味の素グループ サステナビリティレポート 2014 - ajinomoto121 味の素グループ...

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コミュニティ 味の素グループは、それぞれの地域の「食・栄養」分野の課題解決に向けて、AINプログラムによる途上国の栄養改善や、 各国法人・財団による様々な取り組みを行っています。 「食・栄養」分野の課題解決のために 味の素グループは、途上国での栄養改善をグローバル健康貢献 企業としての重要な使命の一つと考えています。AIN ※1 プログラムは、 1999年の味の素(株)創立90周年を機に開始した「食・栄養」分野の 国際協力支援活動です。支援プロジェクトは、国内外のNGO/NPO 等から公募し、有識者による審査、味の素グループ従業員による視 察を経て決定されます。開始後は各国のグループ会社とともに栄養 教育などを側面から支援し、自立的で質の高い活動を目指します。 ※1 AIN:Ajinomoto International Cooperation Network for Nutrition and Health(味の素「食と 健康」国際協力ネットワーク) 72/ 12カ国 (インド、インドネシア、カンボジア、 スリランカ、タイ、バングラデシュ、 フィリピン、ベトナム、マレーシア、 ミャンマー、ブラジル、ペルー) 件数 12万人 受益者数 26千万円 総額 支援実績(1999年~2014年4月) プロジェクト名 実施団体 対象者 ( 人数 ) 国名 支援期間 ダッカ市のストリートチルドレン及び児童労働者に 向けた栄養価の高い昼食提供プロジェクト 認定 NPO 法人 国境なき子どもたち 路上生活をする子ども(40 名) バングラデシュ 2012 ~ 2014 『健康な食』インド思春期女性意識改善・ 人材育成プロジェクト 特定非営利活動法人 地球市民 ACT かながわ/ TPAK 思春期女性(5,000 名) インド 2012 ~ 2013 農村女性のエンパワーメントを通した 生活環境の改善と地場産業の育成 財団法人オイスカ 既婚女性とその家族(250 名) インドネシア 2011 ~ 2013 小学生の生活習慣病予防のための健康的食事と 運動の推進~学校における栄養的介入活動 Ho Chi Minh City Nutrition Center 小学生 (2,000 ~ 2,500 名/ 2 校) ベトナム 2011 ~ 2013 子どものための地場の栄養改善事業 公益社団法人 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン 2 歳未満の子ども(約 2,700 名)、 母親・妊産婦(約 3,700 名) ベトナム 2012 ~ 2014 先住民族オラン・アスリの女性による、幼児の 健康・栄養改善 UNIVERSITI PUTRA MALAYSIA(UPM) オラン・アスリの女性(31 名)、 5 つのオラン・アスリ村の母子 マレーシア 2011 ~ 2013 プノンペン市貧困地区の母親エンパワーメントに よる家庭の栄養改善 一般社団法人 日本カトリック信徒宣教者会 地域住民(935名)、 母親(270 名) カンボジア 2012 ~ 2014 地域特有の食材及び料理の再評価による 地域住民の栄養改善プログラム 光の子どもたちの会 エステーヴァン村住民(276 名) ブラジル 2012 ~ 2013 スラムに居住する母親に対する食育プロジェクト 特定非営利活動法人 ADRA Japan 女性リーダー(60 名)、 母親(240名)、保護者(100名) ペルー 2012 ~ 2013 バングラデシュにおける 2 地域の協働の住民参加型学校給食の展開 日本・バングラデシュ文化交流会 小学生(約 1,200 名) バングラデシュ 2013 ~ 2015 少数民族地域における 5 歳未満の子どもの栄養改善 公益財団法人 プラン・ジャパン 5歳未満の子ども(220 名)、 保護者(220名)、 保健関係者(40 名) ベトナム 2013 ~ 2015 保育所給食を通じた、 栄養改善・食材自給・教育の普及プロジェクト 認定特定非営利活動法人  幼い難民を考える会 保育所に通う子ども(約110 名)、 保護者家族・地域住民(約 2,000 名) カンボジア 2013 ~ 2015 持続可能な栄養改善システム構築事業 特定非営利活動法人  ピープルズ・ホープ・ジャパン ヘルスボランティア(257 名)、 5歳未満幼児(3,813 名)、 16 ~ 35 歳女性(8,862 名) インドネシア 2013 ~ 2014 貧困農村の母子の持続的な栄養改善のための プログラム(フェーズⅡ) 特定非営利活動法人  ハンガー・フリー・ワールド 妊産婦と乳幼児(420 名)、 同妊産婦の夫と義母(420 名) バングラデシュ 2013 ~ 2014 天使のスマイル支援プロジェクト (アマランサス[セロリ]と大豆栽培による栄養改善) 駒ヶ根市草の根市民活動 推進支援の会 ダンモルカバザール村民(200 名) バングラデシュ 2013 ~ 2014 2013年度の支援プロジェクト ★1 ★2 ★3 「AINプログラム」による途上国の栄養改善 121 味の素グループ サステナビリティレポート 2014

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  • コミュニティ

    味の素グループは、それぞれの地域の「食・栄養」分野の課題解決に向けて、AINプログラムによる途上国の栄養改善や、

    各国法人・財団による様 な々取り組みを行っています。

    「食・栄養」分野の課題解決のために

     味の素グループは、途上国での栄養改善をグローバル健康貢献

    企業としての重要な使命の一つと考えています。AIN※1プログラムは、

    1999年の味の素(株)創立90周年を機に開始した「食・栄養」分野の

    国際協力支援活動です。支援プロジェクトは、国内外のNGO/NPO

    等から公募し、有識者による審査、味の素グループ従業員による視

    察を経て決定されます。開始後は各国のグループ会社とともに栄養

    教育などを側面から支援し、自立的で質の高い活動を目指します。※1 AIN:Ajinomoto International Cooperation Network for Nutrition and Health(味の素「食と

    健康」国際協力ネットワーク)

    72件/12カ国(インド、インドネシア、カンボジア、スリランカ、タイ、バングラデシュ、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、ブラジル、ペルー)

    件数

    約12万人受益者数

    2億6千万円総額

    ■ 支援実績(1999年~2014年4月)

    プロジェクト名 実施団体 対象者 ( 人数 ) 国名 支援期間

    ダッカ市のストリートチルドレン及び児童労働者に向けた栄養価の高い昼食提供プロジェクト

    認定 NPO 法人国境なき子どもたち

    路上生活をする子ども(40 名) バングラデシュ 2012 ~ 2014

    『健康な食』インド思春期女性意識改善・人材育成プロジェクト

    特定非営利活動法人地球市民 ACT かながわ/ TPAK

    思春期女性(5,000 名) インド 2012 ~ 2013

    農村女性のエンパワーメントを通した生活環境の改善と地場産業の育成

    財団法人オイスカ 既婚女性とその家族(250 名) インドネシア 2011~ 2013

    小学生の生活習慣病予防のための健康的食事と運動の推進~学校における栄養的介入活動

    Ho Chi Minh City Nutrition Center小学生

    (2,000 ~ 2,500 名/ 2 校)ベトナム 2011~ 2013

    子どものための地場の栄養改善事業公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン

    2 歳未満の子ども(約 2,700 名)、母親・妊産婦(約 3,700 名)

    ベトナム 2012 ~ 2014

    先住民族オラン・アスリの女性による、幼児の健康・栄養改善

    UNIVERSITI PUTRA MALAYSIA(UPM)

    オラン・アスリの女性(31名)、5 つのオラン・アスリ村の母子

    マレーシア 2011~ 2013

    プノンペン市貧困地区の母親エンパワーメントによる家庭の栄養改善

    一般社団法人日本カトリック信徒宣教者会

    地域住民(935 名)、母親(270 名)

    カンボジア 2012 ~ 2014

    地域特有の食材及び料理の再評価による地域住民の栄養改善プログラム

    光の子どもたちの会 エステーヴァン村住民(276 名) ブラジル 2012 ~ 2013

    スラムに居住する母親に対する食育プロジェクト特定非営利活動法人ADRA Japan

    女性リーダー(60 名)、母親(240 名)、保護者(100 名)

    ペルー 2012 ~ 2013

    バングラデシュにおける2 地域の協働の住民参加型学校給食の展開

    日本・バングラデシュ文化交流会 小学生(約 1,200 名) バングラデシュ 2013 ~ 2015

    少数民族地域における5 歳未満の子どもの栄養改善

    公益財団法人 プラン・ジャパン5 歳未満の子ども(220 名)、保護者(220 名)、保健関係者(40 名)

    ベトナム 2013 ~ 2015

    保育所給食を通じた、栄養改善・食材自給・教育の普及プロジェクト

    認定特定非営利活動法人 幼い難民を考える会

    保育所に通う子ども(約 110 名)、保護者家族・地域住民(約 2,000 名)

    カンボジア 2013 ~ 2015

    持続可能な栄養改善システム構築事業特定非営利活動法人 ピープルズ・ホープ・ジャパン

    ヘルスボランティア(257 名)、5 歳未満幼児(3,813 名)、16 ~ 35 歳女性(8,862 名)

    インドネシア 2013 ~ 2014

    貧困農村の母子の持続的な栄養改善のためのプログラム(フェーズⅡ)

    特定非営利活動法人 ハンガー・フリー・ワールド

    妊産婦と乳幼児(420 名)、同妊産婦の夫と義母(420 名)

    バングラデシュ 2013 ~ 2014

    天使のスマイル支援プロジェクト(アマランサス[セロリ]と大豆栽培による栄養改善)

    駒ヶ根市草の根市民活動推進支援の会

    ダンモルカバザール村民(200 名) バングラデシュ 2013 ~ 2014

    ■ 2013年度の支援プロジェクト

    ★1

    ★2

    ★3

    「AINプログラム」による途上国の栄養改善

    121 味の素グループ サステナビリティレポート 2014

  • コミュニティ

    Column

    ★1

    ★2 ★3

     ボダ郡チョンドンバリ区はバングラデシュの中でも特に貧しく、

    女性と子どもの約4割が低栄養状態です。2010年より3年間実施

    したフェーズⅠに引き続き、フェーズⅡでは年間70名の特に栄養状

    態の悪い妊産婦とその乳児への栄養補助食提供、栄養と調理法

    の教育、小学校への食育、養鶏・家庭菜園支援を通じた収入向上

    支援、さらに、母乳育児トレーナーの養成や地域リーダーの啓発・

    ジャーナリスト視察等、波及効果を高める活動を実施しています。

     助産師による母乳育児指導や相談会を7カ村で1年間延べ234

    回実施、約9割に健康状態の向上が見られました。また、習慣を変

    えることに抵抗を持つ受益者の夫・義母を巻き込んだ栄養ワーク

    ショップを年3回行い、85%の母親が栄養価を高める料理や、調

    理法への関心が高まり実践が始まりました。

     スカブミ県スカムルヤ村は、県内でも貧しく、収入の低さや食・

    栄養に関する知識の乏しさから住民の健康状態が懸念されてきま

    した。これを受け2011年より、特に家計の一旦を担うことが求めら

    れながらも家事や育児によって活動が制限される既婚女性に焦点

    を当てた、家庭菜園や食品加工によって生活環境を改善させるプ

    ロジェクトへの支援を開始しました。

     プロジェクトでは村内の既婚女性(54名)をグループ分けし、彼

    女たちが家庭菜園に必要な知識や技術が習得できるよう「育苗と

    有機農業の基礎」等テーマを絞った研修(月1回、計4回)を行いま

    した。その後は指導員が巡回しています。食品加工に関しては、研

    修後に定期的な指導を行いながら受益者たちの手による加工食

    品製造を支援しており、2013年9月には直売店もオープンしました。

    受益者に対するアンケートでは、家庭における栄養問題や食生活

    習慣等に関して、90%以上の受益者世帯で改善が見られました。

     セアラ州アラカチ市カノア・ケブラーダ地区エステーヴァン村で

    は、多くの人々が生活習慣病に苦しんでいるにもかかわらず、栄養

    に関する知識不足等の理由からこの状況を抜け出せずにいます。

    そこで、2012年度より地域の食材を活用した栄養価の高い食事の

    実現を目指したプロジェクトの支援を開始しました。

     プロジェクトでは、保健所と協力して対象地域に住む高血圧や

    糖尿病の患者50名に対して家庭訪問を行う等、家族への予防対

    策も視野に入れた活動を行いました。また、住民の食生活改善の

    ため、地元の大学の協力を得て地域の食材の栄養価を評価し、活

    動の中心となった10名の地域住民に対してそれらを使った料理教

    室(計2回)を行いました。さらに住民276名を対象とした地域食

    材に関するセミナーや調理実習(毎月実施)により住民の意識は

    高まりを見せています。今後は食材の栄養価を掲載した冊子や料

    理本を制作し、対象地域の家庭や学校等に配布する予定です。

    家庭菜園について熱心に勉強する女性

    (写真提供:財団法人 オイスカ)

    “WOMAN”(受益者協同組合)事務所建設には、インドネシア味の素社からも寄付がなされました

    高血圧・糖尿病に関する講義の様子 助産師による育児相談会の様子

    セミナーにて、地域で収穫される食材に関して意見を交わす住民たち

    (写真提供:光の子どもたちの会) 調理ワークショップに参加する夫

    小学生を対象に栄養授業を実施

    貧困農村の母子の持続的な栄養改善のための食育プログラム(フェーズⅡ)

    農村女性のエンパワーメントを通した生活環境の改善と地場産業の育成

    地域特有の食材及び料理の再評価による、地域住民の栄養改善プログラム

    バングラデシュ

    インドネシア

    ブラジル

     プロジェクトへの支援は2013年度で終了しましたが、現地では

    女性たちの自律的活動のための支援が継続的に行われています。

    122味の素グループ サステナビリティレポート 2014

  • コミュニティ

     味の素グループは、世界各国で「食・栄養」分野を中心とした様々

    な活動に取り組み、地域課題の解決に貢献したいと考えています。

     また、世界4カ国で財団を設立し、奨学金制度をはじめ、それぞれ

    ■ 50の学校給食施設 建設プロジェクト タイ味の素財団では、タイ味の素社の創業50周年を記念し

    て2010年から「50の学校給食施設 建設プロジェクト」を開始

    しました。タイ教育省や地域の教育委員会、行政、NGOとも連

    携して進めるこのプロジェクトは、5年間で50の小学校で給食

    施設を建設・改築し、衛生的な食環境を整えることによって、子

    どもたちの健康を支援するという取り組みです。2013年度には

    10校の給食施設が完成し、これまで建設された40の学校給食

    施設は、約7,900名の生徒に活用されています。

     2014年度には、10の給食施設の建設を予定しており、2014

    年までに50の給食施設を完成、2019年までにはタイの全土

    (77県)へのプロジェクト拡大を検討しています。

     さらに2015年からは、生徒一人ひとりの食生活のさらなる

    向上を図るべく、これまでに支援した学校の教師や生徒、周辺

    地域住民に対する栄養教育の実施を検討しており、準備を進め

    ています。タイの子どもたちのよりよい食と健康のサポート

    を通じて、タイ味の素社のコンセプトである「味の素は常にタ

    イ社会とともに成長する」を実践していきます。

    ■ 1年目(2010年度)■ 2年目(2011年度)■ 3年目(2012年度)■ 4年目(2013年度)

    タイ Thailand

    新築された給食施設で給食を囲む生徒たち

    2013 年度までに 34 県で 40 の学校給食施設が完成

    プロジェクトのロゴ

    の国や地域の文化、生活習慣、ニーズに合った活動を、各国の法人

    と連携して実施しています。

    子どもの栄養改善に向けて

    改築前の給食施設 改築後

    味の素グループ各国法人・財団による活動

    123 味の素グループ サステナビリティレポート 2014

  • コミュニティ

    TOPICS

     味の素グループは、2009年にベトナム国立栄養研究

    所と味の素(株)イノベーション研究所が実施した共同研

    究がきっかけとなり、ベトナムでの栄養学教育や諸制度の

    充実を目的に「ベトナム栄養関連制度創設プロジェクト

    (VINEP※1)」を開始しました。

     これまでベトナムには、栄養士を育成する教育制度や資格

    制度がなく、栄養士という資格が確立されていませんでした。

    ベトナム初の栄養士教育・国家資格制度の創設と関連法設置のためのサポート

    そこで味の素(株)は2012年3月、ベトナム味の素社と共同で

    「VINEP」の一環として、ハノイ医科大学、ベトナム国立栄養

    研究所の二者と、ベトナム国内における栄養士養成を目的とし

    た覚書を締結しました。この覚書に基づき、2012年10月には、

    味の素(株)の寄付金によって「栄養・食品の研究講座」が

    開設され、その翌月には、ベトナム初の4年制栄養学学士課

    程をハノイ医科大学に設置することがベトナム教育訓練省よ

    り認可されました。2013年9月に50名の第1期生を迎え、同

    年10月に開催した開講式は、ベトナム政府教育機関やベト

    ナム全土の基幹病院(18病院)の栄養部門の幹部など、約

    130名が参加する会となりました。同時に、本会では、入学

    試験成績上位者10名にベトナム味の素社より年間の授業

    料相当の奨学金が授与されました。

     さらに現在までに、ベトナム味の素社および味の素(株)

    では、学士課程のカリキュラムや専門課程の教科書作成のサ

    ポートも行っています※2。同時に、卒業後に就職に必要な資

    格(ジョブコード)や栄養治療実施時の保険適用制度の創

    ■ 学校給食プロジェクト ベトナム味の素社は、2012年度から、教育省、ベトナム国立

    栄養研究所(NIN)、地域行政と連携し「学校給食プロジェク

    ト」を5カ年計画で開始しました。ベトナムでは、地域によって

    給食の提供がないことや、給食が提供されている都市部の小学

    校でも、適切な栄養情報の不足などの理由により、生徒の年齢

    や毎月の給食費に見合った、多様で栄養バランスのとれた給食

    メニューをつくることが難しいという課題があります。また、生

    徒一人ひとりが、日常の食の大切さを十分に認識していないとい

    う課題もあります。

     本プロジェクトでは、給食の普及および内容の充実を図り、さらに

    栄養教育を実施することで、生徒の食・栄養環境を向上させることを

    狙いとして、取り組みを進めています。

     2013年度は、ホーチミン市では導入校の関係者が一堂に会し、メ

    ニュー導入の成果や模範的事例を共有しました。また、ダナン市では

    メニューブックと生徒向けの栄養教育教材の普及を目的とした説明

    会を実施、2014年にはベトナム北部にこの活動を拡大する予定です。

     2016年までに、おいしく栄養バランスのよい学校給食がベトナム

    国内の小学校に広く普及することを目指しています。

    ベトナム Vietnam

    試作メニューを食べる生徒たちメニューブックと栄養教育教材の普及を目的とした説明会(ダナン市)

    地域ごとにメニューブックを作成

    2012 年度 2013 年度 2016 年度

    ホーチミン市・350 校の校長とプロジェ

    クト会議を開催

    ・800 名の給食調理担当、保健担当、保護者と新メニューについての意見交換

    ・開発メニューの試験導入

    ダナン市・119 校の校長とプロジェクト会議を開催

    ・NIN、料理専門家とともにメニュー開発

    ホーチミン市・メニューブックと生徒向け

    の栄養教育教材を各市へ提供、栄養教育の実施

    ・新規メニューとモデルケーススタディを共有するための会議を実施

    ダナン市・メニューブックと生徒向け

    の栄養教育教材の普及を目的とした説明会の実施

    ハノイ市・本プロジェクト導入につき

    教育訓練省へのアプローチを開始

    ベトナム全土で、栄養バランスのよい学校給食普及へ

    取り組み内容および今後の予定

    生徒向けの栄養教育教材『3 分でわかる& 変わるプログラム』

    ❶ おいしく、栄養バランスのよい給食 メニューの開発、標準化

    ❷ “スクール・キッチン”モデルの確立❸ 給食設備や食堂の整備

    プロジェクトの主な内容

    ハノイ

    ダナン

    ホーチミン

    ベトナム味の素社による奨学金授与(左からハノイ医科大学グエンヒン学長、第1期奨学生[10名]、ベトナム味の素社本橋弘治社長)

    124味の素グループ サステナビリティレポート 2014

  • コミュニティ

     インドネシア味の素社では、ボゴール農科大学公衆栄養学部

    (IPB)とともに、AINP委員会を設け2011年から3年間、成長期

    の子どもたちが安全で栄養的に望ましい食事をとるための支援

    活動を行いました。プロジェクト1年目の2011年には、対象となる

    小学校で生徒の栄養状態に関する基礎調査を行い、特に女子生

    徒のビタミン・ミネラル不足が深刻であることがわかりました。

     それを受け、2012年度の介入フェーズでは、生徒、教師、保護

    者、学校周辺の飲食店に対し、栄養価が高く、安全で、おいしい

    食についての教育活動を行い、インドネシア味の素社の従業員も

    講師としてボランティア参加しました。また、飲食店が提供する

    生徒向けメニューの栄養バランス改善、食堂施設の建設、学校菜

    園の開始、子どもたちへの定期的なビタミンサプリメント提供も

    行われました。その結果、子どもたちへの栄養・健康への理解が

    深まったと同時に、貧血の子どもの減少(79名から5名)、栄養状

    態の改善が見られました。

     最終年度である2013年度は持続性向上フェーズと位置づけ、

    AINP委員会ではこれまで行ってきたことが定着し自立するよう

    指導し、栄養価の高い昼食やスナックを小学校の給食施設でつ

    くり、販売することができるようになりました。加えて、小学校に

    建設された給食施設では、生徒だけでなく、学校周辺の保健セン

    ター等の行政施設にも昼食を提供しています。

     インドネシア味の素社では、このプロジェクトで培った知見を

    他の小学校にも広めるため、ボゴール地区の125名の小学校長

    を対象にワークショップを実施しました。このプロジェクトでの活

    動が他の小学校でも展開され、インドネシアの子どもたちの栄養

    状態が改善されることを目指しています。

    インドネシア Indonesia

    AINPプロジェクト終了に際し、学校長より感謝されるインドネシア味の素社関係者

    ハノイ医科大学の栄養学学士課程第一期生と、味の素(株)関係者(最前列左から4人目)

    小学校長125名を対象としたワークショップの様子

    ■ 子どもの栄養改善プロジェクト「Ajinomoto IPB Nutrition Project(AINP)」

    設、栄養士資格制度創設に向けた関係各所への働きかけを

    行い、2016年の制度確立を目指しています。

     また、2014年、2015年には、(独)国際協力機構(JICA)

    の事業※3を活用し、ハノイ医科大学で栄養学を学ぶ学生5名

    と教官数名の日本での栄養学研修(2週間)の取り組みを進

    めています。病院での栄養管理や学校給食などの栄養にか

    かわる専門の栄養士を育成する教育体系・制度が整備され

    ることにより、病院・学校等でのさらなる栄養環境の向上が

    期待できます。

    ※1 VINEP:Vietnam Nutritional system Establishment Project※2 (公社)日本栄養士会や十文字学園女子大学、神奈川県立保健福祉大学と協働※3 開発途上国の社会・経済開発のための民間技術普及促進事業

    125 味の素グループ サステナビリティレポート 2014

  • コミュニティ

    財行政」と「食育・学校給食」に焦点を当て、様々な分野の専

    門家が発表・討論を行いました。

     フランスでは欧州でも最も日本食人口の高い国です。1980年

    代には焼き鳥屋を中心に50軒程度しか日本食店のなかったパリ

    (近郊を含む)には、現在1,000軒以上の日本食店があるといわ

    れています。その間、料理も多様化し寿司専門店、懐石料理など

    本格派志向がうかがえる一方で、お好み焼き・ラーメン・餃子な

    どの大衆料理店も増加。年齢層も若者からお年寄りまで拡大す

    る中で、家庭で日本食をつくりたいという声もよく聞かれます。

     2007年にスタートしたヨーロッパ味の素社主催食文化セミ

    ナー(パリ日本文化会館プログラムの一環)は単なる日本食の

    紹介にとどまらず、来場者が自宅でも日本食をつくり、家族で味

    わうことを目標に、ご飯の炊き方、素材のうま味を活かす基本

    調味料の使い方、だしの取り方・使い方について日本の風土、

    歴史など社会的背景についての説明を加えながら日本の食文化

    を多層的に学んでいただいています。

     また2011年の東日本大震災後は「食文化を通じた震災被災

    フランス France

    被災地支援セミナーでのプレゼンテーション

    食文化セミナーにおける〈酒の肴〉シリーズ料理実演

     2013年12月4日、「和食;日本人の伝統的な食文化」(以下、

    「和食」文化)がユネスコの無形文化遺産に登録されました。

    味の素グループはこの「和食」文化を保護・継承していくため

    の活動を続けています。

     (公財)味の素食の文化センターでは2013年度に、各種講演

    会、意見交換会、セミナー、研究集会などを19回実施しました。

    2013年8月に和歌山県印南町、2013年9月に石川県能登町で

    「和食文化を考える意見交換会」を、2014年3月に岩手県陸前

    高田市で「和食文化を考える会~陸前高田市・大船渡市・住

    田町」を開催しました。また、2014年3月には「和食文化ミーティ

    ング~次世代へ伝えるための研究集会」を東京で開催。「文化

    日本 Japan

    東京・品川で開催された「和食文化ミーティング~次世代へ伝えるための研究集会」(2014 年 3 月)

    ■ 出前授業「だし・うま味の味覚教室」 「次世代を担う子どもたちに、世界に誇れる日本の食文化のす

    ばらしさを伝えたい!」この想いから、だし・うま味の味覚教室

    は2006年度からスタートしました。だし・うま味の味覚教室は、

    味の素(株)の社員や事務局スタッフが講師として学校へ伺い、

    和食の原点であるだしやうま味を含む5つの基本味、そして、世

    界に誇れる日本のだし文化について、体験を交えて学んでいただ

    く食育プログラムです。

     「和食」文化がユネスコ無形文化遺産に登録され、世界中かだしの素材を観察している様子 授業風景

    ■ 「和食」文化の保護・継承に向けた取り組み

    ■ 日本の食文化をフランスの家庭に

    食文化の継承・発展

    地支援」もテーマに加え、食の都パリから東北の子どもたちの

    食育を支援。その子どもたちの考案した料理を同館で紹介する

    など、フランスの人たちと一緒に復興を応援しています。

    ら注目されています。子どもたちが楽しく食の大切さを学び、日

    本人の伝統的な食文化について関心が高まることを願い、実施

    しています。

    126味の素グループ サステナビリティレポート 2014

  • コミュニティ

    公益財団法人 味の素食の文化センター(所在地:日本、設立:1989年)

    主な活動

    ● 食の専門図書館「食の文化ライブラリー」の運営

    ● 「食の文化フォーラム」(食文化を学際的に考える会員制の研究討論会)の企画運営

    ● 公開シンポジウム・公開講座の開催

    ● 食文化誌「vesta®(ヴェスタ)」他の出版・頒布事業

    ● 食文化に関する資料収集と展示

    食の文化シンポジウム2013「料理すること」料理することの意味の様々な変容と、背景となる社会と人間の関係を探る。(2014年2月)

    「三雑誌に見る昭和“食”モダン展」戦前の食の雑誌、『糧友』『料理の友』『食道楽』から当時の食の風景を紹介する。(2013年11月11日~ 2014年3月11日)

    (公財)味の素食の文化センター http://www.syokubunka.or.jp/ リンク

    公益財団法人 味の素奨学会(所在地:日本、設立:2005年―前身の鈴木奨学会は1957年設立)

    主な活動

    ● 奨学金給与(在日留学生、アセアン留学生を対象。「アセアン留学生向け奨学金」は、アセアン地域の5カ国から、東京大学大学院修士課程(理系)に留学する研究生および修士生を対象として、合計3年間(研究生1年、修士2年)奨学金を給与)

    ● 奨学金貸与(日本国内の大学の専門課程、または大学院に在学する理系専攻の学生を対象)

    在日留学奨学生およびアセアン留学奨学生とともに

    (公財)味の素奨学会 http://www.aji-syogakukai.or.jp/ リンク

    財団による活動 味の素グループでは、世界4カ国で財団を設立し、奨学金をはじめ「食・栄養」分野を中心にそれぞれの国・地域のニーズに合った活動を、

    各国の法人と連携して実施しています。

    127 味の素グループ サステナビリティレポート 2014

  • コミュニティ

    ブラジル味の素財団(所在地:ブラジル、設立:1999年)

    主な活動

    ● 日本関連の機関およびNPOへの寄付

    ● 障がいを持つ子どもたちのスポーツ団体に対する助成事業

    ● 事業所周辺の地域貢献活動(食・健康にかかわる施設の設立支援、小学校への学用品の寄付)

    ● 食品化学・栄養学専攻の学生への支援(奨学金)

    スポーツ団体に対する助成事業 子どもたちとともに

    タイ味の素財団(所在地:タイ、設立:1976年)

    主な活動

    ● タイ味の素社創立50周年記念「50の学校給食施設 建設プロジェクト」

    ● 大学生のボランティアキャンプ支援プロジェクト(教育施設の建設支援)

    ● 理工学系専攻の学生への支援(奨学金)

    ● 従業員ボランティアプロジェクト(寺院の清掃等)

    ● タイ北部・北東部の寒冷地域への支援(3 県 20 の学校の生徒と地域住民へ 2,100 着のコート、9,123 枚のブランケットを提供)

    大学生のボランティアキャンプ支援プロジェクト

    タイ北部・北東部の寒冷地への支援 P123 コミュニティ:タイ「50の学校給食施設 建設プロジェクト」 参照

    ペルー味の素財団(所在地:ペルー、設立:2003年)

    主な活動

    ● WFPなど様々な機関を通じて「子どもの栄養不良と貧血改善プロジェクト」を支援

    ● 健康・栄養に関するワークショップの開催 (2013年度は53回開催し、1,109名が参加)

    ● 栄養学専攻の学生への支援(奨学金)

    ● 社会福祉活動の促進・サポート

    WFPとの協働

    128味の素グループ サステナビリティレポート 2014

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