトース

L-イドース D-マンノース

D-イドース

Lの領域 DLの領域 Dの領域

D-アルトロース

D-タロース

L-グルコース D-グロース

L-マンノース

L-フラクトースL-アロース

L-アルトロース

L-タロース

入口1

入口3

入口2

入口4

イズモリング(ヘキソース)

D-タガトース 3-エピメラーゼ

ケトース ケトース

アルドースイソメラーゼ

アルドースケトース

オキシドリダクターゼ

ポリオールケトース

アルドースポリオール

アルドースリダクターゼ

L型とD型の点対称焦点

D型からL型への入り口

D-フラクトースL-ソルボース

“希少糖”とは自然界にほとんど存在しない単糖です。地球上

には非常に多くの糖質がありますが、そのほとんどは植物が太

陽光線を受け光合成によってできるデンプンです。デンプンは単

糖であるD-グルコース(ブドウ糖)の集合体で、ヒトはデンプンな

どの糖質を食べエネルギーに変えて生命維持をしています。そ

のD-グルコースの構造が少しずつ異なってできているのが希少

糖で、その仲間は約50種類ほどあります。単糖はD-グルコース

などのようにエネルギー源としてしか利用されていないと言われ、

希少糖自体の価格も非常に高価なものであったため研究がなさ

れていませんでした。しかし私たちはこれまでに希少糖は甘み

があるがカロリーがほとんど無く、また一部の希少糖にはヒトに

生理活性作用(体に良い効果をもたらす作用)があることが分

かってきました。私たちは全種類の希少糖をたくさん、そしてより

安価に作ることによって食品や医薬品などに広く利用されるよう

にしたいという夢をもって研究しています。

希少糖は、アルデヒド基をもつアルドース、ケトン基をもつケ

トース、アルコールをもつ糖アルコールの3種類に分類されます。

図1のイズモリングは希少糖を作る設計図で、アルドースは赤、

ケトースは青、糖アルコールは黄色で示してあります。希少糖を

作る上で欠かせないのが微生物が作る酵素です。各単糖と単糖

とを結んでいる線は、相互を原料として酵素反応により得ること

ができることを意味しています。下の図は、D-グルコースと同じ

炭素数6の設計図を示したイズモリングです。

希少糖の原料は太陽光線が源であり、主にデンプンの形となりエネルギーを蓄える。デンプンを分解すると多くのブドウ糖が得られる。ちなみにブドウ糖は地球上で最も多い単糖である。

エネルギーの流れ

光合成

エネルギーの蓄積

エネルギーの蓄積

でんぷん

セルロース

ショ糖(砂糖)

分解二酸化炭素

二酸化炭素 水 食糧・飼料

乳糖

砂糖の結晶写真

希少糖D-アロースの結晶写真

希少糖D-プシコースの結晶写真

地球上の単糖の存在比を示している。

K A G A W AUNIVERSITY

Page 2: 研究推進機構希少糖研究センターの紹介 for mass...希少糖生産の流れ 希少糖の生産工程は、大きく分けて5工程から成り立っています。まずは

希少糖生産の流れ希少糖の生産工程は、大きく分けて5工程から成り立っています。まずは

微生物が作る酵素を利用しますから、微生物をたくさん培養して同時に酵素

を生産させることから始めます。次に微生物から酵素を抽出し、特殊な樹脂

に酵素を結合させバイオリアクターを作製し、希少糖の原料を注ぐことでリア

クター内部で希少糖に変換させます。酵素反応は平衡反応なので、得られ

た酵素反応液中には原料も残っています。そこで純度の高い希少糖を得る

ために2者の分離を行い、続いて濃縮し最後には砂糖のような結晶にします。

希少糖約50種類を作るために様々な酵素を用いますが、基本的には同じ

工程で全種類が生産できます。私たちは、より安全で安価に希少糖が生産

できるように、研究を展開しています。希少糖生産に関することはあらゆるこ

とを研究していますが、例えばより活性の高い酵素を生産する微生物の探

索、酵素反応およびバイオリアクターの効率化、希少糖の分離条件、結晶化

などが挙げられます。特に興味深いのは、微生物が作る酵素の性質を解明

することです。微生物にはどんな物質でも代謝すると言われるほど、非常に

珍しい酵素をたくさんつくります。その酵素を我々人類が利用しているわけで

すが、今までに発見されていない酵素とその機能を見つけることは非常に興

味深いことです。

希少糖生産工程概要図

斜面培地 前培養(液体培地)

大量培養

2

0

0

3

0

0

2

0

0

微生物の培養と酵素生産

希少糖の分離

擬似移動クロマト分離装置

濃縮遠心式薄膜真空蒸発装置

エバポレーター遠心分離装置

結晶化装置

結晶化

結晶

微生物回収

酵素調製

酵素調製と酵素反応

バイオリアクター原料

酵素反応液

希少糖の結晶化 希少糖への転換反応

エバポール大量の希少糖液を短時間で濃縮する

超音波破砕機微生物を破壊し酵素を取り出す

微生物の培養と酵素生産糖液の濃縮 希少糖の分離

生物反応器固定化酵素を用いて糖の転換反応を行う

高速冷却遠心分離装置微生物の回収、酵素と微生物の

分離に使用する

オートクレーブ培地等を高温高圧で殺菌する

微生物培養装置酵素を生産する微生物を大量に培養する

エバポレーター希少糖の水溶液を減圧下で濃縮する

水素添加装置糖を加圧条件化で水素によって還元する

擬似移動クロマト分離装置二種が混在した希少糖を連続的に分離する

ワンパス分離装置複数の希少糖が混合した液を分離する

結晶化装置濃縮した希少糖液から希少糖を結晶化させる

結晶分離装置結晶化後の液を遠心分離により蜜と分離し結晶を得る

希少糖生産ステーションの内部と希少糖生産の工程説明

固定化酵素の調製

シロップ

KAGAWAUNIVERSITY