論壇 - 東京税理士会論壇 は じ め に 昨 年 1 月 30 日 、 国 税 通 則 法 の...

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Page 1: 論壇 - 東京税理士会論壇 は じ め に 昨 年 1 月 30 日 、 国 税 通 則 法 の 大 改 正 が よ う や く 成 立 し た。ね じ れ 国 会 の た め

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論壇●はじめに

昨年11月30日、国税通則

法の大改正がようやく成立

した。ねじれ国会のため

に、民主党が提出した当初

案がそのまま成立せずに、

①租税手続法への法律名の

改正、②通則法1条の目的

規定の改正、③『納税者権

利憲章』の制定に関する条

項は、残念ながら、削除さ

れてしまった。また、税務

調査手続についても、事前

通知を書面でなく口頭で行

うことで足りると修正・後

退させられてしまった。

しかし、後退したとはい

え、この改正の意義は絶大

である。手続的正義の思想

が税務行政にも具体的に注

入されたからである。たと

えば、今後は不利益処分を

するときは、青色申告・白

色申告を問わず、理由が付

記されねばならず、その付

記理由が不備であれば、そ

れだけで処分は取り消され

ることになる。こうした手

続的正義の思想が税務行政

に滲透すれば、税務行政の

公正化・透明化を大きく前

進させることになる。

これまで、「嘆願書」なる

ものを事実上強制され、納

税者のためにやむなく提出

してきた税理士も、今回の

改正で「嘆願」から解放さ

れた。「嘆願」という言葉が

どれほど専門家から専門性

を奪い、専門家を卑屈な立

場に追い込んでいたかを思

い出していただきたい。す

でに、法律制定後12月2日

を境に、嘆願書は姿を消し

た。しかも、従来は無理で

あった救済が広く認められ

るようになってきた。多く

の税理士が手応えを感じ始

めている。

●申告納税制度の再構築

さらに言えば、今回の改

正は申告納税制度を真に国

民主権主義の理念にふさわ

しいものに変えていくため

の第一歩となるはずである。

申告納税制度とは一体何

であるのか、欧州の賦課課

税制度とどこが違うのか、

税理士界はこれまでどう理

解してきたのだろうか?申

告納税制度は、納税者自ら

が税法を第一次的に判断す

る制度で、民主的な制度だ

と言われてきた。しかし、

納税者が判断しなければな

らない法律は税法という法

律で、法学部の教員でも通

常はわからない法律であ

り、弁護士の大半も理解し

ていない法律である。しか

も、申告納税制度は、税額

を自らの申告で算出して、

自らの租税債務額を確定し

なければならないので、税

額まで計算するためには、

収入から、経費、さらには

諸控除をすべて正確に理解

しなければ計算できない。

これを全納税者に強制し、

わからなければ税理士に自

分のコストで委任して、申

告しろ、という制度となっ

ている。これに対して、賦

課課税の国は、税額計算は

税務署の仕事になるので、

納税者はその資料を出せば

いいことになる。納税者の

資料としての申告を見て、

税務署が計算した上で処分

をすることになる。これが

賦課課税である。一方、申

告納税制度というのは、税

務署の税額計算の手間と賦

課処分の手間を省き、申告

書に税額を記載させ、その

申告書に確定効果を付与

し、処分を基本的に省略で

きるようにした制度なので

ある。換言すれば、納税者

の協力により、課税庁のコ

ストを軽減している制度で

ある。こうした制度の中

で、一生懸命税法を調べて

期日までに申告した納税者

の申告書にミスがあった場

合、どう考えるべきであろ

うか。納税者が仮装隠蔽し

た場合は別として、納税者

にミスがあった場合に広く

救済してなぜ悪いのだろ

う。従来は、このような場

合、加算税を始め、各種の

制裁があり、本来適用を受

けることのできた軽減措置

も、申告時に気づかなかっ

たら「気づかなかったおま

えが悪い」と扱われ、裁判

所も「法の不知は救済する

必要なし」という判断をし

てきたのである。

こうした理解が、むしろ

非常識ではなかったのか。

今回の改正は、従来のこう

した状況に反省を迫り、納

税者と課税庁との対等性、

ひいては、納税者に積極的

に国の財政の担い手として

関与してもらう基盤を形成

したのである。通則法改正

のこうした意義について

は、本紙7月1日号の金子

教授の論壇(「国税通則法

の改正」)が的確にまとめ

ており、私も基本的に同意

見である。

なお、今回の改正では、

納税者権利憲章が実現しな

かったため、改革とは言え

ないかのような評価も散見

するが、全くの誤解であろ

う。仮に、納税者権利憲章

が制定されたとしても、今

回実現した理由付記・更正

の請求・税務調査などの一

連の手続規定の整備が見送

られたら、それこそ、改革

の実質が損なわれてしまっ

ただろう。抽象的な規定も

大事だが、それ以上に具体

的な手続規定の方がはるか

に効果的であり、実質的な

意味があるのである。税務

の現場でそのことは実感さ

れて行くに違いない。

●税理士の姿勢と租税立法

今回の改正が実現できた

のは、我が国で初めて本格

的な政権交代が実現したこ

とが決定的に大きい。主権

者でもある納税者の目線に

たった政党が政権の座に着

いたことで、税務行政も大

きな変化を余儀なくされ、

戦前的発想を承継してきた

取締的規定が改められたの

である。

この改正の意義をさらに

実質化するには、税理士界

にも課題が投げかけられて

いるのではないだろうか。

税理士は租税法律主義の理

念を税務行政過程において

実質化する専門家である。

税法は難しい。納税者自身

が良く理解して主権者とし

て拠出すべきなのに、その

内容がわからなければ租税

法律主義は形骸化する。従

って、税理士の役割は納税

者の代理人として、納税者

の目線で税法を解釈、適用

することである。当然、課

税する観点からの解釈=

達とは異なってくる場合が

ある。ところが、税務の現

場では、通達通りにやるこ

とに目を奪われ、また、課

税側の内部通達をいち早く

知ることのみにエネルギー

を注いでいる個人や団体が

少なくない。これでは相手

のいうとおりに申告代理を

しているだけであり、課税

側の意向を納税者に伝えて

いるだけになる。それが税

理士の本来の姿であるなら

ば、税理士は依頼者に報酬

を請求する権利はなく、課

税庁から税務行政の補助業

務としての報酬を受け取る

べきことになりかねない。

しかし、税理士は納税者

の申告代理を専門とする専

門家である。課税庁の考え

を良く理解し、その意味で

通達も精査し、法的に考

え、納税者が違法・不当な税

負担を負わないように予防

する専門家である。そうで

あるとすると、通達に対し

ては、税理士会としても意

見集等を公表して、個々の

税理士の現場での判断を援

助すべきであろう。もちろ

ん、通達を巡る解釈が大き

く異なるときは、課税庁側

と税理士会で協議をして、

調整する場があった方がよ

い。将来的には、租税裁判所

を設け、そこで、税理士会が

抽象的な通達違法訴訟を争

えるようにすることなどが

あっても良いのではないか。

このことと関係するが、

不合理な税制を是正するた

めには、訴訟を起こすより

も、立法で法律を改めるこ

との方がはるかに効果的で

あることを再確認すべきで

ある。確かに、今回の通則法

改正には半世紀の時を要し

たが、それは政権交代が想

定できなかった時代の反映

である。今後政界は大きな

変動を繰り返して行く可能

性の方が大きい。しかも、税

制改正は毎年行われる。税

制改正は、税法改正である

から、毎年是正の機会があ

るのである。そうであれ

ば、税法の専門家である税

理士がイデオロギーに関わ

りなく不合理と言える制度

については、立法過程で改

めていく必要がある。しか

し、今の改正方法では限界

があることも事実である。

何よりも大枠は政治が決め

ることができるが、重要な

法案作成は省庁に委ねられ

ている。そのため、肝心なと

ころが、省庁の意向で調整

されたまま、国会に提出さ

れ、実質審議しないまま法

律になってしまっているの

である。これを避けるため

には、大綱決定後、法案作成

過程に、担当省庁、政治家、学

者、税理士会、弁護士会の代

表が関与して、細部について

も検討した上で、法案化を図

る制度に変えねばならない。

このような立法手続きの

改革も含めて税法上の立法

課題は山積しているのであ

る。租税手続法改革もまだ

端緒に着いただけであり、

積み残された納税者権利憲

章の制定をはじめ、権利救

済制度の拡充、徴収制度の

現代化、税と保険の一体化

など多くの課題が残されて

いる。

実体法になると、さらに

課題は多い。所得税法や法

人税法は昭和40年以来抜本

的な見直しが行われていな

い。それだけではない。基

本概念が実はまだまだ不明

確である。所得税法におけ

る「収入」とか「必要経費」、

消費税法における「対価」

が明確には定義されていな

いのである。

●おわりに

今回の国税通則法の改正

は、制度は変わるし、変え

られる、ということを実感

させたのではないか。税制

は人間社会の産物であるか

ら、どのようなものにする

かは社会が合意すれば変え

て良いものであり、不動の

原理というのもそれほどな

いのである。税理士が専門

家として、今後の税制改正

に積極的な役割を果たすこ

とに期待していきたい。

国税通則法の改正

…新たな租税法律関係のスタートと税理士の課題

三木義一氏青山学院大学

法学部法学科教授

お詫びと訂正

前号(�666号・8面)の「論壇」に誤りがありましたので、お詫び

して訂正いたします。

正(7段目)

・・・、納税義務者に対して、調査結果

の内容を説明するものとされている

(同2項)。

誤(7段目)

・・・、納税義務者に対して、調査結果

の内容を説明し、それを簡潔に記載

した書面を交付しなければならない

とされている(同2項)。

2012年〔平成24年〕8月1日〔水曜日〕 東 京 税 理 士 界 〔第三種郵便物認可〕 Volume No.667【4】