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海外直接投資と経済成長 横浜国立大学 経営学部 石毛 美幸 【要約】 本論文は、直接投資が投資先国の経済成長に及ぼす影響について、マク ロデータを用いて実証分析を試みたものである。分析において特に1)直接投資は単 独で経済成長に貢献するのか.2)直接投資が経済成長に貢献するためには受入国 としてどのような状態が望ましいのか.という2つの問いに対し、回帰分析を行った。分 析の結果、直接投資は経済成長に影響を与える多くの要因のひとつであること、そし て直接投資を国内経済のプラス要因として積極的に活用していくためには国内の人 的資本の質的充実が重要であることが明らかになった。

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Page 1: 海外直接投資と経済成長 - Keio Universityuser.keio.ac.jp/~kiyota/kozo/Courses/papers/Ishige2006.pdf海外直接投資と経済成長 横浜国立大学 経営学部 石毛

海外直接投資と経済成長

横浜国立大学 経営学部

石毛 美幸

【要約】 本論文は、直接投資が投資先国の経済成長に及ぼす影響について、マク

ロデータを用いて実証分析を試みたものである。分析において特に1)直接投資は単

独で経済成長に貢献するのか.2)直接投資が経済成長に貢献するためには受入国

としてどのような状態が望ましいのか.という2つの問いに対し、回帰分析を行った。分

析の結果、直接投資は経済成長に影響を与える多くの要因のひとつであること、そし

て直接投資を国内経済のプラス要因として積極的に活用していくためには国内の人

的資本の質的充実が重要であることが明らかになった。

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はじめに ―論旨と構成―

海外直接投資は利益を目的とした企業行動の 1 つとしてますます盛んに行われるよ

うになり、もはやその投資総額は貿易と並ぶ国際経済活動のひとつとして無視できない

ものとなってきている。それはもはや単なる企業活動の一環としてだけでなく、投資を

する企業の本国、投資を受け入れる国双方の経済に何らかのインパクトを与えるものと

して注目されている。特に海外直接投資の受け入れ国にとって直接投資は国内経済にプ

ラスの効果があると考えられているため国の経済政策の一環として直接投資の受け入

れ態勢の整備など直接投資誘致に力を入れている国も多く、その効果を実証するような

研究もされてきた。しかしながら、海外直接投資の流入と経済成長の関係についての実

証研究によって導かれた結論は必ずしも海外直接投資の流入と経済成長をポジティブ

に結びつけるものだけではない。たとえばこの分野に関するマクロレベルの研究では、

その多くが対内直接投資が経済成長に与える影響は受入国の状態によって異なると結

論付けている。もしそのような分析結果を重視するならば、現在多くの国が注力してい

る直接投資の誘致は、受入国の状況によっては将来その国の経済状態を悪化させる要因

となる可能性があるということを認識しなければならない。特に日本では、これまでの

対日直接投資の少なさへの懸念から対日直接投資の誘致政策は近年ますます盛んにな

ってきており、2003 年 1 月には小泉首相が政府施政方針演説で「これから 5 年間で対

日直接投資額を 2 倍にする」と言及しているが、この政策の根拠が果たして単なる一般

論ではなく、実証分析によって得られた負の可能性もきちんと考慮されているものかど

うか、定かではない。

本論文では、これまで行われてきた実証研究の手法を参考に、マクロ経済データから、

経済成長と対内直接投資の関係を分析し再考する。特に、経済成長の要因として対内直

接投資は他の要因とともにどのような働きをするのか、また対内直接投資が経済成長に

貢献するためには受入国がどうあるべきか、という 2 点に焦点を絞り各要素の関係を回

帰分析により検証することで、現行の政策の問題点を明らかにするだけでなくいったい

何が必要なのかといった具体的な改善策を見出そうとするものである。

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Ⅰ.直接投資に関する先行研究と政策

ⅰ.海外直接投資に関するポジティブな理論と政策のトレンド

海外直接投資は投資先国の経済成長によい影響を与えると考えられており、その理論

的な根拠としては、第一に、海外から自国への直接投資によって資本の流入や雇用の増

大がもたらされること、第二に経営資源の流入による技術移転が起こり、自国企業全体

の生産性が向上すること、の 2 点があげられるだろう。海外直接投資は単に外資系の企

業や海外からの資本によって一時的に利益をもたらすのではなく、自国の経済的発展の

基礎となる民間企業の技術進歩に寄与することで、長期的な経済成長にも貢献すると考

えられている。

このような理論の前提として重要なのは、そもそも海外直接投資というのは自国にお

いて優秀な成績を上げている能力の高い企業によって行われているということである。

優秀な企業が、もともと国内だけで行っていた調達・製造・販売活動をさらに有利に展

開しようとして海外に進出し、自らのコントロールにより自社資源を活用してさらなる

利益を得ようとする。ここに本来の直接投資の意義がある。海外進出に伴うリスクを負

っていることも考慮すると、直接投資の主体となる企業の経営効率や生産性向上、利益

増大に対するインセンティブは、進出先のドメスティックな企業に比べて必然的に強く

なる。そしてそのような比較的優秀且つ高いインセンティブをもった企業のコントロー

ルを受けることで、投資先企業は自らの生産性を高めるのである。

Kimura and Kiyota (2003) や深尾・天野 (2004) は日本企業の個票データの分析から、

外資系企業はそうでない企業に比べ TFP (Total Factor Productivity; 全要素生産性) が高

いことを明らかにした。さらに Xu (2000) は米国の調査データを用いて製造業多国籍企

業について分析し、直接投資が投資受入国企業の TFP (Total Factor Productivity; 全要素

生産性)上昇にプラスの効果を与えることを示している。実証研究でも直接投資は投資

先企業だけでなく、受入国の他企業にも良い影響を与えていることが認められているの

である。

このような理論的裏付けも助長してか、各国では税制面での優遇措置等の直接投資誘

致活動が盛んに行われている。日本においても 1994 年の対日投資会議の設立、翌年の

「対日投資声明」の発表をかわきりに政府は積極的な政策に本腰を入れはじめ、ジェト

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ロ等の非政府組織や各地の自治体単位で直接投資の誘致活動及びその支援活動が積極

的に行われている。2003 年の施政方針演説では、小泉首相自ら対日直接投資倍増 5 カ

年計画を発表した。日本では特に製造業において対外直接投資が年々増加傾向にある一

方で対内直接投資は伸び悩んでいるという、いわゆる「産業の空洞化」への懸念から、

今後ますます対日直接投資誘致政策は積極性を増すと考えられる。

ⅱ.ネガティブな実証研究結果とあるべき政策の姿

しかしながら、1980 年代以前から行われてきた海外直接投資の受け入れと経済成長

に関する様々な実証研究は、必ずしもそのすべてが海外直接投資の受け入れと経済成長

に正の相関があることを示しているわけではない。とくにマクロレベルの実証研究にお

いては、直接投資の受け入れが経済成長にどのような影響を与えるかという問題に対し、

分析対象国や統計・分析の手法を変えることで、より多面的な結論を得ている。

たとえばDe mello (1997) は直接投資を受けた企業から国内企業への技術普及(スピル

オーバー効果)は、技術の進展していない国では起こりにくいことを実証した。あるい

は Borensztein et al. (1998) は教育レベルがある程度の水準に達しているときにのみ直

接投資は経済成長を促すとし、人的資本ストックの重要性を示した。また、Alfaro et al.

(2004) や Hermes and Lensink (2000) によれば、金融資本市場も国内企業への効率的な

技術普及に重要な役割を担っている。このような受入国の内生的要因に関する様々な実

証研究を受け、Carkovic and Levine (2005) は、教育水準や経済規模、金融市場など直接

投資を含む 7 つの要因と経済成長の関係を分析した結果、直接投資の受け入れが経済成

長に貢献するか否かは受入国の経済的な状態に大きく左右されるため、直接投資そのも

のが経済成長に効果を及ぼすとは言えないと結論付けている。

これら先行研究を概観すると、ミクロレベルでは直接投資は投資先企業の生産性向上

にはプラスの効果があるが経済成長というマクロ経済指標への貢献となると受入国の

状況次第ということになる。つまり、新たにもたらされた経営のノウハウや生産技術を

投資先企業から国内経済全体へ普及させる段階で、受入国側の内政的な要因が重要なの

である。たとえ直接投資の流入によって部分的な企業生産性の向上がみられたとしても、

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それが影響しあいながら段階を踏み経済成長へ何らかの貢献を果たすためには労働者

の特性や金融市場の成熟度など、受入国ではぐくまれた経済的な土壌が重要な役割を果

たすのである。

したがって直接投資から直接投資の受け入れそのものがその国の経済成長によい影

響を与えるという安易な予測や、直接投資誘致単線での政策努力は必ずしもその結果と

して一国の経済成長につながるとは考えられない。多様な経済的要素を複線的に捕らえ、

直接投資が経済成長につながるメカニズム1 を考えたうえで、その道筋に沿った細やか

な政策努力が必要なはずである。

Ⅱ.分析手法

この論文の 大の目的は、直接投資の誘致によって国内経済にプラスの効果があるか

どうか、実際の分析によって確かめることにある。したがってこれまで行われてきた先

行研究を参考に、直接投資と他の要素がどのように経済成長に影響を及ぼすのかという

問いを立て、 小二乗法による回帰分析を用いて分析を行う。回帰式は Carkovic and

Levine (2002)を参考に、式-1 を想定した。

GROWTH(i,t) = α + βFDI(i,t-s) + γ[CONDITIONING SET](i,t-s) + ε(i,t-s) (式-1)

従属変数 GROWTH(i,t)とは i 国における t 期の経済成長を表す指標で、以下 FDI(i,t-s)

は s 期前の i 国の対内直接投資受入れ額、[CONDITIONING SET](i,t-s)は投資受入国 i 国

の t-s 期における経済状態を表す指標、ε(i,t-s)が誤差項である。Carkovic and Levine (2002)

ではこの CONDITIONING SET に初期の GDP、平均就学年数、総貿易額(輸出額+輸入

1 経済に影響を及ぼす様々な「要因」に着目した先行研究サーベイの中で、何が何にどの時点で、どのよ

うにインパクトを与えうるのかという経済循環の「プロセス」の分析の必要性を強く感じた。たとえば

Kosack and Tobin (2006) は各要素の関連性に加え、考えられる作用のプロセスについて述べている。

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額)の対 GDP 比率、闇市場での為替レート、政府支出の対 GDP 比率、インフレ率、民

間資本比率などを用いている。

そしてこの回帰式から推測できることは、直接投資の受け入れが単独で経済成長を説

明することができるか否かということである。もし説明変数として[CONDITIONING

SET]が不要であれば、γ は有意にならない。もし γ が有意であれば、それは GROWTH

が FDI 単独ではなく、[CONDITIONING SET]とともに説明されるということになる。

また、直接投資が経済成長につながるための国内環境としての [CONDITIONING

SET] の効果をより端的に測るために式-2 のような回帰式をあわせて想定した。

FDI-GROWTH ダミー(i,t) = α + γ[CONDITIONING SET](i,t-s) + ε(i,t-s) (式-2)

FDI-GROWTH ダミーとは、t-s 期の FDI 純フロー額がプラスで且つ t 期の GDP 成

長がプラスのとき 1 を取り、FDI 純フロー額がプラスであるにもかかわらず t 期の GDP

成長がマイナスのとき 0 をとるようなダミー変数である。これにより、FDI が GDP 成

長を促進するために[CONDITIONING SET]がどのような影響をもつかが推測できる。も

し γ が有意でプラスならば、FDI が経済成長に貢献するには国内の他の要素からなる経

済状態が決定的な役割を果たすということになる。この回帰モデルは被説明変数をダミ

ー変数としているため、非線形での予測が必要である。よって推定にはプロビット・モ

デルによる 尤法を用いる。

プロビット・モデルとは、下式であらわされるような正規分布関数によって非線形で

の予測をしようというものであり、このとき a, b をいちばん尤もらしい値となるよう推

定するのが 尤法である。計算式や値の解釈の仕方については、Maddala (1992) を参考

にし、実際の計算においては縄田 (2001) に収録されたエクセル用分析ツールボックス

を利用した。

正規分布関数

y=P(x) = 2 / 21 ( *2

a bx ze dz F a b xπ

+ −

−∞= +∫ )

回帰式としての説明力を測る指標としては、線形の場合に用いるような決定係数R2

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での比較はできない。プロビット・モデルにおける適合度の尺度としてはいくつかの計

算方法が提唱されているが、今回は「正しく観測された割合」をもって回帰式の説明力

としての適合度とした。ここで、正しく観測されるとは、回帰式から推測された係数で

導かれる被説明変数の推測値y*について、yがダミー変数で 1 か 0 をとることから中間

の値 0.5 を境に以下に示すように(ⅰ)と(ⅱ)の 2 つのグループに分類し、実際のダミー係

数y(=FDI-GROWTH)の値が 1 のとき推測値y*が(ⅰ)に、yの値が 0 のとき推測値が(ⅱ)

に含まれる場合に、y*は正しく観測されたものとみなし、正しく観測された割合をもっ

てその回帰式の適合度を測る手法である。2

0.5 < y* … (ⅰ)

0.5 > y* … (ⅱ)

今回[CONDITIONING SET]として分析に用いたのは初期の GDP、平均就学年数、総

貿易額(輸出額+輸入額)の対 GDP 比率、闇市場での為替レート、政府支出の対 GDP 比

率、インフレ率の 6 つである。以下それぞれのデータについてまとめる。

Ⅲ.データ

データは世界統計の国別、年次別のデータである。観測期間はすべてのデータがそろ

った 1970 年から 1999 年の 30 年間、計 134 ヶ国のものを使用した3。データの安定性を

高めるために 30 年という期間をそれぞれ連続した 5 年ずつの 6 期間にわけ、直接投資

額は 5 年間のストックを、他の指標についてはそれぞれの平均値をその期の値とした。

ただし、平均就学年数については各期のはじめの 1 年(1970 年、1975 年…)の値しか

ないため、各期にまたがった平均値(たとえば 1 期目には 1 期と 2 期の平均就学率の平

均)を採用した。経済成長と各要素の効果がある程度のタイムラグをとることが考えら

れるので、分析手法のところでt-s期というタイムラグを考えていた。今回はs=0、1 と

し、タイムラグを取らなかった場合と、1 期のタイムラグをとったときとでの、国内の

2 詳しくはMaddala (1992)pp.244 を参照.

3 サンプル国リストは巻末に付した。

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経済状態及び対内直接投資フロー額と当期の経済成長の関係に絞って分析することと

した。各変数についてさらに詳しく述べる。4

■CONDITIONING SETS

GROWTH:1 人当たり実質 GDP の成長率を各年において計算し、1 期(=5 年間)の平

均成長率をとったものである。タイムラグをとる際にも、各年の成長率から 1 期の平均成

長率を同様に計算した上で、次の期の平均成長率を用いた。

FDI:対内直接投資純フロー額(FDI net inflows)の対 GDP 比率である。今回は特に日本

の対内直接投資倍増計画のように、単に対内 FDI の増加が経済成長に及ぼす影響をみる

ため、1 期のストックをとった。

InitialGDP:1 期の初年における 1 人当たり実質 GDP である。

SCHOOL:平均就学率。先に述べたとおり 1970 年、75 年、80 年…という具合にちょうど

各期の初年次における値しか得られなかったため、当期と時期の平均値をもって、各期の

値とした。

GOVERNMENT:政府の総支出額の対 GDP 比率である。各期の値として平均値をとっ

ている。

TRADE:貿易総額の対 GDP 比率で、各国の経済規模を表す指標として用いる。これも同

様に平均値を各期の値とした。

Bmarket:闇の金融市場で取引の調査から得られた金利水準である。闇金融市場での取

引が活発に行われているということは、裏を返せば正規の金融市場がうまく働いていない

4 なお、GDP成長率とFDIフロー額以外の各データは、値の大きさを調節するために自然対数値をとってい

る。サンプルの最小値が 0 以下の闇金融市場の金利指標やインフレ率はそれぞれすべてのサンプルに 30、

10 を加えた後で対数をとった。各データの詳しい出所については末尾の巻末付録を参照.

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ということである。そのような状況下では金融市場での取引に高いコストがかかるため、

仮に生産性を向上させるような技術が国内にもたらされたとしても導入のための投資が

されずに機会を逃すことが多くなる。このような理由から金融市場の健全性は重要な要素

と考え、その代理変数として闇金融市場の金利水準を用いる。

FDI-GROWTH ダミー:その期の FDI がプラスで且つ GROWTH がプラスのときに 1 をと

り、FDI はプラスだが GROWTH がマイナスであるというとき 0 をとるようなダミー変数

である。

Ⅳ.仮説

まず、式-1 によって検証しようとするのは、FDI が単独で GROWTH をどれだけ有

意に説明できるのかどうかということである。[CONDITIONING SET]を含んだとき、

その回帰係数が有意で且つ回帰式としての説明力が高ければ、GROWTH を説明するた

めには[CONDITIONING SET]も重要な意味を持つということになる。したがって FDI、

GROWTH 及び[CONDITIONING SET]の係数と回帰式全体の自由度調整済み重決定係

数が[CONDITIONING SET]の有無や組み合わせによってどうかわるかを比較すれば

よい。もし FDI がそれだけで経済成長に十分貢献するものであれば[CONDITIONING

SET]を含まない回帰式においても自由度調整済み重決定係数の値が高く、FDI の回帰

係数も有意でプラスとなるはずである。もし[CONDITIONING SET]のうち何らかの

要素が FDI とともに経済成長のために必要な要素だとすれば、その要素が含まれる回帰

式において R2 はもっとも高くなり、且つ γ は有意でプラスとなるはずである。

次に式―2 について仮説を立てる。左-2 において、左辺の FDI-GROWTH ダミー(i,t)

は「性向・能力」など傾向をしめす。つまり右辺の回帰係数が有意でプラスなら、

[CONDITIONING SET]などの変数がある条件を満たすとき、FDI が GROWTH に貢

献する傾向があるということになる。つまり係数 γ がプラスで有意となるような

[CONDITIONING SET]の各要素は直接投資が経済成長をもたらすための理想的な経

済状態と推定できるのである。また、式-2 の分析の際には[CONDITIONING SET]に

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FDI ストックも加えた。その意図は、直接投資の総額が多いほど、企業レベルで新しい

技術に触れる機会が増え、社会全体でもそれをうまく活かそうと学習していくことを想

定したものである。

Ⅴ.分析結果

式-1 の回帰式による分析結果を表-1,2 に示した。表-1 はタイムラグをとらない

場合、表-2 は 1 期のタイムラグをとった場合である。

タイムラグをとらない場合に回帰式がもっとも説明力を高めたのは TRADE 以外の全

ての要素を独立変数としたとき(表-1,[CONDITIONING SET]12)で、自由度調整済

み決定係数は0.109であった。またこのときSCHOOL、FDIはプラスで有意、INFLATION、

GOVERNMENT、Bmarket はマイナスで有意であった。[CONDITIONING SET]を全て

除き FDI のみを独立変数とした場合(表-1,[CONDITIONING SET]1)では FDI が有

意でプラスになったものの、調整済み決定係数の値は 0.02 と低い。このことから、経

済成長は直接投資単独で説明されるほど単純な現象ではないことがわかる。

また、各係数の符号に注目すると、まず初期の GDP は低いほど経済成長率が高くな

るという結果を得た。これは古典的な経済成長理論であるキャッチアップ現象や定常状

態への「収斂」として説明されるように、比較的貧しい国はそうでない国に比べて急速

に成長する傾向があると考えられる。次に平均就学率は高ければ高いほど経済成長率は

高くなる。これは先行研究において直接投資のポジティブな効果として提唱されたスピ

ルオーバー効果と深い関係がある。つまり、直接投資によって国内にもたらされた高度

な技術は国内の労働者がある程度の教育を受けていることによって効率的に吸収され、

生産性向上のため十分に活用されるのである。ミクロレベルで実証された生産性向上の

前提として、教育水準が重要だということがマクロレベルの分析により実証されたこと

になる。

同様にインフレ率は低いほど、民間で産出される GDP の割合は高いほど、金融市場

での取引コストは低いほど、経済成長にとってプラスの効果をもたらすという結果を得

た。そしてそういった要因のひとつとして、対内直接投資フロー額は多ければ多いほど

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経済成長にプラスの効果をもたらすという結果を得た。特に FDI の回帰係数は

[CONDITIONING SET]がどのような組み合わせの場合においても統計的に有意でプ

ラスの値となっている。これらのことから、直接投資そのものはあくまで複雑に絡み合

う経済成長要因のひとつに過ぎないが、それが潜在的にもっている効果はおおむねポジ

ティブなものであると推測できる。

1 期のタイムラグをとった場合には全体的に決定係数は低く、高いものでも 0.5 前後

であった。回帰係数の予測値も SCHOOL と GOVERNMENT 以外ほとんど有意ではなか

った。

だが、この結果を持って必ずしも直接投資と経済成長の間にタイムラグがないと推測

することはできない。というのも、タイムラグのとり方について分析手法に改善の余地

を多く残しているためである。5

式-2 による回帰分析の結果は表-3,4 に示した。こちらも同様にタイムラグをとらな

い場合のものを表-3、1 期のラグをとった場合を表-4 にそれぞれ示した。式-2 は

[CONDITIONING SET]の各要因が直接投資が経済成長に貢献するための前提条件と

なるか否かを検証するものであったが、タイムラグをとらない場合、(正しく観測され

た数/総サンプル数)×100 で表された「正しく観測された割合(%)」は も高いもので説

明変数を FDI ストックのみとした場合([CONDITIONING SET]13)の 74.1%で、係数

はプラスで有意であった。

[CONDITIONING SET]8~13 にかけては、各要素を単独で説明変数としたものであ

るが、先の FDI 意外にも SCHOOL, InitialGDP についてそれぞれの係数が有意でプラス

となっており、全サンプルの 60~70%を正しく観測している。また、[CONDITIONING

SET]1、2 においては説明変数をそれぞれ 7 つあるいは 8 つと比較的多く含んでいるに

もかかわらず、予測された式は全サンプルデータの 70%以上を説明しており、SCHOOL,

FDI がプラスで有意である。

また、1 期のタイムラグをとった場合にはタイムラグなしの場合に比べて全体的に適

合度が低く、どれも 50%前後である。しかしながら[CONDITIONING SET]8~13 で

5 今回タイムラグをとる際には、もともと 5 年ごとに平均値やストックをとったものについてGDP成長率

のみ次期の値を用いたため、正確な分析とはいえない。改善策としては、5 年ごとにデータを集計する前

にあらかじめ 1 年、2 年…といったより厳密なタイムラグをとり、その上で値を安定させるための加工を

するという方法が考えられる。

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Page 12: 海外直接投資と経済成長 - Keio Universityuser.keio.ac.jp/~kiyota/kozo/Courses/papers/Ishige2006.pdf海外直接投資と経済成長 横浜国立大学 経営学部 石毛

はそれぞれ単独の説明変数で回帰係数が有意に推測され、[CONDITIONING SET]1~6

では InitialGDP が全て有意でプラスとなった。

式-2 の分析結果では、全体的に適合度が低く 80%を上回るものはなかった。そして

推測された回帰係数も多くがt値の片側検定の結果有意ではなかった。しかしタイムラ

グをとらなかった場合のいくつかの組(たとえば表-3,[CONDITIONING SET]1,2)

では 70%前後という比較的高い適合度を示し、その全てにおいて統計的に有意な係数

を示していたのが教育水準と対内直接投資ストックの代理変数であった。

以上式-1 および式-2 の分析結果から考えられることは、大きくまとめると次の 3 点

である。第 1 に、直接投資が経済成長に影響を与えるまでには今回用いたもの以外にも

様々な要素によって構成された複雑なメカニズムを経ており、今回抜粋したいくつかの

変数によって一様に説明することは困難である。第 2 に、それら多くの変数の中でも特

に直接投資と経済成長の関係に焦点を絞った場合、労働者の教育水準という要素が比較

的強い影響力をもっており、教育水準が高い国においては低い国よりも直接投資が経済

成長の促進に貢献する傾向がみられる。そして第 3 に、教育水準を前提とした技術導入

から生産性向上、経済成長という一連のプロセスは、直接投資の流入が多く機会に恵ま

れているほど国内に広く定着し、習熟してより効率的に行えるようになるということ。

特に2点目は、これまでミクロレベルの分析で実証されてきた企業の生産性向上の前

提として、潜在的な国内労働者の教育水準が重要であることを示唆するものである。す

なわち、ある企業にもたらされた生産性向上のためのノウハウは、国内の教育水準が十

分なレベルに達していれば他の企業によってもその利用が可能になり、結果として国全

体での経済成長を実現できるが、いくら直接投資を誘致したところで、もしその投資が

もたらした新たな技術やノウハウを導入を阻害する要因があるならば、いくら直接投資

の誘致に成功したところで、そこから国内経済に対する良い影響は生まれないというこ

とである。

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Ⅶ.結論

本論文では近年盛んに行われるようになった対内直接投資誘致政策をうけ、実際に対内

直接投資を増やすことが経済成長にプラスになるのかという問いを立て、実際のマクロ

データを用いて分析を行った。とくに着目したのは経済成長の要因としての対内直接投

資が他の要因とともにどのような働きをするのか、また対内直接投資が経済成長に貢献

するために重要な要素は何かという 2 点である。そしてこの問いに対し、分析の結果次

のような答えを得た。

第 1 に、対内直接投資は経済成長をもたらす要因のひとつとして、潜在的にプラスの

効果を持つものである。しかしながら、経済成長自体とても複雑な要因が互いに影響し

あって生み出される結果であるから、単に対内直接投資によってのみ経済成長を期待す

ることは難しい。

そして第 2 に、そのような複雑なメカニズムのなかでも、特に直接投資が経済成長へ

貢献する課程においては、国内の教育水準が大きな役割を果たすと考えられる。たとえ

対内直接投資額が増加したとしても、進出してきた企業内でのみ高度な技術が留保され

るような場合、受入国の経済成長に貢献するどころか、場合によっては受入国企業の顧

客を奪った上利益を自国親会社に返還してしまうことで、受入国経済に悪影響を与えて

しまう。対内直接投資によって国内経済の発展を望むのであれば、その第 1 段階として、

まずは対外直接投資によって自社資源を積極的に活用しようとする優秀な外国企業に

よってもたらされた高度な生産技術や人事管理、組織運営のノウハウなどを国内企業が

吸収し、活用できるかどうかが非常に重要なのである。そして、そのために必要なのが

国内の人的資本の充実に他ならない。

今回分析から得た結果の多くは、検定の水準やデータ加工の方法、あるいは地域ダミ

ーの採用など分析の前提条件を微妙に変えることで、まったく同じデータでも違った結

果を導く可能性がある。冒頭で紹介したとおり、これまで様々な実証研究がそれぞれ違

った前提条件や分析対象からそれぞれ異なった結果を導き出していることからも、経済

成長という現象がいかに複雑な要因とプロセスから成り立つものかが伺える。そして現

実の経済状況もまた、刻一刻とその姿を変えていて、その微妙な力加減であらゆる要素

が各々の働きの方向や大きさを変化させる。

これまで日本政府は実際の調査や統計をあまり重視せず、直接投資に関する研究材料

海外直接投資と経済成長 12

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海外直接投資と経済成長 13

としての統計データの整備もままならないという状態で、すでに「対内直接投資倍増計

画」の発表から 3 年が経つが、万が一その計画の根拠が「直接投資=経済成長」という

楽観的見地に立ったものだとすれば、もちろんその効果はほとんど期待できないだろう。

確かに理論的にも実際の分析においても対内直接投資は潜在的に国内経済にプラスの

効果をもたらす可能性をもっている。しかし今回の分析から明らかなように、その恩恵

を享受できるか否かは日本国内に対内直接投資を十分に活用するに足る力があるか否

かに依存しているのである。

日本ではまだまだ外資の流入を拒む傾向が強く、買収を恐れた大企業どうしの株式

持合いが長年行われ、医療や通信など一部の分野では厳しい規制が日本国内の企業にと

っても高い参入障壁としてはだかっている。過剰な産業保護の政策は、供給に対してそ

れを上回る需要が確実にあるならまだしも、すでに供給過剰のためにグローバルな市場

開拓を迫られるこの時代にあってはあまり意味をなさない。外資参入に対する負のイメ

ージを捨て、世界レベルの競争力を獲得するための源泉として積極的な競争と、それに

耐えうる力を国内で育んでいくことが重要である。だからこそ今後の直接投資に関する

政策は単なる対内直接投資の増加に期待するという受身の姿勢ではなく、そこから何を

どのようにして得るのかという戦略的なものでなくてはならない。もし今後の対日直接

投資誘致政策が対内直接投資増加により国内企業の競争力向上や研究開発力の強化を

目指すといった能動的で明確な目的意識を持ったものであるならば、それはこれからの

日本国経済にとって非常に有意義なものとなるだろう。

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海外直接投資と経済成長 14

巻末付録1.図表

表-1

CONDITIONING SET 1 2 3 4 5 6

Constant(定数項)

InitialGDP

SCHOOL

INFLATION

GOVERNMENT

TRADE

Bmarket

FDI

1.275*** (7.138) 0.047*** (3.413)

1.321 (-0.860)

-0.146 (-0.605)

0.801** (2.167)

0.040*** (2.877)

4.974*** (2.807)

-0.328 (-1,353)

0.985*** (2.682)

-0.773*** (-3.967)

0.034** (2.436)

7.981*** (4.172)

-0.165 (-0.680)

0.998*** (2.753)

-0.837*** (-4.339)

-1.569*** (-3.877)

0.037*** (2.732)

7.434*** (3.450)

-0.157 (-0.643)

0.982*** (2.699)

-0.817*** (-4.164)

-1.645*** (3.847)

0.165 (0.553)

0.035** (2.401)

10.573*** (4.663)

-0.386 (-1.562)

1.063*** (2.957)

-0.555*** (-2.711)

-1.544*** (-3.654)

0.023 (0.078)

-0.623*** (-3.960)

0.031*** (2.178)

サンプル数

決定係数

自由度調整済み決定係数

F 値

521

0.022

0.020

11.651***

521

0.037

0.031

6.635***

521

0.066

0.058

9.052***

521

0.092

0.083

10.445***

521

0.093

0.082

8.743***

521

0.120

0.108

9.949***

CONDITIONING SET 7 8 9 10 11 12

Constant(定数項)

InitialGDP

SCHOOL

INFLATION

GOVERNMENT

TRADE

Bmarket

FDI

3.762** (2.245)

0.015 (0.061)

0.798** (2.183)

-1.148*** (-3.457)

0.044*** (3.172)

1.232 (0.670)

-0.147 (-0.607)

0.799** (2.157)

0.025 (0.088)

0.040*** (2.667)

6.315*** (3.538)

-0.496** (-2.022)

0.966*** (2.666)

-0.768*** (-5.514)

0.030** (2.194)

5.382*** (2.723)

-0.329 (-1.355)

1.006*** (2.728)

-0.801*** (-4.028)

-0.204 (-0.714)

0.037** (2.534)

7.776*** (4.137)

-0.552** (-2.249)

1.054*** (2.908)

-0.488** (-2.385)

-0.638*** (-4.037)

0.028** (2.027)

10.665*** (5.326)

-0.388 (-1.577)

1.065*** (2.977)

-0.557*** (-2.748)

-1.533*** (-3.843)

-0.625*** (-4.003)

0.031** (2.323)

サンプル数

決定係数

自由度調整済み決定係数

F 値

521

0.059

0.052

8.069***

521

0.037

0.030

4.968***

521

0.084

0.077

11.863***

521

0.066

0.057

7.336***

521

0.094

0.085

10.745***

521

0.120

0.109

11.629***

※最小二乗法により推定***,**,* はそれぞれ統計的有意水準 1%、5%、10%を表す.括弧内はt値.

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海外直接投資と経済成長 15

表-1(続き)

CONDITIONING SET 13 14 15 16 17 18

Constant(定数項)

InitialGDP

SCHOOL

INFLATION

GOVERNMENT

TRADE

Bmarket

FDI

2.703 (1.454)

0.025 (0.102)

0.772** (2.109)

-1.606*** (-3.698)

0.391 (1.310)

0.037** (2.542)

8.819*** (4.648)

-0.335 (-1.359)

0.964*** (2.692)

-1.436*** (-3.591)

-0.773*** (-5.244)

0.034** (2.491)

8.397*** (3.935)

-0.327 (-1.320)

0.953*** (2.652)

-1.498*** (-3.526)

0.128 (0.434)

-0.762*** (-5.084)

0.032** (2.219)

7.226*** (3.391)

-0.499** (-2.032)

0.985*** (2.711)

-0.221 (-0.783)

-0.788*** (-5.210)

0.034** (2.329)

0.417 (1.171)

0.623*** (2.786)

0.040*** (2.907)

2.782*** (3.873)

0.588*** (2.661)

-0.723*** (-3.776)

0.035** (2.527)

サンプル数

決定係数

自由度調整済み決定係数

F 値

521

0.062

0.053

6.807***

521

0.107

0.098

12.288***

521

0.107

0.096

10.255***

521

0.085

0.076

9.606***

521

0.036

0.033

9.781***

521

0.062

0.057

11.440***

※最小二乗法により推定***,**,* はそれぞれ統計的有意水準 1%、5%、10%を表す.括弧内はt値.

表-2

CONDITIONING SET 1 2 3 4 5 6

Constant(定数項)

InitialGDP

SCHOOL

INFLATION

GOVERNMENT

TRADE

Bmarket

FDI

1.223*** (6.337)

-0.010 (-0.402)

1.975 (1.235)

-0.328 (-1.319)

1.358*** (3.715)

-0.025 (-1.051)

2.840 (1.559)

-0.361 (-1.440)

1.398*** (3.801)

-0.204 (-0.993)

-0.027 (-1.127)

4.940** (2.484)

-0.246 (-0.973)

1.396*** (3.819)

-0.275 (-1.336)

-1.063** (-2.550)

-0.020 (-0.827)

5.628** (2.526)

-0.258 (-1.016)

1.417*** (3.862)

-0.304 (-1.445)

-0.955** (-2.142)

-0.213 (-0.686)

-0.015 (-0.593)

7.100*** (2.959)

-0.382 (-1.445)

1.468*** (3.994)

-0.176 (-0.784)

-0.889** (-1.989)

-0.283 (-0.904)

-0.269 (-1.633)

-0.018 (-0.716)

サンプル数

決定係数

自由度調整済み決定係数

F 値

425

0.000

-0.002

0.161**

425

0.048

0.041

7.070***

425

0.050

0.041

5.549***

425

0.065

0.054

5.797***

425

0.066

0.052

4.904***

425

0.072

0.056

4.601***

※最小二乗法により推定***,**,* はそれぞれ統計的有意水準 1%、5%、10%を表す.括弧内はt値.

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海外直接投資と経済成長 16

表-3

CONDITIONING SET

1 2 3 4 5 6 7

Constant(定数項)

SCHOOL

InitialGDP

INFLATION

GOVERNMENT

TRADE

Bmarket

FDI

4.027*** (1.169)

0.361** (0.166)

-0.001 (0.121)

-0.197 (0.090)

-0.114 (0.201)

-0.488 (0.164)

-0.354 (0.081)

0.017** (0.009)

3.650*** (1.140)

0.390*** (0.164)

0.000 (0.119)

-0.191 (0.089)

-0.169 (0.198)

-0.340 (0.144)

-0.358 (0.081)

1.589 (1.014)

0.316** (0.159)

0.123 (0.113)

-0.293 (0.088)

-0.190 (0.198)

-0.227 (0.139)

0.750 (0.863)

0.267** (0.156)

0.153 (0.111)

-0.256 (0.084)

-0.327 (0.180)

0.065 (0.783)

0.259** (0.155)

0.121 (0.109)

-0.229 (0.082)

-1.019 (0.674)

0.191 (0.152)

0.179** (0.106)

0.091 (0.140)

0.396*** (0.090)

サンプル数(a)

正しく観測した数(b)

(b)/(a)×100(%)

対数尤度

459

325

70.8

-231.49

459

326

71.0

-233.78

459

311

67.8

-244.40

459

312

68.0

-245.74

459

309

67.3

-247.42

459

306

66.7

-251.47

459

317

69.1

-252.88

CONDITIONING SET

8 9 10 11 12 13 14

Constant(定数項)

SCHOOL

InitialGDP

INFLATION

GOVERNMENT

TRADE

Bmarket

FDI

-1.592 (0.496)

0.286*** (0.063)

1.421*** (0.259)

-0.245 (0.079)

0.557 (0.432)

0.033 (0.162)

0.918*** (0.457)

-0.068 (0.113)

1.903*** (0.231)

-0.402 (0.071)

0.523*** (0.083)

0.017*** (0.008)

-1.091 (0.679)

0.155 (0.154)

0.184** (0.107)

0.011 (0.007)

サンプル数(a)

正しく観測した数(b)

(b)/(a)×100(%)

対数尤度

459

291

63.4

-252.27

459

335

73.0

-257.71

459

340

74.1

-262.66

459

340

74.1

-262.50

459

337

73.4

-245.43

459

340

74.1

-259.77

459

300

65.4

-250.23

※最尤法により推定***,**,はそれぞれt値片側検定による統計的有意水準 5%、10%を表す.括弧内は標準誤差.

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表-4

CONDITIONING SET

1 2 3 4 5 6 7

Constant(定数項)

SCHOOL

InitialGDP

INFLATION

GOVERNMENT

TRADE

Bmarket

FDI

-2.423 (0.400)

-0.008 (0.144)

0.394*** (0.095)

0.055 (0.107)

0.261 (0.227)

-0.215 (0.154)

0.007 (0.081)

-0.020 (0.012)

-2.372 (0.384)

-0.046 (0.141)

0.413*** (0.094)

0.056 (0.107)

0.290 (0.226)

-0.306 (0.144)

0.019 (0.080)

-2.358 (0.375)

-0.050 (0.140)

0.413*** (0.094)

0.067 (0.095)

0.294 (0.225)

-0.305 (0.144)

-2.548 (0.436)

-0.021 (0.141)

0.374*** (0.093)

0.065 (0.093)

0.010 (0.183)

-2.543 (0.426)

-0.023 (0.136)

0.377*** (0.073)

0.065 (0.093)

-2.469 (0.388)

-0.036 (0.134)

0.396*** (0.064)

-0.745 (0.108)

0.849*** (0.081)

サンプル数(a)

正しく観測した数(b)

(b)/(a)×100(%)

対数尤度

365

215

58.9

-205.70

365

214

58.6

-207.00

365

215

58.9

-207.03

365

215

58.9

-209.32

365

215

58.9

-209.32

365

220

60.3

-209.56

365

212

58.1

-248.94

CONDITIONING SET

8 9 10 11 12 13 14

Constant(定数項)

SCHOOL

InitialGDP

INFLATION

GOVERNMENT

TRADE

Bmarket

FDI

-2.423 (0.341)

0.384*** (0.044)

-1.387 (0.174)

0.604*** (0.060)

-1.740 (0.210)

0.867*** (0.083)

-1.494 (0.184)

0.510*** (0.050)

-0.908 (0.132)

0.433*** (0.047)

0.043 (0.074)

0.031*** (0.011)

-2.446 (0.382)

-0.005 (0.134)

0.406*** (0.063)

-0.026 (0.011)

サンプル数(a)

正しく観測した数(b)

(b)/(a)×100(%)

対数尤度

365

221

60.5

-209.60

365

160

43.8

-242.28

365

206

56.4

-228.92

365

176

48.2

-242.07

365

148

40.5

-263.41

365

114

31.2

-308.50

365

216

59.2

-206.93

※最尤法により推定***,**,はそれぞれt値片側検定による統計的有意水準 5%、10%を表す.括弧内は標準誤差.

海外直接投資と経済成長 17

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巻末付録2.データの出所

1 人当たり実質 GDP(成長率,初期値)

World Bank,GDN datasets より、1985 年を基準としたものを用いた。 http://econ.worldbank.org/WBSITE/EXTERNAL/EXTDEC/EXTRESEARCH/0,,contentMDK:20701055~pagePK:64214825~piPK:64214943~theSitePK:469382,00.html

(2006 年 7 月 5 日ログイン)

対内直接投資純フロー額(対 GDP 比率)

World Bank,World Development Indicators On-line より、2000 年の GDP を基準としたも

のを用いた。

http://devdata.worldbank.org/dataonline/(2006 年 7 月 2 日ログイン)

平均就学年数

Barro and Lee (1994)のデータセットの更新版より、労働人口1人あたりの平均就学年数を用

いた。

http://www.cid.harvard.edu/ciddata/ciddata.html(2006 年 7 月 5 日ログイン)

貿易総額(対 GDP 比率)

World Bank,GDN datasets より、1985 年を基準としたものを用いた。 http://econ.worldbank.org/WBSITE/EXTERNAL/EXTDEC/EXTRESEARCH/0,,contentMDK:20701055~pagePK:64214825~piPK:64214943~theSitePK:469382,00.html

(2006 年 7 月 5 日ログイン)

政府支出総額(対 GDP 比率)

World Bank,World Development Indicators On-line より、2000 年の GDP を基準としたも

のを用いた。

http://devdata.worldbank.org/dataonline/(2006 年 7 月 2 日ログイン)

闇金融市場の取引コスト

World Bank,GDN datasets の “Black market premium” を用いた。 http://econ.worldbank.org/WBSITE/EXTERNAL/EXTDEC/EXTRESEARCH/0,,contentMDK:20701055~pagePK:64214825~piPK:64214943~theSitePK:469382,00.html

(2006 年 7 月 2 日ログイン)

海外直接投資と経済成長 18

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巻末付録3.サンプル国リスト

以下 134 ヶ国のデータの中から、全ての項目がそろうものについて分析を行った。

Algeria, Angola, Argentina, Australia, Austria, Bahamas The, Bangladesh, Barbados,

Belgium, Benin, Bolivia, Botswana, Brazil, Burkina Faso, Burundi, Cameroon, Canada,

Cape, Verde, Central African Rep., Chad, Chile, China, Colombia, Comoros, Congo,

Dem. Rep., Congo, Rep., Costa Rica, Cote d'Ivoire, Cyprus, Denmark, Dominica,

Dominican Rep., Ecuador, Egypt, Arab Rep., El Salvador, Ethiopia, Fiji, Finland,

France, Gabon, Gambia, The, Ghana, Greece, Grenada, Guatemala, Guinea,

Guinea-Bissau, Guyana, Haiti, Honduras, Hong Kong, Hungary, Iceland, India,

Indonesia, Iran, Islamic Rep., Ireland, Israel, Italy, Jamaica, Japan, Jordan, Kenya,

Korea, Rep., Kuwait, Lesotho, Liberia, Luxembourg, Madagascar, Malawi, Malaysia,

Mali, Mauritania, Mauritius, Mexico, Morocco, Mozambique, Nepal, Netherlands,

New Zealand, Nicaragua, Niger, Nigeria, Norway, Oman, Pakistan, Panama, Papua,

New Guinea, Paraguay, Peru, Philippines, Poland, Portugal, Rwanda, Senegal,

Seychelles, Sierra, Leone, Singapore, Somalia, South Africa, Spain, Sri Lanka, St.

Lucia, St. Vincent and the Grenadines, Sudan, Swaziland, Sweden, Switzerland,

Syrian Arab Rep., Tanzania, Thailand, Togo, Trinidad and Tobago, Tunisia, Turkey,

Uganda, United Kingdom, United States, Uruguay, Venezuela, Yemen Rep., Zambia,

Zimbabwe.

海外直接投資と経済成長 19

Page 21: 海外直接投資と経済成長 - Keio Universityuser.keio.ac.jp/~kiyota/kozo/Courses/papers/Ishige2006.pdf海外直接投資と経済成長 横浜国立大学 経営学部 石毛

参考文献

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