細菌感染時のcrpとwbc - horibahoriba news letter2010 no.2...

HORIBA News Letter 2010 No.2 CRP(C反応性蛋白)は肺炎球菌のC多糖体と沈降反応を示す血漿蛋白として発見されました。 CRPはCa 2 + の存在下で、肺炎球菌表面のリン脂質の一種であるホスホリルコリンに結合します。 肺炎球菌以外にも、細胞質膜や毒素の構成成分としてホスホリルコリンを含んでいる細菌は多 く、これらにCRPが結合・凝集することによって補体が活性化され、食細胞による細菌貪食や菌 体自身の溶菌が生じることにより、生体防衛に役立っています。 CRPは細菌感染に対する生体防御システムとしての役割を持ち、細菌感染時には肝臓でのCRP合成が促進され、 血中CRP濃度が上昇します。CRPは細菌の細胞質膜に含まれるリン脂質の一種であるホスホリルコリンに結合する ことで、補体を活性化し、溶菌反応や貪食反応を引き起こします。一方、ウイルスは細胞質膜や細胞壁の構造を持 たないため、ウイルス感染時にはCRP濃度はあまり上昇しません。 C R P W B C Clinical Immuno-Review 41号 253-260,1984より改変 ホスホリルコリン(リン脂質) C R P W B C W B C W B C CRPは細菌感染では上昇しますが、ウイルス感染で は細菌感染ほど上昇しません。このことから、細菌 感染かウイルス感染かの鑑別に有用です。 また、細菌感染後、WBCがより早期に増加し、CRP はWBCより遅れて上昇することから(裏面参照)、 CRPとWBCを同時に測定することで、感染の時期を 推定することが可能です。 さらに、CRPとWBCの組み合わせにより、インフルエ ンザなどのウイルス感染に隠れた、重篤な疾患の見 落としを防止し、重症度を評価することが可能です。 CRPとは? --- なぜ、細菌感染では、CRPが上昇するのか? --- http://bac.hs.med.kyoto-u.ac.jp/saikin-j.html 病原細菌データベース、病原細菌データベース作成委員会 サブユニット サブユニット サブユニット サブユニット サブユニット C R P

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Page 1: 細菌感染時のCRPとWBC - HoribaHORIBA News Letter2010 No.2 CRP(C反応性蛋白)は肺炎球菌のC多糖体と沈降反応を示す血漿蛋白として発見されました。CRPはCa2+の存在下で、肺炎球菌表面のリン脂質の一種であるホスホリルコリンに結合します。

HORIBA News Letter 2010

No.2

CRP(C反応性蛋白)は肺炎球菌のC多糖体と沈降反応を示す血漿蛋白として発見されました。

CRPはCa2+の存在下で、肺炎球菌表面のリン脂質の一種であるホスホリルコリンに結合します。

肺炎球菌以外にも、細胞質膜や毒素の構成成分としてホスホリルコリンを含んでいる細菌は多

く、これらにCRPが結合・凝集することによって補体が活性化され、食細胞による細菌貪食や菌

体自身の溶菌が生じることにより、生体防衛に役立っています。

<解説>

CRPは細菌感染に対する生体防御システムとしての役割を持ち、細菌感染時には肝臓でのCRP合成が促進され、

血中CRP濃度が上昇します。CRPは細菌の細胞質膜に含まれるリン脂質の一種であるホスホリルコリンに結合する

ことで、補体を活性化し、溶菌反応や貪食反応を引き起こします。一方、ウイルスは細胞質膜や細胞壁の構造を持

たないため、ウイルス感染時にはCRP濃度はあまり上昇しません。

細菌感染時のCRPとWBC

Clinical Immuno-Review 41号 253-260,1984より改変

ホスホリルコリン(リン脂質)

CRPとWBCによる感染症の鑑別

ウイルス感染と細菌感染の鑑別

● CRP→ ウイルス感染:抗菌薬の適用なし

● CRP↑ 細菌感染:抗菌薬の適用あり

細菌感染の発症時期の推定

● CRP→ WBC↑ 感染初期

● CRP↑ WBC→感染後期

重篤な疾患の発見

重症度の評価

<解説>

CRPは細菌感染では上昇しますが、ウイルス感染で

は細菌感染ほど上昇しません。このことから、細菌

感染かウイルス感染かの鑑別に有用です。

また、細菌感染後、WBCがより早期に増加し、CRP

はWBCより遅れて上昇することから(裏面参照)、

CRPとWBCを同時に測定することで、感染の時期を

推定することが可能です。

さらに、CRPとWBCの組み合わせにより、インフルエ

ンザなどのウイルス感染に隠れた、重篤な疾患の見

落としを防止し、重症度を評価することが可能です。

CRPとは? --- なぜ、細菌感染では、CRPが上昇するのか? ---

http://bac.hs.med.kyoto-u.ac.jp/saikin-j.html

病原細菌データベース、病原細菌データベース作成委員会

サブユニット

サブユニット

サブユニット

サブユニット

サブユニット

CRP

結合

Page 2: 細菌感染時のCRPとWBC - HoribaHORIBA News Letter2010 No.2 CRP(C反応性蛋白)は肺炎球菌のC多糖体と沈降反応を示す血漿蛋白として発見されました。CRPはCa2+の存在下で、肺炎球菌表面のリン脂質の一種であるホスホリルコリンに結合します。

<解説>

細菌感染後、WBCがより早期に増加し、CRPはWBCより遅れて上昇することから、CRPと

WBCを同時に測定することで、感染の時期を

推定することが可能です。WBCのみ高値であ

れば感染初期、CRPとWBCが高値であれば

極期、CRPのみが高値であれば感染後期と

推定することが可能です。

CRPとWBCを同時測定する効果と意義

鈴江純史、小児実地医療においてCRPとWBCを診療時に即時測定する効果と意義、Readout 19 :68-73,1999

CRPとWBCの産生メカニズムCRPとWBCの増加の時間差はなぜ生まれるか

マクロファージ

合成促進

合成抑制

肝臓

IL6

細菌

12時間後に上昇 数時間後に上昇 7-14日後に上昇

脾・肺

マクロファージ

骨髄

好中球産生好中球動員

参考文献:

血漿蛋白と炎症マーカー、大谷英樹、臨床検査、33・11・1497-1500, 1989

血液専門医以外のための血液疾患対応マニュアル 症候編 白血球増加と減少のプラマリケア、武蔵学、治療、

84・2・231-235、2002

CRP↑

Alb↓

細菌

<解説>

細菌感染時には、マクロファージから産生されるIL-6(インターロイキン6)により、肝臓で

のCRP合成が促進されます。肝臓でのCRP合成にはある程度の時間を要するために、

血中のCRP濃度が上昇するのは約12時間後となります。

一方、マクロファージから産生される顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)により、脾臓、肺、

肝臓に蓄えられている好中球が血中に動員されることから、感染数時間後には血中の

WBCが増加します。G-CSFは骨髄にも働き、好中球の産生を促進します。

監修:

京都府立医科大学感染制御・検査医学講師、

同 附属病院臨床検査部副部長 稲葉亨先生

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