批判的読解力を育成する指導 · 批判的読解を求めるような発問がない 例...
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アクションリサーチ実習Ⅰ
批判的読解力を育成する指導批判的読解力を育成する指導
広島大学大学院教育学研究科1 広島大学大学院教育学研究科
言語文化教育学専攻英語文化教育学専修
教 高度 プ グ
1
教職高度化プログラム
瀧元美菜子
発表の流れ発表の流れ1. 研究の背景
2. リサーチテーマ
3 先行研究3. 先行研究
4. 仮説設定
5. 授業実践
6 検証方法6. 検証方法
7. 仮説の検証
8. 課題と展望
参考文献 2参考文献 2
1.研究の背景PISA調査
日本: 『熟考 評価』に課題日本: 『熟考・評価』に課題
学習指導要領(平成20年度版)学習指導要領(平成20年度版)
読むこと
『読んだ後に、感想や意見、賛否、またその理由を示すことを念頭に置いて、話の内容や書き手の意見などを批判的にとらえることができるようになること』
外国語科でも批判的読解力を育成する指導が必要
33
3 先行研究3.先行研究
「批判的読解」とは?
有元(2008)
テキスト(文章や図表)を読んで、正確に理解したうえで その文章の内容や構成理解したうえで、その文章の内容や構成などについて分析し、評価したり批判したりして課題を見つけることりして課題を見つけること。
文章の内容や構成について分析し 評価する力5文章の内容や構成について分析し、評価する力5
2. 先行研究2. 先行研究
有元(2008)
PISA調査での敗因批判的読解を求めるような発問がない
例・筆者の意見に賛成か?反対か?・筆者の意見に賛成か?反対か?・物語の終わり方はこれで良いか?
文章を評価する観点 6文章を評価する観点 6
4. 仮説設定4. 仮説設定
①文章を評価する観点を発問によって与えることで 生徒は文章を批判て与えることで、生徒は文章を批判的に読むことができるようになるであろうろう。
②複数の文章を比較することで、文章を相対化し、批判的に読むことができるようになるであろう 8きるようになるであろう。 8
5. 授業実践5.1 調査対象
広島大学附属東雲中学校3年2組(34名)
発問に返答する生徒が決まっている
思考力に課題思考力に課題
・約半数が英文を読むことが好き・約半数が英文を読むことが好き
・約2/3が読むことが苦手99
5. 授業実践授 実践5.2 調査方法
テスト調査テスト調査
ある文章の内容や構成についある文章の内容や構成について良い点・悪い点を理由をつけて出来る限り挙げるて出来る限り挙げる
プレテスト : 姉妹校である香港の学校の生徒に自プレテスト : 姉妹校である香港の学校の生徒に自己紹介をするために送ったEメールの文面
ポストテスト : クラスメイトに好きなものを紹介するために 行ったスピーチの文面 10ために、行ったスピーチの文面 10
5. 授業実践授 実践5.3 仮説①の基づく実践
第3限・第5限で実施
仮説①: 文章を評価する観点を発問によって与える
文章が書かれた目的の把握
仮説① 文章を評価する観点を発問 与 る
文章が書かれた目的の把握
目的に合った内容や構成に目的に合った内容や構成になっているかの評価
生徒同士で出た意見の交換1111
5 授業実践5. 授業実践5. 仮説②に基づく実践第3限で実施
仮説②: 複数の文章の比較をする
文章が書かれた目的の把握
仮説②: 複数の文章の比較をする
文章が書かれた目的の把握
異なる内容構成で書かれた二つの文章の比較文章 比較
どちらの文章が書かれた目的 12ちら 文章 書 れ 目的に合った内容構成かを評価
12
6. 検証方法検証方法プレテスト・ポストテストの検証
『目的に合 た内容や構成か』という観点から『目的に合った内容や構成か』という観点から文章を評価しているかを分析
例:ポストテスト (好きなものを紹介するためのスピーチ)
・好きなものを紹介するのだから、なぜ好きかが分かるように理由をもっとつけた方がよい。う 由をも け 方 。⇒『目的に合った内容か』
・好きなものを紹介するのだから、何が好きか分かりやすいように、最初に言うべき。 13最初 言 。⇒『目的に合った構成か』
13
6. 検証方法6. 検証方法プレテスト・ポストテストの検証
『目的に合った内容や構成か』という観点から文章を評価しているかを分析
C プレテスト ポストテスト
目的・内容 目的・構成 目的・内容 目的・構成目的・内容 目的・構成 目的・内容 目的・構成
生徒1 ○ × × ○
生徒2 ○ × ○ ○
生徒3 × × ○ ×生徒3 × × ○ ×
:14
7.仮説の検証 (仮説①)仮説の検証 (仮説①)
読んだ内容について、文章を評価する観点を発問によって与えることで、生徒は文章を批判的に読むことができるようになるであろう。
22253人
目的を観点に文章を評価した生徒の数
2219
15
20
8人
3人
910
15プレテスト
ポストテスト
8人
10
5
150目的・内容 目的・構成 n=34(人)
15
7.仮説の検証 (仮説①)7.仮説の検証 (仮説①)
ポストテストで「目的」を観点に文章を評価しなかった生徒 9名ポ トテ トで 目的」を観点に文章を評価しなか た生徒
プレテストでは「目的」を観点に評価していた生徒
9名
評価していた生徒
6名
両方のテストで「目的」を観点に評価しなかった生徒評価しなかった生徒
3名 何を観点に評価すれば観よいか分からなかった
<アンケート調査より>
<原因> 16<原因>
発問の質と回数の問題16
7.仮説の検証 (仮説②)複数の文章を比較することで、文章を相対化し、批判的に読むことができるようになるであろう。批判的に読むことができるようになるであろう。
2225目的を観点に文章を評価した生徒の数
異なる構成の2219
15
20
8人
異なる構成の文章を比較した
効果
9
5
10
15プレテスト
ポストテスト
8人
10
5
目的・内容 目的・構成 34(人) 目的・内容 目的・構成 n=34(人)
<ポストテストの解答>
好きなものを紹介するのだから I’ i t t lk b t と17好きなものを紹介するのだから、I’m going to talk about~と最初に言うべき
17
8. 課題と展望アンケート調査より
『文章を評価できるようになりたいか?』 (4件法で回答)
グループA: 指導の効果があったと思われる10名グル プB: 指導の効果が無かったと思われる9名グループB: 指導の効果が無かったと思われる9名
*初めから評価する観点が身についていた16名を除く
プレテスト ポストテスト全く思 あまり思 少しそ そう 全く思 あまり思 少しそ そうわない わない う思う 思う わない わない う思う 思う
グループA 0 4 3 3 0 3 3 4グループB 4 2 0 3 1 5 1 2
意義を感じているかど (人)18意義を感じているかどうかが指導効果に影響
(人)18
8. 課題と展望課題 展望発問の質⇒生徒に伝わりやすく 興味を引く発問の工夫⇒生徒に伝わりやすく、興味を引く発問の工夫
発問に取り組む時間発問に取り組む時間⇒読んで考える時間の確保(15分程度)
充実したフィードバック⇒論理性をチェック(理由づけ・根拠)
批判的読解をすることの意義を認識させる⇒生徒の積極的な取り組み 19生徒の積極的な取り組み 19
参考文献参考文献OECD. (2009). PISA Take the Test: Sample Questions from the OECD’s PISA Assessments. Paris: Organisation for Economic Co-
i d D loperation and Development.OECD. (2006). Assessing scientific, reading, mathematical literacy: a framework for PISA 2006. Paris: Organisation for Economic Co-operation and Development.Hood. (1998). Critical Literacy: What does it mean in theory and practice? Teacher’s voice 3. Sydney.y yNuttall. (2005). Teaching Reading Skills in a foreign language, 181-121. Thailand.有元 秀文 (2008) 「リーディング・リテラシーを育てるための指導戦略と評有元 秀文. (2008).「リーディング・リテラシーを育てるための指導戦略と評価方法の開発」『全国大学国語教育学会発表要旨集』114, 143-146.有元 秀文. (2008). 「どうすればPISA型読解力を向上させられるか」『PISA型読解力向上のための実践指導資料集 和歌山県教育庁』『PISA型読解力向上のための実践指導資料集・和歌山県教育庁』.国立教育政策研究所. (2007).『PISA2006年調査 評価の枠組み』ぎょうせい.
20高梨庸雄・卯城祐司 編.(2000).『英語リーディング事典』. 研究社出版.
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