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無線LAN製品のRFテスト

Application Note 1380-1

無線LAN(Local Area Network)のおかげでモバイル・コンピュータのユーザは、移動中、あるいは物理的には切り離された状態でもネットワークへの接続を続け、リソースにアクセスすることができます。ここ数年、さまざまな無線ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN)技術および標準が開発されています。こうした標準化作業の主な推進役となっているのが、IEEE(Institute of Electrical and ElectronicEngineers、米国電気電子技術者協会)とETSI(European TelecommunicationsStandards Institute、欧州電気通信標準化協会)の2つです。これら2つの組織が提唱する、もっとも成功を収めたWLAN標準に、IEEE 802.11とETSIHIPERLANがあります。最近の技術進歩のおかげで、信頼性が高く、手頃な価格の無線LAN用ネットワーキング・ハードウェアが製造可能になっています。

本書で使用する略語は、初出の際に定義されているか、38ページの用語集で定義されています。

本アプリケーション・ノートでは、多くの無線LAN標準の基礎となる変調技術と、RF性能のトラブルシュートや定量化に使用できる測定技術について説明します。ここでは802 .11b、802.11a、HIPERLAN Type 1およびType 2といった、もっとも普及している最新の標準を取り上げます。本書の焦点は無線LAN信号のMACレイヤや上位の階層ではなく物理RF層にあります。これにはタイム・ドメイン解析、周波数ドメイン解析、変調ドメイン解析、トラブルシューティング、およびこれらの標準の背後にある基本変調理論が含まれます。

標準には各種変調スキームが使用されていますが、本書ではFSK、MSK、GMSK、CCK、およびOFDM変調について説明します。

はじめに

kani
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1. HIPERLAN Type 1 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .3

1.1 FSK変調 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .3

1.2 GMSK変調 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .6

1.3 GMSK復調 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .8

2. 802.11および802.11b . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .10

2.1 802.11 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .10

2.2 802.11b . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .12

2.3 802.11b信号の変調解析 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .13

3. 802.11aおよびHIPERLAN Type 2 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .24

3.1 OFDM信号 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .24

3.2 マルチパスの処理 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .29

3.3 OFDM信号の変調解析 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .31

4. 結論 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .37

略語用語集 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .38

無線LAN標準サマリ・テーブル . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .39

関連文献 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .39

目次

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1.1 FSK変調

HIPERLAN Type 1は、2つの異なる変調フォーマット(低速データには単純な2レベルFSKフォーマット、高速データには0.3 GMSK)を使用します。2レベルFSKは本アプリケーション・ノートで説明する変調フォーマットのうちで一番単純な変調フォーマットであるため、最初にこのフォーマットについて説明します。

2 レ ベ ル F S K フ ォ ー マ ットは、1.4705875 Mbpsのシンボル・レートを使用します。この場合、ビット・レートも同じ値となります。データを使ってRECTフィルタ信号を生成し、別のローパス・フィルタに通して信号スペクトラムを制限します。ローパス・フィルタを通した信号は、周波数偏移±368kHzを持つFM変調器に供給されます。送信機のフィルタは注意して設計する必要があります。狭帯域フィルタはスペクトラムの制限に

役立つものの、シンボル間の周波数遷移のスピードが遅くなってしまうからです。

図1.1.1に、Agilent 89640Aベクトル・シグナル・アナライザ(VSA)の2FSK信号特性の画面プロットを示します。左上グリッドはFM復調信号です。左下グリッドには、この信号のスペクトラムを示します。この信号はAgilentE4433B信号発生器によって生成されています。測定器スパンは18MHzに設定されています。スパンの選択は、測定のノイズ帯域幅とシンボル遷移のスピードとのトレードオフに関係します。スパンを広げると測定ノイズが大きくなり、スパンを狭めると信号の高周波成分が除去され、FSK遷移の持続時間が長くなります。後で示すように、仕様では50nsの遷移が要求されます。この遷移を測定するには、スパンは1/50ns、すなわち20MHzより狭くなりすぎないようにする必要があります。

右上のダイアグラムはアイ・ダイアグラムを示します。マーカの間隔は約68nsです。右下のトレースは、サマリ情報を持つ、もっとも便利なトレースの1つです。情報として、生のビット、偏移、FSK(FM)エラー、搬送波周波数オフセットが得られます。FSKエラーは、偏移によってノーマライズされた残留FMエラーのRMSです。

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1. HIPERLAN Type 1

図1.1.1:2FSK信号の特性

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図1.1.2に、代表的なアイ・ダイアグラム・マスクを示します。アイ・ダイアグラム・マスクには、偏移の制限とシンボル遷移のスピードの制限という2つの使用目的があります。信号の2個のシンボルを同時に取り込み、1つのシンボルをもう1つのシンボルの上に重ねると、アイ・ダイアグラムが得られます。

アイ・ダイアグラムに影響を与えるFM変調器の重要な特性には、偏移、変調器の帯域幅、フィルタの特性、周波数の安定性があります。変調器の帯域幅が十分でないと、立ち上がり/立ち下がり時間が遅くなりすぎます。ベースバンド・フィルタやIFフィルタによっても、この問題、およびオーバシュートやリンギングが発生する可能性があります。

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図1.1.2:低速FSK変調のアイ・ダイアグラム・マスク

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残留FMは、変調器に入り込んだスプリアス信号によって発生する希望しないFM変調です。たとえば図1.1.3では、Agilent E4433B ESGのFM変調器を使って20kHz(速度および偏移)のFM信号をFSK波形に付加しています。下側のトレースに正弦波エラーが示されています。エラーが大きいため、FSK信号全体が上下に移動しているのがはっきりとわかります。一部のFM変調器には、ベースラインのドリフトという問題があります。この問題は、複数の同一ビット(3個の1など)を一列に送

信したときなどに発生します。搬送波周波数は、1のシーケンスの場合には正の方向に、0のシーケンスの場合には負の方向にドリフトします。ドリフトは、FM信号プロットをFSKエラー・プロットと一緒に表示することによって簡単に検出できます(上記の構成を参照)。

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図1.1.3:FSK波形における残留FM

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1.2 GMSK変調

高速データの場合、HIPERLAN Type 1は23.5294MbpsのGMSK信号を使用します。GMSK信号の生成方法には2つあります。第1の方法では、図1.2.1に示すようにFM変調器を使用します。デザイナはベースバンド信号を処理するときに、DiracデルタでなくRECTパルスでベースバンド・フィルタを励起するという間違いをおかしがちです。RECTパルスを使用することは、2つめのフィルタを追加することと同じです。このフィルタの応答はT秒幅の方形インパルスです。これにより、ベースバンド・スペクトラムに余分のsin(x)/xロールオフが加わります。

GMSKにFM変調器を使用することは、実装はしやすいもののお勧めしません。コヒーレント復調器を使用する必要があるからです。コヒーレント復調器には厳密な位相制御が必要です。これを理解すれば、この信号のETSI変調品質測定は、GSMの場合と同様、RMS位相エラーとなります。FM変調器による問題は、周波数偏移の制御です。ISIを無視した場合、1シンボル間隔で位相を90度回転させるには、周波数偏移がシンボル・レートのちょうど4分の1になる必要があります。非コヒーレント受信機を使用するシステムでは、この変調はGFSK(802.11では2および4レベルGFSK)と呼ばれます。GFSKの場合、偏移はシンボル・レートの4分の1に厳密に限定されません。

1-0-1または0-1-0遷移に対する周波数軌跡からわかるように、0.3ガウシアン・フィルタがゼロISIでないことは重要ではありません。同じビットが2個続けて送信されるときにだけ、信号がフル偏移に達します。

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図1.2.1:GMSK変調の方法1

RF

BT=0.3ガウシアン・フィルタ

FM変調器

ボルト0

Fsym/40

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第2のGMSK変調方法では、図1.2.2で示すように、周波数を表す信号を位相を表す信号を作成する積分回路に送り、次に位相変調器に通します。位相変調器は通常、I/Q変調器を使って実現します。一般に、I/Q変調器までの処理はすべて、DSPで行います。このGMSK信号の生成方法では、FM変調器方法に比較して位相がよく制御されています。

I/Q変調器より前では積分エラー(およびRECTフィルタの不注意な使用)を除いて、この方法によって問題が発生することはほとんどありません。これは信号が一定のエンベロープを持つためです。アナログ問題の大半は、I/Q変調器または局部発振器によって起こります。RMS位相エラーの原因となるエラーには、LOフィードスルー、利得と位相の不均衡、LO位相ノイズ、スプリアス信号があります。

図1.2.2:GMSK変調の方法2

BT=0.3ガウシアン・フィルタ

極座標-RECTコンバータ

積分回路

IQIQ変調器へ

周波数0

位相0

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1.3 GMSK復調

図1.3.1に、23.5294MbpsのGMSK信号を測定したAgilent 89640A VSAのプロットを示します。この信号は、5度の直交スキューで意図的に作成しています。Agilent 89640A VSAは、信号の測定に十分な、36MHzの情報帯域幅を持ちます。左下グリッドにスペクトラムのメイン・ローブ(約33MHz幅)を示します。

左上グリッドにはコンスタレーションを示します。極座標プロットの楕円形状は、直交スキューがあることを示しています。楕円の境界線上のドットは

シンボル・ポイントを表し、期待どおりに90度の間隔で離れています。詳しく調べると、実際には3個のシンボル・ドットからなる4つのクラスタがあることがわかります。3ドット・エリアは、ガウシアン・フィルタによって導入されたISIの結果です。

右上のグリッドは、200個のシンボルに対する位相エラーのプロットです。波形は、測定した搬送波位相軌跡と理想位相軌跡(検出したビットを使って算出)との差を表します。この位相エラー信号のRMSは、変調品質の測定基準となります。

右下のグリッドは、約2度(許容リミットは10度)のRMS位相エラーと3度(許容リミットは30度)のピーク位相エラーを示します。表に、4.6度の直交スキューと0.25dBの利得不均衡が存在することも報告されています。標準にはスキューや不均衡のリミットが設定されていないものの、これらのエラーは位相エラーに影響を与えるため、これらの数値を知ることは有用です。

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図1.3.1:GMSK信号の復調

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Agilent 89640A VSAには2および4レベルFSK復調器が含まれています。この復調器は、802.11で検出されるようなGFSK波形に便利です。GFSK復調器は、HIPERLAN Type 1の高速信号など、GMSK波形でも使用できます。搬送波周波数の不安定性(セトリング)などのエラーは、位相エラーとしてよりもFMエラーとして表示した方が簡単です。FM(またはFSK)エラーは、測定した周波数軌跡と、復調したビットに基づく理想周波数軌跡との差です。

図1.3.2(の上から下、左から右)に、FSKアイ・ダイアグラム、20個のシンボルに対するFM波形、同じ20個のシンボルに対するFMエラー、および搬送波周波数オフセットや偏移などを記載したサマリ・テーブルを示します。期待どおり、偏移はシンボル・レートの4分の1です。ガウシアン・フィルタが生成するISIによってアイ・ダイアグラムに6つのレベルが生じています。この信号は、明らかに、低速FSK信号よりも激しくフィルタされています。

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図1.3.2:GFSK信号として復調されたGMSK信号

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2.1 802.11

オリジナルの802 .11はデータ速度1Mbpsと2Mbpsをサポートします。その実現には、2および4レベルGFSK周波数ホッピング方式(FHSS)、またはBPSKおよびQPSK直接拡散方式(DSSS)が使用されています。ここではDSSSについて説明します。

スペクトラム拡散通信では、データ速度を増加させずに信号帯域幅を広げます(この場合のDSSSでは11倍)。これを実現するには、マイクロ波オーブン、

マルチパス、およびコ・チャネルの信号からの干渉に対するイミュニティを増加します。スペクトラム拡散技術によって、データ速度が変化するあいだ、チップ・レートを一定に保つことができます。たとえばBPSK変調を使用すると、1Mbpsの速度の拡散係数は11となります。同じ11の拡散レートでビット・レートを2Mbpsに倍増するためには、BPSKの代わりにQPSKを使用します。

図2.1.1に示すように、DSSS信号を作成するには低速信号に高速信号をかけます。1Mbpsの場合、1MHzの(D)BPSK信号に11MHzのBPSK信号をかけます。DSSS信号に常にはあてはまらないものの、この信号の場合には入力ビットによって拡散コードの位相回転が決まります。すなわち、(D)BPSKデータ信号をBPSK拡散シーケンスによって拡散すると、BPSKコンスタレーションが得られます。

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2. 802.11および802.11b

図2.1.1:1Mbpsデータ速度の場合のDSSS信号拡散

BPSK

DBPSK

1個のビット入力

11個の複素チップ出力マップ

Barkerシーケンス

データ 位相変化(度)

各信号入力ビットに対して、2つの考えられる送信可能な11チップ・シーケンスがあります。

1つのシーケンスは、単にもう1つを反転したものです。

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任意の拡散シーケンスを使用できますが、通常は、スペクトラムのプロパティおよび干渉のおそれがある他のシーケンスとの相互相関が低いかどうかでシーケンスを選びます。1および2Mbps 802.11の場合、1個の11チップBarkerシーケンスが使用されます。Barkerシーケンスの自己相関関数の値は、ゼロを除くすべてのオフセット(この場合11)で1、-1、0です。これにより、より均一なスペクトラムが得られ、受信機の性能が高まります。

ビット・レートを1Mbpsから2Mbpsに倍増するには、ビットを同時に2個取り込みます。位相の回転は、0と180度のどちらかでなく、0度、90度、180度、270度の4つになります。シンボル・レートは1Mシンボル/秒のままです。これは、(D)QPSK信号をBPSK信号によって拡散してQPSK信号を生成したと考えることができます。

前に述べたように、1Mbpsでは、2つの位相回転を持つ1個の11チップBarkerシーケンスを使って2つの位相ステートを持つ1個のシンボルを生成します。2Mbpsでは、4つの位相ステートを持つ1個のシンボルを生成するために、同じシーケンスを4つの位相回転で使用します。この方法を推し進めると、802.11bで規定された11Mbpsのデータ速度に対しては、11ビット・

シーケンスを2048回転させる必要がでてきます。これは現実的ではありませんので、別の手段が必要になります。

PSKのかわりにある形式のQAMコンスタレーションを使用することが可能ですが、信号のピーク対平均比が増加するため、増幅しにくくなるという好ましくない副作用があります。802.11bでは解決策として、QPSKコンスタレーションを送信機の出力に含めることにしました。結果はCCK(Complementary Code Keying、相補コード・キーイング)となります。相補コードは、ほぼ直交の複素シーケンスのセットです。

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図2.1.3:11Mbpsのデータ速度を実現しようとするときに生じる問題

図2.1.2:2Mbpsデータ速度の場合のDSSS信号拡散

Barkerシーケンス

DQPSK

D2048PSK?

2個のビット入力

Barkerシーケンス

11個のビット入力

11個の複素チップ出力マップ

11個の複素チップ出力マップ

データ(Dibit) 位相変化(度)2個の入力ビットそれぞれに対して、4つの考えられる送信可能な11チップ・シーケンスがあります。

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2.2 802.11b

802.11bは、802.11に5.5Mbpsと11Mbpsのデータ速度を追加したものです。802.11の技術は、802.11から802.11b、802.11a、802.11gへとねじれた形で発展しています(802.11gは本アプリケーション・ノートの執筆時点ではまだ規定されていません)。このため、802.11bの方が802.11aよりも速度が遅いという紛らわしい結果が生じています。

802.11bは、前のセクションで説明した802.11と同様、2.4GHzのISMバンド用に設計されています。802.11bでは、CCK(相補コード・キーイング)を使用する直接拡散方式を採用しています。拡散係数と変調フォーマットの両方またはどちらかを変更すると、ビット・レートが変化します。

5.5Mbpsと11Mbpsの速度を実現するには、まず拡散長を11から8に減少します。これにより、シンボル・レートが1Mシンボル/秒から1.375Mシンボル/秒に増加します。1.375Mシンボル/秒のシンボル・レートを使って5.5Mbpsのビット・レートを実現するには、5.5/1.375、すなわち4ビット/シンボルを送信する必要があります。11Mbpsの場合は、8ビット/シンボルを送信する必要があります。

802.11bではQPSKスペクトラム拡散信号を保持したままで、要求されるビット数/シンボルを提供する方法が取られており、拡散シーケンスの選択に2ビットを除くすべてのビットを使用します。この方法では、残りの2ビットを使ってシーケンスを回転します。これを図2.2.1に示します。

ここで使用される拡散シーケンス・セットと1および2Mbpsレートに使用される1個のBarkerコード・シーケンスとの重要な違いは、これらのシーケンスが複素数であるということです。すなわち、信号はQPSK拡散を持つ(D)QPSK信号です。

802.11bのどのビット・レートでも、プリアンブルとヘッダは1Mbpsのレートで送信されます。ヘッダは192µs長(192ビット)です。これは、合計2112チップに変換されます。その後に4つの変調レートの1つを使ってペイロード・データが付加されます。

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図2.2.2:802.11b PPDU成分

図2.2.1:CCK変調

4個のビット入力

8個のビット入力

d0-d3

d0-d7

d2,d3

d0,d1

d2,d7

d0,d1

1/48チップ・シーケンス・セレクタ

DQPSK回転

1/648チップ・シーケンス・セレクタ

DQPSK回転

8個の複素チップ出力

8個の複素チップ出力

スクランブルした1

1Mbits/DBPSK

PLCPプリアンブル144ビット

PLCPヘッダ48ビット

PSDU

PPDU1 DBPSK2 DQPSK5.5または11Mbps

192µs

SYNC128ビット

SFD16ビット

SIGNAL8ビット

SERVICE8ビット

LENGTH16ビット

CRC16ビット

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2.3 802.11b信号の変調解析

WLAN信号の20MHz帯域幅はエンベロープ測定を困難にします。ほとんどのスペクトラム・アナライザに、制限値が通常10MHz未満の分解能帯域幅フィルタが装備されているためです。この結果、信号がパワー検出器に到達するまでにフィルタリングされてしまいます。これらの信号の表示にダイオード検波器やオシロスコープを用いることがよくありますが、この方法ではダイナミック・レンジが制限され、周波数の選択性も得られません。ピークパワー・メータはより広いダイナミック・レンジを提供しますが、通常、この信号に適合する帯域幅を持ちません。Agilent 89640A VSAは36MHzの情報帯域幅を持つため、無線LAN信号

のタイム・ドメイン解析に最適です。情報帯域幅は、信号情報を失うことなくディジタイズできる最大帯域幅で、周波数同調レンジとは独立しています。

図2.3.1に、あるメーカーの市販Wi-Fiモデムのパワー対時間測定のプロットを示します。このプロットから即座にいくつかのことがわかります。まっさきに目につくのは、BPSKプリアンブル/ヘッダからバーストの最後のより高速な変調までの遷移です。遷移がはっきりとわかるのは、搬送波が原点を通過することになるチップ遷移がQPSK信号にほとんどないためです。極座標プロットの原点はゼロ搬送波パワーを表します。プロットでは、縦の実線で示されるバンド・パワー・マー

カの間隔は192µsです。標準に従えば、これがプリアンブル/ヘッダの全長となるはずです。パワー増幅器またはDSPが遅れて作動するため、プリアンブルの同期部分が短くなっているように思われます。

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図2.3.1:プリアンブルとヘッダを示した802.11b信号のパワー・エンベロープ

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図2.3.2にモデムの次のバースト出力を示します。両方のバーストは、アナライザのメモリに記憶されています。よりデータ・セグメントの長いこのバーストも、フル長プリアンブルを持つには近づきすぎています。

図2.3.3に示す測定で、下側グリッドのパワー・エンベロープ表示のパワーが2段階でやってきます。プロットには、最初の階段状変化がプリアンブル/ヘ

ッダの最後から192µs発生するという事実は示されていません。

Agilent 89640A VSAにはゲーテッド・スペクトラム測定機能があります。ゲートの間隔と位置は、測定データの収集前または収集後に調整できます。バーストの同期部分にゲート・マーカを配置すると、スペクトラムがなめらかなsin(x)/x形状を示さないことがわかります。これは正常で、相対的に短い

Barkerシーケンスによって起こります。リップルの間隔は通常、0.5MHzの倍数となりますが、データによって異なります。

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図2.3.3:802.11b信号のパワーアップのゲーテッド・スペクトラム解析

図2.3.2:より長いデータ・セグメントを持つ802.11bのバースト

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新しい測定を実行せずに、ゲート・マーカを移動してターンオン・トランジェントの最初の階段部分を解析することができます。図2.3.4を見ると、最初の階段部分は変調されていないことがわかります。その原因として、まず、ベースバンド信号処理の前にパワー増幅器がオンになっていることが考えられます。図の上側に示すゲーテッド・スペクトラムにはシングル・トーン(搬送波リーケージ)があり、変調がないことから、これが原因であると推察できます。この情報を利用すると、パワー増幅器は適切な時点で作動していることがわかっているので、DSPによってバーストの同期部分が短くなっていることがわかります。

前の図の(スペクトラム)バンド・パワー測定によれば、この無線測定における平均信号パワーは-38.75dBmです。搬送波リーケージ上のマーカは-72.5dBmにあるので、搬送波リーケージは約-34dBcとなります。この数値は、信号の復調でも再度取り上げます。

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図2.3.4:ゲーテッド・スペクトラム解析によるパワー・バースト内の異常の調査

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この信号は、802.11bマスクに対してどのように動作するでしょうか。マスクはリニア・スケールで描画されるので、信号をリニアで表示する必要があります。図2.3.5の上側グリッドは、対数で示された図2.3.4の内容を拡大表示したものです。下側トレースは、まったく同じものをリニアで表示したものです。

802.11bで説明されているように、この測定には、リミットにデータ変調が考慮されていないという問題があります。これは特殊なテスト・モードを意味します。この信号の場合、シェーピングがDSPで行われていると考えられ

ます。パルス形状のテストに特殊テスト・モードを使用すると、「実際のソフトウェア」と異なる結果になる可能性があります。図2.3.5では、テスト・モードを使用しなくても、パルス形成の評価に関する有益な情報が得られます。

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図2.3.5:802.11bのパワーアップ・エンベロープ・マスク

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信号をオフにしたときにも、同じ搬送波リーケージ・タームが存在します。興味深いことに、バーストの開始時に実施されるパルス・シェーピングが、バーストの最後には現れません。高速遷移はスペクトラム・スプラッタを引き起こすので、これによって問題が起きる可能性があります。その場合、オフからオンへの遷移であるか、オンからオフへの遷移であるかは問題になりません。ターンオン遷移とターンオフ遷移におけるマスクの正確な位置は、標準では規定されていません。これはむしろ異常なことで、互換性の問題を引き起こす可能性があります。

802.11bでは送信フィルタは指定されていませんが、図2.3.7で示すように、スペクトラム・マスクにはフィルタリングが暗黙のうちに含まれています。スペクトラム・マスクを使って示されたsin(x)/xプロットは、送信フィルタがRECT関数に近似していること、しかしサイドローブを制限するために追加フィルタリングを使用していることを示しているように見えます。

ほとんどの信号処理がDSPで行われている現在、多くのデザイナはRECTベースバンド・フィルタを使ってサイドローブ・レベルを制御しています。たとえば、BT=0.5のガウシアン・フィルタは、許容可能なスペクトラムを生成します。RECTフィルタ処理信号(ロジック信号など)を使用して搬送波を変更し、IFフィルタで帯域幅を制限する方法もあります。

802.11bによる問題の1つは、示されるスペクトラム・マスクが連続信号のマスクであるということです。スペクトラムを測定するには、送信機を変更して連続信号を生成するか、ある形式のゲーテッド・スペクトラム解析をバースト信号で実施する必要があります。送信機を連続出力用に設定した場合、最終結果がバースト条件下での実際の性能を表さない可能性があります。

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図2.3.6:802.11bのパワーダウン・エンベロープ・マスク

図2.3.7:802.11bの送信スペクトラム・マスク

送信スペクトラム・マスク フィルタ処理しないSinx/x

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多くのRFスペクトラム・アナライザには、ゲーテッド掃引と呼ばれる機能が備わっています。ゲーティングにはさまざまな形式があるものの、ゲーティングの目的は、信号が存在しているときにだけ信号を測定するということです。スウェプト・アナライザを使用する場合、ゲーテッド測定の設定はいくらか困難になります。ほとんどのアナライザでは、アナライザに測定のタイミングを知らせるゲート信号が別途に必要となります。またゲーテッド・スペクトラム測定中は、ゲートを正しく調整するために、波形を観察することができません。

Agilent 89640A VSAでは、スウェプトLO、ミキサ、パワー検出器を使用せずに、FFTを使ってスペクトラムを算出します。この方法には多くの利点がありますが、トラブルシューティングには特に有効です。Agilent 89640AVSAではバースト信号とゲート・アライメントを表示しながら、スペクトラムのマスク・コンプライアンスをチェックできるため、測定の設定が非常に容易です。

FFTでは、FFT帯域幅が狭いため、1回の測定ではスペクトラム・マスク全体を測定できないという問題があります。しかしながらアナライザの中心周波数を調整することにより、測定を2段階で実施することができます。図2.3.8のスペクトラム・プロットに、スペクトラム・マスクの下半分を示します。搬送波から11MHzオフセットのところにスプリアスがあります(手書き)。標準に厳密に従うには、スウェプト・スペクトラム・アナライザを使用する必要があります。

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図2.3.8:ゲーテッド掃引測定による信号解析

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図2.3.9のこのスペクトログラム表示は、1回のバーストに対して取り込まれた多数のスペクトラム測定値からなります。各スペクトラム測定値は、1行のピクセルとして示されます。振幅を表すために高さが使用できないので、色または色調が用いられます。

スペクトログラム表示は、時間と共に変化するバーストのスペクトラム特性を観察するのに便利です。たとえば前の図は、送信機がすぐにオフになったことを示していました。このプロットは、トランジェントが重要な問題を引き起こしていないことを示しています。問題があると、スペクトログラムの一番下のスペクトラムが広がります。

スペクトログラム表示にはいくつかの属性があります。

● 色調が暗いほど、より高い信号レベルを表します。色調が明るいほど、より低いレベルを表します。

●(水平)周波数軸は、いつものスペクトラム表示の場合と同じです。垂直軸は、振幅ではなく時間です。スペクトログラム・トレースの一番上がバーストの最初で、一番下がバーストの最後です。

● 横線で示されるスペクトログラム・マーカは、1つのスペクトラム測定を選択して表示するために使用しています。このスペクトラムは、下側トレースの一番上の部分に示されます。

● スペクトログラムは、信号のBPSK部分のあいだの方がQPSKバージョンのあいだより、高周波により多くのエネルギーが存在することを示します。これは、クロスオーバひずみによるものと考えられます。バースト信号のパワー・エンベロープは、下側グリッドの一番下に参考として示されます。

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図2.3.9:1個の802.11bバーストのスペクトログラム解析

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開発段階では通常、物理層による問題は、MACレイヤの場合ほど多くはありません。Agilent 89640A VSAは、直接MACレイヤのテストを実施しませんが、何が進行しているかを知るために使用することができます。アナライザのもっとも強力な機能の1つが、オプションの768Mサンプル捕捉メモリです。このメモリを使えば、情報を失うことなく、最大36MHz幅までの信号を捕捉することができます。36MHzでは、768Mサンプルは8秒間のギャップのない連続データに相当します。スパンを18MHzに設定すると、メモリは16秒間持続します。標準の12.7Mサンプル捕捉メモリを使用する場合、持続時間は36MHzで132msです。

図2.3.10に示す時間波形を観察するだけで多くの情報が得られます。ここでは、PCMCIA信号とアクセス・ポイント(AP)信号の両方が表示されます。図の各バーストの最後のパートから、APがQPSK変調を使用しており、PCMCIAカードがBPSKのままであることがわかります。1個のバーストはもう1つのバーストよりはるかに長いので、2つの送信機間の各種タイミング関係を簡単に判断することができます。

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図2.3.10:2個のWLANモデム間のやりとりの解析

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信号をアナライザのメモリに捕捉したら、信号を各種ツールを使って解析できます。もっとも便利なツールの1つが変調解析です。

前に述べたように、プリアンブル/ヘッダは1MbpsでBPSK変調されます。ペイロード・データのQPSK変調を基準として、BPSK変調が、QPSKベクトル・ダイアグラム(図2.3.11)の4隅の2つを占有します。左下のトレース、およびコンスタレーションの中央にあるコンスタレーションの「スパイラル」で観察できるように、増幅器がフル・パワーに達する前に復調が開始されています。右上トレースは、信号をオンにしたときにLOの不安定性によって生成される位相エラーを示します。これはホッピング信号でないことを忘れないでください。

アナライザの同期サーチ機能を使って、1個のシンボル、11チップ、またはこの場合22ビット(2ビット/シンボルのQPSK復調器を使用しているため)を強調表示しました。シングル・マーカは、4つのトレースすべての時間軸で同じポイントに存在し、強調表示されたシンボルから1シンボル手前にあります。この測定によって、Barkerシーケンスがベースバンド処理で正しく符号化されていることを確認することができます。DSSSの固有符号化利得のために、このシーケンスのシングル・チップ・エラーが無線通信を遮断することはありません。性能を劣化させるだけです。

サマリ・テーブルには、EVMの測定値、振幅エラー、位相エラー、周波数エラー/オフセット、搬送波リーケージが示されます。図2.3.4で、ゲーテッド・スペクトラム測定を使って評価されたリーケージ値は-34dBでした。ここでは、-36dBで値がより正確に評価されています。確度が向上したのは測定アルゴリズムにもよりますが、値が数マイクロ秒でなく1.4msにわたって評価されたことが主な理由です。

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図2.3.11:802.11bプリアンブルの復調

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802.11bは、変調品質の測定尺度として「エラー・ベクトル振幅」(EVM)と呼ばれる測定基準を使用します。図2.3.12に信号エラーの基本モデルを示します。この測定基準はセルラ電話からケーブル・テレビまでの広範囲のアプリケーションに対する業界標準となっています。EVMの背後にある基本概念は、ノイズのある信号(通常複素信号)はすべて理想信号とエラー信号の合計で表すことができるということです。エラー信号を直接測定することができないので、テスト計測器は検出されたデータに基づいて理想信号を再構築し、それを実際の信号から減算してエラー信号を求めます。

エラー信号には、以下のすべてのエラー・ソースが含まれます。

-追加ノイズ

-非線形ひずみ

-線形ひずみ(802.11aでは等化)

-位相雑音

-スプリアス信号

-その他の変調エラー

エラー信号を時間軸の任意のシングル・ポイントで、I/Q面の理想ポイントから実際の位置まで達する複素ベクトルとして表すことができます。すべてのチップは固有のエラー・ベクトルを持ちます。EVMは単に、1000個のチップに対するRMSです。

理想ベクトルは、既知のデータ・ストリームに基づく搬送波の理論的な瞬時振幅および位相を表します。実際の信号は、図2.3.13に示すように理想信号とエラー信号の合計としてモデル化されます。すべての信号は複素信号です。

Ag i l e n t 8 9 6 4 0A VSAはEVMを、802.11bの記述通りには算出しません。前に説明したように、EVMを算出する前に測定したデータを正しくスケールして、搬送波リーケージ・タームを除去しようとします。ほとんどの無線標準では、EVMが最小になるように搬送波周波数、搬送波位相、搬送波リーケージ、および利得タームを選択した後でEVMを算出する必要があります。これらのパラメータは直交ではありません。このため、EVMを最小にするにはパラメータを同時に評価するか、少なくとも同時に反復する必要が

あります。802.11bのEVM仕様は、35%と非常に寛大です。これは、QPSK信号では考えられないことですが、DSSSでは妥当な値です。802.11bでは、搬送波リーケージに対して分離した測定が規定されています。EVM測定基準の一部として算出されたDC Iチャネル値とDC Qチャネル値は使用されません。

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図2.3.12:信号エラー・モデル

図2.3.13:エラー・ベクトル振幅(EVM)

理想信号発生器理想(t)

エラー信号発生器(ノイズ、ひずみ、スプリアス、

位相雑音など)

エラー(t)

送信機

実際(t)

Q

エラー・ベクトル振幅(t)

実際(t)

エラー(t)

理想(t)

位相エラー(t)

振幅エラー(t)

搬送波リーケージ

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Agilent 89640A VSAのQPSK復調器には、2つの目的で使用できるアダプティブ・イコライザがあります。第1に、アダプティブ・イコライザを使って線形ひずみを補正できます。これにより、非線形ひずみとスプリアス・エラーの識別、定量化が容易になります。第2に、アダプティブ・イコライザを使って(ブラインド・イコライゼーションを使って可能な程度まで)マルチパス特性を求めることができます。

802.11b仕様では、EVMの算出前にイコライゼーションを行うことはできません。したがって、IFの群遅延ひずみなどの線形ひずみによってEVMが増加します。EVMが大きいときには、イコライザを診断ツールとして使用できます。イコライザを使用してEVMの結果を大幅に改善できる場合は、チャネル周波数応答にフラットネスに問

題(群遅延ひずみなど)がないかチェックします。フラットネスに問題がなければ、問題はノイズ、非線形ひずみ、またはスプリアス・エラーに関係する可能性があります。

図2.3.14に示す測定は、Agilent 89640AVSAに接続されたアンテナから約2.5m(非高低線)に位置するAPを使って行われています。左下プロットは、イコライゼーションなしのコンスタレーションを示します。右上プロットは、イコライザ係数(右下プロットに表示)から算出されたチャネル応答の概算です。EQ係数は、信号の遅延分散のインジケータとなります。

イコライザがアクティブのときには、EVM(表示していません)などの測定基準はイコライゼーション後の信号エラーを反映します。

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図2.3.14:信号復調に対するイコライゼーションの影響

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3.1 OFDM信号

802.11aおよびHIPERLAN Type 2は、OFDM(Orthogonal Frequency DivisionMultiplexing、直交周波数分割多重)と呼ばれる変調技術を使用します。OFDMはもともと、ディジタル・オーディオおよびディジタル・ビデオ放送の消費者向け製品やADSLモデムに使用されていました。現在では、無線LAN、ポイント・マルチポイント配線などのブロードバンドInternetアクセス・システムに使用されています。

OFDMの基礎となる概念は以前から存在していましたが、実用化できるほどベースバンド処理が安価になったのはここ数年のことです。OFDMは、まずマルチパスの処理方法として提案されました。シングル・キャリア変調(SCM)には、ある環境でシンボル・レートが増加すると、シンボル間隔が遅延分散よりも短くなるという問題があります。マルチキャリア変調フォーマットは、シンボル・レートを下げ、搬送波の数を増加することにより、この問題を解決します。基本概念は、信号を取り込み、1個の高速搬送波でなく複数の低速搬送波に乗せて送信することによりシンボル間干渉(ISI)を除去した後、単純なイコライザを使ってマルチパスの影響を補正するというものです。OFDMは非常に柔軟な変調フォーマットで、アプリケーションのニーズに合わせて簡単にスケールすることができます。VOFDMなどのアプリケーションの場合、ISIがないことも、ダイバーシティ受信の実現を容易にします。

802.11aとHIPERLAN Type 2は、物理層に関してはほぼ同じです。測定の概念が両方の標準に適用可能であることから、本アプリケーション・ノートの残りでは802.11aに的を絞って説明します。

802.11b信号のRF部分は、小型化および低価格化は困難であるものの、ビット/Hzに関してはそれほど困難ではありません。フォーマットにはかなり大きなエラー・マージンが組み込まれています。CCKフォーマットはピーク-平均比が低いために増幅しやすく、相補コードは位相雑音によって起きる位相回転に対して一定のイミュニティを持っています。35%のEVM仕様は、大量生産ラインで簡単に維持できます。

802.11aフォーマットがより困難であるのは、帯域幅を広げずに、生のデータ速度が最大5倍に増加されるためです。5GHzまで上げることに伴う基本的問題から、安定したLOや高いピーク-平均のマルチキャリアOFDM信号に対する効率的な増幅器をデザインする難しさまで、問題はさまざまです。問題は、デザインだけにはとどまりません。製品の統合や製造もより難しくなります。

2つの信号を一緒に多重化してからある期間積分したときに結果がゼロになる場合には、信号はその期間、直交しています。TDMAは通常、直交符号体系とは見なされません。しかしながら時間間隔がバースト幅であると考えると、この概念が適用されます。その間隔にわたり別の信号がゼロであれば、2つの信号のドット積がゼロになります。

CDMAシステムで使用されるウォルシュ・コードは直交で、おそらく直交シグナリングのもっとも一般的なフォームです。たとえばIS-95では、長さ64のウォルシュ・コードは64個の可能なコード・チャネルを提供します。

OFDMは、実際、CDMAと非常に近い関係にあります。基本関数は、ウォルシュ・コードでなくシヌソイド(正弦波関数)です。所定の周期に整数個のサイクルがあると、シヌソイドは直交になります。シンボルを表すために使用するシヌソイドの振幅と位相は、直交性には影響しません。ウォルシュ・コードのかわりにシヌソイドを使用すると、生成されたスペクトラムで、搬送波周波数とコード・チャネルを関連させることが可能です。

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3. 802.11aおよびHIPERLAN Type 2

図3.1.1:直交信号

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従来の周波数分割多重システムでは通常、チャネル間隔をシンボル・レートよりも大きくします。これにより、スペクトラムが重なるのを防ぎます。OFDMでは、搬送波は直交で、互いに干渉することなくオーバラップします。概念は、ナイキスト・フィルタを通したSCM信号の概念に似ています。シングル・キャリア・システムのシンボルは、タイム・ドメインでオーバラップしますが、ゼロ交差のシンボル(T)間隔のために互いに干渉しません。OFDMの場合、搬送波は、その他のすべての搬送波周波数でスペクトラム・ヌルを持ちます。

非線形ひずみと位相雑音の2つは、直交性が失われ、搬送波間干渉が生成されるもっとも大きな要因です。受信機での低確度の周波数概算も要因の1つとなります。

OFDMには次の利点があります。

● 搬送波の間隔が狭まるので効率が上がります(直交搬送波オーバラップ)。

● イコライゼーションが単純化されます。または不要です。

● フェージングに対する抵抗が大きくなります。

● データ転送レートを状況に合わせて変えることができます。

● シングル周波数ネットワークが可能です(放送アプリケーション)。

● 信号処理能力の向上のおかげで使用可能となりました。

OFDMには次の欠点があります。

● ピーク-平均比が高くなります。● 位相雑音、タイミングおよび周波数オフセットに対する感度が上がります。

● 複雑さが増します。● 送信機と受信機がより高価になります。

● ガード期間に対する要件によって効率利得が減少します。

OFDMを使用する場合の最大の問題は、増幅(波高率が高いため)、および周波数確度と安定性(位相雑音)の2つです。OFDMに必要となる追加のパワー増幅器(PA)のバックオフまたはヘッドルームの大きさについては、激しい議論がなされています。一部の提案者は、シングル・キャリア変調に対して必要な値はせいぜい1~2dBであると考えています。

もっと大きな値が必要であると考える人もいます。ほとんどの必要条件と同様、値は仮定によって異なります。バックオフの大きさは、隣接チャネルと強い関係があります。また、インチャネルひずみとも関係しています。

搬送波の直交性は、受信機の周波数確度およびTXとRXの両方の位相雑音性能と強い関係があります。このように位相雑音性能が厳しく、リニアなPAが必要なため、実装コストが高くなります。

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図3.1.2:OFDM搬送波の間隔

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802.11aでは、データ搬送波はBPSK、QPSK、16 QAM、64 QAMで変調されています。802.11aでは、同時に2つの変調フォーマット(BPSKおよび先に挙げたフォーマットの1つ)だけが使用されます。DAB(Digital AudioBroadcast)とWLANアプリケーションのどちらにおいても、中央の搬送波は使用されません。搬送波を使用しないとデータ容量はわずかに減少するだけですが、搬送波リーケージに関する要件を緩和することができます。表3.1.1に、OFDMシステムで使用されるさまざまな変調フォーマットとそれに付随するレート依存パラメータをまとめて示します。

802.11a信号と802.11b信号はほぼ同じ帯域幅を占有します。それぞれ、測定の基準となる独自のスペクトラム・マスクを持っています。前と同様、標準仕様では、標準スウェプト・スペクトラム・アナライザを使った測定が記述されています。連続信号の出力に特殊なテスト・モードを使用できない場合、ゲーテッド・スペクトラム解析を使用する必要があります。

OFDMスペクトラムのトップは非常にフラットです。標準で描かれているように、サイドローブを3次ひずみと間違う可能性があります。実際は、この信号のサイドローブは変調の一部です。

シングル・キャリア変調には、ある環境でシンボル・レートが増加すると、シンボル間隔が遅延分散よりも短くなるという問題があります。マルチキャリア変調フォーマットでは、データを複数の低シンボル・レート搬送波に分配することにより、この問題を解決します。低レート搬送波のそれぞれのシンボル間隔は、遅延分散に較べて長くなります。ヌルや干渉のために搬送波のサブセットが使用不能になる場合、

ロバストネスを増すため、搬送波間で情報をインタリーブします。図3.1.3に示す干渉トーンは、OFDM信号にほとんどダメージを与えません。

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表3.1.1:レート依存パラメータ

図3.1.3:802.11aの送信スペクトラム・マスク

データ速度 変調 符号化速度 サブキャリア OFDMシンボル OFDMシンボル(Mbps) (R) あたりの あたりの あたりの

符号化ビット 符号化ビット データ・ビット(NBPSC) (NCBPS) (NDBPS)

送信スペクトラム・マスク フィルタされていないsin(x)/x

パワー・スペクトラム密度 送信スペクトラム・マスク(スケールなし)

典型的な信号スペクトラム

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図3.1.4に、図3.1.2および3.1.3で示したOFDMスペクトラム特性の実際の論拠を示します。シングル・キャリアの場合、タイム・ドメインの送信パルスは、シヌソイド×RECT関数としてモデル化できます。周波数ドメインでは、これは単に搬送波周波数のインパルスで畳み込まれたsin(x)/x形状です。

シヌソイドがオン周波数で、ゼロ帯域幅を持ち、RECT関数が適切な幅であると仮定すると、sin(x)/xスペクトラムは隣接搬送波周波数でヌルとなります。送信機または受信機でADC/DACのサンプル・レートが不正確である場合、RECT関数の幅が不適切となる可能性があります。送信機または受信機で、ゼロ幅の仮定が位相雑音によって成立しなくなる可能性があります。

OFDM信号は、52個の搬送波から成ります。一番端の周波数にある搬送波が、図3.1.3に示すスペクトラム・マスク・プロットのサイドローブにもっとも影響を及ぼす搬送波です。

FFTに関する基本的知識があれば、OFDMの背後にある概念が理解しやすくなります。図3.1.5では、1つの搬送波だけを持つOFDM信号が作成されます。搬送波の振幅と位相は、コンスタレーション・ダイアグラムに示すように、送信されるシンボルから決まります。シンボルを表す複素数は、FFTバッファにロードされ、逆FFT(IFFT)されます。これにより、タイム・ドメイン・サンプルのセットが生成され、それが送信されます。802.11aおよびHIPERLAN Type 2では、FFTサイズは64です。52のFFTビンにデータとパイロットがロードされます。IFFT後、64個の時間サンプルすべてが送信されます。

最初のパルスが送信されているあいだに、次のシンボルがFFTバッファにロードされます。第2のパルス(図3.1.6)が最初のパルスと結合するときに不連続が生じます。生じたスペクトラム・スプラッタは、802.11aで説明されているように、データにウィンドウ関数をかけるといくらか減衰できます。

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図3.1.4:信号OFDM搬送波のスペクトラム形状

図3.1.5:1個の搬送波の作成に使用されるIFFT

図3.1.6:シンボル周期あたり1個のIFFT

コンスタレーションは、搬送波の振幅と位相を示します。

各FFTビンは、1個の搬送波に相当します。

IFFT

シンボル持続時間4usec

シングル・キャリアの例

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図3.1.7に、マルチキャリアOFDM信号をどのように生成するか、および多くの異なる変調フォーマットを持つことがいかに簡単かを示します。搬送波をたくさん追加するほど、得られる時間波形は複雑化します。これは、OFDMを使用する場合の問題の1つです。後から説明するように、複数の搬送波の追加によって、ピーク-平均パワー比の高い信号が得られます。

OFDMの直交性を考察するさまざまな方法があります。FFTの点からみると、FFT時間レコードで完全に周期的な信号は、隣接FFTビンにヌルを持ちます。

OFDMが位相雑音により敏感である理由が明らかとなったはずです。位相雑音は、sin(x)/xスペクトラムを変更する追加変調で、ヌルの度合を減少させ、他の搬送波(表示されていません)に対する干渉を生成します。

受信機の周波数トラッキングは重要です(図3.1.9)。受信機がオフ周波数の場合、各搬送波のヌルはFFTビンに入りません。FFTターミノロジーでは、これはリーケージと呼ばれます。OFDMの場合、搬送波間干渉(ICI)が生じます。

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図3.1.7:複数の搬送波の作成に使用されるIFFT

図3.1.8:FFTの場合、トーンがビン上にあると、ヌルはビン上にあります。

図3.1.9:周波数エラーと位相雑音のリーケージの影響

802.11aの場合、常に2つの変調があります。パイロット用のBPSKと、データ搬送波用のBPSK、QPSK、16または64 QAMです。

FFTビン間隔は1/Tです。

FFTビン間隔は1/Tです。

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3.2 マルチパスの処理

図3.2.1に受信したOFDM信号の処理を示します。波形は、ディジタイズされ、FFTを使ってシンボルに戻されます。Tuは、波形の意味のある部分を表します。

例で生成される単純なOFDM信号は、マルチパス条件では機能しません。図3.2.2に示すように、FFTを最大信号と整列させると、その他の信号経路にISIが発生します。

先の図3.1.6で示した例では、チャネルの影響を無視して、後続シンボルからの2個のパルスを一緒に接合しています。これも、パルス間にISIが発生するため、実際には機能しません。この問題を解決するには、サイクリック・エクステンションと呼ばれる技術によってパルスを変更します(図3.2.3を参照してください)。このプロセスでは、パルスの最後の1/4をバーストの最初にコピーして、接続します。これは、ガード期間(Tg)と呼ばれます。FFTの周期性により、ガード期間の波形と元のバーストの開始とのあいだの接合点は、常に連続になります。しかしながら、波形は隣接シンボル間の接合点では不連続のままです。

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図3.2.1:OFDM信号の受信

図3.2.2:マルチパス遅延の影響

図3.2.3:サイクリック・エクステンション

送信機

受信機

遅延分散

ガード期間は、しばしば「サイクリック・エクステンション」と呼ばれます。

Tg=0.8µs Tu=3.2µs

Tg=Tu/4

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図3.2.4に、ガード・インターバルの追加がいかにISIを助長するかを示します。同じ信号の2つのコピーを示します。各コピーは別のパスを通るので、受信機にわずかに時間がずれて到着します。2つのコピーは受信機のアンテナで結合され、1つの信号となります。Tuというボックスで示された時間間隔では、信号がそれ自体とのみ干渉します。これはシンボルのスケーリングと回転に等しくなります。それ以外の影響はありません。

ガード・インターバル(Tg)では、得られた信号が両方のシンボルから影響を受ける(ISI)ことが簡単にわかります。ISIによって受信機の性能が劣化しないように、受信機ではガード期間は無視されます。明らかに、ガード期間を遅延分散よりも長くする必要がありますが、スループットが失われるほど長くすべきではありません。802.11aでは、ガード期間は固定です。

アウトオブバンド・パワーを減少させるためのデータのウィンドウ関数(図3.2.5)では、ガード期間をシェーピング関数(通常はレイズド・コサイン関数)で乗算します。この技術の欠点は、ウィンドウ間隔が次のシンボルのガード期間に侵入するため、マルチパス遅延からの干渉に対するシンボルの回復力が低下することです。

遅延分散は正の遅延に限定されません。ノンリニアな状態では、一番短いパスが一番強いパスとは限りません。OFDM受信機では、FFTはバーストの有効部分と完全には整列していません(ガード・バンドが受信機によって単に破棄されるので、しばしば呼び出されるためです)。代わりに受信機は、バーストの有効部分全体のみでなくガード期間の部分を使って、FFT位置を左にシフトします。

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図3.2.4:ガード期間と信号の関係

図3.2.5:アウトオブバンド・パワーを減少させるためのOFDMシンボルのウィンドウ関数

シンボルがそれ自体とのみ干渉する領域

ISIの領域

前のシンボル 現在のシンボル 次のシンボル

ガード期間 IFFT/FFT間隔 ウィンドウ間隔

16サンプル(0.8µs)

64サンプル(3.2µs)

0~16サンプル(0~0.8µs)

時間

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3.3 OFDM信号の変調解析

図3.3.1に802.11aバーストを示します。個々の搬送波のsin(x)/xスペクトラムに起因するサイドローブ構造が、スペクトラム・プロットで鮮明に表示されます。スペクトラムは一様ではありません。この原因の一部はプリアンブルにありますが、ほとんどは送信されるデータに起因します。下側トレースのパワー対時間プロットでは、3つのバースト領域がはっきりと識別して表示されます。

OFDMバーストには、実際には4つの領域があります(図3.3.2)。最初にショート・トレーニング・シーケンスがあり、次にロング・トレーニング・シーケンスが続きます。最後に信号とデータ・シンボルがあります。RFの観点から見た場合、信号シンボルとOFDMの残りのシンボルは同じです。

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図3.3.1:OFDMパワー・バーストおよびスペクトラム

図3.3.2:OFDMトレーニング構造

信号検出、AGC、ダイバーシチ選択

粗周波数、オフセット評価、タイミング同期

チャネルおよび微細周波数、オフセット評価

レート長 サービス-データ データ

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ショート・トレーニング・シンボルのスペクトラムは、ゲート・マーカを使って表示することができます(図3.3.3)。このシンボルは4番目ごとの搬送波を使用するので、搬送波の間隔が広くなります。802.11aでは中心の搬送波は使用されません。ショート・トレーニング・シンボルは搬送波の間隔が広いため、このシンボル間隔は搬送波リーケージ測定に最適です。ゲート・マーカがロング・トレーニング・

シンボル上を移動するとき、スペクトラムが良好でフラットであることを表示できます(図3.3.4)。このシンボルの場合、搬送波すべて(使用されない中央の1つを除く)が同じ振幅を持ちます。信号のフラットネスは、ロング・トレーニング・シンボルの間隔を使って簡単に測定されます。

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図3.3.3:802.11aショート・トレーニング・シンボルのスペクトラム

図3.3.4:802.11aロング・トレーニング・シンボルのスペクトラム

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OFDMを2次元で考察すると有用です。図3.3.5に、4番めごとの搬送波を使うショート・シーケンス、次にロング・シーケンス、最後にデータ搬送波を示します。802.11aでは、バーストのデータ部分における52個の搬送波のうち4つがパイロットですが、1つだけが表示されています(中央の暗い色調のカラム)。16または64 QAMを使用するときには、データ搬送波のパワー・レベルがシンボルごとに変化します。

時間の関数としてのOFDM信号のスペクトラム特性は、図3.3.6の上半分に示すスペクトログラムを使って観察できます。下側のトレースには、上側トレースの水平線によって示される時間のポイントでのスペクトラムが示されています。上側トレースの一番上は、バーストの開始に対応します。

4番めごとの搬送波を使うショート・シーケンスは、得られる側波帯の離散トーンと一緒にはっきりと表示できます。また、シンボル間の不連続性によって起こる信号の左と右のスペクトラム・スプラッタも明らかになります。後者は、短い同期と長い同期とのあいだの接合点でもっとも明らかになります。

参考のために、下側グリッドの上部分にパワー対時間プロットが表示されます。

この信号のスペクトラム・スプラッタの場合、AWGN(Add i t i v e Wh i t eGaussian Noise)を想定して隣接チャネルへの影響をモデル化することは危険です。

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図3.3.5:802.11a搬送波割り当て

図3.3.6:OFDMバーストのスペクトログラム解析

時間

パイロット・シンボル

データ・シンボル

ロング・シンボル

ショート・シンボル

搬送波番号

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図3.3.7にバースト全体の802.11aコンスタレーションを示します。このコンスタレーションには、トレーニング・シーケンス、信号シンボル、パイロット搬送波に常に使用されるBPSKフォーマットと、データ搬送波のフォーマット(この場合16 QAM)の両方が含まれます。標準では、アダプティブ・イコライザが必要です。左下トレースは、このバーストで使用されるイコライザの位相応答を示します。イコライザの複素結果を表示すると、送信機性能および伝播パスの測定尺度が得られます。右上トレースはバーストの各搬送波のEVMを示します。各ドット・カラムは、バーストの各シンボルの搬送波のEVMを示します。暗い線は、搬送波に対する平均EVMを示します。このプロファイルの形状は、利得の不均衡やI/Q時間の不一致などの問題を示します。右下の表から、この信号の主要な測定基準の一部(dB単位の全体のEVM、802.11a仕様の別の必要条件)が得られます。

OFDMバーストのパワー・エンベロープは一定ではありません。1つの測定基準であるピーク-平均比(PAR)は、増幅器で必要なヘッドルームの量を記述するためによく使用されます。OFDM信号の場合、この測定基準はあまり有用ではありません。「実際のピーク」は何であれ、あまり頻繁には発生しないからです。

OFDM信号にとっては、パーセンテージ確率をパワー・レベルと関連させる方が意味があります。図3.3.8に示すように、信号は時間の40%(平均と中央値が同じ場合だけ50%)、平均パワー(暗い横線)を超えます。信号は、時間の5%、平均より4dB上のレベルを超えます。すなわち、この信号が4dBのヘッドルーム(バックオフ)でPAを通って送信される場合、信号は時間の5%をクリップします。これは、この信号のピーク-平均が8dBであることを知るよりも有用です。

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図3.3.8:OFDMバーストのパワー対時間

図3.3.7:OFDMコンスタレーションおよびEVMプロット

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パワー統計を見る最良の方法は、相補累積分布関数(CCDF)を使用することです。図3.3.9に示す測定では、ゲート・マーカを使ってバーストのアクティブ部分を選択します。アクティブ部分の選択を行わないと、バーストがオフのときの周期によって平均パワーの算出結果が低くなります。

CCDF(単に一般的なCDFを1.0から引いたもの)は、横軸に平均パワーより上のdB、縦軸にパーセント確率を示します。この1バーストの場合、マーカは、時間の0.09%、平均より7.2dBを超えていることを示します。通常CCDF測定は、低確率ピークの信頼区間を改善するため、複数のバーストにわたって行われます。カーブした目盛り線は、ガウス雑音の統計を表します。ほとんどのOFDM信号は、このラインに非常に密接に沿った統計情報を持つことになります。

802.11bに使用されるEVM概念は、802.11aに有効です。802.11bの場合、コンスタレーションは1つですが、802.11aの場合、コンスタレーションはデータ速度によって変わります。OFDMコンスタレーションはQPSKと異なり、同じ振幅(原点からの距離)にすべてのシンボルを持ちません。

OFDMコンスタレーションは単位パワーにノーマライズされます。このため、送信データがコンスタレーション・ポイントの一様な分布を生成すると仮定した場合、EVM計算のノーマライズは必要ありません。EVMをより厳密に計算する場合には、送信されたシンボルが均一に分布するとは仮定せず、実際に送信された理想シンボルの平均パワー・レベルを使って計算を行います。

35図3.3.9:CCDF曲線

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図3.3.10では、上側トレースにOFDMコンスタレーションを示します。これは、全シンボルに対する全搬送波の複合プロットです。コンスタレーションは、BPSK搬送波と16 QAM搬送波の複合です。下側トレースに、アダプティブ・イコライザの応答を示します。802.11aでは、ロング・トレーニング・シンボルを使ってイコライザを調整します。これは、測定プロセスで必要なステップです。イコライザの複素結果は、振幅、位相、または群遅延として表示できます。振幅と位相応答を示します。イコライザの結果は、送信フラットネスおよび搬送波パワー・レベルの優れた測定尺度となります。

802.11aでは、各データ速度の相対コンスタレーション・エラーを確立します。これらは、dB単位で表されます。エラー計算はRMS単位で定義されます。表3.3.1に、%RMS単位の許容EVM値を示します。

802.11aでは、標準とのコンプライアンスには6、12、24Mbpsのデータ速度が必須で、仕様の残りのデータ速度の使用はオプションです。製造では、サポートされる最大レートでのみEVMを測定する必要があります。パワー統計のわずかな違い以外に、送信機の各レートに対する測定EVMを大きく変化させるようなエラー・メカニズムはほとんどありません(ノーマライズされたコンスタレーションを仮定した場合)。最大必須データ速度は24Mbpsです。これに対して15.8%のEVMが指定されています。54Mbpsモデムは、5.6%のEVMを達成する必要がありま

す。一部のメーカーでは、モデムが生産ラインを出るときにモデムを等級付けしようと計画しています。5.6%のEVMを達成するモデムは、54Mbps可能モデムとして分類されます。これより性能の劣るモデムは、廃棄せずに24Mbpsモデルとして販売することができます。

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表3.3.1:802.11a変調品質および相対コンスタレーション・エラー

図3.3.10:OFDMのEVM

データ速度(Mbps) 相対コンスタレーション・エラー(dB) EVM(%RMS)

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本アプリケーション・ノートでは、主要なWLANの背後にある変調技術と信号特性、およびRF性能を評価するために必要な、関連する信号の測定および解析技術について考察しています。本書では、8 0 2 . 1 1 b、 8 0 2 . 1 1 a、HIPERLAN Type 2について取り上げています。

テストは、デザインおよび製造プロセスの重要なパートです。これは特に、相互操作性を最終目的とする無線LANシステムにあてはまります。アプリケーション・ノートでは主に送信信号のテストについて考察していますが、受信機のテストの重要性も同じです。本書で説明するほとんどの測定が、受信機のテストやトラブルシューティングにも非常に重要です。たとえば、受信機が感度テストに不合格であった場合、原因として、受信機、テストの実施に使用した信号、あるいはその他の要因が考えられます。

測定ツールの診断機能を使うと、開発プロセスを高速化することができます。測定ツールによって、問題の原因が送信機にあるのか受信機にあるのか、RFかベースバンドかなど、簡単に切り分けることができます。Agilent89600シリーズVSAは、システムの多くのポイントで信号品質を測定することができます。これらのポイントには、送信機のアップコンバージョン信号経路と受信機のダウンコンバージョン信号経路の両方の、ベースバンド(I/Q)、IF、RFが含まれます。受信機に問題があり、受信機に送られる信号の品質に信頼性がある場合、受信機の信号経路内のテスト・ポイントで本書で説明する測定を行うのが有用です。こうした例の1つとして、受信機が信号をディジタイズする直前の、アナログIQ復調器の出力におけるスペクトラム測定が挙げられます。2チャネルAgilent89610A VSAをch1+jch2モードで使用すると、ベースバンド信号のスプリアス・エラー、隣接チャネル漏洩電力、受信機誘導位相雑音、EVMなどをチェックできます。シングルRFチャネルAgilent 89610A VSAは、IF周波数とRF周波数で使用することができます。

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4. 結論

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((D))BPSK-Differential Binary PhaseShift Keying、差動バイナリ位相シフト・キーイング

((D))QPSK-Differential QuadraturePhase Shift Keying、差動直交位相シフト・キーイング

ADC-Analog-to-Digital Converter、アナログ・ディジタル・コンバータ

Agilent ADS-Agilent AdvancedDesign System、Agilentアドバンスド・デザイン・システム

A D S L-As y n c h r o n o u s D i g i t a lSubscriber Line、非対称ディジタル加入者線

AP-Access Point、接続ポイント

AWGN-Addit ive White GaussianNoise、付加ホワイト・ガウス雑音

BPSK-Binary Phase Shift Keying、バイナリ位相シフト・キーイング

CCDF-Complementary CumulativeDistribution Function、相補累積分布関数

CCK-Complementary Code Keying、相補符号キーイング

C D F-Cumu l a t i v e D i s t r i b u t i o nFunction、累積分布関数

C D M A-Code Div i s i on Mul t i p l eAccess、符号分割多重アクセス

CRC-Cyclic Redundancy Code、巡回冗長コード

DAB-Digital Audio Broadcast、ディジタル・オーディオ放送

DAC-Digital-to-Analog Converter、ディジタル・アナログ・コンバータ

DSP-Digital Signal Processing、ディジタル信号処理

D S S S-Di r e c t S equ en c e Sp r e a dSpectrum、直接拡散方式

EIRP-Effective Isotropic RadiatedPower、有効アイソトロピック(等方性)放射パワー

EQ-Equalizer、イコライザ

ESG-Electronic Signal Generator、信号発生器

ETSI-European TelecommunicationsStandards Institute、欧州電気通信標準化協会

EVM-Error Vector Magnitude、エラー・ベクトル振幅

FFT-Fast Fourier Transform、高速フーリエ変換

FHSS-Frequency Hopping SpreadSpectrum、周波数ホッピング方式

FM-Frequency Modulation、周波数変調

FSK-Frequency Shift Keying、周波数シフト・キーイング

GFSK-Gaussian Frequency Shif tKeying、ガウス周波数シフト・キーイング

GMSK-Gaussian Minimum Shif tKeying、ガウス最小シフト・キーイング

GSM-Globa l Sys tem for Mobi leCommunications

HIPERLAN-High Performance RadioLocal Area Network

I/Q-In-phase/Quadrature、同相/直交

ICI-Inter-Carrier Interference、搬送波間干渉

IF-Intermediate Frequency、中間周波数

IFFT-Inverse Fast Fourier Transform、逆高速フーリエ変換

IS-95-cdmaOneセルラ電話通信の標準

ISI-Inter-Symbol Interference、シンボル間干渉

ISM-Industrial, Scientific and Medicalband、産業科学医療用周波数帯

LAN-Local Area Network、ローカル・エリア・ネットワーク

LO-Local Oscillator、局部発振器

MAC-Medium Access Control、媒体アクセス制御

MPDU-MAC sublayer protocol datauni ts、MAC副層プロトコル・データ・ユニット

MSK-Minimum Shift Keying、最小シフト・キーイング

OFDM-Orthogonal Frequency DivisionMultiplexing、直交周波数分割多重

PA-Power Amplifier、パワー増幅器

PAR-Peak-to-Average Ratio、ピーク-平均比

PCMCIA-Personal Computer MemoryCard International Association

PLCP-Physical Layer convergenceprocedure、物理層コンバージェンス手順

PMD-physical medium dependent、物理媒体依存

PPDU-PHYプロトコル・データ・ユニット

PSDU-PLCPサービス・データ・ユニット

PSK-Phase Shift Keying、位相シフト・キーイング

Q A M-Qu a d r a t u r e Am p l i t u d eModulation、直交振幅変調

QPSK-Quadrature Phase Shift Keying、直交位相シフト・キーイング

RF-Radio Frequency、無線周波数

RMS-Root Mean Square、ニ乗平均

RX-Receiver、受信機

SCM-Single Carrier Modulation、シングル・キャリア変調

SFD-Start Frame Delimiter、フレーム開始区切り文字

T D M A-Time Div i s i on Mul t i p l eAccess、時間分割多重アクセス

TX-Transmitter、送信機

VOFDM-Vector Orthogonal FrequencyDivision Multiplexing、ベクトル直交周波数分割多重

Wi-Fi-802.11b認証

WLAN-Wireless Local Area Network、無線ローカル・エリア・ネットワーク

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略語用語集

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関連文献

『Agilent 89600 シリーズ・ベクトル・シグナル・アナライザConfiguration Guide』カタログ番号5968-9350J

『Agilent 89610A DC~40MHzベクトル・シグナル・アナライザTechnical Specifications』カタログ番号5980-1259J

『Agilent 89640A DC~2700MHzベクトル・シグナル・アナライザTechnical Specifications』カタログ番号5980-1258J

『通信システムのディジタル変調入門編Application Note 1298』カタログ番号5965-7160J

『ディジタルRF送信機デザインのテストおよびトラブルシューティングApplication Note 1313』カタログ番号5968-3578J

『ディジタルRF受信機デザインのテストおよびトラブルシューティングApplication Note 1314』カタログ番号5968-3579J

『ディジタルRF通信システム開発におけるベクトル変調解析の応用Product Note』カタログ番号5091-8687J

『エラー・ベクトル振幅(EVM)を利用したベクトル変調信号の解析、トラブルシュートProduct Note』カタログ番号5965-2898J

『パーフェクトなディジタル復調測定のための10ステップProduct Note』カタログ番号5966-0444J

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無線LAN標準サマリ・テーブル

無線LAN標準

802.11 802.11b 802.11a HIPERLAN Type 1 HYPERLAN Type 2

周波数帯 2.4 GHz 2.4 GHz 5 GHz 5 GHz 5 GHz

チャネル分離 25 MHz(DSSS)、 25 MHz 20 MHz 23.5 MHz 20 MHz1 MHz(FHSS)

最大生データ速度 2 Mbps 11 Mbps 54 Mbps 23.5 Mbps 54 Mbps

搬送波タイプ FHSSまたはDSSS DSSS OFDM シングル・キャリア OFDM

変調 GFSK(FHSS)、 CCK BPSK & QPSK、 FSKまたはGMSK BPSK & QPSK、DBPSKまたはDQPSK 16 QAM、または 16 QAM、または

(DSSS) 64 QAM 64 QAM

チャネルあたりの 792 1(DSSS) 48データおよび 1 48データおよび搬送波数 4パイロット 4パイロット

最大パワー出力 30 dBm 30 dBm 35 dBm1 30 dBm1 30 dBm1

1 有効アイソトロピック(等方性)放射パワー(EIRP)2 米国ではFHSSの動作チャネル数を示します。

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サポート、サービス、およびアシスタンス

アジレント・テクノロジーが、サービスおよびサポートにおいてお約束できることは明確です。リスクを最小限に抑え、さまざまな問題の解決を図りながら、お客様の利益を最大限に高めることにあります。アジレント・テクノロジーは、お客様が納得できる計測機能の提供、お客様のニーズに応じたサポート体制の確立に努めています。アジレント・テクノロジーの多種多様なサポート・リソースとサービスを利用すれば、用途に合ったアジレント・テクノロジーの製品を選択し、製品を十分に活用することができます。アジレント・テクノロジーのすべての測定器およびシステムには、グローバル保証が付いています。製品の製造終了後、最低5年間はサポートを提供します。アジレント・テクノロジーのサポート政策全体を貫く2つの理念が、「アジレント・テクノロジーのプロミス」と「お客様のアドバンテージ」です。

アジレント・テクノロジーのプロミス

お客様が新たに製品の購入をお考えの時、アジレント・テクノロジーの経験豊富なテスト・エンジニアが現実的な性能や実用的な製品の推奨を含む製品情報をお届けします。お客様がアジレント・テクノロジーの製品をお使いになる時、アジレント・テクノロジーは製品が約束どおりの性能を発揮することを保証します。それらは以下のようなことです。● 機器が正しく動作するか動作確認を行います。● 機器操作のサポートを行います。● データシートに載っている基本的な測定に係わるアシストを提供します。

● セルフヘルプ・ツールの提供。● 世界中のアジレント・テクノロジー・サービス・センタでサービスが受けられるグローバル保証。

お客様のアドバンテージ

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January 31, 20025988-3762JA

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