小樽市教育研究所報 第168号 31年3月22日 - otaru...英語教育の充実に向けて...

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英語教育の充実に向けて 小樽市立手宮中央小学校長 大坂 充 新学習指導要領全面実施を見据え,小樽市内の各小学校では第3・4学年で年間35時間, 第5・6学年では70時間の外国語活動に取り組んでいます。本校は,今年度「小学校英語教 育推進校」の指定を受け,外部講師や巡回指導教員によるティーム・ティーチングや授業改善, 北陵中学校との連携,小樽商科大学のインターンシップなどのさまざまな取組に加え,授業公 開及び外部講師による講演会を実施し,取組の成果や課題を示してきました。 2月6日に行われた「英語教育特別研修講座Ⅰ」では,関係機関はもとより市内外の小中学校から80名近く の皆さんが参加され,公開授業2本と文部科学省の外国語教育推進室教科調査官である直山 木綿子 氏による講 演を行いました。 公開授業では,本校の指導過程に基づき, HRT Home Room Teacher )と外部講師の役割分担を明確にしたティ ーム・ティーチングによる指導を展開しました。その中で,ペアやグループなど多様な学習形態を取り入れ,一 人一人が英語を話す機会を多くしたり,汎用性の高いやりとりを多くしたりしました。 講演会では,本校の英語教育推進の方向性を確認した上で,4年生の授業では場面設定の必要性を,6年生の 授業では聞き手が話し手を育てる「質問力」育成について話されました。そして,小・中・高等学校を通した新 たな英語教育に言及し,言語活動を通しての理解や実践,読むこと,書くことの指導,小中連携の重要性などに ついて熱く話されました。 ともすれば,外国語科や特別の教科道徳の導入など表に現れる改訂に目が行きがちですが,それらが全教科等 を通して「何ができるようになるか」(育成することを目指す資質・能力)を明確化し,学校段階の学びの接続を 円滑にするという新学習指導要領の方向性に沿って行われているということを改めて確認することができました。 第168号(1) 小樽市教育研究所報 児童の活動:手宮中央小学校 P1 巻頭言:大坂校長 P1 第 11 次研究第一回検証授業の概要 P2 第二回検証授業の概要 P3 教育研究所だより:今年度の歩み P4 第168号 平成31年 3月22日 2 月6 日に行われた「英語教育特別研修講座Ⅰ」の様子より

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Page 1: 小樽市教育研究所報 第168号 31年3月22日 - Otaru...英語教育の充実に向けて 小樽市立手宮中央小学校長 大坂 充 新学習指導要領全面実施を見据え,小樽市内の各小学校では第3・4学年で年間35時間,

英語教育の充実に向けて

小樽市立手宮中央小学校長 大坂 充

新学習指導要領全面実施を見据え,小樽市内の各小学校では第3・4学年で年間35時間,

第5・6学年では70時間の外国語活動に取り組んでいます。本校は,今年度「小学校英語教

育推進校」の指定を受け,外部講師や巡回指導教員によるティーム・ティーチングや授業改善,

北陵中学校との連携,小樽商科大学のインターンシップなどのさまざまな取組に加え,授業公

開及び外部講師による講演会を実施し,取組の成果や課題を示してきました。

2月6日に行われた「英語教育特別研修講座Ⅰ」では,関係機関はもとより市内外の小中学校から80名近く

の皆さんが参加され,公開授業2本と文部科学省の外国語教育推進室教科調査官である直山 木綿子 氏による講

演を行いました。

公開授業では,本校の指導過程に基づき,HRT(Home Room Teacher)と外部講師の役割分担を明確にしたティ

ーム・ティーチングによる指導を展開しました。その中で,ペアやグループなど多様な学習形態を取り入れ,一

人一人が英語を話す機会を多くしたり,汎用性の高いやりとりを多くしたりしました。

講演会では,本校の英語教育推進の方向性を確認した上で,4年生の授業では場面設定の必要性を,6年生の

授業では聞き手が話し手を育てる「質問力」育成について話されました。そして,小・中・高等学校を通した新

たな英語教育に言及し,言語活動を通しての理解や実践,読むこと,書くことの指導,小中連携の重要性などに

ついて熱く話されました。

ともすれば,外国語科や特別の教科道徳の導入など表に現れる改訂に目が行きがちですが,それらが全教科等

を通して「何ができるようになるか」(育成することを目指す資質・能力)を明確化し,学校段階の学びの接続を

円滑にするという新学習指導要領の方向性に沿って行われているということを改めて確認することができました。

第168号(1)

小樽市教育研究所報 目 次

児童の活動:手宮中央小学校 P1

巻頭言:大坂校長 P1

第11次研究第一回検証授業の概要 P2

第二回検証授業の概要 P3

教育研究所だより:今年度の歩み P4

第168号 平成31年 3月22日

2月6日に行われた「英語教育特別研修講座Ⅰ」の様子より

Page 2: 小樽市教育研究所報 第168号 31年3月22日 - Otaru...英語教育の充実に向けて 小樽市立手宮中央小学校長 大坂 充 新学習指導要領全面実施を見据え,小樽市内の各小学校では第3・4学年で年間35時間,

<授業を終えて> ◎ 指導者自らが楽しむ姿勢を示すことが,子どもの学習意欲につながる。 ◎ 子ども一人一人が,学習活動の目的を明確にもって学習に向かうことが大切であり,そのことが「自分ごと」の学

習につながることになる。また,そこに向かわせる手だての工夫が大切である。 ◎ 評価規準をより一層具体化し,多面的な見取りの方法を考える研究が今後の課題となる。

主な学習活動 T1・講師の動き 支援・評価

Introd

uction

○自分の体調に合わせて答える(5 min.)

(I’m) Great. Fine. Good. …

※この他これまで履修したものも◎

・Hello everyone.

・Hello. How are you?

・机にフラッシュカードを用意しておく

(T1)

○今日のめあてを確認する

○単語の復習をする(5 min.)

<14 種類の「野菜や肉」に関する単語の言い方>

※事前アンケートの単語を取り入れる。

「英語で買い物をしよう」

①カードを順に練習

②ランダムに練習

③音楽に合わせて単語

▲チャンツなどで英単語の反復を行ったり,

T1・T2,講師が発音しモデリングしたりす

<Activity①>

○「Shopping activity」を行う(15min.)

1モデリングを見て,やり取りの仕方を

知る( 5min.)

・Next is

“Shopping activity”!

・Make group of three.

・T1と講師でモデリング

・グループを店員役とお客さん役の半分に

分ける。

※事前にメニューや材料を書いたカードに,

他のグループのものを書けるよう工夫する

Pra

ctice

2 構文の練習を行う(5min.)

・全体で ・グループで

3 英語を用いて,交流する

( 5min.×2times)

・What do you want?

・I want ○○,please.

・Let’s enjoy shopping!

▲必要な英語を表示し,個別に補助する

■野菜や肉の英語表現を用いて,主体的に

自分の欲しいものやその数を伝えようと…

<Activity②>

4 全体で交流を行う(10min.)

・サラダの絵から,発表グループが

買ったものを想像する

(guessing game)

□T1が指名する

■野菜や肉の言い方や欲しいものを尋ねる

学習表現を用いて,相手に配慮しながら,

伝え合おうとしている

まとめる

Rev

iew

○振り返りを行う(5 min.)

・振り返りカードに記入する

・感想を発表する

□T1が指名をして,数名紹

介をする

第168号(2)

第 11次教育研究 全市公開検証授業~小学校外国語活動の実践を通して~ 平成30年9月26日(水) 小樽市立高島小学校教諭 吉田 肇 研究員

◆授業学級 小樽市立高島小学校第4学年1組 42名 1 テーマ 「単元を通した日常的なテーマを設定

することにより,意欲を喚起し自ら 外国語活動で学び合う環境づくりの 工夫」

2 検証の視点 ①学び合いを通して自らの学びを深めることが

できる活動となっていたか。 ②学びを自分ごととして捉え,意欲的に学ぶ姿

を見取ることができたか。 3 本時(5/5)の授業 (1)目標 ・野菜や肉の言い方や欲しいものの尋ね方を利

用して,相手に配慮しながら,伝え合おうとする。

(2) 本時の評価規準 □概ね満足できる状況の具体的な児童の姿 「思考力,判断力,表現力等」:野菜や肉の英語表現を用いて主体的に自分の欲しいものやその数を伝えようとしている。

「学びに向かう力,人間性など」:野菜や肉の言い方や欲しいものを尋ねる学習表現を用いて,相手に配慮しながら,伝え合おうとしている。

□十分に満足できる状況の具体的な児童の姿 「思考力,判断力,表現力等」:野菜や肉の英語表現を用 いて,主体的に自分の欲しいものやその数がはっきり とわかるように伝えることができている。

「学びに向かう力,人間性など」:野菜や肉の言い方や欲 しいものを尋ねる学習表現を用いて,相手に配慮しな がら,わかりやすく確かに伝え合うことができている。

(3)本時の展開

欲しいものを伝えたり,相手の言い

たいことを分かろうとしたりして,

やりとりしている。

英語によるヒントを理解しようとしている。

また,それをもとに答えを考えようとしている。

「めあて」を確認し,目的を明確にする。

友達同士で教え合いながら

アクテイビテイに参加している。

見取りの姿を表しています。

(詳細の指導案は年度末発行の研究紀要を参照) ▲支援を要する児童への手だて ■評価の観点

Page 3: 小樽市教育研究所報 第168号 31年3月22日 - Otaru...英語教育の充実に向けて 小樽市立手宮中央小学校長 大坂 充 新学習指導要領全面実施を見据え,小樽市内の各小学校では第3・4学年で年間35時間,

(3) 本時の展開 (詳細の指導案は年度末発行の研究紀要を参照) ▲支援を要する生徒への手だて ■評価の観点

主な学習活動 支援・評価

15

25

10

□問題を提示する。

○問題を読み,縮図をかくためにはどの部分がわかればよいか予想する。

○相似になるためにはどのような条件が必要だったか確認する。

○相似条件を確認する。(2組の辺の比とその間の角がそれぞれ等しい)

○下記2つを比べてABの長さを考える。

○AB間の距離を相似比を使って求める。

□課題を提示する。

□問題を提示する。

○校舎から離れた地点Pの距離を自分で考え,縮図をかいて答えを求める。(自力解決)

○書いた縮図から考えたことを相手に伝える。(交流)

○書いた縮図から考えたことを全体で交流する。

○縮図を個人で考える。

○解答を確認する。(約12m)

○今日の学習を自分で振り返る。

○相似な図形(縮図)を利用すればよい。実測しなくても長さ,高さを求めることができる。

□CA,CBの距離や∠ACBの大きさ

がわかれば縮図をかくことができること

を確認させる。

□この2つの三角形はどんな関係

にあるか着目させる。

▲ACとA’C’の関係に着目させ,

A’B’の値を相似比を使って考え

させる。

▲縮図をかけない生徒には下の図のよう

に真横から見た図をかくことを支援す

る。

■縮図をかいて相手に自分の考え

を伝えようとしている。(観察・ノート)

▲目の高さを加えていない生徒に

目の高さを加えることを確認する。

□数人を指名し,説明させる。

■縮図を書いて距離を求めようと

している。(観察,ノート)

<授業を終えて> ◎ 課題提示の場面において,既習事項を生かすことによって解決の見通しを立てられることを気付かせることで,「自

分ごと」の学習につなげることができる。 ◎ 発表し合い,互いに練り合う場面を設定することで,より深い学びにつながることが検証できた。

第168号(3)

第 11次教育研究 全市公開検証授業~中学校数学科の実践を通して~ 平成30年10月15日(月) 小樽市立北陵中学校教諭 福井学志 研究員

◆授業学級 小樽市立北陵中学校第3学年2組 37名 1 テーマ 「学習内容を自分ごととして捉え,学び

合う活動を通して,自らの学びを深めていく問題解決的な学習活動の工夫」

2 検証の視点 ①学び合いを通して自らの学びを深めることが

できる活動となっていたか。 ②学びを自分ごととして捉え,意欲的に学ぶ姿

を見取ることができたか。 3 本時(7/21)の授業 (1) 目標 ・直接には測定できない距離や高さを,相似な 図形を利用して求めることができる。

(2) 本時の評価規準 □概ね満足できる状況の具体的な生徒の姿

・直接には測定できない距離や高さを相似な図形を利用して求めることができる。(観察・ノート)

□十分に満足できる状況の具体的な生徒の姿

・直接には測定できない距離や高さを相似な図形を利用して求め,説明することができる。(観察,ノート)

課題:直接には測定できない距離や高さを求めてみよう。

問題Q 右の図で池をはさんだ2地点A,B間の距離はA,Bを見通せる地点Cを決め,△A

BCの縮図を書いて求めることができます。縮図を書くためには,△ABCのどの部分がわか

ればよいでしょうか。

問2 下の図は,△ABCの縮図△A’B’C’を書いたものです。この縮図を利用して、A,B間の距離を求めなさい。

問題Q 校舎から m離れた地点Pから校舎の先端Aを見上げたら,水平方向に対して40°上に見えました。目の高

さを1.5mとして,校舎の高さを求めてみましょう。

問5 右の図のように、A地点に立っている人から見て、北のB地点に木が立っています。A,Bの間の距離を知るた

めに、A地点から西に10m離れたC地点で∠BCAの大きさをはかったら、∠BCA=50°になりました。A,B

の間のおよその距離を求めなさい。

課題:共通点や相違点を考えることでより自分ごととし

て捉えることができる。(振り返り,ノートでの確認)

課題:発問の仕方を変え,池の長さを求めるためにどうしたらよいか

考える。(実測しない方法を考えられているかをノートで確認)

課題:個々で求めた高さや縮図をグループ内で比較し,説明し合

う。縮図のかけない生徒に対してあらかじめ真横からの図を用意し

ておく。(観察、ノートで確認)

成果:ICT機器やグループ交流などで説

明することによって自分ごとの姿になっ

ていた。(観察の様子)

Page 4: 小樽市教育研究所報 第168号 31年3月22日 - Otaru...英語教育の充実に向けて 小樽市立手宮中央小学校長 大坂 充 新学習指導要領全面実施を見据え,小樽市内の各小学校では第3・4学年で年間35時間,

所報「環流」を全教職員に配布するようになって5年間が過ぎました。印刷の不備で読みづらいことが多 々

ありますが,読んでいただいているでしょうか。

一部の先生方から「教育研究所って何しているところなの?」という声を聞くたびに,研究所の存在を知ってもらうためにも

っとできることはないかと悩みます。この所報を通して研究所を知っていただき,本所の活動の中核をなす研究活動を市内の

先生方と共有し,小樽の児童生徒の教育活動のさらなる充実に向けて気を引き締める,平成最後の年度末です。

新しい時代は,全ての子どもが安心して学び,未来に夢を膨らませ笑顔で過ごせる毎日であることを願います。

○ 対象:小中学生及び保護者

○ 来所相談・電話相談:22-4812 (月曜日~金曜日:午前9時から午後5時まで)

○ 教育相談メール: [email protected] (終日)

※不登校に関するご相談は,教育支援センター内「登校支援室」(内線530)の指導員がお受けします。

1 学力検査の奨励

○標準学力調査

全市共通 小学校3学年 質問紙 707名

小学校3・5学年2教科 1,404 名

中学校2学年3教科,質問紙 721 名

2 社会科副読本の活用の促進

○小学校社会副読本「わたしたちの小樽」及び「『わたし

たちの小樽』活用の手引き」

・平成29・30年度版を配布

・2019年度版の一部改訂作業

3 理科教材の活用の促進

○新版小学校理科教材「おたるの自然」

・Web版の更新作業

第168号(4)

教育研究所だより

編集後記

平成30年度教育研究所の主な活動の歩み

教育活動の充実にかかわる内容

1 研究員による教育研究の推進

○研究員会議を中心とした研究活動

(平成30年6月~平成31年3月,14回の開催)

○検証授業の全市公開授業

(2回=小学校外国語活動,中学校数学 参加 28 名)

○研究紀要第44号の発行 (3月末100部発行)

2 調査研究活動事業の推進

○研究推進校・推進団体 (7校1団体)

○研究交流校・交流団体 (4校9団体)

○公開研究会・公開授業の実施

( 11校・10団体, 22回の授業 参加 715名 )

○教育講演会・講習会などの開催

( 4校・1団体 )

○市外公開研究会・実践発表会等への参加

( 11校・7団体,20回 参加 48名 )

○研修発表会の開催( 11校10団体による研修の交流 )

○研究集録の発行 (3月末70部発行)

3 所報「環流」の発行 (6,9,12,3月)各号760部作成

○第165号:第11次研究,初任者・研究員の紹介,他

○第166号:特集「スクールコンプライアンス」,他

○第167号:特集「考え,議論する道徳」,他

○第168号:公開検証授業の内容,研究所の歩み等

4 研究図書及び資料の収集と整備,活用促進

○資料の収集

○研究図書の購入(今年度購入 144 冊)

○来所による研究図書の貸出 150 冊

教職員研修の充実にかかわる内容

1 電話・来所・メール相談活動の実施

○相談件数 32件 36回(H31,3,10現在)

・相談電話 25件 28回

・来所相談 5件 6回

・メール相談 2件 2回

2 スクールソーシャルワーカーの配置と学校への支援

○対応した学校 小学校 3校,中学校 5校

○支援の対象となった児童生徒数 小4名,中7名

○学校等への訪問件数 15回

○研修会の参加

・スクールソーシャルワーカー連絡協議会

・スクールソーシャルワーカー活用事業地域別研修会

・不登校やいじめ問題等の対策連絡協議会

・スクールソーシャルワーカーフォーラム

教育相談の充実にかかわる内容

学校生活にかかわる教育相談を行っています。