練習問題解答集 - chiba u制御理論 練習問題解答集 1.3...
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制御理論ゼミ練習問題解答集
システム設計研究室
制御理論 練習問題解答集
1 線形システムの表現
1.1 図 1.1に示す直列 LCR回路の状態方程式と出力方程式
を求めよ.ただし、出力はコンデンサCの電圧 yとする.
図 1.1: 直列 LCR回路
[解答]
回路方程式より
u = Li+Ri+ y (1.1)
ただし、コンデンサにたまる電荷を Qとすると、Q = Cyな
ので
i = Cy (1.2)
となる.また式 (1.1)も変形する.
i =1
Lu− R
Li− 1
Ly (1.3)
ここで、状態 xを
x =
[y
i
](1.4)
とすると,状態方程式
x =
[0 1
L
− 1L −R
L
]x+
[01L
]u (1.5)
と、出力方程式
y =[1 0
]x (1.6)
が求まる.
1.2 図 1.2に示す演算増幅器回路において,増幅倍数が十分
に大きいため,演算増幅器内部を流れる電流および電
圧 v はすべて 0と考えてよい.出力 y を演算増幅器の
出力電圧とする.その状態方程式を求め,この回路が積
分器の役割を果たすことを示せ.
図 1.2: 積分回路
[解答]
u = Ri (1.7)
−y = − 1
C
∫idt (1.8)
y = − 1
RC
∫udt (1.9)
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1.3 図 1.3の機械システムについて,その状態方程式を導け.
ただし,M1 の変位を y1、M2 の変位を y2 とし,質量と
地面の摩擦は無視する.
1M 2
M1K
2K D
u
1y
2y
図 1.3: マス・バネ系
[解答]
質量M1 とM2 に加わる力は下図のようになる.
u
1M
)( 211 yyK −
)( 21 yyD && −
2M
)( 211 yyK −
)( 21 yyD && −
22 yK
図 1.4: 各質量に加わる力
図よりM1 とM2 の運動方程式は以下のようになる.
M1 : M1y1 = u+ (y2 − y1)K1 + (y2 − y1)D
(1.10)
M2 : M2y2 = (y1 − y2)K1 −K2y2 + (y1 − y2)D
(1.11)
状態変数を[x1 x2 x3 x4
]T=[y1 y1 y2 y2
]T(1.12)
とすると,
x1 = x2 (1.13)
x2 = −K1
M1x1 −
D
M1x2 +
K1
M1x3 +
D
M1x4 +
1
M1u
(1.14)
x3 = x4 (1.15)
x4 =K1
M2x1 +
D
M2x2 −
(K1 +K2)
M2x3 −
D
M2x4 (1.16)
これを行列形式にまとめてx1
x2
x3
x4
=
0 1 0 0
−K1
M1− D
M1
K1
M1
DM1
0 0 0 1K1
M2
DM2
− (K1+K2)M2
− DM2
x1
x2
x3
x4
+01M
0
0
u
(1.17)
1.4 図 1.5に示す簡略化した飛行機のモデルを考える.座標
原点は重心 P である.巡航速度 v0,巡航高度 h0 のも
とでの平衡状態は θ0, u0である.また,平衡状態から
のピッチ角偏差をθ,昇降舵角偏差を u,高度偏差を
hとする.これらの偏差が十分に小さいとき,図示する
揚力は f1 = k1u,f2 = k2θで与えられる.飛行機の
質量は m,重心周りの慣性モーメントは J,空力減衰
によるトルクは bθである.本システムの上下運動と回
転運動の運動方程式を求めてから,θ ≈ 0のときの u
から hまでの線形近似状態方程式と伝達関数を求めよ.
図 1.5: 飛行機の高度制御
[解答]
上下運動の運動方程式は以下のようになる.
mh = f2 − f1
= k2θ− k1u (1.18)
また,重心周りの回転運動の方程式は
Jθ = (l1 + l2)f1 − l1f2 − bθ
= (l1 + l2)k1u− l1k2θ− bθ (1.19)
となる.ここで,
x =
h
θ
h
θ
(1.20)
とおくと,このシステムの状態方程式は
x =
0 0 1 0
0 0 0 1
0 k2
m 0 0
0 − l2k1
J 0 − bJ
x+
0
0
−k1
m(l1+l2)k1
J
u
(1.21)
と求まる.次に (2)式をラプラス変換する.なお,以下では
問題より θ ≈ 0,線形近似より h0 = h0 = θ0 =
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θ0 = 0を用いる.
0 = (l1 + l2)k1u(s)− l1k2θ(s)− bsθ(s)
θ(s) =(l1 + l2)k1l1k2 + bs
u(s) (1.22)
また (1)式をラプラス変換すると以下のようになる.
ms2h(s) = k2θ(s)− k1u(s) (1.23)
この式に先程求めた θ(s)((5)式)を代入すると
ms2h(s) =(l1 + l2)k1k2l1k2 + bs
− k1u(s)
=l2k1k2 − bk1s
l1k2 + bsu(s) (1.24)
となり,これよりこのシステムの伝達関数は以下のように求
まる.
h(s)
u(s)=
l2k1k2 − bk1s
ms2(l1k2 + bs)(1.25)
となる.
1.5 図 1.6に示すのは月面に軟着陸する月面探査機のモデル
である.探査機の質量をmとすると,スラスタの推力
は f = kmである.入力を u = m,探査機の高度を yと
する.月表面の重力定数を gとし,このシステムの状
態 (y, y,m)に関する状態方程式を導出せよ.
図 1.6: 月面探査機
[解答]
まず,探査機に関する運動方程式をたてると,
d(mv)
dt = f −mg (1.26)
= km−mg (1.27)
これより
mv +mv = km−mg (1.28)
となる.x = (y, y,m) = (x1, x2, x3)とすると,
ux2 + x3x2 = ku− x3g (1.29)
より,
x1 = x2 (1.30)
x2 = −g +k − x2
x3u (1.31)
x3 = u (1.32)
となる.
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1.6 図 1.7に示す 2重振子の運動方程式を求めよ.ただし,
棒の質量を無視し,角度が十分に小さくばねが常に水
平であるとする.棒の長さは l[m]で,バネは棒の下か
ら 1/3のところに取り付けられる.
図 1.7: 2重振子
[解答]
振子の慣性モーメントをml2[kgf・m2]として,運動方程式
をたてると,
ml2θ1 =2
3l
(2
3l sin θ2 −
2
3l sin θ1
)k cos θ1 −mgl sin θ1
(1.33)
ml2θ2 = −2
3l
(2
3l sin θ2 −
2
3l sin θ1
)k cos θ2 −mglsinθ2
(1.34)
となる.これをまとめて,
ml2θ1 =
(2
3l
)2
k (sin θ2 − sin θ1) cos θ1 −mglsinθ1
(1.35)
ml2θ2 = −(2
3l
)2
k (sin θ2 − sin θ1) cos θ2 −mglsinθ2
(1.36)
となる.
1.7 図 1.8は磁気浮上システムを表している.鉄球と電磁石
間の隙間を xとする.電磁石に電流 iiを流すとき,鉄
球に電磁吸引力 f = ki2/x2[N] が働く.ただし,kは定
数である.鉄球の質量をm[kg] とする.
(a) 運動方程式を立てよ.
(b) 平衡点 (x0, x0, i0)を求め,x0と i0の関係の物理的意味
を吟味せよ.さらに,平衡点まわりの線形近似状態方程
式を求めよ.(ヒント:2変数関数の一次 Taylor展開は
f(x+∆x, y +∆y) = f(x, y) + ∂f∂x
∣∣∣(x,y)
∆x+ ∂f∂y
∣∣∣∣(x,y)
∆y で
与えられる)
図 1.8: 磁気浮上系
[解答]
(a) 鉄球に作用する力の釣り合いより次式が得られる.
mx = f −mg (1.37)
この式は,鉄球の上下運動によって発生する空気の粘性抵抗
力は十分に小さいものとして無視している.また,電磁吸引
力 f = ki2/x2 を代入して,
mx = ki2
x2−mg (1.38)
と求まった.
(b) 平衡点では,x0 = 0, x0 = 0なので,
0 = ki20x20
−mg
⇒ i0 =
√mg
kx0 (1.39)
これは,電磁吸引力と重力が釣り合う変位 x0 を長くすると
き,必要な電流はこれに比例して増加することを意味する.
つぎに,平衡点まわりの線形近似状態方程式を求める.電
磁吸引力の式 (f = ki2/x2)を平衡点における電磁吸引力のに
書き換えた式を以下に示す.
f(x0, i0) = ki20x20
(1.40)
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ヒントの 2変数関数の一次 Taylor展開を用いて,
f(x, i) ≈ f(x0, i0) +∂f0∂x0
∣∣∣∣(x0,y0)
∆x+∂f0∂i0
∣∣∣∣(x0,i0)
∆i
= f(x0, i0)− ki0x30
∆x+ 2ki0x20
∆i (1.41)
ここで,∆x,∆iは平衡点からのずれ∆x = x−x0,∆i = i− i0
であり,式 (1.40)を用いて i0 を消すと,
f(x, i) ≈ f(x0, i0)−2mg
x0∆x+
2√mgk
x0∆i (1.42)
となり,平衡点近傍の運動方程式が求まった.また,∆x =
x,∆x = x及び,f(x0, i0) = mgに注目すると,
m∆x = mx = f(x, i)−mg
= f(x, i)− f(x0, i0)
= −2mg
x0∆x+
2√mgk
x0∆i (式 (1.41)より)
⇒ ∆x = −2g
x0∆x+
2√gk/m
x0∆i (1.43)
これより,状態方程式は,[∆x
∆x
]=
[0 1
− 2gx0
0
][∆x
∆x
]+
[0
2√
gk/m
x0
]∆i0 (1.44)
∆x = x1,∆x = x2,∆i0 = uと置き換えて,[x1
x2
]=
[0 1
− 2gx0
0
][x1
x2
]+
[0
2√
gk/m
x0
]u (1.45)
となる.
1.8 図 1.9 に示しているのはマイクロフォンの簡略化モデ
ルである.このシステムは一対のキャパシタ極板を電
気回路とつなぐことで構成される.極板 aはマイクロ
フォンの枠に固定されるが,極板 bはバネK とダンパ
Dを通して枠につなぐ.音波が極板 bに力 f(t)を加え
る.極板の表面積は A,極板間の距離が xで,材料の
誘電率が ϵであるとき,極板間のキャパシタンス C(x)
は C(x) = ϵA/x で与えられる.また,電荷 qと極板間
電圧 eの関係は q = C(x)eであり,電界は極板 bに抵
抗力 fe = q2/(2ϵA)を加える.
(a) 運動方程式を立てよ.
(b) 平衡点及び平衡点近傍の線形近似モデルを求めよ.
(c) 線形近似から状態方程式を導け.
図 1.9: マイクロフォン
[解答]
極板間のキャパシタンス C(x) = ϵAx ,電荷 q = C(x)e を
使って,極板 bに加わる抵抗力 fe は
fe =q2
2ϵA=
C2(x)e2
2ϵA=
ϵ2A2
x2 e2
2ϵA=
ϵAe2
2x2
fe =ϵA
2
e2
x2(1.46)
(a) 運動方程式:極板 bについては (1.46)式を使って
Mx = f −Kx−Dx− fe =
= f −Kx−Dx− ϵA
2
e2
x2(1.47)
回路方程式:
v(t) = Rq + Lq + e = Rq + Lq +q
C(x)=
= Lq +Rq +x
ϵAq (1.48)
電荷 qは q = C(x)e = ϵAx eであるので,電流 i(t)は微分して
i =dq
dt=
d
dt
(ϵAe
x
)= ϵA
ex− ex
x2(1.49)
(b) 状態 z = [x x i e]を選ぶ.
平衡点:f = 0 = f0,状態の導関数 z = 0として平衡点を求
める.diodt = 0より,
v = Ldiodt
+Rio + eo = Ri0 + e0 (1.50)
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また,e0 = x0 = x0 = 0であることを考えて,(1.49)式は
i0 = q0 = ϵAe0x− ex0
x20
= 0 => i0 = 0 (1.51)
(1.51)式を (1.50)式に代入して,電圧 eの平衡点は
e0 = v (1.52)
平衡点において運動方程式は (1.46)式の抵抗力を使って
Mx0 = 0 = f0 −Kx0 −Dx0 − fe0 =
= 0−Kx0 − 0− ϵA
2
e20x20
=
= −Kx0 −ϵA
2
e20x20
(1.53)
(1.53)式より x0 を求めることができる.
Kx0 = −− ϵA
2
e20x20
より x30 = −ϵAe20
2K
(1.52)式で与えられる電圧の平衡点 e0 = vを代入すると,
x0 = −(ϵAv2
2K
) 13
(1.54)
よって,平衡点は f0 = 0で,
i0 = 0 , e0 = v , x0 = −(ϵAv2
2K
) 13
, x0 = 0 (1.55)
になる.平衡点近傍において
回路方程式:
v = Ri+ Ldi
dt+ e = Ri+ L
di
dt+ (e0 +∆e)
v = Ri+ Ldi
dt+ (v +∆e)
0 = Ri+ Ldi
dt+∆e
Ldi
dt= −Ri−∆e (1.56)
運動方程式:
Mx = f −Kx−Dx− ϵA
2
e2
x2
M∆x = f −Kx−D∆x− ϵA
2
e2
x2
M∆x = f −K∆x−Kx0 −D∆x− ϵA
2
e2
x2(1.57)
(1.57)式の第4項の e2
x2 を (x0, e0)のまわりで Taylor展開を
する.g(x, e) = e2
x2 とおいて,
e2
x2= g(x0 +∆x , e0 +∆e) ≃
≃ g(x0 , e0) +∂g
∂x
∣∣∣∣(x0,e0)
∆x+∂g
∂e
∣∣∣∣(x0,e0)
∆e =
=e20x20
+
(−2
e2
x3
)∣∣∣∣(x0,e0)
∆x+(2e
x2
)∣∣∣(x0,e0)
∆e =
=e20x20
− 2e20x30
∆x+ 2e0x20
∆e =
=v2
x20
− 2v2
x30
∆x+ 2v
x20
∆e (1.58)
Taylor展開した式を運動方程式 (1.57)式に代入すると,
M∆x = f −K∆x−Kx0 −D∆x−
− ϵA
2
v2
x20
− 2v2
x30
∆x+ 2v
x20
∆e
(1.59)
カッコ .の中の第1項と第2項の x0に平衡点 (1.55)式を代
入して,(1.59)式を変形していくと最終的には以下の式が得
られる.ここでは途中計算を省略する.
M∆x = f − 3K∆x−D∆x− ϵAv
x20
∆e (1.60)
また,(a)で求めた電流 i(t)の式,すなわち (1.49)式は平衡
点 (x0, e0)の近傍において e0 = x0 = 0,e0 = vであるので,
これらを代入して線形近似ができる.
i = ϵAex0 − e0x
x20
≃ ϵA(e0 +∆e)x0 − e0(x0 +∆x)
x20
i = ϵA∆ex0 − e0∆x
x20
= ϵAx0∆e− v∆x
x20
(1.61)
(1.61)式を∆eに関する式に書き換えると,
∆e =v
x0∆x+
x0
ϵAi (1.62)
になる.
(c) 状態を新たに z = [∆x∆x, i,∆e]とおき,(1.56),(1.60),
(1.62)式を用いて,状態方程式を立てる.
z1 については,明らかに
z1 = ∆x = z2 (1.63)
z2 について,(1.60)式より
z2 = ∆x =1
Mf − 3K
M∆x− D
M∆x− ϵAv
Mx20
∆e
z2 = −3K
Mz1 −
D
Mz2 −
ϵAv
Mx20
z4 +1
Mf (1.64)
z3 について,(1.56)式より
z3 =di
dt= −R
Li− 1
L∆e
z3 = −R
Lz3 −
1
Lz4 (1.65)
z4 について,(1.62)式より
z4 = ∆e =v
x0∆x+
x0
ϵAi
z4 =v
x0z2 +
x0
ϵAz3 (1.66)
(1.63)~(1.66)式をまとめて,状態方程式が得られる.z1
z2
z3
z4
=
0 1 0 0
− 3KM − D
M 0 − ϵAvMx2
0
0 0 −RL − 1
L
0 vx0
x0
ϵA 0
z1
z2
z3
z4
+
01M
0
0
f
つまり,状態方程式は
z =
0 1 0 0
−3KM − D
M 0 − ϵAvMx2
0
0 0 −RL − 1
L
0 vx0
x0
ϵA 0
z +
01M
0
0
f (1.67)
となる.
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2 線形システムの構造解析
2.1
[解答]
2.2 以下で与えられる線形システムの単位ステップ出力応
答を求めよ.ただし,x(0) = 0である.
x =
[0 1
−2 −2
]x+
[1
1
]u , y =
[1 2
]x
[解答]
状態方程式および出力方程式が,
x(t) = Ax(t) +Bu(t)
y(t) = Cx(t) +Du(t)
で表せるとき,初期状態 x(0) = 0のもとでは,入出力間の伝
達行列は,
G(s) = C(sI −A)−1B +D
と表せる.よって,
G(s) =[1 2
] [s −1
2 s+ 2
]−1 [1
1
]
=3s− 1
s2 + 2s+ 2(2.1)
と求まる.入力は単位ステップ入力であるので,入出力の関
係式は,
y(s) = G(s)u(s) =3s− 1
s2 + 2s+ 2· 1s
(2.2)
となる.
上式を部分分数展開すると,
F (s) =3s− 1
s2 + 2s+ 2· 1s=
a
s+
bs+ c
s2 + 2s+ 2(2.3)
となり.aは次のように求められる.
a = sF (s)|s=0 =3s− 1
s2 + 2s+ 2
∣∣∣∣s=0
= −1
2
aを F (s)に代入し通分した後,分子の各項 (s2,s1,s0)の係
数を比較すると,b, cは次のように求まる.
b =1
2, c = 4
よって,
y(s) = −1
2· 1s+
1
2· s+ 8
s2 + 2s+ 2
= −1
2· 1s+
1
2· s+ 1
(s+ 1)2 + 1+
7
2· 1
(s+ 1)2 + 1
逆ラプラス変換し単位ステップ出力応答を求めると,
y(t) = −1
2+
1
2e−t cos t+
7
2e−t sin t , t ≥ 0 (2.4)
となる.
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2.3 次の線形システムに関する設問に答えよ.
x =
[0 1
−2 0
]x+
[0
1
]u , y =
[0 1
]x
(a) u → y の伝達関数およびその極を求め,インパルス応
答の特徴を述べよ.
(b) このシステムの可制御性,可観測性を吟味せよ.
[解答]
(a) この線形システムの伝達関数は,
G(s) = C(sI −A)−1B +D
=[0 1
] [ s −1
2 s
]−1 [0
1
]=
s
s2 + 2
となり,極は p1, p2 = ±√2iである.
この伝達関数のインパルス応答は,
Y (s) =s
s2 + 2× 1
したがって,
y(t) = cos√2it (t ≥ 0)
単位インパルス応答は単調振動する.
(b)可制御性を調べる.
C =[B AB
]=
[0 1
1 0
]
行フルランクなので可制御.
可観測性を調べる.
O =
[C
CA
]
=
[0 1
−2 0
]
列フルランクなので可観測.
2.4 次の線形システムに関する設問に答えよ.
x(t) =
[0 1
1 0
]x(t) +
[0
1
]u(t), y(t) =
[1 1
]x(t)
(a) x(0) = 0, u(t) ≡ 1, t ≥ 0の場合,まず状態 x(t)の
応答を Laplace変換で求め,それから出力 y(t)の応答を
求めなさい.また,この二つの応答の特徴を比較せよ.
(b) 可制御性と可観測性を判定せよ.そして,(a)項の 2つ
の応答の違いについてその理由を説明せよ.
(c) 入力 uから出力 yまでの伝達関数を求めよ.
[解答]
(a) まず x(t)の応答を求める.x(t)は,
x(t) = eAtx(0) +
∫ t
0
eA(t−τ)Bu(τ)dτ (2.5)
で求まる.ここで,
eAt = L−1[(sI −A)−1]
= L−1
[ s −1
−1 s
]−1
= L−1
[s
s2−11
s2−11
s2−1s
s2−1
]
= L−1
12
1s+1
+ 12
1s−1
−12
1s+1
+ 12
1s−1
−12
1s+1
+ 12
1s−1
12
1s+1
+ 12
1s−1
=
1
2
[e−t + et −e−t + et
−e−t + et e−t + et
](2.6)
なので,(2.5)式,(2.6)式および,初期条件より,
x(t) = 0 +1
2
∫ t
0
[e−(t−τ) + et−τ −e−(t−τ) + et−τ
−e−(t−τ) + et−τ e−(t−τ) + et−τ
] [01
]dτ
=1
2
∫ t
0
[−e−(t−τ) + et−τ
e−(t−τ) + et−τ
]dτ
=
[1
2
[−e−(t−τ) − et−τ
+e−(t−τ) − et−τ
]]t0
=1
2
[−2 + e−t + et
−e−t + et
](2.7)
が,求まった.続けて y(t)を求めると,
y(t) =1
2
[1 1
] [−2 + e−t + et
−e−t + et
]= et − 1 (2.8)
となる.
また,状態 x(t)のときに存在した e−tの項が,y(t)ではなく
なっている.
(b) 可制御行列
C =[B AB
]=
[0 1
1 0
](2.9)
9
制御理論 練習問題解答集
可観測行列
O =
[C
CA
]=
[1 1
1 1
](2.10)
より,C は行フルランクだが,O は列フルランクではない.
よって,可制御だが不可観測.
(a)でなくなった e−tの項をラプラス変換すると, 1s+1 となり
極 −1を持つことが分かる.この極を入出力から知ることが
できないため不可観測になっていると考えられる.
(c) 伝達関数 G(s)は,
G(s) =[1 1
] [ s −1
−1 s
]−1 [0
1
]
=[1 1
] [ ss2−1
1s2−1
1s2−1
ss2−1
][0
1
]
=s+ 1
s2 − 1
=s+ 1
(s+ 1)(s− 1)
=1
s− 1(2.11)
となる.極 −1が相殺されていることが確認できる.
2.5
[解答]
10
制御理論 練習問題解答集
2.6 次のシステム
x(t) =
[0 1
1 0
]x+
[0
1
]u, y =
[1, −1
]x
に対して対角変換を行い,対角変換したシステムのブロッ
ク線図に基づいて可制御性とか観測性を考察せよ.
[解答]
特性方程式
| A− λI | =λ 1
1 λ= λ2 − 1 = 0 (2.12)
より,固有値 λ=±1
対応する固有ベクトルは
λ = 1 :[1 1
]λ = −1 :
[1 −1
]対角変換行列 T は
T =
[1 1
1 −1
](2.13)
T−1 =1
−2
[−1 −1
−1 1
]=
1
2
[1 1
1 −1
](2.14)
状態を
z(t) = T−1x
と変換すると,変換後のシステムは[z
y
]=
[T−1AT T−1B
CT D
][z
u
]=
[A B
C D
][z
u
](2.15)
となる.
行列 A, B, C, Dを計算すると次のようになる.
A = T−1AT =
[λ1 0
0 λ2
]=
[1 0
0 −1
](2.16)
B = T−1B =1
2
[1 1
1 −1
]=
1
2
[1
−1
](2.17)
C = CT =[1 −1
] [1 1
1 −1
]=[0 2
](2.18)
D = D = 0 (2.19)
状態方程式と出力方程式は
z(t) = Az + Bu =
[1 0
0 −1
][z1
z2
]+
1
2
[1
−1
]u
=
[z1 +
12u
−z2 − 12u
]
y = Cz + Du =[0 2
] [z1z2
]+ 0 = 2z2 (2.20)
となり,図 2.1のようにブロック線図を書くことができる.
2
1
2
1−
s
1
s
1
u
u
y2z
1z
1z&
2z&
+
+
+
-
図 2.1: ブロック線図
z1と z2には uが入力されており,それぞれ動特性が異なる
ので可制御である.しかし、z1は出力に表れておらず,z2にも
影響しないので不可観測である.
11
制御理論 練習問題解答集
2.7 以下の二つのシステム
G1
x1 = ax1 + u1
y1 = x1
(2.21)
G2
x2 = ax2 + u2
y2 = 2x2
(2.22)
を u1 = u2 = u, y = y1 + y2 となるように結合させる.
(a) システムをブロック線図で表し,この結合の名称を述
べよ.
(b) x = [x1 x2]T とおき,システム全体の状態方程式と出力
方程式を書け.
(c) その可制御性と可観測性について調べよ.
(d) 得られた結論に対してその物理的理由を述べよ.
[解答]
(a)G1 は1
s−a と表され、G2 は2
s−a と表される.このシステ
ムをブロック線図で表すと図 2.2のようになる.
図 2.2: システムのブロック線図
この結合は並列結合である.
(b)x = [x1 x2]T とおくと
x =
(a 0
0 a
)x+
(1
1
)u, y =
(1 2
)x (2.23)
と求まる.
(c)まず可観測性については
C =(
B AB)=
(1 a
1 a
), rank(C) = 1 < 2
(2.24)
であり、フルランクではないため不可制御である.
また可観測性については
O =
(C
CA
)=
(1 2
a 2a
), rank(O) = 1 < 2
(2.25)
であり、フルランクではないため不可観測である.
(d)同じ動特性をもつシステムが並列に結合されているため
(c)のような結論が得られる.
2.8 二つのシステム
G1
x1 = −x1 + u1
y1 = x1
(2.26)
G2
x2 =
[0 1
−4 −4
]x2 +
[0
1
]u2
y2 =[1 1
]x2
(2.27)
を直列に結合する.システム全体の入力を u,出力を y
と書く.
(a) u1 = y2 のように結合したとき,u,yがどの信号になる
かを答えよ.更に全体のシステムが不可制御となること
を示せ.
(b) u2 = y1 のように結合したとき,u,yがどの信号になる
かを答えよ.更に全体のシステムが不可観測となること
を示せ.
(c) G1,G2 の伝達関数を求め,両者が直列したときに不可
制御不可観測となる原因を説明せよ.
[解答]
(a)u1 = y2 のように結合したとき,u = u2, y = y1 になる.
よって,全体の実現の係数行列は
A =
−1 0 0
0 0 1
1 −4 −4
, b =
001
, c =[1 0 0
]
になる.rank[A+I B]=2 < 3なので,不可制御となる.
(b)u2 = y1 のように結合したとき,u = u1, y = y2 になる.
よって,全体の実現の係数行列は
A =
−1 0 0
0 0 1
1 −4 −4
, b =
100
, c =[0 1 1
]
になる.
rank
[A+ I
C
]
=2< 3なので,不可観測となる.
(c)G1(s) =1
s+1 ,G2(s) =s+1
(s+2)2 なので,両者を直列接合させ
ると s = −1で極零相殺が起きる.相殺られた極は (a)の場合
では不可観測,(b)の場合では不可制御となる.
12
制御理論 練習問題解答集
2.9 次の係数行列で与えられるシステムについて考える.
A =
−1 0 0
0 0 1
1 −4 −4
, b =
001
, c =[0 1 1
]
(a) 可制御性と可観測性を調べよ.
(b) 不変零点と左零点方向を求めよ.左零点入力方向にどの
ような特徴があり,求まった不変零点にどのような性質
があるか.
[解答]
(a)可観測,不可制御.詳しくは 2.8の (a)に参考してくださ
い.
(b)
det
[A− sI B
C D
](2.28)
= −(z + 1) = 0
よって、z=-1.
左零点方向は,[ηT ν
]T=[1 −1 0 0
]T(2.29)
となる.左零点出力方向は ν = 0であり,
このとき η∗[A − zI b] = 0 が成り立つので,不変零点 z = −1
が不可制御モードに一致する.
2.10 次の係数行列で与えられるシステムについて考える.
A =
−1 0 0
0 0 1
1 −4 −4
, b =
100
, c =[0 1 1
]
(a) 可制御性と可観測性を調べよ.
(b) 不変零点と右零点方向を求めよ.右零点入力方向にどの
ような特徴があり,求まった不変零点にどのような性質
があるか.
[解答]
(a) 可制御行列 Cのランクを求めることにより,可制御・不可制御の判定を行う.
C =[b Ab A2b
]=
1 −1 1
0 0 1
0 1 −5
(2.30)
求めた C は行フルランクなので,このシステムは可制御である.
次に,可観測行列Oのランクを求めることにより,可観測・不可観測の判定を行う.
O =
c
cA
cA2
=
1 0 1
1 −4 −3
−4 12 8
(2.31)
求めたOのランクは 2であるため,このシステムは不可観測
である.
(b) システム行列 Q(s)は,
Q(s) =
[A− sI B
C D
]
=
−1 0 0
0 0 1
1 −4 −4
−
s 0 0
0 s 0
0 0 s
100
[0 1 1
] [0]
=
−1− s 0 0 1
0 −s 1 0
1 −4 −4− s 0
0 1 1 0
(2.32)
13
制御理論 練習問題解答集
となり,これを用いて不変零点 zは,
det (Q(z)) = det
−1− z 0 0 1
0 −z 1 0
1 −4 −4− z 0
0 1 1 0
= (−1)
∣∣∣∣∣∣∣0 −z 1
1 −4 −4− z
0 1 1
∣∣∣∣∣∣∣= (−1)(1 + z) = 0
⇒ z = −1 (2.33)
となる.次に右零点方向を求める.
Q(z)
[ξ
u
]= 0 (2.34)
上式より,0 0 0 1
0 1 1 0
1 −4 −3 0
0 1 1 0
ξ1
ξ2
ξ3
u
= 0
u = 0
ξ1 + ξ3 = 0
ξ1 − 4ξ2 − 3ξ3 = 0
ξ1 + ξ3 = 0
⇒ ξ1 = ξ2 = −ξ3 (2.35)
よって,右零点方向は,[ξT u
]T=[1 1 −1 0
]T(2.36)
となる.(2.36)式より,右零点出力方向は u = 0であり,こ
のとき[A − zI
c
]ξ = 0 が成り立つので,不変零点 z = −1が不
可観測モードに一致する.
2.11 行列A ∈ Rn×nの固有値がすべて相異なるとする.こ
のとき,伝達行列 C(sI − A)−1B は Aの右固有ベク
トル qi ∈ Rn と左固有ベクトル pi ∈ R1×n を使って,
C(sI −A)−1B =∑i
CqipiB
s− λi
と書けることを示せ.さらに,モード λi が可制御と
なるための必要十分条件は piB = 0であり,λi が可
観測となるための必要十分条件は Cqi = 0であること
を示せ.
[解答]
この問題を解くために教科書の付録 A練習問題 A.11を参
照する.定理 A.6も参照するが,必要な部分を途中計算で参
照していく.
——————————————————————————
定理 A.6(3):
正方行列 Aに対して,相異なる固有値 λ1, λ2,...,λk に関する
固有ベクトル u1,u2,...,uk が線形独立である.
——————————————————————————
練習問題A.11を参照するが,問題文は省略し,解答のみを示
す.
行列Aの固有値がすべて異なるとし,λi,qiをAqi = λiqiを
満たす固有値と右固有ベクトルとする.
(a) 定理 A.6(3) より q1, q2, ..., qn がすべて線形独立である.
よって,Q = [q1, q2, ..., qn]は正則となる.
(b)
Q−1AQ = diag λ1, λ2, ..., λn (2.37)
AQ = Qdiag λ1, λ2, ..., λn (2.38)
である.Qの逆行列 P = Q−1 を行ベクトル pi を用いて,
P = Q−1 := [pT1 , pT2 , ..., p
Tn ]
T (2.39)
のように分割できる.(2.38)式の左右から Q−1 をかけて,
Q−1AQQ−1 = Q−1Qdiag λ1, λ2, ..., λnQ−1 (2.40)
Q−1Q = QQ−1 = 1,また Q−1 = P を代入すると上式は,
Q−1A = diag λ1, λ2, ..., λnQ−1
PA = diag λ1, λ2, ..., λnP (2.41)
つまり,(2.41)式は piA = λipi である.
——————————————————————————
ここから本問題に戻って,解答をする.まず,(2.38)式の右
側から Q−1 をかけると,行列 Aは
A = Qdiag λ1, λ2, ..., λnQ−1 (2.42)
また,伝達行列は
G(s) = C(sI −A)−1B (2.43)
14
制御理論 練習問題解答集
である.(2.42)式を用いて,(2.43)式を変形していく.つまり,
G(s) = C(sI −A)−1B =
= C(sQQ−1 −Qdiag λ1, λ2, ..., λnQ−1)−1B =
= CQ(sQ−Qdiag λ1, λ2, ..., λn)−1B =
= CQ(sI − diag λ1, λ2, ..., λn)−1Q−1B =
= CQ(sI − diag λ1, λ2, ..., λn)−1PB =
= CQ(diag s− λi)−1PB =
= CQ
(diag
1
s− λi
)−1
PB =
=∑i
CqipiB
s− λi(2.44)
したがって,
G(s) =∑i
CqipiB
s− λi(2.45)
が証明された.ここで,状態変換した実現
(A,B,C,D) := (Q−1AQ,Q−1B,CQ,D) (2.46)
を使って,可制御性と可観測性を調べることにする.
(a) 可制御性は行列 [A− λI B]が任意の λ ∈ σ(A)に対して
行フルランクであることより調べられる.
A− λI = diag (λ1 − λ), ..., (λn − λ)
B = [(p1B)T , ..., (pnB)T ]T
上の二つの式を用いると,
[A−λI B] =
λ1 − λ 0 · · · · · · 0 p1B
0 λ2 − λ · · · · · · 0 p2B... 0
. . . · · ·...
......
......
. . . 0...
0 · · · · · · · · · λn − λ pnB
上の行列がすべての固有値 λに対して,行フルランクである
必要がある.この行列のランクを調べる.すべての行が線形独
立であるための必要十分条件はモード λi に対して,piB = 0
であること.なぜなら,λ = λiを代入したとき,λiモードに
おいて,piB = 0であると,[0, 0, ..., 0]の行ができるのでラン
ク落ちをしてフルランクにならなくなる.
(b) 可観測性は [(A− λI)T (C)T ]T がすべての固有値 λに対
して列フルランクであることを確認することで調べられる.
[A− λI
C
]=
λ1 − λ 0 · · · · · · 0
0 λ2 − λ · · · · · · 0... 0
. . . · · ·...
......
.... . . 0
0 · · · · · · 0 λn − λ
Cqi Cq2 · · · · · · Cqn
λiモードについて調べると,その列が[0, 0, ..., 0, (Cqi)
T]Tに
なる.このとき,Cqi = 0ならば (a)と同じく 0だけの列が出て
きてランク落ちをするので,フルランクにならない.したがっ
て,λi モードが可観測になるための必要十分条件は Cqi = 0
である.
15
制御理論 練習問題解答集
2.12 (A,B)が可制御とする.このとき,対
([A 0
C 0
],
[B
0
])(2.47)
が可制御となるための必要十分条件は,
[A B
C 0
]が,
行フルランクであることを証明せよ.
[解答]
A′ =
[A 0
C 0
], B′ =
[B
0
]とおく.
この時,定理 2.1(3)より,与えられた対 (A′, B′)が可制御
であることと,行列[A′ − λI B′
]が任意の λ ∈ Cに対して
行フルランクであることは等価である.
よって,行列[A′ − λI B′
]が任意の λ ∈ Cに対して行フル
ランクとなる条件を求めればよい.
まず,λ = 0の場合を考える.(A,B) が可制御であるため,
行列[A− λI B
]は行フルランクである.
また,行列[C −λI
]も明らかに行フルランクであるため,
A,C のサイズをそれぞれ n× n,p× nとすると,
rank[A′ − λI B′
]= rank
[A− λI 0 B
C −λI 0
]= rank
[A− λI B
]+ rank
[−λI
]= n+ p
となる.よって,(A, B)可制御ならば,[A′ − λI B′
]は,
行フルランクとなり,(A′, B′)可制御となる.
次に,λ = 0の場合を考える.この時,
rank[A′ − λI B′
]= rank
[A 0 B
C 0 0
]
= rank
[A B
C 0
]
となる.そのため,与えられた対 (A′, B′)が可制御であるた
めの必要十分条件は,
[A B
C 0
]が,行フルランクであること
だと言える.
3 線形システムの安定性
3.1 システムG(s)s/(s2+ω2)に以下の入力 uを印加したと
きの出力 yを求めよ.この結果から何がいえるか.
(a)u(t) = 1(t) (b)u(t) = sinωt
[解答]
(a)
Y (s) = G(s)U(s) =s
(s2 + ω2)∗ 1
s=
1
(s2 + ω2)
y(t) =1
ωsinωt (t ≥ 0)
(b)
Y (s) = G(s)U(s) =s
(s2 + ω2)∗ ω
(s2 + ω2)=
sω
(s2 + ω2)2
=1
2
d
ds
(ω
s2 + ω2
)y(t) =
1
2tsinωt (t ≥ 0)
となる.
このことから,入力が有界であるにもかかわらず (b)の出
力は無限大に発散してしまうことが分かる.これはG(s)の極
が p = ±jωであるので,虚軸上にあり無減衰だからである.
16
制御理論 練習問題解答集
3.2 図 3.1においてプラント P (s) = (s−1)(s−4)2 を 1次の制御器
C(s) = b1s+b0s+a で安定化することを考える.
(a) 閉ループ系の特性多項式を任意に与えられた多項式p(s) =
s3 + λ2s2 + λ1s + λ0 にするパラメータ (a, b0, b1)が一
意に存在することを示せ.
(b) 閉ループ極を−2,−1± j1に設定したとき,パラメータ
(a, b0, b1)を具体的に求めよ.以下,この条件のもとで
設問 (c),(d)を解く.
(c) k = 1のとき,単位ステップ上の目標値に対する出力の
定常値を計算せよ.
(d) 定常目標値 rに対して,出力 yが y(∞) = rとなるよう
に目標値の増幅ゲイン kを決めよ.
図 3.1: 閉ループ系
[解答]
(a) プラントと制御器の閉ループ系の伝達関数 G0(s)は,
G0(s) =
(b1s)(s− 1)
(s+ a)(s2 − 4)
1 +(b1s)(s− 1)
(s+ a)(s2 − 4)
=(b1s)(s− 1)
(s+ a)(s2 − 4) + (b1s)(s− 1)(3.1)
となる.このときの特性多項式は,
p(s) = s3 + (a+ b1)s2 + (b0 − b1 − 4)s+ (−4a− b0)
(3.2)
である.条件より,
(a+ b1) = λ2 (3.3)
(b0 − b1 − 4) = λ1 (3.4)
−4a− b0 = λ0 (3.5)
なので,
a = −1
3(λ0 + λ1 + λ2 + 4) (3.6)
b0 =4
3
(1
4λ0 + λ1 + λ2 + 4
)(3.7)
b1 =1
3(λ0 + λ1 + 4λ2 + 4) (3.8)
のように (a, b0, b1)は一意に決定することができる.
(b) 閉ループ極を条件のように設定すると,特性多項式は
p(s) = (s+ 2)(s+ 1 + j)(s+ 1− j)
= s3 + 4s2 + 6s+ 4 (3.9)
となるので,λ2 = 4, λ1 = 6, λ0 = 4である.式 (3.6),式 (3.7),
式 (3.8)に代入し,a = −6, b0 = 20, b1 = 10となる.
(c) ゲイン kを含めた全体の伝達関数 G(s)は,
G(s) = k10s2 + 10s− 20
s3 + 4s2 + 6s+ 4(3.10)
となる.ここで k = 1として単位ステップ入力に対する定常
出力を求める.最終値の定理を使い,
y(∞) = lims→0
sG(s)u(s)
= lims→0
s10s2 + 10s− 20
s3 + 4s2 + 6s+ 4
1
s
= −5 (3.11)
となる.
(d) 式 (3.11)でゲイン k を未定のまま,入力 u(s) = r とし,
最終値の定理を利用すると,
y(∞) = −5rk (3.12)
となる.条件より y(∞) = rとしたいので,k = − 15 とすれば
よい.
17
制御理論 練習問題解答集
3.3
[解答]
3.4 2章練習問題 2.9,2.10のシステムについて可安定性およ
び可検出性を調べよ.
[解答]
2.9
A =
−1 1 1
0 0 1
0 −4 −4
, b =
001
, C =[1 0 0
]
[A− λI b
]=
−1− λ 1 1 0
0 −λ 1 0
0 −4 −4− λ 1
は λ = −1で不可制御モードとなるが,Re(λ) > 0では行フル
ランクなので可安定である. また,
[A− λI
C
]=
−1− λ 1 1
0 −λ 1
0 −4 −4− λ
1 0 0
がすべての λに対して列フルランクなので可観測である.
2.10
A =
−1 0 0
0 0 1
1 −4 −4
, b =
100
, C =[0 1 1
]
[A− λI b
]=
−1− λ 1 1 1
0 −λ 1 0
1 −4 −4− λ 0
がすべてのλに対して行フルランクなので可制御である. また,
[A− λI
C
]=
−1− λ 0 0
0 −λ 1
1 −4 −4− λ
0 1 1
は λ = −1で不可観測モードとなるが,Re(λ) > 0では列フル
ランクなので可検出である.
18
制御理論 練習問題解答集
3.5 Routh-Hurwitzの安定判別法を用いて,以下の多項式
の根がすべて負の実部を持つために許される Kの値の
範囲を求めよ.
(a) p(s) = s3 + 3s2 +Ks+ 1
(b) p(s) = s4 + 4s3 +Ks2 + 4s+ 1
[解答]
(a)必要条件はK > 0となる.また Routh表は以下のように
なる.
s3 1 K
s2 3 1
s1 b1 0
s0 c1
ここで,各係数は以下のように求めた.
b1 = −1
3
∣∣∣∣∣ 1 K
3 1
∣∣∣∣∣ = 3K − 1
3(3.13)
c1 = − 3
3K − 1
∣∣∣∣∣ 3 13K−1
3 0
∣∣∣∣∣ = 1 (3.14)
閉ループが安定となるための必要十分条件は
3K − 1
3> 0 (3.15)
となる.これを解くと,以下のように求まる.
K >1
3(3.16)
(b)必要条件はK > 0となる.また Routh表は以下のように
なる.
s4 1 K 1
s3 4 4 0
s2 b1 b2
s1 c1 0
s0 d1
ここで,各係数は以下のように求めた.
b1 = −1
4
∣∣∣∣∣ 1 K
4 4
∣∣∣∣∣ = K − 1 (3.17)
b2 = −1
4
∣∣∣∣∣ 1 1
4 0
∣∣∣∣∣ = 1 (3.18)
c1 = − 1
K − 1
∣∣∣∣∣ 4 4
K − 1 1
∣∣∣∣∣ = 4(K − 2)
K − 1(3.19)
d1 = − K − 1
4(K − 2)
∣∣∣∣∣ K − 1 14(K−2)K−1 0
∣∣∣∣∣ = 1 (3.20)
閉ループが安定となるための必要十分条件はK − 1 > 04(K−2)K−1 > 0
(3.21)
となる.これを解くと,以下のように求まる.
K > 2 (3.22)
19
制御理論 練習問題解答集
3.6 次の自由システムについて係数行列の固有値を求め,そ
の安定性を調べよ.
x =
[0 1
2 −1
]x, x(0) = 0 (3.23)
[解答]
A =
[0 1
2 −1
]より,固有値を求める式は
|λI −A| =
∣∣∣∣∣ λ −1
−2 λ+ 1
∣∣∣∣∣ (3.24)
= λ2 + λ− 2 (3.25)
= (λ+ 2)(λ− 1) (3.26)
∴ λ = 1,−2 (3.27)
これは不安定極 1を持つことを示している.よってこのシス
テムは不安定である.
3.7 極pが不確かな制御対象 P (s) = 1s−p , a ≤ p ≤ b, b > 0
の全てをPI補償器K(s)=K(1+1/s)で安定化したい,閉
ループ系の特性多項式を調べることにとって,比例ゲイ
ン Kに対象する条件を導け.
[解答]
Np = 1,Mp = s− p,Nk = K(s+ 1),Mk = sである.よっ
て,閉ループ系の特性多項式は
p(s) = Np ∗Nk +Mp ∗Mk (3.28)
= s2 + (K − p)s+K (3.29)
となる.Routh表は次のようになる.
表 1: 3.7の Routh表
s2 1 K
s K − p 0
s0 K 0
よって,閉ループ系となるための必要十分条件は
K − p > 0,K > 0 (3.30)
となる.また,a ≤ p ≤ b, b > 0なので,これで解くと,K > b
となる.
20
制御理論 練習問題解答集
3.8 マス・バネ系の伝達関数は P (s) = 1/(Ms2 +1)で与え
られ,その入出力は (u, y)である.質量がM = 1 +∆
のように変化すると仮定する.このプラントを PD制
御器K(s) = 4s+ 3で制御する.ただし,K(s)の入力
は −yとする.許される質量変化∆の範囲を求めよ.
[解答]
システムの伝達関数 G(s)
G(s) =P
1 + PK=
1
Ms2 + 1
1 +4s+ 3
Ms2 + 1
(3.31)
=1
Ms2 + 4s+ 4(3.32)
より,閉ループ系の特性多項式 p(s)は
p(s) = Ms2 + 4s+ 4 (3.33)
= M
(s2 +
4
Ms+
4
M
)(3.34)
となり,Routh表は以下のようになる.
s2 1 4M
s1 4M 0
s0 b1
ここで b1 は,
b1 = − 14M
∣∣∣∣∣ M 4M
4M 0
∣∣∣∣∣ = 1 (3.35)
よって安定条件は,
4
M> 0 ⇒ 4
1 + ∆> 0 ⇒ ∆ > −1 (3.36)
となる.
この条件より,∆ = −1とするとマスが無くなり,ダイナ
ミクスが変わってしまう.
3.9 安定システム x(t) = Ax(t), y(t) = Cx(t)の出力が∫ ∞
0
yT (t)y(t)dt = xT (0)Xx(0)
を満たすことを示せ.ただし,X は Lyapunov方程式
ATX +XA+ CTC = 0の解である.
[解答]
出力方程式を積分の中に代入して,積分式を変形していく.∫ ∞
0
yT (t)y(t)dt =
∫ ∞
0
(Cx)T(Cx) dt
=
∫ ∞
0
xTCTCxdt (3.37)
Lyapunov方程式より CTC = −ATX −XAであることが分
かる.これを (3.37)式に代入する.すると,∫ ∞
0
xT (t)−ATX −XA
x(t)dt =
= −∫ ∞
0
xT (t)ATX +XA
x(t)dt =
= −∫ ∞
0
xT (t)ATXx(t) + xT (t)XAx(t)
dt =
= −∫ ∞
0
(Ax(t))
T+ xT (t)X (Ax(t))
(3.38)
ここで,状態方程式Ax(t) = x(t)を (3.38)式の積分の中に代
入する.すると,X は時間 tの関数でないので,
−∫ ∞
0
xT (t)Xx(t) + xT (t)Xx(t)
dt =
= −∫ ∞
0
d(xT (t)Xx(t)
)dt
dt =[−xT (t)Xx(t)
]∞0
=
=−xT (∞)Xx(∞) + xT (0)Xx(0)
(3.39)
になる.ここで,安定システムなので x(∞) = 0と考えてよ
い.したがって,∫ ∞
0
yT (t)y(t)dt = xT (0)Xx(0) (3.40)
と証明される.
21
制御理論 練習問題解答集
4 システムの性能
4.1 単位閉ループ系において,各伝達関数を以下のものと
する.
P (s) =1
s+ 1, K(s) =
k
s2 + 4
(a) 閉ループ系を安定化できる kが存在することを示し,そ
の範囲を求めよ.
(b) r(t) = 0 , d(t) = sin 2t (t ≥ 0)のとき,y(∞) = 0とな
ることを示せ.
(c) r(t) = sin 2t , d(t) = 0 (t ≥ 0)の場合,
limt→∞(r(t) − y(t))を計算することによって.定常出
力 limt→∞ y(t)を求めよ.
er yu
d
PK
図 4.1: 単位閉ループ系
[解答]
(a) 閉ループ系の特性多項式は
p(s) = NPNK +MPMK = s3 + s2 + 4s+ k + 4 (4.1)
となる.
閉ループ系を安定化できる k が存在することを示すために,
式 (4.1)に Routh-Hurwitzの安定判別法を適用する.
まず,必要条件は k > −4となる.また Routh表は以下のよ
うになる.
s3 1 4
s2 1 k + 4
s1 b1 0
s0 c1
ここで.各係数は以下のように求まる.
b1 = −1
1
∣∣∣∣∣ 1 4
1 k + 4
∣∣∣∣∣ = −k (4.2)
c1 = − 1
b1
∣∣∣∣∣ 1 k + 4
b1 0
∣∣∣∣∣ = k + 4 (4.3)
よって,閉ループが安定となるための必要十分条件は
−k > 0 , k + 4 > 0 (4.4)
となる.これを解くと.以下のように求まる.
−4 < k < 0 (4.5)
(b) d(t) = sin 2tをラプラス変換すると,d(s) = 2s2+4 となる.
d(s)から y(s)までの伝達関数を Hyd とすると,y(s)は
y(s) = Hydd(s) =P
1 + PKd(s)
=2
p(s)(4.6)
と表せる.y(s)は (a)で求めた範囲では安定であるため,最
終値の定理が成立し,
y(∞) = lims→0
sy(s) = lims→0
2s
p(s)
= 0 (4.7)
となる.
(c)追従誤差 e(t) = r(t)−y(t)について考える.r(s)から e(s)
までの伝達関数を Her とすると,e(s)は
e(s) = Her r(s) =1
1 + PKr(s)
=2(s+ 1)
p(s)(4.8)
と表せる.e(s)は (a)で求めた範囲では安定であるため,最
終値の定理が成立し,
e(∞) = lims→0
se(s) = lims→0
2s(s+ 1)
p(s)
= 0 (4.9)
となる.よって,
limt→∞
y(t) = limt→∞
r(t) = r(t)
= sin 2t (4.10)
と求まる.
制御器 K(s)に内部モデルがあるため,漸近追従と外乱除
去両方ができることが分かる.
22
制御理論 練習問題解答集
4.2 図 4.1の閉ループ系の各伝達関数は次式で与えられる.
P (s) =1
s(s+ 1), K(s) = k
(a) 閉ループ系の安定性を保証するゲイン kの範囲
(b) d(t) = 0, r(t) = 1(t)のときの定常追従誤差 e(∞)
(c) r(t) = 0, d(t) = 1のときの定常出力 y(∞)
を求めよ.さらに,(b),(c)の結果について考察せよ.
[解答]
(a) 閉ループ系の特性多項式は,
p(s) = s2 + s+ k
であり,Routh表は,
s2 1 k
s1 1 0
s0 k 0
よって,閉ループ系が安定となるための必要十分条件は,
k > 0
となる.
(b)
e(s) =1
1 + P (s)K(s)·R(s) =
s(s+ 1)
s(s+ 1) + k· 1s
e(∞) = e(0) = lims→0
s · s(s+ 1)
s(s+ 1) + k· 1s= 0
(c)
Y (s) =P (s)
1 + P (s)K(s)·D(s) =
1
s(s+ 1) + k· 1s
y(∞) = Y (0) = lims→0
s · 1
s(s+ 1) + k· 1s=
1
k= 0
ループゲイン L = PK に積分器 (1/s)があるため,ステップ
信号に漸近追従できる.
一方,制御器Kに積分器がないためステップ外乱を完全に除
去できない.
4.3 問 4.2のプラントと制御器を
P (s) =1
s+ 1,K(s) =
k
s
に替え同じ問題を解け.また,前問との違いを論じよ.
[解答]
(a)
閉ループ系の伝達関数を求めると,
G(s) =
ks(s+1)
1 + ks(s+1)
=k
s2 + s+ k(4.11)
となるので,Routh表が以下のように書ける.
s2 1 k
s1 1 0
s0 k
閉ループ系が安定する必要十分条件は,k > 0である.
(b)
e =1
1 + PKr
=1
1 + ks(s+1)
1
s
=s+ 1
s2 + s+ k
e(∞) = lims→0
se = lims→0
s2 + s
s2 + s+ k= 0
(c)
y =P
1 + PKd
=
1(s+1)
1 + ks(s+1)
1
s
=1
s2 + s+ k
y(∞) = lims→0
sy = lims→0
s
s2 + s+ k= 0
前問同様に,ループゲイン L = PK に積分器を持つためス
テップ信号に追従出来ている.本問では前問と違い,制御器
に積分器を持っている.そのため,ステップ外乱を完全に除
去出来ている.
23
制御理論 練習問題解答集
4.4 図 4.1において,制御対象と制御器は次式で与えられる.
P (s) =1
s− 1,K(s) = 3 +
k
s
(a) 閉ループ系が内部安定になるために許される k の値の
範囲を求めよ.
(b) ランプ状の目標値 r(t) = t, t ≥ 0への追従誤差 e(t) =
r(t)− y(t)が,| e(∞) |< 0.05を満足するための kの値
の範囲を求めよ.
[解答]
(a)
閉ループ系の伝達関数を求めると,
G(s) =
3s+ks(s−1)
1 + 3s+ks(s−1)
=3s+ k
s2 + 2s+ k
となるので,Routh表が以下のように書ける.
s2 1 k
s1 2 0
s0 k
閉ループ系が安定する必要十分条件は,k > 0である.
(b)
e =1
1 + PKr
=1
1 + 3s+ks(s−1)
1
s2
=s− 1
s2 + 2s+ k
1
s
e(∞) = lims→0
se = lims→0
ss− 1
s2 + 2s+ k
1
s= −1
k
であるので,
| e(∞) |= 1
k< 0.05
となるためには,20 < kである必要がある.
4.5 安定伝達関数 G(s)について,定理 4.1の結果に基づい
て,正弦波信号発生器とオシロスコープを用いてG(jω)
を実験的に求める方法を考案せよ.
[解答]
定理 4.1
安定伝達関数 G(s)の入力が u = cos (ωt+ ∠G(jω))1(t)であ
るとき,t → ∞のときの出力 y(t)は次式で与えられる.
limt→∞
= |G(jω)| cos (ωt+ ∠G(jω))
正弦波発生器で u = cos (ωt)を入力し,オシロスコープで出力
波形を観測する. 出力が y(t) = A cos (ωt+ ϕ)であったとす
ると,
|G(jω)| = A ∠G(jω) = ϕ
となる.ωを変化させて観測し,その結果に合わせて関数G(jω)
を求めればよい.
24
制御理論 練習問題解答集
4.6
[解答]
4.7 定理 4.6を示せ.(ヒント:行き過ぎが起きる時間帯では
追従誤差 e(t)が負になる)
[解答]
定理 4.6
図 4.5の単位フィードバック系においてループゲインL(s) =
P (s)K(s)が正の実極を持ち、積分器も一つ以上もつとする.
この時、出力のステップ応答に行き過ぎ量が生じる.
単位ステップ入力による追従誤差は e(s) = r(s) 11+L
1s であ
る.Lの正の実極を pとすると、
e(p) =
∫ ∞
0
e(t)e−ptdt = 0 (4.12)
が成立する.行き過ぎが起きる時間帯を t=0付近 (t > 0)と
すると、e(t)e−pt > 0となるので、上記の積分が 0になるた
めには
e(t)e−pt < 0 ⇒ e(t) < 0 (4.13)
となる時間帯が存在する.よって行き過ぎが起きる.
25
制御理論 練習問題解答集
4.8 伝達関数 H(s)が偶数個の正の実零点の場合,どんなタ
イプの逆振れが生じるか?
[解答]
まず,定理 4.4により,正の実零点を持つ場合は逆振れが
生じることを証明した.また定理 4.5により,奇数個の正の実
零点を持つ場合はA型逆振れが生じることを証明した.(ちな
みに”次に”が始まる段落で二行目の最終値定理は間違いで
正しいのは初期値定理を使っていた)
定理 4.5 が説明したように、実極 Pj の場合安定性より
ー Pjは0より大きい,よってM(0)は0より大きい.正の実
零点がある場合,奇数個の正の実零点を持つ場合 N(0)が0
より小さい,H(0)はマイナスになる.偶数個の正の実零点を
持つ場合N(0)が0より大きい,H(0)はプラスになる.奇数
の場合 H(s)の符号は奇数倍を変動して最終値と同じ符号に
なる.A型になる.偶数の場合 H(s)の符号は偶数倍を変動
して最終値と同じ符号になる.B型になる.(定理 4.5はKが
プラスの場合である.マイナスの場合も同じである.ただし,
奇数個の正の実零点を持つ場合,H(0)はプラスになる.偶数
個の正の実零点を持つ場合H(0)はナイナスになる.そして,
最終値はマイナスになる.
4.9 問 4.2の閉ループ系について応答速度とバンド幅の関係
を調べたい.
(a) d(t) = 0, r(t) = 1(t) のときの出力 y(t)を計算し,k =
0.25, 1, 5についてプロットせよ.
(b) rから y までの閉ループ伝達関数 Hyr(s) の Bode線図
を k = 0.25, 1, 5 についてプロットし,バンド幅 ωB を
求めよ.
(c) 以上に基づいて出力応答速度とバンド幅の関係を調べよ.
[解答]
(a)システムの出力 y(s)は,
y(s) = L[r(t)]G(s) (4.14)
= L[1(t)] K(s)P (s)
1 +K(s)P (s)(4.15)
=1
s
ks(s+1)
1 + ks(s+1)
(4.16)
=1
s
k
s2 + s+ k(4.17)
= k
(1
s− s+ 1
s2 + s+ k
)∵部分分数分解 (4.18)
= k
1
s−
s+ 12
(s+ 12 )
2 +√k − 1
4
2
+1
2√k − 1
4
√k − 1
4
(s+ 12 )
2 +√k − 1
4
2
(4.19)
となり,y(s)を逆ラプラス変換することで y(t)が求まる.
y(t) = L−1[y(s)] (4.20)
= k
1−
(e−
12 cos
√k − 1
4
+1
2√k − 1
4
e−12 sin
√k − 1
4
(4.21)
k = 0.25, 1, 5のときの y(t)の波形を図 4.2に示す.
0 5 10 15 20
0
0.5
1
1.5
Time t [s]
K=0.25
K=1
K=5
図 4.2: y(t)の波形
26
制御理論 練習問題解答集
(b)閉ループ伝達関数Hyr(s)は,
Hyr(s) =P (s)K(s)
1 + P (s)K(s)=
k
s2 + s+ k(4.22)
と求まった.Hyr(s)の Bode線図を図 4.3に示す.
-100
-80
-60
-40
-20
0
20
Magnitude (dB)
10
-2
10
-1
10
0
10
1
10
2
-180
-135
-90
-45
0
Phase (deg)
Bode Diagram
Time t [s] (rad/sec)
K=0.25
K=1
K=5
図 4.3: ボード線図
これは 2次系なので基準 2次系の ωn, ζ を求めると,
ωn =√k , ζ =
1
2√k
(4.23)
となり,以下の式を用いてバンド幅 ωB を求めると,
ωB = ωn
√1− 2ζ2 +
√1 + (1− 2ζ2)2 (4.24)
k = 0.25のとき ωB = 0.32 [rad/s]
k = 1のとき ωB = 1.27 [rad/s]
k = 5のとき ωB = 3.35 [rad/s]
(4.25)
となる.
(c) (a),(b) 図 4.3より、バンド幅 ωB が大きくなると,出力
応答速度が速くなる.
4.10 伝達関数G(s) = 4/(s+1)(s+5)の単位インパルス応
答を g(t)で表す.
(a) 単位インパルス応答 g(t)の 1,2,∞ノルムを計算せよ.
(b) システム G(s)のH∞,H2,L1 ノルムを求めよ.
[解答]
(a)単位インパルス応答は g(t) = L[G(s)]伝達関数の逆ラプ
ラス変換で求めることができる.すなわち,
g(t) = L−1[G(s)] = L[
4
(s+ 1)(s+ 5)
]=
= L[
1
s+ 1− 1
s+ 5
]= e−t − e−5t (4.26)
1ノルム:
∥g(t)∥1 =
∫ ∞
0
|g(t)|dt =∫ ∞
0
|e−t − e−5t|dt =
=
[−e−t +
1
5e−5t
]∞0
=
[0−
(−1 +
1
5
)]=
=4
5(4.27)
2ノルム:
∥g(t)∥22 =
∫ ∞
0
g(t)2dt =
∫ ∞
0
(e−t − e−5t)2dt =
=
∫ ∞
0
(e−2t − 2e−6t + e−10t)dt =
=
[−1
2e−2t +
1
3e−6t − 1
10e−10t
]∞0
=
=
[0−
(−1
2+
1
3− 1
10
)]=
4
15(4.28)
(4.28)式は 2ノルムの2乗であるので,ルートを取って,
∥g(t)∥2 =
√4
15=
2√15
(4.29)
∞ノルム:
∥g(t)∥∞ = supt
|g(t)| = supt
|e−t − e−5t| =
= e−tm − e−5tm (4.30)
とおく.g(t)が最大となる時刻を tm とした.tm は
dg(tm)
dt= −e−tm + 5e−5tm = 0 (4.31)
e4tm = 5
4tm = ln 5
tm = ln 514 (4.32)
になる.これを (4.30)式の代入して∞ノルムを求めると,
∥g(t)∥∞ = 0.535 (4.33)
27
制御理論 練習問題解答集
となる.
(b)システム G(s)について,
H2 ノルム:
∥G∥2 =
√∫ ∞
0
|g(t)|2dt = 2√15
(4.34)
(t ≥ 0) e−5tは e−tより収束が速いので,インパルス応答 g(t)
は常に正の値をとる.よって,(4.34)式の途中計算は (4.28)
式と同様になる.
H∞ ノルム:
∥G∥2∞ = supω∈(−∞,∞)
|G(jω)|2 =
= supω∈(−∞,∞)
∣∣∣∣ 4
(jω + 1)(jω + 5)
∣∣∣∣2 =
= supω∈(−∞,∞)
[16
(ω2 + 1)(ω2 + 25)
]= sup
ω∈(−∞,∞)
16
(ω4 + 26ω2 + 25)(4.35)
(4.35)式の [ ]の中の関数は分母多項式が最小になる ωmで最
大になる.ωm は分母多項式の傾きが零になる点であるので,
d
dω(ω4 + 26ω2 + 25) = 4ω3 + 52ω =
= 4ω(ω2 + 13) = 0 (4.36)
(4.36)式から分かるように,多項式の1階導関数が零になる
点は三つある.
ωm = 0または± j√13
周波数 ωは複素数ではないので,ωm = 0になる.このとき,
∥G∥∞ =4
5(4.37)
になる.
L1 ノルム:(4.27)式の結果を用いて,
∥G∥1 = ∥g(t)∥1 =4
5(4.38)
5 状態フィードバック
5.1 制御対象
x =
[0 1
3 −2
]x+
[0
1
]u, y =
[1 0
]x (5.1)
に対して,状態フィードバック u = fxで閉ループの極
を-2,-3に設定したい.状態フィードバックゲイン f =
[f1, f2]を求めよ.
[解答]
可制御行列を計算すると,
C =[b Ab
]=
[0 1
1 −2
](5.2)
となり,ランク 2を持つ.よって,開ループ系が可制御とな
り状態フィードバックによる極配置は可能である.
状態フィードバック系の特性多項式を求める.
A+ bf =
[0 1
3 −2
]+
[0
1
] [f1 f2
](5.3)
=
[0 1
3 + f1 −2 + f2
](5.4)
|sI − (A+ bf)| =
∣∣∣∣∣ s −1
−3− f1 s+ 2− f2
∣∣∣∣∣ (5.5)
= s2 + (2− f2)s− (3 + f1) (5.6)
となる.この特性多項式が次式と一致すればよい.
(s+ 2)(s+ 3) = s2 + 5s+ 6 (5.7)
よって,フィードバックゲインは以下となる.
2− f2 = 5 (5.8)
−(3 + f1) = 6 (5.9)
∴ f = [f1, f2] = −[3, 9] (5.10)
28
制御理論 練習問題解答集
5.2 次の線形システムに関する設問に答えよ
x =
[0 1
−2 0
]x+
[0
1
]u, y =
[0 1
]x
(5.11)
(a) 閉ループ極が-1,-2となるように状態フィードバックu(t) =
fx(t)を設計せよ.
(b) 設問 (a)の極配置問題を出力フィードバックu(t) = ky(t)
で実現できるか吟味せよ.
[解答]
(a) フィードバックゲインを f = [ f1, f2 ]とおく,すると,
A+ bf の特性多項式は,
det
[s −1
2 s− f2
]= s2 − 3f2s+ 2 = 0
であり,極を-1, -2 にしたいので,
(s+ 1)(s+ 2) = s2 + 3s+ 2
と係数比較して,f2 = −3
よって,f = −[ 0, 3 ].
(b)
u = fx = −3[ 0, 1 ]x = −3y
なので,u = kyのかたちで表せ,出力フィードバックで実現
できる.
5.3 次の線形システムについて考える.
x =
2 1 0
0 2 0
0 0 −1
x+
010
u
(a) 状態フィードバック u = fxで閉ループ極を−2,−1±j1
に設定できるか?その理由を述べよ.
(b) 状態フィードバック u = fxで閉ループ極を−1,−1±j1
に設定できるかを答えよ.設定できる場合,一つのフィー
ドバックゲイン f を与えよ.
(c) 入力ベクトルが b = [0 1 1]Tに変わったとき,閉ループ
極を−2,−1± j1に配置できる状態フィードバックゲイ
ン f を求めよ.
[解答]
(a)
フィードバックゲインを f = [f1 f2 f3]とすると,A+ bf の
特性多項式は
det(sI − (A+ bf)) =
∣∣∣∣∣∣∣s− 2 −1 0
−f1 s− (2 + f2) −f3
0 0 s+ 1
∣∣∣∣∣∣∣= (s+ 1)(s2 − (4 + f2)s+ 4 + 2f2 − f1)
(5.12)
となるので,極 −1は移動できない.指定された閉ループ極
に −1が含まれないので,指定された閉ループ極は実現でき
ない.可制御行列 C を確認すると不可制御になっていること
が確認できる.
(b)
指定された閉ループ極に −1を含むため,その他の極を一致
させるようなフィードバックゲインを設定すればよい.
(s− (−1 + j1))(s− (−1− j1)) = s2 + 2s+ 2
となるので,式 (5.12)と比較し,f1 = −10 , f2 = −6とすれ
ばよい.また f3 は任意である.
(c)
b行列を変更し,可制御行列 C を確認する.
C =[b Ab A2b
]=
0 1 4
1 2 4
1 −1 1
となり,フルランクである.可制御なので,閉ループ極を任
意に設定できる.また開ループ系特性多項式が
det(sI −A) = s3 − 3s2 + 4
であることより,a1 = 4, a2 = 0, a3 = −3とすると,実現を
可制御正準形に変換する行列は
T = C
a2 a3 1
a3 1 0
1 0 0
=
1 1 0
−2 −1 1
4 −4 1
29
制御理論 練習問題解答集
となる.そして,指定された閉ループ系の特性多項式は
(s+ 2)(s+ 1− j)(s+ 1 + j) = s3 + 4s2 + 6s+ 4
であり,γ1 = 4, γ2 = 6, γ3 = 4となる.よって,状態フィー
ドバックゲインは,
f = [a1 − γ1 a2 − γ2 a3 − γ3]T−1
= [0 − 6 − 7]
13 −1
919
23
19 −1
943
89
19
= −1
9[120 62 1]
となる.
5.4 次の線形システムが与えられたとする.
x(t) =
[2 −1
1 2
]x(t) +
[0
1
]u(t),
y(t) =[1 0
]x(t)
(a) システムの極を求め,安定性を判定せよ.
(b) 可制御性とか可観測性を調べよ.
(b) 閉ループ極が−1,−2となるように状態フィードバック
u(t) = fx(t)を求めよ.
[解答]
(a)与えられたシステムの開ループ特性方程式
det(sI −A) = s2 − 4s+ 5 = 0 (5.13)
より,システムの極 2± jを得る.
極のすべての実部が正より安定.
(b)可制御行列,可観測行列を調べると
C =
[0 −1
1 2
](5.14)
行フルランクより可制御
O =
[1 0
2 −1
](5.15)
列フルランクより可観測
以上より可制御かつ可観測である.
(c)開ループ系が可制御であるから,極配置可能である.
定理 5.2の証明より,求めるゲイン f はテキストの式 (23)で
表される.
(a)で示した特性多項式より a1 = 5, a2 = −4 .
指定された閉ループ系の特性多項式
(s+ 1)(s+ 2) = s2 + 3s+ 2 (5.16)
より,γ1 = 2, γ2 = 3.
実現を可制御正準形に変換する変換行列 T は
T = C
[a2 1
1 0
]=
[−1 0
−2 1
](5.17)
以上を式 (23)に適用すると,求めるフィードバックゲインは
f =[a1 − γ1 a2 − γ2
]T−1 (5.18)
=[3 −7
] [−1 0
−2 1
]=[11 −7
](5.19)
となる.
30
制御理論 練習問題解答集
5.5 システム
x =
[0 1
1 0
]x+
[0
1
]u, y =
[1 1
]が出力フィードバック制御 u = kyによって安定化でき
るかを吟味せよ.
[解答]
x = Ax+Bu = Ax+B(ky) = Ax+B(kCx)
= (A+ kBC)x =
[0 1
1 + k k
]x
det(sI − (A+ kBC)) =
∣∣∣∣∣ s −1
−(1 + k) s− k
∣∣∣∣∣ = s2 − ks− (k + 1)
安定であるためには,全ての係数が正より
k < 0, k < −1
ラウス表を書くと
s2 1 −(k + 1)
s1 −k
s0 k(k + 1)
安定である条件は先ほどと同じく k < 0, k < −1
よってこのシステムは,k < −1とすれば安定化することがで
きる.
5.6 次の線形システムが与えられたとする.
x =
[0 1
0 0
]x+
[0
1
]u, y =
[1 0
]x
(a) 全ての状態が測定できるとき,状態フィードバック u =
fx によって, 閉ループ系の極を −1,−2 に設定したい.
フィードバックゲイン f を求めよ.
(b) 出力だけが測定されるとき,同一次元オブザーバを使っ
て状態 x(t)を推定したい.オブザーバ極が −4,−5とな
るようにオブザーバを設計せよ.
[解答]
(a)
A+ bf =
[0 1
0 0
]+
[0
1
] [f1 f2
]=
[0 1
f1 f2
]
det(sI− (A + bf)) =
∣∣∣∣∣ s −1
−f1 s− f2
∣∣∣∣∣ = s2 − f2s− f1
(5.20)
閉ループ極を −1,−2に設定すると特性多項式は
(s+ 1)(s+ 2) = s2 + 3s+ 2 (5.21)
となる.ここで (5.20)式と (5.21)式の係数比較をすると f1 =
−2, f2 = −3となる.よってフィードバックゲイン f は以下の
ようになる.
f = −[2 3
](5.22)
(b)
A+ LC =
[0 1
0 0
]+
[l1
l2
] [1 0
]=
[l1 1
l2 0
]
det(sI− (A + LC)) =
∣∣∣∣∣ s− l1 −1
−l2 s
∣∣∣∣∣ = s2 − l1s− l2
(5.23)
オブザーバ極を −4,−5よりオブザーバの特性多項式は
(s+ 4)(s+ 5) = s2 + 9s+ 20 (5.24)
となる.ここで (5.23)式と (5.24)式の係数比較をすると l1 =
−9, l2 = −20となる.よってオブザーバゲイン Lは以下のよ
うになる.
L = −[9 20
]T(5.25)
31
制御理論 練習問題解答集
5.7 問 5.3項目 (c)の状態フィードバック制御を実現するた
め、オブザーバを設計することを考える.
(a) 出力が y = [0 0 1]xである場合、同一次元オブザーバを
設計できるかについて、ブロック線図を用いて説明せよ.
(b) 出力が y = [1 0 1]xに変わったとき、極-4,-2±j1をもつ
同一次元オブザーバを設計せよ.
[解答]
(a) 状態方程式は次のようになる.
x =
2 1 0
0 2 0
0 0 −1
x+
011
u
これを状態 x1, x2,x3 に分けると次のようになる.
x12 =
[2 1
0 2
]x12 +
[0
1
]u (5.26)
= A12x12 +B12u
x3 = −x3 + u (5.27)
また、y = x3 となるのでブロック線図は次のようになる.
図より yは x12 の情報を持たない.よってオブザーバーを
設計できない.
(b) オブザーバーゲインを L = [l1 l2 l3]T とすると、オブ
ザーバの特性多項式は
det(sI − (A+ LC)) = s3 − (l1 + l3 + 3)s2+ (5.28)
(l1 − l2 + 4l3)s+ 2l1 − l2 − 4l3 + 4
となる.指定されたシステムの特性多項式は
(s+ 4)(s+ 2 + i)(s+ 2− i) = s3 + 8s2 + 21s+ 20
(5.29)
となるので両者が等しくなることからオブザーバゲインはL =
−[31/3 34 2/3]T となった.
5.8 多入出力システム x = Ax+Bu+Dw,y = Cxにフィー
ドバック u = Fxを施した閉ループ系は
x(t) = (A+BF )x(t) +Dw(t), y(t) = Cx(t)
(5.30)
となる.この閉ループ系において,外乱 w(t)の出力応
答が 0となるための必要十分条件は
C(sI −A−BF )−1D (5.31)
であることを示した上,この条件は
CD = C(A+BF )D = · · · = C(A+BF )n−1D = 0
(5.32)
と等価であることを示せ.更に,u 7→ y の伝達関数の
次数差が r である 1入出力系においてこの条件を満た
す状態フィードバックゲイン fの存在条件が
cd = cAd = cA2D = · · · = cAr−1d = 0 (5.33)
となることを示せ.
[解答]
(1)出力
y(t) ≡ 0 ⇔ (5.34)
0 ≡ y = C(sI −A−BF )−1Du(s) ⇔ (5.35)
C(sI −A−BF )−1D ⇔ 0 (5.36)
以上で必要十分条件が示される.
(2)オイラー公式を使って.C(sI −A−BF )−1を展開すると
= CD/s+ C(a+BF )D/s2 + C(a+BF )D/s3 + · · · ≡ 0
⇔ C(A+BF )kD = 0(∀k = 0, 1, 2 · · · ) (5.37)
等価であることがわかります.
(3)Cayley-Hamiltonの定理を使えば結論が得られる.次数差
が rの1入出力系では
cb = cAb = · · · = cAr−2b = 0, cAr−1b = 0 (5.38)
が成立する.
そうすると
cd = 0, (5.39)
0 = c(A+ bf)d = cAd, (5.40)
0 = c(A+ bf)2d = cA(A+ bf)d = cA2d, (5.41)
. . . , (5.42)
0 = c(A+ bf)r−1d = cAr−2(A+ bf)−1d = rAr−1d
(5.43)
32
制御理論 練習問題解答集
が成立しなければならない.
これが成り立つとき,
f = −(cAr−1b)−1cAr ⇒ c(A+ bf)r = 0 (5.44)
⇒ c(A+ bf)k = 0(∀k > r) (5.45)
よって.外乱遮断の条件が成立.
5.9 Gopinathのアルゴリズムにおいて,(C,A)が可観測の
とき,対 (A12, A22)も可観測となることを示せ.
[解答]
Gopinathのアルゴリズムより,
2.次の相似変換を施す.
SAS−1 =
[A11 A12
A21 A22
](5.46)
where A11 ∈ Rp×p, A12 ∈ Rp×(n−p),
A21 ∈ R(n−p)×p, A22 ∈ R(n−p)×(n−p)
SB =
[B1
B2
](5.47)
where B1 ∈ Rp×p, B2 ∈ R(n−p)×m
以下の可観測条件の定理より,
定理 2.2(3) (p.31)
すべての λ ∈ Cに対し,行列[A− λI
C
]が列フルランク
をもつ.
S
[A− λI
C
]S−1 =
[SAS−1 − λSS−1
S(CS−1)
](5.48)
=
[SAS−1 − λI
S[Ip 0
] ] (5.49)
=
[SAS−1 − λI[
S 0] ]
(5.50)
=
A11 − λI A12
A21 A22 − λI
S 0
(5.51)
ここで,式 (5.51)の第 2列の[
A12
A22 − λI
]が列フルランクなの
で (A12, A22)は可観測となる.
別解
Gopinathのアルゴリズムより,
1.次の行列が正則となるように行列 D ∈ R(n−p)×n を
適当に決める.
S :=
[C
D
](5.52)
を用いて,
x(t) = Sx(t) → x(t) = S−1x(t) (5.53)
と置いて,状態方程式
x(t) = Ax(t) +Bu(t) (5.54)
y(t) = Cx(t) (5.55)
where A ∈ Rn×n, B ∈ Rn×m, C ∈ Rp×n
33
制御理論 練習問題解答集
で置き換えると,
˙x(t) = SAS−1x(t) + SBu(t) (5.56)
y(t) = CS−1x(t) (5.57)
となり,このとき,
[Ip 0
]S =
[Ip 0
] [CD
]= C (5.58)
なので,
CS−1 =[Ip 0
](5.59)
がわかる.ここで,
A = SAS−1 (5.60)
B = SB (5.61)
C = CS−1 (5.62)
とおく.式 (5.54),式 (5.55)で (C,A)が可観測であるから,
rank
C
AC
(A)2C...
(5.63)
=
Ip 0
A11 A12
(A11)2 +A21A12 A12A11 +A12 +A22A12
......
(5.64)
= n (5.65)
階数はある列に他の線形結合を加えても不変であるから,式
(5.64)の第 2列より,
rank
A12
A22A12
(A22)2A12
...
(A22)n−p−1A12
= n− p (5.66)
でなければならない.
式 (5.46)から,A12 ∈ Rp×(n−p),A22 ∈ R(n−p)×(n−p) で
あるから,式 (5.66)が成り立ち,(A12, A22)は可観測である.
6 安定化制御器のパラメータ化
6.1 単位フィードバック制御系において,安定な制御対象
P = 1/(s+ 2)が与えられたとき,その出力をステップ
状の目標値 r(t) = 1 (t ≥ 0)に偏差なく漸近追従できる
ように制御器を設計したい.制御器のパラメータ化公
式を用いて1次の制御器K(s)をもとめよ.
[解答]
単位フィードバック系において,目標値 r(t)から偏差 e(t)
までの伝達関数は
Her =1
1 + PK(6.1)
で表される.また,単位フィードバック系の安定化制御器の
公式は
K(s) = Q(I − PQ)−1 =Q
1− PQ(6.2)
で与えられる.(6.2)式を (6.1)式に代入して伝達関数は
Her = 1− PQ (6.3)
ステップ状の目標値 r(t) = 1のラプラス変換は r(s) = 1s であ
るので,追従偏差は
e(s) = Her r(s) =1− PQ
s(6.4)
になる.定常偏差は最終値の定理を用いて,
e(∞) = lims→0
se(s) = lims→0
(1− PQ) (6.5)
目標値に漸近追従するので定常偏差を 0とする.すると,
1− P (0)Q(0) = 1− Q(0)
2= 0 (6.6)
(6.6)式から Q(0) = 2が得られる.
制御器K(s) = Q1−PQ に s=0を代入すると,
K(0) =Q(0)
1− P (0)Q(0)=
2
0→ ∞ (6.7)
になり,制御器には積分器 1/sが含まれることが分かる.
つまり,制御器を K(s) = K′(s)s のように表すことができる.
(6.2)式に示す制御器の伝達関数を少し変形すると,
K(s) =Q(s)
1− P (s)Q(s)=
Q(s)
1− 1s+2Q(s)
(6.8)
=(s+ 2)Q(s)
s+ 2−Q(s)=
s+ 2s+2Q(s) − 1
(6.9)
(6.9)式において,Q(s) = 2であれば分母が sになる.このと
き,制御器の伝達関数は
K(s) =2(s+ 2)
s(6.10)
または,以下のように制御器を設計することもできる.
K ′(s)
s=
s+ 2s+2Q(s) − 1
(6.11)
34
制御理論 練習問題解答集
(6.11)式の右辺に積分器を持たせるために, s+2Q(s) − 1 = ϵsと
する.したがって,制御器を以下のように設計する.
K(s) =s+ 2
ϵs(6.12)
(6.10)式の制御器は ϵ = 12 の場合にあたる.
6.2 前問においてステップ状の目標値のほか,さらにラン
プ状の目標値 r(t) = t (t ≥ 0) に対する追従誤差が
|e(∞)| ≤ 0.05となるように制御器を設計したい.そこ
で,自由パラメータを Q(s) = P−1/(ϵs + 1) とする.
この二つの条件を満たす ϵ > 0および対応する制御器
K(s)を求めよ.
[解答]
まず,ステップ状の目標値に対する追従誤差について考え
る.自由パラメータを Q(s) = P−1/(ϵs+ 1)は,全問におけ
る条件 (6.6)式を満たすため,ステップ状の目標値に偏差なく
漸近追従できる.
次に,ランプ状の目標値 r(t) = t (t ≥ 0)に対する追従誤差
について考える.r(s) = 1s2 であるから,定常偏差は最終値の
定理を用いて
e(∞) = lims→0
se(s) = lims→0
(1− PQ)1
s(6.13)
となる.また,ロピタルの定理より
e(∞) = lims→0
d
ds(−PQ) (6.14)
が成り立つ.ここで
d
ds(−PQ) =
d
ds
(−1
ϵs+ 1
)=
ϵ
(ϵs+ 1)2(6.15)
であるから,e(∞) = ϵとなる.
|e(∞)| ≤ 0.05より,ϵ ≤ 0.05となるため,ϵ = 0.05として
K(s) =20(s+ 2)
s(6.16)
と求まる.
参考のために,制御器に前問 (問 6.1)の解 (6.10)式を用い
た場合と,本問 (問 6.2)の解 (6.16)式を用いた場合の,単位
フィードバック系の出力 y(t)と追従誤差 e(t)の応答を以下に
示す.
0 1 2 3 4 5
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
1.4
t
y(t)
6.1
6.2
図 6.1: r(t) = 1(単位ステップ)に対する y(t)の応答
35
制御理論 練習問題解答集
0 1 2 3 4 5
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
t
e(t)
6.1
6.2
図 6.2: r(t) = 1(単位ステップ)に対する e(t)の応答
0 1 2 3 4 5
0
1
2
3
4
5
t
y(t)
6.1
6.2
r(t)=t
図 6.3: r(t) = tに対する y(t)の応答
0 1 2 3 4 5
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
t
e(t)
6.1
6.2
図 6.4: r(t) = tに対する e(t)の応答
6.3 安定化制御器の公式を用いて,安定制御対象 P (s) =
1/(s+ 2)の出力 y(t)がランプ状の目標値 r(t) = t(t ≥0)に漸近追従できるように制御器を設計せよ.ただし,
Q = (as+ b)/(s+ 1)とする.
[解答]
漸近追従するには e(∞) = 0であればよい.
e(s) =1
1 + PK· 1
s2
ここで,安定化制御器の公式K = Q/(1−PQ)を代入すると,
e(s) = (1− PQ) · 1
s2
=s2 + (3− a)s+ (2− b)
s2(s+ 1)(s+ 2)
原点に極があり,不安定なのでこのままでは Laplace変換の
最終値定理が使えない.これを打ち消すには a = 3, b = 2.こ
のとき,
K(s) =(3s+ 2)(s+ 2)
s2
0 2 4 6 8 10
0
0.05
0.1
0.15
0.2
0.25
図 6.5: r(t) = t(ランプ)に対する e(t)の応答
36
制御理論 練習問題解答集
6.4 プラント P (s) = 5s+ 5 の入力は u(t)であり,出力は
y(t)である.その安定化制御器
K(s) =Q
1− PQ,Q(s) =
s+ 5
5(as+ b), a, b > 0
で出力 y(t)を単位ステップ状の目標値 r(t) = 1(t)に漸
近追従させたい.追従誤差は e = r − y である.また,
システムの接続関係を u(s) = K(s)e(s)とする.
(a) 閉ループ系のブロック線図をかけ.
(b) 自由パラメータQ(s)を用いて追従誤差のラプラス変換
e(s)を表せ.
(c) 漸近追従 e(∞) = 0となるために (a, b)が満たすべき条
件を導け.
(d) さらに,∥e∥2 ≤ 0.1となるために (a, b)が満たすべき条
件を導け.
(e) 上記の条件 (c), (d)をすべて満足する (a, b)から一組を
選び,対応する制御器K(s)を計算せよ.
[解答]
(a)
(b)
e(s) = r(s)− y(s)
= r(s)− P (s)K(s)e(s)
e(s) =r(s)
1 + P (s)K(s)
= (1− P (s)Q(s))r(s)
= (1− P (s)Q(s))1
s
(c)
e(s) =
(1− 1
as+ b
)1
s
=as+ b− 1
s(as+ b)
ここで漸近追従 e(∞) = 0となるためには,最終値の定理
e(∞) = lims→0
se(s)
= lims→0
as+ b− 1
as+ b
より,b = 1である必要がある.
(d) b = 1とすると,
e(s) =1
s+ 1a
であるので,
e(t) = L−1[e(s)]
= e−ta
である.
∥e∥22 =
∫ ∞
0
e−2ta dt
=[−a
2e−
2ta
]∞0
=a
2≤ 0.12
となるには,0 < a ≤ 0.02である必要がある.
(e) b = 1のとき,
K(s) =Q
1− PQ
=s+ 5
5as
であるので,a = 0.02とすると,
K(s) = 10s+ 5
s
になる.
37
制御理論 練習問題解答集
6.5 図 6.9に示す 1入出力閉ループ系は IMC(内部モデル制
御)と呼ばれるもので,プロセス制御系に広く用いられ
ている.P (s)は実プラントを表し,P0(s)はそのモデ
ルを表し,ともに厳密にプロパーである.Q(s)は制御
用のパラメータで,安定伝達関数である.また追従誤差
を e = r − yとする.
(a) P (s) = P0(s)で,かつ安定であるとき,任意のQ(s)に
対して閉ループ系が安定であることを示せ.
(b) P (s) = P0(s)で,安定かつ最小位相であるとき,任意
の目標値 rに対する追従性能を向上させるための方策を
検討せよ.
(c) P (s)と P0(s)に共通の不安定極 pを持つとき,閉ルー
プ系が安定化できるかについて吟味せよ.
図 6.6: IMC制御構成
[解答]
(a)
伝達関数
Hyr =PQ
1− P0Q+ PQ=
P Q1−P0Q
1 + P Q1−P0Q
(6.17)
より与えられたブロック線図を等価変換して書き換えると の
図 6.7: IMC制御構成の等価変換
ように (P,K)で構成された単位フィードバック系とみなせる.
Kは P = P0 より
K =Q
1− P0Q=
Q
1− PQ(6.18)
安定化制御器となり閉ループ系は安定とわかる.
(b)
e(s) = (1− PQ)r(0) → 0 (6.19)
のために PQ → 1が必要となる.次数差 γを考慮すると
PQ =1
(ϵs+ 1)γ(6.20)
より
Q =P−1
(ϵs+ 1)γ(6.21)
ϵ ≪ 1とすると,追従性能が向上する帯域は 0 < ω < 1ϵ
(c)
P と P0は並列接続のため,共通の不安定極では不可制御モー
ドとなり,安定化できない.
38
制御理論 練習問題解答集
6.6 図 6.8の(1入出力)制御系にステップ状の外乱 d(t) =
1(t)が印加されるとする.また,制御対象 P (s)は原点に
零点を持たない.
(a) この外乱に対する出力応答が y(∞) = 0となるように,
安定化制御器の公式を用いて制御器 K(s)を設計せよ.
ただし,自由パラメータは定数 Q(s) = q に限定して考
えるとする.
(b) P (s) = 1/(s+ 2)のとき,上述の使用を満足する制御器
K(s)を与えよ.
[解答]
(a)
外乱応答のラプラス変換は
Y (s) =P (s)
1 + P (s)K(s)D(s) =
P (s)
1 + P (s)K(s)
1
s
安定化制御器の公式K(s) = Q/(1−PQ)とQ(s) = q(const.)
を代入して
Y (s) =P (s)
1 + qP (s)1−qP (s)
1
s=
P (s)1− qP (s)s
最終値の定理より
y(∞) = lims→0
sY (s) = lims→0
sP (s)1− qP (s)
s
= P (0)1− qP (0)
y(∞) = 0となるためには,q = 1/P (0)であればよい.
(b)
lims→0 P (s) = P (0) = 1/2より q = 1/P (0) = 2
安定化制御器の公式に代入して
K(s) =Q(s)
1− P (s)Q(s)=
q
1− qs+2
=2(s+ 2)
s
図 6.8: 外乱制御
6.7 図 6.6の制御系において,プラント Pと外乱 dは
P (s) =1
s+ 1, d(s) =
1
sω(s), ∥ω∥2 ≤ 1 (6.22)
で与えられる.外乱 dの影響を抑えるために,ωから yま
での閉ループ伝達関数 Hyω(s)が ∥Hyω∥∞ < 1を満た
すようにしたい.このことは次の制御器
K(s) =Q
1− PQ, Q(s) =
s+ 1
as+ b, a > 0, b > 0
(6.23)
で実現できるかを調べよ.実現できる場合,a,bに関する
条件を与えよ.
[解答]
外乱応答の Laplace変換は
y(s) =P
1 + PKd(s) =
P
1 + PK
1
sω(s) = Hyω(s)ω(s)
よって,ωから yまでの伝達関数Hyω(s)は以下のように表せる.
Hyω =P
1 + PK
1
s=
P
1 + PQ1−PQ
1
s= P (1− PQ)
1
s
(6.24)
Laplace変換の最終値の定理より
y(∞) = lims→0
sHyωω(s) = lims→0
P (1− PQ)ω(s) (6.25)
P (0) = 0なので,y(∞) = 0であるためには以下のような式が
成り立つ.
1− P (0)Q(0) = 0
Q(0) =1
P (0)
よって,b=1が得られる.これより Hyω(s)を以下のように表
せる.
Hyω = P (1− PQ)1
s
=1
s+ 1
(1− 1
s+ 1
s+ 1
as+ b
)=
a
(s+ 1)(as+ 1)
(6.26)
これは,低域通過であるから ∥Hyω∥∞ = |Hyω(j0)|となる. こ
こで,|Hyω(jω)|は以下のように表せる.
Hyω(jω) =
∣∣∣∣ a
(jω + 1)(jωa+ 1)
∣∣∣∣ = a√(ω2 + 1)(ω2a2 + 1)
よって,|Hyω(j0)| = aとなり,∥Hyω∥∞ < 1より
a < 1 (6.27)
と得られる.したがって以下の条件において実現可能である.
0 < a < 1, b = 1
39
制御理論 練習問題解答集
6.8 定理6.2の命題 (1)を示した上,N(s),N(s)の零点はG22(s)
の零点に,そして D(s),D(s)の零点は G22(s)の極に一
致することを証明せよ.
定理 6.2(1) (p.141)
G22(s) = N(s)D−1(s) = D−1(s)N(s)
[解答]
D−1 = (A,B2,−F, I), D−1 = (A,L,−C2, I)より
ND−1 =
A+B2F −B2F B2
0 A B2
C2 0 0
, (6.28)
D−1N =
A LC2 0
0 A+ LC2 B2
−C2 C2 0
(6.29)
となる.T =
(I I
0 I
)で相似変換すると (2.5 節参照),それ
ぞれ
ND−1 7−→
A+B2F 0 0
0 A B2
C2 C2 0
, (6.30)
D−1N 7−→
A 0 B2
0 A+ LC2 B2
C2 0 0
(6.31)
となる.ここからA+B2F が不可制御,A+LC2が不可観測
とわかるので消去する (2.5.2 Kalmanの正準形式参照)と
G22 と一致する.
次に下記の二つについて示す.
• N(s),N(s)の零点は G22 の零点に一致する.
• D(s),D(s)の零点は G22 の極に一致する.
D−1,D−1 の式から D(s),D(s)の零点が G22 の極に一致す
る.また,[A+B2F − sI B2
C2 0
]=
[A− sI B2
C2 0
]×
[I F
0 I
](6.32)[
A+ LC2 − sI B2
C2 0
]=
[I L
0 I
]×
[A− sI B2
C2 0
](6.33)
より,N(s),N(s)の零点はG22の零点に一致することがわ
かる.
7 目標値追従の限界
7.1 伝達関数 G(s) = s(s2 − 5s + 6)/(s + 5)2(s2 + 2s + 5)
を全域通過伝達関数と最小位伝達関数の積に分解せよ.
[解答]
全域通過伝達関数A(s)の特徴は,その極と零点が虚軸を境
に対称に配置している.
よって,
A(s) =s2 − 5s+ 6
S2 + 5s+ 6(7.1)
となる.そうすると残りの部分は
s(s2 + 5s+ 6)/(s+ 5)2(s2 + 2s+ 5) (7.2)
になる.
明らかに開右半面に零点を持たないなので,最小位相伝達関
数 Pm(s)になる.
よって,
G(s) =s(s2 + 5s+ 6)
(s+ 5)2(s2 + 2s+ 5)(7.3)
は
G(s) =s2 − 5s+ 6
S2 + 5s+ 6
s(s2 − 5s+ 6)
(s+ 5)2(s2 + 2s+ 5)(7.4)
全域通過伝達関数と最小位伝達関数の積で表示することがで
きる.
40
制御理論 練習問題解答集
7.2 式 (7.11)で定義した関数が内積であることを示せ.
p.153式 (7.11)
⟨f , g⟩ = 1
2π
∫ ∞
−∞f∗(jω)g(jω)dω
[解答]
条件 (1):線形性
a,b, c, d ∈ Rに対して,⟨af + bh, cg + di⟩ = ac⟨f , g⟩+ ad⟨f , i⟩+ bc⟨h, g⟩+ bd⟨h, i⟩
⟨af + bh, cg + di⟩ (7.5)
=1
2π
∫ ∞
−∞
(af + bh
)∗ (cg + di
)dω (7.6)
=1
2π
∫ ∞
−∞
(af∗ + bh∗
)(cg + di
)dω (7.7)
=1
2π
∫ ∞
−∞
(af∗cg + af∗di+ bh∗cg + bh∗di
)dω
(7.8)
=1
2π
∫ ∞
−∞af∗cg dω +
1
2π
∫ ∞
−∞af∗di dω (7.9)
+1
2π
∫ ∞
−∞bh∗cg dω +
1
2π
∫ ∞
−∞bh∗di dω
= ac1
2π
∫ ∞
−∞f∗g dω + ad
1
2π
∫ ∞
−∞f∗i dω (7.10)
+ bc1
2π
∫ ∞
−∞h∗g dω + bd
1
2π
∫ ∞
−∞h∗i dω
= ac⟨f , g⟩+ ad⟨f , i⟩+ bc⟨h, g⟩+ bd⟨h, i⟩ (7.11)
α,β,γ, δ ∈ Cに対して,⟨αf + βh, γg + δi⟩ = α∗γ⟨f , g⟩+ α∗δ⟨f , i⟩+ β∗γ⟨h, g⟩+ β∗δ⟨h, i⟩
⟨αf + βh, γg + δi⟩ (7.12)
=1
2π
∫ ∞
−∞
(αf + βh
)∗ (γg + δi
)dω (7.13)
=1
2π
∫ ∞
−∞
(α∗f∗ + β∗h∗
)(γg + δi
)dω (7.14)
=1
2π
∫ ∞
−∞
(α∗f∗γg + α∗f∗δi+ β∗h∗γg + β∗h∗δi
)dω
(7.15)
=1
2π
∫ ∞
−∞α∗f∗γg dω +
1
2π
∫ ∞
−∞α∗f∗δi dω
(7.16)
+1
2π
∫ ∞
−∞β∗h∗γg dω +
1
2π
∫ ∞
−∞β∗h∗δi dω
= α∗γ1
2π
∫ ∞
−∞f∗g dω + α∗δ
1
2π
∫ ∞
−∞f∗i dω
(7.17)
+ β∗γ1
2π
∫ ∞
−∞h∗g dω + β∗δ
1
2π
∫ ∞
−∞h∗i dω
= α∗γ⟨f , g⟩+ α∗δ⟨f , i⟩+ β∗γ⟨h, g⟩+ β∗δ⟨h, i⟩(7.18)
条件 (2):対称性 ⟨f , g⟩ = ⟨g, f⟩
⟨f , g⟩ = 1
2π
∫ ∞
−∞f∗(jω)g(jω)dω (7.19)
=1
2π
∫ ∞
−∞g∗(jω)f(jω)dω (7.20)
= ⟨g, f⟩ (7.21)
条件 (3):正定値性 ⟨f , f⟩ = 0 ⇔ f(jω) = 0
⟨f , f⟩ = 1
2π
∫ ∞
−∞f∗(jω)f(jω)dω (7.22)
=1
2π
∫ ∞
−∞∥f(jω)∥2dω (7.23)
= 0 (7.24)
f(jω) ≡ 0 (7.25)
41
制御理論 練習問題解答集
7.3 補題 7.2を示せ.
補題 7.2: f(s),g(s)か2乗可積であるとき,以下の命題
は成立する.
(a) a, b ∈ Cとすると,⟨af , bg⟩ = ab⟨f , g⟩
(b) ⟨f , f⟩ = ∥f∥22
(c) H(s)が虚軸上に極を持たないとき,
⟨H∗f , g⟩ = ⟨f , Hg⟩
(d) |A(jω)| = 1 (∀ω)のとき,∥Af∥2 = ∥f∥2
[解答]
関数 f(s), g(s)について,それらの内積は
⟨f , g⟩ = 1
2π
∫ ∞
−∞f∗(jω)g(jω)dω (7.26)
と定義される.また,周波数領域において f(jω)の2ノルムは
∥f(jω)∥2 =
√1
2π
∫ ∞
−∞f∗(jω)f(jω)dω (7.27)
と定義される.
(a) a, b ∈ C
⟨af , bg⟩ = 1
2π
∫ ∞
−∞(af)∗(bg)dω =
=1
2π
∫ ∞
−∞af∗bgdω = ab
1
2π
∫ ∞
−∞f∗gdω =
= ab⟨f , g⟩
(b) (7.27)式の両辺を2乗すると,右辺は関数 f(jω)の自分
の内積になるので,明らかである.
∥f(jω)∥22 =1
2π
∫ ∞
−∞f∗(jω)f(jω)dω = ⟨f , f⟩
(c) 関数H の複素共役はH∗ と記すことにする.
⟨H∗f , g⟩ = 1
2π
∫ ∞
−∞(H∗f)∗gdω =
1
2π
∫ ∞
−∞f∗(H∗)∗gdω =
=1
2π
∫ ∞
−∞f∗(Hg)dω = ⟨f , Hg⟩
(d) ∥A(jω)∥ = 1 , (∀ω) A∗(jω)A(jω) = |A(jω)|2 = 1
(7.27)式を使って,2ノルムを計算していく.
∥Af∥2 =
√1
2π
∫ ∞
−∞(Af)∗Afdω =
√1
2π
∫ ∞
−∞f∗A∗Afdω =
=
√1
2π
∫ ∞
−∞f∗|A|2fdω =
√1
2π
∫ ∞
−∞f∗fdω =
= ∥f∥2
補題 7.2の性質がすべて証明された.
7.4 補題 7.4を示せ.
補題 7.4
Re(λ)>0,Re(η)>0とする.このとき,次の式が成り
立つ.⟨1
λ− s,
1
η − s
⟩=
1
λ+ η,
∥∥∥∥ 1
λ− s
∥∥∥∥22
=1
2Re(λ)
[解答]
f(s),g(s)をそれぞれ
f(s) =1
λ− s, g(s) =
1
η − s(7.28)
とおき,はじめに次式を示す.
⟨f , g⟩ =⟨
1
λ− s,
1
η − s
⟩=
1
λ+ η(7.29)
f(s),g(s)は共に 2乗可積であるため,これらの内積は
⟨f , g⟩ = 1
2π
∫ ∞
−∞f∗(jω)g(jω)dω
=1
2π
∫ ∞
−∞
1
(λ+ jω)(η − jω)dω (7.30)
と与えられる.
f(s),g(s)は共に厳密にプロパーな実有理関数で,純虚数
の極を持たない.そのため,⟨f , g⟩は,虚軸と左半面上における半径無限大の半円に沿う周回積分に等しく
⟨f , g⟩ = 1
2πj
∮∂Ω
f(−s)g(s)ds
=1
2πj
∮∂Ω
1
(λ+ s)(η − s)ds (7.31)
となる.ここで,f(−s)g(s)の任意の左半面極を siとすると,
留数定理より
⟨f , g⟩ =∑i
ResRe(si)<0
f(−s)g(s)
= Ress=−λ
1
(λ+ s)(η − s)
=1
λ+ η(7.32)
が成り立つ.よって (7.29)式は成り立つ.
一方∥∥∥∥ 1
λ− s
∥∥∥∥22
=
⟨1
λ− s,
1
λ− s
⟩= ⟨f , f⟩ (7.33)
である.(7.32)式において g(s) = f(s)とおくと∥∥∥∥ 1
λ− s
∥∥∥∥22
=1
λ+ λ=
1
2Re(λ)(7.34)
となる.ゆえに,補題 7.4は成り立つ.
42
制御理論 練習問題解答集
7.5 c(sI −A− bf)−1bと c(sI −A)−1bが同じ次数差を持つ
ことを示せ.
[解答]
まず,(sI−A− bf)−1を考える.これの余因子行列をCと
表すと,
c(sI −A− bf)−1b = cC
| sI −A− bf |b (7.35)
ここで,cCbの bfによる項は互いに打ち消しあい,(sI−A)−1
の余因子行列を C ′ と表すと,
cCb = cC ′b (7.36)
次に,| sI −A− bf |を C ′ を用いて表すと,
| sI −A− bf |=| sI −A | −fC ′b (7.37)
以上より,c(sI −A− bf)−1bは以下のように表せる.
c(sI −A− bf)−1b = cC ′
| sI −A | −fC ′bb
=cC ′b
| sI −A |× | sI −A |
| sI −A | −fC ′b
= c(sI −A)−1b× [1− f(sI −A)−1b]−1
ここで,[1−f(sI−A)−1b]−1において,| sI−A |は fC ′bより
高次で,次数差は零なので,c(sI−A−bf)−1bと c(sI−A)−1b
は同じ次数差を持つ
7.6 安定伝達関数
G(s) =s+ 5
(s+ 1)(s+ 10)
のH2ノルムをそれぞれ留数,インパルス応答を用いて
計算せよ.
[解答]
(a)留数定理の利用
G(s)は閉半面上に2つの極 p = −1,−10をもつ.
ここで
G(s)G(−s) =(s+ 5)(−s+ 5)
(s+ 1)(−s+ 1)(s+ 10)(−s+ 10)
であるので,2つの極における留数はそれぞれ,
Ress=−1
G(s)G(−s) = lims→−1
(s+ 1)G(s)G(−s)
= lims→−1
(s+ 5)(−s+ 5)
(−s+ 1)(s+ 10)(−s+ 10)
=4
33
Ress=−10
G(s)G(−s) = lims→−10
(s+ 10)G(s)G(−s)
= lims→−1
(s+ 5)(−s+ 5)
(s+ 1)(−s+ 1)(−s+ 10)
=5
132
となる.留数定理を利用しH2 ノルムを計算するには,
∥G∥2 =
√∑i
Ressi
G(s)G(−s)
とすればよいので,先ほど計算した留数より,
∥G∥2 =
√4
33+
5
132=
1
2
√7
11
になる.
(b)インパルス応答の利用
G(s) =s+ 5
(s+ 1)(s+ 10)=
1
9
(4
s+ 1+
5
s+ 10
)上式を両辺逆ラプラス変換し,
G(t) =1
9
(4e−t + 5e−10t
)u(t) = G(t)y(t)とし,y(t)をインパルス入力とする.すると,
u(t) =1
9
(4e−t + 5e−10t
)であるので,この信号のH2 ノルムの2乗は,
∥G∥22 =
∫ ∞
0
u(t)2dt
=1
81
∫ ∞
0
(16e−2t + 40e−11t + 25e−20t)dt
=1
81
[−8e−2t − 40
11e−11t +
5
4e−20t
]∞0
=567
81 · 44
43
制御理論 練習問題解答集
と求まるので,
∥G∥2 =1
2
√7
11
になる.
以上より (a)と (b)の結果が一致していることが確認できる.
7.7 不安定プラント P (s) = 1/(s − a)に対する単位ステッ
プ目標値の追従誤差下限値 inf∥e∥2 および準最適制御器を求めよ.
[解答]
教科書 (7.67)より,
∥e∥22 =k∑
i=1
2Re(zi)
|si|2+
∥∥∥∥(1−MY +MQD)1
s
∥∥∥∥22
この問題では,プラントに零点が存在しないので上式1項目
は 0である.また2項目に関して,∥∥∥∥(1−MY +MQD)1
s
∥∥∥∥22
=
∥∥∥∥−(X −MQ)D1
s
∥∥∥∥22
=
∥∥∥∥−(X −MQ)s− 1
s+ 1
1
s
∥∥∥∥22
=
∥∥∥∥(X −MQ)1
s
∥∥∥∥22
=
∥∥∥∥(X − 1
s+ 1
s+ 1
ϵs+ 1X)
1
s
∥∥∥∥22
=
∥∥∥∥ ϵ
ϵs+ 1X
∥∥∥∥22
となるので,ϵ → 0 とすることで2項目も 0 となる.した
がって,
inf∥e∥2 = 0
である.またプラントには不安定零点がないので,準最適な
自由パラメータは,
Q(s, ϵ) =N−1X
1 + ϵs=
s+ 3
ϵs+ 1
で与えられる.よって,準最適制御器K(s)は,
K(s) = (Y −NQ)(X −DQ)−1 =4(1 + ϵs)
ϵs(s+ 3)+
s− 1
ϵs
になる.
44