新研究テーマ 紹介 · 研究の内容...

1
下水道機構情報 Vol.12 No.26 —— 29 効果的,効率的な浸水対策に資する ポンプゲートに関する共同研究 1 研究の背景 近年,局地的集中豪雨(いわゆるゲリラ豪雨)が多 発し,全国各地で浸水被害が発生しています。国はそ の対策として下水道法や水防法の改正等を行ってお り,それらを踏まえて既存ストックを最大限活用した 浸水対策,いわゆる効率的・効果的で段階的な浸水対 策等の推進が求められています。 研究の目的 本研究では,平成29年7月に改定された「雨水管理 総合計画策定ガイドライン」の中でも,ストックを活 用して迅速かつ効率的に対策可能なハード対策の例と して紹介された「ポンプゲート」を段階的浸水対策の 要として導入するための,PDCAサイクルから成るマ ニュアル作成を目的としています。 研究の内容 ①ケーススタディ(机上検討);ストック活用型浸水 対策として,ポンプゲートを既存の水路に導入する 新研究テーマ 紹介 研究第二部 研究員 野入 菜摘 場合の計画・設計検討を,現場条件の異なる4ケー ス実施します。 ②計画・設計の標準化検討;ケーススタディ結果を踏 まえた計画・設計手法の検討を行い,地域特性等に 合ったポンプゲートの仕様選定マトリクスや,計 画・設計の手順をフロー図等の形に取りまとめます。 ③運転管理手法の検討;水防情報を活用した効率的・ 効果的な運転管理手法について,ICTやIoTの導入 も含めた検討を行います。 ④技術マニュアル(案)の作成;上記研究成果を技術 マニュアル(案)として取りまとめます。マニュア ル化に際しては,設計,施工に関する内容はもちろ ん,段階的浸水対策としての計画論,河川管理者等 との協議や連携手法についても記載する等,PDCA サイクルを盛り込むことにより下水道管理者にとっ てわかりやすい内容を目指します。 研究体制 本研究は,管理者参加型共同研究 として,旭川 市,高知市,㈱NJS,㈱石垣,㈱丸島アクアシステム, (公財)日本下水道新技術機構の6者体制で実施します (研究期間:平成29年8月~平成31年3月(予定))。 また,研究内容は学識経験者および国・自治体等で構 成される「ストック活用型浸水対策等調査検討委員 会」(委員長:東京大学大学院古米教授)で審議して いただきます。 ※下水道管理者(2都市)には,ケーススタディのフィ ールドをご提供いただくとともに,下水道管理者の立 場からケーススタディに対するご意見やアドバイス等 をいただきます。 図-1 ポンプゲート施設概要図

Upload: others

Post on 15-Aug-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 新研究テーマ 紹介 · 研究の内容 ①ケーススタディ(机上検討);ストック活用型浸水 対策として,ポンプゲートを既存の水路に導入する

下水道機構情報 Vol.12 No.26 —— 29

効果的,効率的な浸水対策に資するポンプゲートに関する共同研究

1研究の背景

 近年,局地的集中豪雨(いわゆるゲリラ豪雨)が多発し,全国各地で浸水被害が発生しています。国はその対策として下水道法や水防法の改正等を行っており,それらを踏まえて既存ストックを最大限活用した浸水対策,いわゆる効率的・効果的で段階的な浸水対策等の推進が求められています。

研究の目的

本研究では,平成29年7月に改定された「雨水管理総合計画策定ガイドライン」の中でも,ストックを活用して迅速かつ効率的に対策可能なハード対策の例として紹介された「ポンプゲート」を段階的浸水対策の要として導入するための,PDCAサイクルから成るマニュアル作成を目的としています。

研究の内容

①ケーススタディ(机上検討);ストック活用型浸水対策として,ポンプゲートを既存の水路に導入する

新研究テーマの紹介

研究第二部 研究員

野入 菜摘

場合の計画・設計検討を,現場条件の異なる4ケース実施します。②計画・設計の標準化検討;ケーススタディ結果を踏まえた計画・設計手法の検討を行い,地域特性等に合ったポンプゲートの仕様選定マトリクスや,計画・設計の手順をフロー図等の形に取りまとめます。③運転管理手法の検討;水防情報を活用した効率的・効果的な運転管理手法について,ICTやIoTの導入も含めた検討を行います。④技術マニュアル(案)の作成;上記研究成果を技術マニュアル(案)として取りまとめます。マニュアル化に際しては,設計,施工に関する内容はもちろん,段階的浸水対策としての計画論,河川管理者等との協議や連携手法についても記載する等,PDCAサイクルを盛り込むことにより下水道管理者にとってわかりやすい内容を目指します。

研究体制

 本研究は,管理者参加型共同研究※として,旭川市,高知市,㈱NJS,㈱石垣,㈱丸島アクアシステム,(公財)日本下水道新技術機構の6者体制で実施します(研究期間:平成29年8月~平成31年3月(予定))。また,研究内容は学識経験者および国・自治体等で構成される「ストック活用型浸水対策等調査検討委員会」(委員長:東京大学大学院古米教授)で審議していただきます。※下水道管理者(2都市)には,ケーススタディのフィールドをご提供いただくとともに,下水道管理者の立場からケーススタディに対するご意見やアドバイス等をいただきます。

図-1 ポンプゲート施設概要図