修士論文 学童期の慢性疾患の子どもとかかわる看護...

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修士論文 学童期の慢性疾患の子どもとかかわる看護師の体験に関する一考察 広島大学大学院保健学研究科博士課程前期 看護開発科学講座発達期健康学 平成 15 年度入学 別所史子 指導教員 田中義人

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修士論文

学童期の慢性疾患の子どもとかかわる看護師の体験に関する一考察

広島大学大学院保健学研究科博士課程前期 看護開発科学講座発達期健康学

平成 15年度入学 別所史子

指導教員 田中義人

Page 2: 修士論文 学童期の慢性疾患の子どもとかかわる看護 …home.hiroshima-u.ac.jp/hsc/nurse/nursing/child/shuushi/H...1 Ⅰ.はじめに 1.研究の背景 かつて小児慢性疾患の代表とされていた喘息や慢性腎疾患、糖尿病は、治療法の進歩により

目次

Ⅰ.はじめに

1.研究の背景・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 2.文献検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 3.研究目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 4.研究の意義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 5.用語の定義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 Ⅱ.研究方法 1.対象と場・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 2.調査方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 3.分析方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 4.倫理的配慮・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 Ⅲ.結果 1. 対象者の背景・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 2. 対象者の体験の統合・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 Ⅳ.考察 1.学童期の慢性疾患の子どもに対する看護師の気持ち・・・・・・・・・・・25 2.慢性疾患の子どもの看護に対する看護師の気持ち・・・・・・・・・・・・26 3.慢性疾患をもって生活する子どもに対する気持ち・・・・・・・・・・・・26 4.今後の慢性疾患の子どもの看護の視点についての検討・・・・・・・・・・27 5.本研究の限界と課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28 Ⅴ.結論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29 引用・参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30 謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・32 図・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33 資料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35

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Ⅰ.はじめに

1.研究の背景

かつて小児慢性疾患の代表とされていた喘息や慢性腎疾患、糖尿病は、治療法の進歩により

現在は外来治療が主となってきている。しかし、重症例・難治性の場合には、依然、長期入院

治療が必要である 1,2)。また、最近の傾向として摂食障害、不登校など心身医学的アプローチ

を要する子どもの入院が増えている 3)ことから、慢性疾患の子どもに対する看護は、以前にも

増して多様な対応が求められている。さらに、学童期の慢性疾患の子どもに対しては、基本的

生活習慣の自立、疾患に関連する新たなセルフケアの獲得、社会性の発達に対する援助などが

求められており 4)、子どもの生活援助を行う看護師は、その多くを担っている。

先行研究 5~7)では、看護師が子どもと接する態度と小児看護に対する認識についての意識調

査が行われていた。その結果、小児専門病院、小児病棟の看護師の方が、混合病棟の看護師よ

りも小児看護に対して肯定的であり、子どもと接する態度が受容的であったことが報告されて

いる。しかし、質問紙調査であるため、その態度に影響する看護師の体験や気持ちは見えてこ

ない。また、子どもとかかわることにより、その気持ちがどのように変化するのかは明らかで

はない。

以上のことから、疾病構造が多様化してきた現在の慢性疾患の子どもに対する看護を検討す

るうえで、まず、慢性疾患の子どもとかかわる看護師の体験を知ることが重要と考え、本研究

に取り組むこととした。

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2.文献検討 1)子どもと看護師のかかわりに影響する要因 星ら 5~7)は、看護師の認識が子どもと接する態度に影響すると考え、小児専門病院、小

児病棟、成人と小児の混合病棟の看護師に対する意識調査を行っている。各属性の対象者

の小児看護に対する認識、子どもと接する態度を比較した結果、小児専門病院、小児病棟

の看護師の方が混合病棟の看護師よりも小児看護に対して肯定的であり、子どもと接する

態度が受容的であったと報告している。混合病棟の看護師は、小児専門病院、小児病棟の

看護師よりも統制的態度が高かったこと、さらに、対象者の属性間の態度、小児看護の経

験年数、年齢、子どもの有無の比較では有意差はなかったが、小児専門病院、小児病棟の

看護師では、経験 3年以降に受容的態度に変化する傾向があったことも判明した 5)。これら

の結果を踏まえて、小児の入院する環境の違いにより小児と看護師の接する機会に差があ

り、この差が小児看護に対する意識に影響すること、この意識の違いが子どもに接する態

度に影響すると考察されている。ここでは、尺度を用いた質問紙調査であるため、看護師

の経験年数に比例した子どもと接する態度についての傾向は示されていても、今までのど

のような経験が子どもと接する態度に影響し、どのように変化するのかについては明らか

ではなく、帰納的データも必要である。

鈴木 8)は、小児がんの子どもとかかわる看護者に対してインタビューと参加観察を行っ

ている。その結果、看護者と子どもとの間に、①気持ちの共有的な距離感、②壁的な距離

感、③巻き込まれ的な距離感、④遠のき的な距離感という 4 つのタイプの心理的距離感が観察された。このような心理的距離感が生じる過程には、看護者としての役割意識、看護

者が必要と認知したかかわりに対して自分が遂行しうるのかという看護者自身の可能性の

査定、子どもが看護者の援助を求めているか否かという認知、子どもの身体症状・年齢が

影響していたと報告している。また、①気持ちの共有的な距離感は、子どもとの関係を発

展させることができた時の心理状況であるのに対し、②壁的な距離感、③巻き込まれ的な

距離感、④遠のき的な距離感は子どもとのかかわりの中で看護者のアイデンティティーが

脅かされている心理状況であり、看護者が子どもとの関係をどのように認知するのかによ

ってこの距離感が異なることを記している。ここでは、看護者が心理的距離感を感じる状

況については示されているが、先述した要因がどのように関係しあって子どもとの関係が

発展するか否かについては述べられていない。そこで、子どもと看護師のかかわりに影響

する要因の関係性については、子どもとかかわる看護師の体験を記述する方法を用いるこ

とにより、その詳細が明らかにできると考える。 2)慢性疾患の子どもの入院状況 慢性疾患の子どもの入院状況に関しては、平成 6 年に全国の慢性疾患の小児が比較的多く入院する病院を対象に行われた調査結果 9)がある。それによると、慢性疾患専門の病棟

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に入院している子どもは約 3 割、それ以外の子どもは急性疾患の子どもあるいは大人との混合病棟に入院していた。そこで、舟島ら 10)は、先述した病院の看護者を対象に調査を行

い、長期療養する子どものケアに携わる看護者の直面する問題を抽出している。その問題

は、子どもの入院環境、成長発達、治療に関連する問題などであり、そのうち約半数は混

合病棟、重症度・疾患の種類が異なる対象の入院に関連する問題が浮かび上がった。近年

では、慢性疾患で入院する子どもの疾病構造は、喘息や慢性腎疾患が減少し、不登校、摂

食障害、肥満症などが増え、従来とは変化している 3)。このような疾病構造の変化から子ど

もへのケアを考えた場合、一般小児病棟で問題行動のある子どもに対応することの難しさ

や専門スタッフの不足などの問題が指摘されている 11)。 土居ら 12)は、一般小児病棟における心身に問題行動がある子どもへの対応について、日

常的に子どもとかかわる看護者がどのような問題を有しているのかという意識調査を行っ

ている。その結果、約 4 割の看護者が子どもとのかかわりをできれば避けたいと感じており、その理由としては、身体症状と行動との関連がわからない、対応策がわからない、自

分の言動が患児に影響を与えそうで怖いなどがあげられていた。そして、このことを踏ま

えて、今後の課題として、医師、臨床心理士のカンファレンスへの参加、さらに、情報交

換のレベルに終わるのではなく問題解決の方法やかかわり方まで討議することを指摘して

いる。Ramjan13)は、思春期の神経性食欲不振症の子どもとかかわる看護師 10名にインタビューを行っている。その結果、全員が患児との関係の形成に困難を感じており、その理

由としては、患児とのかかわり方の難しさがあげられていた。そして、今後の課題として、

コメディカルスタッフの協力体制づくりを指摘している。 これらの調査結果から、慢性疾患の子どもの入院状況・疾患は多様であり、看護師は多

様な対応を求められているといえる。そして、今後、ますます心身の問題行動のある子ど

もの入院は増えると予測されている 3)ことから、慢性疾患の子どもに対する看護として、

特に、心身の問題行動のある子どもへの対応が課題となると推測される。

以上のことから、多様化してきた現在の慢性疾患の子どもの看護について検討するにあ

たり、その現状や課題を把握する必要がある。そして、その中で看護師がどのような看護

を実践しているのかを知ることにより、今後の慢性疾患の子どもの看護に対する示唆を得

ることができると考えられる。

3)慢性疾患をもって生活する子ども 仲井 14)は、小学校 4年生から中学校 3年生の喘息児と母親の 21組を対象に、疾患管理

の認識についてインタビューを行っている。その結果、セルフケアについては、小学生の

うちは子どもに任せられないと感じる母親が約半数であった。子どもがセルフケアを自覚

する時期は、小学 3 年生から中学生にかけてであり、セルフケアを自覚するきっかけは、専門的な教育・指導によりその必要性を感じたこと、生活上の不都合さを感じたことであ

った。これらの結果を踏まえて、幼児期までに発症することの多い気管支喘息の疾患管理

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では、親子の自己管理に対する認識に注目し、個々の成長発達に応じて徐々に親の援助の

部分を小さくし、子どもの主体性を拡大していくような継続的なセルフケア教育の必要性

を示唆している。 兼松ら 15)は、10歳から 20歳のインスリン使用中の糖尿病患児に質問紙調査を行ってい

る。その結果、年齢が高くなるとともに療養行動の自立は高まるが、罹病期間が長くなる

とともに療養行動は乱れる傾向があることを得て、それを踏まえて、年齢の特性に着目し

た指導と医師、看護師、養護教諭、担任教師など患児とかかわるすべての関係者が療養行

動に関心をもつことの必要性を示唆している。 中村 16)らは、外来通院中の小児慢性疾患患児(悪性腫瘍、糖尿病、心疾患、てんかん、

気管支喘息、腎疾患)と小学校 5年生から高校 3年生の健康児を対象に質問紙調査を行い、両者のストレスを比較している。その結果、健康児よりも慢性疾患患児の方が日常生活に

対するストレスが高く、中学生では成績の悩み、高校生では容姿の悩みの得点が高かった

こと、疾患別では慢性腎疾患の子どものストレスの得点が最も高く、その要因としては行

動制限、ステロイド剤の副作用による容姿の変化が推察されている。そして、慢性疾患患

児のストレスは、入院中よりも学校生活が始まってからの方が友人との違いを感じて高く

なると予測されることを報告している。これらの結果を踏まえて、疾患に関連した悩みを

抱えて生活する子どもへの看護の重要性を示唆している。 益守 17)は、10歳から 14歳の先天性心疾患の子ども 6名の体験についてインタビューと

参加観察を行っている。その結果、子どもは病気のために友達や年下の同胞のことに対す

る悩みがあるが他の人には話していないこと、だんだん身体的に友達についていけなくな

り「どうして自分だけが」という不安定な思いを抱くようになること、子どもにとって病

棟は気軽に自分を表出できる休憩場所であること、友達と同じことをしたいために治療を

頑張るという気持ちをもっていること、年下の同胞の体格が大きくなり体力が近づいてく

ると年長者としての立場を脅かされる思いを抱くようになることを明らかにした。この結

果を踏まえて、子どもは病気のために生じる問題を抱え悩んでいるが、友人と同じように

過ごしたいという思いが治療の動機づけとなり、子どもなりに一人で頑張っているため、

その頑張りを認め、見守っていくことの重要性を示唆している。

これらの研究結果から、慢性疾患をもって生活している子どもに対して、退院後も子ど

もの成長発達とライフスタイルの変化に応じた指導と精神面のケアの重要性が示唆され、

入院中だけではなく、長期的に子どもと家族をフォローできるような看護について検討す

る必要がある。そこで、発症時から子どもとかかわる看護師は、慢性疾患をもって生活し

ていく子どもに対して、どのような視点で子どものケアについて考え、実践しているのか

知る必要がある。

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3.研究目的 看護師は、慢性疾患の子どもの入院生活に長期にかかわることにより、子どもや看護に対す

る気持ちを育んでいくと推測される。また、子どもの年齢、疾患の特性やその背景にある問題

は、子どもとかかわる看護師の気持ちに影響すると推測される。 そこで、本研究は、学童期の慢性疾患の子どもとかかわる看護師の体験を記述し、その体験

が慢性疾患の子どもの看護に対してどのような影響や変化をもたらしているのかを明らかに

することを目的とする。

4.研究の意義 学童期の慢性疾患の子どもとかかわる看護師の体験を明らかにすることにより、疾病構造が

多様化してきた現在の慢性疾患の子どもに対する看護の現状や課題を知ることができる。この

現状を把握することにより、今後、慢性疾患の子どもに対して、どのような看護が必要となる

のかについて検討することができる。さらに、看護師の体験の中から看護に反映されるものを

導き出すことができると考える。

5.用語の定義 体験:慢性疾患の子どもとかかわる看護師が看護の中で経験すること、子ども・看護に対す

る思い、気持ちとする。 小児慢性疾患:小児慢性特定疾患治療研究事業の対象となる疾患、および、医療または生活

規制のために継続して入院を要する疾患とする。

セルフケア:疾患管理のための自己管理とする。

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Ⅱ.研究方法 1.対象と場 1)調査対象者 M病院の小児慢性病棟で勤務経験のある看護師に依頼し、調査協力について口頭と文書(資料 3)で同意の得られた看護師 16名を対象とした。

2)調査対象者の選択理由 慢性疾患の子どもの看護の特徴を捉えるためには、慢性疾患の小児のみが入院している病棟

の看護師が調査対象者として適切と考えた。

3)調査実施施設の概要

M県の国立病院で、県内の小児医療の拠点病院である。病床数 280床、6病棟より構成され、そのうち3つの病棟に小児が入院している。入院している子どもの疾患の経過の特徴によって、小児急性病棟、小児慢性病棟、重症心身障害児・者病棟にわけられている。13 の診療科がある。医師 31名、看護師 138名。小児が入院する病棟には、保育士、児童指導員が配属されている。小児慢性病棟では、小児慢性特定疾患治療研究事業の対象となる疾患、肥満症、摂食障

害、不登校をはじめ 1ヶ月以上の入院を要する子どもたちが入院しており、その内訳は、小児慢性特定疾患治療研究事業の対象となる疾患が約 5割、不登校、摂食障害などが約 4割、その他の疾患が約1割である。入院患児は、学童期・思春期の子どもが主であり、学齢期にある子

どもは隣接の養護学校で学びながら治療を受けている。病棟会議には医師、看護師、児童指導

員、保育士らが参加している。学童期以上では付き添いはなく、2回/週の面会日がある。

2.調査方法 1)調査期間

2004年 6月~7月 2)具体的手順 施設長および看護部長に研究の趣旨を文書(資料 1)と口頭で説明し、調査の承諾を得たのち、対象者の紹介を受けた。対象者には、文書(資料 2)を渡してもらい、そのうち同意書(資料 3)にて同意を得られた 16名に半構成的インタビューを実施した。 なお、インタビューの実施に先立ち、慢性疾患(主に腎疾患、膠原病、摂食障害など)の子

どもの看護の経験のある看護師 2名(経験年数 4年、6年)の経験談と意見、先行研究の質問内容 18)を参考にインタビュー内容を選定した。

インタビュー内容は、①日頃の学童期の慢性疾患の子どもとのかかわりの中で感じているこ

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とや大切にしていること、困難を感じること、②慢性疾患の子どもの看護についてどのように

考えているか、③慢性疾患の子どもに対してどのような看護を実践しているか、④今後、どの

ような看護が必要と考えているかとし、話の流れの中で適宜質問を追加した。 インタビューは、病棟のカンファレンスルームを借りて行い、対象者の許可を得てMDに録

音した。インタビューは、全員 1回、平均インタビュー時間は 43分であった。 3.分析方法 半構成的インタビューから得られたデータを逐語記録とし、使用した。その中から「学童期

の慢性疾患の子どもとかかわる看護師の体験」に関するものを抽出し、1つの意味内容を表す文章ごとに区切り、ラベルに転記した。転記したラベルを意味内容の類似性により分類し、主

題が明らかになるまで統合を繰り返し、カテゴリーを抽出した。次に、抽出されたカテゴリー

間の関連性を図解化し、それを基にカテゴリー間の関連性について文章化した。

分析過程では母子保健領域の研究者 3名から指導・助言を受け、研究者間の解釈が一致するまで統合を繰り返し、信頼性・妥当性の確保を図った。

4.倫理的配慮 対象者からは、文書(資料 2)での説明により、事前に調査協力に対する同意を口頭で得ており、インタビュー開始前に 1人づつ同意書(資料 3)を受け取った。その際、対象者に本研究の趣旨を説明し、対象者の自発的な意思による同意であること、答えたくない質問には答え

なくてもよいこと、インタビュー内容の録音の許可、調査の承諾後であっても調査参加の取り

消しができ、対象者に不利益が生じることはないことについて確認を行い、実施した。 インタビュー終了後、使用して欲しくないデータはないか確認してから逐語記録を作成した。

データは匿名とし、研究目的以外には使用しないこと、プライバシーを守ることを説明した。

ただし、本研究の結果を修士論文として広島大学に提出すること、学術学会誌等に発表する場

合があることについて承諾を得た。 なお、本研究は、広島大学医学部保健学科看護学研究倫理委員会において審査され、承認を

受けた。

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Ⅲ.結果 1.対象者の背景 対象者(表参照)は、M病院の小児慢性病棟で勤務経験のある看護師 16名で、男性は 1名、女性は 15名であった。年齢は 24~55歳(平均 32.6歳)であった。臨床経験は 2~24年(平均 8.5年)、小児慢性病棟の勤務経験は 1~8年(平均 3.8年)であった。 表 対象者の背景

対象 年齢 性別 臨床経

験年数

小児慢性病

棟経験年数

他病棟の経

験の有無

A 29 男 3 3 無

B 49 女 15 7 有

C 53 女 24 8 有

D 27 女 6 6 有

E 25 女 2 2 無

F 24 女 2 2 無

G 29 女 10 1 有

H 31 女 12 7 有

I 25 女 4 3 有

J 26 女 6 6 有

K 25 女 4 3 有

L 34 女 12 2 有

M 36 女 12 3 有

N 32 女 10 1 有

O 55 女 2 有

P 27 女 7 3 有

空欄は記入がなかったことを示す

2.対象者の体験の統合 1)逐語記録より「学童期の慢性疾患の子どもとかかわる看護師の体験」に関するものを抽出し、1つの意味内容を表す文章ごとに区切り、ラベルに転記した。

2)転記したラベルを意味内容の類似性により分類し、主題が明らかになるまで統合した結果、【子どもに寄り添う思い】、【慢性疾患の子どもとかかわること】、【慢性疾患の子どもの看護に

対する気持ちの変化】、【学童期の子どもの生活】、【慢性疾患の子どもの将来的な生活】という

共通した 5つの大カテゴリーと 16のサブカテゴリーが導き出された。

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以下、各カテゴリー毎に説明する。なお、文中の【】は大カテゴリーを、<>はサブカテゴ

リーを、「」は象徴的な言葉を、ゴシック体は対象者の語りを示す。

1)【子どもに寄り添う思い】 ここでは、看護師らの子どもに対する気持ちが語られていた。このカテゴリーには、①<子

どもを思う気持ち>、②<子どもの抱えている問題が複雑>、③<表面的なものではなく子ど

もの気持ちを理解する>、④<自分の病気体験>という 4つのサブカテゴリーがあった。 ①<子どもを思う気持ち> 看護師らの子どもに対する思いは、子どもとのかかわりの中で様々に変化していた。

入院している子どもに初めてかかわる頃、看護師らは、子どものことを「かわいそう」と不

憫に思っていた。

「長く入院してるからとっても不憫な感じで、かわいそうって思いましたね。初めての時は喘息病棟だっ

たんですけど、冬の寒空に縄跳びをしてる子の姿を見て、何か涙が出てきました。」(B さん)

「普通じゃない、普通だったら健康に学校に行ってるような子どもがここに入院してるって考えると、どう

していいのかわからなかった。何でこんな注射とかを小さい子にしないといけないんだろって思った。かわ

いそうで。(中略)最初は、ほんと‘いけない’ってことが言えなかった、かわいそうっていうのがあって。」(E

さん)

「かわいそうという言い方は違うのかもしれないですけど、不憫に思うところはやっぱりあったと思いま

す。」(L さん)

「私たちは入院して、こういう病気を持って、かわいそうっていう目で見ちゃうところがある。」(M さん)

看護師らの子どもに対する思いは、子どもとかかわるうちに次第に変化していった。

「今は、入院しているうちに自分の病気を治さないといけないんだっていう、自己管理をできるようにって

いう指導をしてるかな。きちんと(自己管理を)覚えていって、二度と入院しないようにやろうねっていう気

持ちでかかわってますね。」(B さん)

「病気でも子どもなので、普通に喧嘩もするし、騒いだりもするし、笑ったりもするし。男の子とか特にで

すけど、知らないうちに走ってしまったりすることもあって。そういうのを見てたら、病気だからって特別に

見なくていいのかなって。いくら病気をもってても、子どもは子どもなのかなって。(中略)日々かかわって

いくうちに、かわいそうとは思いますけど、しないといけないことはしないといけないなって。半年経ったくら

いにそう思うようになってきました。」(E さん)

「自分の子どもと同じような年代だと、親近感もあるし、自分の子どもと重なる部分があるので。(中略)

病気だけじゃなくって子どもらしい部分もいっぱいあるので、最初の印象とは変わってきましたね。」(L さ

ん)

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②<子どもの抱えている問題が複雑> 看護師らは、年々、子どもの生活や気質が変化してきたと感じていた。 「年々、子どもの気質っていうのが変わってきてる。今の子は部屋に閉じこもってゲームをしたり、TV を

見たりっていうような 1 人遊びだったり、そういうのが相手だから会話も少ないですよね。そういうのがある

のかなって。」(C さん)

「人間関係とか友達関係が大分変わってきてるし、自分たちの子ども時代と比べると、ちょっとかけ離れ

てる。(中略)インターネットとかもできるからいろんな情報を知ってるんでしょうけど、年々、変わってきて

るって思います。」(F さん)

「表現力が下手だったり、甘えることが下手っていう子どもがすごく沢山増えてるなって。例えば、暴力

でしか自分を表現できなかったりする子もいるし。」(H さん)

「大人が思っている以上に、大人のこと、親のことをよく見ていて、知ってるし、子どもなりに親に心配を

かけたり、迷惑をかけたりしないように、そういう風にけなげに思っている、我慢している部分があるなって

つくづく感じます。」(L さん)

近年、幼くして複雑な問題を抱えて入院する子どもが増えてきたため、看護師らは、子ども

の様子を見て「何とかしてあげたい」という気持ちになり、意識的に子どもとスキンシップを

図っていた。

「ここの子は病気だけの子っていうのは少なくて、何かしら家庭に問題がある子がすごく多くて、つらい

ものがありますよね。やっぱりまだ小学生だし、お母さんの愛情を求めてるし、それは当たり前だし。だか

ら小学生だと親代わり、完全にはできませんけども、ちょっとスキンシップをとってあげたり。」(G さん)

「以前は中・高生ぐらいの心身症の子が多かったんですけど、本当に今は小学生でも心を病んで入院し

てくるような子が増えてて、何かつらいっていうか・・・。‘何かしてあげたい’っていうのは、前よりは強くな

ってるのかもしれませんね。そうすると、学童期の子だったら、大きい子に比べたらやっぱりスキンシップ

が多いかなって。」(J さん)

「家族背景的には恵まれてないとか、つらいものを抱えている子どもたちが予想以上に多かった。だか

ら、自主性をどんどん育てていく時期でもあるけども、その辺は学校では頑張ってきてるので、ちょっとス

キンシップをとったりするようにしてます。見ていてつらいものがあるので。」(L さん)

看護師らは、このような複雑な問題を抱える子どもに対して「何とかしてあげたい」と思う

気持ちがある一方で、その問題が複雑すぎて自分たちが介入しても「どうなるものでもない」

と感じ、ジレンマを抱いていた。

「家族背景的にしろ、何にしろ、自分やスタッフがどれだけ介入しても、やっぱり変えれないことも多々あ

るので、どうなるものでもないっていうことを思い知らされるので、その辺の折り合いをつけていくのが難し

い。(中略)でも、こちらも頭では、ここまではスタッフが介入できる、ここからはできないっていうのがわか

ってますけども、それでも表面的には納得できても、本当は納得できないっていう気持ちは常にあります

けど。わかってるんですけどね・・・。でも、小児慢性疾患なので、その背景にまず子どもがいるので、常に

その中に子どもが存在しているので、その子のことを考えると、ちょっといたたまれない気持ちにはなりま

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すけど・・・。なかなかそういう家族関係の問題まではちょっと難しい問題がありますね。そうなってくると、

どうしても子どもにも近よれないところがあったりするから、いたたまれなくなってくる・・・。」(L さん)

「自分が何かしたからって、よくならないっていうのはよーくわかってるんだけど、ついつい自分も親であ

り、子どもを持ってるのでダブってしまって、幼いのに大変な問題を抱えてるから、つい心配なので。特に、

どうしても心身症とか精神的なことが絡んでる子たちとかかわってると‘何とかしてあげたい’って思うこと

が、自分の気持ちが強くなればなる程、あとで疲れが出てくる。(中略)そこでかかわり方がきちんとわから

ない分、空回りしてしまうのがある。そこで私たちができる範囲のことは限られてくるし、そこの家庭に自分

たちが入り込めるところと、入り込めないところがあるので、そういう時はやっぱりジレンマがあるし。そうな

ってくると、スタッフへのサポート、例えばこういうかかわりをしたけど、それでよかったのかとか、そういう

相談ができるような人がいてくれるといいなとは思いますけど。」(M さん)

このような複雑な問題を抱えた子どもたちに対して自分たちができることは、子どもと親の

「橋渡し役」になることであると考え、実践していた。

「今ある家族の形を私たちには変えられないじゃないですか。理想の家族っていうのはありますけど、そ

の家族、家族で形は違いますよね。それを変えるのは難しいから、今あるなかでどうやってこの子が(家

族の)愛情を確かめて、お父さん、お母さんが自分の役割をどう気づいてもらってっていうようなことをお互

いの家族ができるようにするっていうことが、私たち看護師 がパイプ役になっていくっていうのは、慢性

(病棟)の看護師 の役割なんじゃないかと思うんですけど。」(B さん)

「いくら私たちが受け入れたり、話を聞いたりしても、本質的には家族の愛情を求めていたっていうよう

な感じだったので、いくらお母さんのことを拒否していても、やっぱりお母さんに電話してもらうっていうこと

は大事だと思ったので、家族に働きかけましたね。」(L さん)

「本人は外泊したがっていたのに、家の都合でできなくって、そうしたら、すごく荒れてしまって。このまま

放っておけないし、家に電話してあげて、そのあと外泊できるようになったんですけど、外泊できるっていう

思いが達成できたことで、その子も表情が 180 度変わるくらいに豊かになって。そういうのを見てると、親

から自分の存在を見てもらえないといけないんだなっていうのを実感して、こういう親との橋渡し的なこと

が大事かなって。どれだけ親と子どもがキャッチボールができるか、それを保っていけるか、そういう関係

を作っていくことが、私たちにできる一番大事なことかなと思うんですけど。」(N さん)

③<表面的なものではなく子どもの気持ちを理解する> 看護師らは、家族から離れて入院する子どもの気持ちに目を向けていた。 「学童期の子どもたちだと、親と離れて入院しているっていうのがいつも頭にあるので、表面的には本

人も明るく、慣れていってるようであっても、どこかで寂しい思いもしてるだろうし、いくら受け持ちさんや何

でも喋れる看護師がまわりにいたとしても、お父さんやお母さんにわがまま言うみたいには言ったりできな

いことっていうのがあるのかなって。」(L さん)

「自分も親だし、子どもは親のそばにいて当たり前っていうのがあるし、そういうのがあるから、きっと子

どもは寂しい思いをしてるのかなって。」(P さん)

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そして、看護師らは、子どもの言動や症状をみるばかりではなく、子どもの内面に目を向け、

子どもの気持ちを理解しようとしていた。

「反発してる子がいれば、その反発してるのが、どういうようないきさつで、今こんな風になっているのか

っていうところを理解してあげないと。」(C さん)

「慢性疾患の子は病気も病気ですけど、どの病気でもすごく心理面が絡んでいるので、そこから看護を

しないと慢性看護にはならないし、病気も治らないって思います。」(D さん)

「慢性疾患って身体に出ている病気だけじゃなくって、心の奥底にあるそこが本当は問題なんじゃない

かなって思ってるんですけど。ここの子たちの中にも、小さい時からの愛情不足だったり、そういうところか

ら問題があって、精神的に病んでしまってる子もいて。だから心もちゃんとみてあげないとって思うんで

す。」(F さん)

「表面的なことに反応するんじゃなくって、(中略)例えば、頭が痛くて学校に行けないって言ってきたとし

たら、本当は学校に行ってもらえれば行って欲しいですけど、まず、そこじゃなくって、なぜその子が学校

に行きたくないのか、不定愁訴が出るのかっていうところを聞いてあげたいなって。本人も気づいていない

ところがあれば、一緒に探してあげたいな。」(L さん)

「態度が悪いのにはわけがあるかな、何か理由があるかなって思って、面談してみたり。」(N さん)

④<自分の病気体験>

小児喘息だった看護師は、経験者だから喘息の子どもの気持ちがわかるので、そのことを看

護に生かせればいいと語っていた。 「喘息の子って日頃は元気に見えるから、どういう風にどんな部分がつらいのかっていうのを話す面で

は、(自分も喘息だったことを)やっぱり武器として使いましたね。やっぱり、看護師としていろんなことはわ

かっていても、息が苦しいっていうことはどういうことなのかっていうのがわかってるから、それが生かせれ

ばいいなって。ちょっとでも子どもの気持ちに近づけたらいいかなって。」(D さん)

2)【慢性疾患の子どもとかかわること】 ここでは、子どもとかかわり、子どもと看護師の関係を築いていくことについて語られてい

た。このカテゴリーには、①<子どもと看護師の関係>、②<子どもを知ること>、③<子ど

もの存在>という 3つのサブカテゴリーがあった。 ①<子どもと看護師の関係>

看護師らは、長期に入院する子どもにとって自分たちが様々な存在となり、子どもとつきあ

っていくことができればと考えていた。

「個性が自分にはあると思うし、そういう部分で(子どもと)つきあってるかな。自分と喋りやすい子もい

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れば、喋りにくい子もいると思うし、そういうバリエーションが増えれば、子どもとしてもいいんじゃないかっ

て思うし。」(A さん)

「子どもたちもいろいろと話をする人が少ないので、お姉さん的な立場の人も必要なのかなって思いま

す。ここでは、せっかく長く入院してるんだったら、(子どもと)人間関係が作れたらいいなって思って。」(F

さん)

「私たちは親代わりでもあるし、相談にのってあげれる人でもあるし、いろんな指導をする人でもあるし、

子どもと近い関係にいれたらいいのかな。」(I さん)

「慢性の看護って、人と人がつきあっていく部分というか、そういうのがある。」(K さん)

「看護師だから看護のことだけしていればいいっていうものでもないので。」(M さん)

「親の時もあるし、おばあちゃんの時もあるし。子どもたちは(家族と)一緒に過ごせないもんね。何でも

(子どもが)相談できれば、はけ口でも何でもいいし、(子どもが)何でも喋れる存在でありたいなって思っ

てやってる。」(O さん)

看護師らは、長期に子どもとかかわっているうちに自然と子どもとの関係ができてくると感

じていた。 「やっぱり、長くかかわってるから子どもとの関係っていうのは感じますよね。」(A さん)

「バスケットサークルに一緒に行ってたんですけど、一緒に遊んでかかわってたら、いい関係が結構で

きてくるのかなっていうのは思いました。」(E さん)

「すごく子どもたちとのことが思い出に残ってます。例えば、退院した子の話が出てきた時に、‘あっ、あ

の子な’っていう風に、自分のかかわってきた子のことを思い出せるのはいいかな。自分たちも覚えている、

子どもも自分が看護してもらった人に覚えられているっていうようなそういう関係っていいなって思いま

す。」(F さん)

「普段から一緒に遊んだり、喋ったりして関係を持っておくと、何かあったりした時もすっと受け入れてく

れたり、話がわかってくれたりすることもあるので。そうすると、向き合うこともできるので。」(H さん)

「いっぱい遊ぶっていうか、その中からいっぱいいろんなことが生まれるかなって。疾患の勉強にしろ、

しつけにしろ、子どもの近くにいる時間が長い程、自然とそういうのがあるのかな。」(J さん)

「肥満の子で、食べたい欲求も強かったから、いろんなことで本人とよくもめたけど、何かこっちも助けら

れた、お互いに助け合ったみたいなところがあって、深い関係っていうと何かおかしいけど、長くかかわっ

てきた分、そういうのを感じます。」(P さん)

②<子どもを知ること> 看護師らは、子どもとかかわっているうちに子どもの小さな変化を感じとるようになってい

た。

「ちょっとした変化にもなるべく気づいてあげれるように。例えば、誕生日とかを言ってもらえるとすごく嬉

しいですよね、子どもって。あと、例えば、ピーマンが嫌いな子が昨日は食べられなかったのに今日は食

べれたとか、そういった小さな事とかでも気づくとか。」(K さん)

「悪いところばかりに目が行っちゃって、どうしても生活の中では注意することが多くなってしまうんです

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けど。(中略)でも、やっぱり嬉しいですよね。そういうの(子どもが自分でできるようになってくること)って

なかかなか気づかないじゃないですか。できてはきてるけど、それはできて当たり前って見ちゃう部分があ

るので、そういう小さな変化でも気づいてあげられるといいなって思う。」(H さん)

「こちらも根気よく、根をあげないで話をしていくことで、変わっていくかなって思って話しはしてたんです

けど。それでも、少しづつは自分でやるっていうか、自分も頑張ろうっていうのが見えてきたというか。」(I

さん)

そして、看護師らは、子どもと長期にかかわっているとその子の特徴がわかるようになって

くると語っていた。 「‘わかったよ’とか、‘うんうん’って言葉でそうやって返事をしてる子でも、何かある子っていうのはだい

たい目が泳いでるし、こっちが話ししてる間もずっと遠くを見てたり。あとは長くつきあってると、その子の

語調でわかってるのかな、わかってないのかなっていうのは、‘うん’っていう一言でもわかってくるので。」

(F さん)

「憎まれ口を言う時には、何かの裏返しだろうなって思いますね。」(H さん)

「表情とか、態度にすごく出るかなって思うんですよ。そういう態度で、あっ、何か変かなって。長くなって

きて、関係が深まれば態度を見ただけで、あっ、ちょっと違うなっていうのはわかるようになってくる。」(Nさ

ん)

③<子どもの存在> 看護師らは、子どもの成長や回復、頑張っている姿に喜びを感じ、励まされていた。

「やっぱり、子どもの成長、この子最初はこれができなかったのに、こんなにもできるようになったってい

うのは、それは自分の喜びでもある。」(A さん)

「みんなえらいと思うんですよね。勉強して、ちゃんと自分で進路決めたりしてて。病気であっても負けず

に前進していってるなっていうのを私たちも感じたりして、励みになったりします。」(C さん)

「自分の受け持った子が、例えば、肥満の子が痩せていって、女の子だったら‘女の子の服が着られて

嬉しい’って喜んでる姿を見たりすると、やっぱり嬉しいです。」(F さん)

「ちゃんと自己管理して、社会復帰してるっていうのを見ると、えらいなって思うし、自分たちも勉強させ

られるし、それを糧に自分たちも頑張らないとって思う。」(M さん)

「子どもたちがどんどん伸びてくるので、本当にね、子どもって宝探しみたいで楽しい。」(O さん)

そして、看護師らは、このような子どもの姿から自分がかかわってきた成果を実感していた。

「自分がこういうことをサポートした、自分がこういう看護をしたからこうなったっていうのが何となく感じ

られるし、何か、自分の存在意義みたいなのを感じる。そういうのはすごい充実してるって感じるところか

な。」(A さん)

「慢性(病棟)でもやりがいがあるなって感じたこともありますね。例えば、指導とか教育とかして、それ

で成果をあげていったことは、やっぱり楽しかったかな。」(B さん)

「糖尿病の子が自己管理を自分でできるようになって、次に外来で会った時に特に悪化していなかった

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りすると、ちょっとは私も役に立ってるのかなって思える。」(F さん)

「自分の教えたことを子どもがちゃんとしてくれてると嬉しいし、あー、ちょっとは自分も役に立ってたの

かなって思う。そういう自分がやったことが子どもの成長であったりすると、やっててよかったなって思いま

すけどね。」(H さん)

子どもの姿は、現代の状況を反映するものとして捉える看護師もいた。

「社会のこととか、現代の動きっていうのが、子どもを通してすごく反映されていると思うんです。それは

普段の生活の中でニュースを見たり、新聞を読んだりして知っていても、やっぱり肌で感じられるというか、

メディアを通してじゃなくって、実際そういう影響を受けた子どもたちがいるので、いい事も、悪い事も、実

際に肌を通して感じる。そういうことで、社会の流れとかをあの子たちを通して見れるって思います。」(L さ

ん)

看護師らは、子どもとのかかわりの中で自分自身や看護について振り返っていた。 「ここでは、子どもとのかかわりの中で、自分自身を振り返ることができるって思いますね。」(A さん)

「子どもの本当の気持ちをもっと聞いてあげないといけないなって。子どもは嘘はつかないので、小学生

の子とかは特に。」(E さん)

「大人って‘**しましょうか’って言ったら、嫌でもやってくれますよね。でも、子どもってストレートなの

で、やっぱりストレートに返してきたことに対しては、ちゃんと子どもがわかるように答えないといけないっ

ていうのは思いますね。」(H さん)

「ただ、かわいい、かわいいっていうのだけでは子どもは育っていかないって思ったし、かわいいから甘

やかすっていうのでは子どものためにはならないし、子どもは成長していかないんだなって。優しいとか、

甘やかすだけが好かれる理由ではないって思ったし、信頼関係を作っていくには、怒ることも必要だなっ

ていうのは学びましたね。だから、けじめのある行動、例えば、一緒に遊べる部分と、怒らなきゃいけない

部分っていうのが、ちゃんと区別がつくようにはなりました。」(I さん)

看護師らは、子どもたちとかかわってきた経験から自信を持っていろんな対応ができるよう

になったと語っていた。

「前と比べて自分の対応の仕方にバリエーションは増えたと思うんですけど。例えば、たった 1 回の、よ

っぽどのことでなければ血糖値だけではすぐに判断を下さずに、子どもには子どもの生活があるし、そう

いう生活全般を見るようになった。値を見ただけでこの子はよかった、悪かったっていう風には見なくなっ

た。生活でも本当なら一番好ましいのはこうであるけれども、人間これからずっと生活していくのに、いつ

もこの決まりきった正しい生活ができないっていうのも見てきたので。だから、値だけを見てたらコントロー

ルが悪いっていうネガティブな感じになっていくので、今はこういう値であっても、もう少し長期的に見て、

生活を工夫していくような対応になってきた。」(L さん)

「ある程度はどんな患者さんにもかかわれるかなっていう自信があるから、どんな患者さんが来ても、ど

んないろんな家族の方がみえても、ある程度こちらが引かずにみれるようになったかな。」(M さん)

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3)【慢性疾患の子どもの看護に対する気持ちの変化】 ここでは、慢性疾患の子どもの看護に対する気持ちとその変化していく様子、影響を受けた

ものについて語られていた。このカテゴリーには、①<すぐに目に見えるものがない>、②<

すぐには目に見えないものもあるんだ>、③<先輩の存在>という 3つのサブカテゴリーがあった。 ①<すぐに目に見えるものがない> 看護師らは、初めて小児慢性病棟に来た頃、慢性疾患の子どもの看護に対して戸惑うことが

あったと語っていた。

「ここに初めてきた時は、(小児)慢性病棟で喘息と肥満の子どもと接するっていうことになって、これが

看護かって思いましたけど・・・。」(C さん)

「検査や処置の介助とかをしてるのが看護師っていうイメージだった。すごくギャップがあった。」(K さ

ん)

「最初は(小児)慢性病棟にきて、戸惑いとかもあった。処置的なことはほとんどなくって、若かったのも

あったんでしょうけど、物足りなさというか、毎日こういうのでいいのかなっていう様な感じがあって・・・。」

(L さん)

看護師らは、生活援助が中心となる慢性疾患の子どもの看護に対してその時々の達成感が感

じられず、ジレンマを抱いていた。 「エピソードとしては沢山あるんですけど、慢性(病棟)の看護師って、その時は実りがないんですよね。

実りっていうか、形として現れないんですよね・・・。」(B さん)

「今、コツコツやってることがすごく大事なことなんだっていうのは頭ではわかってるんですけど、‘これ

ができた’っていうのが感じられないっていうか、その辺がね・・・。」(G さん)

「特に、慢性期の看護って自分のやった結果っていうのがすぐには出ないので、すごいそのジレンマは

ある。」(H さん)

そして、看護師らは、長期に入院している子どもの生活がパターン化していると感じていた。 「型にはめるわけではないけど、ここでは、やっぱり規則は規則で、集団生活だからっていうのが常に

頭にあって、型にはめてしまうような対応をしてしまいますね。」(C さん)

「あまり変化がないというか、生活にしても日課も決まってるから、毎日同じような感じはあった。それは、

急性期(の病棟)から代わってきて最初、すごく思った。」(G さん)

「慢性疾患の子たちは、生活がある程度パターン化した中にいる状態なので、こっちで全部 1 日のスケ

ジュールが組まれていて、その中でやっぱりみていくことになるので、やっぱりパターン化してるかな。最

初の頃はすごい戸惑った。急性期とはやっぱり、ぜんぜんパターンが違うから。でも、その中でも一人一

人違いはあるんですけどね。」(N さん)

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②<すぐには目に見えないものもあるんだ> 看護師らの慢性疾患の子どもの看護に対する気持ちは、時間の経過とともに変化していった。

看護師らは、急性期の看護と慢性期の看護を比較しながらその違いについて気持ちを語ってい

た。 「だんだんこの子たちにとって何が一番必要とされてるのか、何が一番大事なのかっていうのを考える

ようになったかな。やっぱり小児慢性(疾患の子どもの看護)ってそれが一番大事なのかなって、だんだん

そう思うようになったかな。急性期(の看護)とは違うものがあるかなって思いますね。」(C さん)

「就職した頃は、(小児)慢性病棟にいて、処置的なこと、看護技術がほとんどないので、そういう面で不

安もあったけど、ずっとここの子たちとかかっわっていると、今は(看護)技術を使わなくっても、人間対人

間っていうのが大事なのかなって思うようになりました。逆に急性期(の看護)よりも本当は難しいんじゃな

いかなって。」(F さん)

「急性期(の看護)とは違う慢性期(の看護)の場合って、焦っちゃいけない、相手が後で気づいてくれた

らそれでいいんだって思ったらいいのかなって、今はそう思うようになった。」(H さん)

「処置的なことも大事なんでしょうけど、慢性疾患の子どもの看護っていうのは、子どもとのかかわり、入

院生活を送る中での寂しさをまぎらわすっていうようなかかわりが大事なんじゃないかなって思いますね。

入院していて不安で、いろんなことで悩んだりしてる子もいて、やっぱり、そういった気持ちをゆっくりと聞

いてあげるのが本当だと思うし、ここの子たちとかかわっててそう気づかされた。」(I さん)

「私のしてることは看護師なのか、保育士なのか、親なのかっていう感じで悩んだりもしたけど、看護師と

しての役割が、ただ検査や処置とかの手伝いっていうのだけじゃなくって、子どもの成長も見届けながら、

療養生活が苦痛だけれどもなるべく苦痛じゃなく送れるようにっていうのを考えたり。あと、いろんな年齢

の子たちが一緒に生活する中で子どもなりに悩むこともあるだろうし、そういう子どもの悩みとか、そういう

ところにも私たちは目を向けないといけないって。(中略)先輩が子どもたちと接してるのを見てて、1 年目

の終わりぐらいにそう思うようになってきたと思います。」(K さん)

「急性期の病棟からきたので、最初は戸惑ったけど、今は焦っても仕方がないかなって思って、ちょっと

ゆっくりいこうかなって思ってる。慢性期(の看護)は急性期(の看護)とは違って、深くかかわらないとその

子のことが見えてこないから、その子のカラーがわからないというか、その子のことはわからないかなと思

って。周りのスタッフを見てて、そう思うようになった。こう思えるようになったのは、ここ最近、(勤務交替を

して)4 ヶ月に入ってからかな。」(N さん)

看護師らは、慢性疾患の子どもの看護をしていてよかったと感じたことについて語っていた。

「‘あの時看護師さんが言った言葉を覚えてるよ’って、10 年くらい経ってもまだ、病棟に会いに来てくれ

たり、そういうところがやっぱり、慢性(疾患の子どもの看護)に携わってよかったなと思うとこですね。自分

が受け持った子はみんな覚えてますね。」(B さん)

「行事があって、そういう時には子どもの表情が普段とぜんぜん違ったりとか、意外な一面が見れたりと

か、‘あー、あの子ってあんなところがあるんだ’っていうところがあると、子どもの病棟っていいなって。」

(C さん)

「いろんなことを一緒に喜んだりとか、つらいことや悲しいことも一緒に子どもたちと体験できるっていう

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のはすごくいいと思います。」(E さん)

「退院する時に個人的に手紙をくれる子がいたり、退院してからも病棟に個人名で手紙がきたりして、そ

れはすごい励みになる。」(F さん)

「(退院して)大きくなった子の話を聞いたりすることがあるんだけど、何気なしに言った言葉、例えば、

‘絵が上手ね’って言ったその言葉を子どもは覚えているんですよね、大きくなった時に。そうするとこっち

もすごく嬉しくなるよね。」(O さん)

③<先輩看護師の存在> 看護師らは、先輩看護師をモデルとし、影響を受けていた。

「やっぱり先輩の影響が大きかったかな。いろんなことが話せる人でした。」(B さん)

「1 年目の時に慢性看護のベテランの方がみえたんですけど、その人たちの影響がすごく大きいです。

考え方とか、小児看護とか、慢性看護ではっていうお話をよくしてもらってたので。初めてここの病棟にき

た時にそういうことをいろいろと教えてもらって、新鮮な状態でいっぱい吸収できて。」(D さん)

「上の先輩のかかわりを見ながら、こういうかかわりが大事なんだなって思ってて、そういうのができる

ようになってきたとは思うんですけど。私も先輩みたいに子どもに慕われる看護師になりたいって思った

し。」(K さん)

看護師らは、困った時には先輩看護師に相談し、いろんなアドバイスをもらって自分なりに

考え、実践につなげようとしていた。 「その頃(卒後 1、2 年目の頃)は、まだ視野も狭かったので、全体が見れてなかったので、そういう所を

含めていろんなアドバイスをしてもらいました。(中略)そうやってアドバイスをもらってやっていくうちに、い

ろいろ視野が広まっていったかな。」(D さん)

「困った時には先輩に相談してきましたね。先輩にアドバイスをもらって、また、そこから自分で考え

て。」(E さん)

「自分もまだ経験が少ないので、先輩から話を聞いたりして、もう少し(看護目標の)レベルを上げれる

ように考えたりします。」(F さん)

卒後教育を担当した看護師は、小児慢性病棟での卒後教育のことで悩んでいた時に、先輩看

護師の言葉から慢性疾患の子どもの看護で大事なものに気づいた経験について語っていた。

「1 年目の教育計画を作る時に、ここでは(看護)技術っていうのがほとんどないので作りにくいんですよ。

それでちょっと悩んでて。その時に、すごく私にとっては印象的な言葉だったんですけど、先輩に‘(新人看

護師が)1 年間かけてゆっくりと子ども思いの看護師になってくれたらいいよね’って言われて、あっ、そう

だなって、ここではこれが大事なことなんだって思いましたね。その時、ここ(小児慢性病棟の経験)が長

い先輩の思いみたいなのにも触れたような気がして。ちょうど10ヶ月の時だったと思うんですけど。その頃

やっと慢性(期の看護)のペースにも慣れてきたかなって思った頃で。」(G さん)

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4)【学童期の子どもの生活】 ここでは、学童期の慢性疾患の子どもの入院生活にかかわる看護師の気持ちが語られていた。

このカテゴリーには、①<入院していても子どもにとっては大事な時期>、②<学童期の子ど

もの成長発達支援>、③<子どもにかかわる人たちと一緒に子どもの生活を支える>という 3つのサブカテゴリーがあった。

看護師らは、子どもの入院生活にかかわることに関して、子どもの成長発達過程にかかわっ

ているという自覚を持っていたが、中には、自分の言動が子どもに影響を与えてしまうことの

責任を感じている人もいた。 「慢性の看護って難しいですよね。自分の性格だとか、自分の言ったことをすごく反映しますよね。だか

らすごく責任・・・。」(B さん)

「後になってからはもう変えられないですよね、自分の言葉とか。そういう影響力っていうのを感じます

ね。」(C さん)

「これからどんどん大きくなって、生活も変わっていくっていう時の成長の一過程にかかわっているって

いうのは面白いと思う。自分も影響を受けるし。けど、自分たちもあの子たちに影響を与えるのが大きいと

思うので、自分の看護としては、それだけ子どもにとっては大事な時期なんだっていうのだけは忘れずに。

心身症で入院してる子たちの背景を見てると、やっぱり、まわりの影響が大きいっていうのは思うので。」

(L さん)

「(子どもの入院生活に)いろんな職種が携わるけど、ここでは子どもたちの生活のほとんどの時間、看

護師とのかかわりが多いし、やっぱり、親御さんから離れてここの病棟で生活しているっていうことは、何

ヶ月であり、何年であっても、その子の生活の一部分になる、入院している時間も子どもの人生では大事

な時間になるので。だから、親御さんに代わって病棟で預かっている時間を、その子たちの成長に少しで

も役立つようにかかわっていかないといけないかなって。ただ病気のことはみてもらったけれども、何とな

く空白が残ったのではいけないので、病気以外のこともきちんとかかわっていかないといけないかなって

思いますね。特に、心身症の子たちを見てるとそう思いますよね。」(M さん)

②<学童期の子どもの成長発達支援> 看護師らは、子どもの年齢を考慮して子どもが自立できるようにかかわっていた。

「年齢が大きくなるほど親や看護師の割合を減らしていかなければならないと思ってる。学童期で言っ

たら 3:7 ぐらい。3 割くらいは手をかけるけれども、あとは見守る感じ。」(A さん)

「学童期に入ると、学校に行って、自分で過ごすっていう時間が増えてくるので、服の着替えとか、パン

ツの上げ下げとか、自分でできるところっていうのは、自分でやってもらわないとその子も成長していかな

いし、その子のためにもならないし。」(I さん)

「学童になると、それほどべったりとはしない時期でもありますし、かと言って、まったく干渉せずに自分

たちで判断できるかっていうとそうではないので、ちょっと一歩引いてみながら、何かある時は手助けが必

要かなって。低学年だと、あまり手を出しても返って本人の自立を妨げてしまう部分もあるし、本人にさせ

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てみながら。でも、全部目をつぶることはできないので、見守りつつなんですけど。あまりできることは手は

出さず、目は常に見てますけど。(中略)それで、やっぱり子どもがやりたいっていうことはさせてみるのが

大事かなって思うので。」(L さん)

看護師らは、入院生活の中で子どもに社会のルールを教えていた。

「入院してると、社会生活のルールとか、そういう体験がどうしても乏しくなってるから、家族が本来なら

接して指導していかないといけないところ、生活の中で体験して覚えていくような普通の子どもたちが生活

の中で学んでいくようなところを重点的にかかわるようにしてる。」(C さん)

「子どもから見たら私たちは成人になるので、善悪の区別っていうのは私たちもきちんとつけて、その辺

はきちんと教えるようにしてる。それは大人として当然のことだと思うので。」(F さん)

「ここでは処置っていうのは本当に少ない。それで年齢も大きくなってくるとほとんど手はかからなくなっ

てきますけど、やっぱり子どもが社会に復帰した時に困らないように教育していくっていうのがここでの看

護かな。」(M さん)

また、看護師らは、子どもが「人を思いやる気持ち」を育めるようにかかわっていた。

「他の子への思いやりとか、そういうのができるように。もし、自分がその立場だったらどうなのかってい

う辺りのことを教えながら。」(C さん)

「例えば、喧嘩してたら両方の意見を聞いて、お互いの気持ちを考えてもらう。それで話し合いの場を持

つとか、相手の気持ちを理解できるようにする。そのあとは仲直りができるように。」(J さん)

「何にしろ、‘ありがとう’とか‘ごめんなさい’って相手のことを考えてちゃんと言える子になるように。だ

から、自分も子どもに‘ありがとう’とか‘ごめんね’ってちゃんと言うし、子どももそうやって声をかけてもら

って‘嬉しい’っていう気持ちをわかってもらえたら、子どももそういうのがきちんと言えるようになるのかな

って。」(G さん)

看護師らは、入院していても子どもには子どもらしい生活をさせてあげたい、ここでしか経

験できないこともあるので、その中でいろんなことを得て欲しいと語っていた。

「子どもらしい生活っていうか、病気によっては安静もあるけど、安静度内でバスケットもできるので一

緒に子どもたちとバスケットしてる。」(A さん)

「行事の時には、子ども主体でいろんな年齢の子たちが一緒にグループなって出し物をしたり。その中

で、大きい子は小さい子の面倒を自然とみてくれてますし、本当にそういう時は生き生きとしてますよね、

みんな。だから、(小児)慢性病棟で生活していた経験とか、友達関係の中で得たことっていうのを生かし

ていって欲しいなって思う。」(C さん)

「他の子は外で走り回ったり、遊んだりしてるのに、病院にいるからって、ここの子たちは結構我慢して

ることもあるだろうし。だから、やっぱり、どの病気でもいろんなことを体験させてあげたいっていうのがす

ごいあって。ここでは保育士さんや(児童)指導員さん、栄養士さんもすごく協力してくれるので、レクリエー

ションで一緒にアイスクリームとかお寿司を作ったりもしました。」(E さん)

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③<子どもにかかわる人たちと一緒に子どもの生活を支える> 看護師らは、病棟行事や疾患教育、退院計画など、子どもへの援助の際には他の職種の人た

ちと協力していた。

「親御さんが離婚されてる家庭の子が多くて、そうなると家に帰っても、お母さんは(働いていて食事が)

作れないですからね。それでまた戻ってきましたっていうことではね・・・。自分でカロリー計算して、それを

どんどん発展させていって、最終的には自分で食べたいものを店で買ってきて、それでカロリーを計算し

て食べたりとか、食べれる量を増やす工夫をするとかいうような調理実習を栄養士さんにも入ってもらって、

毎週毎週 1学期間かけてやりました。」(A さん)

「その子の家庭のこととか、病状的なこととか、そういうので家に帰っても(自己管理を)続けていくのが

難しい子だと、地域に働きかけたりもしましたね。(中略)地域の保健所とかにいろいろと連絡して、何とか

この子が続けていけるようにっていうようにやらないとって思ったので、ケースワーカーさんに相談したりと

かもしましたね。」(D さん)

「お母さんがいない子で、自分で食事を作らなきゃいけない子だったんですけど、外泊の時に自分で作

ったものをノートに書いてきてもらって、それを見て、栄養士さんに指導してもらうこともありました。」(E さ

ん)

「学校に行った時にスムーズに教育現場の先生も不安なく入ってもらえるように、できるだけ疾患の理

解と日頃の低血糖に対する自己管理の方法を具体的に指導するようにはしています。学校の先生にも退

院前に来ていただくようにして。養護の先生と担任に。それから退院前に試験登校をしてみて、自己注射

をどこでするかとか、血糖をどこで測ったらいいかとかやってみて。どういう時に低血糖が出やすくて、そ

れに対して実際自分でどういう風に判断して、自己管理するのかっていうのを私たち医療者側から離れて

自分でできるかどうか、判断できるかどうかっていうことを試してみて、ちょっとでも自信を持って、不安なく

退院できるように。」(M さん)

看護師らは、子どもにかかわる人たちとのコミュニケーションを大切にしていた。

「学校の先生と難しい子は連携をとったりもしますね。学校は敷地内にあるし、担任の先生や保健の先

生ともしょっちゅう連絡とったりしてる。」(Dさん)

「子どもから‘内緒な’って言われたことをOPENにはできないけど、それは1人で抱えててもいけないこ

とだから。心身症の子の問題とかだったら特にですけど、スタッフとか先生(Dr)にも相談しないといけない

ことだから。それはその子には漏れなければ、こっち(医療者)サイドで解決できることもあるので、そうい

うのはきちんとコミュニケーションができてたらいいのかなって。」(N さん)

「やっぱり、一番には子どもの気持ちをしっかり聞いてそれを尊重しつつ、先生(Dr)や学校の先生なり、

家族には、子どもはこうやって言ってるっていうことを伝えて、本人の気持ちを一番ちゃんと考えてもらえる

ようにかかわってきた。」(Pさん)

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5)【慢性疾患の子どもの将来的な生活】 ここでは、慢性疾患をもって、これから生活していく子どもに対する気持ちについて語られ

ていた。このカテゴリーには、①<子どもの自己管理に対する自覚を育む>、②<これからも

うまく病気とつきあっていけるように>、③<身近な相談役>という 3つのサブカテゴリーがあった。 ①<子どもの自己管理に対する自覚を育む> 小児慢性疾患の多くは、薬物・食事・運動療法などのセルフケアを要するため、看護師らは、

子どもが疾患に関するセルフケアについて理解できるように子どもの年齢に合わせて創意工

夫しながら指導していた。 「小さい子でも病気のことはある程度知って、うまく生活できるようになっていかないといけないと思うの

で、その年齢に合ったパンフレットを作ったり。ちゃんとその子用に、低学年の子だったので絵をいっぱい

描いて作りました。それで興味を持ってもらえればって思って。それを理解しないと、なぜそれをしたらいけ

ないっていうのをわからないと思うので。やっぱり、絵とかがあったら興味持ってくれるし、その子の興味の

あることを知って、工夫して作りしました。」(E さん)

「なかなか理解できないような子には、わかりやすく絵を描いて教えてみたりします。あとは、日が経っ

てくると抜けていくこともあるし、繰り返しながら覚えていくものだと思うので、繰り返して教えてましたね。」

(K さん)

「例えば、薬の自己管理とかでも、‘子どもだからできやんかな’じゃなくって、どうやって説明すればでき

るのかなって考えて。やっぱり小さい子だと、キャラクターとか絵には興味を示してくれるし、表にチェックし

たりすることも楽しんでるみたいなので、まずは、子どもに興味を持ってもらえるように。あとは一度に沢山

は言わない、少しづつ。」(L さん)

そして、看護師らは、入院中には医療者主体の決められた内容の疾患管理ができるけれども、

入院中から子ども自身がセルフケアに対する自覚を持てるようかかわっていた。

「以前は薬をこっち(看護師)から渡してたんですよ。こうやって配って。でも、今は薬を子どもに取りにき

てもらうようにしました。でないと、(退院して)家に帰って薬飲み忘れました、今までだったら全部看護師さ

んにやってもらってました。でも、それではだめだと思うんです。それでは子どもが困ることになるので、子

どもが家に帰っても困らないようにやっていかないと。」(A さん)

「大変だけど、やっぱり慢性疾患の子だと自己管理がすごく大事だし、要は自分だから。」(E さん)

「小児慢性疾患の子だと病気と長く付き合っていかないといけないので、親任せ、看護師任せではちょ

っと困るので。だから、こちらから促さなくても血糖測定や注射の時間には来れるように。まずはその辺か

ら。」(K さん)

「どういう時に低血糖が出て、その時の行動や食事内容を子どもが振り返れるように、こちらが対処す

るばかりじゃなくって、そうやって子ども自身が自覚をもっていけるように。そうやって自分で自己管理でき

るようになれば、それが自分の自信にもなっていくし、次の思春期へのステップアップにもなるのかなっ

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て。」(L さん)

②<これからもうまく病気とつきあっていけるように> 看護師らは、子どもが疾患のセルフケアができるようになることが最終目標ではなく、退院

後もそれを継続しながらうまく生活できることが大切と考え、指導の際には、退院後の子ども

の生活を重視していた。 「その子の生活、生活リズムとか、例えば、スポーツクラブに入ってる子もいるので、その子の生活パタ

ーンに合ったものを作っていかないと意味がないと思う。」(E さん)

「退院後の生活とかだったら、以前は教科書に書いてあるようなことを言ってたのが、同じような病気で

入院してた子が退院して外来に来た時に生活の様子をちょっと聞いてみたりして、学校ではどうしてるとか、

クラブはどうしてるとか。それをまた、入院中の子に言ってみたり。そうやってちょっとプラスαのことが言

えるようになってきたかな。」(J さん)

「小児慢性疾患の子って自己管理できるようになることは目標ですよね。でも、一番大事なところは、家

庭に帰ってからどういう風に自己管理を行っていくか、継続していくかっていうことになってくると思う。」(K

さん)

「ここ(入院中)ではある程度、食事なり、運動なり、管理されている部分っていうのがありますけど、家

では通う学校の距離とか、クラブとか、お母さんが働いてる子っていうのでも全く違ってくるので、その辺を

考慮してかかわってる。」(L さん)

外来の勤務経験のある看護師は、外来で今まで見てきた子どもたちの生活の様子から、長い

目で子どものことを見守っていかないといけないと語っていた。

「子どもたちもお家での生活に慣れてくると、だんだん子どもたちが‘血糖を測らなくっても、自分の身体

の中でわかる’と言ってきます。だから、かえって血糖を測らなくなっちゃうことの方が心配で。HBA1Cの値

と子どもたちの言ってる話の中でアドバイスしていかないといけない。(中略)思春期くらいになると荒れて

くる子もいて、一時期、注射を打たなくなる子もいたりして。そのくらいになると難しい時期でもあるので、

外来受診に来てくれたらいいかなっていうくらいにみていかないといけないこともある。」(M さん)

③<身近な相談役> 看護師らは、退院後の子どもの生活の様子を知って、外来でも子どものフォローをしていか

なければならないと語っていた。 「小児慢性疾患の子っていうのは一生つきあっていかなければならない病気だから、大きくなってくると、

思春期くらいになってくると悩むこともいっぱいあるだろうし。やっぱり向こう(子ども)も外来に来た時に知

った看護師がいたら安心かなって思うし、ぜんぜん知ってもらっていないよりはいいかなって思います。」

(F さん)

「学校で注射を打ったりしててグループ行動に遅れたとか、‘早くしろ’っていうようなことを言われたって

いうのを聞くと、退院してからでも子どもの話を聞いてあげないといけないかなって思う。」(G さん)

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「中には、やっぱり周囲に(病気のことを)言えないっていうので、どうしてもコソコソトイレで注射を打っ

たりだとか、学校でも一部分の子にしか(病気のことを)言えなかったりとかっていうのを見てると、フォロ

ーしていかないといけないなって思いますよね。自己管理以外のことでも、かかわっていかないといけな

いかなって。」(M さん)

さらに、看護師らは、これから慢性疾患をもって生活していく子どもが、進学、就職、結婚

などを迎えるにあたって、病気のことで悩みを持つだろうと予測し、その際には、子どもの身

近な相談役になってあげたいと語っていた。 「きっとこの子たちも大きくなったら、自分が病気をもってて、好きな人ができて結婚、妊娠とかってなっ

たら、すごく悩んだりするのかなって思った。こういう時って親御さんもきっとすごく悩んだりするだろうし、

そういうことも想定してかかわっていけたらいいのかなって思う。」(G さん)

「病気の子も普通の子たちと同じように、友達関係、恋愛関係とかいろんなことでいっぱい悩みがあって、

そこで病気のことを含めて相談できるのがやっぱり私たち看護師だと思うので、そういうのを聞いてあげて、

相談相手になってあげたいかなって。やっぱり、ここでずっとかかわってたから、そんな風にしてあげたい

っていうようなところがあって。どの子も一緒ですけど、指導とかするだけじゃなくって、これから大きくなっ

ていく時に、病気があることでの悩みっていうのも当然でてくると思うので、そういうのを聞いてあげたいか

なって。」(I さん)

「身近に相談できる相手は少ないので、やっぱり医療従事者が、例えば、女の子であったら、出産とか

だとすごく不安だし、結婚とか、進学、就職に際してもよきアドバイザーであり、相談役になってあげたいな

って思います。」(M さん)

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Ⅳ.考察 まず、統合結果より、カテゴリー間の関連性について図解化し(図 1)、それを基に文章化する。そして、カテゴリー間の関連性について文章化したものを基に慢性疾患の子どもの看護

の視点について検討する。 1.学童期の慢性疾患の子どもに対する看護師の気持ち 看護師らの<子どもを思う気持ち>は、初めのうちは子どものことを「かわいそう」という

目で見てしまうことがあったが、病気以外の部分の子どもらしさを感じ、「病気だからって特

別に見なくていいのかな」と次第に変化していた。看護師らは、親元から離れて入院している

子どもと長期にかかわり、<子どもと看護師の関係>を築いていくうちに<子どもを知ること

>で子どもの特徴や小さな変化も感じ取るようになっていた。そして、看護師らは、小児慢性

疾患の場合、心理面の問題が関与していることが多く、<表面的なものではなく子どもの気持

ちを理解する>ことが大切と考え、子どもの心をみようとしていた。また、小児喘息だった看

護師は、<自分の病気体験>を生かして子どもの気持ちに近づくことができればと語っていた。

このように、看護師らは、子どもとの関係を築き、子どもの気持ちを理解し、近づきながら子

どもに対する気持ちを育んでいくと推察される(図 2-1)。 しかし、近年、複雑な問題を抱えて入院する子どもの割合が増えており、看護師らは、子ど

もに対して「何とかしてあげたい」と思う気持ちがある一方で、自分たちが介入しても「どう

なるものでもない」という現実に葛藤し、子どもに近づけないと感じていた。このように、看

護師らの【子どもに寄り添う思い】は揺れていることが明らかになった(図 2-2参照)。この揺れには、子どもの気持ちに近づける部分と<子どもが抱えている問題が複雑>であるために

近づけない部分があることが影響していた。心身の問題のある子どもとかかわる看護者に対す

る意識調査 12)では、子どもとのかかわりについて約 4 割の者ができれば避けたいと感じていた。今回のインタビューでは、「どうなるものでもない」、「いたたまれない」、「つらい」とい

う気持ちは聞かれたが、避けたいという言葉は聞かれなかった。そして、看護師らは、「何と

かしてあげたい」という気持ちから子どもとスキンシップを図ったり、子どもと家族の気持ち

の橋渡しをしており、<子どもの抱えている問題が複雑>であることの影響を受けながらも何

とか子どもの気持ちに近づこうとしていることが明らかになった。そして、心身症の子どもた

ちの姿が「子どもの大事な時期にかかわっている」、「身体に出ている問題だけではなく心もき

ちんとみてあげないと」という自覚にもなっていた。<子どもの抱えている問題が複雑>であ

ることは、<入院していても子どもにとっては大事な時期>、<表面的なものではなく子ども

の気持ちを理解する>ことにも影響していた。 一方で、心の問題を抱えた子どもたちとかかわることに関して、「対応の仕方がわからない

ので相談できる人がいて欲しい」という声も聞かれ、看護師らが、悩みながら子どもとかかわ

っている様子が伺える。

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2.慢性疾患の子どもの看護に対する看護師の気持ち 看護師らは、初めのうちは慢性疾患の子どもの看護に対して戸惑い、<すぐに目に見えるも

のがない>と感じていた。そして、<子どもと看護師の関係>を築いていく中で様々な体験を

し、<すぐには目に見えないものもあるんだ>と感じるようになっていった。 <すぐに目に見えるものがない>と感じることとしては、医療的処置の機会が少ないこと、

看護に対して抱いていたイメージとのギャップがあったこと、自分が行ったケアの成果がすぐ

には感じられないことなどが語られていた。一方で、<すぐには目に見えないものもあるんだ

>と感じることとしては、慢性疾患の子どもの看護をしていてよかったと感じたこと、医療的

処置よりも大事な子どもとの関係に気づいたことなどが語られていた。 初めのうちは、子どものことよりも看護師自身のことに目が向けられた内容であるが、次第

に子どもと看護師の関係に目が向けられた内容に変化し、視野の広がりがみられる。そして、

気持ちの変化と子どもとのかかわりについてみると、「ここでは処置は少ない。それで年齢も

大きくなってくるとほとんど手はかからなくなってきますけど、子どもが社会に復帰した時に

困らないように教育していくっていうのがここでの看護かな」というように、子どもにとって

どのような援助が必要なのかを考えていることがわかる。また、医療的処置の少なさに当初、

「物足りなさ」を感じていた看護師も「できることは手を出さずに、目では常に見ながら」子

どもの成長発達支援を行っていることが語られていた。このように、慢性疾患の子どもの看護

に対する気持ちが肯定的に変化することにより、子どもとのかかわりも変化していることがわ

かる。 看護師らの慢性疾患の子どもの看護に対する気持ちは、周囲の影響を受けながら変化してい

た。子どもとのかかわりの中では、看護師らは、子どもの成長や回復する姿から「自分の存在

意義を感じる」、「ちょっとは自分も役に立ってるのかな」と感じ、子どもとかかわることに対

する充実感や喜びについて語っていた。看護師らは、かかわってきた子どもにとっての自分の

存在を感じており、このような感情が慢性疾患の子どもの看護に対する気持ちに肯定的に影響

していた。 そして、今回のインタビューでは、モデルあるいは相談役として<先輩看護師の存在>があ

げられており、先輩看護師から受ける影響は大きい。先輩看護師の「(新人看護師が)子ども

思いの看護師になってくれたらいいよね」という言葉が印象的で、「ここではこれが大事って

思った」、「先輩の思いに触れたような気がした」という体験を語った看護師がいた。また、卒

後 1年目の時に先輩看護師から小児看護、慢性疾患の子どもの看護について話してもらったことの影響が大きいと語っていた看護師もいた。このような先輩看護師の体験を学ぶ意義は大き

い。 3.慢性疾患をもって生活する子どもに対する気持ち 看護師らは、<入院していても子どもにとっては大事な時期>としてとらえ、<学童期の子

どもの成長発達支援>をしていた。看護師らは、子どもの入院生活が少しでも充実するよう、

他職種の人たちと協力しながら病棟行事などを含めた生活援助を行っていた。その中では、子

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どもに対して「ここで生活していた経験、友達関係の中で得たことを生かしていって欲しい」

という気持ちが語られていた。そして、看護師らは、疾患のセルフケア教育に関しては、医療

者主体ではなく<子どもの自己管理に対する自覚を育む>ことができるようかかわっていた。

その中では、「子どもが家に帰っても困らないようにやっていかないと」という気持ちが語ら

れていた。 次に、看護師らは、退院後の子どもの学校生活の様子を知り、外来通院する子どもに対して

セルフケア教育以外の面でもフォローをしていく必要性を感じていた。さらに、看護師らは、

これから慢性疾患をもって思春期・進学・就職・結婚などを迎えるにあたり、子どもが病気の

ことで悩むだろうと予測し、子どもの悩みを聞いてあげられる<身近な相談役>としてかかわ

っていきたいという気持ちを語っていた。また、外来の勤務経験のある看護師は、思春期にな

ると療養行動が乱れるケースをみてきた経験から長期的に子どもの生活を見守っていかなけ

ればならないと語っていた。このように、看護師らは、これから慢性疾患をもって生活してい

く子どもの病気をみるのではなく、病気の子どもの気持ちをみていく必要性を感じていた。こ

の気持ちには、【学童期の子どもの生活】に長期にかかわり、<子どもと看護師の関係>を築

いてきたことが関係していた。 慢性疾患の子どもと健康児を対象とした研究 16)では、慢性疾患の子どもは健康児よりも日

常生活上のストレスが高く、退院後の患児に対する精神的なフォローの必要性が示唆されてい

ることから、子どもの<身近な相談役>になれる存在が必要である。例えば、入院中に子ども

の成長発達過程にかかわってきた病棟看護師が外来で<身近な相談役>としてかかわること

ができれば、入院中に築いてきた<子どもと看護師の関係>を生かしたサポートができる。ま

た、外来フォロー中の子どもが再入院した場合のケアにも反映することができる。そして、退

院した子どもから聞いた話を指導の参考にしたことで「教科書にプラスαした指導ができるよ

うになったかな」という経験が語られていたように、入院中の子どものケアにも反映すること

ができる。

4.今後の慢性疾患の子どもの看護の視点についての検討 小児慢性疾患の背景の変化により、複雑多様な背景をもつ子どもが増えている。このような

中で、子どもとのかかわりに悩み、戸惑いながらも子どもとかかわっている看護師の姿が明ら

かになった。今後、心身医学的なアプローチを要する子どもの数は増加することが予測されて

おり 3)、子どもとのかかわりに対する悩みも増えると予測される。今回のインタビューでは、

子どもたちとのかかわりに対して相談できる人がいて欲しいという声も聞かれた。まずは、看

護師が相談あるいは気持ちが表出できるような場や機会が必要であり、それは子どもに対する

気持ちやかかわりにも反映される。 次に、慢性疾患の子どもの看護に対して、その時々の達成感が感じられないというような『戸

惑い』が聞かれた。しかし、この『戸惑い』は決して悪いことではなく、誰もが経験するよう

な気持ちであり、いろんな経験をして変化していくものである。今回のインタビューの中で、

先輩看護師の看護に対する思いに触れたこと、先輩看護師の経験を学んだことの影響が大きか

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ったという声が聞かれた。先輩看護師も恐らく、このような『戸惑い』を経験しており、『戸

惑い』を抱いている看護師のよき理解者になると考えられる。そして、経験者の体験を学ぶこ

とには、知識・意志決定・スキルが受け継がれるという教育効果がある 19)といわれており、『戸

惑い』を抱いている看護師に限らず、先輩看護師の看護に対する思いに触れられるような経験

を学ぶ意義は大きい。 今回のインタビューでは、慢性疾患の子どもの将来的な生活を援助していきたいという気持

ちが聞かれた。このような声は、これから慢性疾患をもって生活していく子どもにとって心強

いサポートになる。特に、学校生活が始まってからの方が友達との違いを感じてストレスが高

くなる 16)といわれており、小児慢性疾患の子どもの多くが外来通院となってきた現在、外来

での子どもへの精神的なサポートが重要である。子どもが病気以外のことでも、何でも相談で

きるような存在が必要である。子どもの生活する場がかわっても、病気をみるのではない、病

気の子どもの気持ちをみるかかわりが継続できることが期待される。継続看護のシステムにつ

いての検討 20,21)が多くなされているが、単なる病棟から外来への引継ぎにとどまらず、入院中

に子どもとかかわってきたことが生かせるようなケアが求められる。慢性疾患をもって生活し

ていく子どもの成長発達を見守っていけるよう、外来看護師とともに外来での子どもに対する

サポートについて検討する必要がある。

そして、今回のインタビューでは、小児慢性病棟勤務経験年数1~8 年(臨床経験年数 2~24 年)の幅広い対象者が得られたが、経験年数による差や特徴は明らかではなかった。それぞれの対象者の体験の内容は、単に経験年数に比例するものではなく、それぞれの小児あるい

は小児看護に対する気持ちが反映されたものと考えられる。先行研究 5)では、小児看護の経験

年数が子どもとかかわる態度に影響し、3年以降に子どもと接する態度が変化する傾向があると報告されているが、今回、インタビュー調査を実施したことにより、一概に経験年数でみる

のではない、それぞれの対象者の体験そのものが重要であることが明らかになった。このよう

な貴重な体験を語り継ぐ機会が大切である。

5.本研究の限界と課題 本研究において、学童期の慢性疾患の子どもとかかわる看護師の体験を明らかにすることが

できた。しかし、一施設の限られた対象者へのインタビューであったため、慢性疾患の子ども

の看護に携わる看護師の体験としてすべてに一般化できるものではなかった。また、慢性疾患

の対象も幅広く、漠然とした内容になってしまったため、今後、今回抽出された一つ一つのカ

テゴリーに絞って調査し、考察を深めていく必要がある。

そして、これから慢性疾患をもって生活している子どもに対するかかわりを検討するにあた

り、今後、外来看護師にも調査し、考察を深めていく必要がある。

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Ⅴ.結論 本研究では、学童期の慢性疾患の看護の経験のある看護師 16 名にインタビューを行い、看護師らの体験について、質的帰納的分析方法を用いて分析した。その結果、以下のことが明ら

かになった。 1.今回のインタビューより、【子どもに寄り添う思い】、【慢性疾患の子どもとかかわること】、【慢性疾患の子どもの看護に対する気持ちの変化】、【学童期の子どもの生活】、【慢性疾患

の子どもの将来的な生活】という共通した 5つの大カテゴリーと 16のサブカテゴリーが抽出された。

2.看護師らの【子どもに寄り添う思い】は揺れていた。この揺れには、子どもの気持ちに近づける部分と<子どもが抱えている問題が複雑>であるために近づけない部分があること

が影響していた。 3.慢性疾患の子どもの看護に対する看護師らの気持ちは、<すぐに目に見えるものがない>から<すぐには目に見えないものもあるんだ>に変化していた。この気持ちの変化には、

<子どもの存在>、<先輩看護師の存在>が影響していた。 4.看護師らは、これから慢性疾患をもって生活していく子どもの病気をみるのではなく、病気の子どもの気持ちをみていく必要性を感じていた。この気持ちには、【学童期の子どもの

生活】に長期にかかわり、<子どもと看護師の関係>を築いてきたことが関係していた。

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引用・参考文献 1)日本小児アレルギー学会(編):小児気管支喘息治療・管理ガイドライン 2002.協和企画,東京,2002

2)日本糖尿病学会(編):小児・思春期糖尿病管理の手びき.南江堂,東京,2001 3) 五十嵐勝朗,黒沼忠由樹,小出信雄,塩谷睦子:小児慢性病棟の役割.医療,53(8):524-527,

1999 4)白畑範子,鈴木学爾,若山幸恵:1 型糖尿病をもつ子どもと家族のライフサイクルに合わせた支援;学童期の子どもと家族.小児看護,26(7):831-836,2003

5)星直子,小林八代枝,霜田敏子:入院児に接する看護婦の態度の検討.日本小児看護研究学会誌,5(2):67-70,1996

6)霜田敏子,星直子,小林八代枝:入院児に接する看護婦の態度の検討 第 2 報.日本小児看護研究学会誌,6(2):75-79,1997

7)小林八代枝,星直子,霜田敏子,杉山智江:入院児に接する看護師の特性.埼玉医科大学短期大学紀要,14:7-19,2003

8) 鈴木千衣:小児がん患者-看護婦関係における看護婦の心理的な距離感の構成因子と意味.看護研究,31(2):179-188,1998

9)舟島なをみ,及川郁子:長期療養を要する小児の入院環境の実態.第 25回日本看護学会集録(小児看護):91-93,1994

10)舟島なをみ,及川郁子:長期療養を要する小児のケアに関わる問題の質的・帰納的分析.第 26回日本看護学会集録(小児看護):9-11,1995

11)赤坂徹:心身医学とチーム医療.小児内科,31(5):674-680,1999 12)土居久子,北島靖子,西村あをい,大槻優子:心身の問題行動をもつ子どもの看護について.順天堂医療短期大学紀要,2:55-63,1991

13)Ramjan,L.:Nurses and the‘therapeutic Relationship’:caring for adolescent with anorexia nervosa.Journal of Advanced Nursing,45(5):495-503,2004

14)仲井美由紀:気管支喘息児の自己管理における認識に関わる要因.岐阜大学医療技術短期大学部紀要,1:96-108,1994

15)兼松百合子,中村伸枝,内田雅代,谷洋江,宮本茂樹,杉原茂孝,今田進,佐々木望,新美仁男:糖尿病患児の療養行動と健康行動.小児保健研究,56(6):777-783,1997

16)中村伸枝,兼松百合子,武田淳子,内田雅代,古谷佳由理,丸光惠,杉本陽子:慢性疾患患児のストレス.小児保健研究,55(1):55-60,1996

17)益守かづき:先天性心疾患の子どもの体験に関する研究.看護研究 30(3):233-244,1997 18)中野綾美:慢性状態の子どものケアに対する看護者の専門職としての姿勢.高知女子大学紀要(自然科学編),45:115-125,1996

19)Waddle,J.,Durrant,M.& Avery,S.:The Integration of Research by Nurse Educators.Journal of Continuing Education in Nursing,30(6):267-271,1999

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20)小島美佐子,上中道子:病棟と外来の統合看護による慢性疾患患児へのケア.小児看護26(3):308-313,2003

21)小原美江:病棟から外来へ;ディスチャージプランニングについて.小児看護 26(3):319-322,2003

22)加藤令子,添田啓子,片田範子:小児特有の疾患をもつ患者の成人を対象とする医療への移行の実態と看護の役割.日本小児看護学会誌,10(1):50-58,2001

23)中村美保,兼松百合子,横田碧,武田淳子,中村伸枝,丸光惠,古谷佳由理,野口美和子,内田雅代,杉本陽子:慢性疾患患児と健康児のソーシャルサポート.日本看護

科学学会誌,17(1):40-47,1997 24)廣末ゆか:小児看護におけるケアの現状 ―看護婦の認識から―.小児看護 16(7):871-880,

1993. 25)河上智香,藤原千恵子,仁尾かおり,石見和世,文字智子,高田一美,高谷裕紀子:小児専門病院に勤務する看護師の職務ストレスとサポートに関する研究.大阪大学看護学雑誌,

10(1):11-19,2004 26)堀妙子,関恭子,奈良間美保:医療的処置を行っている小児が通院している外来看護の実態と看護師の意識に関する調査.日本小児看護学会誌,11(2):28-33,2002

27)横山由美:調査結果にみる外来看護の取り組みの状況.小児看護,26(3):350-355,2003 28)川喜田二郎:発想法.中央公論社,東京,1967 29)川喜田二郎:続・発想法.中央公論社,東京,1970 30)舟島なをみ:質的研究への挑戦.医学書院,東京,1999

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謝辞 本研究へのご協力を快く承諾していただき、貴重なお話を聞かせてくださった看護師の皆様

に心より感謝いたします。 そして、本研究の趣旨をご理解いただき、快く調査の場を提供してくださった M 病院の病

院長様、看護部長様、看護師長様に心より感謝いたします。 本研究の過程を支えてくださった広島大学大学院保健学研究科看護開発科学講座発達期健

康学の竹中和子先生、永田真弓先生、同研究室の皆様、熊本大学医学部保健学科の宮里邦子先

生に心より感謝いたします。 本研究をまとめるにあたり、ご指導いただきました広島大学大学院保健学研究科看護開発科

学講座発達期健康学の田中義人教授に心より感謝いたします。 最後に、本研究の作業を通して、温かい励ましやサポートをしてくださった広島大学大学院

保健学研究科の皆様をはじめ、お世話になった皆様に心より感謝いたします。

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記号の説明: :矢印の向きに関連がある

: 相互に関連がある :互いに反対

図 1 学童期の慢性疾患の子どもとかかわる看護師の体験の統合結果

慢性疾患の子どもの将来的な生活

・ かわいそう、不憫に思う

・ 自分の子どもと重なる部分が

ある

・ 病気でも子どもなので普通に

喧嘩もするし、騒いだりする

子どもを思う気持ち

・ 反発しているその理由を考え

て理解してあげないと

・ 心理面から看護しないと、慢性

期の看護にはならないし、病気

も治らないって思う

表面的なものではなく子

どもの気持ちを理解する ・ 何かしら家庭に問題がある子

が多い

・ 以前は中・高生ぐらいの心身

症が多かったけど、今は小学

生でも心を病んでる

・ 家族との橋渡しが必要

・ 子どもにとって、NS は母親、

姉、友達代わりでもあるし、指

導する人でもある

・ 長くかかわってるから子ども

との関係っていうのを感じる

子どもと看護師の関係

・ 長くつきあってると、語調や

目をみたらわかるようにな

ってくる

・ 子どもの小さな変化に気づ

いてあげられる

子どもを知ること

・ 子どもが元気になって喜

んでる姿を見たら嬉しい

・ 子どもの病状が安定して

ると自分も役に立ったの

かなって思える

子どもの存在

・ 善悪の区別はきちんと教える

・ 自分でできることは自分でできる

ように

学童期の子どもの

成長発達支援

・ 病気以外のこともきちんとみて

いかないといけない

・ 子どもの成長にかかわることは

面白いけれど、それだけ大事な時

期でもある

入院していても子ども

にとっては大事な時期

・ 栄養士さんにも協力してもらって調理実習をする

・ 在宅に戻って、家族が管理していくのが難しい場

合、ケースワーカーに相談して、地域に連絡をと

った

・ 家族、学校の先生、Drにも話をして、本人の気持

ちを一番に考えてもらえるようにする

・ 医療スタッフの情報の共有、コミュニケーション

子どもにかかわる人たちと一

緒に子どもの生活を支える

・ 長く病気とつきあっていかないといけ

ないので、親任せ、NS任せでは困る

・ 入院中も配薬するのではなく、子ども

が自分で薬をとりにくるようにしてる

子どもの自己管理に対

する自覚を育む

・ 退院した子に聞いたことを、入院

してる子の指導の参考にした

・ 思春期くらいになると荒れてく

る子もいる

これからもうまく病気と

つきあっていけるように ・ これから進学、就職、結婚

などの時の相談役になって

あげたい ・ 友達に病気のことが言え

ず、学校でコソコソ注射を

身近な相談役

子どもの抱えている問題

が複雑

・ 喘息の息が苦しいってい

うことがどういうことか

わかる

自分の病気体験

学童期の子どもの生活

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子どもを思う気持ち

子どもの第一

印象:かわい

そう

病気だからって特

別に見なくてもいい

のかな

子どもの気持

ちを理解する

子どもと看

護師の関係

子どもを知る

こと

自分の病気

体験

子どもの抱えて

いる問題が複雑

子どもを思う気持ち

何とかしてあげた

どうすることもでき

ない

図 2-1 学童期の慢性疾患の子どもに対する

看護師の気持ち

図 2-2 学童期の慢性疾患の子どもに対する

看護師の気持ちへの影響

図中の は対象者の言葉 はサブカテゴリーを示す

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研究へのご協力のお願い 資料1

家庭から離れ、入院生活を送る慢性疾患の子どもたちにとって看護師は子どもたちの生

活に深く関わる貴重な存在であると考えます。また、看護師も子どもたちとのかかわりを

通して様々な体験をしているものと考えます。

そこで、入院中の慢性疾患の子どもたちとかかわる看護師の方のお話を伺い、子どもと

のかかわりを通してどのような体験や学びをされたのか、それが現在の子どもや看護の考

え方にどのように関連しているのかということを理解し、今後の小児看護に対する示唆を

得たいと考えました。

ご多忙中の折、誠に恐縮ではございますが、本調査にご協力いただけます方をご紹介い

ただきたく存じます。ご都合は後日お電話にてお伺いさせていただきます。 なお、調査・研究にあたり、以下のように配慮し、ご協力いただいたことによるご迷惑

がかからないようにいたします。 1.お話をお伺いさせていただく時間は1時間程度とさせていただきます。ご都合のよい日

時、場所に合わせていたします。 2.お話の内容は正確に覚えていることが難しいので、録音させていただきたいと思います。 お話いただく内容は研究目的以外に使用することは一切ありません。

調査結果は広島大学大学院の修士論文として提出する予定です。また、関連の学術学会

誌等に発表させていただくことがありますが、お話いただいた内容は匿名とし、お名前

やプライバシーに関することが外部にもれることはありません。

3.研究へのご協力はご自身の自由な意思によるものです。

4.研究への協力を拒否したために何らかの不利益が生じることはありません。

5.理由の如何にかかわらず、調査への協力を取りやめたくなった場合には、いつでもやめ

ることができます。その際、データは破棄させていただきます。

どうぞ研究の主旨をご理解いただき、ご協力いただきますようよろしくお願いいたします。

この研究について何かご質問、ご意見等ございましたら、いつでもご遠慮なく下記の連絡

先までお尋ねください。

【調査についてのお問い合わせ先】 〒734-8551 広島県広島市南区霞1-2-3

広島大学大学院保健学研究科2年 別所史子

指導教官 田中義人

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研究へのご協力のお願い 資料 2

家庭から離れ、入院生活を送る慢性疾患の子どもたちにとって看護師は子どもたちの生

活に深く関わる貴重な存在であると考えます。また、看護師も子どもたちとのかかわりを

通して様々な体験をしているものと考えます。

そこで、入院中の慢性疾患の子どもたちとかかわる看護師の方のお話を伺い、子どもと

のかかわりを通してどのような体験や学びをされたのか、それが現在の子どもや看護の考

え方にどのように関連しているのかということを理解し、今後の小児看護に対する示唆を

得たいと考えました。

ご多忙中の折、誠に恐縮ではございますが、本調査にご協力をお願いいたします。 なお、調査・研究にあたり、以下のように配慮し、ご協力いただいたことによるご迷惑

がかからないようにいたします。

1.お話をお伺いさせていただく時間は1時間程度とさせていただきます。ご都合のよい日

時、場所に合わせていたします。 2.お話の内容は正確に覚えていることが難しいので、録音させていただきたいと思います。 お話いただく内容は研究目的以外に使用することは一切ありません。

調査結果は広島大学大学院の修士論文として提出する予定です。また、関連の学術学会

誌等に発表させていただくことがありますが、お話いただいた内容は匿名とし、お名前

やプライバシーに関することが外部にもれることはありません。

3.研究へのご協力はご自身の自由な意思によるものです。

4.研究への協力を拒否したために何らかの不利益が生じることはありません。

5.理由の如何にかかわらず、調査への協力を取りやめたくなった場合には、いつでもやめ

ることができます。その際、データは破棄させていただきます。

どうぞ研究の主旨をご理解いただき、ご協力いただきますようよろしくお願いいたします。

この研究について何かご質問、ご意見等ございましたら、いつでもご遠慮なく下記の連絡

先までお尋ねください。

【調査についてのお問い合わせ先】 〒734-8551 広島県広島市南区霞1-2-3

広島大学大学院保健学研究科2年 別所史子

指導教官 田中義人

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同 意 書 資料 3

殿

私は、「小児慢性疾患で入院する学童期の子どもと看護師とのかかわりに関する

研究」に関する研究について説明を受け、理解し納得しましたので、研究に協力す

ること(インタビューを行い、その内容を研究データとして使用すること)に同意

します。 なお、これらの同意はいつでも撤回できることも承知しており、そのような場合

が生じたときには意思表示いたします。 平成 16年 月 日 氏名 印(自署)

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同意取消書 資料 4

殿

私は、「小児慢性疾患で入院する学童期の子どもと看護師とのかかわりに関する

研究」に関する研究について説明を受け、理解し納得しましたので、研究に協力す

ること(インタビューを行い、その内容を研究データとして使用すること)に同意

しましたが、自らの意思表示により同意を取り消します。 平成 16年 月 日 氏名 印(自署)