大学生用自己分化度尺度の作成 : 信頼性・妥当性の検討( 東京...

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Title 大学生用自己分化度尺度の作成 : 信頼性・妥当性の検討( fulltext ) Author(s) 工藤,浩二 Citation 東京学芸大学紀要. 総合教育科学系, 68(1): 215-224 Issue Date 2017-02-28 URL http://hdl.handle.net/2309/146951 Publisher 東京学芸大学学術情報委員会 Rights

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Page 1: 大学生用自己分化度尺度の作成 : 信頼性・妥当性の検討( 東京 ...(differentiation of self scale)を提唱している(Bowen, 1978; Kerr & Bowen, 1988)。そして,それぞれのレベ

Title 大学生用自己分化度尺度の作成 : 信頼性・妥当性の検討(fulltext )

Author(s) 工藤,浩二

Citation 東京学芸大学紀要. 総合教育科学系, 68(1): 215-224

Issue Date 2017-02-28

URL http://hdl.handle.net/2309/146951

Publisher 東京学芸大学学術情報委員会

Rights

Page 2: 大学生用自己分化度尺度の作成 : 信頼性・妥当性の検討( 東京 ...(differentiation of self scale)を提唱している(Bowen, 1978; Kerr & Bowen, 1988)。そして,それぞれのレベ

* 東京学芸大学 教育心理学講座 臨床心理学分野(184-8501 小金井市貫井北町 4-1-1)

1.問題と目的

 自己分化度(differentiation of self)とは,Bowenが1960年代に提唱した家族システム理論 1)の主要な概念の 1 つであり,「対人関係における分化」および

「個人の内面における分化」の 2 つ次元の分化度で構成 さ れ る 概 念 で あ る(Bowen, 1978; Kerr & Bowen,

1988; Skowron & Friedlander, 1998; Skowron & Schmitt,

2003)。対人関係における分化とは,親密性と自律性のバランスのことであり,個人の内面における分化とは,思考と感情のバランスのことである。そして,

「自己分化度が高い」とは,この 2 つの対概念間のバランスを維持し,全体的統合を保ちながら,それぞれを状況に応じて適切に機能させる能力が高いことを意味する。 この自己分化度は原家族からの情動的な分離の度合いに影響されながら発達するものであり(Kerr &

Bowen, 1988),その過程において未解決の愛着の問題を抱えている間は自己分化度は高まらないとされている(Bowen, 1978)。そして,この自己分化度が低い者はストレスに対して脆弱であるとされている。すなわち,自己分化度が低い者は,ネガティブなライフイベントを経験すると,容易に融合関係に陥り(対人関係における未分化),また,思考が感情に圧倒されてしまい(個人の内面における未分化),その状況に適切に対処することが難しく,結果的に不適応状態に陥りや す い と さ れ て い る(Bowen, 1978; Kerr & Bowen,

1988)。これを自己分化度仮説という。自己分化度が原家族からの情動的な分離の度合いに影響されるものであることや,愛着の問題と関連をもつものであるこ

とを踏まえれば,この自己分化度仮説は,自立を発達課題とする青年期の適応を検討する上では重要なものの 1 つであるといえる。 この自己分化度仮説は,特に家族療法を実践する一部の臨床現場においては基礎的概念の 1 つとして位置付けられてきたものの,その実証的研究は乏しい状況にあった(Charles, 2001; Skowron & Friedlander, 1998)。しかし,Skowron & Friedlander(1998)のDifferentiation

of Self Inventoryなどの妥当性,信頼性を備えた自己分化度測定尺度の開発に伴い,国外では,自己分化度に関する実証的研究が蓄積されるようになったといわれている(Miller, Anderson, & Keala, 2004)。 一方,国内では,自己分化度に関する実証的研究が乏しい状況が続いており,例えば論文検索データベースCiNii Articlesにおいて「自己分化」を検索語(タイトル)として検索(検索日2016年 9 月 6 日)しても,工藤・藤生(2009,2012a,2012b)などわずか 9 件のみがヒットするという状況である(他領域の 2 件を除く)。管見では自己分化度を測定する尺度は,平木・岸・野末・安藤(1998)の自己分化インベントリーと工藤・藤生(2011)の高校生用自己分化度尺度のみという状況である。 平木・岸・野末・安藤(1998)の自己分化インベントリーは,多世代家族療法理論に立脚して作成され,6 下位尺度と比較的多くの下位尺度で構成されている。しかし,主に家族内でのサブシステムの関係を把握することを目的として作成されたものであり,自己分化度の 1 つの側面である個人の内面における分化

(すなわち,思考と感情のバランス)には焦点が当てられていない。

大学生用自己分化度尺度の作成

—— 信頼性・妥当性の検討 ——

工 藤 浩 二*

臨床心理学分野

(2016年 9 月12日受理)

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東京学芸大学紀要 総合教育科学系Ⅰ 68: 215 - 224,2017.

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 工藤・藤生(2011)の高校生用自己分化度尺度は,先に述べたSkowron & Friedlander(1998)のDifferentiation

of Self Inventoryと同様の 4 因子構造となっており,対人関係における分化および個人の内面における分化の両方に対応するものとなっている。しかしながら,その対象は高校生に限定されている。先に述べたように自己分化度仮説は青年期の適応を検討する上で重要なものの 1 つである。したがって,高校生のみならず,例えば,青年期の中核の年代ともいえる大学生を対象とする研究の蓄積も必要であろう。 以上を踏まえ本研究では,大学生を対象として対人関係における分化および個人の内面における分化の 2つの次元の分化度で構成される自己分化度尺度を作成し,その信頼性および妥当性を検証することとする。

2.研究 1

2.1 目的 大学生用自己分化度尺度を作成し,その下位尺度ごとの信頼性(内的整合性)を確認する。

2.2 方法2.2.1 項目作成 Bowenは自己分化度のレベルに関連した様々な違いを説明するための試みとして「自己分化度尺度」

(differentiation of self scale)を提唱している(Bowen,

1978; Kerr & Bowen, 1988)。そして,それぞれのレベルに対して0から100までの数値を割り当て,それぞれの特徴について描写している。これはあくまで仮想的なものであり,現実の尺度として臨床的診断的な利用はできないものであるとBowenは述べている 2)。しかし,そこで描写されている人間の様々な特徴は正に自己分化度の高低のレベルに対応したものである。よって本研究では,この内容から尺度の項目を作成することとした。 具体的には,Bowenの代表的な著作であるFamily

therapy in clinical practice(Bowen, 1978)およびFamily

evaluation(Kerr & Bowen, 1988)の 2 文献において,自己分化度尺度について述べられている箇所 3)を参照し,そこから自己分化度の高低に関連した内容の記述を抽出し,それらを参考として項目を作成した。その結果,第 1 案として計87項目からなる項目プールを作成した。その後,ほぼ同じ表現の項目を削除して75項目とし,この75項目を用いて質問紙を構成した。

2.2.2 調査協力者と調査時期 関東圏の大学生を対象として,2014年 7 月から11月にかけて講義時間の一部を用いて実施した。有効回答数はn = 452(男性173,女性279)であり,平均年齢は19.94歳(SD = 1.20)であった。

2.2.3 質問紙 上記で構成した75項目からなるものを利用した。具体的な項目例は「自分なりの意見や信念をもっている」,「理性的に判断するよりも感情的に反応してしまう」,「人間関係の悩みで消耗していて,本来の自分の目標達成に向けられる余力は残っていない」などであり,これらの内容が自分にどれくらいあてはまるのかを 1(全くあてはまらない)~ 7(大変あてはまる)の 7 件法で問うものとした。

2.2.4 倫理的配慮 回答は途中放棄も含めて任意であり,その結果によって不利益を被ることは一切ないこと,回答結果等の個人情報は完全に守られること,回答した個人が特定されることは一切ないことを伝えた上で調査への協力を依頼し,実施した。

2.3 結果と考察 各項目得点の基礎統計量(表 1)を確認したところ,1 つの項目で天井効果(項目得点の平均が6.13,標準偏差が0.95)がみられたために除外した。次に残る74項目について探索的因子分析(最尤法・プロマックス回転)を行った。その結果,初期解における固有値の減衰状況から判断して 3 因子構造が妥当であると判断した。その後,共通性が .2未満の項目を削除し,引き続き,負荷量が .4未満,または,最も高い負荷量とその次に高い負荷量との差が .1未満となる項目を削除しつつ因子分析を繰り返した。その結果,第1因子に負荷量が高い項目が18項目,第 2 因子に負荷量が高い項目が13項目,第 3 因子に負荷量が高い項目が9 項目となり,計40項目となった。さらに下位尺度とした場合の信頼性係数(α係数)を考慮しながら項目数の調整を行い,最終的に第 1 因子に負荷量が高い項目が10項目,第 2 因子に負荷量が高い項目が 6 項目,第 3 因子に負荷量が高い項目が 5 項目となった。この合計21項目で再度探索的因子分析(最尤法・プロマックス回転)を行った結果(表 2),累積説明率は42.44%となった。 第 1 因子は,「自分が認められているかどうかが心配で,相手の様子を気にしてしまう」,「好意をもって

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東 京 学 芸 大 学 紀 要 総合教育科学系Ⅰ 第68集(2017) 工藤 : 大学生用自己分化度尺度の作成

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表1 各項目得点の基礎統計量項 目 平均 標準偏差

1.他人からのプレッシャーや強制によって自分を変えるようなことはない 3.81 1.452.人間関係の悩みで消耗していて,本来の自分の目標達成に向けられる余力は残っていない 2.84 1.393.他人がどんなことを自分に望んでいるのか気になる 4.97 1.334.情緒的な面で他人を必要としている 4.86 1.395.相手を一個人として尊重しており,その人の人生を変えようとして批判的になったりするようなことはない 5.03 1.386.同じことを信じられない人とはうまくやっていけない 3.31 1.357.他人が不安を感じていても,自分まで不安になることはない 4.10 1.488.人によって考え方に違いがあるのは当然で,それぞれが尊重されるべきものである 6.13 0.959.人を好きになったり,好きになってもらったりすることに多くのエネルギーを費やしている 4.37 1.53

10.自分が人に頼っていることを現実的に理解しているし,その人との関係を楽しむこともできる 5.32 1.0611.古い信念を捨て,新しい信念を取り入れることができる 4.66 1.1312.他人の感情に反応しやすい 5.09 1.4013.多くのエネルギーを自分の目標達成に向けることができる 4.74 1.2014.自分が感じていることと相手が感じていることを混同してしまうことがある 3.57 1.5415.自分が認められているかどうかが心配で,相手の様子を気にしてしまう 5.05 1.4316.行動や考え方がそのときの感情に左右されている 4.96 1.3517.人間関係を混乱させたり脅かしたりするような出来事があると,不安や不快な気持ちになる 5.51 1.1618.何か問題が生じたときは,感情的にならず理性的に考えて対処している 4.31 1.2119.自分の中で「感情」と「思考」は明確に区別されている 3.91 1.3320.情緒的な欲求は,誰かと親しくなることでしか満たされない 3.40 1.2521.感情的に緊迫した状況になると,それに耐えられず,どうにかしようとして無意識に行動してしまう 3.93 1.4322.自分の信念や確信は,他人からの強制や説得では変わらない 4.40 1.4623.不安になると,よく考えずに感情的に動いてしまう 3.86 1.4324.周囲と自分の感情面でのズレや不一致が気になる 4.40 1.4625.人間関係を長く維持するのは難しい 3.68 1.6326.自分の信念や確信をしっかりともっているが,そのせいで考え方が独断的になったり固定化したりはしない 4.35 1.2427.意見の相違があっても,感情的な反応をせず,また,敵対視することなく相手と関わることができる 4.77 1.2128.他人のことで必要以上に責任を感じてしまう 4.56 1.4529.大事なことについては,それが「正しいと考えられるかどうか」ではなく「正しいと感じられるかどうか」で判断し

ている 4.18 1.21

30.「親しい人との交流」と「自分の目標達成に向けた努力」の両方から喜びや満足を得ることができる 5.44 1.0431.自分が信じていることを話すことにためらいを感じる 3.68 1.6332.客観的でいることが苦手で,主観的にものごとを見てしまう 3.64 1.3733.他人の意見が気になる 5.19 1.3434.自分を愛してくれなかったり認めてくれない人には攻撃的になってしまう 3.25 1.5435.親しい人との交流に時間を費やすのも,自分の目標達成に向けた努力に時間を費やすのも,いずれも状況に応じて自

分で選択できている 4.85 1.26

36.成功したかどうかは,その内容よりも,それを人に認められたかどうかで判断する 4.16 1.4437.その場の空気に合わないような意見は言わないようにしている 4.65 1.4438.そのときの感情に基づいて行動している 4.20 1.3239.目標達成に向けて行動し,そこから多くの満足を得ることができる 5.13 1.0940.好きになってもらえなかったとき,そのショックから回復するのは大変である 4.38 1.5841.自分の考えや感情と,他人の考えや感情を混同することはない 4.54 1.3142.エネルギーの多くを人間関係に費やし,自己決定や目標達成に向けられる余力は残っていない 2.95 1.2543.自分のことは自分で責任を負っている 5.11 1.1844.暗示にかかりやすい 3.49 1.4845.好意をもってもらうことや認めてもらうことのために多くのエネルギーを費やしている 4.21 1.4246.周囲に対して感情的に反応しやすい 3.99 1.4147.他人の考えや価値観を変えようとして極端な議論に走るようなことはない 5.00 1.3948.自分のことは自分で決めることができる 5.17 1.2249.自分の人生は「感情」に左右されている 3.95 1.4250.親しい関係において,自分と相手の感情の区別が不明確になってしまうことはない 4.56 1.4051.認めてもらったり相手に合わせるために自分を変えるようなことはない 4.03 1.3952.自分の信念や確信をしっかりともっているが,他人の考え方については耳を傾けることができる 5.43 0.8853.他人の賞賛や批判には反応せず,自分自身で現実的な評価をすることができる 3.98 1.2654.親しくなると相手と自分が一体となってしまいそうで不安になることがある 2.60 1.3855.ほめられたり認められたりすると浮かれてしまう 5.26 1.2356.相手を一個人として尊重しており,その人の人生を変えようとして感情的に巻き込まれたりするようなことはない 4.98 1.2757.親しい人との情緒的な交流のみに没頭してしまうことはなく,目標達成に向けて努力することもできる 4.99 1.0658.他人の不快を和らげるために,反射的に自分が動いてしまう 4.76 1.2659.自分なりの意見や信念をもっている 5.52 1.1160.ものごとがうまくいかなくなるほどに他人に何かを強く求めるようなことはない 4.60 1.3161.理性的に判断するよりも感情的に反応してしまう 3.94 1.2862.非難されたり認められなかったりすると,ひどく落ち込む 4.90 1.3963.感情抜きで冷静に事実を見つめることができる 4.29 1.1764.自分の内面には確固たるものがあり,他人からの賞賛や非難には影響されない 3.95 1.3665.感情的になりすぎて,他のことが見えなくなってしまうことがある 3.68 1.5166.自分を好印象にするためにいろいろと気をつかっている 4.62 1.3067.知的に考えるか,感情のままにふるまうか,状況に応じて自分で選択することができる 4.74 1.1068.自分の考えは伝えるが,それによって相手に影響を与えたり,相手を変えようとしたりはしない 4.61 1.2669.感情的になってしまい,落ち着いて考えることができなくなることがある 3.94 1.5370.物事を決めるとき,大切な人に認めてもらえないような決定は避けたいと思うことがある 4.74 1.3671.自分の信念や確信がなく,流行っている考え方に染まりやすい 3.04 1.4172.ストレスがとても高いときは,自分が最も頼っている人にあたってしまう 3.50 1.7973.認めてもらうために,すぐに他人を模倣する 3.16 1.4374.ストレスで不安が高まると,自分ひとりでは耐えきれず,その解消を誰かに求めてしまう 3.98 1.7275.感情的に決めてしまうことはせず,考えてから決めるようにしている 4.60 1.22

n = 452

東 京 学 芸 大 学 紀 要 総合教育科学系Ⅰ 第68集(2017)

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工藤 : 大学生用自己分化度尺度の作成

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もらうことや認めてもらうことのために多くのエネルギーを費やしている」など,判断の拠り所を他者に求めたり,他者との関係性維持に過敏となる傾向を示す項目内容で構成されているため,「他律的他者傾倒」因子とした。 第 2 因子は,「理性的に判断するよりも感情的に反応してしまう」,「感情的になりすぎて,他のことが見えなくなってしまうことがある」など,感情的になりやすい傾向を示す項目内容で構成されているため,

「感情優位性」因子とした。 第 3 因子は,「自分のことは自分で決めることができる」,「親しい人との交流に時間を費やすのも,自分の目標達成に向けた努力に時間を費やすのも,いずれも状況に応じて自分で選択できている」など,自分の行動を自己決定し,対人関係に埋没することなく自己の目標達成に向けてエネルギーを費やすことが可能であることを示す項目内容で構成されているため,「自律的目標指向」因子とした。 以上により,他律的他者傾倒尺度,感情優位性尺

度,自律的目標指向尺度の3下位尺度からなる大学生用自己分化度尺度を作成した。信頼性係数は,他律的他者傾倒尺度が α = .84,感情優位性尺度が α = .87,自律的目標指向尺度が α = .75となった(表2)。 なお,今後の尺度得点の算出においては,尺度得点の高さが自己分化度の高さに対応するように逆転項目については反転処理をして算出することとする 4)。反転処理後の各尺度得点の基礎統計量を表 3 に,分布を図 1,図 2,図 3,図 4 に示す。なお,各尺度得点について正規性の検定を行ったところ,Shapiro-Wilkの有意確率は他律的他者傾倒尺度,感情優位性尺度,自律的目標指向尺度,尺度全体の順で,.047,.077,.000,.874

であった。したがって,有意水準 5%で判断した場合,感情優位性尺度得点および尺度全体については正規分布といえる。他律的他者傾倒尺度得点についても正規分布に近いといえるが,自律的目標指向尺度得点については正規分布とはいえない結果となった。

表2 探索的因子分析の結果(最尤法・プロマックス回転)

項    目 Ⅰ Ⅱ Ⅲ第 1 因子「他律的他者傾倒」10項目(α= .84)15. 自分が認められているかどうかが心配で,相手の様子を気にしてしまう* .8345. 好意をもってもらうことや認めてもらうことのために多くのエネルギーを費やしている* .7166. 自分を好印象にするためにいろいろと気をつかっている* .6962. 非難されたり認められなかったりすると,ひどく落ち込む* .6251. 認めてもらったり相手に合わせるために自分を変えるようなことはない -.549. 人を好きになったり,好きになってもらったりすることに多くのエネルギーを費やしている* .54

28. 他人のことで必要以上に責任を感じてしまう* .5124. 周囲と自分の感情面でのズレや不一致が気になる* .5036. 成功したかどうかは,その内容よりも,それを人に認められたかどうかで判断する* .497. 他人が不安を感じていても,自分まで不安になることはない -.42

第 2 因子「感情優位性」6 項目(α =.87)61. 理性的に判断するよりも感情的に反応してしまう* .8465. 感情的になりすぎて,他のことが見えなくなってしまうことがある* .7549. 自分の人生は「感情」に左右されている* .7546. 周囲に対して感情的に反応しやすい* .6969. 感情的になってしまい,落ち着いて考えることができなくなることがある* .6623. 不安になると,よく考えずに感情的に動いてしまう* .64

第 3 因子「自律的目標指向」5 項目(α =.75)48. 自分のことは自分で決めることができる .6543. 自分のことは自分で責任を負っている .6457. 親しい人との情緒的な交流のみに没頭してしまうことはなく,目標達成に向けて努力することもで

きる .60

35. 親しい人との交流に時間を費やすのも,自分の目標達成に向けた努力に時間を費やすのも,いずれも状況に応じて自分で選択できている

.59

13. 多くのエネルギーを自分の目標達成に向けることができる .59因子間相関 Ⅰ .42 -.30      Ⅱ -.32

Ⅲ注.項目番号はリナンバリング前のもの。*を付した項目は逆転項目。n = 452

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表3 大学生用自己分化度尺度の尺度得点の基礎統計量

平均 標準偏差1. 他律的他者傾倒 35.85 9.12

2 . 感情優位性 24.65 6.67

3 . 自律的目標指向 24.87 4.18

4 . 尺度全体 85.37 15.01n = 452

0.27 0.18

図1 他律的他者傾倒尺度の得点分布注.曲線は正規曲線

0.05 0.36

図2 感情優位性尺度の得点分布注.曲線は正規曲線

0.33 0.57

図3 自律的目標指向尺度の得点分布注.曲線は正規曲線

0.03 0.01

図4 尺度全体の得点分布注.曲線は正規曲線

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工藤 : 大学生用自己分化度尺度の作成

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3.研究 2

3.1 目的 研究 1 で作成した大学生用自己分化度尺度について,その信頼性(再検査信頼性)および妥当性を検討する。 Bowen(1978)によれば,自己分化度が低い者は慢性的に不安が高いとされている。そのため,自己分化度は不安と負の相関関係にあることが予想される。そして,自己分化度は原家族からの情動的な分離の度合いに沿って高まっていくものとされている。すなわち,自己分化度の高低は愛着の問題の解決の程度にも関連があり,具体的には自己分化度は愛着の問題と負の相関関係にあることが予想される。また,自己分化度が高い者は I position(Bowen, 1978; Kerr & Bowen,

1988)と表現されるように,他者に影響されない明確な自己の感覚を持ち,感情に過度に影響されることなく自分の意志を表明し,また,自己の目標に向かってエネルギーを費やすことができる。すなわち,「自分らしくあること」ができる者ともいえる。これは伊藤・小玉(2005)の「本来感」(sense of authenticity)と近接する概念であるといえる。よって,自己分化度はこの本来感と正の相関関係にあることが予想される。 以上を踏まえ,妥当性については,不安,愛着の問題,本来感に着目し,これらと自己分化度との関連

(相関)について検討することとする。

3.2 方法3.2.1 調査協力者と調査時期 関東圏の大学生を対象として,2015年 1 月から 2月にかけて講義時間の一部を用いて実施した。本研究は再検査信頼性の検討を含むため 3 週間のインターバルを空けて 2 回の調査(1 回目をT1,2 回目をT2とする)を実施した。調査協力者の平均年齢はT1時は20.50歳(SD = 0.72),T2時は20.81歳(SD = 0.92)であった。再検査信頼性の検討に関する有効回答数はn

= 62(男子20,女子42)であった。妥当性の検討に関する有効回答数は,T1ではn = 98(男子39,女子59),T2ではn = 121(男子45,女子76)であった。

3.2.2 質問紙 T1では,研究 1 で作成した大学生用自己分化度尺度および不安の測定を目的として新版STAI(肥田・福原・岩脇・曽我・Spielberger, 2000)を用いた。なお,調査協力者の負担を考慮して,大学生用自己分化

度尺度については,7 件法のものを 5 件法に変更して用いた。また,新版STAIについては,特性不安のみを測定することとした。 T2では,T1と同じく大学生用自己分化度尺度に加えて,本来感の測定を目的として本来感尺度(伊藤・

小玉,2005),愛着の問題の測定を目的として,ECR-

GO(中尾・加藤,2004)を利用した。本来感尺度は単一尺度(計 7 項目)であり,ECR-GOは「見捨てられ不安」および「親密性の回避」の 2 下位尺度からなる(計36項目)。ただし,全体の項目数の関係から,ECR-GOについては,見捨てられ不安尺度のみを測定することとし,中尾・加藤(2004)の分析において当該因子への負荷量が高い10項目を利用した。

3.2.3 倫理的配慮 研究1と同様の倫理的配慮を行った。

3.3 結果と考察3.3.1 各尺度得点の基礎統計量 T1およびT2における各尺度得点の基礎統計量は表4 および表 5 のようになった。

3.3.2 再検査信頼性の検討 大学生用自己分化度尺度の各下位尺度得点のT1およびT2における相関係数は,他律的他者傾倒尺度が r

= .81 (p <.01),感情優位性尺度が r = .83 (p <.01),自律的目標指向尺度が r = .77 (p <.01)であった。全ての下位尺度において強い正の相関があった。これにより,大学生用自己分化度尺度の再検査信頼性が確認さ

表4 尺度得点の基礎統計量(T1)

平均 標準偏差1. 他律的他者傾倒 26.32 6.91

2 . 感情優位性 18.28 5.33

3 . 自律的目標指向 19.11 3.29

4 . 特性不安 45.34 9.92n = 98

表5 尺度得点の基礎統計量(T2)

平均 標準偏差1 . 他律的他者傾倒 27.67 7.10

2 . 感情優位性 19.11 5.57

3 . 自律的目標指向 19.06 3.51

4 . 本来感 23.81 4.44

5 . 見捨てられ不安 32.83 11.29n = 121

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東 京 学 芸 大 学 紀 要 総合教育科学系Ⅰ 第68集(2017) 工藤 : 大学生用自己分化度尺度の作成

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れた。

3.3.3 妥当性の検討 T1の結果,全ての下位尺度において特性不安尺度得点と中程度の負の相関があった(表 6)。また,T2の結果,他律的他者傾倒尺度および感情優位性尺度は,本来感尺度と中程度の正の相関,見捨てられ不安尺度と中程度の負の相関があった。自律的目標指向尺度は,本来感尺度と中程度の正の相関,見捨てられ不安尺度とは負の弱い相関があった(表 7)。 いずれの下位尺度においても予想された符号で概ね中程度の相関がみられ,これにより大学生用自己分化度尺度についてある程度の併存的妥当性が示された。

4.総合考察

4.1 信頼性および妥当性の検討 本研究によって,他律的他者傾倒尺度,感情優位性尺度,自律的目標指向尺度の 3 下位尺度からなる大学生用自己分化度尺度が作成され,その信頼性および妥当性が確認された。 しかしながら,特に妥当性の検討は基礎的なものに留まっており,自己分化度を包括的に捉えた場合に関連が想定される概念との関連を示したに過ぎない。今後は下位尺度ごとにより精緻な妥当性の検討を行うことが必要であろう。

4.2 下位尺度の構成概念 「他律的他者傾倒」とは,専らの関心が対人関係に

あり,その維持に没入していることを意味する。この場合,物事の判断は他人の判断に基づいてなされる。これはKerr & Bowen(1988)が「融合(fusion)」と表現している状態に近い側面がある。しかし,本研究で作成された項目内容には,融合に特徴的な「自他境界の曖昧さ」という内容はあまり含まれていない。そのため,本研究では「融合尺度」という名称は用いていない。 また,「感情優位性」とは,理性的な判断や思考が感情によって圧倒されてしまいやすいことを意味する。「感情豊か」ということではなく,自分の感情によって自分が振り回される状況である。これはKerr &

Bowen(1988)が「情動的反応性(emotional reactiveness)」と表現している状態に近い。しかし,本研究では「感情的反応性が高い」ということよりも「感情的側面が他の側面よりも優位になりやすい」ということを強調して「感情優位性尺度」という名称を用いることとした。 以上の 2 つは,自己分化度の 2 つの次元に直接的に対応するものであり,本研究の当初の目的の 1 つは達成できたといえる。 一方,「自律的目標指向」はこれらと異なっている。自律的目標指向は,対人関係にしばられず,自己の判断に基づいて行動し,自分の目標達成にエネルギーを費やすことができる状況である。これは I position

(Bowen, 1978; Kerr & Bowen, 1988)と呼ばれる状況に近く,理論的には,自己分化度の 2 つの次元の分化度の高さによって到達し得る状況である。しかし,自律的目標指向尺度の項目内容だけでは,いうまでもなく

表6 各尺度得点間の相関係数(T1の結果)

1 2 3 41 . 他律的他者傾倒 ―

2 . 感情優位性 .45** ―

3 . 自律的目標指向 .45** .26* ―

4 . 特性不安 -.51** -.49** -.54** ―** p < .01, * p < .05, n = 98

表7 各尺度得点間の相関係数(T2の結果)

1 2 3 4 51 . 他律的他者傾倒 ―

2 . 感情優位性 .45** ―

3 . 自律的目標指向 .23* .27** ―

4 . 本来感 .51** .42** .58** ―

5 . 見捨てられ不安 -.61** -.54** -.25** -.51** ― ** p < .01, * p < .05, n = 121

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工藤 : 大学生用自己分化度尺度の作成

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他律的他者傾倒および感情優位性という側面までは把握できない。すなわち,自律的目標指向尺度得点の高さは,いわゆる I positionと呼ばれるような自己分化度の高い状態に対応する場合だけではなく,単純に対人関係を軽視した自分本位の傾向に対応する場合も考え得るということである。自律的目標指向尺度得点と見捨てられ不安尺度得点との相関が弱かった(表 7)こともこのことを示唆するものと考えることができる。よって,自律的目標指向尺度の結果のみから自己分化度の高低について解釈することは適切ではなく,他の 2 下位尺度の結果も併せて検討することが必要であろう。

4.3 今後の課題 最後に今後の課題を 3 つ述べる。 1 つめは,性差の検討である。本研究のいずれの分析においても性別による分析は行っていない。また,調査協力者はいずれも関東圏にある 1 つの大学の学生であった。今後は,より広範なところから調査協力者を募り,性差の検討を含めた分析が必要である。 2 つ目は,項目の改良である。本研究で作成した尺度には,項目としてはやや長めのものが含まれている。文脈を考慮した結果としてやむを得ない部分もあるが,同等の内容を維持しつつ短縮化を図ることが望ましいだろう。また,自律的目標指向尺度については得点分布が正規分布とはいえない結果となっている

(図 3)。この点を踏まえた項目の改善が必要である。 最後は,本研究で作成された 3 下位尺度それぞれに対応する構成概念間の関係の検討である。特に他律的他者傾倒および感情優位性の 2 つと自律的目標指向との関係については,構造方程式モデリング等を用いて検討することが今後必要である。

付記

 本研究は,日本パーソナリティ心理学会第24回大会および日本心理学会第79回大会においてポスター発表したものを加筆修正したものである。

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1 後にBowen理論とした。

2 この点に関してBowenは,自己分化度の程度を正確に見

極めるためには膨大な量の情報を必要とするためとして

い る(Kerr & Bowen, 1988)。 ま た,Bowenへ の イ ン タ

ビューの記録などからは,家族システム理論に精通しな

い者がこの尺度を安易に利用することを抑制する意図が

その根底にはあったように思われる。したがって,本研

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究において作成した尺度を利用する際にも,上記の点に

ついては十分に留意することが必要である。

3 Family therapy in clinical practice(Bowen, 1978) のpp.472-

475およびFamily evaluation(Kerr & Bowen)のpp.97-107

を参照した。

4 したがって,自己分化度の高さと逆行する概念である他

律的他者傾倒および感情優位性については,その概念に

当てはまる程度が高い者ほど尺度得点は低くなる。

東 京 学 芸 大 学 紀 要 総合教育科学系Ⅰ 第68集(2017)

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工藤 : 大学生用自己分化度尺度の作成

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* Tokyo Gakugei University (4-1-1 Nukuikita-machi, Koganei-shi, Tokyo, 184-8501, Japan)

大学生用自己分化度尺度の作成

—— 信頼性・妥当性の検討 ——

Development of a Differentiation of Self Scale for Undergraduate Students:

Examining its Reliability and Validity

工 藤 浩 二*

Koji KUDO

臨床心理学分野

Abstract

The purposes of this study were to develop a Differentiation of Self Scale for Undergraduate Students (DSSU) and to

examine its reliability and validity. Questionnaires were administered three times to undergraduate students in the Kanto

area. Exploratory factor analysis revealed that the DSSU consisted of three factors, namely, Other-directed/Other-committed,

Emotion-Dominated, and Self-determined/Goal-directed, and it was shown that these three had good internal consistency

and test-retest reliability. Also, analysis of correlation between the DSSU and the other scales (trait anxiety, sense of

authenticity, and fear of abandonment) showed the relationships theoretically expected. The results suggested that the DSSU

had sufficient validity.

Keywords: differentiation of self, undergraduate students, scale development

Department of Clinical Psychology, Tokyo Gakugei University, 4-1-1 Nukuikita-machi, Koganei-shi, Tokyo 184-8501, Japan

要旨: 本研究の目的は,大学生を対象とした自己分化度尺度を作成し,その信頼性と妥当性を検討することであった。関東圏の大学生を対象として 3 回の質問紙調査を実施した。その結果,他律的他者傾倒,感情優位性および自律的目標指向の 3 因子が抽出され,十分な内的整合性および再検査信頼性が確認された。また,特性不安,本来感,見捨てられ不安との関連を検討した結果,それぞれ理論的に予想される関連が示され,この尺度には一定の妥当性があることが示された。

キーワード: 自己分化度,大学生,尺度作成

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