品質は会社の命 と考えます。...24社会・環境報告書 2005 社会・環境報告書...

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社会・環境報告書 2005 25 「営業的試験を為し、その成績充分に在らざる場合は、決 して販売すべきものに非ず」──当社では、社祖・豊田佐吉の この遺訓を受け継ぎ、「品質は会社の命」であり、経営の最重 要課題のひとつである、と位置づけています。 品質の維持・向上は、お客様に対して果すべき責任のうち 最も重要なものであり、また当社が果すべき社会的責任の基 本であると考えています。 品質の維持・向上がお客様への重要な責任 1 品質は会社の命と考えます。 総合品質 営業品質 製造品質 設計品質 耐久性 安全性 できばえ サービス 製品品質 販売 ブランド力 企業イメージ など お客様が心から 期待するレベル ブランド・アイデンティティ 当社が追求している品質とは? 品質は経営の最重要課題のひとつ 品質とは ~品質の考え方~ 当社では、製品の耐久性、信頼性、安全性、環境配慮など の「製品品質」を基本として、さらに、販売およびサービスに おける「営業品質」と企業イメージやブランド力などの「総合 品質」を加えた企業活動全体の「品質」に対し、全員参加で 維持・向上を図っています。 この考え方を表したものが下図です。お客様が期待する レベルに向けて「品質」を全員参加でつくりこんでいくことが 大切であり、お客様への責任であると考えています。 より良い商品をお客様に提供する お客様の視点で商品を開発・提供する。──当社では、こ うしたマーケットインの考え方を徹底しています。 「モノづくり」においては、新機能などの研究開発に注力 し、常に時代をリードする商品の開発を進めるとともに、デザ インレビュー(DR)制度により、お客様のニーズにもとづく商 品企画から、製品の信頼性、発売後のお客様の満足度までを 評価しています。 また、販売・サービスにおいては、お客様にご迷惑をかける ことなく、いつも最高の状態でお使いいただくために、販売 店でのお客様対応に加え、当社にお客様相談室を設置し、 直接お客様の声をお聞きしています。さらに、商品に関する アンケート調査、お客様訪問による使用実態調査などを行っ ています。 このような活動により、お客様の期待に応えるより良い商 品の提供に努力しています。 「営業品質」の向上のために お客様にいつまでも安心してお使いいただくためには、直 接お客様の対応をしている販売店(ディーラー)を強化し、 「営業品質」を維持・向上していくことが大切です。国内外の 販売店に対して、経営体質強化、スタッフの育成、次代を担う 人材の確保などへの支援を積極的に行っています。 国内では当社が、海外では、主要地域(北米、欧州、豪州、 アジア)にディストリビューターを置いて、各国各地のディー ラーの強化に努めています。 ウェアハウス機器の製造・販売を行っているBTインダストリー ズの欧州統括会社であるBTヨーロッパの商品サポート部では、 2000年から毎年、同社のディーラーが、同社本部から十分な販 売サポートや製品情報の提供などを受けているかどうかをアン ケートする満足度調査を実施しています。 第一回の2000年には、9項目であった質問も、2005年度 実施の調査では、「マーケティングと販売サポート」「サービスト レーニング」など17分野60項目に増やし、ディーラーは4段階 で評価。 これら調査の結果は、各ディーラーへ送付するとともに、BT ヨーロッパのアクションプランに反映させ、毎年10月に開催され るディーラーとのミーティングで発表しています。 事例 ディーラーに満足度調査を実施 ── BTヨーロッパ[スウェーデン] お客様 への責任

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社会・環境報告書 200524 社会・環境報告書 2005 25

 「営業的試験を為し、その成績充分に在らざる場合は、決して販売すべきものに非ず」──当社では、社祖・豊田佐吉のこの遺訓を受け継ぎ、「品質は会社の命」であり、経営の最重要課題のひとつである、と位置づけています。 品質の維持・向上は、お客様に対して果すべき責任のうち最も重要なものであり、また当社が果すべき社会的責任の基本であると考えています。

品質の維持・向上がお客様への重要な責任

図1

「品質は会社の命」と考えます。

総合品質

営業品質

製造品質

設計品質● 耐久性 ● 安全性 ● できばえ ● サービス

製品品質

● 販売 ● ブランド力  ● 企業イメージ  など

お客様が心から期待するレベル

ブランド・アイデンティティ

当社が追求している品質とは?図�

品質は経営の最重要課題のひとつ

品質とは ~品質の考え方~

 当社では、製品の耐久性、信頼性、安全性、環境配慮などの「製品品質」を基本として、さらに、販売およびサービスにおける「営業品質」と企業イメージやブランド力などの「総合品質」を加えた企業活動全体の「品質」に対し、全員参加で維持・向上を図っています。 この考え方を表したものが下図です。お客様が期待するレベルに向けて「品質」を全員参加でつくりこんでいくことが大切であり、お客様への責任であると考えています。

より良い商品をお客様に提供する

 お客様の視点で商品を開発・提供する。──当社では、こうしたマーケットインの考え方を徹底しています。 「モノづくり」においては、新機能などの研究開発に注力し、常に時代をリードする商品の開発を進めるとともに、デザインレビュー(DR)制度により、お客様のニーズにもとづく商品企画から、製品の信頼性、発売後のお客様の満足度までを評価しています。 また、販売・サービスにおいては、お客様にご迷惑をかけることなく、いつも最高の状態でお使いいただくために、販売店でのお客様対応に加え、当社にお客様相談室を設置し、直接お客様の声をお聞きしています。さらに、商品に関するアンケート調査、お客様訪問による使用実態調査などを行っています。 このような活動により、お客様の期待に応えるより良い商品の提供に努力しています。

「営業品質」の向上のために

 お客様にいつまでも安心してお使いいただくためには、直接お客様の対応をしている販売店(ディーラー)を強化し、「営業品質」を維持・向上していくことが大切です。国内外の販売店に対して、経営体質強化、スタッフの育成、次代を担う人材の確保などへの支援を積極的に行っています。 国内では当社が、海外では、主要地域(北米、欧州、豪州、アジア)にディストリビューターを置いて、各国各地のディーラーの強化に努めています。

 ウェアハウス機器の製造・販売を行っているBTインダストリーズの欧州統括会社であるBTヨーロッパの商品サポート部では、2000年から毎年、同社のディーラーが、同社本部から十分な販売サポートや製品情報の提供などを受けているかどうかをアンケートする満足度調査を実施しています。 第一回の2000年には、9項目であった質問も、2005年度実施の調査では、「マーケティングと販売サポート」「サービストレーニング」など17分野60項目に増やし、ディーラーは4段階で評価。 これら調査の結果は、各ディーラーへ送付するとともに、BTヨーロッパのアクションプランに反映させ、毎年10月に開催されるディーラーとのミーティングで発表しています。

事例 ディーラーに満足度調査を実施── BTヨーロッパ[スウェーデン]

お客様への責任

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社会・環境報告書 200526 社会・環境報告書 2005 27

DRのしくみを見直し、工程の保証度を向上

各事業部、各部門

製造工程での品質向上ステップ

本 社

新製品の開発 生 産

���

9つのデザインレビュー(DR)

���

���

���

���

���

���

���

���

各担当部門が見直し

次期製品の開発

次期製品開発へ

お客様

回答と対応

報告

お客様情報(要望、意見など)

生産での検討課題

しくみでの検討課題 新製品開発での検討課題

取締役社長

グローバル品質管理部

重要品質問題処理規程該当事項の報告

5S(2S+3S)整理、整頓

標準類の整備

�工程管理

工程保証度向上

良い

未然防止活動

標準化、作業手順書

流出防止(検査)

発生源対策と流出防止

自工程完結

商品企画審査

製品企画審査

試作設計審査

量産移行審査

量産設計審査

生産準備審査

生産移行審査

初期生産審査

お客様満足度審査�

点検

報告指示

報告

監査

●チェックシート、管理図 ●自働化●変化点管理

品質保証と品質管理の体制図�

DRのしくみを見直し、工程の保証度を向上

各事業部、各部門 製造工程での品質向上ステップ本 社

新製品の開発 量産段階の製造

���

9つのデザインレビュー(DR)

���

���

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���

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���

���

各部門が見直し

次期製品の開発

次期製品開発へ

お客様

トヨタL&Fカンパニーと各事業部の品質保証部門品質保証窓口

回答と対応

報告

お客様情報(要望、意見など)

量産段階での検討課題

新製品開発段階での検討課題

品質特別現場点検(2回/年)社 長

グローバル品質管理部

重要品質問題処理規程

該当事項の報告

5S(2S+3S)整理、整頓

標準類の整備

�工程管理

工程保証度向上

未然防止活動

良い

標準化、作業手順書

流出防止(検査)

発生源対策と流出防止

自工程完結

商品企画審査

製品企画審査

試作設計審査

量産移行審査

量産設計審査

生産準備審査

生産移行審査

初期生産審査

お客様満足度審査 �

点検

報告決済

過去に起こったことではなく、未来に起こり得ることを予想して対応

●チェックシート、管理図 ●自働化●変化点管理

品質保証と品質管理の体制図�

各事業部の品質保証部門 <品質保証窓口>

品質保証部門に入ると、設計、製造などの各部門にフィードバックし、すぐに対策を打つと同時に、DRのしくみを見直し、次期モデルでの再発防止を図っています。 さらに製造工程では「不良品の流出防止」を図るとともに、「整理、整頓」から「不良品発生の未然防止」に至る5つの段階での品質向上に取り組んでいます。 なお、品質マネジメントシステムの国際規格であるISO9001認証やTS16949(自動車業界のための規格)認証については、すべての事業で積極的に取得しています。とくに自動車事業においては、ISO9001の定着も完了し、現在は、より高度な品質保証をめざし、独自で活動を進めています。また、主な国内外の関係会社に対しても認証取得を奨励しています。

「品質は会社の命」と考えます。お客様への責任

 すべての工程で、決められたことを決められた通りに実行し、後の工程に悪いもの(不良品)を流さない。それが品質の良い「モノづくり」には大切です。当社の各事業は、マーケットインの考え方に立ち、お客様ニーズにもとづいて新製品を開発していますが、その際に、商品企画から設計、生産準備、生産、初期品質、お客様満足度に至るまでの全ステップを事業部長が審査することで品質を評価するデザインレビュー(DR)を、制度として確立しています。これによって、目標のレベルに達するまでは次のステップに進めないしくみとなっています。 また、新製品発売後に、重要なお客様情報が各事業部の

品質保証と品質管理の体制

図2

日常的な品質保証と品質管理

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社会・環境報告書 200526 社会・環境報告書 2005 27

 グローバルな市場へ商品を供給している当社にとって、品質への信頼性はブランドそのものであり、守るべき大切な企業価値のひとつと考えています。 そこで当社は、国内外の関係会社や取引先を含むグローバルなサプライチェーン全体を統括した品質保証活動をめざしています。

グローバルなサプライチェーン全体での品質保証

 「重要品質問題処理規程」に定められている「品質が原因となった人身・物損事故」などの重要問題が発生した場合、事業部内の品質保証部門は、お客様へのご迷惑を最小限にするよう、すみやかに対策を講じるとともに、本社グローバル品質管理部に「重要品質問題発生連絡書」で報告します。そして連絡書の内容はただちに品質担当役員を通じて社長まで報告されます。このしくみは、コンプライアンスに関する情報収集制度である「上告制度」にも組み込まれ、連動して機能しています。 重要品質問題の中でもリコールが必要なものについては、事業部内にリコール準備会議を設けて対策を検討。グローバル品質管理部が品質担当役員を通じて社長に報告したうえで、社長が監督官庁に申請書を提出します。また、お客様に対してはダイレクトメールなどで告知し、無償修理などの対策をすみやかに実施します。その後、リコール実施状況を確認して、監督官庁にリコール報告書、実施報告書を提出します。 このような一連の市場品質問題処理のしくみが適正に機能したかどうかについては本社監査室が監査します。

重要品質問題への対処

����年度 ����年度 ����年度

● 決めて守る

● 変化に対応する

● 連続不良を出さない

● お客様第一

● 品質不良“ゼロ”

● お客様第一

● 品質不良“ゼロ”

● 品質第一の職場づくり

3年間の品質指針表�

2004年度の取り組みと今後の方針

表1

 2004年度の「品質指針」は、「お客様第一」を合い言葉に「品質不良“ゼロ”」をめざす、というもの。この指針のもと、「設計・生産技術などの源流段階での品質のつくり込み」「製造段階各工程での品質のつくり込み」という二つの課題に取り組みました。 「源流段階での品質のつくり込み」では、新しい製品等の設計段階で「過去に発生した問題」や「経験値などから発生が予測される問題」をFMEA※によって未然に予防する活動に取り組んできました。現在、同手法を生産技術へと展開し、生産企画段階にFMEAを取り入れる方向で検討を進めています。また、「製造段階各工程での品質のつくり込み」では、不良の発生源対策と流出防止など、工程保証度の向上に取り組んでいます。 これらの取り組みの結果、新たに市場に出した商品におけるクレーム発生は大幅に減少しました。今後も、品質に対する取り組みをさらに強化していきます。 2005年度の「品質指針」では、2004年度の「お客様第一」「品質不良“ゼロ”」を強化するとともに、再度原点に戻り、組織、人材の品質意識を高めるという観点から「品質第一の職場づくり」を加えています。※ FMEA(Failure Mode and Effect Analysis):P15を参照

品質不良発生の未然防止に注力

 当社では、本社グローバル品質管理部が、個々の事業部の品質保証部門を定期的に監査し、さらに上述の「重要品質問題情報」を収集して、その結果を社長に報告します。 これらを踏まえて、社長が年に1度、品質に関する「社長指針(品質指針)」を全社に発信。指針の実施状況は「品質特別現場点検」(全工場対象、年2回)で社長自らが確認し、その結果を次年度の「社長指針」に反映させます。

品質指針

「品質は会社の命」と考えます。お客様への責任

「品質第一の職場づくり」へ

 2005年度に新たな「品質指針」として追加した「品質第一の職場づくり」が意味するところは、「モノづくり」に携わる全員がお客様の立場で徹底的に品質にこだわっていくということ。これは海外生産が拡大するなか、海外生産拠点での「品

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「品質は会社の命」と考えます。お客様への責任

社会・環境報告書 200528 社会・環境報告書 2005 29

 産業車両事業の商品の販売・サービスを行っているトヨタエルアンドエフ京滋㈱では、お客様の物流パートナーとして、顧客満

事例 「お役立ち提案」制度── トヨタエルアンドエフ京滋㈱[日本]

 BTインダストリーズグループのBTレイモンドでは、お客様満足度を向上させるため、「お客様による監査」に取り組んでいます。 これは、BTレイモンドのブランド、ディーラー、製品へのお客様の認識をディーラー経由ではなく直接調査し、ディーラーと課題を共有し、解決するしくみです。調査は、6ヶ月ごとを基本に、新製品発売後にも実施しています。さらに、カスタマーホットラインも設置して、お客様からのご意見・ご要望を伺っています。 また、ディーラーへの評価にも取り組んでいます。2004年度は「DOD(Dealer of Distribution:卓越したディーラー)」と「DOM(Dealer of Merit:功績あるディーラー)」の基準を設定しました。

事例 「お客様による監査」の実施── BTレイモンド[アメリカ]

サプライチェーンの品質向上に向けて

 2004年度は、本社グローバル品質管理部が中心となって、国内外の関係会社の品質点検状況(市場クレームなど)を把握。また、国内主要サプライヤーに対しても各社の品質指針のフォローを行ってきました。さらに、BTインダストリーズを交えた品質大会(下記トピックス参照)の開催、北米関係会社2社におけるQCサークル活動の実態調査と支援策の提供などに取り組みました。 また、「社内外品質教育」を、各回2日間のカリキュラムで計7回実施。社内生産部門の品質教育担当者、国内関係会社の品質担当者、サプライヤーの経営者・品質責任者など約450名を対象に品質教育を実施しました。

質確保、人材の育成」を推進するうえでも必要な考え方です。国内においても、設備が高度化し、社外応援者が増加していくなかで、とりわけ製造現場での品質のつくり込みにおいては、働く人たちの品質意識の高揚が不可欠です。そこで、全員参加のQCサークルをベースとして、「モノづくり」を取り巻くさまざまな環境の変化に対応できる体制と強い「人」づくりに取り組むことで、さらなる品質向上を図っていきます。

足と製品・サービスへの信頼性を高めるため、2001年度から「お応え営業」として提案活動を開始しました。2002年度からは、「お役立ち提案」として提案活動を強化しています。 営業スタッフ全員が毎月2枚の「お役立ち提案書」を作成し、お客様にご提案しています。お客様ごとに最適な提案書を作成できるよう、ヒアリングポイントや着目ポイントの整理、「最適商品選定シート」や「好事例集」の作成などに取り組んできました。 2004年度には、提案書の作成を簡便にするためのシステムを立ち上げ、作成目標を月4枚に増やしました。また、社内LANで好事例を紹介するとともに、各営業所ごとに月1回ノウハウと情報の交換を目的とした「販売研究会」を開催。全社では年1回、提案の事例発表会を開催し、営業スタッフ個々の能力向上を図っています。

 2005年3月、トヨタL&FカンパニーとBTインダストリーズの9生産拠点から品質担当責任者などがアメリカの当社関係会社トヨタ インダストリアル イクイップメント マニュファクチャリング(TIEM)に集まり、第3回合同品質大会を開催しました。 同大会では、各社が共通の指標で品質を評価し、拠点ごとの目標達成に向けて品質状況の実態を把握するとともに、相互交流を通じて品質向上を推進することを確認しました。 今後は1年に3回の頻度で会場を変えながら開催する予定です。

第3回合同品質大会「JQCM※」をアメリカで開催(産業車両事業)

※ JQCM(Joint Quality Control Meeting): 合同品質大会

「JQCM」