簿記の効率的指導方法について - gen1.open.ed.jp · 全商簿記検定1級模擬問題...

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沖縄県立総合教育センター 1年長期研修員 第 集 研究収録 2011年3月 <ビジネスシステム> 簿記の効率的指導方法について 日商簿記検定2級仕訳問題習得に向けての自主学習教材作成沖縄県立浦添商業高等学校教諭 福 地 麻由美 テーマ設定の理由 本校総合ビジネス科は平成 19 年度に商業科から名称を変更し,学科の目標を「商業の各分野に関する 基礎的・基本的な知識と技術(会計活用能力・マーケティング能力・情報活用能力)を習得させ,ビジネ スパーソンに必要な心構えや理念を身につけ,地域社会の経済発展に寄与する能力と態度を育てる」こと としている。これらの目標を達成するため2学年より選択科目群による授業を行っている。1学年では基 礎科目である「簿記」「ビジネス基礎」「情報処理」を履修し,2学年より3つの選択科目群(会計ビジ ネス・流通ビジネス・オフィスワーク)の中から生徒が各自の適正を考えながら科目群を選択する。特に 会計ビジネスでは会計活用能力を育成するため教育課程に「会計」「原価計算」学校設定科目「簿記演習 Ⅰ・Ⅱ」をおき,日商簿記検定等 *1 の高度資格取得に向けて取り組んでいる。 これまで3年生の「簿記演習Ⅱ」を担当して感じたことは,仕訳を苦手としている生徒が多いというこ とである。全商簿記検定 *2 を目標に学習をすすめている段階では,比較的仕訳問題にも苦手意識を持た ずに取り組むが,日商簿記検定の学習に進むと途端に苦手な生徒が増えてくる。長い問題文と難しい言葉 の表現に戸惑い,挑戦しようという意欲が持てなくなるようである。解説しながら問題に取り組んでいる 間は,発問にもよく答え,理解した表情を見せるが,類似した練習問題に取り組ませると,問題文のどの 部分を読み取り,解答を導き出せばよいのか戸惑い,解けない生徒が多い。さらに1つの問題解説に時間 がかかるため,生徒1人1人の進度にバラつきが生じてくると,机間指導を通して個別に十分な解説を行 うことが難しい。何人かの生徒を待たせてしまうことも度々あり,時間のロスが生じる。生徒の仕訳の力 がまだ十分でなく,解説が必要な間は練習問題に取り組むことが難しい。 仕訳は簿記学習の基本であり,検定に合格する上でも大切な要素となる。授業を担当する者として,何 とか生徒たちの苦手意識を取り除き,練習問題に積極的に取り組むことで仕訳の力を身につけさせたい。 本研究では問題文のどの部分がキーワードなのか,またキーワードから導き出される勘定科目や計算式, 解説などを必要に応じて確認することができ,反復学習のできる自主学習教材の作成を行う。さらに授業 だけでなく放課後の自主学習の際にも活用でき,仕訳問題習得の一助になる教材作成を目指し,本テーマ を設定した。 <研究仮説> 日商簿記検定等の仕訳の学習において,生徒個々のペースにあわせて学習できる自主学習教材を活用す ることで,意欲的に学習する態度をはぐくみ,理解を深めることができるであろう。 *1 日本商工会議所主催簿記検定 *2 全国商業高等学校協会主催簿記実務検定試験 研究内容 1 年間指導計画の作成 従来の年間指導計画では,6月まで日商簿記検定2級の学習を進める前段階として,日商簿記検定 3級の問題を用いて日商独特の出題形式に慣れさせるとともに,基礎固めを行ってきた。また,前年 度に全商簿記検定1級合格に至らなかった生徒たちの指導にも時間を要するため,目標とする日商簿 記検定2級範囲の学習に入るのは7月からとなっていた。 学科改編後,生徒の学習に対する意識が高まってきたためか前年度は全商簿記検定の合格者が増加し たため,基礎がある程度定着したものと判断し,4月から日商簿記検定2級の学習に取り組むよう年 間指導計画を変更した。11月に全員が受験するペースで学習をすすめる。中には先がけて6月に受験 する生徒もおり,6月までは第2問の帳簿組織等の問題と,第3問の決算の問題を中心に授業を行う。 6月に受験する生徒は基礎がしっかり定着している生徒たちなので,第1問については放課後等を利 用しての個別指導で対応する。第4問・第5問の工業簿記の分野は,別に原価計算の授業が設定され

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沖縄県立総合教育センター 1年長期研修員 第 集 研究収録 2011年3月

<ビジネスシステム>

簿記の効率的指導方法について

-日商簿記検定2級仕訳問題習得に向けての自主学習教材作成-

沖縄県立浦添商業高等学校教諭 福 地 麻由美

Ⅰ テーマ設定の理由

本校総合ビジネス科は平成 19 年度に商業科から名称を変更し,学科の目標を「商業の各分野に関する

基礎的・基本的な知識と技術(会計活用能力・マーケティング能力・情報活用能力)を習得させ,ビジネ

スパーソンに必要な心構えや理念を身につけ,地域社会の経済発展に寄与する能力と態度を育てる」こと

としている。これらの目標を達成するため2学年より選択科目群による授業を行っている。1学年では基

礎科目である「簿記」「ビジネス基礎」「情報処理」を履修し,2学年より3つの選択科目群(会計ビジ

ネス・流通ビジネス・オフィスワーク)の中から生徒が各自の適正を考えながら科目群を選択する。特に

会計ビジネスでは会計活用能力を育成するため教育課程に「会計」「原価計算」学校設定科目「簿記演習

Ⅰ・Ⅱ」をおき,日商簿記検定等*1の高度資格取得に向けて取り組んでいる。

これまで3年生の「簿記演習Ⅱ」を担当して感じたことは,仕訳を苦手としている生徒が多いというこ

とである。全商簿記検定*2を目標に学習をすすめている段階では,比較的仕訳問題にも苦手意識を持た

ずに取り組むが,日商簿記検定の学習に進むと途端に苦手な生徒が増えてくる。長い問題文と難しい言葉

の表現に戸惑い,挑戦しようという意欲が持てなくなるようである。解説しながら問題に取り組んでいる

間は,発問にもよく答え,理解した表情を見せるが,類似した練習問題に取り組ませると,問題文のどの

部分を読み取り,解答を導き出せばよいのか戸惑い,解けない生徒が多い。さらに1つの問題解説に時間

がかかるため,生徒1人1人の進度にバラつきが生じてくると,机間指導を通して個別に十分な解説を行

うことが難しい。何人かの生徒を待たせてしまうことも度々あり,時間のロスが生じる。生徒の仕訳の力

がまだ十分でなく,解説が必要な間は練習問題に取り組むことが難しい。

仕訳は簿記学習の基本であり,検定に合格する上でも大切な要素となる。授業を担当する者として,何

とか生徒たちの苦手意識を取り除き,練習問題に積極的に取り組むことで仕訳の力を身につけさせたい。

本研究では問題文のどの部分がキーワードなのか,またキーワードから導き出される勘定科目や計算式,

解説などを必要に応じて確認することができ,反復学習のできる自主学習教材の作成を行う。さらに授業

だけでなく放課後の自主学習の際にも活用でき,仕訳問題習得の一助になる教材作成を目指し,本テーマ

を設定した。

<研究仮説>

日商簿記検定等の仕訳の学習において,生徒個々のペースにあわせて学習できる自主学習教材を活用す

ることで,意欲的に学習する態度をはぐくみ,理解を深めることができるであろう。 *1 日本商工会議所主催簿記検定 *2 全国商業高等学校協会主催簿記実務検定試験

Ⅱ 研究内容

1 年間指導計画の作成

従来の年間指導計画では,6月まで日商簿記検定2級の学習を進める前段階として,日商簿記検定

3級の問題を用いて日商独特の出題形式に慣れさせるとともに,基礎固めを行ってきた。また,前年

度に全商簿記検定1級合格に至らなかった生徒たちの指導にも時間を要するため,目標とする日商簿

記検定2級範囲の学習に入るのは7月からとなっていた。

学科改編後,生徒の学習に対する意識が高まってきたためか前年度は全商簿記検定の合格者が増加し

たため,基礎がある程度定着したものと判断し,4月から日商簿記検定2級の学習に取り組むよう年

間指導計画を変更した。11月に全員が受験するペースで学習をすすめる。中には先がけて6月に受験

する生徒もおり,6月までは第2問の帳簿組織等の問題と,第3問の決算の問題を中心に授業を行う。

6月に受験する生徒は基礎がしっかり定着している生徒たちなので,第1問については放課後等を利

用しての個別指導で対応する。第4問・第5問の工業簿記の分野は,別に原価計算の授業が設定され

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ているため,11月の検定試験までは簿記演習Ⅱの授業では単元ごとの指導は行わず,模擬試験問題の

み授業で取り扱うこととする。検定後は合格に達しなかった生徒を対象に,総復習と工業簿記分野の

内容も取り扱っていく計画とした。

表1 年間指導計画

教科 商業 科目 簿記演習Ⅱ 単位数 4 3年総合ビジネス科

教科書 新会計(実教出版) 原価計算(実教出版)

目標

企業における取引の記録・計算・整理に関する知識と技術を習得させ,簿記の基本的な仕組み

について理解させるとともに,ビジネスの諸活動を計数的に把握する態度を育てる。

また,1・2年生で学んだ「簿記」「会計」「原価計算」「簿記演習Ⅰ」に関する知識と技術

をさらに深め,上級の資格取得を目指す。

関心・意欲・態度 思考・判断 技能・表現 知識・理解

株式会社会計における

会計・原価計算に関心を

持ち,その知識と技術の

習得を目指して意欲的に

取り組み,ビジネスの諸

活動を計数的に把握する

実践的な態度を身につけ

ている。

財務諸表の作成に

ついて,自ら思考を

深め,基本的な知識

と技術を活用して適

切に判断し,創意工

夫する態度を身につ

けている。

株式会社における

会計・原価計算の基

本的な技術を身につ

け,ビジネスの諸活

動 を 計 数 的 に 把 握

し,的確に処理する

ことができる。

株式会社における会

計・原価計算に関する

基礎的な知識を身につ

け,企業会計の基本的

な理論及び財務諸表の

作成方法について理解

している。

・学習活動への参加態度

・観察(発言・発表)

・課題(問題集)

・検定への取り組み

・授業外での課題活動の

取り組み

・定期考査内の応用

問題

・課題(問題集)の

考察内容

・授業外での課題活

動の内容

・定期考査内の応用

問題

・課題(問題集)の

まとめ方・記述

・授業外での課題活

動の内容

・定期考査

・小テスト

・全商簿記検定

・日商簿記検定

・授業外での課題活動

の内容

学期 月 単元名 学習内容 配当時間

10

11

12

日商簿記検定2級

「第2問 帳簿組織等の問題」

「第3問 決算の問題」

全商簿記検定1級模擬問題

日商簿記検定2級演習問題

日商簿記検定2級

「第1問 仕訳」

日商簿記検定2級模擬問題

日商簿記検定2級

「第4問 個別原価計算など」

伝票(仕訳日計表作成,転記)

特殊仕訳帳(記入,転記)

特殊仕訳帳(試算表作成)

精算表

勘定の締め切り

本支店合併の損益計算書・貸借対照表

損益計算書・貸借対照表

全商簿記検定1級模擬問題

日商簿記検定2級演習問題

現金預金・売買目的有価証券・手形商品売

買・固定資産・株式発行・純損益の計上・

剰余金の配当および処分・損失の処理・社

債・企業の取得と合併・会社の税金・保険

契約

日商簿記検定2級模擬問題

個別原価計算・工場会計の独立・総合原価

計算・材料費会計・製造間接費会計

総合原価計算・標準原価計算・部門別計

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12

16

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3 1

2 「第5問 総合原価計算など」

日商簿記検定2級模擬問題

算・直接原価計算・CVP分析・製造間接

費会計

日商簿記検定2級模擬問題

14

10

2 資料収集

書籍やインターネット等に,どの様に解説が記されているか資料収集を行った。自主学習教材に盛

り込む解説を,簡潔で分かりやすい解説とするための表現方法などについて資料収集を行うことがで

きた。

3 教材作成のための知識と技術の習得

自主学習教材の作成にあたり,日商簿記検定2級範囲の仕訳問題の見直しを行った。問題解釈にお

いて曖昧だった点などを再確認することができた。また,分かりやすい解説の表示方法などを考える

良い機会になったと感じている。

4 教材作成ソフトに関する技術の習得

必修講座「ICTを活用した授業改善」,長研講座「アプリケーションソフトの活用」や「マルチ

メディア技術」,夏季休暇中の「情報処理技術講座」をとおして,SMART-HTMLやSTUDY,Photoshop,

Flash,Illustrator の基本的な使い方を習得した。

Flash は,ブラウザ上で再生可能なアニメーションを作成することができる。また,搭載されてい

るスクリプト言語(ActionScript)を記述することにより,Flashで作成したオブジェクトに対して

命令を記述したり,Flash ムービーの再生を制御したり,命令を実行するタイミングを設定したりす

ることができる。そのため,進度にバラつきが生じてしまった仕訳の学習において,生徒個々に応じ

て学習を支援することのできる自主学習教材が作成できるのではないかと考え,Flash を用いて教材

の作成を行った。

5 学習教材の開発

(1) 自主学習教材「仕訳できーる」の作成

学校設定科目「簿記演習Ⅱ」の授業において生徒が自分のペースで意欲的に学習でき,理解を深

めることのできる自主学習教材を目指して以下の教材を作成した。

① 初期画面(図1)

初期画面において,初めて「仕訳できーる」を使用して学習する生徒はまず使い方の説明画面

へ,初めてでない生徒はすぐ学習へ進めるようボタンを配置した。

② 学習の進め方(図2)

「仕訳できーる」を使用した学習方法を表示し,他の教師が授業で使用する際や,生徒が授業

以外で使用できるようにした。

図2 学習の進め方 図1 初期画面

③ 学習メニュー(図3)

仕訳問題を単元ごとに分類し,学習メニューを作成

した。学習メニューに表示されている項目を選びクリ

ックすると,学習したい単元の問題が表示される。生

徒は授業の際に教師から指示された項目や,自分の苦

手としている項目をクリックすることで,問題に進む

ことができる。

図3 学習メニュー

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「解答/解説」ボタン

が表示される

一定時間経過すると

「ヒントを表示」

④ 仕訳問題(ノーヒント)(図4)

仕訳とは,企業で行われる日々の取引を,一定の

ルールに従って簡潔に略して示すことである。記

帳に用いる用語(勘定科目)も決まっており,生

徒は問題文の中から適切な勘定科目を導き出し,

解答する必要がある。自主学習教材「仕訳できー

る」において,ヒントや解答・解説を表示し学習

を支援するが,生徒がじっくり問題に取り組むこ

となく,すぐにヒントや解説に頼ってしまうこと

が予想される。解答・解説を見て理解したつもり

で学習を進めても,それでは十分な学習効果が期

待できない。高度な日商簿記検定に対応できる仕

訳の力を身につけるため,まず自分で考えてみる

姿勢や,仕訳に挑戦する態度を育成したいと考え,

最初はノーヒントで問題を表示するようにした。

図 4 仕訳問題(ノーヒント)

⑤ 仕訳問題(アンダーライン表示)(図5)

問題を表示した後,一定時間経過すると,ヒン

トを表示するかどうかを問うボタンが表示される。

ノーヒントで問題を解くことが難しい生徒が「ヒ

ントを表示」ボタンをクリックすると,問題文に

アンダーラインが表示される。これはアンダーラ

インの部分から仕訳に用いる勘定科目を導き出す

ことができるというヒントとなる。生徒はアンダ

ーライン部分に注目して,どの勘定科目が適切か

もう一度考え,問題に挑戦することができる。

図5 仕訳問題(アンダーライン表示)

⑥ 仕訳問題(勘定科目表示)(図6)

アンダーラインの部分に注目しても,解答を導

き出せない場合は,さらに学習を支援する。アン

ダーラインにマウスをポイントするとアンダーラ

インの色が変わり,問題文の上部にアンダーライ

ンの部分から読み取れる勘定科目が表示される。

生徒は表示された勘定科目から,解答を導き出し,

ワークシートに記入する。解答後に「解答/解説」

ボタンをクリックすると,解答・解説画面が表示

される。

図6 仕訳問題(勘定科目表示)

⑦ 解答・解説(図7)

ワークシートに記入した解答が正しいかどうか解

答・解説画面で確認し,間違えた問題については,

解説部分から要点をワークシートへメモして,

「次の問題」ボタンをクリックし,学習を進める

ことができるようにした。解説が長くなってしま

う問題については,解説をブロックごとに色分け

し,解答と色を揃えることで,解説が解答のどの

部分を対象としたものなのか一目で分かるように

した。

図7 解答・解説

6 ワークシートの作成

(1) ワークシート印刷マニュアル(図8)

自主学習教材「仕訳できーる」とあわせてワーク

シートを使用する。授業外で自主学習する生徒は,

自分で使用するワークシートを印刷して学習してほ

図8 ワークシート印刷マニュアル

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しいと考え,ワークシートの印刷マニュアルを作成

した。ワークシートはPDF形式で作成し,活用でき

るようにしている。PDF形式としたのは,学習

者のコンピュータの環境に依存せず,どんな環

境で閲覧しても,こちらの意図した通りのレイ

アウトやフォントで文章を再現することができ

るからである。

(2) プリントメニュー(図9)

ワークシートは全部で20ページで構成した。プリ

ントメニューとPDF 形式のワークシートをリンクさ

せ,プリントメニューの中から自分が学習を始める

項目をクリックすることで,学習に必要なプリント

が表示され,印刷できるようにした。

(3) ワークシート(図10)

自主学習教材「仕訳できーる」では,パソコン上

で問題・ヒント・解答・解説の表示を行う。ワーク

シートには問題・解答欄・メモ欄を配置し,解答は

手書きで記入する方法をとる。仕訳の問題は勘定科

目の僅かな書き違いで,誤答となる。漢字で書くべ

き勘定科目を仮名で書くことも許されていないため,

正しい勘定科目を確実に身につけさせたいと考えて

いる。自主学習教材「仕訳できーる」上に解答を入

力するのではなく,ワークシートに手書きの回答を

記述させることで,正しい勘定科目を使用する力が身につくのではないかと考える。ワークシー

トには解答だけでなく,間違えた問題の解説部分から要点をまとめるメモ欄を配置した。生徒が

ふだん授業で使用している問題集には,要点をメモするスペースが確保されておらず,生徒は別

冊のノート等に要点や計算式などを記入している。ワークシートにメモ欄を配置することで,問

題・解答・解説を並べて表示することができる。問題文の行間も広めに設定し,自主学習教材を

用いて学習中,ヒントとして表示された勘定科目やアンダーラインをメモするスペースを確保し

た。アンダーラインや勘定科目をメモすることで,問題文から勘定科目を導き出すトレーニング

ができると考えている。また,学習後は使用したワークシートを持ち帰り,反復学習に用いるこ

とができる。

図9 プリントメニュー

メモ欄解答欄 問題

図 10 ワークシート

Ⅲ 指導の実際

1 検証授業

(1) 学習指導案

検証授業において,これまで作成を行ってきた自主学習教材とワークシートを活用し,仕訳の学

習を行うことで,生徒個々のペースに応じた支援を行うことができ,仕訳の理解が深まり,意欲的

に学習に取り組めたかを検証した。

表2 学習指導案

実施日時 平成22年11月24日(水)

実施場所 沖縄県立浦添商業高等学校 第1PC教室

指導学級 3年1組(総合ビジネス科会計ビジネスクラス)38名

単元名 仕訳 社債の発行・利息の支払い・決算日の処理・満期償還

固定資産の除却・廃棄・買い換え

単元設定

の理由 (1) 教材観

社債の問題について,償却原価法における額面金額と払込金額の差額の処理につい

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て,なぜ社債利息で処理するのか,処理した結果社債の帳簿価額がどの様に変化するの

か理解を深めることができる。固定資産の問題においても,除却と廃棄の違いについて

理解を深めることができる。

単元設定

の理由

(2) 生徒観

会計ビジネスクラスは,簿記をより深く学びたいという生徒たちを集めて編成された

クラスである。学習をすすめるにつれ苦手意識を持ってしまう生徒も出てきた。個別指

導では1度に対応できる生徒数も限られてしまい,対応できない生徒もいる。学習には

比較的意欲的に取り組む生徒たちではあるが,待たされている間に集中力が途切れる生

徒もいる。自主学習教材を活用することで,支援を必要としている生徒を待たせること

なく対応でき,学習意欲を保ったまま学習をすすめることができるのではないかと考え

る。

(3) 指導観

仕訳を行う力は反復し何度も練習することで身に付く。 学習後にワークシートを持ち

帰って活用させるため,特に間違った問題に関してはメモ欄に要点を確実にメモさせ,

復習の資料として活用するよう促す。

単元の

指導目標

社債・固定資産の取引について,取引の概要を理解し,仕訳として表現する力を身につ

けさせる。

評価の

観点

関心・意欲・態度

株式会社会計における会計・原価計算に関心を持ち,その知識と

技術の習得を目指して意欲的に取り組み,ビジネスの諸活動を計数

的に把握する実践的な態度を身につけている。

思考・判断 財務諸表の作成について,自ら思考を深め,基本的な知識と技術

を活用して適切に判断し,創意工夫する態度を身につけている。

技能・表現 株式会社における会計・原価計算の基本的な技術を身につけ,ビ

ジネスの諸活動を計数的に把握し,的確に処理することができる。

知識・理解

株式会社における会計・原価計算に関する基礎的な知識を身につ

け,企業会計の基本的な理論及び財務諸表の作成方法について理解

している。

本時の

評価の

観点

関心・意欲・態度 前向きな態度で授業に臨み,難しい問題にあたってもあきらめず

に仕訳の問題に取り組むことができる。

思考・判断 取引の概要を理解し,適切な勘定科目を判断できる。

技能・表現 仕訳の記帳が正しくできる。分からなかった問題について要点を

メモすることができる。

知識・理解 取引の内容を理解し,正しく処理できる。

学習展開 生徒の学習活動 教師の活動 指導上の留意点

導 入

(5分) ・挨拶する

・挨拶・出席確認

・本時はパソコンを使って仕訳の学

習をすることを確認する。

・身だしなみ・持ち物

確認

【関心・意欲・態度】

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展 開

(35分)

・ワークシートに氏名

を記入し,使用方法

の説明を受ける。

・指示通りパソコンを

操作しながら,使用

方 法 の 説 明 を 受 け

る。

・「仕訳できーる」と

ワークシートを用い

て自主学習に入る。

分からない問題は

「仕訳できーる」で

ヒントを得ながら学

習 を す す め る 。 ま

た,間違えた問題に

ついては,要点をメ

モ欄にメモする。

・固定資産の除却と廃

棄の違いについて理

解する。

・車両の買い換えの意

味を理解し,旧車の

売却と新車の購入に

分けて処理すること

を理解する。

・社債が購入する立場

と発行する立場で使

用する勘定科目が異

なる点を確認する。

・償却原価法による額

面金額と払込金額の

差額が社債利息とし

て処理される理由を

理解する。

・ワークシートを配布し,活用方法

の説明をする。

メモ欄の使い方について,学習の

要点をメモするよう指示する。

・自主学習教材「仕訳できーる」の

使用方法の説明をする。

・仕訳の学習に入るよう指示する。

備品の除却

備品の廃棄

車両の買い換え

社債の発行

社債利息の支払い

社債の決算日における処理

社債の満期日に償還したときの処理

・机間指導を行い,操作方法等の質

問を受ける。分からない問題につ

いてメモ欄に要点をメモしている

か生徒を観察し,指導する。

【関心・意欲・態度】

・すぐにヒントに頼ら

ず挑戦してみるよう

促す。

【思考・判断】

【技能・表現】

まとめ

(10分)

・アンケートに記入

し,提出する。

・アンケート用紙を配布し,記入さ

せる。

【知識・理解】

固定資産除却損××

貯 蔵 品××

備品減価償却累計額××備 品××

固定資産廃棄損××

備品減価償却累計額××備 品××

車 両××車 両 ××

車両減価償却累計額××現 金 ××

固定資産売却損××

当 座 預 金××社 債 ××

社 債 発 行 費××現 金 ××

社 債 利 息××当 座 預 金××

社債発行費償却××社 債発行 費××

社 債 利 息××当 座 預 金××

社 債 利 息××社 債××

社 債 利 息××社 債××

社債発行費償却××社 債発行 費××

社 債 利 息××当 座 預 金××

2 検証授業の考察

(1) アンケートの実施

ワークシートと自主学習教材についてアンケートを行った。

① ワークシートについての質問

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全ての生徒が「メモ欄には学習した要点をまとめることができた」,「メモ欄の大きさは適切

であった」,「ワークシートは学習後も復習に活用できそう」と回答した。回収したワークシー

ト(図 11)からもアンダーラインや勘定科目,要点を適切にメモすることができているのが分か

る。問題文の行間を広めに設定し,自主学習教材にヒントとして表示されるアンダーラインや勘

定科目を記入しやすいよう工夫したことや,1枚のワークシートにメモ欄まで表示することで復

習にも活用しやすいワークシートの作成ができたと考える。

借 方 貸 方 メ モ 要点

メモ欄

アンダーラインや勘定科目

問題文

図 11 検証授業に用いたワークシート(一部抜粋)

② 自主学習教材「仕訳できーる」について

問題文の表示から 25 秒後に自動的にヒントとして

アンダーラインが表示されるように設定していたが,

表示されるタイミングについての質問(図 12)では,

70%の生徒が丁度よいと答えたものの,残りの 30%

の生徒が早いと感じていることが分かった。「解いて

いる途中でヒントが出てしまい,目に入ってしまう」,

「問題の難易度によってヒントを表示するタイミング

を変えてほしい」,「自分でヒントを表示するかどう

か選べた方が学習しやすい」などの感想もあり,教材

改良について課題が見い出せた。

図12自主学習教材に関するアンケート集計①

解答・解説についての質問(図 13)では,94%の

生徒が分かりやすかったと答えている。自主学習教材

の作成にあたり,通常の授業では教師側が口頭で確認

するような内容も確認できる教材にしようと考え,関

連する既習の学習内容を解説に盛り込んだこと,また

解答のどの部分の解説なのか一目で分かるように色分

けしたことが,分かりやすい解答・解説の作成につな

がったのではないかと考える。

図13自主学習教材に関するアンケート集計②

自主学習教材を使用して不便だった点についての質

問では,「前の問題に戻ることができない」という回

答があった。解答や解説を表示するので,前の問題に

戻って学習することはないだろうと考えて自主学習教

材を作成していたので,予想外の回答であり,課題が

見い出せた。

教材に取り入れてほしい点についての質問では,「学

習した部分についての応用問題があったら,より理解

が深まる」との感想があった。解答・解説を表示する

自主学習教材において,生徒が分かったつもりになっ

て学習が進んでしまう点を補い,理解を深めることが

できるだろうと考え,応用問題の作成をすることにし

た。(図14・15) 写真1 検証授業の様子

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自主学習教材とワークシートを活用してみて良かった点について,「自分のペースで学習でき

る」,「解説が解答とそろえて色分けされていて,見やすくて分かりやすい」,「パソコンで解

答や要点のチェックができ,便利」,「難しい問題でも勘定科目などのヒントが出てきたので,

自分で解くことができた」などの回答があった。

図 14 応用問題 図 15 応用問題解答

③ 生徒の感想

以下に生徒の感想の代表的な記述を示す。(図16)

図 16 生徒の感想

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以上のように肯定的な回答が多く見られた。教材の作成にあたり,丁寧な解説を心がけたことで「1

人でも勉強できそう」,「また自主学習教材を使って勉強したい」という感想を引き出すことができた。

これらの結果をふまえて,「仕訳できーる」を活用することで,生徒たちの学習意欲の向上につながっ

たのではないかと考える。しかし,その一方で「パソコンの画面で周りの生徒より遅れているのが分か

り,焦る」という感想や自主学習教材を用いての授業なので,教師側に質問してはいけないのではない

かと感じていた生徒もいたようである。教材の活用方法について検討が必要であると感じた。

(2) 事前事後テストの実施(図 17)

検証授業前と検証授業後に7問の事前事後テスト

を実施した。事前テストでは 34 名中 20%の生徒が

0 点であったが,事後テストでは 0 点の生徒は 0%

であった。この 0 点であった生徒のうち1名は事後

テストにおいて7点満点を獲得することができた。

また,85%の生徒が6問以上正解しており,自主学

習教材の活用により仕訳に関する理解を深めること

ができたのではないかと考える。 図 17 事前事後テスト結果

(3) 学習に取り組んだ問題数の比較(図 18)

検証授業において,参観者から「自主学習教材を

用いても生徒の進度に相当な差が出ているが,どの

ように指導するか検討が必要である」との助言を頂

いた。ふだんの授業では2名ペアで着席させ,互い

に教え合うように授業を進めているが,検証授業で

は出席番号順に着席するよう指示したためか,教え

合う姿が見られなかった。また,教師側に質問して

はいけないと感じていた生徒もいたため,前に進む

ことができず,学習に取り組むことができた問題数

が少なかった生徒もおり,課題が残る結果となった。教材の活用方法を再検討し,課題解決に向け

再び授業を行った。その際にはペアで着席させ,お互いに教え合っていいこと,教師側にも質問し

て良いということを事前に確認して授業を行った。その結果再授業では,解説画面をペア同士で見

ながら教え合う姿が見られた。授業中,机間指導しながらつまづいている生徒に対応することもで

きた。学習に取り組んだ問題数において,番号順に着席したときは5問以下しか問題に取り組むこ

とができなかった生徒が 51%いたが,ペアで着席させ学習に取り組むことにより全員が6問以上

の問題に取り組むことができた。ペアで互いに励ましあいながら学習に取り組むことで,全員が最

後まで集中力を持続したまま授業を終えることができた。このことから自主学習教材を活用しての

授業において,ペア学習は意欲的・効率的に仕訳の学習を行うことができ,有効であったと考える。

図 18 座席配置別学習に取り組んだ問題数の比較

(4) 教材の改良

検証授業において生徒の感想や授業研究会で頂いた助

言にもとづいて,下記の部分について改良を行った。

① 自主学習教材「仕訳できーる」において,問題を表

示する画面と解答・解説画面に「前問へ戻る」ボタン

を配置し,前の問題へ戻って学習できるようにした。

(図 19)

② 検証授業では,「仕訳できーる」で問題文を表示

してから一定時間経過すると,ヒントとしてアンダ

ーラインが自動的に表示されるよう設定していた。

しかし,「解答している途中でアンダーラインが表

示されてしまう問題があるので,全ての問題につい

て同じタイミングでヒントを表示するのではなく,解釈が難しく解答に時間がかかる問題は,

アンダーラインを表示するタイミングを遅くするなど調整したほうが良い」,「自分のペース

でアンダーラインを表示できた方が学習しやすい」等の感想があったため,一定時間経過後に

図 19 「仕訳できーる」問題・解答・解説画面

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ヒントを表示するかどうかを問う「ヒントを表示」ボタンを配置した。(図 20)

③ 応用問題「Step Up!!」の作成

応用問題に取り入れる問題は決定しており,プリントにまとめる作業を進めている。「仕訳で

きーる」のように丁寧に解説を行わず,解答と計算式のみ確認できるようにし,理解が不十分

な問題に関しては「仕訳できーる」に戻って学習ができるよう復習箇所を示す教材にした。(図

21・22)

図 20 「仕訳できーる」問題画面

問題表示から一定

時間経過すると

「ヒントを表示」

ボタンが表示される

問題文 解答欄 解答 復習箇所計算式など

図 21 応用問題「Step Up!!」 図 22 応用問題「Step Up!!」解答

(5) 教材活用の工夫

検証授業のアンケートに「パソコンの画面で周りの生徒より遅れているのが分かり,焦る」と

いう感想があった。この点については再授業で行ったペア学習により学習に取り組んだ問題数の

差をある程度縮めることができたが,授業研究会では他の生徒との進度の差を意識することで,

より頑張らなくてはならないと自覚することができ,学習意欲の向上につなげることができるの

ではないかという助言を頂いた。ペア学習と合わせて検討を続けたい。

今回,パソコンを活用しての自主学習教材の作成を行った。ふだん簿記演習Ⅱの授業ではパソ

コンを活用しての授業は行っておらず,PC 教室の割り当てはされていないのが現状である。今年

度は PC 教室の空いている時間が4単位中2時間あり,PC 教室を使用できる時間を活用して授業を

行った。経営情報分野の科目の授業で PC 教室の空き時間は限られており,時間割編成上4時間の

PC 教室の確保は難しい。今後はパソコンが設置されていない簿記教室での授業と合わせて,どの

ように自主学習教材を活用していくことができるのか検討を続けていく必要がある。

応用問題「Step Up!!」については,現在作成中であり,検証に至っていない。教材の完成後

に検証を行い,生徒たちがつまづいた応用問題については,ワークシートで指示された箇所を自主

学習教材に戻って復習し,正解できる力を養うことができる解説になっているか検証する必要があ

る。また,検定直前などは,仕訳の学習だけに時間を割くことが難しい。生徒たちが自主的に

「Step Up!!」で苦手な箇所をチェックし,指示されている箇所を自主学習教材「仕訳できーる」

で復習することで,効率良く苦手な単元の習得ができ,検定対策を行うことも可能なのではないか

と考える。今後検証していきたい。

Ⅳ 成果と今後の課題

今回の研修では,簿記を効率的に指導する工夫として,生徒個々のペースにあわせて学習できる自主

学習教材の作成に取り組んだ。

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1 成果

(1) 教材作成のための知識と技術の習得

本研究を通して多くの必修講座や選択講座を受講することができた。自主学習教材の作成に用い

た Flash に関しては,これまで使ったことのないソフトであったが,しっかりと教材作成に取り

組める機会を頂いたので,操作やActionScriptに関する知識と技術を習得することができた。今

後も活用していきたいと考えている。

(2) 教材作成

① 自主学習教材「仕訳できーる」

検証授業のアンケートから得られた点を改良したことにより,問題文を表示してから一定時

間後にヒントを表示するかどうか選択させるなど,より個々のペースに合わせて学習すること

のできる教材に仕上げることができた。座席配置をふだんどおりペアで着席させるなど配慮す

ることにより,気軽に教え合うことができるようになった。また,机間指導の際に全員で確認

したほうが良いと感じた内容については「仕訳できーる」の解説画面を示しながら教師が説明

を加えることもできる。

Flash の「swf」形式で保存することにより,PC の環境を問わず「仕訳できーる」を再生するこ

とができるため,どの PC 教室でも使用することができる教材を作成することができた。

② ワークシート(図 23)

横一列に問題文・解答欄・メモ欄を配置すること

により,授業だけでなく復習にも活用しやすい教材

となった。メモ欄に要点をまとめることで,学び方

の習得にもつながると考える。また,応用問題

「Step Up!!」への挑戦を促すため,ワークシートに

「Step Up!!へチャレンジ」という記述を挿入した。

問題文 解答欄 メモ欄

Step Up!!へチャレンジ

図 23 ワークシート (3) 検証授業を通して

検証授業後のアンケートや事前事後テスト,授業の際の生徒観察などを通して教材の有効性や

改良点を把握することができた。また,教材の開発にあたり解説画面を全員に向けての補足説明

に使用することは想定していなかったが,検証授業で机間指導を行った際に,補足説明が必要で

あり,解説画面が活用できるのではないかと感じ,補足説明に用いてみた。生徒が自主学習に用

いた画面と同じ画面で補足説明を行うことができ,新たな活用方法の一つとして気づくことがで

きたのは大変良かった。

2 課題

(1) 以下の点について検証が必要である。

① 「Step Up!!」でつまづいた部分を「仕訳できーる」で復習することで,正解できる力を養う

ことができる教材となっているか。

② 他の生徒との進度の差を意識させることで,学習意欲を向上させることができるか。

今回の研究を通して専門的な知識や技術を深めることが出来た。教材の開発については活用方法に課

題は残るものの,生徒個々のペースにあわせて学習できる教材の作成が出来たのではないかと考える。

ふだん授業を行う際には教師が口頭で既習の内容の確認をするが,自主学習教材においてもこの点を確

認できるように教材作成を行わないと既習の内容と混同し,単元の理解につながらないことが懸念され

る。授業で活用する際は,教師が補足説明をすることができるが,放課後等にも自主学習に活用できる

教材とするためには,その点を念頭に置いて学習する生徒が使いやすく,仕訳に関する知識を深めるこ

とができる教材作成を心がけなければならないと考え,教材の作成を行ってきた。また,検証授業の授

業研究会の際に「解説部分に飾りが沢山つけられており,見にくい問題がある」という助言を頂いた。

作りこむことに一生懸命になりすぎてしまい,作成することで満足していた面があった。学習する生徒

が,見やすく分かりやすい教材作成を常に心がけなければならないと反省した。今後は授業で活用しな

がら,教材の改良を図るとともに,活用方法など課題解決に向け研究を継続していきたい。

〈主な参考文献〉

福島三千代 2007 「サクッとうかる日商2級商業簿記 テキスト」 ネットスクール株式会社

滝澤ななみ 2007 「スッキリわかる 日商簿記2級 商業簿記」 TAC株式会社