溶剤塗装 火災 防止 入門...溶剤塗装 火災 防止 入門 1、火災の成立条件...

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溶剤塗装 火災 防止 入門 VOC第4類危険物。その火災防止の肝」 国際塗装高度化推進会議 アドバイザー いすゞ自動車(株) 塗装技術グループ 田村吉宣

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  • 溶剤塗装 火災 防止 入門 「VOC≒第4類危険物。その火災防止の肝」

    国際塗装高度化推進会議 アドバイザー いすゞ自動車(株) 塗装技術グループ 田村吉宣

  • 自動車整備工場火災ビデオ

  • 中国化学工場 火災ビデオ

  • 溶剤塗装 火災 防止 入門

    1、火災の成立条件 何故火災になるのか、何故火災にならないのか?

    2、溶剤塗装=第4類危険物の必須知識 基本を知ろう、基本を押さえよう!

    3、溶剤塗装火災の典型例 同じことをすれば、火災は起こせる!

    4、溶剤塗装火災防止の肝 これだけは覚えて、知らせて、一緒に怖がろう!

    燃やしたら終わり、人命・財産・信用・ビジネス・生活のすべてを失う。 火災防止は何にも優先する最重要事項! さあ、いざ入門!

  • 1、火災の成立条件 何故火災になるのか、何故火災にならないのか?

    2、溶剤塗装=第4類危険物の必須知識 基本を知ろう、基本を押さえよう!

    3、溶剤塗装火災の典型例 同じことをすれば、火災は起こせる!

    4、溶剤塗装火災防止の肝 これだけは覚えて、知らせて、一緒に怖がろう!

  • 1、溶剤塗装火災の成立条件

    酸素

    可燃物(危険物)

    点火源(火種)

    燃焼 火災

    溶剤塗装は可燃物である危険物4類を扱っており、火種があれば燃焼する。 消火出来ずに延焼すれば火災になる。

    溶剤塗装に火災はつきもの。 安心・慢心は禁物。

  • 1、溶剤塗装火災の成立条件 (なぜ燃えないのか、なぜ燃えるのか?)

    シンナー燃焼 実験ビデオ

  • 1、溶剤塗装火災の成立条件 (なぜ燃えるのか、なぜ燃えないのか?)

    キャンドル点火実験ビデオ

  • 1、溶剤塗装火災の成立条件 (なぜ燃えるのか、なぜ燃えないのか?)

    キャンドル比較ビデオ

  • 1、火災の成立条件 何故火災になるのか、何故火災にならないのか?

    2、溶剤塗装=第4類危険物の必須知識 基本を知ろう、基本を押さえよう!

    3、溶剤塗装火災の典型例 同じことをすれば、火災は起こせる!

    4、溶剤塗装火災防止の肝 これだけは覚えて、知らせて、一緒に怖がろう!

  • 引火性液体は、可燃性蒸気を発生させ、空気と混合し点火源を与えることで引火・爆発する危険性があります。

    2、溶剤塗装=第4類危険物の必須知識

    ① 「第4類危険物 」≒ 「引火性液体 」 (≒ 溶剤 ≒VOC) である。

    ② 「引火」 とは、「可燃性ガス」 が 「点火源」 を得て 「燃焼」 することである。

    ③ この「可燃性ガス」 は 「蒸気と空気の混合」 により生成する。

    ④ 「引火点」 とは、この「可燃性ガス」 を生成する 「最低温度」 である。

    ② ③

    「出典元:図解でわかる危険物取扱者講座」

    http://zukai-kikenbutu.com/

  • 燃焼が継続していくためには連続した酸化反応が必要です。 燃焼の3要素に、『燃焼の継続』を加えて『燃焼の4要素』と呼ぶことがあります。

    2、溶剤塗装=第4類危険物の必須知識

    着火(点火源あり)

    燃焼継続

    発火(点火源無し)

    「出典元:図解でわかる危険物取扱者講座」

  • 2、溶剤塗装=第4類危険物の必須知識

    「可燃性ガス」は「可燃性蒸気と空気が燃焼範囲の濃度で混合」されたもの。薄くても濃くても燃えない。

    「引火点」は「可燃性蒸気」が「爆発下限値」の濃度になる温度。

    キシレン 27℃ トルエン 4℃

    重油

    ごま油

    「出典元:図解でわかる危険物取扱者講座」

  • 2、溶剤塗装=第4類危険物の必須知識

    可燃性 蒸気濃度

    温度

    着火エネルギー 高

    爆発 上限値 爆発

    下限値

    最少着火 エネルギー

    【燃焼(爆発)範囲 ハーフパイプモデル】

    着火

    エネルギー

    【スイスチーズモデル】

    溶剤種

    温度

    蒸気濃度

    作業方法他

    ・全条件が揃って始めて、燃える。 ・燃やすのは結構難しい。 ・火事になっていないのは幸運だけかも。

    燃焼

  • 2、溶剤塗装=第4類危険物の必須知識

    着火

    エネルギー

    【スイスチーズモデル】

    溶剤種

    温度

    蒸気濃度

    作業方法他

    ・全条件が揃って始めて、燃える。 ・燃やすのは結構難しい。 ・火事になっていないのは幸運だけかも。

    燃焼

    何十年もやって来たが、火災は起こしていない。 (無知、慢心、馴れ、ズボラ、‥)

    火災(燃えてしまった!) (一巻の終わり)

    変化点(最後の孔) (被塗物、塗料、機器、塗装条件、人、気象、‥)

  • 1、火災の成立条件 何故火災になるのか、何故火災にならないのか?

    2、溶剤塗装=第4類危険物の必須知識 基本を知ろう、基本を押さえよう!

    3、溶剤塗装火災の典型例 同じことをすれば、火災は起こせる!

    4、溶剤塗装火災防止の肝 これだけは覚えて、知らせて、一緒に怖がろう!

  • 3、溶剤塗装火災の典型例 こうすれば火災は起こせる!

    1、静電塗装機編 1)高電圧をかけたままでのハンドガン色替え・洗浄・清掃。 2)高電圧をかけたままでの自動ガン(特にベル)の清掃。 3)自動ガン周りの風船型養生。 2、テフロンホース溶剤洗浄編 1)トルエン高速流し洗浄。 3、間違った3S編 1)床を汚さないようにビニルを敷き、ポンプと溶剤を置いて溶剤循環洗浄。 2)床を汚さないようにビニルを敷き、汚れは溶剤とウェスやモップでワイプ。 4、ズボラ編 1)マッチ・ライターを持ったまま入り、うっかり一服。 2)静電靴を履かず、帯電しやすい服装で作業。 3)窓際の日の当たるところに置いて、塗料・溶剤が高温化。

  • 3、溶剤塗装火災の典型例 こうすれば火災は起こせる!

    1、静電塗装機編 1)高電圧をかけたままでのハンドガン色替え・洗浄・清掃。‥毎年この火災が!

    【変化点】こうすれば火災は起こせる! 1. 塗装以外の作業を高電圧ONで実施する。

    2. アースがとれていない、缶やスノコに向かって 吹き付ける。ガンを急速に近づける。

    3. 静電ガンバラシ洗浄する。 4. ウェスで拭う。 5. ブラシでこする。

    【解説】静電塗装ガンは当然ながら塗装時の火災安全が通常は確保されている。 しかし、洗浄・清掃等の不定形作業では火災条件が整う危険性が高い。 塗装時以外は必ず高電圧を切ること!

  • 3、溶剤塗装火災の典型例 こうすれば火災は起こせる!

    1、静電塗装機編 2)高電圧をかけたままでの自動ガン(特にベル)の清掃。‥最近も発生!

    【変化点】こうすれば火災は起こせる! 1. 塗装以外の作業を高電圧ONで実施する。 2. 溶剤とウェスで洗う。 3. 溶剤が染み込んだ手袋で作業する。 4. 金具がついたブラシを使う。

    【解説】自動ガンは高電圧が自動で切れるが、手動操作等で高電圧ONになっている 場合もある。 ベルガンは静電容量が大きく、スパーク引火の危険性が高い。 塗装時以外は必ず高電圧を切ること!

    出典:中央労働災害防止協会編 「静電塗装の安全衛生対策 平成6年版」

  • 3、溶剤塗装火災の典型例 こうすれば火災は起こせる!

    1、静電塗装機編 3)自動ガン周りの風船型養生。‥大火災を起こしたパターン。

    【変化点】こうすれば火災は起こせる! 1. 自動静電ガン周りを風船型に養生する。 2. 塗料漏れやシンナー漏れでガスを溜める。 3. 自動ガン周りでスパークが起きれば着火する。

    出典:中央労働災害防止協会編 「静電塗装作業における 安全衛生対策 平成6年版」

    【解説】自動ガンの清掃を楽にするため、風船型養生が良く行われる。しかし、この 風船は溶剤ガスの温床となり、近辺でスパークが起きれば着火の危険大。 風船は造らず、造っても底に孔を開けて溶剤ガスを落下させること。

  • 3、溶剤塗装火災の典型例 こうすれば火災は起こせる!

    2、テフロンホース溶剤洗浄編‥これは固体液体摩擦型の静電発電機。火災例多数。 1)トルエン高速流し洗浄。

    【変化点】こうすれば火災は起こせる!

    1. テフロンホースをトルエン(不導体シンナー)を高速で流して洗浄する。

    2. 湿度が低ければ(50%未満)高電圧になる。 3. アース金属に近づければスパーク危険性大。

    【解説】物質を接触させれば電子が移動して静電気が発生し、逃げ道が無ければ 高電圧になってスパークを起こす。この典型が上図例。テフロン・トルエン・ 低湿度の3条件が揃ってスパークし、テフロンホースに孔が開いてトルエン が噴出し、スパークで着火。 湿度は60%以上を保ち、シンナーは導電性を持たせること。

    トルエン

    自動塗装機 鉄板壁

    鉄環 テフロンホース

    ポンプ

    環洗浄

    湿度: 30%!

  • 3、溶剤塗装火災の典型例 こうすれば火災は起こせる!

    3、間違った3S編 1)床を汚さないようにビニルを敷き、ポンプと溶剤を置いて溶剤循環洗浄。

    【変化点】こうすれば火災は起こせる!

    1. 溶剤とポンプをビニルシートの上に乗せて、溶剤循環洗浄を実施。

    2. ポンプも溶剤容器もアースを取らず。

    3. トルエン・テフロンホース・低湿度が整えばスパークして着火する危険性大。

    【解説】静電発電機とも言えるテフロンホース・トルエン循環洗浄システムをビニル シートに乗せて絶縁すれば、どんどん高電圧になり、スパークに至る。 溶剤容器・ポンプ等の機器はすべてアースを取ること。ビニルシートは厳禁。 アースを取ったステンレス板がお奨め。

    トルエン

    テフロンホース

    ポンプ

    循環洗浄

    塗装機

  • 3、溶剤塗装火災の典型例 こうすれば火災は起こせる!

    3、間違った3S編 2)床を汚さないようにビニルを敷き、汚れは溶剤とウェスやモップでワイプ。

    【変化点】こうすれば火災は起こせる! 1. ビニルの汚れを溶剤とウェスで拭き掃除する。 2. 湿度が低い時は高電圧に達しやすい。

    3. モップも同様。 金具がついているとスパークしやすい。

    【解説】低湿度の時に摩擦すれば高電圧となり、パチパチとスパークする。ビニルな どの絶縁シートを溶剤とウェスでこすればスパークして着火する危険性大。 モップやブラシでこすっても同様であり、金具がついているとこれを起点にス パークする危険性大。 絶縁性のシートは敷かない。床はアースを取ったステンレス板を敷き詰める のがお奨め。きれいで安全。

    ビニル 溶剤

    ウェス

    低湿度

  • 3、溶剤塗装火災の典型例 こうすれば火災は起こせる!

    4、ズボラ編 1)マッチやライターを持って入り、うっかり一服。

    【変化点】こうすれば火災は起こせる! 1. マッチやライターを持って危険物エリアへ入場。 2. 危険物の怖さを忘れて、うっかり一服。 3. 溶剤ガスが適度に存在すれば引火して終わり。

    【解説】危険物エリアへのマッチ・ライター持ち込み禁止は基本中の基本。 絶危険物エリア前に 「マッチ・ライター預かり箱」 を設置し、持ち込み禁止 を徹底すること。

  • 3、溶剤塗装火災の典型例 こうすれば火災は起こせる!

    4、ズボラ編 2)静電靴を履かず、帯電しやすい服装で作業。

    【変化点】こうすれば火災は起こせる! 1. 静電靴を履かず、帯電しやすい服装で作業。

    2. 人は動く着火源。 静電気を発電し、溜めこみ、アースに近づいてスパークを起こす。

    3. 低湿度下で溶剤が染み込んだウェスを持って接近すれば、着火する危険性大。

    【解説】人は動くことで帯電し、スパークする部位へ近づく、最も危険な要素。ステンレ ス等のアース床上に静電靴を履き、帯電防止防塵服を着用して作業するの は当たり前。これが守れない人は入場禁止。 危険物エリアへの立ち入りは、許可制が望ましい。

    出典:中央労働災害防止協会編 「静電塗装の安全衛生対策 平成6年版」

  • 3、溶剤塗装火災の典型例 こうすれば火災は起こせる!

    4、ズボラ編 3)窓際の日の当たるところに置いて、塗料・シンナーが高温化。

    【変化点】こうすれば火災は起こせる! 1. 危険物を日の当たるところに置いて、高温にする。 2. 後は着火源(静電気等)があれば、燃える。

    【解説】危険物は引火点で危険性が第1石油類から第4石油類まで分類されているが、 27℃以上に温度が上がれば、第2石油類のキシレンも引火点を超えて、着火 危険性が出る。 第4類危険物は温度を上げ過ぎないこと。

  • 1、火災の成立条件 何故火災になるのか、何故火災にならないのか?

    2、溶剤塗装=第4類危険物の必須知識 基本を知ろう、基本を押さえよう!

    3、溶剤塗装火災の典型例 同じことをすれば、火災は起こせる!

    4、溶剤塗装火災防止の肝 これだけは覚えて、知らせて、一緒に怖がろう!

  • 4、溶剤塗装火災防止の肝

    1、「可燃性ガス」を造らない。 1)ウェス・手袋はキャンドルの芯と同じ。 用心して使い、使用後は密閉缶へ。 2)引火点以上の温度にしない。 温度を上げれば、灯油でも爆発する。 3)ガン養生等は下に穴を開けて蒸気を溜めずに落とす。 4)塗料・溶剤は密閉して蒸発を押さえ、換気を良くする。 2、「静電塗装機」の使用は認可制にする。 1)「静電ハンドガン」の使用は安全を確保できる作業者に限定する。 2)「自動塗装機」のメンテも同様。 3、塗装エリアへの立ち入りは許可制にする。 1)許可を受け、マッチ・ライターを預かり、静電靴・帯電防止服を着せて入場させる。 2)塗料・シンナーは過度の温度上昇が無いように保管・取扱いする。 4、静電気スパーク防止を徹底する。 1)湿度管理(60%以上が理想)を行う。 低湿度時は水撒きし、厳戒する。 2)塗装エリアのあらゆるものについてアースを取る。