写真を活用した復元図の作成 - ffaj-shobo.or.jp ·...
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1 はじめに
当市消防局においても火災原因調査に携わる担当者の平均年齢が約46歳に達
し、15年後にはほぼ半数の職員が入れ替わると予想される。このような状況の
中、火災調査業務の技術伝承により調査能力の維持向上に取り組んでいかなけ
ればならない大切な時期に来ている。
火災原因調査の主要な業務の一つである火災調査書の作成は、特に経験と技
術が要求され、一朝一夕では達成できない。また、技術的進歩も著しく、デジ
タルカメラの導入やパソコンによる入力は今や当たり前となって来ている。
こうした状況の中、若手の火災調査員を指導していく際の一方法とし
て、写真を活用した復元図の作成方法を考案し、パワーポイント(Microsoft
PowerPoint)による解説をCDに収めた。
2 復元図の作成
当市火災調査規程において、「調査員は、実況見分及び関係者等に対する質
問等により知り得た事実を基礎として、現場の復元図を別記様式により作成し
なければならない。(以下省略)」となっている。
復元図は火災調査書の書類の中でも火災原因判定書、実況見分調書等と並ん
で重要な書類である。復元図を見れば一目で火災の原因が把握できる場合もあ
る。
しかし、復元図の作成はベテランの火災調査員でも容易に作成できない。製
図の作成経験や絵心が多少なければ、思った図面は出来上がらない。若手の火
災調査員の中には、パソコンの使用に関してはベテラン職員よりはるかに精通
している者も多く、手書きの書類は苦手だがパソコンを使っての書類、図面の
作成には興味を示す者も少なくない。
そこで、パソコンによる復元図の作成手順をパワーポイントで作成しCDに
収め、誰でも手軽に学習できる資料を作成することとした。
写真を活用した復元図の作成
名古屋市消防局(愛知) 村田 雄二
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3 必要な器材、ソフト
「Microsoft Office PowerPoint2003」がインソールされたパソコン
4 資料の内容
CD内には、「天ぷら火災」「たばこ火災」「燻煙剤火災」の例が収められている。
以下に示すのはパワーポイントの画面である。
重要ポイント、要点、注意事項を画面で確かめながら学習する。
画面は、マウスを左クリックすることにより進行して行く。疑問点があれば
右クリックで前画面に戻ることができる。
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5 期待できる効果
� 復元図を作成することにより、火災調査業務全体の流れが理解できる。
復元図とは、火災の概要、出火原因等を1枚の図面で表現するもので作成
する上で火災全体を把握しなければ、正確な復元図は作成できないことから、
火災調査業務全体の流れが理解できる。
� 写真撮影の技術が向上する。
写真をベースに復元図を作成することから、写真撮影がポイントとなる。
火災調査業務を担当する際、写真撮影ができるようになれば1人前と言われ
る。復元図の作成にあたり写真撮影技術の向上が十分期待できる。
� 関係者に対する質問能力が向上する。
写真だけから復元図を作成することが困難な場合がある。特に焼きが激し
く残存物が少ない場合、関係者の口述が重要となる。こうした場合に質問の
要点、要領を復元図作成の資料としてとらえれば、自ずと的確な質問内容と
なり、漏れも少なくなる。
� 復元図に対する製作意欲が増す。
特に若手の火災調査員には、パソコンに精通した者が多く、技術的に高度
な知識を持った者もいる。作成要領を会得すれば、自身の知識でより正確に
リアリティーある復元図も可能であり、製作意欲も増す可能性がある。この
参考資料はまだ試行段階であり、今後若手の調査員により改善され、正確で
しかも容易に作成できる方法の開発も十分期待できる。
� 火災調査書類のデジタル化が容易である。
火災調査資料をデジタルでの保存が進んでいる中、パソコンで作成した復
元図も当然デジタルでの編さん、データーベース化が容易であり、活用の幅
が広がる。
6 おわりに
一般の消防隊員に火災調査業務に従事したいかを尋ねると、大多数が「書類
が難しいからやりたくない」と答える。
確かに火災調査書類は、専門的で規則、制約が多く、面倒な作業である。地
道にこつこつと作成しなければ、いつまで経っても完成しない。しかし、1つ
の火災を自分自身が調査し、原因を追究し、結末をつけることができる満足感
が味わえる。さらに書類は長期間保存され、時には再発防止の資料としての役
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割を果たすこともある。
この資料が、若手職員の火災調査業務に対する積極的な意欲につながれば幸
いである。