特集 消費税増税に対する自治体の対応...5% 678...

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平成24年8月10日、消費税法 の一部改正が国会で可決・成立 し、現行5%の消費税(消費税及 び地方消費税)が平成26年4月1 日から8%へ、平成27年10月1 日からは10%へ引上げられるこ とが決まった。但し、消費税引 上げによる景気の悪化を懸念し、 この改正法には「経済状況等を総 合的に勘案した上で、その施行 の停止を含め所要の措置を講ず る。」との附則が定められている。 〜募集要項等から見えてくるその実態とは〜 消費税引上げの最終的判断は、時 の内閣(首相)に委ねられたのだ。 平成25年10月1日、安倍内閣 は「消費税率を平成26年4月1日 に5%から8%へ引上げる」こと を閣議決定した。これにより、ま ず第一段階の消費税引上げ(5% →8%)が正式に決まったのであ る。 この消費税引上げは、指定管 理者の収支にも少なからぬ影響 を及ぼす。既に厳しい収支状況 の中で運営している事例が少な くないところで、増税分を指定 管理者の運営努力のみで吸収す ることは困難が予想される。 そこで重要となるのが自治体 側の対応だ。消費税増税分の負担 を自治体側がどのようにカバー していこうとしているのか。本誌 では、インターネットを使って 全国自治体の情報を収集し、そ の対応実態を探ってみた。 6 月刊 指定管理者制度 13.12月号 特集

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Page 1: 特集 消費税増税に対する自治体の対応...5% 678 消費税増税に対する自治体の対応 平成24年8月10日、消費税法 の一部改正が国会で可決・成立

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消費税増税に対する自治体の対応

 平成24年8月10日、消費税法の一部改正が国会で可決・成立し、現行5%の消費税(消費税及び地方消費税)が平成26年4月1日から8%へ、平成27年10月1日からは10%へ引上げられることが決まった。但し、消費税引上げによる景気の悪化を懸念し、この改正法には「経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる。」との附則が定められている。

〜募集要項等から見えてくるその実態とは〜

特 集

消費税引上げの最終的判断は、時の内閣(首相)に委ねられたのだ。 平成25年10月1日、安倍内閣は「消費税率を平成26年4月1日に5%から8%へ引上げる」ことを閣議決定した。これにより、まず第一段階の消費税引上げ(5%→8%)が正式に決まったのである。 この消費税引上げは、指定管理者の収支にも少なからぬ影響を及ぼす。既に厳しい収支状況

の中で運営している事例が少なくないところで、増税分を指定管理者の運営努力のみで吸収することは困難が予想される。 そこで重要となるのが自治体側の対応だ。消費税増税分の負担を自治体側がどのようにカバーしていこうとしているのか。本誌では、インターネットを使って全国自治体の情報を収集し、その対応実態を探ってみた。

6 月刊 指定管理者制度 13.12月号

特  集

特集

Page 2: 特集 消費税増税に対する自治体の対応...5% 678 消費税増税に対する自治体の対応 平成24年8月10日、消費税法 の一部改正が国会で可決・成立

1 指定管理者にとっての消費税とは

 公共施設の管理運営業務を自治体が直営する場合には、消費税は課税されない。しかし、同じ公共施設を民間事業者が指定管理者として管理運営する場合には、たとえ公共サービスを代行しているとはいえ消費税が課税されることになる。 指定管理者にとっての消費税の主な課税対象項目としては、以下の項目が挙げられる。

主な消費税課税対象

○指定管理料(委託料)○利用料金(利用料金制の場合)○修繕費(指定管理料に含まれるケースもある)○�備品購入費(指定管理料に含まれるケースが多い) *�なお、指定管理者が行う自主事業関連の収支については、原則、指定管理者の独立採算が一般的であるため、消費税増税の負担は当然指定管理者自らが負うこととなる。

⑴ 指定管理料と消費税

 このうち指定管理料が金額として最も大きいと考えられるが、全額が消費税の対象になるとは限らない。公共施設の事業内容によっては、非課税となる事業が含まれるケースがあるからだ。指定管理者に関連する具体的な非課税対象となる事業は以下のとおり。

消費税非課税となる取引例

○�公的な医療保障制度に係る療養、医療、施設療養又はこれらに類する資産の譲渡等○�介護保険法の規定に基づく、居宅・施設・地域密着型介護サービス費の支給に係る居宅・施設・地域密着型サービス等○�社会福祉法に規定する社会福祉事業等(第一種社会福祉事業及び第二種社会福祉事業)として行われる資産の譲渡等○�医師、助産師その他医療に関する施設の開設者

による、助産に係る資産の譲渡等○�墓地、埋葬等に関する法律に規定する埋葬・火葬に係る埋葬料・火葬料を対価とする役務の提供

○�身体障害者の使用に供するための特殊な性状、構造又は機能を有する物品の譲渡、貸付け等

○�学校、専修学校、各種学校等の授業料、入学金、施設設備費等 他

 (「消費税のあらまし」平成25年6月国税庁より) たとえば、老人福祉センターでの介護予防講座や介助実習講座、子育て支援施設や児童館での保育事業や託児事業などは非課税となる可能性がある。所管の税務署に問い合わせて確認する必要があろう。 ただ、このような非課税分野の事業は一部に限られており、大多数の指定管理者は、消費税増税の影響をもろに被るかもしれない状況に立たされているのだ。1施設の指定管理業務に関する指定管理料が年間数百万円から数千万円にのぼることはざらであり、億単位になるケースも珍しくない。その2~3%分の増税額を全額負担するとなれば、リスクは大きい。

⑵ 利用料金と消費税

 利用料金制の場合、指定管理者にとって利用料金収入が重要な収入源となる。場合によっては、指定管理料ゼロで利用料金収入のみで管理運営するケースもある。 この利用料金は、自治体の条例で上限が設定されており、しかもその基準額は税込である。この上限を超えて、指定管理者が勝手に増税分を利用料金に上乗せすることは許されない。条例を改正するには、議会の議決が必要であり手間と時間がかかる。受益者負担を名目に利用料金を値上げするには、住民への説明責任を果たす必要もある。 しかし、条例改正ができず、利用料金が現行のまま据え置かれた場合には、消費税増税分が指定管理者の収入減(実質的な目減り)に直結することになる。

月刊 指定管理者制度 13.12月号 7

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