病害虫発生予察特殊報 第1号 - 茨城県...令和2年度 病害虫発生予察特殊報...

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令和 2 年度 病害虫発生予察特殊報 第1号 令和2年9月28日 茨城県病害虫防除所 TEL: 0299-45-8200 ミナミアオカメムシの発生について :ミナミアオカメムシ Nezara viridula (Linnaeus) :水稲 1.発生確認の経緯及び県外での発生状況 (1) 令和 2 年 8 月,県南地域に設置した予察灯で,本県では未発生のミナミアオカメムシが誘殺され た。また,同月に県南地域の水稲圃場において,本虫と疑われるカメムシ幼虫(写真 1)が確認さ れたため,室内飼育して得られた成虫について形態的特徴を調査した結果,ミナミアオカメムシ であることが判明した。 (2) 国内では,1950 年代までは九州地方を中心に発生していたが,その後,西日本を中心に分布が拡 大している。近年は関東地方でも発生が確認され,平成 22 年以降,千葉県,神奈川県,東京都, 埼玉県で特殊報が発表されている。 2.形態の特徴 成虫の体長は 12~16mm で,外見はアオクサカメムシによく似ており,小楯板上端に 3 つの白い斑点 があることは共通している(写真 2)が,触角の第 3~5 節の先半分が褐色(アオクサカメムシは黒色)で あることや,腹部背面が一様に緑色(アオクサカメムシは一部が黒色)であること(写真 3,4)で識別で きる。成虫の体色には遺伝的変異があり,多くの色彩型がある。 3.生態の特徴 世界各地の熱帯から亜熱帯,温帯地方南部に広く分布する。1~5 齢幼虫を経過して成虫となり,国 内では年 3~4 世代を経過する。成虫で越冬するが,最寒月の平均気温が 5℃以下の地域では越冬でき ないとされている。 4.被害の特徴 成幼虫ともに口針で植物の汁液を吸汁する。広食性で水稲,大豆,野菜類,果樹類等 32 科 145 種の 植物を吸汁することが知られている。 水稲では穂を吸汁し斑点米を生じさせる。本虫は斑点米カメムシ類の中では比較的大型であり,低 密度でも被害が大きくなるとされている。 5.防除対策 本種を確認した圃場では,必要に応じて各作物でカメムシ類に登録のある農薬で防除する。なお, 農薬を使用する際は,農薬ラベルに記載の使用基準,注意事項等を確認の上使用する。

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  • 令和2年度

    病 害 虫 発 生 予 察 特 殊 報 第 1号 令 和 2 年 9 月 2 8 日

    茨 城 県 病 害 虫 防 除 所

    T E L: 0 2 9 9 - 4 5 - 8 2 0 0

    ミナミアオカメムシの発生について

    害 虫 名 :ミナミアオカメムシ

    学 名 :Nezara viridula (Linnaeus)

    発 生 作 物 :水稲

    1.発生確認の経緯及び県外での発生状況

    (1) 令和 2年 8月,県南地域に設置した予察灯で,本県では未発生のミナミアオカメムシが誘殺され

    た。また,同月に県南地域の水稲圃場において,本虫と疑われるカメムシ幼虫(写真 1)が確認さ

    れたため,室内飼育して得られた成虫について形態的特徴を調査した結果,ミナミアオカメムシ

    であることが判明した。

    (2) 国内では,1950年代までは九州地方を中心に発生していたが,その後,西日本を中心に分布が拡

    大している。近年は関東地方でも発生が確認され,平成22年以降,千葉県,神奈川県,東京都,

    埼玉県で特殊報が発表されている。

    2.形態の特徴

    成虫の体長は12~16mmで,外見はアオクサカメムシによく似ており,小楯板上端に3つの白い斑点

    があることは共通している(写真 2)が,触角の第3~5節の先半分が褐色(アオクサカメムシは黒色)で

    あることや,腹部背面が一様に緑色(アオクサカメムシは一部が黒色)であること(写真 3,4)で識別で

    きる。成虫の体色には遺伝的変異があり,多くの色彩型がある。

    3.生態の特徴

    世界各地の熱帯から亜熱帯,温帯地方南部に広く分布する。1~5齢幼虫を経過して成虫となり,国

    内では年3~4世代を経過する。成虫で越冬するが,最寒月の平均気温が5℃以下の地域では越冬でき

    ないとされている。

    4.被害の特徴

    成幼虫ともに口針で植物の汁液を吸汁する。広食性で水稲,大豆,野菜類,果樹類等32科 145種の

    植物を吸汁することが知られている。

    水稲では穂を吸汁し斑点米を生じさせる。本虫は斑点米カメムシ類の中では比較的大型であり,低

    密度でも被害が大きくなるとされている。

    5.防除対策

    本種を確認した圃場では,必要に応じて各作物でカメムシ類に登録のある農薬で防除する。なお,

    農薬を使用する際は,農薬ラベルに記載の使用基準,注意事項等を確認の上使用する。

  • 写真 2 ミナミアオカメムシ成虫

    (円内の小楯板上端に3つの白い斑点)

    写真 3 ミナミアオカメムシの腹部背面

    (円内が一様に緑色)

    写真 1 ミナミアオカメムシ 5齢幼虫

    写真 4 アオクサカメムシの腹部背面

    (円内の一部が黒色)