資料 家畜衛生研修会(病性鑑定病理部門,2017)...

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39 日獣会誌 72 39~42(2019) 29 牛の乳腺の前駆 T リンパ芽球性リンパ腫 〔北島絵理子(埼玉県) ホルスタイン種,雌,33 カ月齢,鑑定殺例.2015 年 10 月末,乳房にしこりが確認され,11 月 8 日から食欲 低下し,13 日には起立不能となったため,病性鑑定を 実施した. 剖検では,右前乳房にバレーボール大,左後乳房に大 人拳大腫瘤がみられ,その割面は,髄様を呈する多数の 結節で構成されていた.同様の腫瘤は骨盤腔や胸腔にも 認められた.心臓,第三,四胃,十二指腸~回腸,腸間 膜及び子宮にはうずら卵~小豆大の白色腫瘤が認められ た.肺門,腋窩及び乳房上リンパ節は腫大していた. 組織学的に,乳腺腫瘤ではリンパ球様腫瘍細胞がシー ト状に増殖していた.腫瘍細胞の多くは大型で比較的均 一な形態を示し,円形~類円形の核を持ち,核小体は目 立たず,細胞質は乏しく,核分裂像は多かった(図 29).その他の腫瘤あるいは浸潤腫瘍細胞においても同 様の形態的特徴が認められた.腫瘍細胞の免疫染色で は,家兎抗 CD3 抗体(Dako, Denmark)陽性,家兎抗 Terminal deoxynucleotidyl transferase 抗 体(DakoDenmark)少数陽性,家兎抗 CD5 抗体(Thermo Sci- entific, U.S.A.),家兎抗 CD20(Spring Bioscience, U.S.A.)及びマウス抗 WC1 抗体(AbD Serotec, U.K.陰性であった. 血液検査では,WBC:9, 900 個 /µlWBC 百分比: Ly72%(異型 2. 5%),LDH:>2, 000IU/l であった. 組織診断名を前駆 T リンパ芽球性リンパ腫としたが, WHO 分類では,前駆 T リンパ芽球性白血病/リンパ腫 に分類されると考えられた. 30 牛の脾臓にみられた組織球性肉腫 〔岡部知恵(富山県) 黒毛和種,雌,12 歳齢,斃死例.繁殖用として飼育後, 2016 年 9 月下旬から肥育していた牛が 10 月 21 日朝, 突然斃死したため,病性鑑定を実施した. 剖検では,血餅を含む 10l 以上の血様腹水がみられた. 横隔膜の腹膜下に,広範な出血斑がみられた.脾臓は高 度に腫大し,重量は 22. 5kg であり,脾体部に約 10cm の亀裂部が確認された.割面は暗赤色髄様で膨隆し,脾 材と濾胞が不明瞭であった.心臓はやや褪色し,左心室 心内膜下に広範な出血巣が認められた.肝臓は横隔膜と 数カ所で線維性に癒着していた. 組織学的に,脾臓の実質は腫瘍細胞と赤血球に置換さ 家 畜 衛 生 研 修 会 (病 性 鑑 定 病 理 部 門, 2017) に お け る 事 例 記 録(Ⅴ) Proceedings of the Pathology Slide Seminar in the Animal Hygiene Workshop 2017 Part 5 (2018 年 1 月 17 日受付・2018 年 4 月 4 日受理) 図 29 牛の乳腺の前駆 T リンパ芽球性リンパ腫 腫瘍細胞は大型で,円形~類円形の核をもち,細胞 質は乏しく,多くの核分裂像が認められる(HE 染色  Bar=10µm). † 連絡責任者:木村久美子( 国研 農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門 病態研究領域) 〒 305-0856 つくば市観音台 3-1-5  ☎ 029-838-7713 FAX 029-838-7880 E-mail : [email protected] Correspondence to : Kumiko KIMURA (National Institute of Animal Health, National Agriculture and Food Research Organization) 3-1-5 Kannondai, Tsukuba, 305-0856, Japan TEL 029-838-7713 FAX 029-838-7880 E-mail : [email protected]

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39 日獣会誌 72 39~42(2019)

29 牛の乳腺の前駆 Tリンパ芽球性リンパ腫〔北島絵理子(埼玉県)〕

ホルスタイン種,雌,33 カ月齢,鑑定殺例.2015 年10 月末,乳房にしこりが確認され,11 月 8 日から食欲低下し,13 日には起立不能となったため,病性鑑定を実施した.剖検では,右前乳房にバレーボール大,左後乳房に大人拳大腫瘤がみられ,その割面は,髄様を呈する多数の結節で構成されていた.同様の腫瘤は骨盤腔や胸腔にも認められた.心臓,第三,四胃,十二指腸~回腸,腸間膜及び子宮にはうずら卵~小豆大の白色腫瘤が認められた.肺門,腋窩及び乳房上リンパ節は腫大していた.組織学的に,乳腺腫瘤ではリンパ球様腫瘍細胞がシート状に増殖していた.腫瘍細胞の多くは大型で比較的均一な形態を示し,円形~類円形の核を持ち,核小体は目立たず,細胞質は乏しく,核分裂像は多かった(図29).その他の腫瘤あるいは浸潤腫瘍細胞においても同様の形態的特徴が認められた.腫瘍細胞の免疫染色では,家兎抗 CD3 抗体(Dako, Denmark)陽性,家兎抗Terminal deoxynucleotidyl transferase 抗体(Dako,Denmark)少数陽性,家兎抗 CD5 抗体(Thermo Sci-

entific, U.S.A.), 家 兎 抗 CD20(Spring Bioscience,

U.S.A.)及びマウス抗WC1 抗体(AbD Serotec, U.K.)陰性であった.血液検査では,WBC:9,900 個 /µl,WBC百分比:

L y72%(異型 2.5%),LDH:>2,000IU/lであった.組織診断名を前駆 Tリンパ芽球性リンパ腫としたが,

WHO分類では,前駆 Tリンパ芽球性白血病/リンパ腫に分類されると考えられた.

30 牛の脾臓にみられた組織球性肉腫〔岡部知恵(富山県)〕

黒毛和種,雌,12歳齢,斃死例.繁殖用として飼育後,2016 年 9 月下旬から肥育していた牛が 10 月 21 日朝,突然斃死したため,病性鑑定を実施した.剖検では,血餅を含む10l以上の血様腹水がみられた.横隔膜の腹膜下に,広範な出血斑がみられた.脾臓は高度に腫大し,重量は 22.5kgであり,脾体部に約 10cm

の亀裂部が確認された.割面は暗赤色髄様で膨隆し,脾材と濾胞が不明瞭であった.心臓はやや褪色し,左心室心内膜下に広範な出血巣が認められた.肝臓は横隔膜と数カ所で線維性に癒着していた.組織学的に,脾臓の実質は腫瘍細胞と赤血球に置換さ

資 料

家 畜 衛 生 研 修 会 (病 性 鑑 定 病 理 部 門, 2017)†

に お け る 事 例 記 録(Ⅴ)

Proceedings of the Pathology Slide Seminar in the Animal Hygiene Workshop 2017†

Par t 5

(2018 年 1 月 17 日受付・2018 年 4 月 4 日受理)

図 29 牛の乳腺の前駆 Tリンパ芽球性リンパ腫腫瘍細胞は大型で,円形~類円形の核をもち,細胞質は乏しく,多くの核分裂像が認められる(HE染色 Bar=10µm).

† 連絡責任者:木村久美子(国研農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門 病態研究領域)〒 305-0856 つくば市観音台 3-1-5  ☎ 029-838-7713 FAX 029-838-7880 E-mail : kumita@af frc.go.jp

† Correspondence to : Kumiko KIMURA (National Institute of Animal Health, National Agriculture and Food Research Organization)3-1-5 Kannondai, Tsukuba, 305-0856, JapanTEL 029-838-7713 FAX 029-838-7880 E-mail : kumita@af frc.go.jp

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家畜衛生研修会(病性鑑定病理部門,2017)における事例記録(Ⅴ)

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された(図 31).ロゼット形成細胞の内側には微絨毛が認められ,細胞質には PTAH染色陽性の基底小体が観察された.鍍銀染色でロゼットに基底膜は確認されなかった.マウス抗サイトケラチン AE1+AE3 抗体(Dako, Denmark),マウス抗ビメンチン抗体(Progen,Germany),家兎抗 GFAP抗体(BTI, U.S.A.),マウス抗シナプトフィジン抗体(Dako, Denmark),家兎抗 S-100 抗 体(Dako, Denmark), マ ウ ス 抗 EMA 抗 体(Dako, Denmark)及びマウス抗ニューロフィラメント抗体(Dako, Denmark)を用いた免疫染色により,腫瘍細胞は抗ビメンチン抗体にのみ明らかな陽性反応が認められた.その他の臓器では化膿性気管支肺炎及び胸腺皮質のリンパ球の減少が観察された.ウイルス学的検査及び細菌学的検査で病原微生物は検出されなかった.以上のことから,本症例は子牛の上衣芽腫と診断された.

32 豚の眼球におけるブドウ膜悪性黒色腫(メラノーマ)

〔藤木省志(岐阜県)〕デュロック種,雄,96 日齢,鑑定殺例.2017 年 1 月初旬より左眼の異常(黒目がち)が認められ,経過観察していたが,増体が悪く,2017 年 3 月 9 日に自主淘汰された.管理獣医師が両眼球を摘出し,病性鑑定に供した.同腹子に異常は認められなかった.肉眼的に,左眼球は不整球形で,割面は眼球内部構造が消失し,黒褐色充実性組織で置換されていた.組織学的に,左眼球は少量の黒褐色顆粒を含む紡錘形から円形の小型腫瘍細胞が敷石状に増殖して内部を占拠し,黒褐色顆粒を豊富に含む大型マクロファージの浸潤も認められた.腫瘍細胞は大小不同で,細胞質は淡明で

れ,リンパ球及び細網組織も確認されなかった.腫瘍細胞は中型~大型で豊富な細胞質を有していた.核は円形~類円形でしばしば輪郭が不規則で,核小体は目立たず,クロマチンの凝集は軽度,核分裂像は少数認められた.腫瘍細胞による赤血球貪食像が多数認められ,複数の赤血球を貪食していた(図 30).また,多核の腫瘍細胞も散見された.ギムザ染色にて細胞内顆粒は認められなかった.マウス抗マクロファージ抗体(clone :

HAM56, Dako, Denmark), マ ウ ス 抗 CD68 抗 体(Dako, Denmark), 家 兎 抗 CD3 抗 体(Dako, Den-

mark) 及 び 家 兎 抗 CD20 抗 体(Thermo Fisher,

U.S.A.)を用いた免疫染色で,HAM56 陽性,CD68 検出不可,CD20 及び CD3 陰性であった.病原検査では,牛白血病ウイルス特異遺伝子は検出されなかった.以上のことから,本症例は組織球性肉腫と診断された.

31 子牛の小脳における上衣芽腫〔小松徹也(愛知県)〕

ホルスタイン種,雄,2 カ月齢,鑑定殺例.2016 年10 月,起立不能となった子牛が翌日強直性痙攣を示した.加療するも症状が改善しないため,病性鑑定を実施した.剖検では,脳脊髄液が赤色調を呈して混濁していた.また,中脳水道から小脳髄膜上部にかけて腫瘤が認められた.左肺前葉前部及び後部に,暗赤色充実性の病変が認められた.組織学的に,楕円形~紡錘形でクロマチン含有量が高く,1~2 個の明瞭な核仁を有する核を持った腫瘍細胞がシート状に増殖していた.腫瘍細胞が管腔を形成した多層性の上衣ロゼット及び血管周囲性偽ロゼットが観察

図 31 子牛の小脳における上衣芽腫腫瘍細胞による多層性の上衣ロゼット及び血管周囲性偽ロゼットが認められる(HE染色 Bar=25µm).

図 30 牛の脾臓にみられた組織球性肉腫腫瘍細胞は中型~大型で豊富な細胞質を有し,複数の赤血球を貪食している(HE染色 Bar=10µm).

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資     料

日獣会誌 72 39~42(2019)

筋線維間の結合組織の増生もみられた.肺では出血と凝固壊死が観察された.腎臓ではボーマン囊腔内及び尿細管腔内に好酸性物質が散見され,間質にはリンパ球及びマクロファージの軽度の浸潤がみられた.肝リンパ節及び内腸骨リンパ節ではリンパ球の減少がみられた.主要臓器と心臓の大動脈弁に形成された疣贅の細菌学的検査を実施した結果,疣贅から Erysipelothrix rhusiopath-

iaeが分離された.以上のことから,本症例は豚丹毒(心内膜炎型)と診断された.

34 豚の Streptococcus agalactiae,S. suis血清型2 及び Trueperella pyogenesによる疣贅性心内膜炎及び化膿性心筋炎

〔関口美香(大阪府)〕交雑種,雌,約 110 日齢,斃死例.飼養頭数 3,000 頭の肥育農家で,2016 年 12 月中旬から起立不能及び関節腫脹を呈する豚が散見され,翌 1月中旬までに 9頭斃死した.剖検では,脾及び腎に不整形白斑が散在性に認められた.両足股関節及び左肩部皮下にチーズ様物が貯留していた.三尖弁及び肺動脈に結節形成がみられた.組織学的に,多数の菌塊や好中球等を含んだ線維素塊が三尖弁に付着して認められた(図 34).この腫瘤の付着部から心筋にかけて線維芽細胞や血管の増生等が認められ,肉芽組織を形成していた.心筋細胞の空胞化が散見され,心筋間に好中球等の炎症細胞浸潤や微小膿瘍が散見された.菌栓子や血栓周囲に好中球等の炎症細胞浸潤が認められた.左心では石灰沈着や結合組織の増生を伴った広範な壊死が認められた.肺,脾,腎及び股関節等では,壊死や化膿性炎が認められた.

弱好酸性,核は明るく類円形で明瞭な核小体を有し,有糸分裂像は高倍率 10 視野あたり 3 個確認された(図32).腫瘍細胞は強膜へ浸潤し,角膜はひ薄化していた.黒褐色顆粒はフォンタナ・マッソン染色で黒色を呈し,漂白法で消失したためメラニン色素と判断された.また,マウス抗 S-100 抗体(Dako, Denmark)及びマウス抗ビメンチン抗体(Dako, Denmark)を用いた免疫染色に,ともに陽性を呈した.以上のことから,本症例は豚の眼球ブドウ膜における悪性黒色腫(メラノーマ)と診断された.転移の有無を含めた他臓器の評価はできなかったが,豚の眼球における本腫瘍の発生はまれである.なお,本症例では患側眼球が正常側より小さく,水晶体もみられなかったことから,小眼球症も併発していたと考えられた.

33 豚の Erysipelothrix rhusiopathiaeによる疣贅性心内膜炎

〔川島大樹(長野県)〕ミニブタ,雌,3歳齢,斃死例.2017 年 2 月 20 日に鼻出血が認められたため加療し,抗生剤を投与したところ出血は止まったが,翌 21 日朝 8 時頃斃死を確認し,同日病性鑑定を実施した.剖検では,心臓の左心室が肥大し,心囊水の貯留と僧房弁及び大動脈弁に疣贅病巣が認められた.腎臓は褪色し,表面に白色斑が散見され皮質に楔型の梗塞巣が認められた.肺には小豆大の赤色斑が散見され,膀胱内には混濁した尿が少量貯留していた.組織学的に,心臓の疣贅性病巣は線維素,線維芽細胞,好中球を主とする炎症性細胞及び細胞退廃物により構成されており,内部にはグラム陽性桿菌塊が多数みられた(図 33).また,心筋層に好中球の浸潤が散見され,心

図 32 豚の眼球におけるブドウ膜悪性黒色腫(メラノーマ)黒褐色顆粒を含む紡錘形から円形の小型腫瘍細胞が敷石状に増殖している(HE染色 Bar=20µm).

図 33 豚の Erysipelothrix rhusiopathiaeによる疣贅性心内膜炎疣贅病巣に多数の桿菌塊が認められる(HE染色 

Bar=25µm).

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家畜衛生研修会(病性鑑定病理部門,2017)における事例記録(Ⅴ)

日獣会誌 72 39~42(2019)

剖検では,右肺前葉,中葉及び左肺後葉で赤色の限局性病変が散見された.組織学的に,肺では全葉性に好酸性及び弱好塩基性核内封入体を伴う巣状壊死が多発性に認められた(図35).肉眼で赤色を呈した左後葉の病変は肺小葉単位であり,細気管支上皮細胞や肺胞上皮細胞に弱好塩基性核内封入体を伴う壊死性気管支肺炎が認められ,肺胞内には退廃物,漿液及び線維素が充満していた.大脳,脳幹部及び小脳では,軽度の囲管性細胞浸潤並びに変性した神経細胞が散見され,まれに好酸性核内封入体が認められた.臓器付属リンパ節では好酸性及び弱好塩基性核内封入体を伴う巣状壊死が散見された.家兎抗 ADV抗体(動衛研,茨城)を用いた免疫染色

では,大脳,脳幹部,小脳,脊髄,肺,脾臓及びリンパ節において,陽性反応が認められた.ウイルス学的検査では,脳,扁桃,腎臓,脾臓及び副腎から ADVを分離した.以上のことから,本症例はオーエスキー病と診断された.

(次号へつづく)

細菌学的検査で主要臓器等からStreptococcus agalac-

tiae,S. suis血清型 2 または Trueperella pyogenesが分離された.心臓からは 3菌すべてが分離された.B型溶血レンサ球菌型別用免疫血清(デンカ生研,東京),家兎抗 S. suis血清型 2抗体(動衛研,茨城)及び家兎抗 T. pyogenes抗体(動衛研,茨城)を用いた免疫染色で病変部に陽性反応が確認された.以上のことから,本症例は豚レンサ球菌症及び豚トゥルエペレラ(アルカノバクテリウム)・ピオゲネス感染症と診断された.

35 哺乳豚のオーエスキー病ウイルスによる好酸性及び弱好塩基性核内封入体を伴う壊死性気管支肺炎

〔矢口裕司(茨城県)〕LWD種,雌,5日齢,鑑定殺例.母豚約 115 頭飼養

する一貫経営農場で,母豚 8頭に食欲不振及び泌乳停止がみられ,その哺乳豚の半数以上が斃死したため病性鑑定を実施した.なお,当該農場はオーエスキー病(AD)清浄農場であったため,ADワクチンは接種していなかった.

図 35 哺乳豚のオーエスキー病ウイルスによる好酸性及び弱好塩基性核内封入体を伴う多発性巣状壊死及び壊死性気管支肺炎多数の核内封入体を伴う巣状壊死が認められる

(HE染色 Bar=20µm).

図 34 豚の Streptococcus agalactiae,S. suis 血清型 2及び Trueperella pyogenesによる疣贅性心内膜炎及び化膿性心筋炎細菌塊の周囲に好中球が認められる(HE染色 

Bar=25µm).