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7 Vol.56 2015No.5 SOKEIZAI 2. 鋳造 2. 1 鋳造全般 2. 1. 1 産業動向 2. 1. 1. 1 生産動向 わが国鋳造産業の平成 26 年の生産金額は、1 兆 9,915 億円、対前年比3.2%増と2年ぶりに増加した。 2. 1. 1. 1 をみると、生産金額は、平成 2(1990)年の 2.5 兆円をピークに低下に転じ、平成14(2002)年には 1.7 兆円まで落ち込んだものの平成19(2007)年には 2.4兆 円まで回復した。しかし平成20(2008)年秋に発生した リーマンショックで平成21(2009)年には 1.6兆円まで 落ち込んだ。平成22(2010)年以降回復したものの、平 成23(2011)年の東日本大震災などもあり平成26(2014) 年まで 1.9 兆円台で推移している。しかし、平成 2 年や 平成19 年の 2.4~2.5兆円は、いわばバブル時の生産金 額であり、内需の成熟化やユーザー企業の海外生産の 進展等による国内市場の縮小傾向が今後も続くと見込 2.1.1.1 平成 22 26 年の鋳造品生産金額 生産金額(百万円) 前年比 (%) H26 構成比 (%) 平成 22 年 平成 23 年 平成 24 年 平成 25 年 平成 26 年 735,642 743,846 726,828 694,045 707,203 101.9 35.5 447,962 425,879 404,938 382,247 387,260 101.3 19.4 球状黒鉛鋳鉄 287,680 317,967 321,890 311,798 319,943 102.6 16.1 87,702 91,772 105,390 109,733 120,740 110.0 6.1 18,482 18,705 16,896 17,873 17,752 99.3 0.9 136,716 131,238 128,031 128,795 124,459 96.6 6.2 95,758 108,018 96,022 87,730 95,640 109.0 4.8 アルミニウム合金鋳物 263,108 258,255 274,406 271,737 282,470 103.9 14.2 576,470 557,737 580,614 568,674 586,720 103.2 29.5 アルミニウム合金 528,401 513,386 538,278 532,851 552,424 103.7 27.7 亜鉛合金など 48,069 44,351 42,336 35,823 34,296 95.7 1.7 51,350 52,264 50,698 51,910 56,481 108.8 2.8 合計 1,965,228 1,961,835 1,978,885 1,930,497 1,991,465 103.2 100.0 出所:経済産業省 生産動態統計 2.1.1.2 平成 22 26 年の鋳造品生産重量 生産重量(t) 前年比 (%) H26 構成比 (%) 平成 22 年 平成 23 年 平成 24 年 平成 25 年 平成 26 年 3,469,408 3,528,348 3,586,692 3,480,998 3,481,326 100.0 62.6 2,157,514 2,182,813 2,209,307 2,135,900 2,118,605 99.2 38.1 球状黒鉛鋳鉄 1,311,894 1,345,535 1,377,385 1,345,098 1,362,721 101.3 24.5 316,132 299,916 330,216 344,788 360,018 104.4 6.5 39,057 39,513 36,558 45,929 44,132 96.1 0.8 206,683 218,181 202,713 181,679 172,302 94.8 3.1 79,293 83,163 79,571 73,433 77,088 105.0 1.4 アルミニウム合金鋳物 386,812 383,978 420,530 413,804 417,700 100.9 7.5 980,850 930,474 1,006,287 984,842 1,000,260 101.6 18.0 アルミニウム合金 949,118 902,028 978,523 958,503 974,658 101.7 17.5 亜鉛合金など 31,732 28,446 27,764 26,339 25,602 97.2 0.5 5,899 6,582 6,396 6,357 6,659 104.8 0.1 合計 5,484,134 5,490,155 5,668,963 5,531,830 5,559,485 100.5 100.0 出所:経済産業省 生産動態統計

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Page 1: 造 2. 鋳造sokeizai.or.jp/japanese/publish/200706/201505castings.pdf4,241工場をピークに平成24 (2012)年で2,085工場と この20年間で半減している。業種別では、銑鉄鋳物の

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鋳 造

Vol.56(2015)No.5 SOKEIZAI

2. 鋳造

2. 1 鋳造全般

2. 1. 1 産業動向

 2. 1. 1. 1 生産動向 わが国鋳造産業の平成26年の生産金額は、1 兆 9,915億円、対前年比 3.2%増と 2 年ぶりに増加した。図2. 1. 1. 1をみると、生産金額は、平成 2(1990)年の 2.5兆円をピークに低下に転じ、平成14(2002)年には 1.7兆円まで落ち込んだものの平成19(2007)年には 2.4兆

円まで回復した。しかし平成20(2008)年秋に発生したリーマンショックで平成21(2009)年には 1.6兆円まで落ち込んだ。平成22(2010)年以降回復したものの、平成23(2011)年の東日本大震災などもあり平成26(2014)年まで 1.9兆円台で推移している。しかし、平成 2 年や平成19 年の 2.4~2.5兆円は、いわばバブル時の生産金額であり、内需の成熟化やユーザー企業の海外生産の進展等による国内市場の縮小傾向が今後も続くと見込

表 2.1.1.1 平成 22~ 26年の鋳造品生産金額

生産金額(百万円) 前年比(%)

H26 構成比(%)平成 22 年 平成 23 年 平成 24 年 平成 25 年 平成 26 年

銑 鉄 鋳 物 735,642 743,846 726,828 694,045 707,203 101.9 35.5    ね ず み 鋳 鉄 447,962 425,879 404,938 382,247 387,260 101.3 19.4    球 状 黒 鉛 鋳 鉄 287,680 317,967 321,890 311,798 319,943 102.6 16.1 鋳 鉄 管 87,702 91,772 105,390 109,733 120,740 110.0 6.1 可 鍛 鋳 鉄 18,482 18,705 16,896 17,873 17,752 99.3 0.9 鋳 鋼 品 136,716 131,238 128,031 128,795 124,459 96.6 6.2 銅 合 金 鋳 物 95,758 108,018 96,022 87,730 95,640 109.0 4.8 アルミニウム合金鋳物 263,108 258,255 274,406 271,737 282,470 103.9 14.2 ダ イ カ ス ト 576,470 557,737 580,614 568,674 586,720 103.2 29.5   アルミニウム合金 528,401 513,386 538,278 532,851 552,424 103.7 27.7    亜 鉛 合 金 な ど 48,069 44,351 42,336 35,823 34,296 95.7 1.7 精 密 鋳 造 品 51,350 52,264 50,698 51,910 56,481 108.8 2.8

合計 1,965,228 1,961,835 1,978,885 1,930,497 1,991,465 103.2 100.0 出所:経済産業省 生産動態統計

表 2.1.1.2 平成 22~ 26年の鋳造品生産重量

生産重量(t) 前年比(%)

H26 構成比(%)平成 22 年 平成 23 年 平成 24 年 平成 25 年 平成 26 年

銑 鉄 鋳 物 3,469,408 3,528,348 3,586,692 3,480,998 3,481,326 100.0 62.6    ね ず み 鋳 鉄 2,157,514 2,182,813 2,209,307 2,135,900 2,118,605 99.2 38.1    球 状 黒 鉛 鋳 鉄 1,311,894 1,345,535 1,377,385 1,345,098 1,362,721 101.3 24.5 鋳 鉄 管 316,132 299,916 330,216 344,788 360,018 104.4 6.5 可 鍛 鋳 鉄 39,057 39,513 36,558 45,929 44,132 96.1 0.8 鋳 鋼 品 206,683 218,181 202,713 181,679 172,302 94.8 3.1 銅 合 金 鋳 物 79,293 83,163 79,571 73,433 77,088 105.0 1.4 アルミニウム合金鋳物 386,812 383,978 420,530 413,804 417,700 100.9 7.5 ダ イ カ ス ト 980,850 930,474 1,006,287 984,842 1,000,260 101.6 18.0   アルミニウム合金 949,118 902,028 978,523 958,503 974,658 101.7 17.5    亜 鉛 合 金 な ど 31,732 28,446 27,764 26,339 25,602 97.2 0.5 精 密 鋳 造 品 5,899 6,582 6,396 6,357 6,659 104.8 0.1

合計 5,484,134 5,490,155 5,668,963 5,531,830 5,559,485 100.5 100.0 出所:経済産業省 生産動態統計

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2011年

2012年

2013年

2014年

精密鋳造品 47 45 47 49 45 40 44 46 47 54 60 43 51 52 51 52 56

ダイカスト 520 485 465 434 465 506 551 600 675 732 697 444 577 558 581 569 587

軽合金鋳物 312 300 289 265 269 256 260 279 307 320 309 207 263 258 274 280 282

銅合金鋳物 112 98 70 69 67 75 83 82 115 133 129 84 96 108 96 91 96

鋳鋼品 223 174 138 141 126 122 122 143 160 175 187 133 137 131 128 129 124

銑鉄鋳物(含 鋳鉄管、可鍛鋳鉄) 1,267 1,080 905 817 764 821 849 913 973 1,001 1,048 677 851 858 849 820 846

非鉄鋳物比率(ダイカスト・銅合金・軽合金) 38.0 40.5 43.1 43.3 46.2 46.0 46.8 46.6 48.2 49.1 46.7 46.3 47.4 47.0 48.1 48.4 48.5

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(単位:10億円)

8 SOKEIZAI Vol.56(2015)No.5

平成26年の素形材産業年報

まれることから、今後景気回復が見込まれたとしても2 兆円を少し上回る程度の生産金額で推移するものと考えられる。一方、生産重量も、平成26年は 5,559千トン、同0.5%増と2年ぶりに増加した。リーマン・ショックの落ち込みから平成22年に 5,484千トンまで回復し、その後平成24年 5,669千トンまで 3 年連続して増加したが、平成25年には 5,532千トン、同 2.3%減に転じていた。平成22~26年の生産金額と生産重量の推移を表2. 1. 1. 1及び表 2. 1. 1. 2に示す。 材料別では、銑鉄鋳物の生産金額は、7,072億円、同1.9%増と 3 年ぶりに増加、生産量では 3,481千トン、同横ばい*に推移した。鋳鋼は生産金額が 1,245億円、同3.4%減、生産量は 172千トン、同 5.2%減 3 年連続して減少となった。非鉄金属鋳物は、銅合金鋳物の生産金額が 956億円、同 9.0%増と 3 年ぶりに増加したものの3 年続けて 1 千億円を下回った。生産量も 77,088 トン、同 5.0%増となったものの 3 年続けて 8 万トンを下回った。一方、アルミニウム鋳物は需要の 80%が自動車向けであるため 2,825億円、同 3.9%増と増加した。生産量も 418千トン、同 0.9%増と 3 年連続して 40万トン台を継続した。ダイカストは、同様に自動車向けが主であるので 5,867億円、同 3.2%増と増加し、生産量では1,000千トン、同 1.6%増と再び 100万トン台を回復した。

この結果、平成26年の全生産額に占める非鉄鋳物比率は 48.5 とわずかではあるが 3 年連続して上昇した。* 平成26年から 20名以上から 30名以上への統計対象

の裾切りが行われたので、これを考慮すると、生産増と推察される。

 2. 1. 1. 2 鋳造業を取り巻く動向 わが国鋳造産業の総事業所数は、平成 2(1990)年の4,241 工場をピークに平成24(2012)年で 2,085工場とこの 20年間で半減している。業種別では、銑鉄鋳物の57%減に対してダイカストは生産重量の増加を反映して35%減となっている。この事業所数の推移を図 2. 1. 1. 2に示す。地域別の鋳物生産量については、銑鉄鋳物の県別生産量を日本鋳造協会が公表している。表 2. 1. 1. 3に平成26年の県別銑鉄鋳物生産量の上位 20 の県を示す。第 1 位愛知県 1,286 千トン、第 2 位栃木県 230 千トン、第 3 位福島県 211 千トン、第 4 位島根県 170 千トン、第5 位長野県 136 千トンと続く。 日本鋳造協会調べによれば、銑鉄鋳物業の平成26

(2014)年の倒産・転廃業は、倒産 3 件、廃業 7 件、休業 1 件の合計 11件であった。平成24(2012)年以降の3 年間の倒産比率は、43.2%と平成 5(1993)年から平成23(2011)年までの19年間の平均倒産比率 13.7%に

素形材年鑑、経済産業省 生産動態統計より作成

図 2.1.1.1 材質別生産金額の推移

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鋳 造

Vol.56(2015)No.5 SOKEIZAI

比べると 3 倍を超える大幅な増加となっている。この推移を図 2. 1. 1. 3に示す。 鋳造業の最大のユーザーである自動車産業は、少子高齢化を背景とした国内需要の落ち込みが懸念され始めた平成12(2000)年初頭から、新興国を中心とする海

  素形材年鑑、経済産業省:工業統計表(産業編)より作成

図 2.1.1.2 材質別事業所数の推移

日本鋳造協会のホームページより作成

図 2.1.1.3 倒産比率の推移

表 2.1.1.3 平成 26年銑鉄鋳物の県別生産重量・生産金額

順位 都道府県名 生産重量(千トン)

生産金額(億円)

1 愛 知 1,286 2,3542 栃 木 230 4053 福 島 211 3894 島 根 170 3095 長 野 136 2907 静 岡 125 2496 広 島 122 28810 大 阪 88 2378 岡 山 87 16311 兵 庫 77 2029 埼 玉 75 17112 新 潟 73 20815 岐 阜 72 17214 富 山 69 13816 茨 城 67 12813 岩 手 67 14817 三 重 56 10820 滋 賀 51 14819 京 都 50 5418 山 形 46 78

日本鋳造協会ホームページより作成

0

500

1000

1990年 年

1995 2000 2002 2004 2006 2008 2009 2010 20122011

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2500

3000

3500

4000

4500

5000

年 年 年 年 年 年 年 年 年

ダイカスト

非鉄金属鋳物

鋳鋼品

銑鉄鋳物(含 鋳鉄管、可鍛鋳鉄)

1,006 894 836 746 685 715 763 693 657 664690

1,899 1,432 1,164 970 902 873 887 838 808 817829

1,241 1,028 832 699 661 637 650 571 570 52957695 95 92 80 82 77 87 81 78 7564

0

5

10

15

20

25

30

0%2006年 2014年

10%

20%

30%

40%

50%

60%

17%13% 12%

28%

56%50% 50%

27%

2007年

転廃業・休業他倒産倒産企業割合

2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年

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平成26年の素形材産業年報

外での旺盛な需要を取り込むため、海外生産を急速に増加している。図 2. 1. 1. 4の自動車産業の海外展開をみると、平成11(1999)年には日本国内生産 60%、海外生産 40%の割合であった生産比率が平成 24(2012)年には国内生産 40%、海外生産 60%に比率が逆転している。この間の日本国内での生産台数は約 1000万台で横ばいに推移しているが、海外生産が 1000万台増加している。この海外生産分を自動車用鋳物生産量に換算すると約 220万トンの鋳物生産量が海外シフトしたことに等しいといえる。 さらに、最近では、工作機械や産業用ロボットといった生産財メーカーにおいても、徐々に海外での生産や

部品の調達が増加する傾向にある。このため、アベノミクス効果によってリーマンショック以降の円高からこの 2 年間円安傾向に転じたものの、依然として鋳造業の主要ユーザーの海外生産比率は高い状況にある。 鋳造業の主なユーザー業界の動向を表 2. 1. 1. 4に示す。ここで、工作機械の年間受注量は平成23年 13,262億円、平成24年 12,124億円、平成25年11,170億円、平成26 年 15,094億円と毎年 1 兆円を超えるレベルで推移している。しかし、図 2. 1. 1. 5によれば工作機械の生産台数は、それまで受注額に比例して増減していたが、平成24年の 93,649台から平成25年は 56,814台へと大幅に減少した。平成26年には 99,352台へと回復したものの受注額に図 2.1.1.4 日本の自動車産業の国内外生産比率の比較

表 2.1.1.4 主なユーザー業界の生産動向

自動車生産台数(台)

平成20年上期

平均比

産業機械受注

(億円)

平成20年上期

平均比

工作機械受注

(億円)

平成20年上期

平均比

建設機械出荷

(億円)

平成20年上期

平均比

新設住宅着工戸数(戸)

平成20年上期

平均比

ウェイト関係生産台数(台)

平成20年上期

平均比平成20年度上期平均 1,009,507 100.0 6,318 100.0 1,300 100.0 2,259 100.0 90,598 100.0 31,580 100.0

平成23年上期平均 579,593 57.4 4,429 70.1 1,124 86.5 1,712 75.8 65,925 72.8 19,722 62.5

平成23年下期平均 828,101 82.0 4,347 68.8 1,082 83.2 2,102 93.0 73,095 80.7 24,446 77.4

平成24年上期平均 874,666 86.6 5,256 83.2 1,061 81.6 2,025 89.6 69,227 76.4 23,477 74.3

平成24年下期平均 782,443 77.5 3,483 55.1 960 73.9 1,784 79.0 77,906 86.0 23,168 73.4

平成25年上期平均 779,066 77.2 4,130 65.4 866 66.6 1,756 77.7 75,177 83.0 20,827 66.0

平成25年下期平均 828,070 82.0 3,826 60.6 1,000 76.9 1,940 85.9 88,103 97.2 24,761 78.4

平成26年上期平均 844,300 83.6 4,723 74.7 1,168 89.9 1,962 86.8 72,630 80.2 24,653 78.1

平成26年下期平均 784,618 77.7 4,783 75.7 1,348 103.7 2,086 92.3 76,081 84.0 26,081 82.6

平成26年合計 9,773,511 --- 57,034 --- 15,094 --- 24,438 --- 892,261 --- 304,401 ---

日本鋳造協会ホームページより作成

0

20,000

40,000

60,000

80,000

100,000

120,000

平成22年 平成23年 平成24年 平成25年 平成26年

生産

台数

93,649 253,99282,49

56,814

74,718

経済産業省 生産動態統計より作成

図 2.1.1.5 平成 22~ 26年の工作機械生産台数の推移

Page 5: 造 2. 鋳造sokeizai.or.jp/japanese/publish/200706/201505castings.pdf4,241工場をピークに平成24 (2012)年で2,085工場と この20年間で半減している。業種別では、銑鉄鋳物の

11

鋳 造

Vol.56(2015)No.5 SOKEIZAI

比例した増加とはなっていない。最近の円安により国内回帰はみられるものの海外調達の増加を反映したものといえる。

 2. 1. 1. 3 世界の鋳物動向 Modern Casting 誌の平成26(2014)年12月号に掲載された平成25(2013)年の世界鋳物生産量は、約 1 億300万トン、対前年比 3.4%増と 4 年連続して増加し、1億トンの大台に乗った。同誌平成25(2013)年12月号の報告では、平成24(2012)年に 1 億トンを超えたとされたが、アメリカの同年の生産量が 12,825千トンから11,789千トンに訂正されたことから、平成25(2013)年に 1 億トンを超えた。 生産量第 1 位は中国で、42,500千トン、同 4.7%増の44,500千トンと平成22(2010)年以降は 5 %以下の伸び

に止まっている。第 2 位のアメリカはリーマンショック後 3 年連続して増加し、平成25(2013)年は 12,250千トン、同 3.9%と平成18(2006)年以来の12 百万トン台を回復した。第 3 位のインドも 9,810千トン、同 5.0%と増加に転じた。日本は、第 4 位の 5,343千トン、同 3.6%増であった。 これに対して、第 5 位のドイツ、第 6 位のロシア、第10位のフランスは減少している。 特にドイツとフランスは 2 年連続して減少している。欧州の金融危機やロシア制裁などによる影響と考えられる。メキシコについては、同誌報告では平成25(2013)年の報告が無いとされているが平成26(2014)年 9 月にイタリア・ベニスで開催された国際鋳造フォーラムで、アメリカ鋳造協会(AFS)よりメキシコの平成25

(2013)年は 2,100千トンと 200万トン台を超えて、韓国に次いで第 9 位と報告されている。表2. 1. 1. 5及び図 2. 1. 1. 6に世界の鋳物生産量及び上位 10か国の生産量の推移を示す。

(角田悦啓)

2. 1. 2 技術・研究動向

 鋳造産学界における主な出来事を以下に紹介する。 日本鋳造工学会の平成26年1月~12月の研究・技術論文を内容別にみると、鋳鉄関連 15報、鋳鋼関連 2 報、アルミ合金関連 15報、ダイカスト関連 3 報、鋳型関連 4 報、CAE 関連 1 報、設備関連 2 報となっており、特集号は 5 月号に「大学・高専・公設試の研究室紹介」、12月号に「鋳造シミュレーションパッケージ最前線」が掲載された。また、「鋳造工学概論」の連載が継続し、鋳造方案から鋳型そして各種鋳造法まで、基礎的な事項から応用まで詳しく解説された。球状黒鉛鋳鉄の疲労1)~ 3)や衝撃特性に関する研究4)、鋳型材料の違いによる引け測定による評価 5)や凝固

表 2.1.1.5 世界の鋳物生産量の対前年比較 単位:千トン順位 国 名 2012 2013 対前年比 順位 国 名 2012 2013 対前年比

世界合計 99,799 103,230 3.40% 6 ロシア 4,300 4,100 ▲ 4.7%1 中国 42,500 44,500 4.70% 7 ブラジル 2,860 3,071 7.40%2 アメリカ 11,789 12,250 3.90% 8 韓国 2,436 2,562 5.20%3 インド 9,344 9,810 5.00% 9 イタリア 1,960 1,971 0.50%4 日本 5,343 5,538 3.60% 10 フランス 1,800 1,748 ▲ 2.9%5 ドイツ 5,214 5,187 ▲ 0.5% メキシコ* 1,652 1,652 0%

* 2013年 2,100千トン(AFS報告)

Modern Casting 掲載データより作成

図 2.1.1.6 世界の鋳物生産量の推移

Page 6: 造 2. 鋳造sokeizai.or.jp/japanese/publish/200706/201505castings.pdf4,241工場をピークに平成24 (2012)年で2,085工場と この20年間で半減している。業種別では、銑鉄鋳物の

12 SOKEIZAI Vol.56(2015)No.5

平成26年の素形材産業年報

時の黒鉛生成に関する検討や直接観察6),7)、及び新鋳造法としてのマイクロ鋳造法8)などの研究論文もあった。鉄鋳物の歴史に関する調査9)や我が国で球状黒鉛鋳鉄が製造され始めた頃の技術的にとても興味深い「精密二重橋高覧の製作」の物語 10),11)が言及された。 同学会の第164回全国講演大会は平成26年 5 月30日~6 月 2 日に京都市の“みやこめっせ(京都市勧業館)”で開催され、125件の研究発表(オーガナイズドセッションを含む)、YFE大会の講演と技術講習会があった。講演の内訳は鋳鉄関連 23報、鋳鋼関連 3 報、非鉄合金関連 25報、ダイカスト関連 6 報、鋳型関連 15報、CAE関連 7 報、設備関連 5 報などと日中交流招待講演と日韓交流招待講演があった 12)。特別講演は京都大学 iPS細胞研究所・高橋淳教授の「iPS 細胞技術は再生医療にどう生かせるか」についてであり、人づくりが重要なことはどの業界であっても共通する点が感じられ、参加者はとても興味深く拝聴していた。また、山内康仁会長による「第 2 期長期ビジョン」の講演があり、会長としての思いが説明された。技術講習会は「最新の砂型技術」をテーマとし、「生型砂の管理について」、「無機、有機自硬性鋳型の最新情報について」と「消失模型鋳型鋳造法について」の 3 つのセッションに分けられ、11名の講師による現状と開発動向が言及された 13)。 つづく第165回全国講演大会は平成26年10月17日~20日に北九州市の北九州国際会議場で日本鋳造協会秋季大会と同時開催され、117件の研究発表と特別講演、技術講習会があった 14)。講演の内訳は鋳鉄関連 32報、鋳鋼関連 5 報、非鉄合金関連 21報、ダイカスト関連 12報、鋳型関連 9 報、CAE 関連 10報、設備関連 3 報などであった。特別講演として、芦屋釜の里・新郷英弘氏の「鋳金の至宝、芦屋釜の復元に挑む」とドイツ鋳造協会 Gerhard Klugge 専務理事の「欧州鋳造産業の動向」があり、参加者は大きな関心をもって聴講していた。技術講習会は「3 次元造形技術の進展」と題し、

「3Dプリンターの発展」と「3Dプリンターの鋳造への適用」の 2 つのセッションに分けて、7 名の講師による現状と開発動向及び将来展望までの内容が説明された 15)。同時開催の日本鋳造協会の講演会はエノモト・榎本信之氏と九州タブチ・鶴ケ野未央氏からの「九州地区会員による経営講演」と、木村鋳造所・木村博彦会長からの「木村鋳造所の事業継承」の 3 名の講師による経営戦略と技術伝承の取り組みとそのやり方に関する提言があった。

 日本鋳造協会が主催する「鋳造カレッジ」は 2007年度から 2014年度までの 8 年間で「鋳造技士」を 660名認定し、鋳鉄コース、銅合金コース、軽合金コースと鋳鋼コースの 4 コースが現在では設立され、運用されている。この事業は鋳造業界における中核人材育成に関する一翼を担っている。同協会の鋳造ジャーナルでは光造形法による精密鋳造品への適用 16)、生産性向上による省エネ生産の取り組み 17)や「鋳造業」の職業能力評価基準が策定された事項 18)などが紹介された。 素形材誌では「3Dプリンタ」に関する情報として、展示会 19)、「新ものづくり研究会」でまとめられた報告書 20)やわが国における拠点として整備事業 21)などが紹介され、鋳型に利用するだけでなく、直接様々な形状のものが造形できる可能性 22)を秘めている点で鋳造分野でも今後の動向を把握しておく必要がある。

(旗手 稔) 参考文献1 )清水ら:鋳造工学 , 86 (2014) 1, 392 )白木ら:鋳造工学 , 86 (2014) 6, 4543 )白木ら:鋳造工学 , 86 (2014) 8, 6154 )信木ら:鋳造工学 , 86 (2014) 9, 7195 )小島ら:鋳造工学 , 86 (2014) 2, 1096 )丸山:鋳造工学 , 86 (2014) 11, 8587 )山根ら:鋳造工学 , 86 (2014) 6, 4618 )中江ら:鋳造工学 , 86 (2014) 11, 8469 )中江:鋳造工学 , 86 (2014) 1, 8310)和氣:鋳造工学 , 86 (2014) 7, 55111)和氣:鋳造工学 , 86 (2014) 8, 62112)日本鋳造工学会:第164回全国講演大会講演概要集  (2014) 5 月13)日本鋳造工学会編:技術講習会資料「最新の鋳型技術」  (2014) 5 月14)日本鋳造工学会:第165回全国講演大会講演概要集  (2014) 10月15)日本鋳造工学会編:技術講習会資料「3 次元造形技術」  (2014) 10月16)荒井:鋳造ジャーナル, Vol.10 (2014) 8, 1217)塩谷:鋳造ジャーナル, Vol.10 (2014) 8, 2018)中央職業能力開発協会:鋳造ジャーナル, Vol.10  (2014) 8, p.4619)松井:素形材, Vol.55 (2014) 9, 4120)木村:素形材, Vol.55 (2014) 4, 3121)林部:素形材, Vol.55 (2014) 8, 4622)素形材センター:素形材, Vol.55 (2014) 8, 37

Page 7: 造 2. 鋳造sokeizai.or.jp/japanese/publish/200706/201505castings.pdf4,241工場をピークに平成24 (2012)年で2,085工場と この20年間で半減している。業種別では、銑鉄鋳物の

13

鋳 造

Vol.56(2015)No.5 SOKEIZAI

2. 2 銑鉄鋳物

2. 2. 1 ねずみ鋳鉄

 2. 2. 1. 1 産業動向 平成26年のねずみ鋳鉄の生産重量・生産金額・平均単価を表 2. 2. 1. 1に示す。生産重量は 2,119 千トン、前年比0.8%減と 2 年連続して減少した。用途別では64.1%を占める自動車用が、1,357千トン、同2.1%減と2 年連続して減少した。同じく11.9%を占める産業機械器具用は 251千トン、同0.9%減と 3 年連続して減少した。その他用も58千トン、同0.9%減と 2 年連続して減少した。これに対して、金属工作・加工機用は105千トン、同3.1%増、その他一般・電気機械用は 200千トン、同3.3%増、その他輸送機用は146千トン、同3.2% 増といずれも 2 年ぶりの増加となった。 生産金額は、3,873億円、同1.3%増と 4 年ぶりに増加に転じた。用途別では、54.9%を占める自動車用が

2,126億円、同0.2%減となり、産業機械器具用も571億円、同1.2%減とともに 2 年連続して減少した。これに対して金属工作・加工機械用は204億円、同3.8%増、その他一般・電気機械用は 548億円、同6.8%増、その他輸送機械用は 264億円、同6.5%増、その他用は160億円、同2.2%増とそれぞれ 2 年ぶりの増加となった。 生産金額を生産重量で割ったいわば統計から見たねずみ鋳鉄の平均単価の動向は、産業機械器具用の低下を除いて 2 ~ 3 %程度増加している。ねずみ鋳鉄の単価が上昇したのは 4 年ぶりであり、自動車用が 4 年ぶりに増加に転じたことによる。円安による原材料価格上昇と電気料金等のエネルギーコスト増に伴う価格転嫁の影響と考えられる。ねずみ鋳鉄の平成26年の月別生産動向および平成22~26年の生産量および生産金額の推移を図 2. 2. 1. 1および図 2. 2. 1. 2に示す。

(角田悦啓)

表 2.2.1.1 平成 26年ねずみ鋳鉄鋳物の生産重量・生産金額・単価

用途 生産重量(トン)

構成比率(%)

前年比(%)

生産金額(百万円)

構成比率(%)

前年比(%)

単価*

(円/kg)前年単価(円/kg)

一般 ・ 電気機械用産業機械器具用 251,133 11.9 99.1 57,118 14.7 98.8 227.4 228.1金属工作 ・ 加工機械用 105,387 5.0 103.1 20,352 5.3 103.8 193.1 191.9その他一般 ・ 電気機械用 200,221 9.5 103.3 54,803 14.2 106.8 273.7 264.8

輸送機用自動車用 1,357,428 64.1 97.9 212,555 54.9 99.8 156.6 153.7その他輸送機用 146,080 6.9 103.2 26,411 6.8 106.5 180.8 175.0

その他用 58,356 2.8 99.1 16,021 4.1 102.2 274.5 266.2合計 2,118,605 100.0 99.2 387,260 100.0 101.3 182.8 179.0

* 単価 = 生産金額 / 生産重量経済産業省 生産動態統計データより算出

175,641

177,064

183,142

177,733

169,661

182,358

190,604

150,161

185,665

187,456

171,129

167,991

316 320 330

325 314 336 348

281 333

347 319 303

0

50

100

150

200

250

300

350

400

0

50,000

100,000

150,000

200,000

250,000

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

生産

金額

,億

生産

重量

,トン

生産重量 生産金額

    経済産業省 生産動態統計より作成図 2.2.1.1 平成26年のねずみ鋳鉄鋳物の生産量推移

Page 8: 造 2. 鋳造sokeizai.or.jp/japanese/publish/200706/201505castings.pdf4,241工場をピークに平成24 (2012)年で2,085工場と この20年間で半減している。業種別では、銑鉄鋳物の

14 SOKEIZAI Vol.56(2015)No.5

平成26年の素形材産業年報

 2. 2. 1. 2 技術・研究動向 日本鋳造工学会誌「鋳造工学」における平成26年 1月~12月の鋳鉄関連15報のうち、ねずみ鋳鉄に関する研究・技術論文は 3 報であった。2 回の全国講演大会では鋳鉄関連55報のうち、ねずみ鋳鉄に関する研究は25報が発表された。高 Mn片状黒鉛鋳鉄の機械的性質と組織との関係1),2)、摩耗特性と組織との関係3),4)や添加元素の効果などを調査した報告や、溶湯性状として湯面模様を観察して冶金学的に考察されている報告5)

があった。また、機械的性質に及ぼす合金元素の影響を調査した報告、凝固時の組織を直接観察した報告、内部に残留する応力と凝固形態の関連性6)や凝固時の膨張と収縮量を測定して発生する残留応力の評価を試みた報告7)~ 9)などもあった。さらに、消失模型鋳造法の鋳造時における模型の分解と溶湯充填状況を直接観察した報告10)や鋳造方案を検討した報告などもあった。複合化技術、異種材との接合技術や表面処理11)などについても 5 件の報告があった。 海外雑誌 AFS では微細樹枝状黒鉛鋳鉄の引張特性12)

や諸性質に及ぼすMnとSの影響13)について報告された。(旗手 稔)

 参考文献1 ) 根本ら:日本鋳造工学会第164回全国講演大会講演概

要集 p.72 ) 平塚ら:日本鋳造工学会第165回全国講演大会講演概

要集 p.573 ) 川元ら:日本鋳造工学会第165回全国講演大会講演概

要集 p.964 ) 宮内ら:日本鋳造工学会第165回全国講演大会講演概

要集 p.155 ) 岩見ら:日本鋳造工学会第164回全国講演大会講演概

要集 p.45

6 ) 望月ら:日本鋳造工学会第164回全国講演大会講演概要集 p.53

7 ) 丸本ら:日本鋳造工学会第165回全国講演大会講演概要集 p.49

8 ) 小野ら:日本鋳造工学会第165回全国講演大会講演概要集 p.50

9 ) 犬飼ら:日本鋳造工学会第165回全国講演大会講演概要集 p.51

10) 中村ら:日本鋳造工学会第165回全国講演大会講演概要集 p.92

11) 及川ら:日本鋳造工学会第165回全国講演大会講演概要集 p.56

12) E. Aguado et al.: AFS Transactions,“Effect of Carbon Equivalent and Alloying Elements on the Tensile Properties of Superfine Interdendritic Graphite Irons”, Vol.122 (2014), p.249

13) M. H. Meyer et al.:AFS Transactions, “Influence of Mn and S on the Properties of Cast Iron Part Ⅱ

   - Experimental Design:Aspects of Melting and Pouring -”, Vol.122 (2014), p.273

2. 2. 2 球状黒鉛鋳鉄

 2. 2. 2. 1 産業動向 平成26年の球状黒鉛鋳鉄の生産重量・生産金額・平均単価を表 2. 2. 2. 1に示す。鋳鉄管を除く球状黒鉛鋳鉄の生産重量は 1,363千トン、前年比1.3%増と 2 年ぶりに増加した。鋳鉄管は、360千トン、同4.4%増と 3年連続して増加した。用途別では、50.7%を占める自動車用が 874千トン、同1.6%増と 2 年ぶりに増加した。同じく12.1%を占める産業機械器具用は 209千トン、

       経済産業省 生産動態統計より作成

図 2.2.1.2 平成22年~26年のねずみ鋳鉄鋳物の生産量及び生産金額推移

2,158 2,183 2,209 2,136 2,119

4,479 4,258

4,049 3,822 3,872

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

4,500

5,000

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

平成22年 平成23年 平成24年 平成25年 平成26年

生産

金額,億

生産

重量

,トン

年生産重量,千トン 生産金額、億円

Page 9: 造 2. 鋳造sokeizai.or.jp/japanese/publish/200706/201505castings.pdf4,241工場をピークに平成24 (2012)年で2,085工場と この20年間で半減している。業種別では、銑鉄鋳物の

15

鋳 造

Vol.56(2015)No.5 SOKEIZAI

表 2.2.2.1 平成 26年球状黒鉛鋳鉄鋳物の生産重量・生産金額・単価

用途 生産重量(トン)

構成比率(%)

前年比(%)

生産金額(百万円)

構成比率(%)

前年比(%)

単価(円/kg)

前年単価(円/kg)

一般 ・ 電気機械用産業機械器具用 208,754 12.1 101.7 51,460 11.7 104.5 246.5 240.0金属工作 ・ 加工機械用 10,762 0.6 98.8 2,081 0.5 94.2 193.4 202.6その他一般・電気機械用 104,122 6.0 102.1 27,941 6.3 103.6 268.3 264.4

輸送機用自動車用 873,914 50.7 101.6 193,333 43.9 102.3 221.2 219.6その他輸送機用 72,897 4.2 100.1 18,085 4.1 99.9 248.1 248.5

その他用 92,272 5.4 98.5 27,043 6.1 102.7 293.1 281.1計 1,362,721 79.1 101.3 319,943 72.6 102.6 234.8 231.8

鋳鉄管 360,018 20.9 104.4 120,740 27.4 110.0 335.4 335.4合計 1,722,739 100.0 101.9 440,683 100.0 103.1 255.8 252.9

* 単価 = 生産金額 / 生産重量経済産業省 生産動態統計より算出

109,819

113,802

115,998

113,934

110,059

116,787

123,362

97,504

118,803

120,573

112,482

109,598

257 266276

264 257276

297

224

283 284263

252

0

50

100

150

200

250

300

350

0

20,000

40,000

60,000

80,000

100,000

120,000

140,000

160,000

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

生産

金額

,億

生産

重量

, トン

月重量,トン 金額,億円

1,311 1,345 1,377 1,345 1,363

2,876 3,179 3,218 3,117 3,199

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

平成22年 平成23年 平成24年 平成25年 平成26年

生産

金額

,億

生産

重量

,トン

年生産重量,トン 生産金額,億円

        経済産業省 生産動態統計より作成図 2.2.2.1 平成26年の球状黒鉛鋳鉄鋳物の生産量推移(鋳鉄管を除く)

     経済産業省 生産動態統計より作成

図 2.2.2.2 平成22年以降の球状黒鉛鋳鉄鋳物生産量と生産額の年間推移(鋳鉄管を除く)

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16 SOKEIZAI Vol.56(2015)No.5

平成26年の素形材産業年報

同1.7%増、その他一般・電気機械用は104千トン、同2.1%増といずれも 2 年ぶりの増加となった。金属工作・加工機械用は10.8千トン、同1.2%減と減少に転じた。その他用は 92千トン、同1.5%減と 3 年連続して減少した。 鋳鉄管を除く生産金額は、3,199億円、同2.6%増と 2年ぶりの増加となった。鋳鉄管は 1,207億円、同10.0%増と大きく増加した。用途別では、43.9%を占める自動車用が 1,933億円、同2.3%増と 2 年ぶりに増加した。11.7%を占める産業機械器具用は 515億円、同4.5%増、その他一般・電気機械用は 279億円、同3.6%増と 2 年ぶりに増加した。 鋳鉄管を除く球状黒鉛鋳鉄の単価は、3 年ぶりに増加に転じた。金属工作・加工機械用およびその他輸送機用を除いて上昇している。球状黒鉛鋳鉄の平成26年の月別生産動向および平成22~26年の生産量および生産金額の推移を図 2. 2. 2. 1および図 2. 2. 2. 2に示す。

(角田悦啓)

 2. 2. 2. 2 技術・研究動向 日本鋳造工学会誌「鋳造工学」における平成26年 1月~12月の鋳鉄関連15報のうち、球状黒鉛鋳鉄に関する研究・技術論文は10報であった。2 回の全国講演大会では鋳鉄関連55報のうち、球状黒鉛鋳鉄に関する研究は 29報が発表された。 機械的性質1)、高温酸化2)や腐食3)に及ぼす成分元素の影響など、球状化剤に含まれる酸素量4)および RE 量と組織および機械的性質との関係5),6)について調査した報告などが発表された。また、薄肉鋳物や厚肉鋳物に関する報告7),8)など、諸性質に及ぼす熱処理および成分元素の効果などやオーステンパ材9)についても報告された。また、溶湯処理技術として、脱 Mn に関する報告10)、溶湯性状を判定する報告11)、鋳造欠陥を測定する技術12)や鋳造方案を策定する技術などが調査された。さらに、新鋳造法13)、複合化技術、異種材との接合技術14),15)やレーザによる表面処理技術16)についての調査などが報告された。 日本鋳造協会の鋳造ジャーナルおよび海外雑誌 AFSでは、球状黒鉛鋳鉄を製造するために RE を低減させる技術17),18)など、鋳造用積層造形技術19)や最近の鋳鉄材の特許20)について紹介された。また、AFS では凝固中の黒鉛膨張に関する研究21)、黒鉛成長形態に関する研究22)やオーステンパ材23)に関する研究についても報告された。

(旗手 稔)

 参考文献1 ) 池田ら:日本鋳造工学会第165回全国講演大会講演概

要集, p.532 ) 山根:日本鋳造工学会第164回全国講演大会講演概要集,

p.483 ) 冨澤ら:日本鋳造工学会第165回全国講演大会講演概

要集, p.604 ) 平原ら:日本鋳造工学会第165回全国講演大会講演概

要集, p.485 ) 近藤ら:日本鋳造工学会第165回全国講演大会講演概

要集, p.1006 ) 戸舘ら:日本鋳造工学会第165回全国講演大会講演概

要集, p.137 ) 船曳ら:日本鋳造工学会第165回全国講演大会講演概

要集, p.148 ) 藤尾ら:日本鋳造工学会第164回全国講演大会講演概

要集, p.49 ) 長船ら:日本鋳造工学会第164回全国講演大会講演概

要集, p.510) 植村ら:日本鋳造工学会第165回全国講演大会講演概

要集, p.9511) 堀川ら:日本鋳造工学会第164回全国講演大会講演概

要集, p.9412) 藤本ら:日本鋳造工学会第165回全国講演大会講演概

要集, p.9713) 宮本ら:日本鋳造工学会第164回全国講演大会講演概

要集, p.9514) 夏ら:日本鋳造工学会第164回全国講演大会講演概要集,

p.9715) 梅谷ら:日本鋳造工学会第164回全国講演大会講演概

要集, p.9916)辻川::素形材, Vol.55 (2014) 4, p.2717)小綿ら:鋳造ジャーナル, Vol.10 (2014) 2, p.2518) R. L. Naro et al. : AFS Transactions, “Effect of Minimiz-

ing Rare Earth Elements during Nodulizing Treatments and the Inoculation of Ductile Iron”, Vol.122 (2014), p.219

19)岡根:鋳造ジャーナル, Vol.10 (2014) 9, p.2320)鹿毛:鋳造ジャーナル, Vol.10 (2014) 9, p.4221) G. Alonso et al. : AFS Transactions,“Kinetics of Graph-

ite Expansion during the solidification of Lameller and Spheroidal Graphite Iron”, Vol.122 (2014), p.237

22) J. Qing et al. : AFS Transactions,“Atomic Level Analysis of Graphite Growth Morphology - A Review -”, Vol.122

(2014), p.26523) R. Aristizabal:AFS Transactions, “Austemperability

of Intercritically Austempered Ductile Iron”, Vol.122(2014), p.279

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鋳 造

Vol.56(2015)No.5 SOKEIZAI

2. 3 鋳鋼品

表 2.3.1.1 機種別鋳鋼品生産実績

機種別

平成 24 年(2012) 平成 25 年(2013) 平成 26 年(2014)生産量(t)

構成比(%)

前年比(%)

生産量(t)

構成比(%)

前年比(%)

生産量(t)

構成比(%)

前年比(%)

ロ ー ル 5,586 2.8 92.4 6,243 3.4 111.8 6,980 4.1 111.8金 型 4,112 2.0 81.3 4,555 2.5 110.8 4,036 2.3 88.6鋳 鋼 管 11,979 5.9 97.1 12,202 6.7 101.9 9,629 5.6 78.9バ ル ブ ・ コ ッ ク 11,227 5.5 97.7 9,842 5.4 87.7 9,361 5.4 95.1自 動 車 10,434 5.1 110.2 10,563 5.8 101.2 10,484 6.1 99.3鉄 道 車 両 2,979 1.5 101.7 2,956 1.6 99.2 2,395 1.4 81.0船 舶 34,384 17.0 78.3 29,998 16.5 87.2 31,345 18.2 104.5土 木 建 設・ 鉱 山 機 械 52,386 25.8 89.1 41,033 22.6 78.3 34,084 19.8 83.1運 搬 機 械 8,348 4.1 131.6 5,382 3.0 64.5 4,029 2.3 74.9破砕機・摩砕機・選別機 13,550 6.7 103.4 13,266 7.3 97.9 13,884 8.1 104.7ポンプ・圧縮機・送風機 5,479 2.7 104.6 5,152 2.8 94.0 5,394 3.1 104.7プ レ ス ・ せ ん 断 機 8,358 4.1 94.9 9,329 5.1 111.6 9,086 5.3 97.4圧 延 機 3,220 1.6 94.5 1,287 0.7 40.0 1,067 0.6 82.9発 電 用 機 器 12,134 6.0 113.1 12,636 7.0 104.1 11,965 6.9 94.7工 業 炉 4,436 2.2 104.4 3,689 2.0 83.2 4,019 2.3 108.9武 器 ・ 航 空 機 408 0.2 88.5 397 0.2 97.3 434 0.3 109.3成 形 機 械 555 0.3 79.7 508 0.3 91.5 773 0.4 152.2各 種 施 設 5,217 2.6 100.5 5,252 2.9 100.7 5,846 3.4 111.3そ の 他 7,921 3.9 80.1 7,389 4.1 93.3 7,491 4.3 101.4合 計 ・ A 202,713 100.0 92.9 181,679 100.0 89.6 172,302 100.0 94.8

国 内 需 要自社用・B 33,430 16.5 82.8 28,426 15.6 85.0 26,807 15.6 94.3外販用 164,348 81.1 95.1 148,252 81.6 90.2 139,267 80.8 93.9

小 計 197,778 97.6 92.8 176,678 97.2 89.3 166,074 96.4 94.0輸 出 4,935 2.4 99.1 5,001 2.8 101.3 6,232 3.6 124.6外販比率(A-B)/A % 83.5 2.0 84.4 0.9 84.4 0.0

出所:経済産業省 生産動態統計

2. 3. 1 産業動向

 平成26年の鋳鋼の生産環境は、25年と比較しアベノミクスによる国内景気の回復により大きく期待されたが、鋳鋼品需要は前年以上に低調に推移した。国内では、昨年から続くマイナス傾向に歯止めがかからず、厳しい状況の 1 年であった。なお、全体的にはリーマン・ショックがあった 22年の水準をも下回り、3 年連続の減少となっている。26年の鋳鋼品の月別生産推移を見ると年初より多少凸凹はあるが、主力の土木建設・鉱山機械は減少が継続し、船舶向けは微増にとどまった。年間を通じてほとんどの月が前年割れであった。その結果として、鋳鋼の平成26年の生産実績は17万2302トンと前年比 5.2%(9,377トン)の減少となり、3 年連続のマイナスとなった。加えて、直近のピークだった平成20年実績に対しては 57.7%程度の水準である。国内需要、輸出別では国内需要が前年比 6.0%減少し、単

体輸出は 24.6%増加した。これは主力機種の国内需要が落ち込みを見せ、円安から輸出向けが増加したことによるものである。しかし、未だ輸出比率は 3.6%と低い水準となっている。表 2. 3. 1. 1は鋳鋼品の機種別生産実績であるが、鋳鋼品の全19需要機種の内、10機種が前年実績を下回り、上回ったのは 9 機種に留まった。 図 2. 3. 1. 1および図 2. 3. 1. 2に鋳鋼品の主要需要機種の生産推移を示した。量産小物鋳鋼品の最大の需要先であり、23年に船舶を抜いて鋳鋼品全体の第 1 位となった土木建設・鉱山機械向けは、以前から続く中国向けの停滞や資源価格下落による鉱山開発案件の減少により、年間を通じて低調で前年実績比 16.9%減だった。また、もう一つの主力機種である船舶向けは、国内造船会社の受注、操業改善により底打ちを見せ同4.5%増加と 6 年ぶりの増加となった。自動車向けは復興需要等公共投資に伴い期待されたが、同 0.7%減とほぼ横ばいで過去 2 年が高い水準だったことから伸びし

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平成26年の素形材産業年報

ろの薄さが出た。その他の主要な需要機種の生産動向では、発電用機器は国内火力発電向けがほぼ一巡したこと等に伴い、同 5.3%減と 3 年ぶりのマイナスとなった。また、破砕機・摩砕機・選別機は復興需要や都市部のビル・住宅建設加速によりセメント需要が活発化したことから同 4.7%増加なった。ただし、セメント生産設備の新設は無く消耗品需要が中心であることから、今後も大きく増加は望めない。 また、図 2. 3. 1. 3は鋳鋼工場数と生産量の推移であるが、生産工場数は前年同様 76工場であった。 一方、平成26年中における鉄スクラップ、ニッケル、フェロクロム、モリブデン、フェロマンガン等の原材料・副資材について、鉄スクラップは韓国向けスクラップ輸出の停滞の影響で、価格逓減傾向が年間を通じて続いた。また、ニッケルなど合金鉄については、世界的な需要に対する供給過剰があり価格は落ち込んだ。ただし、一昨年から続く電力料金の値上げ、重油などエ

ネルギー関連価格や鋳物砂など副資材関係は円安の影響が大きく、高騰を見せた。メーカーにとっては製造コストの大幅な上昇があり、厳しい状態が続いている。

(関山裕介)

2. 3. 2 技術・研究動向

 日本鋳鍛鋼会鋳鋼技術委員会では平成26年 1 月に当会が発行した「鋳鍛鋼業界 NEW ビジョン」に示されている“目指すべき方向性”に沿って各種事業を推進している。具体的には、①シミュレーション技術(更なる実用化)、②操業技術(省エネルギー溶解、欠陥防止)、③造型新技術(人工砂・塗型・バインダー、砂再生)、④作業環境(集塵、防塵)、などのテーマを中心に、委員会並びに傘下部会にて活動を行っている。 以下に、委員会、部会における報告・検討から各社の取り組みおよび技術的対応について紹介する。

(1)品質、コスト改善 a)人工砂関連 当会品質管理研究部会では参画会社の 7 割以上で人工砂が導入されている。部会委員会社による「自社における人工砂使用状況報告」が行われ、各社が人工砂への取り組みを報告し、課題や問題の討議を行った。 機関誌「鋳鋼と鍛鋼」には人工砂関連として

「大型鋳鋼品鋳型における人工砂適用時の焼き付き対策事例」、「造型プロセス、および人工砂転換後の品質事例」、「鋳型乾燥による鋳型温度と鋳型強度への影響」、などの技術資料が掲載された。この中で、「大型鋳鋼品鋳型における人工砂適用時の焼き付き対策事例」では、クロマイト砂、

図 2.3.1.1 主な機種の生産量推移 図 2.3.1.2 主な機種の月別生産量推移

図 2.3.1.3 鋳鋼工場数と生産量

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

H26H25H24H23H22H21H20

生産

量(千

トン

/年

船舶

土木建設・鉱山機械

鋳鋼管

破砕機・摩砕機・選別機

バルブ・コック

発電用機器

H17 H18 H190

500

1000

1500

2000

2500

3000

3500

4000

12月3月2月 4月 5月 6月 10月

生産

量(トン)

11月9月8月7月1月

船舶

土木建設・鉱山機械

自動車

プレス・せん断機

鋳鋼管

発電用機器

77 77 77 76 76 76 76 76 76 76

277 281 293299

198 207

218203

182

172

0

50

100

150

200

250

300

350

0

25

50

75

100

125

150

175

200

鋳鋼生産量

(千トン

/年

工場数

稼動工場数

鋳鋼生産量

H26H25H24H23H22H21H20H17 H18 H19

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鋳 造

Vol.56(2015)No.5 SOKEIZAI

珪砂から人工砂への切り替え検討において、焼結砂に酸化鉄を添加した鋳型が、現在使用しているクロマイト砂と比較しても遜色ない対焼き付き性を有しており、超大型鋳鋼品においても対応できることが確認できた旨が発表された。 b)鋳造シミュレーション関連 本年開催の第37回鋳鋼技術情報交換会に参加した全ての会社(11社)で鋳造シミュレーションが何らかの形で実施されており、年々その重要性が増していることがわかる。シミュレーションの使用は、凝固、湯流れ解析が主であるが、一部の会社では熱応力解析が行われている。解析精度向上への取り組みとして、実体とシミュレーション結果の照合実施、物性値の合わせ込み実施、凝固冷却カーブの確認、押し湯健全度の確認、などが挙げられた。 c)製鋼関連 当会鋳鋼 ・ 製鋼研究部会では、「耐火物改善」をテーマに事例が報告された。その中でアーク炉において、炉の天井を煉瓦から水冷パネルに変更したことにより、施工日数の削減並びに天井寿命の延長を行った事例の報告があった。

(2)技術・技能伝承教育 多くの会社で作業員の年齢構成が、経験豊富な 40歳代が少なく、50歳代以上と 30歳代以下とで年齢ギャップが生じている状況が続いている中で、各社経験の少ない若手を対象とした教育を OJT を中心に推進されている。具体的取り組みとして、鋳物学校などの専門訓練部門を設置して、溶接や仕上げなどの教育を実施している事例やベテランと若手作業者がペアになるように配置してマンツーマンによる指導を行っている例などが挙げられた。その他、技能コンクール(旋盤、仕上げ、溶接、鋳造)の開催、資格取得の指導などを実施している会社もある。また、基礎技能実習等の実施例として、部門を超えた様々な活動を通して技術 ・ 技能継承の軸となる“考え方”や“感性”を定着させることで効率的に技術・技能継承を進めることを目的とした取り組みの一環として、ある作業について、実際に撮影した

作業の動画と作業標準とを見比べて、「作業自体に対する改善すべき点」、「作業標準と実際の作業の齟齬」、「作業標準の不備」などの議論を通して実作業に則し、かつ誰が見てもわかる作業標準へのブラッシュアップを行っているとの報告もあった。

(3)安全対策および職場環境改善 溶解炉での安全対策について、突沸防止に対して、材料装入方法や作業者の立ち位置などについて教育を行っている。その他、漏鋼を防止対策として、取鍋の鉄皮温度の連続測定や炉底耐火材の厚み測定を行って傾向管理を実施している事例もあった。また、炉への転落防止対策としては、ほとんどの会社で安全柵が設置されている。加えて「何かが起こった場合に素早く対処できるように炉前作業は必ず二人一組で行う」、「炉前の作業スペースを広げた」などの報告があった。 次に、溶接作業場の環境改善対策における検討では、溶接ヒュームの回収について、自動溶接において発生するヒュームに対して、溶接機の上方に集塵機と直結した傘を付けて回収することにより工場内に拡散しないような対策を取っている事例の報告があった。その他、安全対策として難燃作業服の着用、夏場の暑熱対策としてスポットクーラーの使用などが挙げられた。

(4) ドイツ鋳鋼工場訪問並びに欧州鋳造協会鋳鋼分科会参加

 ドイツ鋳造協会及び同協会メンバーの鋳鋼メーカーとの交流の活性化と最新動向の把握を目的として、10月29日から11月 9 日の日程でドイツ鋳造協会並びに鋳鋼工場 5 社及び 1 大学の訪問に加え、トルコで開催された CAEF(Committee Associations of Euro Foundries)の鋳鋼分科会の会議に出席した(18か国から 43社、5 協会が出席)。ドイツ鋳鋼会社訪問の実施は 2006年以来 8 年振りであった(2009年にはドイツを除く欧州主要鋳鋼会社の訪問を実施している)。

(加納信雄)

 参考文献1 )日本鋳鍛鋼会:第197,198回鋳鋼技術委員会資料2 )日本鋳鍛鋼会:鋳鋼と鍛鋼 (2014) No.540, 541

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平成26年の素形材産業年報

2. 4 銅合金鋳物

2. 4. 1 産業動向

 平成23年から平成26年における銅合金鋳物の生産量を用途別に表 2. 4. 1. 1に示す。平成26年の生産量は 77,088トンで、前年比105.0%であり、増加に転じた。平成23年以降はほぼ 7 万トン台である。生産金額も 95,640百万円と前年比109.0%と増加している。自己消費量は 20,589トンで、全生産量の 26.7%を占めており、生産量は前年比 98.5%で減少している。なお、銅合金鋳物用地金の生産は 75,587トンであった。銅合金鋳物の生産量は鉄系鋳物を含む全鋳造品 5,559,486トンの 1.4%に相当する。 生産量を用途別にみると、管継手を含むバルブ・コック用途が 28,199トンであり、全体の 36.6%を占め、前年比 103.7%で、銅合金鋳物の中では一番多い。次いで輸送機械用途が 19,783トンで全体の 25.7%で多く、前年比 104.4%と増加した。産業機械器具用途は 13,339トンで全体の 17.3%であり、前年比 104.3%と増加し

た。軸受メタル用途の生産量は 8,092トンで全体の 10.5 % であり、前年比は 115.2%と最も高い伸びを示した。これら一般機械用途全体の生産量合計は 49,630トンで、全体の 64.4%にあたる。電気機械用を含むその他の用途の生産量は 7,675トンで全体の10.0%、前年比は102.8%であった。銅合金鋳物の生産量は全ての分野で増加しているものの、平成19年以前の10万トン台への回復には至っていない。生産量の増加により生産金額も全ての分野の用途で前年より増加している。用途別鋳造品の平均単価を表 2. 4. 1. 2(表 2. 4. 1. 1 より算出)に示す。全用途の単純平均単価は 1,241 円/kg であり、前年比 103.8%に増加した。生産金額が最も多いバルブ・コック用途では 1,134 円/kg で一番低いが前年比は103.3%に増加した。産業機械器具用途が 1,374 円/kgで最も高いものの、前年比 99.4%に低下した。次いで軸受メタルが 1,262 円/kg で高く、前年比 99.3%であった。輸送機械用途は 1,254 円/kg で、前年比 110.7%と最も高い伸びを示した。

表 2.4.1.1 銅合金鋳物の用途別生産量の推移

年生産量

用途別

平成 23 年(2011) 平成 24 年(2012) 平成 25 年(2013) 平成 26 年(2014)

生産量(t)

前年比(%)

構成比(%)

生産量(t)

前年比(%)

構成比(%)

生産量(t)

前年比(%)

構成比(%)

生産量(t)

前年比(%)

構成比(%)

金額(百万円)

金額前年比(%)

一般機械用

産業機械器具用 15,060 107.3 18.1 14,271 94.8 17.9 12,783 89.6 17.4 13,339 104.3 17.3 18,329 103.7 軸受メタル用 8,358 100.1 10.1 7,883 94.3 9.9 7,025 89.1 9.6 8,092 115.2 10.5 10,210 114.3 バルブ・コック用 27,802 104.4 33.4 26,805 96.4 33.7 27,199 101.5 37.0 28,199 103.7 36.6 31,973 107.0

(小計) 51,220 104.5 61.6 48,960 95.6 61.5 47,007 96.0 64.0 49,630 105.6 64.4 60,513 107.1 輸送機械用 23,091 113.7 27.8 22,706 98.3 28.5 18,958 83.5 25.8 19,783 104.4 25.7 24,807 115.4 その他用 8,851 88.9 10.6 7,906 89.3 9.9 7,469 94.5 10.2 7,675 102.8 10.0 10,320 105.7 合 計 83,163 104.9 100.0 79,571 95.7 100.0 73,434 92.3 100.0 77,088 105.0 100.0 95,640 109.0

出所:経済産業省 生産動態統計

表 2.4.1.2 銅合金鋳物の用途別製品の単価

年生産量

用途別

平成 23 年の単価 平成 24 年の単価 平成 25 年の単価 平成 26 年の単価金額

(円 /kg)前年比(%)

金額(円 /kg)

前年比(%)

金額(円 /kg)

前年比(%)

金額(円 /kg)

前年比(%)

一般機械用

産業機械器具用 1,380 109.0 1,341 97.2 1,383 103.1 1,374 99.4 軸受メタル用 1,360 106.9 1,229 90.4 1,271 103.4 1,262 99.3 バルブ・コック用 1,192 111.0 1,121 94.0 1,098 97.9 1,134 103.3

(小計) 1,275 109.6 1,202 94.3 1,202 100.0 1,219 101.4 輸送機械用 1,355 103.0 1,195 88.2 1,133 94.8 1,254 110.7 その他用 1,291 107.0 1,268 98.2 1,307 103.1 1,345 102.9 合 計 1,299 107.5 1,207 92.9 1,195 99.0 1,241 103.8

経済産業省 生産動態統計データより算出

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鋳 造

Vol.56(2015)No.5 SOKEIZAI

2. 4. 2 技術・研究動向

 青山ら1)は、青銅鋳物に向けた凍結鋳造システムの開発について、凍結鋳型における湯流れ性、鉛フリー銅合金の冷却挙動、凍結中子を使用した環境への取り組み、実用化に至る技術報告を行った。凍結鋳型における溶湯の湯流れ性について、凍結鋳型ではバインダーなどの添加物を含まないため、従来の砂型に比べて通気度が 3倍程度に向上するものの、凍結鋳型は水分をより多く含有するため、注湯時に発生する水蒸気による鋳型内圧力の増大とこれにより流動性が阻害される減少を報告している。凍結鋳型による冷却挙動について、鉛フリー銅合金 CAC902 を用いた鋳造実験により生砂型との比較を行い、組織の結晶粒サイズが微細化することを実験的に確認した。これは水蒸気の生成量と散逸挙動によって凍結鋳型の冷却速度は変化し、水分が多い凍結鋳型で粗い砂を用いた場合には鋳物の冷却速度が速くなることを説明した。凍結鋳型を銅合金鋳造に適用することにより、型ばらし工程の削減、産業廃棄物の削減、作業環境の向上などの効果を報告した。 後藤ら2)は、電機部品用純銅鋳物の変形挙動に対する影響因子について、純銅鋳物の鋳造方案や脱酸処理が引張変形挙動に及ぼす影響を調査し、変形時の割れ発生の影響因子を検討した。引張試験の結果は、鋳造方案や脱酸処理の有無により、破断伸びが小さい分布域と破断伸びが大きい分布域に分かれることを報告し、破面観察の結果から、破断伸びが小さい場合には、粒界近傍の Cu-Cu2O 共晶組織の存在に伴う脆性的な破面も観察され、脱酸処理の有無や脱酸硬化のばらつきが純銅鋳物の変形挙動及び割れ発生に対する因子であると考察している。 平田ら2)は、りん青銅鋳物の抗菌性について、Cu-0~7Sn-0.09P合金について、JIS L 1902 に準じたハロー試験を行い、黄色ブドウ球菌、大腸菌、緑膿菌のそれぞれの菌種について、すず量と抗菌性の関係を調べた。その結果、スズを添加することでいずれの菌に対しても抗菌性の向上が見込まれることを報告している。 阿河ら2)は、銅合金鋳物の TIG溶接継手強度に及ぼす予熱の影響について CAC403 銅合金鋳物のV形突き合わせ TIG溶接を行い報告した。予熱温度とともに溶接継手の引張強さは増加し、500℃の予熱温度では継手効率 97%を報告している。溶接継手の衝撃値と予熱温度の関係について、溶接金属の中央部では、予熱温度とともに衝撃値は増加し、500℃の予熱温度では母材の衝撃値により高い値になることを報告している。

 小松ら2)は、高力黄銅のすべり摩耗について、軸受材料等の摩耗の定量評価を目的に、摩耗量の経時変化を精度良く測定することを試みた。高力黄銅鋳物のすべり摩耗特性を円錐状端面を有する試験片を用い、ピンオンディスク摩耗試験により評価し、耐摩耗性の経時変化に及ぼす荷重の影響を定量的に評価した。その結果、摩耗量は、いずれの荷重においてもほぼ時間の1/2 乗に比例して増加することから摩耗式 h=Kt1/2 に従い、摩耗量の経時変化の近似式を示した。 平井ら3)は、硫化物分散型摺動部材用鉛フリー銅合金の開発について、Cu-10Sn-0.55S-0.15Fe-0.02P合金の乾燥状態の摩擦特性をボールオンディスク試験で評価し、耐焼き付き性、摩擦特性の硫化物分散の効果を調べた。CAC502C 材を比較材として評価した結果、硫化物を含む試験片では、低摩擦速度では摩擦係数が低く安定しており、摩擦速度とともに摩擦係数が上昇することを確認した。また焼き付き性についても評価を行い、硫化物の分散の効果により、摩擦係数は低く安定し、耐焼き付き性も向上することが報告された。このような摩擦特性の向上は、分散された硫化物が摩擦試験中に摩擦面に膜を形成し相手材への銅成分の移着が抑制されたためと考察している。 舟木ら3)は、硫黄を含む Cu-Sn-Ni-Bi-S 合金の組織形態と時効硬化特性に及ぼす Bi 添加の影響について調べた。Cu-10.6Sn-1.52Ni-2.93Bi-0.3S 合金及び Biを 1 %に減じた低 Bi 組成、Biフリー組成それぞれについて、溶体化処理及び時効温度を変化させて等温時効処理を行い、硬さ及び熱処理組織に対する Bi の影響を調べた。その結果、時効硬化線図から、ビスマス量が多いほど最高硬さや硬さ上昇幅が大きくなることを明らかにした。また、時効時間と硬さの関係から、時効の初期段階から硬さが大幅に上昇していることを確認し、析出効果とは別のメカニズムでの硬さ上昇であることを示し、組織観察の結果から等温マルテンサイト変態による硬化を考察している。

(岡根利光) 参考文献1 )青山憲,他 : 鋳造工学,86 (2014) 9, 734.2 ) 日本鋳造工学会第164回全国講演大会講演概要集(2014.

5).3 ) 日本鋳造工学会第165回全国講演大会講演概要集(2014.

10).

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平成26年の素形材産業年報

2. 5 アルミニウム鋳物(ダイカストを除く)

2. 5. 1 産業動向

 アルミニウム鋳物(砂型鋳造、重力金型鋳造、低圧鋳造、高圧鋳造、スクイズ鋳造等の鋳造品で、ダイカストを除く)の用途別生産量の平成23年から26年までの推移を表 2. 5. 1. 1に示す。アルミニウム鋳物の生産量は、平成20年以前は 40万トン台であったが、平成18 年 の 435,420ト ン を ピ ー ク に、 平 成21年 に は、291,923 トンまで減少した。平成22年に 38万トンまで戻り、平成 24 年には 40 万トン台まで回復した。平成26年は 417,700トンで、前年比 100.9%とわずかに増加した。自己消費量は、244,106トンで、前年比 99.1%であり、内製率は、58.4%を占める。アルミニウム鋳物の内製率は他の素形材品目に比較して高く、また、年々内製率が増加している。アルミニウム鋳物の生産量は鉄系を含めた全鋳造品の生産量 5,559,486トンの 7.5%を占め、生産金額は 14.2%を占めている。なお、精密鋳造によるアルミニウム鋳物の生産は 602,644 kgで前年比 93.1%と減少した。アルミニウム鋳物用地金の生産は、新地金が 159,436トン、二次地金が 339,384トンで、合計 498,820トンであった。前年と比較して、新地金が減少し、二次地金が増加している。

 アルミニウム鋳物の平成26年の用途別生産量と構成比率を見ると、自動車用途が 390,507トンで前年比100.7%とわずかに増加し、全生産量の 93.5%と高い割合を占めている。一般機械用途は 8,315トンで前年比107.1%と増加し、全体の 2.0%であった。自動車以外の輸送機械用途は 7,110トンで前年比 106.2%、全体の1.7%、電気機械用途を含むその他の用途が 11,768トンで前年比 102.5%、全体の 2.8%であった。全ての用途分野で前年を上回っている。アルミニウム鋳物の用途では、平成10年頃に自動車用が 90%を超えてから、高い比率を維持し続けている。また、生産金額においても全ての用途分野で前年を超えている。 アルミニウム鋳物の単価を表 2. 5. 1. 2に示す。平成26年の全用途の平均単価は 676 円/kg で、昨年より上昇し、平成22年、23年の値に近づいた。自動車以外の輸送機械用鋳物の単価が最も高く、1,955 円/kg、次いで一般機械用鋳物が 1,264 円/kg であった。自動車用鋳物の単価は最も低く、632 円/kg であるが、前年よりも上昇した。

表 2.5.1.1 アルミニウム鋳物の用途別生産量の推移(ダイカストを除く)

生産量

用途別

平成 23 年(2011) 平成 24 年(2012) 平成 25 年(2013) 平成 26 年(2014)

生産量(t)

前年比(%)

構成比(%)

生産量(t)

前年比(%)

構成比(%)

生産量(t)

前年比(%)

構成比(%)

生産量(t)

前年比(%)

構成比(%)

金額(百万円)

金額前年比(%)

一般機械用 8,577 99.9 2.2 7,624 88.9 1.8 7,765 101.8 1.9 8,315 107.1 2.0 10,510 106.2

輸送 

機械用

自動車用 358,994 99.2 93.5 396,478 110.4 94.3 387,865 97.8 93.7 390,507 100.7 93.5 246,747 103.7その他用 5,592 102.0 1.5 5,662 101.3 1.3 6,692 118.2 1.6 7,110 106.2 1.7 13,901 105.1

(小計) 364,587 99.2 95.0 402,140 110.3 95.6 394,557 98.1 95.3 397,617 100.8 95.2 260,648 103.8その他用 10,814 100.0 2.8 10,766 99.6 2.6 11,482 106.7 2.8 11,768 102.5 2.8 11,311 106.2合  計 383,978 99.3 100.0 420,530 109.5 100.0 413,804 98.4 100.0 417,700 100.9 100.0 282,470 103.9

自己消費量(t) 213,094 100.5 55.5 236,787 111.1 56.3 246,291 104.0 59.5 244,106 99.1 58.4 - -出所:経済産業省 生産動態統計

表 2.5.1.2 アルミニウム鋳物の主要用途別重量単価の推移

用途別製品重量単価(円 /kg)

平成 23 年 平成 24 年 平成 25 年 平成 26 年一般機械用品 1,217 1,289 1,275 1,264自動車用品 630 610 614 632

その他輸送機械用品 1,994 2,095 1,977 1,955その他の用品 962 1,011 927 961

全体平均 673 653 657 676経済産業省 生産動態統計データより算出

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鋳 造

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2. 5. 2 技術・研究動向

 平成26年(2014年)のアルミニウム鋳造に関する技術開発や研究は、主に、アルミニウムの溶湯や溶解関係、セミソリッド鋳造法、熱処理、凝固割れ、ポーラス材料、双ロール鋳造法などについて行われた。基礎的な研究が多く、新しい技術に関するものはほとんどない。 森中らは、Al-7%Si 合金中の P の影響について系統的に調査している1)~ 3)。鋳物中のポロシティは、P を含まない合金では生成しにくいが、P を含む合金の場合は生成しやすい。この理由として、溶湯中に固体で存在する AlP と溶湯との界面がポロシティ生成のサイトとして働くことと共晶セルの生成と残留液相の挙動に関係するとしている1)。また、Al-7%Si 合金鋳物のP 量を 0 ppm、8 ppm、13ppmと変化させて、機械的性質を評価した。P を含む場合は非改良組織となり、Pを含まない場合は自己改良組織となる。0 ppmP においては、P を含む場合と比較して、伸びの値が飛躍的に向上した4)。AC4CH合金の機械的性質の改善を目的に脱りん処理の検討を行った。工業用の電気炉を用いて、市販の AC4CH合金地金 500kgを溶解し、Na添加用フラックスを添加し、回転翼脱ガス装置を用いて溶湯処理を行った。この方法により、りん量、ガス量、介在物量を同時に低減することができ、溶湯中の 12ppm のP を 2 ppm に低減することができた。また、長時間の溶湯保持により、黒鉛るつぼからのりんの混入が認められ、P 量は 2 ppm から 8 ppm に上昇した。このようなプロセスを用いることにより、工業的に脱りんすることが可能であることが示された 2)。 近年、溶湯中の介在物が問題になるケースが多く、簡便な介在物評価法が求められている。介在物の評価法として、PoDFA 法が良く知られているが、介在物を観察者が目視で評価することから、介在物計測技能を持つ観察者でなければ評価することができなく、また評価に時間がかかることが問題であった。日軽エムシーアルミと日本軽金属のグループが、PoDFA 法の介在物評価に画像処理を用いる技術を開発した 5)~ 8)。鋳物・ダイカスト用アルミニウム合金の介在物を画像処理システムで計測する評価技術を確立し、計測された介在物量と組織の見た目が概ね一致した 5)。PoDFA 法で観察される微細介在物は K-mold 法で観察される介在物と相関は認められなかったが、酸化被膜長は K-mold法にて観察される介在物と相関があることが明らかになった 6)。また、画像処理システムの開発により、TiB2 や MgO、Al4C3 の抽出も可能となった 7),8)。

 岡田らは、「るつぼ式省エネルギー型アルミニウム合金リサイクル炉」を開発した 9)。この炉を用いると、水分、油分あるいは塗装などの樹脂分の付着した様々な形状のアルミニウムスクラップを前処理することなく、炉 1 基で無煙・無臭で再生可能である。また、再生したアルミニウムの回収歩留まりは 90~93%と、普通のるつぼ溶解炉より高いことが明らかになった。 村上らは、AC4CH 合金の 700℃の液体状態から590℃の固液共存状態まで冷却する間に正弦波の機械振動を加えることにより固液共存スラリーを得る方法を用いて、振動周波数、加速度振幅、速度振幅、変位振幅といった振動条件がスラリー中の固相粒子の形状に与える影響について明らかにした10)。さらに、機械振動付与によって作製した AC4CH 合金セミソリッドスラリーの流動性をダイカストマシンを用いて評価した11)。また、スラリーがスリーブから金型へ流入する入口部分にゲートを設けることにより、せん断速度の影響を調査した。機械振動付与によって作製したスラリーは、せん断速度が小さい場合では液相状態で成形する場合の 25~40%程度の流動性であるが、せん断速度を増加させることによりスラリー中の初晶 -Al 相が微細粒状化し、流動性は 30%程度向上することが明らかになった。 頃安は、消失模型鋳造法におけるアルミニウム合金溶湯の湯流れ状況に及ぼす鋳造方案と鋳枠内減圧の影響を調べるために、通気度の異なる 3 種類の塗型を用いて平板型のアルミニウム合金鋳物を鋳造し、到達時間を測定した 12)。塗型通気度が大きい方が、また減圧条件下の方が溶湯到達時間は短くなるが、塗型通気度が大きくなっても到達時間はそれに反比例して小さくなることはなかった。 アルミニウム合金鋳物の熱処理に関する研究も行われている。小林らは、AC4CH 合金鋳物のT6 処理に、流動層炉を用いる検討を行った 13)。流動層炉を用いることにより、急速昇温が可能な従来の塩浴(溶体化処理)・オイルバス(時効硬化処理)の組み合わせと比較して、同等の材料特性が得られることが明らかになった。一方、猿渡らは、高周波誘導加熱装置を用いた高温短時間溶体化処理の検討を行っている 14)。AC4CH合金を 40℃/s の昇温速度で 560℃まで加熱した後、3 min の溶体化処理を施した試料では、初晶 -Al 相の硬さ及び 0.2%耐力が鋳放し状態と比較して 20%程度増大した。3 min 以降では、硬さ及び 0.2%耐力は飽和傾向を示し、電気炉処理材と同等となった。破断伸びは 3 min の溶体化時間にかけて顕著に増大し、30min

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平成26年の素形材産業年報

の溶体化処理時間で電気炉処理材と同等となった。 軽量構造材料として、その優れた機械的性質から方向性気孔を有するポーラスアルミニウム合金が注目されている。林田らは、方向性気孔を有するポーラス金属を作製する簡易的な方法を考案した 15)。アルミニウムパイプを Al-Cu 合金の液相もしくは半溶融スラリー基材に浸漬することにより、方向性気孔を有するポーラスアルミニウム合金を作製した。基材からパイプの結晶粒界への Cu の拡散はパイプ粒界付近の初晶 の液相線温度を下げ、結晶粒界付近が溶解・凝固することにより、パイプと基材が金属学的に接合された。 溶湯から直接薄板の作製が可能で、省工程、省エネルギー、急冷凝固などの利点がある双ロールキャスト法の開発がなされている。羽賀は、アルミニウム合金用の縦型双ロールキャスタを開発し、その特性を調査した 16)。熱伝導率が高い銅製ロールを使用し、溶湯とロール間の熱伝達の抵抗となる離型剤を使用しないことにより、高冷却能と高ロール周速を得た。AC3A 合金を用い、厚さ 1.5~3.6mmの板を 30~90m/minの速度で鋳造することができた。これは、一般的なアルミニウム合金用双ロールキャスタの 10倍以上の速度であった。得られた合金板は展伸用アルミニウム合金に匹敵する深絞り性が得られた。一方、中村らは、タンデム式縦型双ロールキャスタを用いて、A4045/A3003/A4045 合金クラッド材を鋳造した 17),18)。3 層クラッド材の接合界面は、明瞭かつ平滑であった。芯材と皮材の接合界面には共晶 Si 粒子と Al-Mn 系分散相が存在しない厚さ約 1 µm の層状領域が存在していた。また、本工法で作製したクラッド材と汎用的な熱間圧延接合法で作製したクラッド材の特性を比較した。板厚

0.17mm まで冷間圧延し、400℃で 2hの焼なまし後の双ロール材の 0.2%耐力、引張強さ、破断ひずみは同じ焼なましを行った熱延材に比べて高かった。また、板厚 0.10mm まで圧延し、600℃で 3 minのろう付加熱を行った熱延材と双ロール材はほぼ同等の引張特性を示した。

(神戸洋史)

 参考文献1 )森中真行,他:鋳造工学,86 (2014) 9, 703.2 )森中真行,他:鋳造工学,86 (2014) 10, 781.3 )森中真行,他:鋳造工学,86 (2014)11, 823.4 )豊田充潤,他:鋳造工学,86 (2014) 11, 832.5 ) 深谷勝己,他:軽金属学会第126回春期大会概要,(2014),

93.6 ) 多田大介,他:軽金属学会第126回春期大会概要,(2014),

95.7 ) 磯部智洋,他:軽金属学会第126回春期大会概要,(2014),

97.8 ) 金暉,他:軽金属学会第126回春期大会概要,(2014),

99.9 )岡田民雄,他:鋳造工学,86 (2014), 10, 788.10)村上雄一郎,他:鋳造工学,86 (2014), 9, 728.11)村上雄一郎,他:鋳造工学,86 (2014), 10, 773.12)頃安貞利:鋳造工学,86 (2014), 6, 447.13)小林正和,他:鋳造工学,86 (2014), 3, 209.14)猿渡直洋,他:鋳造工学,86 (2014), 7, 523.15)林田達郎,他:軽金属,64 (2014), 2, 49.16)羽賀俊雄:鋳造工学,86 (2014), 1, 47.17)中村亮司,他:鋳造工学,86 (2014), 3, 223.18)中村亮司,他:軽金属,64 (2014), 9, 399.

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鋳 造

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2. 6 ダイカスト

2. 6. 1 産業動向

  平 成26年(2014年 )の ダ イ カ ス ト 生 産 量 は、表2. 6. 1. 1に示すように 1,000,260tで、平成25年(2013年)に比較して約1.54万 t(約1.6%)増加し、100万 t 台を回復した。また、生産金額は 586,720百万円で前年の568,744百万円より 3.2%増加した。 合金別の生産量は、アルミニウム合金ダイカストが974,658tで対前年比 101.7%と増加したが、亜鉛合金ダイカストは 21,008tで対前年比 96.8%と減少、その他のダイカストの生産量は 4,594tで対前年比 99.2%とほぼ横ばいであった。合金別の生産量の構成比は、アルミニウム合金が 97.4%、亜鉛合金が 2.1%、その他の合金が 0.5%で 2013年と同じとなった。 合金別の生産金額は、アルミニウム合金ダイカストが 552,424百万円で対前年比 103.7%と増加し、亜鉛合金ダイカストが 30,406百万円で対前年比 94.7%と減少した。また、その他の合金の生産金額は、3,890百万円で対前年比105.1%と増加した。また、合金別の生産金額の構成比率は、アルミニウム合金が 94.2%、亜鉛合金が 5.2%、その他の合金が 0.7%であった。

 1950年以降の生産量の推移を表 2. 6. 1. 2および図2. 6. 1. 1に示す。ダイカスト全体の生産量は、1960年代半ば以降に自動車産業の発展に伴って増加した。第一次、第二次オイルショックおよびバブル崩壊で一時的に生産量が減少した時期があったが、マクロ的には右肩上がりに増加してきた。特に 2002年以降の生産量は、著しい

図 2.6.1.1 ダイカストの生産量推移

表 2.6.1.2 ダイカスト合金別生産量推移

年 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2012 2013 2014ダイカスト生産量(t) 1,244 40,309 220,421 433,910 752,035 833,223 980,850 1,006,286 984,842 1,000,260

構成比(%)

アルミニウム 59.6 66.8 71.5 85.1 91.8 96.5 97.2 96.8 97.3 97.4 974,658t亜鉛 23.0 30.1 26.9 14.1 7.5 3.0 2.3 2.7 2.2 2.1 21,008t

その他 17.4 3.1 1.6 0.8 0.7 0.6 0.5 0.5 0.5 0.5 4,594t

表 2.6.1.1 ダイカストの合金別、用途別生産量

合金 年合 計 一般機械用 電気機械用 自動車用 二輪自動車用 その他用

自己消費生産量

(t)金額

(百万円)生産量(t)

金額(百万円)

生産量(t)

金額(百万円)

生産量(t)

金額(百万円)

生産量(t)

金額(百万円)

生産量(t)

金額(百万円)

アルミニウム

2014 974,658 552,424 29,098 23,002 17,737 20,292 869,018 468,107 28,592 19,188 30,212 21,834 317,2012013 958,503 532,851 32,866 24,577 17,508 19,907 851,841 448,879 28,720 19,390 27,568 20,099 309,015

前年比 101.7% 103.7% 88.5% 93.6% 101.3% 101.9% 102.0% 104.3% 99.6% 99.0% 109.6% 108.6% 102.6%

亜鉛2014 21,008 30,406 11,834 23,008 9,174 7,398 8,9352013 21,707 32,121 12,615 24,673 9,092 7,448 9,311

前年比 96.8% 94.7% 93.8% 93.3% 100.9% 99.3% 96.0%

その他

2014 4,594 3,8902013 4,632 3,702

前年比 99.2% 105.1%

合計2014 1,000,260 586,7202013 984,842 568,674

前年比 101.6% 103.2%

0

2

4

6

8

10

12

0

20

40

60

80

100

120

1950

1960

1970

1980

1990

2000

2010

その他の合金生産量

(万t)

アルミニウム合金,亜鉛合金生産量

(万t)

西暦

合計

アルミニウム合金

亜鉛合金

その他

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26 SOKEIZAI Vol.56(2015)No.5

平成26年の素形材産業年報

伸びを示し、自動車の輸出が大変好調なことに牽引されたものであった。しかし、2007年にアメリカで発生したサブプライムローン問題、2008年秋のリーマン・ブラザーズの経営破綻によって、世界的な金融危機に発展し、世界経済が急速な縮小を余儀なくされ、2009 年のダイカスト生産量は急減した。2010年には自動車、家電などの購入に対する政府の補助金の支給による需要増や、中国を始めとする海外の急激な回復による生産増が影響してV字に近い回復を見せた。しかし、翌 2011年3 月に発生した東日本大震災の影響で再び生産量が低下した。2012年以降は 100万 t 前後で推移している。 合金別では、構成比率の高いアルミニウム合金が2007年までは順調に増加し 110万 t を超えたが、2011年には 70万 t 近くまで大幅に低下し、翌年は再び回復して 100万 t 近くまで戻している 2014年はピーク時

(2007年)の 87.2%の生産量であった。亜鉛合金に関しては1973年以降徐々に減少を続けており、2014年はピーク時(1973年)の 28.4%であった。その他の合金については、2000年以降急増していたが、2004年以降減少を続け 2014 年はピーク時(2003年)の 47.6%であった。 2014年のアルミニウム合金ダイカストの用途別生産量は 2013年に比べて、自動車用、電気機械用が僅かに増加したが、その他用が大幅に増加した。一方、二輪自動車用、一般機械用は減少し、特に一般機械用は11.5%と大幅に減少した。また、自己消費(内製分)は2.6%増加した。亜鉛合金ダイカストの用途別生産量は、2013年に比較して自動車用が 6.2%減少し、その他用は0.9%と僅かであるが増加した。また、自己消費は 2013年に比較して 4.0%減少した。 2000年以降の用途別構成比の変化を図 2. 6. 1. 2に合金ごとに示す。アルミニウム合金の 2014年の構成比率は自動車用が 89.2%で 2013年の 88.9%に比べて僅かに増加した。自動車以外の用途の構成比率は、電気機械用は横ばいであったが、その他用が僅かな増加、一般機械用、二輪自動車用は減少で増加であった。特に一般機械用は、3.4%から 3.0%に減少した。亜鉛合金では、自動車用の比率が年々増加する傾向にあったが、2014年では自動車用が 56.3%、その他用が 43.7%で、2013年に比較して自動車用の割合が減少した。 1980年以降におけるダイカストのキログラム当たり平均価格の推移を合金別に表 2. 6. 1. 3、図 2. 6. 1. 3に

図 2.6.1.2 ダイカストの用途別生産比率推移

図 2.6.1.3 ダイカストのキログラムあたりの平均価格推移

表 2.6.1.3 ダイカストのキログラム当たり平均価格の推移          (円/kg)年 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2012 2013 2014 ’14/ ’13

アルミニウム合金 752 707 654 603 532 532 557 552 556 567 102.0%亜 鉛 合 金 854 1,094 1,141 1,328 1,046 1,313 1,610 1,668 1,480 1,447 97.8%そ  の  他 961 919 814 1,012 1,289 1,157 1001 842 800 847 105.8%

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

自動車 一般機械 電気機械 二輪自動車 その他

自動車 その他

構成比率

構成比率

暦年

100%

アルミニウム合金ダイカスト

亜鉛合金ダイカスト

暦年

0%

20%

40%

60%

80%

100%

0%

20%

40%

60%

80%

1980

1500

1000

500

01985 1990 1995 2015201020052000

アルミニウム

亜鉛

その他

価格(円/kg)

暦年

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鋳 造

Vol.56(2015)No.5 SOKEIZAI

示す。アルミニウム合金は、1980年以降価格が低下し続けており、2002年では 514円/kg であったが、原材料価格が上昇したために 2006年以降ほぼ横這い状態で、2014 年は 567円/kg で僅かに増加した。一方、亜鉛合金は、1995年まで上昇し続けて 1996年に急激に低下した後はほぼ横這いで 2000年以降は上昇し続けていたが、2014年は 1,447円/kg と減少に転じた。その他の合金は1999年以降 1,100~1,200円/kg で推移していたが 2007年以降低下傾向にあり 2014年は 847 円/kg であった。

2. 6. 2 技術動向

 2014年は、ダイカスト生産量が 100万 t 台を回復するとともに、様々な生産技術が開発された。これらの技術がさらなる品質の向上やダイカストとの新たなニーズ発掘につながることが期待される。ここでは、2014年に開催された日本ダイカスト会議の論文集を中心にダイカストの生産技術に関するトピックスを紹介する。

(1)ダイカストマシン 東洋機械金属では電動サーボと油圧アキュムレータを組み合わせたハイブリットマシン、電動サーボモータを高速射出装置に採用した全電動ダイカストマシンなどを開発している1)。小型機においては従来の油圧ダイカストマシンと比較しても、これらの電動ダイカストマシンの射出性能は遜色ない。また、電力消費量は、油圧ダイカストマシンに比較してハイブリッド機は 30~40%、完全電動機は 12~16%の消費電力となり、大幅な省エネが可能となった。 また、新しいコンセプトのダイカストマシンが開発あるいは提案されている。宇部興産機械では、従来の低圧鋳造法にダイカストで使用されているビスケット加圧機構を組み合わせた極低圧充填鋳造法を開発している1)。充填時には 0.1MPaの極低圧ガスを溶湯に作用させてキャビティに充填し、充填完了後にはセンターピンにより20MPaの圧力で加圧する。この方法により、大物のサスペンションメンバーの試作を行っている。 筑波ダイカスト工業では、現在コールドチャンバーで生産している超薄肉マグネシウム合金ダイカストをホットチャンバーで鋳造するための考え方について報告している1)。本来マグネシウム合金は、ホットチャンバーでの鋳造が有利であるが、現状のダイカストマシンの機構では問題点が多い。そこで、プランジャーチップの形状、グースネックの形状などを見直すことで、これらの問題点を解決できる可能性を指摘している。

(2)ダイカスト金型技術 日本エリコンバルザースでは、低圧ガス窒化により硬さを高くした表面に、さらに PVD によりナノメートルレベルの TiAlN を積層コーティングさせることで硬さを徐々に低下させた傾斜コーティング技術を開発した 1)。これにより母材の靱性を損なわずにコーティングの密着力を向上させることができ、ヒートチェックの発生を抑える効果が得られる。 オリエンタルエンヂニアリングでは、焼入れ・焼戻しした SKD61 に DCプラズマ CVD法により、TiN/TiBN/BN の多層膜を形成する技術を開発した1)。最表面の BN は、10~20nm の微粒子が繊維状及びオニオン構造をとっており、ADC12 溶湯との反応性が低く、離型性に優れている。また、窒化拡散硬化層と TiN/TiBN/BN 多層膜の組み合わせによりダイカスト金型の性能及び寿命向上が期待できる。 金沢工業大学と小山鋼材では、白色アルミナ(WA)砥粒を水に懸濁させ、金型冷却水管内を循環させることで冷却水管内面を加工する技術を開発した 1)。WA砥粒は、粒径が 300µm あるいは 425µmで、体積率 5.2%を懸濁させた。水圧は 1.4MPaないし 2.2MPaとした。この処理により、冷却水管内壁の粗さが改善でき、錆の発生が抑制される。

(3)離型・潤滑技術 トヨタ自動車では、減圧下での金型摺動部位の隙間への離型剤の侵入と品質に及ぼす影響を調査した 1)。ナノカーボンハイブリッド被膜(CF被膜)がない場合には、隙間に侵入した離型剤が減圧により気化して飛散して品質を悪化させる可能性があるが、CF被膜がある場合には被膜内に離型剤が浸透して減圧しても飛散がないこと、また摺動抵抗が軽減されることなどを示した。また、この CF被膜の含油性の効果として湯流れ性の向上、離型抵抗の減少、ガス巻き込みの減少などの効果が得られること示した 2)。 同じくトヨタ自動車では、シリンダブロックの焼付き不良を解決するため、焼付きメカニズムの解明とそれに適用した離型剤塗布方法を開発した 2)。離型剤スプレーを間欠噴霧(パルス式)することで付着効率を高め、焼付きによるアルミニウムの堆積が低減し、型磨き作業を大幅に低減した。 アイシン精機では、金型を閉じたまま粉体離型剤を金型キャビティに均一に塗布する技術を開発した 1)。付着性の優れた離型剤成分の最適化、粉体付着予想技術の開発、粉体塗布システムの開発及び粉体吐出圧力のフィードバック制御技術の開発を行い、複雑形状のダイカストへの適用が可能となった。

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平成26年の素形材産業年報

(4)品質向上技術 ダイレクト21 では、射出速度、圧力といったダイカストマシン情報、充填時間、キャビティ内ガス圧、金型温度といった金型情報を専用マイコンによって収集し、社内LAN で共有化できる品質管理システムを開発した 1)。また、インターネットを活用することで国内事業所間あるいは海外工場の情報をリアルタイムで把握することができる。 アイシン軽金属では、画像処理技術を用いたダイカストの外観検査システムを開発した 1)。透過式の平行光線をカメラで撮像し、画像判定用パソコンにより画像の二値化、良品マスターとの比較、差分処理、しきい値判定を行い、バリ残り、欠肉などの輪郭形状判定を自動で行うことができる。 TYK では、保持炉内に設置する高気孔率で透過性のあるセラミックスからなるフィルターボックスを開発した 1)。フィルターボックス内の溶湯は、酸化物や介在物のない清浄な状態であり、この溶湯をラドルでくみ出してダイカストマシンに供給することで、酸化物・介在物の少ないダイカストを生産できる。 日産自動車では、アルミニウム合金ダイカスト製シリンダブロックの鋳鉄ライナーの代わりに溶射被膜を形成することでエンジン性能を向上させる技術を開発した。ダイカストの場合、ひけ巣などの鋳巣が発生し、溶射した場合に健全な被膜が形成しにくいが、短時間充填、金型キャビティの高真空化、油性離型剤適用、金型温度制御などの技術を用いて最適化をはかった。

(5)その他 リョービでは、自動車の大型サブフレーム(ダイカスト部分の投影面積は 2446cm3)の 2 個取り化を行った 1)。金型のコンパクト化、低鋳造圧力化により3500tダイカストマシンでの鋳造を可能とした。また、鋳放しの寸法精度を向上させることで FSW での鉄プレス品との接合面の機械加工レス化を行った。 大紀アルミニウム工業所では、ダイカスト用の高延性高耐力アルミニウム合金を開発した 1)。開発合金は4.5~6.5%Si-0.4~0.7%Mg-0.5%Fe-0.6%Mn の組成で、鋳造温度 700℃以上で F 材において破断伸びが 10%以上、0.2%耐力が 150MPa程度の特性が得られる。

2. 6. 3 研究動向

 2014年は日本ダイカスト会議が開催されたので、ダイカストに関する研究論文も多く報告され、他にも鋳造工学などに掲載された研究成果について、それらの主なものを以下に簡単に紹介する。

(1)機械的性質 アーレスティの柳原らは、Al-9%Si-0.3%Mg-0.4%Mn合金を用いて箱形形状の大物ダイカスト(幅 800mm、高さ 500mm、深さ 200mm、肉厚 2.5~ 3 mm)を鋳造し、17箇所から試験片を切り出して機械的特性、時効硬化特性について調査した 1)。その結果、鋳放し材と T5 材では引張強さ、破断伸び、衝撃値はほぼ同程度であるが、0.2%耐力はT5 処理により40MPa 程度上昇した。また、場所によって機械的性質に変動が見られたが、共晶 Siの体積分率の違いと鋳巣欠陥の影響によることを示した。また、アーレスティの太田らは、Al-6%Mg-3%Si合金の組織及び引張特性に及ぼす Sr(0 ~0.09%まで変化)の影響について調査した 3)。引張強さは Sr によって大きな変化はないが、Sr 添加量が多いほど 0.2%耐力が向上し、伸びが低下した。 都立産業技術研究センターの佐藤らは、亜鉛合金ダイカスト(ZDC1、ZDC2、ベリック)の機械的性質と10年自然時効させた後の機械的特性の変化について調査した 1)。その結果、合金中の銅の含有量が多いほど引張強さ、耐力が高いことを示した。また、自然時効では ZDC1 と ZDC2 は引張強さ、硬さは低下するが、銅の添加されていない ZDC2 では伸びが著しく大きくなる。銅含有量の多いベリックは自然時効により引張強さ、耐力は向上するが、伸びは低下することを示した。 リョービの井澤らは、ADC12 合金ダイカストで局部加圧を行うことで疲労強度が向上することを見いだした 4)。疲労強度向上の要因として、局部加圧により凝固時の溶湯補給が行われてひけ巣などの欠陥サイズ、数密度が低減したことによることを示した。 大紀アルミニウム工業所の鏑木らは、高延性ダイカスト用アルミニウム合金(Al-Si-Mg-Fe-Mn系)の組織を引張特性に及ぼす Si の影響について調査した 3)。Si 量を 4.5~9.8%の範囲で変化させてダイカストしたところ、Si 量の多いほど 0.2%耐力は増加し、伸びは低下した。伸びの低下は、Si 量が多いほど共晶 Si の面積率の増加や粗大化がおこり、亀裂が進展しやすくなるためであることを示した。 長岡技科大学の足立らは、マグネシウム合金ダイカストAZ91Dに Ca を 1.0~2.0%添加して、クリープ特性を調査した 3)。その結果、Ca を添加すると熱的に安定な(Mg,Al)2Ca 相が粒界及びデンドライトアーム間に晶出するためクリープ特性が改善されることを示した。

(2)新ダイカストプロセス 東芝機械の中田らは、円筒形の容器の底部に冷却板を設置した中に AC4CH 合金を注湯して対流によりセミソリッド状態にし、底部は冷却して凝固層を形成す

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鋳 造

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ることで容易にセミソリッドダイカストができる方法を提案した 1)。また、酸化膜に見立てた鉄粉をセミソリッドスラリーに混入して、キャビティに酸化膜が混入しにくい方案の検討を行った。 東北大学の板村らは、これまで開発してきたセミソリッド法(NRC法、ナノキャスト法、カップ法、スリーブ法)を比較し、スリーブ法は薄肉ダイカストに対しても湯回り性、寸法精度において優れていることを示した 1)。 産業総合研究所の村上らは、機械的振動付与により作製した AC4CH 合金のセミソリッドスラリーの流動性について評価した 5)。スリーブから金型に流入する入り口にゲートを設け、セミソリッドスラリーが通過する際に剪断力を与える。剪断速度を大きくするとスラリー中の初晶 -Al 相が微細球状化することでスラリーの流動性が向上することを見いだした。

(3)鋳造欠陥 日本鋳造工学会の第164回全国大会において軽合金鋳物・ダイカストにおける「割れ」の現象と対策に関するオーガナイズドセッションが開催された 2)。 日軽エムシーアルミの北岡は、アルミニウム合金の凝固に伴う各種割れの分類と定義について報告した。割れには、凝固完了する前に発生する凝固割れ(鋳造割れ、熱間割れ)、ひけ割れと凝固完了後に発生する高温割れ、冷間割れがあり、その他腐食や時効などによる完全に冷却した後に発生する割れがある。 早稲田大学の吉田らは、世界の凝固割れ研究の歴史と近年の CAE による凝固割れ予測研究の動向に関するレビューを報告した。前者は、凝固割れ性評価は Mg合金に関する報告が多いこと、凝固割れ予測のための凝固中での引張特性に関する報告が多い。後者は流動と熱応力解析の練成による溶湯分配器が鋳塊品質に及ぼす影響が予測可能であることや、ミクロ凝固組織の応力解析により凝固割れ現象の解明が試みられていることなどが報告された。 早稲田大学の高井らは、アルミニウム合金の固液共存状態のクリープ構成式と凝固割れ性に及ぼす結晶微細化の影響について調査し、構成式には結晶粒径を考慮すべきであることを明らかにした。また、同じく高井らは、固液共存状態の力学的特性と凝固割れ性に及ぼす押し湯の影響について調査し、押し湯により延性が増加して凝固割れが抑制されることを見いだした。 富山大学の才川らは、Al-6%Mg-3%Si 合金着物の鋳

造割れ性及び凝固組織に及ぼす Ti-B 添加と Sr 添加の影響について調査した。何も添加しない場合には鋳造割れ面積は 82%であったが、0.12%Ti-0.024%B 添加で31%に減少し、これにさらに 0.04%Sr を添加すると割れは発生しなかった。

(4)その他 カルソニックカンセイの熊倉らは、ADC12合金の溶湯と金型間の熱伝達係数に及ぼす離型剤の影響について調査し 3)、CAE解析の境界条件である熱伝達係数が離型剤の有無によって異なり、離型剤なしは離型剤有りの 2 倍程度熱伝達係数が大きいことを明らかにした。 岐阜大学の山縣らは、ダイカストマシンと金型をモデル化して大規模解析を行い、ヒートチェックの発生及び水冷孔の割れについて検討した。ヒートチェックの発生には、ヒートチェックは降伏限度を超えた大きな圧縮応力が繰り返し作用することで微少亀裂が発生し、これに剪断応力が負荷して亀裂の成長が助長されるとしている。また、水冷孔からの割れは、金型表面から水冷孔までの距離が短いと極めて高い圧縮応力が働き、この応力によって亀裂が発生するとしている。同じく山懸らは、同様な大規模解析により金型間の隙間を熱変形シミュレーションして、隙間量と実鋳造で発生した鋳バリの厚さがほぼ一致することを明らかにした。 日立金属の田村らは、CAE を活用してダイカスト金型のヒートチェックの進展を予測する方法について検討した 1)。金型内に熱電対を設置して鋳造時の温度変化を測定し、CAE での合わせ込みを行い、境界条件を選定した。その結果を用いて亀裂長さの実測値と CAEによる結果から、ヒートチェックの進展は熱応力だけでなく、鋳造圧力との関連も考慮する必要があることを示した。

(西 直美)

 参考文献1 ) 一般社団法人日本ダイカスト協会:2014 日本ダイ

カスト会議論文集 ,(2014).2 ) 日本鋳造工学会第 164 回全国講演大会講演概要集

(2014).3 ) 日本鋳造工学会第 165 回全国講演大会講演概要集

(2014).4 )井澤 他:鋳造工学 85(2014)4,294.5 )村上 他:鋳造工学 85(2014)10,773.6 )山懸 他:鋳造工学 85(2014)2,121.

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平成26年の素形材産業年報

2. 7 精密鋳造

2. 7. 1 産業動向

 わが国の精密鋳造品の生産規模の推移を図 2. 7. 1. 1 1)

に示す。この図は平成 6 年(1994年)以降の生産重量と売上高を示している。平成21年(2009年)に世界同時不況の影響を受けて生産重量・売上高ともに減少した

後平成22年(2010年)からは毎年回復傾向を示し、平成26年(2014年)は対前年比生産重量および生産金額ともに増加した。平成26年(2014年)はガスタービン用が生産重量・売上高ともに約10%増加し、また自動車用が生産重量で 5.2%、生産金額で 9.7%増加しこの2 分野の増加が全体を押し上げた。その結果平成26年

(2014年)の生産重量は対前年比 4.8%増加して 6,659トンとなり、生産金額は同じく 8.8%増加して 564.8億円となった。 平成25年(2013年)から 2 年間の月別推移を図2. 7. 1. 2に示す。生産重量 ・ 売上高ともに平成26年3 月までは順調に伸びて来たが、消費税が 8 %に上がった後の 4 月からは減少傾向を示した。9 月以降はやっと回復傾向を示している。 図2. 7. 1. 3に平成26年の月別 ・ 用途別売上高推移を示す。自動車用が平成26年(2014年)4 月 5 月は消費税の影響を受けて減少したが、8 月からは元に戻った。ガスタービン用は消費税の影響を全く受けずに平成26 年を通して安定した生産金額を示した。 表 2. 7. 1. 1に平成26年の各用途別生産実績を示し、その概況を以下に報告する。

0

1000

2000

3000

4000

5000

6000

7000

8000

9000

0

100

200

300

400

500

600

700

94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13

売上高(億円)

重量(トン)

14

売上高 重量

出所:経済産業省 生産動態統計データより作成

図 2.7.1.1 精密鋳造品売上高と生産重量の推移

出所:経済産業省 生産動態統計データより作成

図 2.7.1.2 平成25年~26年精密鋳造品売上高と生産重量の推移

0

100

200

300

400

500

600

700

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

売上

高(億

円)

重量

(トン)

1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112

月H25年 H26年

売上高 重量

0

10

20

30

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

ガスタービン用 一般機械用

自動車用 航空機・武器用

その他用

上高

(億

円)

出所:経済産業省 生産動態統計データより作成

図 2.7.1.3 平成25年精密鋳造品売上高の推移

表 2.7.1.1 平成 26年(2014年)の用途別生産実績

用途生産重量 売上高

重量(t) 前年比(%) 構成比(%) 金額(億円) 前年比(%) 構成比(%)一般機械用 851 108.9 12.8 52 106.1 9.2自動車用 4,523 105.2 67.9 218.8 109.7 38.7

航空機・武器用 91 84.5 1.4 30.5 105.0 5.4ガスタービン用 912 110.3 13.7 237.2 110.9 42.0

その他用 282 82.8 4.2 26.3 95.3 4.7合計 6,659 104.8 100 564.8 108.8 100

出所:経済産業省 生産動態統計

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鋳 造

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(1)一般機械用 生産重量は 851トンと前年比 8.9%増加し、売上高も52.0億円で 6.1%増加した。設備投資の回復基調を受け、少し戻ってきたと思われる。

(2)自動車用 生産重量では 4,523トンと前年比 5.2%増加し、売上高では 218.8億円と前年比 9.7%増加した。自動車の生産が回復基調を継続し、生産重量の増加したに加えて、円安の為替市場の影響により、売上高も増加を示した。世界的な CO2 削減および低燃料消費の方向付けとターボチャージャ搭載の技術が合致して、ターボチャージャ・ ホイールの増産要求は継続しており、今後もこの市場に関してはしばらく好調が続くと見られている。

(3)航空機 ・ 武器用 生産重量では 91トンで前年比 15.5%減少したが売上高では 30.5億円と前年比 5.0%増加した。欧米では新しく量産が開始されたボーイング B787 およびエアバスA350 などに用いられる民間航空機用エンジン市場が活発になり、リスクシェアリングで製造に参画している日本のエンジンメーカーにも増産要請が来ている模様であるが、実際の生産数値に少しずつ反映されてきているようである。

(4)ガスタービン用 ガスタービン用精密鋳造品の生産重量は 912トンと前年比 10.3%増加した。売上高は 237.2億円と前年比10.9%の増加となった。世界的な不況から少しずつ回復基調にあるので、大型発電設備用途を中心にして補給部品の市場が活性を見せており、一部に新規金型の製作要求が増えているため、今後も受注増加を期待できる。

(5)その他用 その他の分野の生産重量は 282トンで前年比 17.2%減少し、売上高でも 26.3億円で前年比 4.3%の減少となった。東日本大震災の心理的影響を受けてスポーツ・レジャー用品の市場が伸び悩みを見せた後、さらにコスト面での国産品での対応が困難になり、台湾、中国などへの調達先移行により減少傾向が続くものと推測される。

2. 7. 2 技術・研究動向

 平成26年11月 8 日~11日の間、台湾鋳造学会主催の第 8 回国際精密鋳造セミナーが開催された 2)。従来このセミナーは隔年に東京で開催されていたが、2010年に日本鋳造協会と台湾鋳造学会の間で締結された相互に技術的な交流を促進しようとの MOU に基づ

き、初めて台湾で開催されたものである。初日の 11月8 日には、台湾鋳造学会、日本鋳造協会、中国鋳造学会、米国の精密鋳造協会(ICI)および欧州精密鋳造協会(EICF)の代表者が集まり、2016年 4 月にフランス・パリで開催される第13回世界精密鋳造会議(WCIC in Paris)への参画について打ち合わせた。8 日および 9日に行われた会議には欧米およびアジアの 12か国から講演会・懇親会および工場見学会に延べ 240名の参加を数えた。会議では①基調講演 ②各国の市場動向 ③各社からの技術開発状況の 3 部に分けて 22件の講演が行われた。日本からは日本鋳造協会・木村会長を団長として約30名の参加があり、技術講演にも IHI および伊藤忠セラテックから報告が行われた。10日および 11日の 2 日間には台湾の代表的な精密鋳造工場を見学し、交流を図った。EICF からの報告では 2013年の世界の精密鋳造の市場規模は 1,240億 USドル(1.3兆円)と対前年比 6 %の増加を見たとのこと。また地域別のシェアは北米 41%、中国 23%、欧州 22%であり、中国を含めたアジア地区で全体の 35%を占めるほどになった。分野別に見ると、航空機およびガスタービン向けの「高付加価値品」が 55%を占め、ターボチャージャ用ホイールを中心とする自動車部品が 14%を占めている。その他は一般産業機械部品である。 海外企業の動向については、米国精密鋳造協会主催の第61回 2013 ICI 技術会議および関連展示会が、ケンタッキー州コビントン市で 10月 5 日~ 8 日に開催された3)。今回の会議参加者は 280名であった。この会議では 18件の技術講演と 2 件のパネルデイスカッションが行われた。この中でも注目された報告としては、アリゾナ大学と NASA などの共同研究として、「国際宇宙ステーション(ISS)で無重力状態での一方向凝固の研究」が開始されたことについてである。第一段階では、Al-7%Si 合金を用いて ISS で一方向凝固の試験を行い、重力に支配される地上での試験と比較した。今後はタービンブレード用 Ni 基超合金での一方向凝固試験を実施する予定とのことであり、今後の実験結果が注目される。品質保証の正確性の向上と省力化の目的で、非接触式寸法検査の自動化が採用されているが、検査専門会社からは産業用 CT スキャンニング方式によるものと、レーザー光を用いた光学式検査方式によるものと2 種類の検査方式により、CAD図面と整合性を持って自動的に寸法データを蓄積する検査方式が精密鋳造品

(特に内部流路を持つタービンブレード)の品質保証に適用され始めたことを報告している。特に航空機開発期間が非常に短縮されてきている状況で、精密鋳造品

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平成26年の素形材産業年報

の初品開発期間を短縮するための必須のツールとして今後その用途が拡大すると思われるような報告がなされていた。また米国の精密鋳造業界での最大の関心事は、航空機エンジン部品への適用や、発電用大型ガスタービン部品への適用が増加する予測に備えるために、大型精密鋳造品を効率よく生産するために、全てのプロセス設備の大型化と作業の自動化への技術開発である。この目的で米国の MPI 社ではワックスパターンの自動成型とこれに続く自動組立設備の開発や、英国のV/A TECH社が最大直径 2 メートル高さ 2.5 メートルで鋳型重量 2.5 トンの鋳型造型設備を開発中であることが報告されている。これらの精密鋳造品の大型化には、

設備の大型化に伴ってパターンワックスに要求される品質および大型鋳型を実現するための造型条件の開発などのプロセス技術の開発も同時に行われると推察される。わが国においてもこれらの趨勢を注視しながら技術開発を推進する必要があると思われる。

(那須征雄) 参考文献1 )経済産業省:生産動態統計年報・同月報2 ) (一社)日本鋳造協会・鋳造ジャーナル 2014年12月号

Vol.10, No.12, p23-p303 ) (一社)日本鋳造協会・鋳造ジャーナル 2014年11月号

Vol.10, No.11, p45-p47

2. 8 学会・業界活動

公益社団法人 日本鋳造工学会

 日本鋳造工学会は昨年の 5 月31日の定時社員総会で、新しい役員体制が発足、代表理事である会長には、アイシン精機の山内康仁氏に代わり新たに近畿大学の木口昭二氏が選出された。新体制の最大の課題は、来る2016年 5 月に開催する第72回世界鋳造会議(WFC2016)を盛大かつ実りのあるものにすることである。昨年来、この大会を運営するにあたり、活動資金として多くの企業や個人の方々から、多大なご寄附を頂き始めている。1 月から Call for Paper を開始した。 工学会の新たな取り組みとして、2012年度から進めてきた第 2 期長期ビジョン活動の具現化を促進した。高校生を対象に理系に興味を持ってもらうための「理系学生応援プロジェクト」の継続開催、小中学生を対象にした「こども鋳物教室」全国版の展開、全国講演大会開催時の「学生交流会」実施、また鋳物を学ぶ学生を対象にした「鋳物コンテスト」のトライアルを開始した。これは、課題となる鋳物の図面を提示し、CAE を駆使して鋳型を設計、3Dで鋳型製作、注湯を実施しその結果を評価するものである。今回の結果をもとに、2015年度から定期的な開催に繋げる。 全体の事業活動として、鋳造工学に関する学術講演会、講習会開催、調査研究、表彰および奨励、広報誌等の発行、その他図書発行などである。 学術講演会等では第164回全国講演大会を京都市勧業館「みやこめっせ」で開催し、講演発表 125件、京都大学の高橋教授による「iPS 細胞技術」に関する特別講演、YFE 大会では、鋳造カレッジ修了生によるそ

の後の活動について 9 件の講演と総合討論、JAXA による特別講演、若手研究奨励金受賞者や日下賞受賞者による講演を行った。「現場技術改善事例」と「軽合金鋳物とダイカストにおける「割れ」の減少と対策」という 2 件のオーガナイズドセッション、また日中韓の交流講演を開催し、活発な質疑が行われた。同時に「研究室・研究施設紹介パネル展示」「YFE 鋳物教室活動報告ビデオ」の上映を行い、従来通り学生交流会、工場見学会、技術展示会を実施した。 第165回全国講演大会は、福岡県北九州市の北九州国際会議場で、一般社団法人日本鋳造協会との合同開催で実施した。日本鋳造協会の講演と合わせ 120件と、2 件の特別講演、2 つの研究部会によるオーガナイズドセッション、豊田賞、技術賞の受賞講演が行われた。同時に YFE こども鋳物教室、学生交流会、工場見学会、技術展示会を実施した。 その他、地域に密着したテーマにより、講演会 24会場、技術講習会 9 会場、シンポジウム 1 会場、YFE 大会 3 会場、こども鋳物教室 4 会場、工場見学会 5 会場や日本鋳造協会との共催の鋳造カレッジ、素形材センターと共催の研修講座、技術セミナーの開催を行った。鋳造カレッジは今年度から、特定の専門課題についての理解と洞察を深め、さらなる専門知識を習得し、工場現場において問題点を見つけ出す課題創造力、それらを解決する課題遂行力を有する人材の育成を目的とする上級コースを立上げた。キャスティングスオブザイヤー賞は3年目として、2件2企業の製品を表彰した。 鋳造に関する調査研究においては、各技術分野の専門家による研究、調査、技術交流を行い、研究成果は

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鋳 造

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研究報告書やシンポジウムの開催により公開した。各部会は下記のテーマにより研究を実施した。 ① 鋳鉄の強度特性・材質向上の研究と、レアアース

レスで高機能鋳鉄を作る技術の確立 ② 鉛フリー銅合金、特に新 JIS 合金並びに低鉛青銅

鋳物の諸特性に関する研究 ③アルミニウム合金鋳物の高品質化と信頼性向上 ④生型砂管理技術の再構築 ⑤特殊鋳型と低エネルギーシステムに関する研究 ⑥ 技術の統合・最適化によるダイカストの生産性向

上技術の研究 ⑦ 鋳造CAEの活用と品質向上とひけ性などの評価法

の研究 ⑧グローバリゼーションに対応した鋳造設備 ⑨鋳造品の評価技術 ⑩銅合金鋳物のダイカスト・金型鋳造に関する研究 ⑪ねずみ鋳鉄の片状黒鉛組織定量化評価法の研究 ⑫ 精密鋳造用WAXの特性及びその試験方法策定と

標準化

 その他、それぞれの地域により技術委員会、鋳造技術部会、現場鋳造技術研究会、鋳物研究会、支部間合同研究会などを開催した。 表彰および奨励事業では、日本鋳造工学会大賞、論文賞など各賞の表彰を行い総計 26件、46名の方々に授与した。その他若手研究奨励金、新東工業鋳造技術研究奨励金、若手活動支援金、奨励賞を授与した。 全国講演大会においては学生優秀講演賞の授与を行った。各支部や地域での功績により、功労賞、奨励賞や助成金の授与などの表彰、奨励を実施した。 広報誌等の発行による普及啓発事業については、学会誌「鋳造工学」を毎月発刊し、最新の研究論文をはじめ、技術報告、解説、連載講座、現場技術改善事例、レビュー、鋳造業界要人のインタビュー記事や Q&A コーナー、鋳造の重鎮による「戦後高度成長期の鋳造技術・研究・経営と後進へのメッセージ」など、また今年は特集を 2回組み、研究者、技術者および経営者のいずれの方にも役立つ情報を掲載した。特記事項として会誌「鋳造工学」へ投稿する論文のカラー化を無償化し、見やすい論文になるべく環境を整えた。また、8 学協会との共同発刊の英文誌「Materials Transactions」に本会会員の投稿を積極的に推進した。その他、全国講演会講演概要集、技術講習会テキスト、シンポジウムテキスト、研究報告書や支部会報の発刊を進めた。 図書発行事業は、「鋳鉄溶解ハンドブック」の改訂版発刊に向け、活動を開始した。

一般社団法人軽金属学会

 軽金属学会では、第32回軽金属セミナー「アルミニウム合金の状態図と組織-入門編」が開催された。今回のセミナーは、2005年から 7 回連続で開催された第30回軽金属セミナーを基に、講師陣を一新し、初学者を対象として開催されたものである。アルミニウム合金の溶解・鋳造工程における基本を理解する上で有用な内容であり、今回は、7 月14日と12月 5 日の 2 回、早稲田大学西早稲田キャンパスで開催された。今後は、関西や東海地区でも開催することを計画している。また入門編に続いて、中級編と上級編の開催も企画している。 軽金属学会第126回春期大会が 5 月17、18日に広島大学東広島キャンパスで開催された。134件の講演発表および 34件のポスターセッションがあり、アルミニウム合金鋳造関係が 18件、マグネシウム合金鋳造関係が 3 件報告された。また、第127回秋期大会が11月15、16 日に東京工業大学大岡山キャンパスで開催された。200 件の講演発表および 40件のポスターセッションがあり、アルミニウム合金鋳造関係が 13件、マグネシウム合金鋳造関係が 3 件報告された。 一昨年、昨年と比較して鋳造関係の講演発表は減少している。今年の講演の傾向としては、アルミニウム合金の溶湯清浄度の評価方法に関する検討についての発表やアルミニウム合金の結晶粒微細化についての発表が目についた。また、アルミニウム鋳造合金やマグネシウム鋳造合金の熱処理や割れ,凝固組織に関する研究も報告された。 (神戸洋史)

一般社団法人日本鋳造協会

 本年度の当協会の主な活動概要は次のとおり。1. 平成25年 5 月に日本鋳造機械工業会との統合を実

施するとともに、協会運営組織の見直しを行い、環境部会と技術部会とを統合して技術・環境部会とした。併せて日本鋳造機械工業会業務の受け皿として機材部会を設けた。

2. 本年度で協会創立10周年を迎えることから、平成27年 1 月に新年賀詞交歓会を兼ねて創立10周年記念式典・祝賀会を開催した。

3. 全国的な電気料金値上げに対応するために、2 回にわたり政府に対して電力多消費産業業界団体 11団体連名による電気料金引き下げのための早期原発再稼働要望を含む 「 電力多消費産業の事業存続のための緊急要望 」 を行った。

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平成26年の素形材産業年報

4. 電気料金値上げ等のコスト増分の転嫁に関して、会員相互間の取引においても取引ガイドラインを遵守願いたいという会員あて文書を作成し、8 月に配布した。併せて、主要ユーザー 6 団体あてに「原材料・電気料金値上げ等のコスト増を踏まえた適正取引について」を手交して、適正取引の周知を要請した。

5. 現場技術者および作業者を対象に、「溶解」と「造型」に分けた鋳造の基礎技術に関する鋳造技術研修会、新たに「品質管理技術研修会」と「鋳造クラウド CAE 研修会」を実施した。また、「キュポラの緊急時対策マニュアル」を作成した。

6. 鋳造カレッジを関東・東海・中国四国地区で、鋳鉄コース、軽合金・銅合金コースの 3 コースを開催し、合計 83名が受講修了した。当協会が認定する鋳造技士は平成 26 年度までの 8 年間で累計 578名を認定するに至った。「鋳造入門講座(鋳鉄コース・軽合金コース)」を受講生 41名により 4 月から 6 か月間実施した。課題解決型専門コースである鋳造カレッジ上級コース「材料・溶解・凝固・材質コース」を実施し、20名が受講した。

7. ドイツ鋳造協会(BDG)他との交流を行うとともに、イタリア・ベニスで国際鋳造フォーラム、台湾・高雄市で国際精密鋳造セミナー等の国際会議に参加した。4 月にメタルチャイナ視察団、11月に「台湾精密鋳造セミナー視察団」および「台湾非鉄工場視察団」の派遣を行った。

8. 東海・北陸・中国四国の 3 支部活動を支援して地域活動を展開した。5 月に総会に併せて春季大会を東京で、10月に秋季大会を福岡県北九州市において日本鋳造工学会と合同開催した。8 月(新潟県長岡市)および 2 月(東京)に、若手経営者全国大会として講演会・工場見学会を開催した。

日本ダクタイル鋳鉄協会

1.総会・シンポジウム・技術発表会・工場見学会 平成26年の総会・シンポジウム・工場見学会を 2014年 3 月 6 日~ 3 月 7 日に静岡県富士市で開催。 ・シンポジウム   テーマ:「他社の生産システムに学ぶ」-将来のダ

クタイル鋳鉄生産の為に、をタイトルに以下の講演と討論を行った。

  (1) 基調講演:「トヨタ生産方式(TPS)の概説とそのこころ」

  (2)「わが社の生産システム」 

  (3)「仕掛品の見える化」  (4)「タブレット PC を用いた検査実績入力の改善」  (5)「在庫縮減活動」  (6)「中子生産ラインの生産性向上」  (7)「3D RP 装置の活用による試作期間の短縮」  (8) 「製品材種及び肉厚にあわせた製造条件の指示

システムについて」  (9)全体討議 ・工場見学会   ㈱ スギヤマ本社工場(午前)、並びに山梨工場(午

後)を見学した。2.秋季技術講演会 平成26年の秋季技術講演会を 2014年 9 月26日に東京都北区の北トピアにて開催した。 ・技術講演会   テーマ:「DCI の不良対策事例」をテーマに以下の

講演と討論を行った。  (1)基調講演:「DCI の不良対策について」  (2)「CAE 解析を用いた不良対策事例」  (3)「デフケースの不良対策事例」  (4)「厚肉鋳物品の機械的性質改善事例」  (5)「遠心力鋳鉄管の不良への取組み」  (6)「回収砂の水分と安定化対策」  (7)「凝固解析を用いた油圧部品の方案検討」  (8)「塗型による巻き込み欠陥不良対策」  (9)「DISA ショット条件による打痕低減」3.生産に役立つ基礎講座 若手技術者の能力向上を目的に、ダクタイル鋳鉄に関する基礎知識・生産管理・品質管理などについて昨年同様、基礎講座を実施した。  第 1 回は 2014 年 7 月 4 日に東京にて開催。  テーマ:「現場で知っておくべき鋳造知識」  ・ひけ傾向の小さい鋳鉄溶湯を作る方法  1. 湯の中の炭素原子のムダ使いをしない、浮上黒

鉛を出さない  2.セメンタイトにもしない  3. 共晶凝固の最初から最後まで黒鉛を安定して出

し続ける  4.黒鉛粒数を多くする  5.Mg 含有量を多くしない  6.C, Si% の決定などについて学んだ。  第 2 回は 2014年11月14日に東京にて開催。  テーマ:「 鋳鉄の生産に使用する生型造型の基本と

管理技術」

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鋳 造

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  1.「生型の鋳型用材料と造型法」 基礎編    生型に求められる性質、使用される鋳型材料の

物性(けい砂、ベントナイト、その他)、生型の混練とその特性、常温性質と高温性質、造型機および造型性、などを学んだ。

  2.「生型の管理技術」 応用編    生型ラインにおける鋳造品の品質は、造型され

た鋳型の品質に大きく左右される。鋳型の品質は一般的に生型砂の性質で代表され、間接的に評価されている。その管理技術およびポイントについて学んだ。

4.DCI NEWS 情報誌として 4 月に DCI NEWS 44号、11月に DCI NEWS 45号を発行し、会員並びに官公庁、関係諸団体に配布した。5.研究委員会 研究委員会で「各社 DCI 溶湯の比較 ~熱分析による溶湯性状の検証~」をテーマとして現在活動している。溶湯の違いから、ひけ巣対策に有効な球状化処理方法を確立させることを目的としている。

一般社団法人日本アルミニウム協会

 平成26年度は以下の主要事業について取り組んだ。Ⅰ アルミニウムの需給に関する調査および研究 1.内外のアルミニウム需給動向に関する調査 2.需要見通しの策定  (1)アルミニウム圧延品の需要見通しの策定  (2) 関係団体と協力して、アルミニウム製品総需

要見通しを取りまとめて公表Ⅱ  アルミニウム産業に関する資料、統計の作成並び

に情報の収集および提供 1.アルミニウムに関する統計の作成  (1)アルミニウム圧延品・はくに関する統計の作成    圧延品・はくについて自主統計調査を実施し、

次の統計資料を取りまとめ  ①圧延品・はくの生産出荷動向(毎月)  ②圧延品・はくの需要部門別特殊分類統計(毎月)  (2)アルミニウム製品等に関する統計の作成    アルミニウム粉、車輪およびアルミナ(水酸化

アルミニウムを含む)について自主統計   調査を実施して取りまとめを行うとともに、他機関

の統計情報を収集・整理して次の統計資料を作成  ①アルミニウム統計表(年 4 回)  ②アルミニウム統計月報(毎月 WEB 上で公表)

    また、上記(1)(2)の統計をまとめた「アルミニウム統計年報」を作成

  (3)統計システムの改善・合理化に関する活動    インターネットを利用した統計システムを用い

て、統計データの迅速な作成・開示 2.内外のアルミニウム産業動向に関する調査  (1) 米・欧・中国などのアルミニウム団体(IAI、

AA、EAA、中国有色金属工業協会、韓国非鉄金属協会、インドアルミ協会、ブラジルアルミ協会等)と交流し、統計情報の交換等

  (2) 英文統計資料「ALUMINIUM STATISTICS」を作成し、ホームページに掲載すると共に海外諸団体と資料交換

  (3) 海外のアルミニウム産業動向について、関連情報を会員へ紹介

  (4) 内外のアルミニウム関連統計、情報を収集整理し「アルミニウムデータブック」(内部資料)を作成

  (5) 内外の市場動向や産業政策の調査等の実施、講演会・勉強会の開催等を実施

   「最近の内外アルミ動向」の発行(毎月) 3.国際交流の推進   海外のアルミニウム関連団体および関連諸機関の

国際会議、研究発表会への代表者派遣、あるいは参加希望者に対する便宜供与等を行うとともに、海外よりの来訪者の受け入れ等、積極的に国際交流を行って、情報収集および会員への提供に努めた。

  (1) IAI、EAA、AA 等と連携の上、REACH、RoHS 等の環境規制や健康問題等に関する海外情報収集。

  (2) アルミニウム・スチュワードシップ・イニシアティブ(ASI)への対応(IAI)

     アルミニウムの環境面における優位性(LCA、リサイクル等)をアピールするため、アルミニウムに関するデータを、世界のアルミニウム団体・企業と連携して整備

  (3)国際アルミニウム協会専務理事会議への参加  (4) 中国有色金属工業協会との交流促進;中国ア

ルミニウムフォーラム等への参加等  (5) 上記以外の海外アルミ関連団体との交流およ

び国際会議への代表者派遣と訪問者受け入れⅢ  アルミニウム産業に係る資源・エネルギーの合理

化、有効利用に関する調査および研究 省エネルギーおよび省資源問題に関する活動Ⅳ  アルミニウム産業に係る環境の整備・保全および

安全衛生に関する調査および研究

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平成26年の素形材産業年報

 1.環境問題に関する事業 2.労働安全・衛生活動Ⅴ  アルミニウム産業の構造改善、合理化に関する調

査および研究 1.アルミニウム圧延品物流効率化に関する活動 2.IT 化の推進に関する活動 3.アルミニウム原料に関する事業 4.アルミナに関する活動 5.その他アルミニウム産業の基盤強化に関する活動Ⅵ  アルミニウムの生産・利用・需要開拓等に関する

調査および研究 1.需要開拓活動  (1)アルミニウム産業における技術戦略の企画  (2)自動車のアルミ化に関する調査研究  (3) 鉄道車両へのアルミニウム利用に関する調査

研究  (4)土木製品のアルミ化に関する調査研究  (5)カラーアルミ建材普及の為の調査研究  (6) 建築構造材へのアルミニウム利用に関する調

査研究  (7)耐食性評価に関する調査研究  (8)アルミニウム飲料缶の普及促進 2.標準化・特許活動  (1)標準化に関する調査研究  (2)分析に関する調査研究  (3)車輪に関する調査研究  (4)土木構造物のアルミ化に関する調査研究  (5) アルミニウムドロスの再生利用と無害化に関

する調査研究  (6)特許に関する調査 3.受託事業  (1)経済産業省受託事業  (2)日本規格協会受託事業Ⅶ アルミニウムに関する広報、表彰および出版 1.広報活動 2.NET7 活動の展開 3.表彰 4.出版活動 5.電子媒体による情報発信 6.アルミ箔に関する広報活動の充実Ⅷ 人材育成に関する事業Ⅸ アルミニウム産業に関する意見の表明および答申 その他関連する諸事業

一般社団法人日本マグネシウム協会

 平成26年度の主な活動概要は以下のとおり1.会員への対応、普及活動 ・ 安全対策の強化を図るため、毎年 2 回開催してい

る「マグネシウムの取扱い安全講習会」に加え、切削加工に絞った講演会「マグネシウムの切削加工と消火方法など安全対策」を実施(東京、浜松で各 1 回)した。

 ・ 鋳造技術、展伸材技術に関する講演会を開催し、最近の技術動向を紹介した。

 ・ 九州支部の活動として、九州地区におけるマグネシウムによるものづくり技術力向上のため、技術者教育セミナーを 3 回、シンポジウムを 1 回開催した。

 ・ 機関誌「マグネシウム」の毎月発刊、メールマガジン「マグネシウム通信」の配信、2 回の会員情報交流会の開催などにより会員への情報提供に努めた。

2.研究事業 ・ 「自動車マグネシウム適用拡大検討委員会」を設置

し、自動車部品へのマグネシウム合金適用拡大へ向けた検討を実施した。

 ・ 鉄道車両分野へマグネシウム合金展伸材を適用するため、材料開発、接合技術、表面処理などの検討を行った。

 ・ マグネシウム合金板材に関し、暴露試験と塩水噴霧試験の相関に関する調査を実施した。

 ・ 安全対策の強化を図るため、MC・NC 切削加工・研削などに関するマニュアル作成に着手した。

 ・ 革新的新構造材料等技術開発事業により、国内外における難燃性マグネシウム合金の開発動向について調査を行った。

3.標準化事業 ・ 5 件の分析規格について ISO 規格化を進めるとと

もに、ISO 規格として制定されているマグネシウム規格への対応として、ISO/TC79/SC5 およびISO/TC79 国際会議へ代表者を派遣した。

 ・ 高機能 JIS 等整備事業により、マグネシウム合金の燃焼特性を評価する高機能 JIS の作成に着手した。FAA での燃焼試験を含め、各種燃焼試験を実施した。

4.国際交流および情報収集 ・ 国際マグネシウム協会主催の国際会議などへ代表

者を派遣し、国際交流および各国のマグネシウム

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鋳 造

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に関する情報収集を行った。また、国内のマグネシウム関連情報を英文化し海外に発信した。

5.褒賞、人材育成 ・ 平成25年度(第17回)日本マグネシウム協会賞と

して、特別功労賞 1 件、奨励賞 3 件、技術賞 1 件を表彰した。

 ・ 工業系の学生からマグネシウムの特性を活かした製品デザインを募集し、優れた作品の表彰を行う学生マグネシウムデザインコンテストを実施した。

 ・ 各種学会の講演大会などで研究発表を行う学生を対象に奨学金を交付する齋藤マグネシウム学生奨学金制度を実施した。

一般社団法人日本ダイカスト協会

1.検定事業 亜鉛合金ダイカスト品質証明制度2.調査研究 (1)経営アンケート調査 (2)ダイカストの受注動向調査 (3)ダイカスト工場の労働災害調査 (4)エネルギー等使用量調査 (5)ダイカストの鋳肌評価方法の開発 (6) JIS 合金の特性向上による用途拡大に関する調査

研究 (7) 亜鉛合金ダイカストの実体強さと顕微鏡組織の

調査研究 (8) マグネシウム合金ダイカストの鋳造割れに関す

る調査研究3.出版 (1)会報ダイカスト(1 月・7 月) (2) JIS 合金(ADC3)の特性向上による用途拡大に

関する調査研究Ⅱ (3) マグネシウム合金ダイカストの鋳造割れに関す

る調査研究 (4)会員名簿4.会議・講演会・工場見学会 (1)経営講演会  5 月・名古屋 講義 「素形材ガイドラインについて」   11月・横浜 講演 「今後10年の国際情勢を読み解く」 (2)広報工場見学会   12 月・静岡県内 1 社 対象:大学(学生・教育者)・

公的研究機関研究員 (3)第 7 回環境保全セミナー   11月・横浜 「省エネ法改正・労働安全衛生法改正・

事業所におけるメンタルヘルスケアについて」

 (4)鋳造業リスクアセスメント推進研修会   3 月・東京 講義 「鋳物製造現場の労働災害の防

止におけるリスクアセスメントの必要性と実施手順」他

 (5)2014 日本ダイカスト会議・展示会   11月・パシフィコ横浜にて開催  【会 議】 研究論文発表・現場改善事例発表・パネ

ルディスカッション 会議参加者:352名  【展示会】 出展者数 135社・1 団体「出展者によ

る製品・技術セミナー」併催  【工場見学会】4 コース 8 工場 参加者:134名 (6)ダイカスト技術交流会   8 月・東京 「超薄肉ダイカスト技術と欠陥対策」 参

加者:63名   3 月・東京 「現場改善おける QC の考え方とダイカ

ストの改善事例」参加者:61名 (7) YDEC(ヤング ダイカスティング エンジニアー

ズ コミュニティ)   6 月・東京 「第 7 回 YDEC 技術講座およびケース

スタディ報告会」 参加者:59名   1 月・東京 「技術講座:溶湯品質の大切さを知る」

参加者:50名   2 月・岐阜 「YDEC 工場見学会」 参加者:39名 (8)技術委員会セミナー   8 月・東京 「技術・技能研修講座」 参加者:46名   9 月・東京 「第 2 回ダイカスト技術セミナー:ダイ

カスト金型を知る!」 参加者:69名   7 月・東京 「第 2 回女子社員ダイカストセミナー:

工場見学」 参加者:42名   11月・横浜 「第 3 回女子社員ダイカストセミナー:

女子力を学ぶ」 参加者:56名   7 月・東京 「スキルアップ研修:ダイカストの品質

評価」 参加者:9 名   8 月・東京 「スキルアップ研修:アルミニウム合金

溶湯の品質評価」 参加者:12名   10月・東京 「スキルアップ研修:PQ2 線図」 参加者:

13名   2 月・東京「スキルアップ研修:ダイカストの機械

的性質評価」参加者:5 名   3 月・東京「工学的基礎知識習得講座」参加者:20 名

日本ダイカストマシン工業会

1. 平成26年 5 月 1 日から一般財団法人素形材センターへ運営事務等を委託。

 ( 前委託先の日本鋳造機械工業会が一般社団法人日本

Page 32: 造 2. 鋳造sokeizai.or.jp/japanese/publish/200706/201505castings.pdf4,241工場をピークに平成24 (2012)年で2,085工場と この20年間で半減している。業種別では、銑鉄鋳物の

38 SOKEIZAI Vol.56(2015)No.5

平成26年の素形材産業年報

鋳造協会と統合したため)2. 生産性向上設備投資促進税制の証明書発行業務開始。3.技術セミナー 平成27年 2 月 6 日(金)に第15回技術セミナー「ダイカスト製造と設備に係る最新技術」を開催。4.短期需要見通し 平成27年 3 月に「平成27年ダイカストマシン短期需要見通し」を発表。

一般社団法人日本バルブ工業会

 平成26年度の主な活動は以下のとおり。1.セミナー・研修会 (1)若手社員研修会  平成26年 7 月 3 日~ 4 日、7 月31日~ 8 月 1 日 (2)国際委員会セミナー  「ロシアにおけるビジネスチャンスとリスクについて」  平成26年 8 月 8 日 (3)次世代リーダー育成研修   平成26年 9 月18日~19日、10月16日~17日、11

月13日~14日 (4) 自動弁部会主催「知財・特許に関するセミナー」

(全 3 回) ①「知的財産権制度の概要」  平成26年 9 月24日 ②「 産業財産権情報の利用と特許電子図書館(IPDL)

の概要」  「 特許電子図書館(IPDL)を使用した先行調査の

実演」  平成26年10月29日 ③「海外ビジネスと知的財産」  平成26年11月26日 (5)国際委員会セミナー  「中小企業の体験的アジア戦略」  平成26年12月16日 (6)安全保障貿易管理説明会  平成27年 1 月20日 (7)技術研修会  「ものづくり支援ツールについて」  平成27年 3 月23日2.新技術研究開発プロジェクト (1)バルブの環境適合設計推進プロジェクト (2) 住宅用給湯システムの更なる効率向上に関する

研究 (3)有害物質規制の対応技術調査Ⅱ

3.一般向けイベント (1)第 4 回バルブフォト五七五コンテスト

鋳型ロール会

1.総会 平成26年 5 月14日 出席者 19名 場所:日立金属高輪和彊館 ・ 平成25年度事業報告および平成26年度事業計画の

審議・承認 ・ 経済産業省製造産業局素形材産業室 室長補佐 木村

隼斗様、佐藤隆太様のご臨席をいただいた。2.技術部長会 平成26年10月 3 日 出席者 13名 場所:株式会社 クボタ尼崎事業所 ・ 会員の技術担当部長による、課題の発表・討議を

実施。3.賀詞交歓会 平成27年 1 月 9 日 出席者 40名 場所:日立金属高輪和彊館 ・会員会社出席にて賀詞交歓会を開催した。 ・ 経済産業省製造産業局素形材産業室 室長 遠山 毅

様、専門職 北村貴直様のご臨席をいただいた。

日本金属継手協会

 平成26年度の主な活動を以下に示す。1.標準化活動 (1) 当協会が原案作成者である JIS 規格のうち、次

の 3 規格が本年 1 月に改正発行された。 ・ JIS B 2311:2015(一般配管用鋼製突合せ溶接式管

継手) ・ JIS B 2312:2015(配管用鋼製突合せ溶接式管継手) ・ JIS B 2313:2015(配管用鋼板製突合せ溶接式管継手) (2) 当協会規格では、次の 2 規格を本年 1 月に改正

発行した。 ・ JPF MP 003:2015(水道用ライニング鋼管用ねじ

込み式管端防食管継手) ・ JPF FAS 104:2015(鋼製 21MPa 差込み溶接式お

よびねじ込み式ユニオン管継手)2.技術セミナー 当協会の会員向け第 8 回技術セミナーを、東京、大阪で 11月に開催し、次の 2 テーマを説明した。 ・シェールガス事業の現状と日本市場に及ぼす影響 ・ねじ込み式継手の JIS 規格改正