結核病(tuberculosis 人獣共通 - vet.kagoshima-u.ac.jp · pdf file2015/11/18 2...
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2015/11/18
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結核病(tuberculosis) 人獣共通
対象家畜: 牛、水牛、しか、山羊
原因: ウシ型結核菌(Mycobacterium bovis)またはヒト型結核菌
(M. tuberculosis)。1882年、細菌学者ロベルト・コッホが発見。
細胞壁にミコール酸と呼ばれる脂
質を多量に含有し、通常のグラム染
色では染まりにくく、発育が遅いことと
相まって、発見が遅れた。また、酸、
アルカリ、熱(80℃、5分)、消毒薬、
治療薬に抵抗性が強い。
病状: 肺結核の
外に、結核性髄
膜炎、腸結核、
皮膚結核など
がある
結核死亡率(人口10万人当り)
100 80
600
400
300
10
200
8
6
日本における結核流行の推移
60
40
30
20
抗結核剤の開発
ツベツクリンとBCG
BCGは牛型結
核菌を13年間、
230代経代する
ことで弱毒化した
(1921年)
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家畜伝性病予防法 昭和26年施行
牛結核病制御の経過
0
5
10
15
20
25
発生率
(牛飼養100 万頭対)
0
1
2
3
4
5
発生率(%)
2010 大阪 1件8頭
2009 千葉 2件2頭
2006 愛媛 1件1頭
2005 青森 1件1頭
畜牛結核予防法 明治34年公布
肺の粟粒性病変
腸管の結核性潰瘍と
腸間膜リンパ節乾酪変
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牛乳の加熱殺菌法は、L.
Pasteurによって開発され、結
核菌を殺し、クリームラインを損
なわない条件を求める。「乳お
よび乳製品の成分規格に関す
る省令」で、「62~65℃、30分、
またはそれと同等以上」と定め
られている。
乳脂肪球を超音波で破砕し、
高温の金属プレート内を通過さ
せ時間調整する技術が確立し、
高温短時間殺菌(HIST;72℃。
16秒)、超高温瞬間殺菌
(UHT;120℃、2秒)が主流
となっている。
結核菌を殺す条件で大腸菌
やブドウ球菌などの病原菌は
死滅するが、芽胞を持つ菌は
生残する。
乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令) (一)乳等一般の成分規格及び製造の方法の基準
(1) 乳等は、抗生物質、化学的合成品たる抗菌性物質及び厚生労働大臣が定め
る放射性物質を含有してはならない。
(2) 次の各号のいずれかに該当する牛、山羊又はめん羊から乳を搾取してはな
らない。
1 分娩後5日以内のもの ⇒ 移行抗体;仔牛に必要、乳児に有害
2 乳に影響ある薬剤を服用させ、又は注射した後、その薬剤が乳に残留している
期間内のもの ⇒ 乳房炎治療の注入剤をメチレンブルーで着色
3 生物学的製剤を注射し著しく反応を呈しているもの
(3) 牛乳、加工乳及び乳製品等を製造する場合の生乳の要件。
a 生乳: 酸度(乳酸として): 0.18%以下
細菌数(直接個体鏡検法で1ml当たり) 400万以下
(二)牛乳、加工乳の成分規格並びに製造及び保存の方法の基準
1 成分規格: 細菌数(標準平板培養法で1ml当たり) 50,000以下、
大腸菌群 陰性 ⇒ 糞便等による汚染の指標細菌
2 製造の方法の基準: 保持式により63℃で30分間加熱殺菌するか、又はこれ
と同等以上の殺菌効果を有する方法で加熱殺菌すること。 ⇒低温殺菌、高温殺
菌(HTSY法、75℃で15秒) 、 超高温瞬間殺菌(UHT法、120~130℃で2~3秒)
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:情報なし :これまで報告なし :この期間に報告なし :疑い :感染を確認 :臨床例あり :複数個所で発生 牛結核のOIEへの通知(2010年1~6月)
2010年には70ヶ国、2011年には49ヶ国が牛集団における牛結核を
報告した。発展途上国だけでなく、欧米でも発生が報告されている。
ウシ型結核菌はヒトの全結核症例における割合は、英国では1.5%
以下、オランダでは約1.4%、米国では2%以下とされている。乳の殺
菌が行われていない国では、10~15%に達するとの報告もある。
牛結核のOIEへの通知(2005年~2014年)
北欧3国、デンマークなどを除いて、牛結核の発生は続いている
英国では生乳が市販されており、ヒト感染が発生しているが・・・
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米国における農場の結核清浄認定の仕組みと現状
区分
清浄化認定
改良修正認定
修正認定
認定準備
未認定
結核の流行状態
牛とバイソンでの 発生なし
直近2年間における
牛とバイソンの総数の0.01%未満
牛とバイソンの総数の 0.1%未満
牛とバイソンの総数の 0.5%未満
牛とバイソンの総数の 0.5%以上または不明
該当地域
米国の46州、プエルトルコ、バージン諸島
テキサス、カリフォルニア、ニューメキシコ、およびミシガン州の大半の地域
南部ミシガン州の北側11地
域およびその他の2地域
該当なし
該当なし
英国における2003年と2004年の結核患者数
M. Bovis(ウシ型)
M. Tuberculosis(ヒト型)
M. africanum
2003
13
6518
0
2004
15
4885
8
2003
1
291
0
2004
2
307
0
2003
2
38
0
2004
3
62
0
イングランドと
ウェールズ スコットランド 北アイルランド 菌種
牛結核:地域別牛群統計 (2005年1月1日―12月31日)
イングランド ウェールズ スコットランド
13.9
9.1
13.7
8.5
2.3
1.2
移動制限群の割合
新規発生群の割合
「自然界の病原巣=アナグマ」が問題だが、自然保護活動の反対で対策がない
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スコットランドにおける生乳と関係した食中毒の発生状況
1980
1981
1982
1983
1084
1985
1986
3
8
14
7
5
8
2
98(4)
782(3)
539(1)
29
27
74
10
患者数
(死亡数) 事故
件数 年
5
1
0
2
4
2
0
30
4
0
6
17
6
0
0
報告なし
0
0
0
1
1
0
0
0
0
3
2
1987
1988
1989
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
件数
患者数 年
件数
患者数 年
スコットランドにおいては、飲用の生乳と生クリームは、1983年以降、加熱殺菌が必須要件となった。しかし、それ以外では「ナチュラル」志向が強く、議員が動けない。
生態系の動物とヒトの接点における牛結核(FAO, 2012) バイソンと水牛を含むウシ科は感受性がとくに高いが、ほぼ全ての温血動物が
感染し得る。英国および米国などの国々では、野生動物におけるウシ型結核菌感
染の存続が撲滅活動を複雑化している。
保有動物(reservoir): 病原体の自然界における本来の棲家
維持宿主(maintenance host): その動物種内で病原体を持続的に維持:
アナグマ、アメリカバイソン、アカシカ、アフリカスイギュウ
播種宿主(spill-over host): 維持宿主から感染した後に様々な動物種に
感染を広げる役割: イノシシ、シカ
と畜場における発生動向調査⇒群れまでの効果的な遡及調査
と畜場の検査における高度な食肉検査基準
動物衛生情報システム:疫学調査、データ解析、関連情報の記録
強制的制御措置:ツベルクリン陽性個体の殺処分、農家補償の法的枠組み
国境を越えた移牧を含め、牛の移動の全面的管理
牛結核の制御と撲滅の計画の成功:、利害関係者グループの協力と国民の政治的支持
牛結核のリスクと衛生活動に関するコミュニケーション
病気のない群れに対する保証牛乳価格と有利な補助などの農家の動機付け
農家補償のための適切かつ迅速な財源
検査室診断能力:病変臓器からの菌分離および種の同定に基づく診断
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ヨーネ病(Johne's disease-paratuberculosis)
対象家畜: 牛、水牛、しか、めん羊、山羊
原因: ヨ-ネ菌(Mycobacterium avium subsp. paratuberculosis) は抗
酸の仲間であり、発育にはマイコバクチンと呼ばれる特別な成分を
必要とし、コロニー形成には2ヵ月以上を要する遅発育菌である。
臨床: 発症牛の糞便中に、発病数ヵ月前から多量に排泄され、糞便
またはこれに汚染された乳汁や飲料水によって経口感染する。慢
性の頑固な間欠性の下痢、乳量の低下、削痩等を引き起こす。妊
娠や分娩などのストレスが発病の誘因とされている。
予防・治療: 現在、実用的なワクチンはなく、化学療法も困難である。
本病の防疫対策には、患畜及び保菌牛の摘発・殺処分及び汚染
物の徹底した消毒が有効である。
検査: 血清学的検査としてELISA法、補体結合反応。感染牛の細
胞性免疫を指標とする検査として、ツベルクリン検査と同様な遅延
型過敏反応を検出するヨーニン皮内反応が行われる。
右下: 羊の腸:粘膜表面が粗く、肉芽腫で敷石状
間歇性の難治性泥状・水様性の下痢、急激な削痩、泌乳停止が認められ、栄養状態は悪化する。重症例では下顎の浮腫が認められることもある。
下: 牛の腸粘膜 (肥厚してワラジ状)
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8
平均: 386
平均: 737
牛のヨーネ病の発生状況 牛結核が激
減した中で、
同じく抗酸菌
でありながら
ワクチンがな
いため清浄化
が遅れている。
1件当たり2頭
と発症例は少
ないものの不
顕性感染が
広がっている。
農水省は「牛のヨーネ病防疫対策要領」を定め、適切な飼養衛生管
理、牛の移動の際の証明書、発生確認時の防疫措置、まん延防止
対策、自主とう汰の推進が行われてきた。
2012/1-6
2011/7-12
全世界で発生
している。米国
では乳量低下
だけで年間15
億ドル損失して
いる。
オーストラリア
から日本への
輸入牛が平成
19年11件、20
年6件ヨーネ病
で差し止めに
なっている。
:情報なし :これまで報告なし :この期間に報告なし :疑い :感染を確認 :臨床例あり :複数個所で発生
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抗酸菌(ミコバクテリウム)の主な仲間達
結核菌群
非定型抗酸菌
人型結核菌(M. tuberculosis)
M. avium-intracellulare complex (患者の83%)
M. scroforecium
M. marinum
牛型結核菌(M. bovis)
1950年頃までは、日本における死因の第1位を占めていた。ツベツクリンとBCG、および化学療法剤の普及により激減したが、近年、増加傾向にある。
BCGは牛型結核菌を230代経代することで弱毒化した。
かつてはトリ型結核菌と称していたものを含み、結核菌に効く薬にも抵抗性であり、ヒトの感染治療に困難を伴う。
上記の菌種より感受性であるが、結核よりも治りにくい。
:魚類に多い菌種であり、漁業関係者が罹る。
(感染力は低いが治療が困難であり、健康弱者は要注意)
非結核性抗酸菌症 伝染病ではない
M. kansasii (患者の8%)
上記の菌種より感受性であるが、結核よりも治りにくい。
かつて「非定型抗酸菌症」と呼ばれていた。人から人には感染せず、結核の様に急速に悪化することも稀である。土や水などの自然環境に広く存在している。
肺に認められた白色結節
肝臓に認められた白色結節
腸管膜リンパ節の乾酪結節
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本病の発生率は全国平均で0.5%前後であるが、汚染の進んだ豚群での感染率は60〜80%にも達することもまれではない。感染豚は病気の症状を示さないので、食肉処理場での内臓検査で摘発される。肥育出荷齢時の感染豚の腸間膜リンパ節には黄色の粟粒大から小豆大の結核性病変ができるので容易に見分けがつく。
リンパ節に病巣ができても豚の増体率や繁殖成績には殆ど影響を受けない。豚への感染は経口的におこる。最も危険な感染源は感染した母豚である。感染母豚は分娩前後の2〜3週間に集中して、扁桃で一時的に増殖を再開した菌を唾液や糞便中に大量に排泄する。糞便に汚染した母豚の乳房をなめたり、汚染オガクズを摂食することにより感染菌は口腔、扁桃、腸管などの粘膜表面から侵入する。そのため哺乳を受けている子豚の大部分は感染することになる。
オガクズ堆積養豚場(糞便処理が不要だという理由で普及した)での発生が多く、飼養形態としては好ましくない。オガクズの原木となる輸入針葉樹材が汚染されていることもあり、事前検査が望ましい。
糞便の混じったオガクズ床敷中で旺盛な増殖を示すので、こまめに交換するようにする。また、野菜畑への汚染厩肥の還元は避ける。
平成18 年度のデータでは、10 月で60%であった発生率が、複数臓器で乾
酪壊死が認められた11 月以降80%に増加していた。
豚の抗酸菌症は全部廃棄処分となる。豚や環境に分布する抗酸菌が患者に感染したという証拠はないが、ほぼ同様な遺伝子学的特徴を有している。