界面原子ダイナミクス・反応シミュレータ(Ⅰ) (esm-rism)...espresso...
TRANSCRIPT
界面原子ダイナミクス・反応シミュレータ (Ⅰ)(ESM-RISM)
1
超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト(超超PJ) シミュレータ公開説明会産総研臨海副都心センター 2019年4月12日
大谷 実産業技術総合研究所 機能材料コンピュテーショナルデザイン研究センター
産総研:大谷 実
シミュレータの開発者
シミュレータ概要
2
超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト(超超PJ) シミュレータ公開説明会産総研臨海副都心センター 2019年4月12日
ESM-RISMは固体と液体の界面における構造および反応をシミュレートするためのソフトウェアパッケージです。
• 密度汎関数法(DFT)をベースとした第一原理計算と古典溶液理論(RISM)のハイブリッド計算法です。
• 第一原理電子状態計算パッケージQuantum ESPRESSO (ver 6.1)に導入されています。
• DFT領域は平面波基底・擬ポテンシャルを用いた電子状態計算を行います。
• 溶液領域はRISMを用いて、溶媒およびイオン分布を計算します。ポストプロセスにより、これらの分布を可視化することも可能です。(xyz, xsf, cubeファイル等で出力。VMD, VESTA等のフリーソフトで可視化可能)
主な機能
3
超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト(超超PJ) シミュレータ公開説明会産総研臨海副都心センター 2019年4月12日
通常のQuantum ESPRESSOで計算可能な物理量
に加えて以下の計算が可能です。
• 触媒反応の溶媒効果• 酸化還元電位• 電気化学反応の反応電位• 電位に依存した反応の活性化エネルギー• 反応経路• 表面・界面の応力• イオン雰囲気・溶媒和分子数
• 固体・表面・界面の電子状態計算が可能• バンド構造、化学反応、格子振動、その他様々な応用
例あり
想定用途
4
超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト(超超PJ) シミュレータ公開説明会産総研臨海副都心センター 2019年4月12日
溶液中の孤立分子
電極/電解液界面(電池・触媒)
溶液中の膜
• 孤立分子の溶媒和構造を計算可能
• バルク領域のイオン濃度を制御可能
• 膜間の溶媒分子の充填率を計算可能
• 膜の両側のイオン濃度を変えた計算も可能
• 電極上の触媒反応・電気化学反応の計算が可能
• 電極電位の定義・制御が可能
シミュレータの基礎理論等の背景
5
超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト(超超PJ) シミュレータ公開説明会産総研臨海副都心センター 2019年4月12日
開放系溶液へ接続
界面
異なる環境をシームレスに接続
• Kohn‐Sham方程式(電子状態・原子にかかる力)
• Poisson方程式(電荷分布⇔静電場)
• RISM方程式(溶液の分布)
解くべき方程式
シミュレータの基礎理論等の背景
6
超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト(超超PJ) シミュレータ公開説明会産総研臨海副都心センター 2019年4月12日
第一原理計算領域 RISM領域
ESM-RISM法
シミュレータの基礎理論等の背景
7
超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト(超超PJ) シミュレータ公開説明会産総研臨海副都心センター 2019年4月12日
• Kohn‐Sham方程式(電子状態・原子にかかる力)• Poisson方程式(電荷分布⇔静電場)• RISM方程式(溶液の分布)
全ての方程式は周期境界条件下で解かれる
界面・電気化学系のモデリングとは相容れない。特にクーロン力は長距離なので致命的
Poisson方程式の境界条件を工夫して、特定の軸には開放端の境界条件で解くことを可能とした(Effective Screening Medium法)
ESM‐DFT ESM‐RISM
利用方法(通常の第一原理計算に加えて必要なもの)
8
超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト(超超PJ) シミュレータ公開説明会産総研臨海副都心センター 2019年4月12日
&controltrism = .true./&systemassume_isolated = "esm", esm_bc = "bc1", /&rismnsolv = 3, closure = "kh", tempv = 300, /SOLVENTS {mol/L}H2O ‐1.0 H2O_spc.MOLNa+ 1.0 Na+.MOLCl‐ 1.0 Cl‐..MOL
入力ファイル例 MOLファイル例(H2O_spc.MOL)<MOL_MASS UNITS="g/mol">18.01528
<MOL_DENSITY UNITS="g/cm^3">0.999972
<MOL_ELEMENT>O/h2oH/h2oH/h2o<MOL_XYZ UNITS="angstrom">
0.00000 0.00000 0.000000.81649 0.57736 0.00000‐0.81649 0.57736 0.00000
<MOL CHARGE, EPSILON, SIGMA>‐0.8200 0.1554 3.1660+0.4100 0.0460 1.0000+0.4100 0.0460 1.0000
応用例(リチウムイオン電池の充放電反応)
9
超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト(超超PJ) シミュレータ公開説明会産総研臨海副都心センター 2019年4月12日
Journal of Physical Chemistry C 20, 11586 (2018)
応用例(ナノ空間に閉じ込められた水の「負の誘電率」の発見)
10
超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト(超超PJ) シミュレータ公開説明会産総研臨海副都心センター 2019年4月12日
Nature Communications 10, 850 (2019)
新しい電極材料(Mxene)を用いたスーパーキャパシタの研究
層間の電解液をRISMで表現し、外場に対する応答をシミュレーション
⽔和殻が弱く遮蔽
⽔和殻が過剰遮蔽
負の誘電率
応用例(分子動力学も可能)
11
超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト(超超PJ) シミュレータ公開説明会産総研臨海副都心センター 2019年4月12日
RISM領域が半無限に続く
注目する部分のみ第一原理計算に置き換え可能
応用例(反応路自動探索と組み合せる)
12
超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト(超超PJ) シミュレータ公開説明会産総研臨海副都心センター 2019年4月12日
反応路自動探索(AFIR)と組み合せることにより、反応の詳細が分からなくても反応素過程を探索可能
RISM領域が半無限に続く
Cu/HCl水溶液界面の水分子の分解反応の反応路探索
界面の溶媒分布も可視化可能
酸素の密度分布水素の密度分布
動作環境
13
超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト(超超PJ) シミュレータ公開説明会産総研臨海副都心センター 2019年4月12日
• FortranおよびCコンパイラーが必要• MPI, BLAS, LAPACKライブラリが必要• Windows, Mac, Linuxで動作可能• 多くの大規模計算機センター(地球シミュレータ・京コ
ンピュータ含む)でシミュレーション実行可能
ライセンス・配布方式
14
超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト(超超PJ) シミュレータ公開説明会産総研臨海副都心センター 2019年4月12日
• 拡張部分はGNU public license version 2に従う• 問い合わせ専用メーリングリストへのリクエストによ
り配布([email protected])• マニュアル・簡単なサンプルファイルは同梱して配布• 将来的にはQuantum ESPRESSOの公式サイト
(https://www.quantum-espresso.org)を通じて配布予定
• 1D-RISM, 3D-RISM及びRMM-DIISは(https://github.com/nishihara1/q-e)を利用
まとめ
15
超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト(超超PJ) シミュレータ公開説明会産総研臨海副都心センター 2019年4月12日
• 密度汎関数法(DFT)をベースとした第一原理計算と古典溶液理論(RISM)のハイブリッド計算法を開発した。
• オープンソース[Quantum ESPRESSO] に導入され誰でも利用可能
• 電気化学反応・触媒反応など界面が関わる現象の微視的な理解が可能となり、様々な材料に対して簡便に反応エネルギー等のデータを作成することが可能になる。