今さら聞けない!? - iges公益財団法人地球環境戦略機関...

公益財団法人地球環境戦略機関自然資源・生態系サービス領域適応タスク

今さら聞けない!?~気候変動~

仲田宗行公財地球環境戦略研究機関 (IGES)自然資源・生態系サービス領域適応タスク研究員

IGES | http://www.iges.or.jp 2017年1月28日湘南国際村アカデミア

Role of business for enabling sustainable lifestyles

今さら聞けない!? ~気候変動~目次

1. ＩＧＥＳとは

2. 気候変動ウソ？ホント？まだ分からないこと

2-1. 気候変動の現状

2-2. 温暖化の原因

2-3. 将来の気候と影響

3. 気候変動に対する取り組み

2



今さら聞けない!? ~気候変動~

１．ＩＧＥＳとは

3




• アジア太平洋地域では、経済発展に伴い人口増加や都市化が進み、地球温暖化、資源の枯渇、生物種の絶滅などの環境問題や貧困問題が深刻化。IGESでは、各国の政府・研究機関・企業・NGO・国際機関・市民の皆さんと協力しながら、これ

らの問題の解決方法を研究し、環境を守りながら人々が豊かに暮らせる持続可能な社会を目指している。

• 1998年3月日本政府のイニシアチブと神奈川県の支援により、神奈川県葉山町に設立

• 2012年4月公益財団法人化

• 職員数 190名（うち外国籍55名）

（2016年3月現在）

公益財団法人地球環境戦略研究機関（Institute for Global Environmental Strategies :IGES）

4

IGES 葉山本部



今さら聞けない!? ~気候変動~IGES研究エリア：研究構成について

第6期統合的戦略研究計画（2013年4月~2016年6月）における研究構成

5




２．気候変動ウソ？ホント？まだ分からないこと

2-1. 気候変動の現状

6




• 世界平均した気温データは1880～2012年の間で0.85（0.65～1.06）℃の上昇を示している。• 過去30年の各10年間の世界平均気温は、1850年以降のどの10年間よりも高温である。

10年平均

年平均

1850年以降のどの10年平均よりも暑い

年

2-1. 気候変動の現状～世界の平均気温～

7

1880年～2012年の間に

0.85℃上昇

図. 観測による全球表面温度時系列

出典：IPCC WG1 AR5 SPM Fig SPM.1 （気象庁訳）

（℃）

1961

-199

0年比

偏差

1961

-199

0年比偏差




8

2016年はこれまでの観測史上、地球の平均気温が最も高かった！

2-1. 気候変動の現状～世界の平均気温～

出典：NASAウェブサイト：https://www.nasa.gov/sites/default/files/thumbnails/image/2016gistempupdateblack.gif




(a) 北半球の春季の積雪面積が減少

(b) 北極の夏季海氷面積が減少

9

2-1. 気候変動の現状～その他の観測事実～

過去20 年にわたり、グリーンランド及び南極

の氷床の質量は減少しており、氷河はほぼ世界中で縮小し続けている。


北極域の海氷及び北半球の春季の積雪面積は減少し続けている。




10

(d) 世界の平均海面が上昇

(c) 海洋上層部に蓄積される熱量の増加

2-1. 気候変動の現状～その他の観測事実～

19cm


1901 年から2010 年の期間に、世界平均海面水位は0.19 [0.17～0.21] m 上昇。

19 世紀半ば以降の海面水位の上昇率は、過去2 千年間の平均的な上昇率より大きかった。

海洋に蓄積される熱量は増加している。




11

2-1. 気候変動の現状～海生動植物群の分布域の変化（観測）～

ほぼ全種で、より冷たい海域への移動が観測されている。全分類種では、10年当たり20km以上移動している。

出典：IPCC WGII AR5 SPM Figure SPM.2（環境省暫定訳）

海水温が上昇していることを意味する。

1900-2010年の観測に基づく海生動植物群の分布域の平均移動速度（km/10年）

より冷たい海域




12

2-1. 気候変動の現状～食糧生産の変化（観測）～

地域的にみると、特に温帯域で生産性が減少している。


観測された気候変動が温帯及び熱帯地域における主要４農作物の収量に及ぼしたと推定される影響（1960～2013年）

広範囲にわたる地域や作物を

カバーしている研究に基づくと、作物の収量に対する気候変動の負の影響の方が、正の影響よりもより一般的にみられる。

作物種別にみると、小麦、トウモロコシの減少が大きい。米については、影響が比較的少ない。




2-1. 気候変動の現状～日本の気温変化（観測）～

出典：気象庁HP

13

年による変動は大きいものの、長期的に上昇傾向

（100年あたり1.19℃）。

特に、1990年以降で高温となる年が多い




出典：気候変動監視レポート2015

増加傾向

2-1. 気候変動の現状～日本の猛暑日・熱帯夜（観測）～

最高気温が35℃（猛暑日）及び最低気温が25℃以上（熱帯夜）の日数は明らかに増加

傾向にある。

14

最高気温35℃、最低気温25℃以上の日の年間日数の経年変化

・棒グラフは年々の値・直線は期間にわたる変化傾向・折れ線は5年移動平均




15

出典：気候変動監視レポート2015

増加傾向

アメダスで観測された1時間降水量50mm及び80mm以上の「短時間強雨」は、増加傾向が現れている。

アメダス地点で1時間降水量が50mm, 80mm以上となった年間の回数

・棒グラフは年々の値・直線は期間にわたる変化傾向・折れ線は5年移動平均

2-1. 気候変動の現状～日本の降水（観測）～

ちなみに50mm以上の雨を天気予報では？

「滝のように降る」と表現＝傘は役に立たなくなる




北海道

88.0%

+0.9%

東北

76.1%

-14.1%

関東

75.0%

-14.9%

北陸

43.0%

-40.1%

東海

25.2%

-32.5%近畿

35.6%

-32.4%

中国・四国

36.1%

-18.5%

沖縄

44.0%

+23.8%

九州

35.2%

+0.1%

全国

62.0%

-17.6%

• 水稲は収量が増加する一方で、品質低下の影響も大きい。

2-1. 気候変動の現状～農業（観測）～

2010年産水稲の作況、品質の状況出典：渡邉朋也，2012：「農業生産への気候変動の影響はどの程度か？どう対応するか？農林水産業は気候変動にどう対応するか？」

～農林水産省委託プロジェクト研究「気候変動に対応した循環型食料生産等の確立のための技術開発」研究成果発表会～要旨集．11-16.

日本地図は県別水稲作況指数（地図内の県別の数値）、一等米比率（県別の色）。

各地域の枠内の数値は2010年の一等米比率（上段）と過去5年間平均値からの偏差（下段）

16




17

出典：気象庁HP「さくらの開花日の変化」

さくら（ソメイヨシノ）の4月1日の開花ラインの変化

桜の開花ラインが南へ移行している

ちなみに神奈川県では？

2-1. 気候変動の現状～さくらの開花時期～

桜の開花時期が50年で4日程度早まる傾向が出ている




18


2-2. 温暖化の原因



今さら聞けない!? ~気候変動~2-2. 温暖化の原因～国際的に主流な理解～

気候変動に関する政府間パネル（IPCC）：世界中の科学者が協力して、気候変動に関する報告書を作成

「1951年から2010年の世界平均地上気温の観測された上昇の半分以上は、温室効果ガス

濃度の人為的増加とその他の人為起源強制力の組合せによって引き起こされた可能性が極めて高い。温暖化に対する人為起源の寄与の最良の見積もりは、この期間において観測された温暖化と同程度である（AR5 WGI 政策決定者向けサマリー P.17 D.3 1パラ）。」

19

人為的に排出された温室効果ガス（主にCO2）以外で、現在観測されている温度上昇を

説明する原因が見つかっていない。太陽からのエネルギーの変化、自然変動だけでは、現在の気温上昇を説明できない。

要するに？




20

温室効果のメカニズム

地球の大気には二酸化炭素等の温室効果ガスとよばれる気体が含まれる。

これらの気体は赤外線を吸収し、再び放出する性質があるため、太陽からの光で暖められた地球の表面から熱放射として放出された赤外線の多くが、大気に吸収される。

2-2. 温暖化の原因～温暖化のメカニズム～

産業革命以降、人間は石油や石炭等の化石燃料を大量に燃やして使用することで、大気中への二酸化炭素等の温室効果ガスの排出を急速に増加させた。温室効果ガスが増加すると、温室効果（赤外線の吸収）がこれまでよりも強くなり、大気温度が上昇する。これを「地球温暖化」と呼んでいる。




出典：全国地球温暖化防止活動推進センターHP

【現在】

大気中の温室効果ガスが増えているので、太陽エネルギーの大気での吸収

が多い。

【約200年前】

大気中の温室効果ガスが少ないので、太陽エネルギーの大気での吸収が少ない

。

21

2-2. 温暖化の原因～地球の熱収支（イメージ）～



今さら聞けない!? ~気候変動~2-2. 温暖化の原因～よくある質問～

Q：太陽活動（例：黒点の増減）や自転軸のぶれは気温上昇に関連性はあるのか？

22

A：気温の変化に関係があります！ただ、現在の温

度上昇の全てを説明できる材料にはなっていないと考えられています。太陽の黒点は約11年周期で

変化しており、太陽から地球に届くエネルギー量が上下するので、気温の変化に影響しています。

また、以下の活動も地球の気温に影響します。・自転軸の傾きの変化（約4万１千年周期）、・自転軸の駒の様な動き（歳差：約2万6千年周期）・太陽との距離の変化（離心率：約2万1千年周期）、

世界平均気温変化への寄与の推定出典：IPCC WGI AR5 第5章 FAQ 5.1※太陽以外に火山活動や気候の内部変動の影響がある




23

A：気温上昇によって氷床

（大陸の上にある氷河）が減ると、溶けた氷が大気や海面等（水蒸気や液体として）に吸収され、一部は海面上昇に寄与します。

Q：氷河が融けて海面上昇すると言われているが、南極の氷は増えているので、海面上昇しないのではないか？

A:過去、過去20年にわたり、グリーンランド及び南極の氷床の質量は減少しており、氷河はほぼ世界中

で縮小し続けています。南極の東側では、積雪量が増えて、氷床が厚くなっていますが、西側では減っています。

出典：図, IPCC AR5 WGⅠ TS Fig. TS.3_errata




24

Q：海洋ではいったいどういった変化があるのですか？

世界

平均

海面

水位

上昇

(m)

図. 21世紀にわたる世界平均海面水位の上昇予測（1986-2005年平均との比較）

出典：図, IPCC AR5 WGⅠ SPM Fig. SPM.9

A:海洋は地球に貯められたエネルギーを吸収しており、1971 年から2010 年の間に蓄積されたエネルギーの90%以上（0～700mで60％、700m以深で30％）を吸収したと言われています。

A:1993年から2010年の間に1年当たり3.2mm海面が上昇したとも言われています

。これは海洋の膨張、氷河や氷床の変化が起因しているといわれています。

A:21 世紀の間、世界全体で海洋は昇温し

続け、熱は海面から海洋深層に広がり、海洋循環に影響すると言われています。




25

Q：温室効果ガスはどこから出てきているのか？

出典： AR5WG3 政策決定者向け要約Fig.SPM2

出典： AR5 SYR 政策決定者向け要約図SPM1

A:エネルギー関係（化石燃料由来）の排出が

増えています。土地利用の変化（森林伐採等）からの排出はあまり増えていません。




26


2-3. 将来の気候と影響




27

2-3. 将来の気候と影響～将来予測～〇将来予測のやり方

• 気候の動きを計算式に変換し、スーパーコンピューターで計算。観測データからも明確に分かっていない点については、補足値を代入。

• モデルは将来気候を完璧に予測できないため、複数のモデルに基づいた予測を幅で示す。また、過去の気候の再現度によって、モデルの正確性を検証。





28

2-3. 将来の気候と影響～将来予測（2100年まで）～

• 2081-2100年と1986-2005年の平均気温を比較すると最も低いシナリオで0.3-1.7℃、最も高いシナリオで2.6-4.8℃上昇すると予測される。

• RCP6.0 シナリオとRCP8.5 シナリオでは温度上昇が2℃を上回る可能性が高く、RCP4.5 シナリオではどちらかと言えば2℃を上回る（1850-1900年との比較）。

出典：IPCC WG1 AR5 SPMFig SPM.8 （気象庁訳）




29

約1000種の魚類及び無脊椎動物の最大漁獲可能量世界再分布予測。

漁獲可能量は中・高緯度地域で増加、熱帯・低緯度地域で減少する。

2-3. 将来の気候と影響～漁獲量へのリスク（世界）～

漁獲量増加

漁獲量減小





30

21世紀の気候変動による作物収量の変化予測の要約※異なる排出シナリオ、地域、並びに適応及び非適応ケースの組み合わせについての予測が含まる。

背景が異なる文献を組み合わせているが、21世紀末に向かって、食糧生産が減少するとする文献が増える。他方、食糧生産が上昇するとの文献は減少する。

2-3. 将来の気候と影響～食糧生産のリスク（世界）～





31

2-3. 将来の気候と影響～日本における気候変動予測の研究～

• 国内を6つの地域に分けて予測を実施。



今さら聞けない!? ~気候変動~2-3. 将来の気候と影響～日本の平均気温～

32

• 全国で年平均気温は平均1.1℃（0.9～1.2℃）から4.4℃（3.9～4.7℃）の上昇が見込まれる。

※1984-2004年と2081-2100年の平均気温の比較

• 北日本では、他地域より高い気温上昇が予測されている。




33

2-3. 将来の気候と影響～真夏日（日最高気温30℃以上）～

• 全国では、一番低いシナリオで平均12.3 日（10.8～14.3 日）増加し、一番高いシナリオで平均52.6 日（45.8～58.4 日）増加する見込み。

• 特に、西日本日本海側（地域平均：65.9 日増加）、西日本太平洋側（地域平均：68.6 日増加）、沖縄・奄美（地域平均：86.7 日増加）の増加幅が大きい。

• 例えば、東京の平年真夏日は平年約48日であるため、最大で真夏日が年間で100日前後になる可能性もある。




３．気候変動に対する取り組み

34




パリ協定（2016年11月４日に発行）

「２℃を十分に下回る水準に抑制し、1.5℃以内に抑えるよう努力する」

35

3. 気候変動に対する取り組み～温室効果ガスの排出を削減～

5年毎に各国の排出目標を報告

2020年まで 2030年2025年

3℃？

2℃？

1.5℃？

各国

目標

2035年

GHG排出量

各国

目標？

各国

目標？

各国

目標？

各国

目標？



今さら聞けない!? ~気候変動~3. 気候変動に対する取り組み～国内での適応例～

36

適応計画（2015年11月、閣議決定）

•農業、森林・林業、水産業•水環境・水資源•自然生態系•自然災害・沿岸域•健康•産業・経済活動•国民生活・都市生活

適応プラットフォーム地方の気候情報や適応事例を紹介

http://www.adaptation-platform.nies.go.jp/

例：神奈川県の気温予測



今さら聞けない!? ~気候変動~3. 気候変動に対する取り組み～国外での適応例～

将来の開発を阻害（持続可能になるように）しないために、土地利用計画の中で気候変動リスクを取り入れながら、将来の開発を検討。

37

フィリピン、シラン・サンタロサ川流域の流出係数：（a）2014 年、（b）2025 年

出典：IGES




38

ご清聴ありがとうございました。

今さら聞けない!? - iges公益財団法人地球環境戦略機関...

Documents