漸増繰返載荷後にわずかに塑性化する定振幅繰返載荷を 受け...

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【第1回九州橋梁・構造工学研究会シンポジウム 201312月】 漸増繰返載荷後にわずかに塑性化する定振幅繰返載荷を 受けるパイプ断面鋼製橋脚の耐震性能 Numerical Study on Seismic Performance of Circular Steel Bridge Piers subjected to Incremental Cyclic Loading and Cyclic Loading with Constant Amplitude 八戸 翔平*,葛西 昭**,橋本 洸平***,北原 武嗣**** Shohei YaeAkira KasaiKohei Hashimoto and Takeshi Kitahara *学生会員 熊本大学大学院自然科学研究科 (860-8555 熊本市中央区黒髪2391) **正会員 熊本大学 准教授 大学院自然科学研究科 (860-8555 熊本市中央区黒髪2391) ***非会員 熊本大学大学院自然科学研究科 (860-8555 熊本市中央区黒髪2391) ****非会員 関東学院大学 教授 (236-8501 横浜市金沢区六浦東1-50-1) 本研究は,ピーク後に定振幅繰り返し載荷を受けるパイプ断面鋼製橋脚の最大荷重を経験した後, 30回の定振幅繰り返し載荷での橋脚が有する耐力と中規模定振幅載荷履歴との関連性について検討 する.まず,様々な構造パラメータで解析を行い,解析に用いた繰り返し構成則の違いなどから比 較・検討を行った.その結果,移動硬化型バイリニアモデルよりも精緻な構成則である修正2曲面モ デルの方の耐力低下が著しいことが判明した.また,繰り返し回数が多いほど耐力低下の値も大き くなり,最大荷重を経験した後では耐力低下の値が顕著になる.最後に,修正2曲面モデルの適用性 を検討するために,累積相当塑性ひずみの観点から結果を整理し,議論を行った. 1. 緒言 2011 年に発生した東北地方太平洋沖地震は,種々の社 会基盤施設にも被害を生じさせた.この地震の特徴の 1 つとして,継続時間の長い地震動であることがまとめられ ている 1) .この地震によって鋼製橋脚そのものの被害報告 はないが,同種の地震で橋脚の最大耐力後(いわゆるピー ク後)に,若干塑性化が進行する程度の地震動が長時間続 くと損傷が発展する恐れがあることは容易に想像がつく. しかし,現状では,継続時間の長い地震動を対象とした研 究成果は乏しく,文献 2)に見られる程度である.同文献で は,最大荷重を経験した後,30 回の繰り返し振幅を受け るような載荷パターンでの実験および数値解析を行って いるが,特に,数値解析における鋼材の構成則として,移 動硬化型バイリニアモデルを用いており,ポストピークに おける材料の追随性としては研究課題を残している.これ らを受け八戸ら 3は,パイプ断面ではあるものの構成則 として修正 2 曲面モデル 4を適用した解析的検討を行っ た.包絡線に対する検討も行っているが,本稿ではこの内 容にさらに累積相当塑性ひずみに関する考案を加えるこ ととする. 2. 数値解析モデルと概要 本研究の解析対象は,図-1 に示す角部の影響を考慮し なくてよいパイプ断面鋼製橋脚とした.また,耐震性能の 評価を行うにあたって,数値解析により同橋脚のパラメト リックスタディを実施した.以下ではこの数値解析に用い たモデル概要,材料特性,構造パラメータをまとめる. 2.1 解析モデル 数値解析モデルは図-1 に示すシェル要素とはり要素 から構成された有限要素モデルを用いた.変形が大きいと 予測される柱基部から 3 番目のダイヤフラムまでをシェ ル要素でモデル化し局部座屈を再現できるようにした.シ 27

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Page 1: 漸増繰返載荷後にわずかに塑性化する定振幅繰返載荷を 受け …Popovモデルを基に,1)累積相当塑性ひずみ概念の導入, 2)累積相当塑性ひずみ量による降伏曲面の大きさの減少,

【第1回九州橋梁・構造工学研究会シンポジウム 2013年12月】

漸増繰返載荷後にわずかに塑性化する定振幅繰返載荷を

受けるパイプ断面鋼製橋脚の耐震性能

Numerical Study on Seismic Performance of Circular Steel Bridge Piers subjected to Incremental Cyclic Loading and

Cyclic Loading with Constant Amplitude

八戸 翔平*,葛西 昭**,橋本 洸平***,北原 武嗣****

Shohei Yae,Akira Kasai,Kohei Hashimoto and Takeshi Kitahara

*学生会員 熊本大学大学院自然科学研究科 (〒860-8555 熊本市中央区黒髪2‐39‐1)

**正会員 熊本大学 准教授 大学院自然科学研究科 (〒860-8555 熊本市中央区黒髪2‐39‐1)

***非会員 熊本大学大学院自然科学研究科 (〒860-8555 熊本市中央区黒髪2‐39‐1)

****非会員 関東学院大学 教授 (〒236-8501 横浜市金沢区六浦東1-50-1)

本研究は,ピーク後に定振幅繰り返し載荷を受けるパイプ断面鋼製橋脚の最大荷重を経験した後,

30回の定振幅繰り返し載荷での橋脚が有する耐力と中規模定振幅載荷履歴との関連性について検討

する.まず,様々な構造パラメータで解析を行い,解析に用いた繰り返し構成則の違いなどから比

較・検討を行った.その結果,移動硬化型バイリニアモデルよりも精緻な構成則である修正2曲面モ

デルの方の耐力低下が著しいことが判明した.また,繰り返し回数が多いほど耐力低下の値も大き

くなり,最大荷重を経験した後では耐力低下の値が顕著になる.最後に,修正2曲面モデルの適用性

を検討するために,累積相当塑性ひずみの観点から結果を整理し,議論を行った.

1. 緒言

2011 年に発生した東北地方太平洋沖地震は,種々の社

会基盤施設にも被害を生じさせた.この地震の特徴の 1

つとして,継続時間の長い地震動であることがまとめられ

ている 1).この地震によって鋼製橋脚そのものの被害報告

はないが,同種の地震で橋脚の最大耐力後(いわゆるピー

ク後)に,若干塑性化が進行する程度の地震動が長時間続

くと損傷が発展する恐れがあることは容易に想像がつく.

しかし,現状では,継続時間の長い地震動を対象とした研

究成果は乏しく,文献 2)に見られる程度である.同文献で

は,最大荷重を経験した後,30 回の繰り返し振幅を受け

るような載荷パターンでの実験および数値解析を行って

いるが,特に,数値解析における鋼材の構成則として,移

動硬化型バイリニアモデルを用いており,ポストピークに

おける材料の追随性としては研究課題を残している.これ

らを受け八戸ら 3)は,パイプ断面ではあるものの構成則

として修正 2 曲面モデル 4)を適用した解析的検討を行っ

た.包絡線に対する検討も行っているが,本稿ではこの内

容にさらに累積相当塑性ひずみに関する考案を加えるこ

ととする.

2. 数値解析モデルと概要

本研究の解析対象は,図-1 に示す角部の影響を考慮し

なくてよいパイプ断面鋼製橋脚とした.また,耐震性能の

評価を行うにあたって,数値解析により同橋脚のパラメト

リックスタディを実施した.以下ではこの数値解析に用い

たモデル概要,材料特性,構造パラメータをまとめる.

2.1 解析モデル

数値解析モデルは図-1 に示すシェル要素とはり要素

から構成された有限要素モデルを用いた.変形が大きいと

予測される柱基部から 3 番目のダイヤフラムまでをシェ

ル要素でモデル化し局部座屈を再現できるようにした.シ

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Page 2: 漸増繰返載荷後にわずかに塑性化する定振幅繰返載荷を 受け …Popovモデルを基に,1)累積相当塑性ひずみ概念の導入, 2)累積相当塑性ひずみ量による降伏曲面の大きさの減少,

ェル要素で分割した部分のメッシュ分割に関しては,柱軸

方向に基部から 1 つ目のダイヤフラム区間を 30 分割,残

りの上部のシェル要素について柱軸方向に 10 分割,円周

方向に 30 分割とした.一方,シェル要素の接続部分は平

面保持されていると考え,剛体要素で剛板の中央にはり要

素は接続する.はり要素部は比較的変位が小さいが,本研

究では,分割数を 10 分割とした.なお,境界条件として

は脚基部を完全固定した場合を想定した.

2.2 構造パラメータ

本解析に用いる構造諸元は表-1 のとおりである.表-2

には解析に用いた各パラメータの値を示してある.また,

径厚比パラメータ(Rt)と細長比パラメータ(��)は以下

の式(1),式(2)で定義される 5).

ここで,hは脚長,Dはパイプ断面の直径,tは構成板の板

厚,Kは有効座屈長係数(K=2.0)である.

2.3 材料特性

使用鋼材は SM490 とし,特に初期不整は考慮しないも

のとする.繰り返し構成則に必要な材料パラメータは表-2

に示すとおりである.なお,表において E は弾性係数,σy

は降伏応力,νはポアソン比である.

解析には,汎用有限要素法プログラムABAQUS6)を用い,

a) 鳥瞰図 b) 横から見た図 c) 断面図

図-1 パイプ断面橋脚の解析モデル図

P

H

はり要素

シェル要素

接合部分:剛体要素

円周:30分割

t

D

h(mm)

10分割

軸方向:10分割

軸方向:30分割

𝑅𝑡 = √3(1 − 𝜈2)𝜎𝑦

𝐸

𝐷

2𝑡 (1)

�� =Kℎ

𝑟

1

𝜋√

𝜎𝑦

𝐸 (2)

表-1 解析モデルの構造諸元

𝑅𝑡 𝜆 D(mm) t(mm) h(mm)

0.103 0.395 789 10 4303

0.05 0.4 789 20 4303

表-2 解析モデルの材料諸元

鋼種 E(GPa) 𝜎𝑦(MPa) 𝜈

SM490 200 315 0.3

図-2 バイリニア型応力-ひずみ関係

図-3 移動硬化則

図-4 修正 2 曲面モデルの履歴概要

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繰り返し構成則としては図-2,図-3,図-4に示すバイリニ

ア型移動硬化則と修正2曲面モデルを仮定した.移動硬化

則では,塑性化が生じた後,硬化にしたがい降伏曲面は大

きさが変化せず中心が移動する.降伏から硬化後,除荷し

て逆方向載荷が生じる場合,バウシンガー効果を近似的に

表現することができる.修正2曲面モデルは,Dafalias・

Popovモデルを基に,1)累積相当塑性ひずみ概念の導入,

2)累積相当塑性ひずみ量による降伏曲面の大きさの減少,

3)降伏棚の長さの減少・消失を考慮することによる降伏

棚内の繰り返し変位特性の再現,4)形状パラメータの修

正,5)記憶曲面と仮想境界曲面の導入,および6)境界曲

面の大きさ,傾きおよび移動の考慮,といった修正と追加

を行ったものである.また,修正2曲面モデルは引張試験

から定められる5個の材料定数(ヤング係数E,降伏応力𝜎𝑦,

ポアソン比 ,ひずみ硬化開始時の硬化係数Est,および,

ひずみ硬化開始時のひずみ 𝑡)以外に12個のモデルパラ

メータがある.

3. 載荷パターン

本研究では,定振幅繰り返し載荷を載荷履歴として考え

るが,ここでまず以下の定義をしておく.ある一定の振幅

による繰り返し載荷では,その振幅が部材の降伏する変位

とのかね合いで耐力に及ぼす影響が異なる.そこで,本研

究では,

と定義し,主に中規模定振幅をとりあげ,その載荷履歴と

の間の関係を論ずることとする.漸増繰返載荷後は,文献

2)にならって,30回の定振幅繰返載荷とした.具体的に

は漸増繰返載荷で1.0δy刻みの変位振幅を与え,最大荷重

を履歴後30回の繰返振幅を与えた.漸増繰返載荷の変位Δ

1は3.0~6.0δyとし,定振幅部分の全幅Δ2は2.0δyとした.

4. 解析結果

図-6,図-7は径厚比パラメータRt=0.103,漸増繰り返し

載荷の値⊿1=3.0δy,定振幅の全幅⊿2=2.0δyにおける移動硬

化則と修正2曲面モデルの荷重-変位関係,荷重-変位関

係の水平変位3.0δy付近での拡大図を表したものである.荷

重-変位関係は横軸に水平方向変位を降伏変位で,縦軸に

水平方向荷重を降伏荷重でそれぞれ無次元化したもので

ある.図 -8は修正2曲面モデルでの径厚比パラメータ

Rt=0.103,漸増繰り返し載荷の値⊿1=4.0δy,定振幅の全幅

⊿2=2.0δyにおける荷重‐変位関係を表している.図-9は径

厚比パラメータRt=0.103,定振幅の全幅⊿2=2.0δyにおける

第1フェイズの漸増繰り返し載荷の違いにおける移動硬化

則との耐力低下の比較を行ったものであり,繰り返し1振

幅目を基準とした繰り返し回数別の耐力低下を表してい

る.

4.1 構成則の違いが強度と変形能に及ぼす影響

図-6,図-7より移動硬化則に比べ修正2曲面モデルの方

が大きいピーク時荷重となり,さらに耐力低下の値も大き

くなっていることがわかる.また図-6(b)と図-8,図-9より

漸増繰り返し載荷の値が大きいほど耐力低下が大きいこ

とがわかる.耐力低下の原因としては,定振幅繰り返し載

荷を行う中で,基部付近に局部座屈が発生し,進展したこ

と,部材の剛性が低下したことが考えられる.また,修正

2曲面モデルのほうが耐力低下が大きく表れたことについ

ては,バウシンガー効果による弾性域の減少が考えられる.

図-5 繰り返し載荷パターン

第1フェイズ第2フェイズ

Δ2

振幅0~0.6δy :小規模定振幅 (全幅Δ=0~1.2δy)

0.6~1.2δy :中規模定振幅 (全幅Δ=1.2~2.4δy)

1.2δy~ :大規模定振幅 (全幅Δ=2.4 δy~)

(δyは橋脚の降伏変位)

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4.2 変形性状

図-10は移動硬化型バイリニアモデルでのRt=0.103,漸増

繰り返し載荷の値⊿1=4.0δy,定振幅の全幅⊿2=2.0δyにおけ

る荷重‐変位関係とRt=0.05,漸増繰り返し載荷の値⊿

1=5.0δy,定振幅の全幅⊿2=2.0δyにおける荷重‐変位関係を

表したものである.同様に図-11,図-12はRt=0.103におけ

る漸増繰り返し載荷3.0δyの3サイクル目,4.0δyの1サイクル

目,4.0δyの3サイクル目,定振幅繰り返し載荷の30回目の

基部付近の累積相当塑性ひずみとRt=0.05における漸増繰

り返し載荷4.0δyの3サイクル目,5.0δyの1サイクル目,5.0δy

の3サイクル目,定振幅繰り返し載荷の30回目の基部付近

の累積相当塑性ひずみを表したものであり,累積相当塑性

ひずみの範囲はそれぞれの解析モデルで統一した範囲と

なっている.また,図-13は繰り返しサイクルにおける累

積相当塑性ひずみの増加量を表している.縦軸に繰り返し

サイクル数,縦軸に累積相当塑性ひずみを降伏ひずみで除

し無次元化したものである.累積相当塑性ひずみは以下の

(3)式により定義される. 𝐷 は累積相当塑性ひずみ, は

塑性ひずみ増分を表している.

図-11より,Rt=0.103では最大で179,図-12よりRt=0.05では

最大で147増加している.また,図-13より降伏ひずみと比

較してみると,径厚比パラメータの小さいつまり板厚が厚

い方でも降伏ひずみの最大1000倍ほど増加していること

がわかる.先ほどの結果より,修正2曲面モデルの方が移

動硬化型バイリニアモデルよりも耐力低下の値が大きか

ったため,累積相当塑性ひずみにおいても顕著に表れるの

ではないかと考えられる.また,今回は軸力一定での水平

1方向繰り返し載荷を行い,解析モデルの基部付近の一部

に累積相当塑性ひずみが顕著に表れたが,これが軸力変動

を考慮する場合や水平2方向繰り返し載荷の場合では解析

モデルの基部全体に累積相当塑性ひずみが顕著に現れ,耐

力低下が水平1方向載荷よりも大きくなると思われる.

= ∫ √

(3)

(a) 移動硬化則 (b) 修正 2 曲面モデル

図-6 荷重‐変位関係(Rt=0.103,⊿1=3.0δy)

(a) 移動硬化則 (b) 修正 2 曲面モデル

図-7 荷重‐変位関係(水平変位 3.0δy付近)

図-8 荷重‐変位関係(Rt=0.103,⊿1=4.0δy)

(a) ⊿1=3.0δy (b) ⊿1=4.0δy

図-9 Rt=0.103,⊿2=2.0δyにおける耐力低下

(a) Rt=0.103,⊿1=4.0δy (b) Rt=0.05,⊿1=5.0δy

図-10 荷重‐変位関係

-2

-1.5

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5

2

-5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 5

H/H

y

δ/δy

-2

-1.5

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5

2

-6 -5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 5 6

H/H

y

δ/δy

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Page 5: 漸増繰返載荷後にわずかに塑性化する定振幅繰返載荷を 受け …Popovモデルを基に,1)累積相当塑性ひずみ概念の導入, 2)累積相当塑性ひずみ量による降伏曲面の大きさの減少,

(a) Rt=0.103 (b) Rt=0.05

図-13 cycle数別の累積相当塑性ひずみ増加量

4.3 ピーク後に定振幅繰り返し載荷を受ける鋼製橋脚の

耐震性能

図-14(a),(b)はそれぞれ径厚比パラメータRt=0.103,

Rt=0.05における横軸に第1フェイズでの漸増繰り返

し載荷の値をとり,縦軸に任意の荷重を降伏荷重で

除し,無次元したものである.図-14(a)から漸増繰り

返し載荷が3.0δy,4.0δyの場合に最大荷重がHmaxと同

じになり,3.0δy付近がピークであることがわかり,

図-14(b)では4.0δy付近でピークをであることがわか

る.また,ピーク前では繰り返し30振幅目での耐力は

変わらず,ピークを過ぎてからは数回の繰り返しでも耐力

低下の値が大きいことがわかる.

(a) 3.0δy(3 サイクル目) (b) 4.0δy(1 サイクル目)

(c)4.0δy(3 サイクル目) (d) 4.0δy(繰り返し 30 回目)

図-11 基部付近の相当塑性ひずみ(Rt=0.103,⊿1=4.0δy)

(a) 4.0δy(3 サイクル目) (b) 5.0δy(1 サイクル目)

(c) 5.0δy(1 サイクル目) (d) 5.0δy(繰り返し 30 回目)

図-12 基部付近の相当塑性ひずみ(Rt=0.05,⊿1=5.0δy)

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Page 6: 漸増繰返載荷後にわずかに塑性化する定振幅繰返載荷を 受け …Popovモデルを基に,1)累積相当塑性ひずみ概念の導入, 2)累積相当塑性ひずみ量による降伏曲面の大きさの減少,

(a) Rt=0.103 (b)Rt=0.05

図-14 第1フェイズ時の変位と荷重の関係

5. 結言

本研究は,長継続時間地震動に対応したパイプ断面鋼製

橋脚の耐震性能に着目し検討を行った.特に,構成則の違

いによる同性能の評価に及ぼす影響を数値解析的に検討

した.以下にその成果をまとめる.

1) 繰り返し回数が増えるにつれて,耐力低下も大きく

なった.

2) 修正 2 曲面モデルの適用により,バウシンガー効果

を精度よく再現することは,ピーク後の中規模定振

幅繰り返し載荷でも耐力が低下することでわかった.

3) 漸増繰り返し載荷後定振幅載荷は移動硬化則と修正

2 曲面モデルでは耐力低下に大きな差異が確認され

た.

4) 累積相当塑性ひずみは降伏ひずみと比較した際,

1000 倍以上増加していることがわかった.

参考文献

1) 気象庁:東北地方太平洋沖地震における地震動 資

料-2,http://www.jice.or.jp/sonota/t1/pdf/01_shiryou2.pdf

2) 北原武嗣・田中賢太郎・山口隆司・岸祐介・濵野剛:

数十回オーダー繰り返し載荷を受ける既設鋼製橋脚

の耐力低下に関する基礎的研究,土木学会論文集

AI(構造・地震工学),Vol. 68,No.4(地震工学論文集

第 31-b 巻),I_499-I508,2012.

3) 八戸翔平・葛西昭・橋本洸平・北原武嗣:漸増繰返

載荷後に定振幅繰返載荷を受けるパイプ断面鋼製橋

脚の耐力低下に関する解析的研究,第 68 回年次学術

講演会講演概要集,pp119-120,2013.09

4) Shen, C.,Mamaghani, I.H.P.,Mizuno, E. and Usami, T.:

Cyclic Behavior of Structural Steels. II:Theory,J. of End.

Mech.,ASCE,Vol.121,No.11,pp.1165-1172,1995.

5) 土木学会:座屈設計ガイドライン,鋼構造シリーズ

12,鋼構造委員会,p.408,2005.

6) Abaqus Analysis User’s Manual Version 6.11:SIMULIA,

DASSAULT SYSTEMS,2011.

(2013.11.8 受付)

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