記...[特 記 事 項] ・本剤は平成10 年11 月12 日医薬審第1015...

23
審査報告書 平成 16 11 10 独立行政法人医薬品医療機器総合機構 承認申請のあった下記の医薬品にかかる医薬品医療機器総合機構での審査結果は、以下 のとおりである。 [販 売 名]ザイアジェン錠 [一 般 名]硫酸アバカビル [申 請 者]グラクソ・スミスクライン株式会社 [申請年月日] 平成 16 10 15 日(製造承認事項一部変更承認申請) [申 請 区 分] 1-(6) 新用量医薬品 [化学構造式] 分子式:(C 14 H 18 N 6 O) 2 H 2 SO 4 分子量:670.74 [化 学 名] 日本名: (-)- (1S,4R)-4-[2-アミノ-6-(シクロプロピルアミノ)プリン-9-イル] シクロペンタ-2-エニル}メタノール 1/2 硫酸塩 英 名: (-)-(1S,4R)-4-[2-amino-6-(cyclopropylamino) purin-9-ylcyclopentan-2-eylmethanol sulfate(salt) 1

Upload: others

Post on 26-Jan-2021

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

  • 審査報告書

    平成 16 年 11 月 10 日

    独立行政法人医薬品医療機器総合機構

    承認申請のあった下記の医薬品にかかる医薬品医療機器総合機構での審査結果は、以下

    のとおりである。

    [販 売 名] ザイアジェン錠

    [一 般 名] 硫酸アバカビル

    [申 請 者] グラクソ・スミスクライン株式会社

    [申請年月日] 平成 16 年 10 月 15 日(製造承認事項一部変更承認申請)

    [申 請 区 分] 1-(6) 新用量医薬品

    [化学構造式]

    分子式:(C14H18N6O)2・H2SO4

    分子量:670.74

    [化 学 名] 日本名:(-)-{(1S,4R)-4-[2-アミノ-6-(シクロプロピルアミノ)プリン-9-イル]

    シクロペンタ-2-エニル}メタノール 1/2 硫酸塩

    英 名:(-)-{(1S,4R)-4-[2-amino-6-(cyclopropylamino) purin-9-yl]

    cyclopentan-2-eyl}methanol sulfate(salt)

    1

  • [特 記 事 項] ・本剤は平成 10 年 11 月 12 日医薬審第 1015 号に基づく事前評価対象

    品目である。

    ・希少疾病用医薬品(指定日:平成 11 年 7 月 9 日)

    [審査担当部] 新薬審査第一部

    2

  • 審査結果

    平成 16 年 11 月 10 日作成

    [販 売 名] ザイアジェン錠

    [一 般 名] 硫酸アバカビル

    [申 請 者] グラクソ・スミスクライン株式会社

    [申請年月日] 平成 16 年 10 月 15 日(製造承認事項一部変更承認申請)

    [審 査 結 果] (1) 提出された資料は海外臨床試験のみであるが、本剤の 1 回 600mg、

    1 日 1 回投与について有効性・安全性は評価できると判断した。 (2) 1 日 1 回投与の追加により、アドヒアランスの向上が期待できる

    と推察される。

    以上、医薬品医療機器総合機構の審査の結果、本品目は下記の承認条件を付帯した上で、

    下記の効能・効果、用法・用量のもとで承認して差し支えないと判断する。

    [効能・効果] HIV 感染症

    [用法・用量] 通常、成人には他の抗 HIV 薬と併用して、アバカビルとして 1日量 600mg を 1 日 1 回又は 2 回に分けて経口投与する。

    なお、年齢、体重、症状により適宜減量する。

    [承認条件] 1. 本剤を使用する場合は重篤な過敏症に留意し、過敏症の兆候又は症状が発現した場

    合には本剤の使用を中止する等の適切な処置をとるよう、医師に要請すること。

    2. 本剤については、現在、国内外において臨床試験を実施中であることから、使用に

    当たっては、患者に対して本剤に関しては更なる有効性・安全性のデータを引き続

    き収集中であること等を十分に説明し、インフォームドコンセントを得るよう、医

    師に要請すること。

    3. 我が国における薬物動態試験については、進捗状況を定期的に報告するとともに、

    終了後速やかに試験成績及び解析結果を提出すること。また、海外において現在実

    施中又は計画中の臨床試験についても、終了後速やかに試験成績及び解析結果を提

    出すること。

    3

  • 4. 再審査期間が終了するまでの間、原則として国内の全投与症例を対象とした市販後

    調査を実施し、本剤の使用実態に関する情報(患者背景、有効性・安全性(他剤併

    用時の有効性・安全性を含む。)及び薬物相互作用のデータ等)を収集して定期的に

    報告するとともに、調査の結果を再審査申請時に申請書添付資料として提出するこ

    と。

    4

  • 事前評価レポート(その1)

    平成 16 年 9 月 3 日 [予定の販売名] ザイアジェン錠 [事前評価依頼者] グラクソ・スミスクライン株式会社 [一般名] 硫酸アバカビル [剤型・含量] 1 錠中にアバカビル 300mg(硫酸アバカビルとして 351mg)を含

    有するフイルムコート錠である。 [予定の効能・効果] HIV 感染症 [予定の用法・用量] 通常、成人には他の抗 HIV 薬と併用して、アバカビルとして 1

    日量 600mg を 1 日 1 回又は 2 回(300mg×2)にわけて経口投与する。

    なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。 [事前評価準備会開催日]平成 16 年 4 月 23 日(書面) [特記事項] 本剤は、平成 10 年 11 月 12 日医薬審第 1015 号に基づく事前評価

    対象品目である。 希少疾病用医薬品(指定日:平成 11 年 7 月 9 日)

    今回の事前評価は、用法・用量に 1 日 1 回(600mg×1)投与を追加するものである。

    今回申請された用法・用量の米国における承認年月日: 平成 16 年 8 月 2 日

    今回の事前評価は、米国での申請資料によるものである。 1.医薬品医療機器総合機構における事前評価準備会での依頼者に対する指摘事項及びそ

    の評価結果

    イ.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況等に関する資料 現在、HIV 感染症治療は、原則として血中ウイルス量を最大限かつ長期にわたって検

    出限界以下に抑え続けることにより、HIV 感染症の進行を抑え、免疫能を保持、QOL

    を改善し、HIV 感染に関連した臨床症状を改善、死亡を減らすことを目指している。こ

    の目標の達成のために、早期から強力な多剤併用療法 HAART(Highly active antiretroviral

    therapy)が行われ、米国をはじめとした先進国では 1996 年頃からエイズによる死亡と

    エイズ関連日和見感染症の発現頻度の著しい減少が認められている。

    しかし、HAART においては、複数の抗 HIV 薬を長期間服用し続けなくてはならず、

    また、薬剤によっては、食前と食後でその吸収率が大きく変化するものなどがあるため、

    その服薬方法は大変煩雑である。治療目標の達成には、アドヒアランスを長期間良好に

    維持することが必須であるが、この服薬における煩雑さがアドヒアランスの低下を誘引

    しているとの指摘も多く、患者負担の少ない治療法が望まれている。

    5

  • グアノシン構造類似体であるアバカビルはグラクソ・スミスクライン(米国)により

    開発された核酸系逆転写酵素阻害剤である。その硫酸塩である硫酸アバカビルは HIV 感

    染症を効能・効果として米国において、平成 10 年 12 月 17 日に、本邦においては、米

    国 FDA に提出された申請資料により、平成 11 年 9 月 10 日に承認されている。その用

    法・用量は、いずれの国においても 1 回 300mg 1 日 2 回(300mg BID)である。

    その後、米国において、本剤の 1 回 600mg1日 1 回投与と、1 回 300mg 1 日 2 回投与

    との治療効果が非劣性であることが示され、平成 16 年 8 月 2 日に 600mg 1 日 1 回(600mg

    QD)の用法・用量が追加された。本用法・用量は、タイ、エクアドルにおいても追加

    承認されており、EU においては今秋承認予定とされている。

    今回の申請は、本邦においても、1 回 600mg、1 日 1 回の用法・用量を追加するもの

    である。

    ロ.物理的化学的性質並びに規格及び試験方法に関する資料

    ・今回の申請に際し、新たな資料は提出されていない。

    ハ.安定性に関する資料

    ・今回の申請に際し、新たな資料は提出されていない。

    ニ.急性毒性、亜急性毒性、慢性毒性、催奇形性、その他の毒性に関する資料

    ・今回の申請に際し、新たな資料は提出されていない。

    ホ.薬理作用に関する資料

    ・今回の申請に際し、新たな資料は提出されていない。

    へ.吸収、分布、代謝、排泄に関する資料

    ・機構は、本剤の有効性及び安全性について、600mg QD 投与の妥当性について、薬物動

    態の面から説明を求めた。

    これに対し事前評価依頼者より、以下の回答がなされた。

    本剤は細胞内においてアバカビル一リン酸からカルボビル一リン酸となり、その後、

    カルボビル三リン酸(CBV-TP)に変換され HIV 逆転写酵素阻害作用を発揮する。従っ

    て、本剤の有効性については血漿中薬物動態パラメータとして、細胞内 CBV-TP 濃度が

    6

  • より関連性が強いものと考えられる。米国で実施した臨床試験において、硫酸アバカ

    ビル 300mg(ザイアジェン®あるいは TRIZIVIR®)1 日 2 回、6 週間投与した HIV 感染

    症患者 20 名の末梢血単核球の細胞内 CBV-TP 濃度及び血漿中アバカビル濃度が測定さ

    れている。血漿中アバカビル濃度及び細胞内 CBV-TP 濃度は共に投与後約 2 時間で最高

    濃度(Cmax)に到達したが、Cmax 到達後、血漿中アバカビル濃度及び細胞内 CBV-TP 濃

    度の消失半減期はそれぞれ 2.59 時間、20.64 時間と両者に相違がみられた。一方、Kewn

    らは本剤 300mg BID 投与した HIV 感染症患者における末梢血単核細胞内 CBV-TP 濃度

    について検討しており、HIV 感染症患者 6 名に本剤 300mg 投与(細胞内 CBV-TP 濃度

    の測定日は 1 日 1 回投与)した時の細胞内 CBV-TP 濃度のピーク値は 150 fmol/106cells、

    トラフ値(投与 24 時間後)は約 50 fmol/106cells であったことを報告している。また、

    本剤 600mg QD 投与した HIV 感染症患者 5 名について細胞内 CBV-TP 濃度を測定した

    結果、本剤 300mgQD 投与 12 時間後における平均細胞内 CBV-TP 濃度である 100

    fmol/106cells 以上を 24 時間維持したことが報告されている。これらのことから、本剤

    600mg QD 投与により、本剤 300mg BID 投与と同程度の効果を得ることが期待されるも

    のと考えられる。なお、海外臨床試験(CNA30021 試験)において、本剤 600mg QD 投

    与群(ラミブジン(3TC)300mgQD、エファビレンツ(EFV) 600mgQD 併用)は、本

    剤 300mg BID 投与群(3TC 300mgQD、EFV 600mgQD 併用)に対して非劣性が示され

    た。

    海外臨床試験において、600mg QD 投与群 12 名中 10 名に有害事象が認められ、その

    ほとんどが軽度あるいは中等度であった。また、本剤投与との関連が否定できない主

    な有害事象については、無力症(4 件)、腹痛(4 件)、頭痛(3 件)、下痢(2 件)、消

    化不良(2 件)であったが、重篤な有害事象ではなかった。有害事象の程度および発現

    頻度に用量相関性は認められなかったことより、本剤の安全性と関連性のある薬物動

    態パラメータについては明らかにすることは出来なかった。以上より、本剤 300mg BID

    投与時及び 600mg QD 投与時で認められた有害事象のプロファイルは類似しており、海

    外試験において投与量の増量に伴う有害事象の発現頻度の増加や程度の悪化も認めな

    かった。なお、海外臨床試験(CNA30021 試験)における過敏症発現率は、本剤 300mg

    BID 投与時及び 600mg QD 投与時でそれぞれ 7%及び 9%と類似しており、用法の違い

    による過敏症の発現率の違いは認めなかった。以上のことから、本剤 600mg QD 投与は

    妥当であると考える。

    ・機構は、本剤の日本人における薬物動態を示し、外国人との差異はないか説明を求め

    た。また、本剤 600mgQD 投与に関し、日本人における薬物動態の評価の必要性につい

    て事前評価依頼者の見解を求めた。

    これに対し事前評価依頼者より、以下の回答がなされた。

    200 年~200 年に本邦において、日本人 HIV 感染症患者 16 名を対象とした市販後

    7

  • 臨床試験を実施しており、当該試験に参加した 6 名を対象に本剤 300mg 単回経口投与

    後の薬物動態を検討している(GW592-03 試験)。また、海外では外国人 HIV 感染症患

    者を対象に本剤 100mg、300mg、600mg、900mg 及び 1200mg の単回投与試験が実施さ

    れた(131-001 試験、Kumar P, 1999)。両試験における 300mg 空腹時投与時の血中アバ

    カビル濃度推移を以下に示した。日本人及び外国人において本薬は投与約 1 時間で最

    高濃度(Cmax)に到達し、Cmax の平均値はそれぞれ約 3.9µg/mL 及び約 2.9µg/mL と日本

    人のほうが高いものの、その後の血中濃度推移に顕著な差は認められなかった。また、

    日本人及び外国人における Cmax 及び AUCinf の分布を以下に示した。日本人において

    Cmax、AUCinf 共に高値を示す被験者が 1 名認められるものの、他の被験者においては

    各々外国人と類似していた。

    0

    1

    2

    3

    4

    5

    6

    0 4 8 12 16 20 24

    時間(hr)

    血中アバカビル濃度(μ

    g/m

    L)

    日本人(n=6)

    外国人(n=9)

    日本人及び外国人における 本剤 300mg 単回経口投与後の血中アバカビル濃度推移

    0.0

    1.0

    2.0

    3.0

    4.0

    5.0

    6.0

    7.0

    Cm

    ax(μ

    g/m

    L)

    日本人 外国人

    0.0

    2.0

    4.0

    6.0

    8.0

    10.0

    12.0

    14.0

    16.0

    AU

    C(μ

    g・hr

    /mL)

    日本人 外国人

    日本人及び外国人における アバカビル 300mg 単回経口投与後の薬物動態パラメータ

    また、海外試験及び国内試験の安全性プロファイルが類似しており、海外試験にお

    ける有害事象発現率には用量相関性が認められなかった。従って、薬物動態の差異は

    被験者間のバラツキの範囲内と考えられ、臨床上の意義は小さいものと考える。さら

    に、海外試験において 100mg~1200mg 投与までの範囲で本薬の薬物動態に線形が確認

    されており、300mg 及び 600mg は線形の範囲内であることから、本剤 600mg QD 投与

    8

  • 時の薬物動態は既に実施した市販後臨床試験における本剤 300mgBID 投与時の本薬の

    薬物動態の検討結果より類推可能であり、改めて 600mg QD 投与での薬物動態の検討の

    必要性はないものと考える。

    ・機構は、本薬の薬物動態パラメータに影響を及ぼす因子(体格差、年齢、性別、食事、

    腎機能、肝機能、疾患及び薬物相互作用等)について説明を求めた。

    これに対し事前評価依頼者より、以下の回答がなされた。

    体格差及び性別については、海外における 4 つの臨床試験に参加した 371 名(男性

    304 名、女性 67 名)のアバカビル濃度を用いた予備的なポピュレーション解析が実施

    されており、その結果、除脂肪体重(男性;1.10×体重-120(体重/身長)2、女性;1.07

    ×体重-148(体重/身長)2)の本薬の AUC への影響は認められなかった。

    年齢については、本薬の高齢者における薬物動態は検討されていないが、高齢者へ

    の投与に際しては、肝、腎及び心機能の低下、合併症、併用薬等を十分考慮し、慎重

    に投与することが推奨されている。

    食事の影響については、海外において、HIV 感染症患者を対象に本剤 300mg を単回

    投与し食事の影響を検討した結果、空腹時投与と比較して、食後投与では Cmax が約 26%

    低下したが、AUCinf には影響は認められなかったことから、臨床上問題となる変化で

    はないと考える。

    腎機能障害については、腎機能低下患者における薬物動態成績は少ないものの、腎

    機能低下患者(GFR<10mL/min)に本剤 300mg を単回経口投与したところ、本薬の半

    減期は 1.33 時間であり、腎機能が正常な HIV 感染症患者における半減期(1.18 時間、

    試験番号:131-001)と類似していたことが報告されている。

    肝機能障害については、海外において、軽度の肝機能障害(Child-Pugh スコア:5)

    を有する HIV 感染症患者及び肝機能が正常な HIV 感染症患者を対象に、肝機能障害の

    本薬の薬物動態への影響を検討した結果、本剤 600mg を空腹時単回経口投与したとこ

    ろ、軽度肝機能障害患者では、肝機能が正常な HIV 感染症患者と比較して、AUCinf、

    Cmax 及び t1/2がそれぞれ 89%、26%及び 58%上昇した。このことにより、軽度肝機能障

    害患者には慎重投与することを推奨している。また中等度の肝機能障害患者における

    薬物動態は検討されていないため、投与しないことが望ましく、特に必要とする場合

    には慎重に投与することを推奨している。重度の肝機能障害患者における薬物動態も

    検討されていないが、血中濃度上昇により副作用の発現のおそれがあるため、禁忌と

    している。

    併用薬については、本薬はチトクローム P450 で代謝されず、またチトクローム P450

    誘導あるいは阻害効果を有さないことから、チトクローム P450 が代謝経路に関与する

    薬剤との相互作用はないと考えられる。また、海外において、本剤 600mg、ジドブジ

    ン(ZDV)300mg、3TC 150mg を単独あるいは 2、3 剤併用して単回経口投与したとこ

    9

  • ろ、本薬の薬物動態は ZDV 及び 3TC 併用投与の影響受けなかった。一方、3TC 併用、

    非併用に関わらず、本剤と併用した ZDV の Cmax は約 20%低下したが、AUCinfに変化は

    認められなかった。また、ZDV 併用、非併用に関わらず、本剤と併用した 3TC の AUCinf及び Cmax はそれぞれ約 15%及び 35%低下した。これらの変化は有意な変化ではなく、

    臨床上の意義は小さいものと考えられる。

    ・機構は、用法の違いにより併用薬に及ぼす影響(相乗・相加作用など)が考えられな

    いか、事前評価依頼者の見解を求めた。

    これに対し事前評価依頼者より、以下の回答がなされた。

    海外における併用薬(ZDV、3TC)との相互作用試験では本剤 600mg QD 投与時には、

    併用薬の薬物動態には臨床上意義のある顕著な差が認められなかった。本剤の 300mg

    BID 投与と 600mg QD 投与の違いが、併用薬に及ぼす影響は少ないものと考える。

    ・機構は、飲酒が本剤の薬物動態に与える影響について、考察を求めた。

    これに対し事前評価依頼者より、以下の回答がなされた。

    本薬はアルコールデヒドロゲナーゼ及び UDP-グルクロニルトランスフェラーゼの 2

    種の代謝酵素により代謝される。海外において実施された HIV 感染症患者を対象に本

    剤とエタノールとの相互作用を検討した試験において、本剤 600mg 及びエタノール

    (0.7g/kg)との併用により本薬の AUCinf及び Cmax がそれぞれ 41%及び 15%上昇した。

    本剤は 1200mg までの忍容性が確認されており、有害事象の発現に用量相関性は認めら

    れないことから、これらの変動は臨床上意義のあるものではないと考える。また、エ

    タノールとの併用により、カルボン酸体の尿中排泄率は低下が認められた。これはエ

    タノールの代謝のためにアルコールデヒドロゲナーゼが消費されたことによる影響と

    推測されるが、もう 1 つの代謝物であるグルクロン酸抱合体の尿中排泄率が増加し、

    総尿中排泄率には変化が認められなかった。これより、グルクロン酸抱合体形成経路

    はカルボン酸体形成経路の代替経路になりうることが示唆される。

    尿中排泄率(%)

    アバカビル

    (n=25)

    アバカビル+エタノール

    (n=24) 差 a

    アバカビル b 2.51(0.98,5.60) 3.80(1.69, 7.24) 1.38*(0.73, 1.91)

    カルボン酸体 b 26.78(16.04, 40.55) 9.00(5.11, 22.56) -17*(-17.70, -13.04)

    グルクロン酸体 b 23.51(17.01, 36.40) 36.60(7.34, 63.39) 11.0*(7.28, 14.11)

    合計 b 51.08(37.44, 71.58) 53.81(18.80, 71.35) -4.0(-8.11, 1.58) 中央値(範囲) a カルボン酸体、グルクロン酸抱合体はアバカビル相当量に換算、*P=

  • また、アルコールデヒドロゲナーゼは、異型アルコールデヒドロゲナーゼがヨーロ

    ッパ人の約 10%にみられるのに対し、日本人では約 90%に認められることが報告され

    ているが、この異型酵素は至適 pH、分子量、電気泳動上では正常酵素とは明らかに異

    なる性質を示し、正常酵素よりも酵素活性がやや高いことが報告されている。以上の

    ことを考慮すると、日本人においても、飲酒による本剤の薬物動態への顕著な影響は

    ないものと推察される。

    ・機構は、以上の回答を概ね了承する。本剤の腎機能障害患者への投与経験が少ないこ

    と、また軽度及び中等度の肝機能障害患者に対しては慎重に投与することが必要であ

    ることから、市販後においてこれらの患者に対する安全性に関し更なる情報収集が必

    要と考える。また、飲酒については、本剤の薬物動態への影響が懸念されるが、添付

    文書において適切に情報提供はなされているものと考える。日本人と外国人との薬物

    動態パラメータの比較において、事前評価依頼者は、日本人において Cmax、AUCinf 共

    に高値を示す被験者が 1 名認められるものの、他の被験者においては各々外国人と類

    似していると考察しているが、全体的にみて各人種ともにバラツキの範囲が大きく、

    その差に大きな違いはないものの、外国人に比べ日本人の方が Cmax 及び AUCinfが高い

    傾向があると考えられる。しかし、本剤 600mg 投与時の Cmax及び AUCinfについても同

    様の傾向が認められる可能性は否定できないが、その差が安全性に重大な懸念を及ぼ

    すものではないと判断する。

    ト.臨床試験の試験成績に関する資料

    (1) 臨床的位置づけについて ・機構は、本剤の有効成分である硫酸アバカビルとラミブジンの合剤(カイベクサ錠)が

    開発されていることを踏まえ、本剤の臨床的位置づけについて、カイベクサ錠との使い

    分けにも言及した上で説明するよう事前評価依頼者に求めたところ、以下の回答を得た。

    HIV 感染症治療の標準的治療法である HAART においては、核酸系逆転写酵素阻害剤

    が中心的に用いられており、核酸系逆転写酵素阻害剤2剤に加え、プロテアーゼ阻害剤

    や非核酸系逆転写酵素阻害剤1剤を加えたレジメンとすることが HIV 感染症「治療の手

    引き」(2003 年 11 月発行 第 7 版、HIV 感染症治療研究会)等において推奨されている

    ところである。

    カイベクサ錠は HAART において中心的に用いられている核酸系逆転写酵素阻害剤2

    剤(ラミブジン及び硫酸アバカビル)を固定用量含有する配合剤であり、HAART の問

    題点である服薬錠数が多いことによる負担を軽減すると共に、1日1回投与という簡便

    な投与を可能とすることにより、良好な服薬アドヒアランスの維持に寄与すると考えら

    れる。

    11

  • その一方、カイベクサ錠は有効成分含量が固定されているため、肝または腎機能障害

    患者、12 歳未満の小児及び体重 40 キロ未満の患者等、どちらか一方の成分に対し減量

    等を考慮する必要のある患者には使用できないので、当該薬の効能・効果に関連する使

    用上の注意には、そのような場合には個別のラミブジン製剤(エピビル錠)又はアバカ

    ビル製剤(ザイアジェン錠)を用いる旨記載しているところである。その際、カイベク

    サ錠において1日1回投与という簡便な投与を可能とすることにより良好な服薬アド

    ヒアランスの維持に寄与すると考えられるのと同様に、ザイアジェン錠についても既存

    の1日 2 回投与に加え1日1回の簡便な用法による使用を可能とすることによって、よ

    り良好な服薬アドヒアランスの維持に寄与するとともに患者の治療における選択肢を

    増す上で意味のあることと考えられる。

    ・機構は、CNA30021 試験の投与対象が未治療例であったことから、既治療例に対する成

    績があれば提出するよう事前評価依頼者に求めたところ、以下の回答を得た。

    現時点において、抗 HIV 治療薬の治療経験のある患者を対象とする、本剤 600mg QD

    投与における試験成績はないが、現在、海外において既治療例を対象とした、本薬と 3TC

    の合剤(本剤 600mg/3TC 300mg)の QD 投与群と、本剤 300mgBID 投与及び 3TC 300mg

    QD 投与の併用投与群における有効性及び安全性を比較した臨床試験(CAL30001 試験)

    を実施している。本試験の成績については、最終報告書が完成され次第、追加提出する

    予定である。

    (2) 有効性の評価について ・機構は、本剤 600mg QD 投与と本剤 300mg BID 投与の比較検討が行われた CNA30021

    試験において、有効性評価対象が ITT(少なくとも1回投与を受けたことのある)解析

    対象集団であることから、投与が 48 週に満たなかった症例については投与回数の確認

    が必要と考え、事前評価依頼者に説明を求めたところ、以下の回答を得た。

    CAN30021 試験において、本剤の投与期間が 48 週に満たなかった症例は、本剤 600mg

    QD 投与群で 23.7%(91/384 例)、本剤 300mg BID 投与群で 23.1%(89/386 例)とほぼ同

    数であった。また、本剤の投与期間が 48 週に満たなかった症例における本剤の平均投

    与期間及び平均投与回数は、本剤 600mg QD 投与群がそれぞれ 74.2 日及び 73.3 回、1

    日 2 回投与群がそれぞれ 84.1 日及び 158.8 回であり、本剤 300mg BID 投与群の投与期

    間が長く、投与回数も多い傾向が認められた。なお、本試験においては本剤 300mg 錠

    が使用されているが、投与回数については、本剤 600mg QD 投与群では 600mg(300mg

    2 錠)を 1 回、本剤 300mg BID 投与群では 300mg(300 mg 1 錠)を 1 回として集計し

    た。

    本剤の投与期間が 48 週に満たなかった症例の投与中止理由は、以下のとおりであった。

    12

  • 本剤 1 日 1 回投与群 N=91

    本剤 1 日 2 回投与群 N=89

    中止理由 症例数 (%)

    平均投与

    期間(日)

    平均 投与回数

    症例数 (%)

    平均投与

    期間(日) 平均

    投与回数

    有害事象 50(54.9%) 20.7 20.7 43(48.3%) 32.7 61.9

    フォローアップ不可 18(19.8%) 141.2 139.3 21(23.6%) 125.4 219.1

    同意撤回 10(11.0%) 84.4 84.4 10(11.2%) 108.9 216.2

    ウイルス学的効果不十分 2(2.2%) 242.5 242.5 3(3.4%) 225.3 449.3

    プロトコール違反 1(1.1%) 29 29 2(2.2%) 55.5 111

    症状の進行 1(1.1%) 267 267 1(1.1%) 136 272

    その他 9(9.9%) 172.1 167.6 9(10.1%) 159.4 318.9

    投与期間が 48 週に満たなかった原因別に平均投与期間、回数を比較すると、原因が有

    害事象であった場合の平均投与期間が最も短く、平均投与回数も最も少なかった。した

    がって、各投与群間における 48 週に満たなかった症例の投与回数の差は、有害事象が

    占める割合の差が影響したものと考えられる。

    ・ 機構は、HIV-1 RNA の変化量等については、平均値、中央値だけでなく、SD、SE や四

    分位点についても確認し、有効でなかった症例が存在していないかどうか確認するよ

    う事前評価依頼者に求めところ、以下の回答を得た。

    ITT を対象に、HIV-1 RNA 及び CD4 のベースラインからの変化を四分位点及び最小

    値、最大値まで確認したところ、大きく代表値から外れたデータについて個々に議論は

    なされていないが、HIV-1 RNA についてはベースラインからの変化が 0 を超える場合は

    ほとんど無いこと、CD4 も減少はほとんど見られないことが確認でき、本剤の効果は長

    期にわたり持続しているものと考えられた。

    (3) 用量調節について ・機構は、添付文書(案)の用法・用量欄に「適宜増減する」との記載されていることか

    ら、現在までに用量を増減した症例があればその方法について示し、適宜増減時の有効

    性・安全性についてまとめるよう事前評価依頼者に求めた。特に、QD 投与となった際

    に、何を指標にどのように増減を行うのか明確でないと考え、この点について見解を示

    すよう事前評価依頼者に求めたところ、以下の回答を得た。

    CNA30021 試験において、規定された用量から増量した症例はなかった。また、減量

    に関しても、医学的処置として実施された症例はなかった。しかし、48 週目までの治療

    期間中に有害事象や飲み忘れなどの理由によって完全な服薬ができなかった症例が、本

    剤 600mg QD 投与群で 384 例中 45 例、本剤 300mg BID 投与群で 386 例中 46 例に認め

    られた。服薬が不完全であったこれらの症例の有効性(HIV-1 RNA 及び CD4 陽性リン

    13

  • パ球数の AAUCMB)を、服薬が完全であった症例と比較した結果、本剤 600mg QD 投

    与と本剤 300mg BID 投与のいずれの場合においても服薬が不完全であった症例では、効

    果が減弱していることが認められた。このことから、何らかの理由によって減量が必要

    となった場合でも、HIV-1 RNA 量及び CD4 陽性リンパ球数などのモニターをより注意

    深く行い、効果が減弱してきた症例では薬剤の変更を考慮するべきであると考えられた。

    一方、安全性については、グレード 3 又は 4 の有害事象を器官分類別に集計し、その

    うち発現頻度の差が2%以上であった事象について、服薬が不完全な症例と完全な症例

    で比較した結果、本剤 600mg QD 投与群と本剤 300mg BID 投与群のいずれにおいても服

    薬が不完全な群において有害事象発現頻度が高かった。(QD 投与群のうち服薬完全症

    例:24%、83 例;服薬不完全症例:40%、18 例)(BID 投与群のうち服薬完全症例:21%、

    73 例;服薬不完全症例:28%、13 例)有害事象が発現した症例では服薬率が低下するこ

    とが予想され、この結果からもそのことが裏付けられた。

    以上のとおり、投与回数に関わらず本剤の用量の増減については、現行添付文書(BID

    投与)においても具体的な指標は示していないが、体重が非常に重い患者や代謝機能が

    低下しているような患者では、医師の判断によって適宜増減される場合があると考えら

    れる。しかし、本剤の増量時には有害事象のリスクが増加することや、減量時には効果

    が減弱する可能性について留意し、十分な観察が必要であると考える。

    (4) 効能・効果について ・機構は、効能・効果が「HIV 感染症」となっている点について、本剤の有効性が確認

    されているサブクラスを示した上で、HIV-1 感染症とする必要がないか検討するよう事

    前評価依頼者に求めたところ、以下の回答を得た。

    本薬は抗 HIV-2 作用を有しており、in vitro において HIV-1 に対する作用と同程度の抗

    ウイルス作用を示した。従って、本剤は HIV-2 感染症患者にも有効性を示すと考えられ

    るが、HIV-2 患者の分布は西アフリカに限局しており、国内での患者は殆どいないと推

    定されていること、他の抗 HIV 薬との併用投与も含めて HIV-2 感染症患者を対象とし

    た有効性と安全性は確認されていないこと、並びに、本剤の米国の海外添付文書におけ

    る効能・効果も「HIV-1 感染症」となっていることから、本剤の申請効能・効果を「HIV-1

    感染症」に変更することとする。

    その後、申請者より、既承認のエピビル錠の効能・効果及び本剤の既承認の効能・効

    果が「HIV 感染症」であることを理由に、HIV-1 感染症のみならず HIV-2 も含め「HIV

    感染症」としたいとの申し出があった。

    機構は、本件については、専門委員の意見を踏まえ、検討したいと考える。

    (5) 小児への投与について ・機構は、本邦における小児に対する単回投与の可能性について見解を述べるよう事前評

    14

  • 価依頼者に求めたところ、以下の回答を得た。

    ① BID 投与による海外/国内における小児の取扱いについて

    海外では、主に小児を対象として本薬の Oral Suspension 製剤(以下 液剤)が市販さ

    れている。また、海外で実施された小児患者を対象とした臨床試験成績に基づき、BID

    投与での推奨用量が設定されている。一方、本邦においては小児の患者数が非常に少な

    いこと及びエイズ治療薬研究班を通じた未承認治療薬の提供体制が既に確立されてい

    たことより、液剤の承認は取得していない。しかしながら、小児における推奨用量設定

    に関する海外試験成績については、本邦におけるザイアジェン錠の初回申請時資料とし

    て提出し、承認審査を経て、添付文書に「アバカビルは経口投与後速やかにかつ良好に

    吸収され、成人と類似した薬物動態が認められる。生後 3 ヵ月から 12 歳までの小児に

    おける推奨用量は 8 mg/kg、1 日 2 回であり、やや高い血漿中濃度が認められるが、成

    人に 300mgBID 投与した時に得られる血漿中濃度に相当する。」との記載をしている。

    ② 小児における QD 投与の可能性について

    小児における本薬の推奨用量は、国内外ともに 8mg/kg BID投与とされており、Pediatric

    European Network for the Treatment of AIDS(PENTA)は、小児 HIV 感染患者を対象とし

    た薬物動態試験を実施した結果、本薬の QD 投与(本薬 16 mg/kg)と BID 投与(本薬 8

    mg/kg)の AUC0-24 の幾何平均の比の 90%信頼区間が1を超えていた。本薬のリン酸化

    に成人と小児で大きな差はないと推察されるので、小児に対しても本薬の 1 日 1 回投与

    は可能であると考える。しかしながら、本邦においては体重による用量調節の容易な液

    剤の承認を取得しておらず、また、現時点では申請する予定がないことより、現行の 1

    日 2 回投与における小児の取扱いと同様、本邦において小児への 1 日 1 回投与を積極的

    に推奨することは適切でないと考え、添付文書(案)の記載も現行どおりとしている。

    これに対し、機構は以下のように考える。

    小児における QD 投与時と BID 投与時の AUC0-24の比較については、統計学的には有

    意な差が認められていないものの、その AUC0-24は 8mg/kg、1 日 2 回投与時 9.91mg/mL・

    h(90%CI 8.26-11.89)、16mg/kg、1 日 1 回投与時 13.37mg/mL・h(90%CI 11.80-15.16)

    と 1 日 1 回投与時の方が 1 日 2 回投与に比べ、高度の暴露を受ける可能性が高く、本デ

    ータを以って、小児において 1日 1回投与と 1日 2回投与の間に差がないとは認め難い。

    事前評価依頼者は、剤型上の理由を以って、小児については、1 日 1 回投与を積極的に

    推奨するものではないとしているが、小児においては 1 日 1 回投与時には 1 日 2 回投与

    時に比べ、高度の暴露を受ける旨、情報提供すべきであると考える。

    ・機構は、13 歳以上 20 歳未満の者に対する用法・用量の指針を示すことを事前評価依頼

    者に求めたところ、以下の回答を得た。

    15

  • 本剤は米国において、13 歳以上 20 未満の者に対し 300mg BID 投与で承認されている

    が、現在、米国では本剤 600mg QD 投与について、また、欧州では本剤 300mg BID 投

    与及び本剤 600mg QD 投与について承認事項一部変更を申請中であり、今夏の承認が見

    込まれている。以上のとおり、海外においても 13 歳以上 20 歳未満の者に対しては錠剤

    による投与が可能な用法・用量が設定される予定であることより、本邦においても、13

    歳以上 20 未満の者に対しては、本剤 600mg QD 投与も同様に設定できると考える。

    (6) 安全性について ・機構は、現時点までの国内における本剤の安全性について説明し、特に、日本人におけ

    る過敏症、並びに、本剤使用患者のうち重篤な副作用・感染症が発現した症例について

    は詳細を提示するよう事前評価依頼者に求めたところ、以下の回答を得た。

    2004 年 4 月 12 日時点で本剤との関連が否定できない有害事象(以下、副作用)186

    例 440 件を入手している。これらのうち、本剤による過敏症と報告された、又は発現症

    状や本剤の投与状況等から過敏症と判断した症例(以下、「過敏症発現症例」)は 36 例、

    過敏症症例を除く重篤な副作用が発現した症例は 24 例であった。

    過敏症について、症状の多くは軽微又は中等度の発疹(皮疹、薬疹を含む)や発熱で

    あり、重篤と報告された症例は 8 例であった。また、過敏症により死亡した症例はみら

    れなかった。1 例を除く全ての症例は本剤の投与中止、あるいは本剤及び併用薬剤の投

    与を中止すること等により、回復又は軽快していた。一方、「未回復」と判定された 1

    症例は、本剤中止後も発疹が持続しており、別の皮膚疾患であった可能性もあると報告

    医はコメントしている。また、報告された過敏症は、ほとんどの症例が投与開始 6 週以

    内に発現しており、中央値は本剤投与開始 10 日目(1~153 日目)であった。なお、過

    敏症発現症例は全例 1 日 600mg を投与されており、投与回数が明らかな症例の中に、本

    剤 600mg QD 投与症例はなかった。

    以上より、本邦において集積された過敏症の多くは軽微又は中等度であり、また、重

    篤な過敏症についても本剤の投与中止により、回復または軽快していることから、臨床

    的に大きな問題はみられていないと考えられた。また、過敏症については、CCSI を参

    考に現行の「使用上の注意」に記載しており、本邦において集積された過敏症の発現傾

    向は、本記載と比較して大きな差異はみられていない。

    過敏症症例を除く重篤な副作用について、事象の多くは血液障害、腎機能障害あるい

    は肝機能障害であり、24 例全例において副作用により死亡した症例はみられていない。

    これらの事象は原疾患(HIV 感染症)、合併症(血友病や肝炎)の症状あるいは併用薬

    剤の副作用として知られているものである。また、事象発現後も本剤を投与継続した症

    例が 15 例、そのうち回復又は軽快している症例が 5 例あった。なお、重篤な副作用発

    現症例は全例1日600mgを投与されており、投与回数が明らかな症例の中に、本剤600mg

    QD 投与した症例はなかった。

    16

  • 以上より、現時点において、臨床的に大きな問題点はみられていないと考える。

    ・機構は、Grade3/4 あるいは重篤な有害事象が、本剤 600mg BID 投与群(22.3%)に比べ

    て QD 投与群(26.3%)にやや多く認めることから、有害事情の内訳について確認する

    よう事前評価依頼者に求めたところ、以下の回答を得た。

    発現頻度が 1%以上認められたGrade3/4の有害事象の内訳は、薬物過敏症(QD 19例 4.9%、

    BID 8 例 2.1%)、CK 増加(QD 10 例 2.6%、BID 4 例 1.0%)、AST 増加(QD 7 例 1.8%、

    BID 5 例 1.3%)、うつ病(QD 6 例 1.6%、BID 6 例 1.6%)、下痢(QD 6 例 1.6%、BID 0

    例 0%)、ALT 増加(QD 5 例 1.3%、BID 7 例 1.8%)であった。全体の頻度としては、QD

    投与群と BID 投与群がそれぞれ 26.3%と 22.3%であったが、個々の事象では 10 例以上

    の差がみられた薬物過敏症を除くと、特に大きな差は認められなかった。また、これら

    のうち、担当医師によって試験薬との関連性が考えられた有害事象は薬物過敏症のみで

    あった。薬物過敏症について、各投与群間における Grade 別の発現件数、発現までの投

    与期間及び症状の持続期間を検討した結果、Grade 別の発現頻度では、Grade3 では QD

    投与群の頻度が若干高かったものの、その他の Grade ではほぼ同じであり、また、各投

    与群の発現期間及び持続期間についても違いは認められなかった。なお、これらの薬物

    過敏症については、いずれも症状は回復した。

    以上のことから、QD 投与群と BID 投与群とでは、安全性プロファイルに差はないと考

    えられた。

    ・機構は、有害事象の発現で中止となった症例についても、QD 投与群と BID 投与群にお

    ける安全性プロファイルの違いについて確認するよう事前評価依頼者に求めたところ、

    以下の回答を得た。

    CNA30021 試験において有害事象が原因で治療中止又は変更となった症例の頻度は、

    QD 投与群が 50 例(13.0%)、BID 投与群が 42 例(10.9%)であり、両投与群間に差は

    認められなかった。そのうち担当医師によって試験薬との関連性が考えられると判断さ

    れた有害事象で比較しても、QD 投与群が 46 例(12.0%)、BID 投与群が 39 例(10.1%)

    であり、同様に差は認められなかった。このように、全体の有害事象の発現頻度では投

    与回数に差が認められなかった。さらに、個々の有害事象の差異についても検討を行っ

    たが、QD 投与群と BID 投与群でその発現頻度に大きな差は認められなかった。

    ・機構は、安全性について体重で層別した上で比較検討するよう事前評価依頼者に求めた

    ところ、以下の回答を得た。

    CNA30021 試験において、安全性の項目として Grade3/4 で報告された有害事象につい

    て、低体重層(50kg 未満)と高体重層(50kg 以上)で層別した結果、600mg QD 投与群

    (低体重層 27.3%(3/11 例)、高体重層 26.3%(98/373 例))、300mg BID 投与群(低体重

    17

  • 層 25.0%(3/12 例)、高体重層 22.2%(83/374 例))の発現頻度であった。有害事象のう

    ち、うつ病については 600mg QD 投与群において低体重層に 2 例認められたが、低体重

    層の母数が少なく、300mg BID 投与群の低体重層でうつ病が認められていないことから、

    低体重とうつ病のリスクについて充分な検討か出来なかった。

    また、本試験の体重の中央値である 72.3kg を境に分けた場合の Grade3/4 の有害事象

    発現率は、600mg QD 投与(73.2kg 未満 25.4%(49/193 例)、73.2kg 以上 27.2%(52/191

    例))、300mg BID 投与(73.2kg 未満 19.8%(38/192 例)、73.2kg 以上 24.7%(48/194 例))

    であった。体重 73.2kg 未満/以上のいずれかにおいて 600mg QD 投与と 300mg BID 投与

    の発現率の差が 2%以上であった有害事象は、以下の通りであった。

    本剤 QD+3TC+EFV 本剤 BID+3TC+EFV 有害事象

  • 審査報告(1)

    平成 16 年 11 月 10 日

    1.申請品目

    [販 売 名] ザイアジェン錠

    [一 般 名] 硫酸アバカビル

    [申 請 者] グラクソ・スミスクライン株式会社

    [申請年月日] 平成 16 年 10 月 15 日(製造承認事項一部変更承認申請)

    [剤型・含量] 1 錠中にアバカビル 300mg(硫酸アバカビルとして 351mg)を含有するフイルムコート錠である。

    [申請時効能・効果] HIV感染症

    [申請時用法・用量] 通常、成人には他の抗 HIV 薬と併用して、アバカビルとして 1

    日量 600mg を 1 日 1 回又は 2 回(300mg×2)に分けて経口投与

    する。

    なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。

    2.提出された資料の概略及び医薬品医療機器総合機構における審査の概要

    医薬品医療機器総合機構(以下、機構)は事前評価レポート(1)をもとに、専門委員に意

    見を求めた。専門委員との協議の概要を下記に記した。

    1) 過敏症について 本剤については、重篤な過敏症も報告されていることから、現行の添付文書においても、

    警告欄が設置され、注意喚起がなされている。今回の申請に際し、回答として提出された

    国内使用成績調査において観察された過敏症のうち、転帰が未回復とされた症例が1例報

    告されたことから、この 1 例の詳細について確認すべきであるとの意見が専門委員より述

    べられた。

    これを受け、機構は、この症例の詳細について説明するよう申請者に求めた。

    これに対し、申請者は以下の通り回答した。

    本症例は、3 歳男性であり、口腔内カンジダ症、梅毒、離人症の既往を有し、B 型肝炎、

    足白癬、上気道炎を合併する症例であった。併用薬としては、ジドブジン/ラミブジン、

    スルファメトキサゾール/トリメトプリム、総合感冒剤、臭化水素酸デキストロメトルフ

    ァン、セフジニル、ポピドンヨード含嗽剤、ロキソプロフェンナトリウム、ビホナゾール

    クリームが投与されていた。本剤投与開始 5 日目に発疹、悪寒、ぴりぴりする感じ、違和

    感(いずれも軽微)が発現したため、本剤の投与が中止され、発疹、ぴりぴりする感じに

    対して、ジフェンヒドラミン軟膏が投与された。投与中止 7 日後において、ぴりぴりする

    19

  • 感じ、違和感は回復したものの、発疹、悪寒は未回復であった。担当医師は、発疹はざ瘡

    様であり、ザイアジェン投与中止 7 日後においても、持続していたことから、過敏症では

    なく別の皮膚疾患であった可能性もあり、また、上気道炎の悪化が認められたことから、

    悪寒については、上気道炎によるものである可能性があるとコメントしている。

    上記症例については、併用薬剤においても発疹などの副作用が報告されていることから、

    他の薬剤に起因する可能性も否定できないと機構は考える。しかし、本剤においては、海

    外のみならず、本邦においても市販後に重篤な過敏症が報告されていることから、初回の

    承認時にも過敏症に注意するよう具体的な指示を記載したカードを患者に携帯させるなど

    の対応を取っており、引き続き、十分な注意が必要であると考える。

    2) 小児に対する投与について 今回の申請における添付文書(案)において、「小児等への投与」については、現行の添付

    文書同様「生後 3 ヵ月未満の乳児に対する安全性は確立していない(使用経験が少ない。)」

    とされている。今般申請された 1 日 1 回投与においては、1 日 2 回投与に比べ、統計学的に

    有意差は得られていないものの高度の暴露を受けることが報告されていること(事前評価

    レポート ト項 (5)参照)、現行の添付文書(案)では、1 日 1 回投与についても 3 ヶ月以上

    の小児に対しては安全性に関する情報が集積されているように読めることから、この点に

    ついて適切に添付文書に反映し、情報提供する必要がないか機構は専門委員に意見を求め

    た。

    専門委員は統計学的有意差が得られていないものの得られている情報については、適切

    に添付文書に反映するなど情報提供すべきであると機構の意見を支持した。

    機構は、添付文書(案)における小児に関する記載について、再度検討するよう申請者に指

    示をした。

    申請者は、これに対し以下の通り回答した。

    小児における 1 日 1 回投与に関する安全性・有効性情報は限られており、1 日 1 回投与は、

    米国においては 16 歳以上、欧州においては 12 歳以上が対象とされており、本邦において

    も小児に 1 日 1 回投与を推奨することは適切ではないと考えている。しかし、PENTA13 試

    験の成績において、3 ヶ月以上の小児においては 1 日 2 回投与と 1 日 1 回投与の間に薬物動

    態学的な大きな違いは認められておらず、添付文書(案)の「小児等への投与」に 1 日 1 回投

    与に関する新たな情報を記載する必要性は低いと考える。

    20

  • 8mg/kg を 12 時間毎投与時と 16mg/kg を 24 時間毎投与時の HIV-1 感染小児における

    アバカビル薬物動態パラメータの比較

    機構は、これに対し以下の通り考える。

    統計学的な有意差は認められていないものの、本剤の 1 日 1 回投与により、1 日 2 回投与

    に比べ、本剤の Cmax 及び AUC は明らかに増加傾向が認められており、また、Cmin は低下

    傾向が認められている。申請者は、本剤の有効性・安全性と最も相関する薬物動態学的パラ

    メータ(AUC、Cmax、Cmin、T1/2)は何かという問いに対し、いずれのパラメータが薬効

    と相関するとは明確に述べていないものの、本剤の代謝物である CBV-TP 濃度が 100

    fmol/106cells 以上維持したことを理由に本剤 1 日 1 回投与は 1 日 2 回投与と同程度の効果を

    期待できると述べている(事前評価レポート へ項参照)。申請者が回答に引用した薬物濃

    度は、細胞内の値であり、血中濃度は必ずしも細胞内濃度とパラレルではないと考えるも

    のの、血中濃度は低下しても細胞内濃度は高い濃度が維持されることを支持するデータも

    なく、小児における血中 Cmin の低下が細胞内濃度の低下、ひいては有効性の低下を来たす

    ことは否定できない。また、AUC 増加による暴露量の増加が副作用を誘引する可能性も推

    察される。小児については、臨床における安全性・有効性情報も乏しいことから、機構は、

    小児については、1 日 1 回投与で 1 日 2 回投与よりも高度の暴露を受ける可能性がある旨を

    添付文書に記載するよう指示した。

    申請者はこれを了承した。

    3) 効能・効果について

    21

  • 本剤は、本邦においては、「HIV 感染症」の効能・効果で既に承認を得ているものの、HIV-2

    感染症について有効性が確認されているのは、in vitro 試験においてのみであり、臨床試験

    において有効性が確認されているのは HIV-1 感染症のみであることから、本邦における効

    能・効果を HIV-1 感染症と変更する必要がないかについて、機構は専門委員に意見を求め

    た。

    専門委員は、本邦においては現状では、HIV-2 感染患者はほとんど見受けられないものの、

    本剤の HIV-2 感染症に対する有効性が否定されているわけではないことから、HIV-2 感染症

    に対する有効性は in vitro 試験においてのみ確認されていることを情報提供した上で、効

    能・効果としては、現行どおり「HIV 感染症」とすべきであるとの意見が述べられた。

    機構は、この意見を受け、本剤の効能・効果については、現行どおり「HIV 感染症」と

    することとした。

    4) 適宜増減について 申請された用法・用量には、「なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。」との記載

    があるが、1 回 600mg を超える投与量については、安全性が確認されていないことから、「な

    お、年齢、体重、症状により適宜減量する。」とすることが適切ではないかと機構は考え、

    専門委員に意見を求めた。

    専門委員より、「適宜減量」とすることは妥当であるとの意見が出された。

    3.承認審査資料適合性調査結果及び機構の判断

    1)適合性書面調査結果に対する機構の判断

    薬事法第 4 条第 4 項後段に規定する書面による調査を実施した結果、薬事法施行規則

    第 18 条の 4 の 3 に規定する基準(申請資料の信頼性基準)に適合すると考えられたこと

    から、機構は承認審査資料に基づき審査を行うことについて支障はないと判断した。

    4.総合評価

    機構は、提出された資料について、以上のような審査を行った結果、日本人における安

    全性、有効性、ならびに 1 回 600mg投与時の薬物動態については市販後において検討が必

    要であるものの、下記の承認条件を付帯した上で、本剤に対し、現行の 1 回 300mg1 日 2 回

    の用法・用量に加え、1 回 600mg1 日 1 回の用法・用量を追加承認して差し支えないと判断

    した。なお、既存の承認条件についても、字句、記載順など整備を行った。

    また、本申請は新用量医薬品であることから、その再審査期間については、4 年とするべ

    きであるが、初回承認時の再審査期間が 4 年以上残余していることから、今回申請された

    用法・用量についての再審査期間は残余期間(平成 21 年 9 月 9 日まで)とすることが適当

    であると判断する。

    また、本剤は生物由来製品または特定生物由来製品に該当しないと判断する。

    22

  • 23

    [承認条件] 1. 本剤を使用する場合は重篤な過敏症に留意し、過敏症の兆候又は症状が発現した

    場合には本剤の使用を中止する等の適切な処置をとるよう、医師に要請すること。

    2. 本剤については、現在、国内外において臨床試験を実施中であることから、使用

    に当たっては、患者に対して本剤に関しては更なる有効性・安全性のデータを引

    き続き収集中であること等を十分に説明し、インフォームドコンセントを得るよ

    う、医師に要請すること。

    3. 我が国における薬物動態試験については、進捗状況を定期的に報告するとともに、

    終了後速やかに試験成績及び解析結果を提出すること。また、海外において現在

    実施中又は計画中の臨床試験についても、終了後速やかに試験成績及び解析結果

    を提出すること。

    4. 再審査期間が終了するまでの間、原則として国内の全投与症例を対象とした市販

    後調査を実施し、本剤の使用実態に関する情報(患者背景、有効性・安全性(他

    剤併用時の有効性・安全性を含む。)及び薬物相互作用のデータ等)を収集して定

    期的に報告するとともに、調査の結果を再審査申請時に申請書添付資料として提

    出すること。

    5.事前評価レポート(その1)の訂正

    事前評価レポー

    ト(その1) 該当箇所

    現行 訂正後

    イ項 14 行目 …グラクソ・スミスクライン(米国)により開発された…

    …グラクソ・スミスクラインにより開発された…

    ヘ項 19 行目 …本剤 300mgQD 投与… …本剤 300mg 単回投与… ヘ項 26 行目 …において 600mgQD 投与群 12 名

    … …において本剤 100~1200mg を単回投与したところ、12 名…

    ヘ項 59 行目 …本剤 300mgBID 投与… …本剤 300mg 単回投与… ト項 27 行目 CAN30021 試験において、… CNA30021 試験において、…

    ト項 150 行目 13 歳以上 20 未満の者に対し… 13 歳以上 20 歳未満の者に対し… ト項 150~153行目

    …現在、米国では本剤 600mg QD投与について、また、欧州では本

    剤 300mg BID 投 与 及 び 本 剤600mg QD 投与について承認事項一部変更を申請中であり、今夏の

    承認が見込まれている。

    …現在、米国及び欧州では成人に対して本剤 600mgQD 投与の追加を申請中であるが、欧州において

    は 13 歳以上 20 歳未満の非成人もQD 投与の対象としており、今夏の承認が見込まれている。